また、そもそも東京都内などほぼ全域にわたって大気汚染物質の濃度が高いところでは
疫学的研究による差が出にくい(比較的低濃度の地域であっても閾値を超えている
アレルギー専門医を調べるには、日本アレルギー学会や
日本アレルギー協会に問い合わせるとよい(アレルギー学会のサイトにて調べることもできる)。
なお、自治体の保健所などが相談体制を整えつつあるので、まずはそこで相談するのもよい。
治療は目的や方法によっていくつかに分けることができる。
一般に花粉症の各症状を抑えることが目的のものは対症療法と呼び、
花粉症そのものの治癒を目指すものは根治療法と呼ぶ。
医療機関における各種の薬剤治療(薬物療法)は対症療法であり、
現在のところ確実な根治療法は開発されていない。
唯一、減感作療法が根治療法にもっとも近いものといえる。
症状が出る前から予防的に薬を服用するなどのことを初期治療(療法)または予防、
季節前投与と呼び、症状が出てからも比較的コントロールできている状態に
維持すること保存的治療または維持療法などと呼ぶことがある。
いったん症状がひどくなってしまった場合、
その症状を押さえ込む治療を導入療法と呼ぶこともある。
医療者側からみた分類といえる。
初期治療を受け、花粉が飛散する前から薬の内服などをすると症状が出にくく、
出ても軽くすむことは実証されている。
スギ花粉症のシーズン前には、飛散開始時期の予測が出されるので、
それを目安に2週間程度前に受診し、適切な薬の処方を受けて使用をはじめるとよい。
症状がひどくなると炎症を抑えるのが難しくなる傾向があるので、
予防ができなかった場合でも、できるだけ軽いうちに受診したほうがよい。
薬の処方を受けるなど医療機関における治療(メディカルケア)とは別に、
患者自身が生活上さまざまなことに気をつけると発症を遅らせることができたり、
軽く抑えることができる。
こうした患者自身ができる対策をセルフケアと呼ぶ。
多くはアレルゲンの回避と除去が目的であり、考え方によってはもっとも重要な治療といえる。
薬局・薬店において市販薬(大衆薬)を購入して使用するのは
セルフメディケーションというメディカルケアであり、かつセルフケアでもあるといえよう。
薬剤の分類や呼び方は少々の混乱が生じている。
専門家における呼称と一般に広く用いられる呼称も異なったまま慣用されている。
花粉症はアレルギーであるため、その治療に用いられるものは抗アレルギー薬といえる。
それらは薬理作用により以下のように大別できる
(広義ではステロイド薬をも含めて抗アレルギー薬と考えることもある)。
肥満細胞からのケミカルメディエーター(化学伝達物質)の遊離を抑えるもの
(ケミカルメディエーター遊離抑制薬。肥満細胞安定薬とも)
遊離された後のケミカルメディエーターの作用を阻害するもの
(抗ケミカルメディエーター薬:抗ヒスタミン薬、抗プロスタグランジン・抗トロンボキサン薬、
抗ロイコトリエン薬など。受容体拮抗薬とも)
専門的には、1. の遊離抑制作用のみを抗アレルギー作用と呼ぶ。
よって、1. の遊離抑制作用のある薬のことを抗アレルギー薬と呼ぶ。
これは、初のケミカルメディエーター遊離抑制薬であるクロモグリグ酸ナトリウムのことを、
ヨーロッパの一部において抗アレルギー薬( anti-allergic drug )と呼んだことに由来している。
しかし、遊離抑制作用を持つものを抗アレルギー薬と呼ぶと定義すると
問題が生じることがある。
抗ヒスタミン薬の中には、抗ヒスタミン作用の効果だけでなく、
ケミカルメディエーター遊離抑制薬およびケミカルメディエーター遊離抑制作用を持つもの
(これを第二世代抗ヒスタミン薬と言う。)があり、
第二世代抗ヒスタミン薬も抗アレルギー薬に含まれるという分類になる。
患者向けとして広く一般に用いられている呼称はこれが多く、
第二世代抗ヒスタミン薬は抗アレルギー薬として普及してしまっている。
一方、ケミカルメディエーター遊離抑制作用のない第一世代抗ヒスタミン薬は、
