>>809 ■【正論】精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹
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重罪の認識まだ足りぬレイプ犯罪
捜査手法の改革と併せ厳罰化を
≪2人に1人はPTSDに≫
最近、婦女暴行犯に重罰判決が相次いでいる。
九月二十七日には十八人の少女を暴行した容疑で起訴され、五年間に三十件の犯行を自供した三十一歳の男に無期懲役の判決が出され、
十月の一日には大阪市内で五人の女性を襲った罪に問われた男には、求刑が懲役十二年だったのに十四年の判決が下された。
私自身は、精神科医として、これらの判決は歓迎している。
というのは、レイプに関しては、人が考える以上に心の傷は深刻で、二人に一人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹患(りかん)するし、その中でも少なくない人が、一生心の後遺症で苦しみ続ける。
重症の人間不信に陥り結婚ができなくなったり、結婚できても離婚を繰り返したり、無気力になって仕事ができなかったりということが珍しくないのだ。
五人以上の人を襲った、この二件のケースでは、このように一生苦しむ被害者が間違いなく出ていることを思うと、無期懲役でも足りないくらいだと感じる。
さらに言うと、このような心の後遺症が深刻であるが故に、レイプはできる限り予防したい犯罪である。
犯罪精神医学の世界では、レイプのような性犯罪は、他の凶悪犯罪以上に再犯の可能性が強いとされている。
二十代の性犯罪者の場合、無期懲役でも十五年で出てくるとすれば、三十代で社会に戻ることになる。
まだまだ性的な活動性は十分にあり、かつ社会復帰をしない場合は、再犯の可能性はかなり強いことだろう。