さらにはこの「複数ヒーロー」のコンセプトは『秘密戦隊ゴレンジャー』をはじめとする
スーパー戦隊シリーズに受け継がれるなど、まさしく「怪我の功名」といえるだろう。
また、変身ポーズは、後の仮面ライダーシリーズ、さらには他の特撮ヒーローものにおいて、
もはや定番パターンとして受け継がれ、これもまた藤岡の負傷にはじまる主役交代劇が残した
思わぬ遺産であった。
この路線変更以降、初期の物語が持っていた仮面ライダーの「異形」という要素は
徐々に影を潜めて行った。そして、2号から新1号へ、そして『V3』以降へと
シリーズを重ねながら仮面ライダーというブランドのヒーローは徐々に姿を変えていった。
ヒーローとして、キャラクターとして、あるいは戦闘に特化した姿としての
洗練されたデザインになっていったのである。
その一方で、番組初期のテーマであった「改造人間の苦悩」というテーマも
一文字や帰国後の本郷が、わずかに苦悩をうかがわせる形とはいえ残り、
そして後のシリーズにおいても様々な形で取り上げられている。
現在の視点で見れば不自然な演出や矛盾した展開も多いのは否めないものの、
それを補って余りある魅力を見せ、そして現在の特撮ヒーローの原型となった事は
大いに評価出来る。
仮面ライダーとその協力者達
本郷猛 / 仮面ライダー1号
1948年8月15日生まれ。世田谷区出身。
城南大学(1話のみ城北大学と呼称)の生化学研究室所属の科学者で、オートレーサーでもある。
IQ600、スポーツ万能の超人的な才能をショッカーに見込まれ改造人間にされたが、
脳改造寸前に脱出しショッカーと戦うことを決意した正義漢である。
本来は明るい熱血漢であるが、自分が通常の人間ではないということに強い苦悩を抱いており、
そのために仲間達と一歩距離を置いている印象がある。
第13話を最後に海外へわたり、主にヨーロッパ支部のショッカーと戦うことになる。
そして第40話で死神博士を追って一時帰国。
何度か帰国して一文字隼人と共闘。
第53話から再び日本でのショッカーの戦いに身を投じる。
これらの戦いの経験を経てからは、ショッカーを倒すという強い使命感から
精神的にも成長を遂げ、戦士としての苦悩を心の奥に封印して、
仲間たちにも心を開きながら戦うようになった。
また以前に比べて熱血漢然とした側面も強く見せるようになっている。
※OP字幕テロップの配役紹介では「本郷猛、仮面ライダー/藤岡弘」または
「一文字隼人、仮面ライダー/佐々木剛」とされ1号、2号の明確な区別はなかった。
劇中でも変身後も互いに「本郷」「一文字」と呼び合っており「2人の仮面ライダー」と言う扱いだった。
次作「仮面ライダーV3」以降は区別されることが多くなる。
一文字隼人 / 仮面ライダー2号
1949年10月10日生まれ、国籍は日本だがイギリスのロンドン出身。
外交官の父、一文字博之と母、一文字スミの間の子として生まれる。
ロンドンで育ったフリーカメラマン、左利き(演じた佐々木剛が左利きだったので、
それに合わせたとされている)。
設定では、カメラマンとしてレースを取材したのが縁で、改造前から本郷とは面識があったとされている。
父の仕事の都合上、世界各国を飛び回り6ヶ国語が堪能になる。
ちなみに両親は1971年に飛行機事故で2人とも逝去している。
ロンドン美術大学では写真学部に身を置いていた。
柔道6段空手5段の腕前を持つ格闘技の達人でもある。
その能力と素性をショッカーに見込まれ、第二の仮面ライダーとして改造されるが、
脳改造前に仮面ライダー・本郷に救出されショッカーとの戦いを決意する。
本郷と比べると陽気でユーモラスな性格で、仲間に対しても心を開いているように見えるが、
改造人間としての苦悩やショッカーへの怒りは強い意志で内に秘めている。
