蒲田周辺74

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836智仁 ◆rN4U95e5qM
再び5分ほど沈黙の時間が続いた。どちらが、いつ、何と次の言葉を切り出すか、互いに腹の中を探り合っているようだった。
長い沈黙に耐えかねた隆行が形ばかりの弁明を図ろうとしたその時、またしても先に透の口が開いた。「兄ちゃん…」
この瞬間、隆行は全身をこわばらせ、ぐっと涙をこらえた。ああ、もうだめだ。俺は透に嫌われてしまった。これから透は俺のことを散々になじることだろう。
でもそれは仕方のないことだ。せめて最後に、俺は兄貴らしく弟の非難の言葉をしっかりと受け止めよう。
そう隆行が覚悟を決めた次の瞬間、透の口から予想だにしない言葉が飛び出した。「お兄ちゃんがされてたみたいなこと、俺にもして‥」
あまりにも唐突な弟の言葉に、隆行は顔を上げて弟を見つめた。そこには赤面した顔を涙で濡らした弟・透がいた。
「だって兄ちゃん、気持ち良かったんだろ?だから俺にも、同じこと、して欲しいんだ」
隆行はとまどった。確かに男同士の性愛は気持ちいい。だが、まだ中学1年生の弟を兄が犯すなんて、どう考えても許されるような行為ではない。
そうだ、ここは兄として毅然と拒絶しよう。きちんと説明すれば透は分かってくれる。それぐらいの分別はつく年頃だ。隆行は意を決して口を開いた。
「だ、だめだ、そんなの、だって俺たち、きょうだ‥」だがその言葉をさえぎるように、透が思いのたけをぶちまけてきた。
「兄ちゃん、兄ちゃんが部屋に入ってきたとき、兄ちゃんからは見えなかったかもしれないけど、あの時俺、自分のチ○○ンをいじってたんだ。
 兄ちゃんがされてるのを見て、興奮してたんだよ。なぜだか分かる?俺、兄ちゃんのこと、好きだからだよ」
相次ぐ弟の奇襲に、隆行の頭脳は完全に混乱をきたしてしまった。思考を整理できないまま、隆行はただひたすら弟の言葉に耳を傾けるしかなかった。
「今までずっと、兄ちゃんのこと、兄弟としての好きだと思ってた。でも、このDVDを見た瞬間、違うものを感じたんだ。
 兄ちゃんが男の人にされてるのを見て、興奮してしまったんだ。そして思ったんだ、なぜ兄ちゃんの相手が自分じゃなくてこの男なんだって。
 知ってしまったんだ。自分が兄ちゃんを好きなのは、兄弟としてじゃなく、愛する男としてなんだと」
弟・透の激しい告白に、兄・隆行は胸の奥に熱く燃え上がるものを感じた。 (続く)