単に抗ヒスタミン薬と呼ばれることが多い。
こうした薬剤の分類や呼び分けは、医師・研究者や治療する疾病の分野によって
やや異なることがある。
一般向けに出版されている書籍での説明や、インターネット上の
花粉症・アレルギーの説明を行う各種サイトによっても、微妙に異なる場合がある。
たとえば、第二世代抗ヒスタミン薬をさらに細分化し、
第三世代とのカテゴリーを設ける医師・研究者もいる。
過去にケミカルメディエーター遊離抑制薬(抗アレルギー薬)のことを
体質改善薬ということがあったが、抗ヒスタミン薬とは作用機序が異なる事実において
そのように呼ばれただけであり、いわゆるアレルギー体質は改善されない。
アレルギーの発症を予防する効果もない。
便宜的に患者に対してそう説明されることがあるというが注意が必要である。
古い第一世代抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が現れやすく、
実用上では口が渇いたり眠気などの副作用が強い。
一方、新しいタイプの第二世代抗ヒスタミン薬は、そうした副作用などが現れにくい。
上述のように第二世代抗ヒスタミン薬は、ケミカルメディエーター遊離抑制作用
(抗アレルギー作用)がある。
第一、第二を含めて「症状を抑える」という対症的な治療効果であり、根治薬ではない。
肥満細胞から遊離したヒスタミンが、神経や組織にある受容体に結合するよりも前に、
その受容体に結合してしまう作用である。
すなわち、鍵穴に鍵が差し込まれる前に、鍵穴をふさいでしまう作用といってよい
(ただし、近年は受容体の活性を落とす作用がその主要な効果であると考えられている)。
一般にきわめて即効性がある。
ヒスタミンなどのケミカルメディエーターが肥満細胞から出てこないようにする作用である。
こちらは、一般に数日以上たたないと充分な効果が出てこない。
そのため、この作用を期待するには、予防的に発症前から薬を用いるとよい
(これは発症後に用いても無駄ということではない)。
飲んで数十分で強い効果が出てくる第一世代抗ヒスタミン薬は、
病院で処方されることもあるが、薬局・薬店で購入できる総合鼻炎薬の主剤となっている。
こうした鼻炎薬には、効果を増強するため交感神経興奮剤
(塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン等)や抗コリン剤
(ベラドンナ総アルカロイド、ダツラエキス等)といった薬がブレンドされているが、
皮膚のかゆみなどの飲み薬には、ほとんど第一世代抗ヒスタミン薬だけというものもある。
鼻炎薬では効果が強すぎる場合(口の渇きなどの副作用が強い場合)、
かゆみの薬を試してみるのもひとつの方法である。
一般に下記の第二世代抗ヒスタミン薬よりも眠気などの副作用が強く出やすいため、
特に乗り物の運転や機械操作などには要注意である。
同じ成分は風邪薬にも含まれているため、鼻炎薬の持ち合わせがないときなど、
緊急避難的に風邪薬を服用して症状を抑えることも可能である。
第一世代抗ヒスタミン薬(内服)−−マレイン酸クロルフェニラミン、
d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸カルビノキサミン(シベロン)、
フマル酸クレマスチン等
抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)の投与
数日から2週間程度服用して充分な効果が出てくる第二世代抗ヒスタミン薬
(これを抗アレルギー薬と呼ぶことが多い)やケミカルメディエーター遊離抑制薬については、
医師の処方箋が必要であり、メキタジンを除き日本では市販されていない
(2007年現在、メキタジンに続いて塩酸アゼラスチン、フマル酸ケトチフェンが
スイッチOTC内服薬として市販されるようになっている。
後者は点鼻薬としても市販されている)。