他のライダーたちと比較しても目に付くほどの大の子供好きで、
クラブに出入りする五郎少年を弟のように可愛がっている。
オートバイの腕前は元々レーサーだった本郷には及ばなかったが、
立花レーシングクラブで鍛えられショッカーのオートバイ部隊とも渡り合えるほど向上しており、
本郷、風見共々「レースに出場すれば間違いなく優勝できた」と立花に評価されている
(『仮面ライダーX』第9話)。第52話を最後に、日本の守りを本郷と交代し南米へ旅立った。
その後も何度か帰国してダブルライダーとして戦っている。
旧2号時期よりも芝居気が目立つようになり、日本に現れる時は
いつも唐突にタイミング良く登場している。
このあたりも事前に何らかの連絡を入れて帰国する本郷とは対照的である。
立花藤兵衛
全話に登場。本郷猛のオートレーサーとしての師。
本郷の秘密をもっとも早く知った人物で、仮面ライダーの協力者として
物心両面から支援する一方、トレーナーとして戦闘訓練にも立ち会い
仮面ライダーの実力を引き出した。
当初はスナックアミーゴを経営していたが、本郷が日本を離れるのと同時期に
バイク用品店「立花オートコーナー」を開業し、立花レーシングクラブを立ち上げた。
一文字隼人や滝和也、レーシングクラブの女性メンバーたちに対しても父親のように接し、
ショッカーとの戦いやレース活動のリーダーとして若者たちを指導した。
やがて、少年仮面ライダー隊を組織するとその会長に就任し、
仮面ライダーへの支援にいっそうの力を入れるようになる。
トレーナーとしての指導力はショッカーからも一目置かれており、
死神博士がライダーとの最終決戦にあたって自身のトレーナーとするため
組織に招請するほどの実力を示していた。
自身もショッカーの戦闘員と渡り合える程度の実力があり、
怪人に対して啖呵を切るシーンもある。
ゲルショッカーが壊滅した後も、歴代の仮面ライダーの後見人となり、
仮面ライダーストロンガーまでの7人ライダーがデルザー軍団を全滅させるまで、
その戦いを支援し続けた。
当初、本郷や一文字からは「立花さん」と呼ばれていたが、
31話より「親父さん」と呼ばれるようになり、レーシングクラブ員や
少年ライダー隊のスタッフからは「会長」と呼ばれていた。
ファンの間では「おやっさん」と呼ばれているが、これは劇中で使用された通称ではなく、
本郷猛を演じた藤岡弘の癖のあるイントネーションで「親父さん」がそう聞こえることから、
後年ファンの間で愛称として定着したもの。
愛煙家で、パイプを愛用している。
立花を演じた小林昭二は『ウルトラマン』でも隊長役を演じ、
代表的な二大特撮ヒーロー作品で重要なポジションをつとめている。
緑川弘博士
1話のみの登場。本郷の恩師で生化学の権威。
ショッカーに拉致されて改造人間の研究にたずさわっていたが、組織の目的を知って、
脳改造寸前の本郷を救出した。
気の弱い面が見られ、本郷を被験体に推薦したことに負い目を持ち、
ショッカーへの反逆についても恐怖心から迷い続けていた。
脱出行の途中で蜘蛛男に暗殺されてしまう。
劇中でははっきりと描かれていないが、設定上は仮面ライダーを開発した中心人物である。
緑川ルリ子(みどりかわ ルリこ)
1 - 13話に登場。
緑川博士の娘で、城北大学に通いながら立花の経営するアミーゴでアルバイトをしていた。
父・緑川が暗殺された際、居合わせた本郷を犯人と誤解していた。
その誤解が解けた時から本郷の協力者となり、パートナーとしてショッカーとの戦いに貢献した。
猛に想いを寄せていた節があり、13話で猛の後を追ってヨーロッパへ渡った。
その後の消息は不明だが、番組のプロデューサー平山亨が後年執筆した小説では、
オーストリアにおいて猛がルリ子の想いを振り切るべく、
