作用と副作用とのバランスを考え、効果が不充分なものであったり、
眠気などの副作用があまりに日常生活に支障があるようであれば、
違う薬および治療法に変更してもらうよう医師に相談することも大切である。
あまりものわかりのよくない医師であると感じたら、病院を変更するのも一つの方法である。
花粉症の確実な根治療法はまだ確立されておらず、
この減感作療法がもっとも根治療法に近い。
広く免疫療法とも呼ばれ、広義では変調療法ともいわれる。
一般的には下記の抗原特異的減感作療法を指す。
新たな知見にもとづいて減感作療法をさらに効率的に行う治療法、
たとえばプルラン(多糖類)修飾を行った抗原の投与、
合成ペプチドまたはCpGモチーフと結合させたペプチドの投与、
体内でアレルゲンを発現させるDNAワクチンなどの研究・開発が進められており、
よい結果が得られているものもあるが、確実に花粉症が治せる保証はないのが現実である。
遺伝子操作によって作られた花粉症緩和米も、経口摂取によって
減感作を行おうというものである。
民間療法における特定の花粉(エキス)の摂取なども、この効果を期待したものと思われる。
こうした根治療法に近いものとして、IgEに結合することで
アレルギー反応を起こさせないようにする抗IgE抗体というのも試験中であり、
実用化が待たれている(海外ではすで使われている)。
減感作療法を併用しつつ、シーズン前に1回の注射を行った場合、
かなりよい効果が得られているという。
アレルギーの元となる花粉のアレルギー物質を、濃度の薄いものから
だんだんと濃度を上げつつ体内に注射していくことで、
体をアレルゲンに慣れさせてアレルギーの症状をなくす療法。
そのメカニズムは完全に明らかにはなっていないが、Th細胞のバランスを整えたり、
免疫寛容を誘導するのではないかと考えられている。
IgEではなくIgGを多く産生させ、アレルゲンがIgEと結びつく前にIgGと結びつくことにより
アレルギー反応を弱めるという説もあった。
このためIgGは遮断抗体とも呼ばれたが、鼻粘膜におけるIgGの量は変化がないことから、
この遮断抗体の関与には疑問が呈されている。
100年近い実績があり、効果と安全性は確かめられている。
約6割〜8割の患者に効果があるといわれるが、
そのうち完治と呼んでいいほどに症状が改善するのは、さらに半分程度といわれる。
1年〜5年の長期に渡って何度も注射せねばならず、治療の即効性はない。
一般的には、花粉症のシーズンが終了してから(次のシーズンに向けて)治療を始める。
早い人では注射を始めた次のシーズンから効果を実感できる。
きわめてまれにではあるがショック症状などが出る危険性も指摘されている。
しかし、多くは濃度や量の間違いなど、治療のミスによるものだろうともいわれる。
注射後の監督不行き届きや、患者自身が異常を医師に伝えないことなども、
副作用を早期発見できない原因となる。
日本では皮内注射による療法が一般的だが、海外では舌下投与も広く行なわれており、
現在日本でも保険適用をめざして治験中である(自由診療として行っているクリニックも存在する)。
舌下投与は副作用が出にくく、大量の抗原を投与できるので、効果の発現も早いという。
また、自宅で治療が行えることも大きなメリットである。
現在広く行われているのはスギやイネ科およびブタクサ程度のみと考えてよく、
花粉症の種類によっては希望する治療が受けられないのが実情となっている
(海外から薬剤を輸入して治療することもある)。
治療用エキスが標準化されているのはスギのみである。
薬がよく効かない人や重症の人向けの治療といわれてきたが、
年齢の若い人ほど効果が高いなどのこともあり、通院時間の都合がつき、
意欲のある患者にとっては試してみる価値のある治療法といえる。
通院の関係上、社会に出る前、学生のうちに実施するとよいといわれる。
妊婦および授乳婦にも安全とされる。
ただし、脱落する患者が多く薬剤が無駄になることがあったり、
保険における評価が低いためか、実施している医療機関は少ない。