多くの第二世代抗ヒスタミン薬は、ケミカルメディエーター遊離抑制作用などを併せ持っており、
鼻詰まりにも効果的な抗ロイコトリエン作用があるものもある。
現在、花粉症に対して病院で処方される内服薬の多くは第二世代抗ヒスタミン薬である。
予防薬として処方されるものも、これが多い。
第二世代は第一世代より眠気や口の渇きなどの副作用が少なくなっているが、
こうした副作用の出方は人によってかなり異なる。
なお、第一世代、第二世代という分類は欧米でおこったというが、
第二世代抗ヒスタミン薬が市販されている海外であっても、
少なくとも一般薬店レベルでは通じないといわれる。
鼻炎やアレルギー、かゆみの治療に用いられるものは全て抗ヒスタミン
(アンチヒスタミン)薬と呼ばれているためである。
第二世代抗ヒスタミン薬(内服)−−フマル酸ケトチフェン、
塩酸アゼラスチン、オキサトミド、メキタジン、フマル酸エメダスチン、
塩酸エピナスチン、エバスチン、塩酸セチリジン、ベシル酸ベポタスチン、
塩酸フェキソフェナジン、塩酸オロパタジン、ロラタジン等
ケミカルメディエーター遊離抑制薬は点鼻薬・点眼薬として処方されることもある
(数は少ないながら市販薬にもある)。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬(内服)−−トラニラスト、ペミロラストカリウム等
ケミカルメディエーター遊離抑制薬(点鼻・点眼)−−クロモグリグ酸ナトリウム等
ステロイド薬は、遊離抑制作用や受容体拮抗作用などといった限られた作用ではなく、
アレルギーのメカニズムのほとんどを抑制する。抗炎症作用も強く、
多くはこの作用を期待して用いられる。しかし、強力にアレルギーを抑えるということは、
免疫そのものも減弱させるということでもあり、
不必要な長期投与など不適切な使用によって他の感染症を招いたり、
体内のホルモンバランスが崩れることにより重い副作用や後遺症が現れることもある。
その他の副作用も多く知られている。
リスク&ベネフィットをよく考慮して注意深く使用すべきである。
花粉症においては主に重症例に対する抗炎症作用を期待して用いられる。
抗ヒスタミン薬の内服などでは充分な効果がない場合、
副作用の心配があるので短期間または頓服として内服が行われる。
症状を抑える効果が高いこともあり、漫然と処方を続ける医師も存在するが、
副作用だけでなくステロイド離脱困難に陥ることがあるので注意が必要である。
特に小児に長期投与を行うと成長障害など重大な副作用が起こり得るので
厳重に注意する必要がある。
第一世代抗ヒスタミン薬ほどの即効性はなく、充分な効果が出るまで1日程度かかる。
基本的に短期であれば問題となる副作用はないが、
第一世代抗ヒスタミン薬との合剤では、その抗ヒスタミン薬の副作用である
眠気を感じることが多い。
点鼻薬のステロイドの場合は、局所に作用したのち体内ですばやく分解されるものもあり、
副作用の心配も少ないため、重症の鼻炎がある場合には積極的に用いられる
(医師により、重症でない場合も積極的に用いる場合がある)。
特に遅発相による鼻詰まりに効果的とされる。
鼻血が出やすくなる副作用を感じる患者もいる。
目の症状がひどい場合もステロイドの点眼薬が出されることがあるが、
副作用に注意して慎重に使う必要がある。
眼圧などの検査ができる眼科専門医に処方してもらうことが望ましい。
ステロイド剤(内服)−−ベタメタゾン・マレイン酸クロルフェニラミン配合剤、プレドニゾロン等
ステロイド剤(点鼻)−−プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン等
ステロイド剤(点眼)−−フルオロメトロン等
スポーツ選手が行っていたり、口コミで話が広がっている治療であり、徐放性ステロイド療法という。
1回の「注射」で治ると噂になっている治療だが、統計によれば
1回だけの注射で満足な効果を得られる例はそう多くはない。
