>>799 の続きです。
一瞬のうちに居間は、言葉を交わすどころか呼吸の音さえもはばかられる気まずい空気に覆われた。
口を半開きにしながらがっくりとうなだれる兄・隆行を尻目に、弟・透はいそいそとDVDをドライブから取り出した。
10分近くにものぼる重苦しい沈黙の後、透は意を決して隆行に対し話しかけた。
「お兄ちゃん、これ、お兄ちゃん、だよね」
弟の質問に対し隆行はついに覚悟を決めたという態で答えた。「ああ、オレだ…」
この時、隆行の目には涙があふれていた。ああ、弟に俺の性癖が知られてしまった。今まで精一杯良い兄貴でいたつもりだが、それもこれまでだ。
これから俺はキモいホモ野郎として弟から嫌われるだろう。そうだよな、俺みたいな男が毎晩同じ部屋で寝るなんて、受け入れられないよな。
もしかすると、俺が自分を犯すのでは、なんて思うだけでも気持ち悪くてたまらないよな。
俺みたいなホモが兄貴だなんて透の友達らが知ったら、まちがいなく透も嫌われて、イジメられるだろうな。
ごめん、透。こんな恥ずかしいヤツがお前の兄貴で。本当にごめん。ついには涙が大粒の雨となってカーペットに降り注いだ。
再び透が隆行に質問した。「お兄ちゃん、こんなことして、本当に気持ちいいの?」透の質問に、隆行は小さな声で「ああ」とだけ答えた。 (続く)