季節前の数ヶ月のみ注射する季節前法や、数日〜2週間程度入院して行う
急速減感作という方法もある。
ヒスタミン加人免疫グロブリン(ヒスタグロビン)や
ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン)を数回にわたって
ルーチン注射する抗原特異的ではない減感作療法もあるが、
一部の医療機関を除き近年はあまり実施されない
(これらは減感作療法には含めないこともある)。
アレルゲンが特定できない場合に行われたり、
特異的減感作の効果をあげるために並行して行われることもある。
アレルギー疾患患者の尿から採取した抗アレルギー物質である
MSアンチゲンも使われてきたが、現在は製造を終了している。
内部のアレルギー症状をおこす部分の粘膜にレーザー光線を照射して焼灼し、
その部位を変質させることで鼻水・鼻づまりを押さえる治療法。
原則的には鼻詰まりの治療法である。
保険が効くが、美容整形クリニックなどで自由診療(保険外診療)として行っている場合がある。
レーザー照射をしてから数日は、傷(やけどのようなもの)のために
花粉症以上の鼻水が出て苦しむこともある。
一般的にはシーズンの1〜2か月前に予防的に行う。
効果の程度は個人差があり、有効でない場合もある(医師の技術にもよる)。
効果の持続は整形手術などとは違い、短ければ数か月、長くて2年程度のことが多い。
そのため毎年行う患者もいるが、そうした繰り返しの処置による不可逆的な組織の変化、
すなわち後遺症については、歴史が浅いこともあって明らかな知見はない。
安全だという医師もいれば、毎年はやらないという方針の医師もいる。
細かくみれば、レーザー光線の種類や術式の違いもある。
いうまでもなく鼻の処置であるため、目の症状には効果はない。
レーザーと同様な原理で、鼻粘膜に対する超音波メスによる処置や、
高周波電流を使った鼻の処置が行われている。
薬剤の塗布によって鼻粘膜を化学的に焼く方法もある。
治療成績や後遺症については、レーザー同様、確立した知見はない。
特に通気性の改善のため、鼻中隔湾曲など鼻の器質的な異常に対する手術も行われる。
鼻水がひどい難治例にはビディアン神経切除術なども行われる。
麻酔科からのアプローチとして、首にある星状神経節のブロックという方法も行われる。
治療成績は明らかでない。
目の涙管に抗アレルギー薬を注入するという治療法も一部の眼科で行われている。
保険適用ではない。
その他、その医師の独自の考え方により特殊な治療法が実施されることもある。
治療成績はもちろん、安全性についても明らかでないものがあるので注意が必要である。
各種の漢方薬による治療も行われる。
漢方薬は症状ではなく体質によって薬を選択するので、
本格的には専門家の見立てが必要である。
一般の西洋医学の医師は、効果のマイルドな薬という観点で西洋薬的に用いることが多いが、
それは正しくないともいわれる。
体質との相性がよいとかなりの症状の改善が期待できるが、
現代医学的に効果が確かめられたものは小青竜湯だけである。
病院で処方を受ければ保険が利く(しかし、一般の病院では漢方の専門知識をもった医師はめったにいない。
理想的には和漢診療科などがよい)。
上記抗ヒスタミン薬などの西洋薬との併用も行われる。
女性の妊娠・授乳期にも比較的安全といわれる。
症状を抑える即効性の薬のほか、長く飲み続けて体質を変えて根治をねらうとされる種類の薬もある。
多く誤解されているのが、漢方薬なら副作用がないということだが、
決してそのようなことはない。
特に小青竜湯や葛根湯に含有されるマオウは、
体質または服用量により動悸や血圧上昇などが起こりやすい。
ただし、抗ヒスタミン薬のような眠気はない。
花粉症によく用いられる漢方薬−−葛根湯、柴朴湯、小柴胡湯、小青竜湯等
患者レベルで高い興味がもたれている民間療法であるが、その定義はなく、
科学的に実証されているわけではない。
食品や飲料の摂取などのほか、さまざまなグッズ類を使用したり、
鍼灸などの伝統医療や整体、医師によらない漢方治療なども民間療法といえる。