鼻アレルギーの診療ガイドラインにおいても、望ましくない治療とされている。
内服と同様、全身のアレルギー(免疫)や炎症を抑える方法であるが、
デポ剤という、油に薬剤を溶かした徐放性のものが用いられるため、
筋肉内にとどまった注射液から数週間にわたって薬剤が放出され続ける点が異なる。
報告されている副作用も多く、のちのちの体調に影響する後遺症の心配もある(骨粗しょう症など)。
なにをやってもかんばしくなかったという患者の最終手段に近い治療法、
または事情があってどうしても薬の内服などができない場合の治療法であり、
もしも副作用が出ても体から薬を抜く方法がないというリスクを考え、
インフォームドコンセントを確実に行い、注射前後の検査を怠らぬよう慎重に実施すべきである。
もちろん根治療法ではない。
ステロイドであることを隠して注射をする医師がいたり、
患者もなんの疑問も持たずに気軽に注射を受けているなど、
なにかと問題の多い治療法といえる。
本来は保険適用の治療法であるが、自由診療(保険外診療)として
高額な治療費を請求する医師もいる。
注射した部位がへこむなどの副作用で訴訟になった例もあるといわれる。
注射の副作用だと気づかなかったり、医師から示談を提示されるなどのため、
表に出てこない事故も多いと考えられている。
相談や苦情をいう第三者機関が事実上存在しないため、
事故があっても患者は泣き寝入りをするしかないことも多いとみられる。
ステロイド剤(デポ注射)−−トリアムシノロンアセトニド(ケナコルトA等)、
酢酸メチルプレドニゾロン(デポ・メドロール等)等
(備考)デポステロイド筋注による副作用の例−
−満月様顔貌3.9% 副腎皮質機能低下0.1% 皮膚・皮膚付属器障害3.9%
月経異常ほか3.9% 適用部位障害(萎縮ほか)1.4%
IPD(アイピーディー)というTh2活性阻害薬(内服薬)が、症状に応じて使用されることがある。
IPD(アイピーディー)は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息でも使われる薬剤である。
花粉症では、Th2細胞活性の亢進・サイトカインの中のIL−4・IL−5
(アレルギー症状を誘発するもの)の産生の増加がみられることがあるが、こ
の薬剤はTh2細胞の活性を低下させIL-4・IL-5の産生を抑制する作用があり
効果があるとされる。
ただし、即効性はなく、効果が現れるのに数週間ほどの時間がかかるという特徴がある。
鼻詰まりが強い場合、いわゆる血管収縮剤(α交感神経刺激薬)
と呼ばれる薬剤の点鼻薬が処方されることがあるが、
連用すると効果が弱まるだけではなく、かえって鼻詰まりがひどくなり、
依存(離脱困難)になることもある。
そうした副作用が出やすいため、短期間に限って処方されることが多い。
鼻詰まりがひどい患者がステロイド点鼻を行うとき、薬剤が鼻腔内に入っていきやすいように、
あらかじめ鼻粘膜を収縮させるために用いる場合がある。
この種の薬剤は市販のほとんどの点鼻薬に含まれており、
即効性と高い効果があるため、説明書の注意書きを守らずに乱用してしまいがちである。
花粉症に使われる市販薬でいちばん問題になるのが、この点鼻薬の副作用である。
幼児の場合、まれに重い副作用が出ることもあるので使用を避けるべきである
(原則的に5歳以下には用いない)。
血管収縮剤は充血を取ると称する市販の点眼薬にも多く含まれており、
やはり連用するとかえって充血がひどくなることがある。
副交感神経遮断薬である抗コリン薬はエアゾール剤の関係で製造を中止している。
血管収縮剤(点鼻)−−硝酸ナファゾリン、塩酸トラマゾリン等
病気によっては禁忌となっている薬もあるので、持病のある人は
たとえ気軽に買える市販薬であっても、その使用については医師・薬剤師に相談すべきである。
他に薬剤を常用している人や、乳幼児、小児、妊婦、授乳婦も同様である。
なんらかの副作用を感じたら、早めに医師・薬剤師に相談すべきである。