女性にペニスがある社会part4

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203196 ◆dge4QXzOKA
『美紀』

 甘々の新婚生活を邪魔されたくないという理由で、親元を離れて二人だけで暮らす夫婦は多い。増して、結婚して二年経ったというのに未だ独身時代のごとくベタベタしているような若い夫婦の場合なおさらだ。
 もっとも、普段気楽な生活をしているぶんの負債を支払うがごとく、盆暮れには互いの実家に顔を出しにいかねばならないデメリットもある。
 そんな訳で、前川夫妻は盆休みの前半は日帰りの旅行、後半はそれぞれの実家に一泊しての墓参りという強行軍をこなしてきた。
 愛しの我が家にたどり着いた時には日もとっぷりと暮れてしまっていた。
 サラリーマンである哲也は明日から仕事、専業主婦である美紀にしても、ここ数日でたまってしまった洗濯物との格闘が控えている。
「晩飯、どうする?」
「カップラーメンでいい? 私お腹いっぱい」
「母さん、容赦がないからなぁ」
 親から見ればいくつになっても子供は子供。久しぶりに訪ねてきた二人に、母親は心からのもてなしとばかりに山ほどの料理を用意して待ち構えていた。
 哲也も美紀もまだ二十五歳。『若い頃に比べて食が細くなった』などと言い訳できるはずもなく、大量の食事を腹に詰め込んできたのであった。
「お義母さんのお料理、美味しいから食べ過ぎちゃうのよねぇ」
「……」
 ここで体重のことを口にすると手加減無しで尻をつねられる。それが解っているから、哲也は口を濁して曖昧に頷いた。