ルリ子の幼なじみである青年科学者カールとその一家にルリ子を託したとされている。
ルリ子を演じた真樹千恵子は、第11話でゲバコンドルをおびき寄せるための
偽装結婚のシーンで、生まれて初めてウエデイングドレスを着用した。
しかし、怪人ゲバコンドルに追いかけられるというシーンであり、
「若い女の子の夢をめちゃくちゃにしてくれて」とコメントしている。
野原ひろみ(のはら ひろみ)
ルリ子の学友で、アミーゴでアルバイトしていたことから事件に巻き込まれ、
以後本郷たちの戦いに協力するようになる。
本郷とルリ子が去った後も立花レーシングクラブに残り、一文字に協力した。
史郎(しろう)
2-15話に登場。アミーゴのバーテン。
気は弱いが善良な青年で、本郷たちに休息の場を与えていた。
立花オートコーナーとレーシングクラブの開業に関わったのを最後に姿を消している。
滝和也
11話より登場した本郷のライバルにあたるオートレーサー。
自分の結婚式がショッカーに襲われたのを機に戦いに参加するが、
その正体はショッカーを追っていたFBIの秘密捜査官である。
シナリオによれば結婚式もショッカーを追うための偽装結婚であったとされているが
劇中では描かれていない。
一文字隼人の登場とともに本格的に仮面ライダーと共闘するようになり、
ショッカーによる犯罪の捜査や公的機関とのパイプ役などの役割を担う一方、
戦闘や仮面ライダーの訓練でもライダー1号2号のパートナー役を務めた。
改造人間ではないが捜査官としては優秀で、戦闘員数人を相手に互角に渡り合う格闘力と、
優れた情報収集能力をもってゲルショッカーの壊滅までライダーを支え続けた。
少年仮面ライダー隊結成後はその隊長を務め、子どもたちの良き兄貴分にもなっていた。
近年では漫画『仮面ライダーSPIRITS』にも登場し、ライダー達と並んで主人公格になっている。
ライダーガールズ
仮面ライダーの戦いを支援した女性たちの総称。
劇中でこの呼称は使われていないが、緑川ルリ子が13話で降板したのちは
主人公のパートナーとしてのヒロインは登場せず、複数のヒロインが仲間として
主人公を支援するストーリーになったため、商業誌等で彼女たちを総称する際に
この名称が使われている。
ユリ
野原ひろみの友人として登場したライダーガールズの1人で最古参。
メンバーの殆どが説明無く姿を消す中で、彼女だけは14話で登場してから最終話まで活躍を続けた。
空手2段(後に3段に腕を上げる)の使い手。
当初は他のライダーガールズ同様に軽いノリの女性だったが、
後半はガールズのリーダー格的存在として仮面ライダーの戦いをサポートした。
石倉五郎(いしくら ごろう)
立花レーシングクラブの発足と同時にクラブに出入りするようになった少年。
他の大人たちとともに良く事件に巻き込まれるが、情報提供などで事件解決に貢献することも多い。
腕白だが利発な少年で、家族のいない一文字や滝からは実の弟のように可愛がられていた。
友人のナオキとミツルをレーシングクラブに紹介した後、
彼らにその役割をゆずるかのように65話を最後に降板した。
少年仮面ライダー隊
立花藤兵衛が仮面ライダーに協力する少年少女を集めて結成した組織。
会長は立花藤兵衛で滝和也が隊長を務める。
ショッカーの行動が公然となり、事件に巻き込まれる子どもが増える中での
自衛組織的な意味合いもある。
仮面ライダーのマスクを模したヘルメットと赤いネクタイの制服がトレードマークで、
専用の自転車で行動しショッカーについての情報を収集する。
集めた情報は、ペンダント型の通信機や伝書鳩を使って本部へ通報し、
仮面ライダーに伝えられるシステムになっている。
本部は東京近郊の3階建てビルに置かれ、立花レーシングクラブの女性メンバーが