有効なものもあるとは考えられるが、多くはそれらの成分や機序が解明されていない。
患者の口コミなどによって広まるものもあるが、プラセボ(偽薬)効果もあると考えられている。
テレビ番組などによって毎年新たに話題になっては消えていくものも多い。
ごく一部の医師により治療の補助として用いられることもある。
以下に主なものを示すが、太字はある程度の研究がなされているものである
(ただし、その研究のレベルは大きく異なる)。
近年においては、衛生仮説とも関わりのある乳酸菌類の研究がいちじるしく、
ヒトにおける臨床試験や、メカニズムの解明が進められている。
また、地方の特産品の消費推進のため、その健康効果を実証する試みも
多く行われているようである。
そうした研究によれば、下記の植物生薬の一部においては
ポリフェノール(その種類は4000〜5000種類あるという)と呼ばれる植物の
苦味・渋み成分が広義の抗アレルギー効果を示すという。
成分中のビタミンの一種が症状の軽減に有効とされたこともある。
しかし、そうした効果がある程度実証されているものであっても、
その多くは劇的な効果は期待できない。
これらの成分とビタミン・ミネラル等を配合したサプリメント類や清涼飲料水など、
いわゆる健康食品類も多く出ている。
患者においては、過信・盲信せず、多大な経済的被害はもちろん、
健康被害などをこうむらないように注意が必要である。
自分に効いたものが他人にも効くとは限らない点にも注意が必要である。
これらのほか、漢方的・栄養学的見地などから、特定の食品の制限や積極的な摂取なども行われる。
薬効を期待するというより、いわゆる健康法であろう。
なお、2007年2月、スギ花粉(実際はスギのつぼみ)をカプセルにつめた健康食品にて、
服用した患者が一時意識不明になるという事故がおきた。
また、花粉症との関連はないが、高濃度のにがりでも事故が起きている。
「食品だから」「薬ではないから」安全であるという根拠はまったくないということを
使用者は強く認識しておかなければならない。
植物生薬
甜茶、ラカンカ、日本山人参、霊芝、シジュウム(グァバ)茶、紫蘇の葉、ニンニク、
アマランス(アマランサス)、緑茶、凍頂烏龍茶、杜仲茶、ナンテン、ドクダミ、アロエ、
タマネギ抽出物、クロレラ、柿の葉茶、ミント、ネトル(西洋イラクサ)、花粉(スギ花粉)、
スギ茶、カリン、青ミカン抽出物、ハトムギ茶、つくし、クミスクチン、メチル化カテキン
機能性食品
パパイヤエキス、エゾウコギ、月見草種子エキス、リノレン酸、ショウガ、ゴボウ、青汁、
各種乳酸菌、にがり、フコイダン、ヨード卵、DHA、じゃばら、フキ(西洋フキ)
理学療法
鍼、灸、電気治療、整体、指圧
その他
気功、アロマテラピー、ホメオパシー、マイナスイオン、自己尿
花粉症の症状はアレルゲンと接触したときにのみ現れるので、
それを防ぎさえすれば症状は現れない。
このため花粉との接触を断つことがもっとも効果的な対策である。
治療としてみた場合、アレルギーの原因にさかのぼって対処するため、
原因療法といわれることもある。症状が出てから対策を行うのではなく、
症状が出る前から予防的にケアを開始するとより有効である。
すなわち自分で行う初期治療である。
このような対策によりアレルゲンとの接触をできるだけ避け続けていれば、
年を経るごとに抗体値がだんだんと下がっていくことが期待される。
接触を続けていれば抗体値も上がり、症状もひどくなる。
すなわち、薬剤治療により症状を抑えているからといって、
なんの対策もしなくてよいということにはならない。
患者にとっては、こうしたセルフケアはもっとも基本的なことといえる。
花粉症の症状は目や鼻で強く現れるため、外出時にゴーグルやマスクを着用すると効果的である。
マスクの質よりもつけかたが問題であり、すきまを作らないことが肝要である。
ゴーグルほどの目の保護機能がなくとも、いわゆるだてメガネでも有効であることが
実験によって示されている。
特にマスクにおいては、スギ花粉症のシーズン特有の乾燥や低温から
