【金メダルより】今日もボロ負けした奴集合124【金】

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809†AKO†

カラン…亞瑚のナイフは茶髪の首筋を掠めて床に弾かれた。
(出来ない…)
少女は、両肩を力一杯掴んで全身の震えを必死に抑えつけた。
(とにかく逃げなきゃ…)
私服に着替える最中、少女の耳に、微かなサイレン音が聞こえてきた。
(サツだ!)
慌ててパンツのジッパーを上げ、白いニットの上から紺のジャケットを羽織る。
病室を飛び出す間際、少女は倒れている茶髪をチラッと見た。
「…バカ」
そう呟くとドアを閉めて廊下を走り出した。
亞瑚の病室は2階に位置、FBI捜査官は1階の病院入り口から侵入してくるハズだ。
ナースステーション前を通り過ぎる時、数名の看護婦に目撃された。
(しまった)
1人の看護婦が慌てて受話器を取り通報する。
(正面突破は危険だ…きっと包囲網が敷かれてる)
810†AKO†:2006/03/09(木) 04:32:16 ID:7agpNN+8
少女の直感が告げた。
タタタ…急いで個室に舞い戻ると、少女は窓を開けて下を見た。高さ約3M。
(イケる…)
バッ…すかさず窓から飛び降りる少女。
グキッ!!…落ち際に、バランスを崩して着地に失敗。足首を捻ってしまう少女。
「…痛ぅ〜ッ!」
ダンッ!?…足首を抱えて地面にうずくまる少女のすぐ傍に、何者かが着地した…。

「動くな、じっとしてろ」
耳元で素早く囁くと、その何者かは、少女の体を軽々と両腕で抱えあげた。
「あ…えぇ!?」
ザザ…走り出す男の両腕の中で、亞瑚は小さく叫んだ。
「あ、あんた!」
「シッ、喋るな!気付かれるぜ!」
(な、何よ…こいつ)
驚きの余り目を見開く少女の頬が、ポッと赤くなった。
811†AKO†:2006/03/09(木) 04:33:06 ID:7agpNN+8

プログラムが強化されたとはいえ、梓の再起動にはドクターのチェックが是が非でも必要だった。
帷は、電話通信でベルリンの地下倉庫の一室に、瓦礫の山に埋もれている梓を発見する。
ドクターによるメンテナンスを受けるため、帷は、梓の機体を大きなバッグに詰めて運び込んだ。
行き先は、アメリカ、ニューヨークに位置する、とある研究所。
ドクターに梓の修理を任せた後で、帷はスラム街に出る。
そこで偶然にも金髪の美少女、アリシア・クラインオバールに遭遇してしまう帷。
アリシアは茶髪の男と一緒に腕組みしながらマリファナを吸っていた。
帷の怒りが否が応でも燃え上がる。何しろ相手は凶悪犯罪者だ。
ここ、ニューヨークで、一触即発の事態が勃発した。
812†AKO†:2006/03/09(木) 04:35:23 ID:7agpNN+8
帷は、体格の良い筋肉質の大柄な男で、身長185cm、体重82kgの鍛え抜かれた科学忍者だ。
帷の研ぎ澄まされた嗅覚が、敵の弱点を検索する。
「アリシアは足を怪我しているな。今なら殺れる…つか余裕だろ。
んでもって、連れの茶髪野郎は…ケッ、随分小さい軟弱そうな野郎だな」
帷の口元に勝ち誇った笑みが浮かぶ。
【その1時間前】

「やだ!」
少女は茶髪の腕を離そうとしない。
「一緒にショッピング行ってくんなきゃヤダッ!!!」
ピッタリ茶髪に寄り添ってぐいぐい胸を押しつける金髪の少女。
(はぁ〜参ったなぁ…)
茶髪はボリボリと頭をかいた。
並んで街を歩くと身長差が際立つ。少女はミニに厚底のブーツ。
茶髪も身長171と小柄だが亞瑚は150ちょっとしかない。厚底履いても低かった。
813†AKO†:2006/03/09(木) 04:37:07 ID:7agpNN+8