本部要員として情報収集や事務に当たっている。
隊員は全国規模で組織され、ショッカーならびにゲルショッカーと戦う上での大きな力となった。
ナオキ、ミツル
五郎の紹介で62話よりレーシングクラブに出入りするようになった少年たち。
2人で行動することが多く、そのキャラクターは五郎ほど描き分けられていなかった。
少年仮面ライダー隊結成後はリーダー格として活躍し、
ゲルショッカーとの最終決戦までその役割を全うした。
仮面ライダー1号・2号
悪の秘密結社ショッカーによって改造された戦闘用改造人間。
本郷の変身する仮面ライダーは仮面ライダー1号、一文字の変身する仮面ライダーは
仮面ライダー2号と呼ばれている。
なお劇中での2人の仮面ライダーは基本的にお互いを「本郷」「一文字」と
本名で呼び合っていた。
2人とも脳改造をまぬがれてショッカーのアジトから脱出し、
ショッカーから人類を守る戦士となる。
後述する基本スペックは両者同一であるが、前者は多彩な必殺技を持ち、
後者は高い格闘能力と破壊力を備えることから、雑誌展開等で「技の1号・力の2号」と評された。
タイフーンと呼ばれるベルトの風車から取り入れた風力エネルギーで
体内の小型原子炉を起動させ動力源としている
(当初の設定である風力発電ではエネルギーとしては小さすぎるため、
後年になって書籍等で見られるようになった設定。)。
なお、人間より広い視界と赤外線による暗視能力、ズーム機能を持つ複眼Cアイ、
4キロ四方の音を聞き取る聴覚、電波送受信を行う超触覚アンテナ&対怪人用の
脳波探知機Oシグナル(共に探知範囲4km。Oシグナルは怪人が100m以内に
近づくと発光して危機を知らせる)、100tの衝撃を吸収する足のショックアブソーバなど、
基本的な機能面は1号2号共通である。
以下、ストーリーでの登場順に記す。
仮面ライダー1号
1 - 13話、40 - 41話、49話、51 - 52話、映画『仮面ライダー対ショッカー』に登場。
本郷猛がベルトの風車(タイフーン)に風圧を受けることによって変身した姿。
活動エネルギーは風で、風力のないところでは変身することや
仮面ライダーの姿を維持することができない。
後にデザインが大幅に変更された「新1号」と区別する際には「旧1号」と呼ばれる。
第40話で一時帰国した後、何度か帰国して一文字隼人と共闘した。
この時期、1号用として新調されたスーツは、複眼がクリアレッドから真紅に変わり、
色も微妙に変化したため、ファンからは2号と初共闘した場所にちなんで
「桜島1号」と呼ばれることもある。
しかし、細部のカラーリングは初期からも話数によって微妙に変化しており
(これは改良や補修を現場で行っていたという制作上の事情)、
この時点の設定では初期と同一の「旧1号」とされている。
媒体によっては、この桜島1号を新1号と旧1号の間の途中形態と解釈していることもある。
身長:180cm、体重:70kg。主な能力は、垂直跳び:15.3メートル、
幅跳び:48.7メートルのジャンプ力(改造直後のスペック)と、そこから繰り出すキック力である。
これらの能力は、その後の訓練によって向上していった。
なお、技とスピードを特徴とする設定は後のものだが、
旧2号と交代するまでのわずか13話の間に旧2号とほぼ同数の技を披露している。
仮面ライダー2号
14 - 52話、映画『仮面ライダー対ショッカー』に登場。
エネルギー源が風であることは1号ライダーと同じだが、
一定の変身ポーズと「変身」の掛け声によってベルトの風車に装備されたシャッターを開き、
より能動的に変身できる。
姿形は1号と同型ではあるが、頭部中央や腕と脚に一本の白いラインが入り、
ベルトが赤になるなど全体的に鮮やかな配色になっている。