鼻粘膜を保護することにもなり、シーズン前から(発症前から)の着用が推奨される。
室内に花粉を持ち込まないよう、花粉の付着しにくい上着を着用したり、
帰宅時に玄関の外で花粉を落としてから入室するなどの対策も有効である。
換気などのために窓を開けることはもちろん、洗濯物や布団などを屋外に干すことも避けるべきである。
干す場合は取り込むときによくはたく、ブラシではらう、
または掃除機で吸い取ることが推奨されている。
同居の家族にも協力してもらったほうがよい。
しかし、どうしても花粉は屋内に侵入してくるので、掃除も有効な対策となる。
床の花粉を舞い上げないよう、掃除機ではなく濡れぞうきんによる拭き掃除が推奨されている。
室内に浮遊している花粉を除去する空気清浄機や、
清浄機能のあるエアコンを使用するのもよい。
空気清浄機は風量の豊富なものを選択し、花粉が落下する前に吸い取ることを考えるべきであり、
装置の自動運転を過信しないことが大事である。
加湿器も、浮遊している花粉を湿らせて重くし、落下を早めるために有効とされる。
湿度を高めることは鼻や喉の粘膜のためにもよい。
ただし湿度を上げすぎるとダニやカビの問題が出てくる。
一般に湿度50%程度が適当といわれる。
加湿器がない場合、ぬれたタオルなどを室内干しするのも効果がある。
地域によっては花粉の飛散量が少ないため、花粉症の症状が現れないところもある。
スギに関していえば、沖縄諸島や奄美諸島、小笠原諸島、札幌以北の北海道がこの例に当たる。
こうしたところに転地療養として旅行するのもよい。
ただし、旅行中に症状が出なくとも、シーズン全体を通しての症状に
どれだけ好影響があるかは不明である。
スギは日本および中国の一部にしかないのでこの時期の海外旅行もよい。
ただし、ヒノキ科の針葉樹は海外にもあり、それが花粉を飛ばしている地域では、
スギ花粉症患者でも症状が起こる可能性がある。
地域により花粉飛散量が多い時間なども異なる。
近年広く提供されるようになったリアルタイムデータやシミュレーション予報などを参考に、
外出時間や窓を開けての掃除をする時間等を考慮するのもよい。
一般に夜間〜早朝が少ないといわれるが、必ずしも当てはまらないこともある。
天候によっても飛散量は異なり、晴れて気温が高く、湿度の低い風のある日が花粉が多い。
雨の日であれば飛散量は少ないかゼロである。
ただし、原因は不明であるが、必ずしも雨のほうが楽だという患者ばかりではない
(その場合、血管運動性鼻炎が合併しているのであろうとの見方もある)。
雨の日の翌日に晴れると、2日分の花粉が飛ぶといわれるので要注意である。
原因植物自体を排除することも、自宅の庭に生えたキク科やイネ科の植物などが
アレルゲンになっている場合には有効である。
河川敷や公園などの植物が原因と考えられる場合は、
管理者である自治体などに相談するとよい。
不規則な生活リズムや、睡眠不足、過労や精神的ストレスによる
自律神経のバランスのくずれはアレルギー症状を悪化させることがあるため、
これらを避けることは症状軽減に有効である場合がある。
また、大気汚染と花粉症との関連は明らかにはなっていないが、
汚染物質は症状を悪化させることもあるといわれるので、
呼吸する空気はきれいであるにこしたことはない。
高たんぱく・高脂肪の、いわゆる西洋風の食生活との関連も指摘されており、
食事内容の見直しも有効である場合がある(和食がよいともいわれる)。
飲酒は血管を広げて鼻水を増やすため避けたほうがよい。
翌日にも影響する場合もあるといわれるが、ごく少量であれば、人によりほとんど問題にならない。
タバコも避けたほうがよいといわれるが、もともとヘビースモーカーである患者が
そのせいで症状が悪化するということはあまりないと考えられている
(少量の喫煙はIgE産生をうながし、多量の喫煙は抑制するともいわれるが確実ではない)。
自身のためではなく、他人のために避けるべきであろう。
特に「親が喫煙者である家庭の子どもはアレルギーを発症しやすい」との統計もあり、
妊娠中および幼小児のいる家庭では喫煙は避けるべきである。