「ん〜?何か音がしなかったぁ?」
亞瑚が能天気にはしゃぐ。
「バカッ、しゃがめ!」
亞瑚の頭を強引に抑えつけて下に押し込む順平。
「んん〜ッ!?」
亞瑚が抵抗したため、茶髪は自ら亞瑚に覆い被さった。
ザクンッ!! …茶髪の背中から血しぶきが上がる。
「ぐぁッ!」
早くも痛手を負った茶髪の背中には、『クナイ』が一本刺さっていた。
「誰だ!出てきゃがれッ!」
しゃがみ込んだままラリッてる亞瑚を庇って威勢を張る茶髪の目の前に、男が姿を表した。
「てめぇ、誰だ!?」
灰色の半袖シャツにアーミーズボンをカジュアルに履いた筋肉質の男は、真剣な目で茶髪を睨みつけた。
「そこ…どけ」
「何だと?てめぇ…こいつの一味か!」
帷は、キョトンとして茶髪を見た。
「一味…?んだお前さん、何にも知らねえパンピーかい?」
「馬鹿言うなよ、俺はFBI潜入捜査官だ。てめ、この子の一味で取り返しに来たのかよ!」
帷は、屈託なく笑いだした。
「はははッ…お前さん、随分間抜けな捜査官だな。勘違いすんなよ。俺はお前さんの仲間だぜ」
「んだとぉ?」
814†AKO†:2006/03/09(木) 04:38:57 ID:7agpNN+8
帷の笑い声を聞いた少女が、急に蒼白な顔になる。
「あんた…アタシを殺しに来たの?」
亞瑚は、マリファナがまだ血中を回ってるらしく、瞳に眼力がない。
「あぁ、そうだ」
言い切ると、帷は目をギラギラさせた。
「てめぇ…もしかしてCTU捜査官か!?」
「あぁ…元、な」
そう呟くと、帷は一瞬で距離を詰め、茶髪をドンと押しのけた。
ズザザー…砂埃が舞い、顔から地面に突っ伏した茶髪が思わず咳き込む。
「キャアッ!!」
背後で、少女の小さな叫び声が響いた。
「くそッ」
慌てて振り返る茶髪の眼前で、大柄な男が小さな少女の喉輪を鷲掴みしながら宙に持ち上げていた。
「かはっ…」
息が出来ずに窒息する少女の顔がみるみる苦痛に歪む。
「何しゃがるんだ!」
帷の背中に突進してゆく茶髪。
「邪魔すんな、よ!」
ドボォッ!! …土手っ腹に回し蹴りを喰らって倒れ込む茶髪。
「ぐぁ…ち、ちくしょうッ!」
地面に片膝をつきながら、茶髪は遂にジャンパーの内ポケットから銃を抜いて叫んだ。
「その子を離せ!撃つぞおッ!!」
815†AKO†:2006/03/09(木) 04:39:55 ID:7agpNN+8
「チッ…ガキのクセに頑丈な首の骨してやがる…なかなか折れやしねえ…」
帷はパッと手を離した。宙吊りにされてた少女がドサッと落ちる。
「ゲホッゲホッ…!!」
蒸せ込む亞瑚。これで彼女は完全に『醒め』た。
「おいおい…んな物騒なもん仕舞えよ…お前さんも捜査官なんだろ?」
帷は真剣な目で茶髪を見つめながら近付いてくる。
「何でだ…その子は庇う価値なんてない…何百人も殺してきた凶悪犯なんだぜ…?」
「それ以上動くな!本気で撃つぞ!!」
茶髪の威嚇にもお構いなしに、ズンズンと歩み寄ってくる帷。
「お前さん…さては惚れたな。」
「うるせぇんだよおッ!!」
バキューン!! …銃声が響いた。
816†AKO†:2006/03/09(木) 04:43:32 ID:7agpNN+8

