【金メダルより】今日もボロ負けした奴集合124【金】

このエントリーをはてなブックマークに追加
785†AKO†
「配線を変えて、手持ちのCPUからリモートコントロールで操作出来るように改良してある。」
野太い声で男が簡単に説明する。
「十分だわ。ありがと」
「ノーセンキュー」
低音を発して男は速やかにワゴン車で去った。
「さて、Let's Go〜!」
少女は口元に残酷な笑みを浮かべてCTU立入検問所へと向かった。

「身分証は?」
見張りの護衛に偽造カードを見せて内部へ潜入。
昴の小型衛星は偵察専門、内部の詳しい仕組みまでは捉えきれない。
亞瑚は、立ち入り可能区間を自ら歩く事で簡単な図面を脳内にリアルタイムに作成した。
786†AKO†:2006/03/09(木) 03:36:58 ID:7agpNN+8
(IDコード…解除)
ガァァーー…セキュリティーレベルの極めて高い出入り区間に立ち入った少女は、素早く小型爆弾を設置してゆく。
爆発までのタイマーは約5分。だが、今は手持ちの小型CPUにて微妙な設定操作が可能だ。
2ヶ所に設置を終えた亞瑚は、最後の1個を設置すべく残されたエリアへと向かう。
細い通路内部で、シークレットルームから出てきたミシェリー捜査上官と出くわした亞瑚。
ミシェリーは監視カメラの映像に不審な影を捉えて警戒していたのだ。
ミシェリーは眉を潜めると、反射的に銃を構えて警告を発した。
「動かないで!」
「あちゃ〜…見つかっちゃったかぁ」
屈託のない笑顔を浮かべて少女は下べろをつき出した。
「何のつもり?大人しく両手を頭の後ろに組みなさい!」
ミシェリーの氷の様な厳しい声が亞瑚の緊張感を高める。
「早く!」
ミシェリーが銃口を少女に向けたまま大声を張り上げる。
787†AKO†:2006/03/09(木) 03:41:38 ID:7agpNN+8
(チェッ…殺しちゃおっか〜)
少女は真剣な顔つきになると、黙って両手を頭の後ろに組んだ。が、次の瞬間…
「キャッホーイ!!」
小さく叫ぶと素早く前転しながらゴロゴロとミシェリーに接近、ミシェリーは狙いが定められない!
転がりながら腰に巻いたソケットから2丁の自動小銃を取り出す亞瑚。
チュンッチュン!!! …ミシェリーの弾丸はリノリウムの硬い床に弾き返って命中しない!
「チェックメイト♪」
懐に潜り込まれ、腹部に2丁の自動小銃をピタリと押し当てられるミシェリー。
「な…何が目的?」
前方をぼんやり見つめたまま、ミシェリーの引きつった声が上ずる。
少女は、楽しそうに笑いながら答えた。
「は・か・い☆」
ズガガガガガガ……自動小銃の乾いた銃声が冷たい廊下内に響いた…。
788†AKO†:2006/03/09(木) 03:44:24 ID:7agpNN+8

ミシェリーの上着の内ポケットから彼女の所有するカードキーを素早く抜き取ると、
亞瑚は暗唱コードを読み取り、ロッカーにカードキーを通して暗唱コードを入力。
遂に禁断のシークレットルームに入った。
「あは。ここ爆破されちゃったらCTUもおしまいだねぇ〜」
ピ〜ピ〜…亞瑚は軽快に口笛を吹きながら、部屋の目立たない箇所に最後の1個を取り付けた。
「セット完了〜♪」
彼女が部屋を出ようとしたまさにその時だった。
「大変だ!ミシェリー上官が倒れてる、至急医療班を呼んでこい!」
駆けつけたメンフィス長官が携帯でポート上官に命令する。
「国土安全保障局に連絡、CIAの要請を頼む。FBIにも連絡して至急、腕利きのシークレットエージェントを数名派遣してくれ!」
789†AKO†:2006/03/09(木) 03:45:07 ID:7agpNN+8
「ジャックスに連絡はツカナイノカ!」
「バウアー捜査官は成田空港でテロリストの一味にやられました!」
「ホワッツ!?じゃあアルメイデスはどうした!奴にも繋がらないぞ!」
「アルメイデスもやられました!」
「くそっ、何てことだ!!」
通路の方で男たちが叫んでいる。すぐさま数名の職員たちがバタバタと集まってきた。
【緊急警報!緊急警報!本部内に不審者が潜伏している。各自速やかに退避して護衛隊は所内の警備を強化せよ!】
思わぬ展開に、金髪の美少女も流石に焦りを感じた。
「あッちゃ〜…ど〜しよう〜…」
ガチリ!!…その時、両手で頭を抱えてうずくまる亞瑚の頭部に、銃口が突きつけられた…。
790†AKO†:2006/03/09(木) 03:49:32 ID:7agpNN+8