また、「花粉症に罹患したことで喫煙を控える傾向があることから、
花粉症診断歴の有る群は喫煙率が低い傾向がある」という調査結果がある。
鼻内の花粉の洗浄も行われる。生理食塩水による鼻うがいや、
洗浄のためのグッズ類も市販されている。
目の洗浄なども行われる。
いずれも頻回に行うとよくないといわれる。
洗浄に用いる生理食塩水は33度程度に温めるとよいとされる。
水道水での洗浄は避けたほうがよい(特に鼻洗浄は粘膜上の繊毛が障害されるので禁忌である)。
温かいスチームを吸入するという治療法(局所温熱療法)もあり、器具も市販されている。
この効果は医学的にも確かめられている。
100%有効であるわけでもなく、その効果も弱い(スコアで1段階の症状の軽減程度)が、
薬剤を使わないため、妊娠・授乳期の女性には第一選択となる治療法である。
スチームの温度は43度程度が適するといわれているが、38度でも効果があるという実験がある。
1日数回の吸引を繰り返すとよい。
器具がない場合、蒸しタオルなどを顔にあてて湯気を吸入するとよい。
目のかゆみに対しては、冷やしたタオルなどをあてる(局所冷罨法)と一時凌ぎになるといわれている。
こうした目の症状が出やすい人はドライアイの人に多いともいわれるので、その対策にも気を使うとよい。
原則的にコンタクトレンズは使用禁止である。
使う場合はレンズの洗浄を確実に行うか、1日使い捨てタイプの使用が推奨されている。
前述のアレルギー日記等を記録して、自分にとってなにが悪化要因だったのかを
つきとめることも有用である。
また、薬剤の効果を確かめることにもなり、医師の協力が得られれば、
それを治療計画に役立てることもできる。
すでに述べたように、ヨーロッパではイネ科の植物、アメリカではブタクサが多い。
日本のスギ花粉症を含めて、世界の3大花粉症ともいわれる。
ヨーロッパのうち、大陸では各種の樹木による花粉症も少なくはないが、
花粉症発祥(発見)の地であるイギリスではことにイネ科の花粉症が多く、
人口の15〜20%以上が発症しているという[要出典]。文献的にはスペインにも多い。
一般に北欧と呼ばれるスカンジナビア地域ではシラカバなどの
カバノキ科の花粉症が多いといわれ、10〜15%程度という数字がある。
最近ではこうしたカバノキ科の花粉症をヨーロッパの花粉症の代表的なものとして述べることもある。
地続きであるロシアでは極端に少ない。
アメリカ合衆国における有病率は5〜10%程度といわれる。
ブタクサがほとんどともいわれるが、国土が広大なため、
地域によってさまざまな種類の樹木・草本が問題になっているようである。
北欧と同じく寒冷な地域であるカナダではカバノキ科の花粉症が多く、
6人に1人という数字もある。
アジア太平洋地域では、文献的にはトルコやオーストラリアなどが40%以上という
異常に高率の有病率を示しているが、この数字には疑問が残る。実際には10〜20%と推測される。
世界的にみて、先進工業国ではおおむねアレルギーが増えており、
花粉症も全人口の1〜2割というところではないかとみられている。
いずれも、英語圏でなくとも、あるいは Hay(干し草)が原因ではなくとも、
Hay fever の病名が慣用されることがある(そのため、花粉症の説明において、
干し草が原因ではないとのことが述べられることもある)。
さらに、アレルギー性鼻炎全般を Hay fever と代名詞的に総称することすらあるようであり、
一般向けの病気についての解説等は、日本の感覚では疑問を持たざるを得ないことがある
(もっとも、症状や治療方法はほぼ同じであるため、原因物質によって区別する必要もない)。
これらのうち、カバノキ科の花粉症が多い北欧やカナダでは
口腔アレルギー症候群を示す患者も多く、カナダでは花粉症患者の半数程度が経験するという。
こうした海外の花粉症については、プロスポーツ選手の海外進出などにともなって、
ニュースとしてよく目にするようになってきている。
日本国内であればマスクや薬の入手は容易であるが、他の国ではそうとは限らない。