銃を構えながら順平が叫び声を上げる。
「アリシア!逃げろ!逃げるんだ!!」
バサバサ…ッ!! 背後に着地音を聴いた茶髪は振り向き様にぶっ放した。
ドキューンッ!! 銃弾が帷の体を掠め、一筋の鮮血が舞い散る。
「チッ、お前さんよぉ!!」
帷が罵声を浴びせる。
「それでも正義を掲げて戦ってきた人間なのか!!」
「うるせぇえッ!!」
ズガァーン!! …帷がバク転…またも間一髪で銃弾を交わす。
バササ…真横に帷の影が近接…順平の目がギラリと光った。
「うるぁあッ!!」
ボッ!! …銃を左手に持ち換え様、怒涛の右フック一閃!…も、あえなく空を切る。
「それでも捜査官の端くれなのかぁッ!!!!!」
ドゴォッ!!! 帷の強烈な右後ろ廻し蹴りが、順平をガードの上からぶっ飛ばす。
「がはぁッ!」
ズダァンッ!! 背中から地面に叩きつけられ、背中のクナイが更に深々と食い込んだ。
「うぐぁああッ!!」
「諦めろ…お前さんは俺には勝てねぇよ」
ブォンッ!!…上体を起こした茶髪の顔面に、帷のサッカーボールキックが迫る!
817†AKO†:2006/03/09(木) 04:44:20 ID:7agpNN+8

バチィ!… 右手で帷のブーツの先端を掴んだ茶髪の鈍く光る目が、身震いしながら帷を睨みつける。
「俺ぁな…」
「何だ、言い分があるなら言ってみろ。死ぬ間際に聞いておいてやる」
茶髪を見下ろしながら、淡々と続ける帷。
「お前さんはな、事実上、凶悪犯罪者の肩入れをしているんだよ…一時の感情なんかに惑わされるな!」
「う…ぐっ…」
背中に走る激痛に顔をしかめる順平、それを一生懸命に諭す帷。
「お前さんには似た部分を感じるんだ…俺にも大事な人がいる」
「大事な…人、だと?」
「あぁ…正直、下素な犯罪者1人の為にお前さんを殺したくはない!だから」
「…」
「だから…いい加減に目を覚ませっつってんだろぉがあッ!!」
帷がそう叫んで、茶髪の顔面に膝を入れようとした時だった。
「イヤァッ!!」
ボンッ!!!
背後から、腰部に強烈な【頸】を叩き込まれて帷は絶句した。体が痺れ、帷の動きが一瞬止まる。
818†AKO†:2006/03/09(木) 04:46:01 ID:7agpNN+8
「…ぐ…〜ッ!!」
「今よ順平、早く撃って!!」
「うッ…うぅ…!!」
茶髪は銃を両手に握り締めたまま、ガチガチと帷の頭部に照準を合わせた。
だが、…引き金をどうしても引く事が出来なかった…!!!
「アリシア! 俺が犠牲になる! お前は逃げろお!!」
茶髪にはどちらも見殺しに出来なかった。自分が犠牲になる以外には。
「ヘッ…大甘だな」
帷が右拳をグッと固めた。ヒュンッ…打ち下ろしの右がくる…!!
「くそったれがぁああッ!!!」
グシャアッ!!!
…銃をとっさに投げ捨て、茶髪は下からカウンターの左アッパーを帷の顎に叩き込んだ。
「…お前さんは…選択を…ミステイクしなかったか…」
帷は、茶髪に語りかけると、口から血を吐きながら崩れ落ち、ゆっくりと地べたに這いつくばった。
「早くそいつ殺しちゃお!!」
亞瑚が茶髪に近寄って息まいた。
「いや…もう死んでる…恐らく顎を砕いた時に逝ったんだろ」
順平は下手な嘘をついて、亞瑚を簡単に納得させた。
「行くぞ…早くここから離れるんだ」
そう言って茶髪は、躊躇する亞瑚の腕を引っ張りその場を後にした…。
819†AKO†:2006/03/09(木) 04:48:19 ID:7agpNN+8

