すなわち、寄生虫感染率も長年にわたり一定であるためであるという。
しかし、大きな話題となったこの仮説はその論拠が薄弱であり、
ヒトでの疫学調査では相反する結果が得られたり、
保存されている過去の血液の抗体検査をしても理論どおりの結果が出ない。
寄生虫感染がほとんどなくなった現在でも、アレルギーがなお増加していることは
説明がつかない。
東南アジアにおいても、アレルギーは増加しているという事実も非支持的である。
そのため、現在では市民レベルの噂話にのぼる程度のものになっている。
この説を一般向け書籍を出版することによって大きく広めようとしたのは、
著者自身の行う寄生虫学をもっとポピュラーにしようとの思惑があったのだと揶揄する人もいる。
この説そのものは、社会的に話題になる以前より
他の研究者によって提唱されていたものである。
ただし、寄生虫感染はIgE産生を亢進することは確からしく、
この理論が完全に否定されたわけでもない。
その理由として、あらかじめ寄生虫感染を起こしていると花粉症発症は抑制されるが、
花粉症になってから寄生虫感染を起こしても症状は抑制されないという
機序を考える場合もある。
上記の衛生仮説に含むこともある。
なお、こうした寄生虫のエキスなどを投与して症状を改善しようという試みは、
たしかに免疫のバランスが変化するものの、発ガン率が高まるおそれがあるなどの
副作用の問題が生じたといい、断念されているようである。詳細は不明である。
都市化との関連については、別項にて述べているように、
それによりいつまでも空中を漂い続ける花粉数が増えているという説もある。
そのほか、従来からの日本式家屋とは異なる高気密の住宅が普及したことも、
花粉症が増えた原因のひとつではないかという考えがある。
高気密ではあるが高断熱ではない住宅では局所的に湿度が蓄積されやすく、
不十分な換気などによってダニ・カビが繁殖しやすい環境になる。
これによって幼少児期のうちからハウスダストに対するアレルギー性鼻炎や
小児喘息などを発症し、中にはそれが原因で花粉症にもなりやすくなっている人もいる
との考え方である。
すなわち、なんらかのアレルギーになると、それがきっかけで
違うアレルギーにもなりやすくなるというものである
(逆に、そうした時期にアレルゲンを絶つとアレルギーになりにくいとの研究もある。
たとえば妊娠期および授乳期に卵を厳格に除去すると、
卵に対するIgEが低値であるだけでなく、ダニに対するIgEも低値であったという研究もある。
しかしさまざまなデータがあるため、現在では、それらの関連は不明であるとされている)。
しかし、こうした住宅事情の変化はハウスダストアレルギー増加をうまく説明しても、
前述のようにどのようなアレルゲンに反応するかは
遺伝的に規定されているという説によれば、これが花粉症増加の原因であるとはいいがたい。
ただし花粉症患者のかなりは、その発症以前に
ハウスダストアレルギーを発症しているという事実もあり、
花粉症の素因を持った人の発症時期を早める影響は否定できない
(そうであれば、高気密住宅の多い都市部に花粉症患者が多くなることも、
ある程度は説明ができる)。
都市生活ならではのストレスや食生活の変化(洋風化)などについては、
明らかなことはわかっていないが、個人により影響を強く受ける人もいるかもしれない
とは考えられている。
特に食品中のさまざまな栄養成分とアレルギーとの関連は、
実験的なデータや理論(仮説)はあるものの、疫学的に実証されているとはいいがたい。
建材などから発生する有毒化学物質や食品中の添加物の影響を考えるむきもあるが、
花粉症との関連は調査されていない。
授乳時の人工栄養や早期離乳などについてはいくつかのデータがあるが
結論はなされていない。