特に欧米では日常的にマスクをする習慣がないため、奇異な目で見られるということもある。
街角でポケットティッシュを配るなどのことも行われてはいない。
その反面、国によっては日本では処方薬となっている第二世代抗ヒスタミン薬が
一般の薬店で買えるなどのこともある。
しかし、それが自分の体質に合っているとも限らない。
特にヨーロッパでは、当地の伝統医療であるホメオパシーのレメディを勧められることもあるという。
これらのことにより、花粉症患者が事情がよくわからない海外へ訪れる場合は、
シーズンを問わず、念のために自分に適した薬とマスク程度は持参したほうがよいといえる。
一般に花粉症はきわめてまれと考えられている、
いわゆる南洋の島などに観光旅行に行ったさいにも、
原因不明の花粉症様の症状に苦しめられたとの情報もある
(多量に栽培されているマンゴーやサトウキビなどによる可能性がある。
これは国内でも、南方へ旅行した際に同様なことが起こる可能性がある)。
特に病院で抗アレルギー薬の処方を受けている患者が、
シーズン中に短期(1週間前後)の旅行を行う場合は、その効果を減弱させないためにも、
旅行中も薬の服用を欠かさないほうがよい。
やや長めの旅行であれば一時中断してもよいが、帰国時が花粉症シーズンであるならば、
その数日前から予防的に薬を服用しておくとよい。
これは初期治療と同じ原理である。
近年ではペットの花粉症も問題となっている。
イヌの花粉症は98年に、ネコの花粉症は00年に初めて報告されたとされるが、
ヒトの場合と同様、それ以前から存在したと推測される。
特にイヌにおいては、ヒトのような鼻症状より毛が抜けるなどの皮膚症状が多く見られ、
見た目にも悲惨な状態となることが多いといわれる。
獣医師により検査や治療は可能だが、イヌにおいてはヒトと違って抗ヒスタミン薬が効きにくく、
ステロイドに頼らざるを得ないことが多い。
重症の場合は減感作治療が行われることがある。
ネコにおいては検査も治療も困難であるといわれる。
近年はこうしたペット向けのサプリメント類も販売されるようになってきている。
文科省の第8回技術予測調査によれば、日本において重要な課題の第2位が
「花粉症やアトピーなどのアレルギーを引き起こす免疫制御機構や環境要因の解明に基づく、
即時型アレルギーの完全なコントロール技術」であり、これが実現する時期は2015年、
さらに、それが社会的に適用されるのは2027年であると予測された。
参考文献
鼻アレルギー診療ガイドライン2002(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会)
鼻アレルギー診療ガイドライン2005(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会)
鼻アレルギー基礎と臨床(奥田稔)
花粉症の最新治療新編(斎藤洋三)
アレルギー疾患ガイドブック2004(東京都)
花粉症保健指導マニュアル(環境省)
花粉症対策と治療法(順天堂大学医学部)
専門のお医者さんが語るQ&A花粉症(大塚博邦)
ここまで進んだ花粉症治療法(佐橋紀男+花粉情報協会)
東京の環境2004(東京都環境局総務部企画調整課)
スギ花粉症(三好彰)
アレルギーなんかこわくない!(三宅健)
好きになる免疫学(多田富雄/萩原清文)
なぜ花粉症は激増するのか(北村美遵)
環境問題としてのアレルギー(伊藤幸治)
新版花粉症の科学(斎藤洋三/井手武/村山貢司)
すぐわかる森と木のデータブック2002(日本林業調査会)
文化における花粉症
イギリスの劇作家ノエル・カワード( Noel Coward 1899〜1973)の戯曲に「Hay Fever」がある。日本では「花粉熱」と題されて2003年に上演されたことがある。
Sunflower's Gardanのアルバムに「ひまわり花粉症」(2004年発売)というものがある。
沢田亜矢子のシングルレコードに「花粉症」(1982年発売)というものがある。
チャーリー浜のシングルCDに「私は涙の花粉症」がある。