「バババババキューーン!!!」
はしゃぎながらテレビ画面に向かって銃を突きつける金髪の少女。
「おい止めろ!その銃今日買ったばかりの本物だろ!」
血相を変えて少女の部屋に怒鳴り込む茶髪。
「動かないで」
ガチリ…振り向くと、少女は急に真顔になって銃口を茶髪に向けた。
「な…お、おい…アリシア…」
茶髪の顔が一瞬にして青ざめる。
未だにこの少女が何を考えてるのか彼には良く分からなかった。
未知の恐怖に歯がカチカチと音を立てる。
「なぁ、アリシア…悪い冗談はよせって…」
茶髪の全身から冷たい汗がドッと噴き出す。
「いいえ、マジよ」
軽く首を横に振ると、銃口を突きつけたまま、少女は冷たく言い放った。
少女の目が残酷に光る。
(くそ…なんてこった…やっぱ根っからの悪党ってことなのかよ…っ!)
茶髪は今になって、心の底から激しく後悔した。頭の中で帳の言葉が幾度となく渦巻く。
(俺は…選択をミステイクしちまったのか?)
820†AKO†:2006/03/09(木) 04:49:48 ID:7agpNN+8
「やめろ…アリシア…今ならまだ間に合う…やめてくれ」
両手をあげたまま、茶髪は覚悟を決めて少女の綺麗な顔を正面からキッと睨みつけた。
「動くなっつったじゃん!あと、喋らないで!」
ガチンッ…少女は茶髪の頭に照準をしっかり定めながら、銃の鉄槌を下ろした。
「あんたに幾つか聞きたい事があるの」
17歳の少女とは思えないテキパキした口調に、茶髪は戸惑いを感じずにはいられない。
(くッ…こいつ…豹変しゃがった…)
「FBI本部の場所は大胆把握してるわ…詳しい人員構成と図面を具体的に教えて頂戴。」
「お、俺は…お前のせいで潜入捜査官をクビんなった…今はFBIとは何の関係も無ぇ!」
少女は冷淡に茶髪を見つめながら、ゆっくりと詰め寄り、強がる茶髪の額に銃口を押し付けた。
「そんなのどーだっていいわ」
サラリと交わすと、少女は冷たく茶髪を見上げて叫んだ。
「撃つよ!早く教えて!」
茶髪の口がガチガチと震える。視線は少女の顔に向けられたままだ。
「だ、駄目だ…死んでも教えねえ…」
顔面蒼白、冷や汗で全身はびしょびしょだ。体の震えが止まらない。
821†AKO†:2006/03/09(木) 04:53:52 ID:7agpNN+8

「教えてッ!!」
銃口を茶髪の額にゴリゴリ押し付けながら、少女が叫んだ。
「あたしが政府の研究機関から脱走した本当の理由を知らないでしょッ、あんた!」
少女が謎めいた言葉を発した。
「撃てよ…」
「…え?」
眉を潜める眼前の少女に対し、茶髪は絶叫した。
「撃てるもんなら早く撃てぇええッ!!!」
ググッ…危機迫る茶髪の気迫に気押され、亜瑚の小さな指先が引き金を引いた。
『ガチンッ!!!』

822†AKO†:2006/03/09(木) 04:55:49 ID:7agpNN+8

『ガチンッ!!』
…空砲だった。
死を覚悟して目をギュッと閉じた茶髪が、恐る恐る目を開いた。
視界の中に、真っ先に少女の愛くるしい笑顔が飛び込んできた。
「きゃはははは♪」
可愛い笑い声が茶髪の耳元で響いた。
「一体」
「え?」
ゴクリと生唾を飲み込むと、茶髪は憎々しげに少女の綺麗な顔を睨みつけた。
「何のつもりだよ…あ?」
少女の笑顔が次第に曇ってゆく。
「ふざけんな…」
茶髪は身震いして怒鳴り声をあげた。
「ふざけんなよてめぇえ!!」
「きゃッ」
ガシッ!! …茶髪は少女の襟首を掴むと、乱暴に揺さぶった。
「冗談にも程度ってもんがあんだろおッ!!」
「いや!やめ…」
体を激しく揺さぶられて、亜瑚は泣きそうになった。
「うぇぇ…」