蒲田周辺74

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752智仁 ◆rN4U95e5qM
とりあえず予告編な。 

「さあ透、新しいお父さんと隆行おにいちゃんにごあいさつして」
「お、おじ、おとうさん、た、たかゆきにいちゃん、ぼ、ぼく、とおるです‥」
まだ保育園児ぐらいの小さな男の子が母親にうながされてあいさつをした。すると相手の男の子があいさつを返してきた。
「はじめまして、とおるくん、ぼくたかゆき。これからなかよくしようね」
隆行の父親と透の母親、ともに伴侶を亡くした二人が互いに自分の子を連れて再婚したのは隆行8歳、透4歳のころだった。
透の亡き実父は、何事もにごりのない純粋な視線で見つめて欲しいという思いをわが息子に託し、「透」と名づけた。
だが透は、幼くして経験した父の死というつらい現実のせいか、どこかはかなげで存在感に乏しい、人見知りの激しい子になってしまった。
それに対し隆行は、母親の死という悲しい経験をしっかりと受け止め、つらく悲しい思いをしている人には優しく接しようと心に決めていた。
親同士の再婚以降、隆行はひっこみ思案で不活発なゆえに友達がなかなか作れない透を、ただ単に兄としての義務感のみならず、一人の人間としての優しさと愛情から、しっかりと支え続けた。
そのうち隆行の献身的支援の甲斐あってか、しだいに透の表情に笑顔が増えていった。ただし、兄隆行に対する依存というおまけつきではあったが。
そんな二人もそれなりに成長し、隆行は高校二年生、透は中学一年生になった。つまり二人とも「性に関し多感なお年頃」となったのである。 (つづく)