【CTU爆破から5分前】
「あちょお!」
ズダァンッ…振り返り様、即座にメンフィスの腕を捻り、床に叩きつける少女。
「ぐあッ」
逃げようと後ろを向いた少女の背後で、寝転がったままのメンフィスが叫ぶ。
「動くな!動くと撃つぞ!」
「へへ〜ん、撃ってみな」
ドキュドキュドキュッ!! …メンフィスのライフルが火を噴く。
バスバスバスッ!! …少女の胸に銃弾がぶち込まれる。
「効くもんかッ♪」
「馬鹿な…」
青ざめるメンフィスの襟首を片手で掴み、驚くべき怪力でぐぐ…と持ち上げると、少女はニヤッと笑った。
「くそ、防弾チョッキか…!」
「あッちょおおッ!!」
ドンッ…腹部に少女の【発頸】を受け吹き飛ばされるメンフィス。
「ごふッ…」
口から泡を吹き白目を剥いて失神するメンフィスを後目に、少女は急いで携帯を取り出した。ピッ…
「こちらリックス、作戦は順調に進んでるか?」
すかさず野太い男の声が応じる。
「リックス?こちら亞瑚、緊急事態発生…至急応援を頼む」
キビキビした少女の緊迫した声に、リックスもいち早く危機を察した。
791†AKO†:2006/03/09(木) 03:56:21 ID:7agpNN+8
「了解、正面突破を試みる。お前はCPUを持って逃げろ。大統領との取引に利用するんだ!」
「おっけ〜!」
ピッ…携帯を切ると、少女は2丁の自動小銃を構え、扉の影から辺りの様子を伺った。
「ひぃふぅみぃ…あ〜もうめんどい、数が多過ぎぃ〜!」
3名の捜査官が亞瑚の潜むシークレットルームを取り囲む。
ロニー「ロッカー解除、突入する」
エリック「敵は何名だ?」
ロジャー「それが…小柄な少女単独の犯行との事らしい」
エリック「馬鹿な…何て事だ…」
ロニー「行くぞ、突入する!」
ガァーーーッ…扉が開いて銃を構えた3名が次々に侵入した。
「チェストオ!!」
ズガガガガ… デスクの陰から姿を現した少女が両手に構えた自動小銃を乱射しながら突撃してきた!
「ぐわッ!」
ズガガガガ…銃弾を浴び、蜂の巣にされて射殺されてゆく捜査官たち。
「へへ〜ん、チョロ過ぎッ♪」
タタタ…通路に飛び出た少女は、広いオフィスに向けて逃走を始めた。
CTU内オフィスに紛れ込めば出口までもうすぐそこだ。
792†AKO†:2006/03/09(木) 03:59:48 ID:7agpNN+8
「キャハハハハ♪」
ズガガガガ…2丁の自動小銃を乱射しながら捜査官たちを撃ち殺ししてゆく少女。
カチッカチッ…
「いや〜ん、弾切れぇ?」
亞瑚の表情に焦りの影が色濃く滲み出る。
「犯人を取り囲んだぞ!見つけ次第に射殺しろ!!」
タタタ…狭い入り組んだ通路内を走る少女の前後を捜査官たちが次から次へと取り囲む、が。
捜査官たちの包囲網を、
「破亞アッ!!!」
ドドドンッ… 亞瑚の強烈な【発頸】により次々と吹き飛ばされてゆく捜査官たち。
「え〜い、何をやってる、ひるむな!撃ち殺せえッ!」
ズダダダダダ…出口で待ち伏せしていた捜査官たちの容赦ない一斉放射が小柄な少女に浴びせられた!
793†AKO†:2006/03/09(木) 04:02:23 ID:7agpNN+8

ズダダダ… 亞瑚の身に無数の銃弾が迫る。
「あそこだっ」
バッ…頭部を両腕でガードしつつ、机の陰に横っ飛びに転がり込む亞瑚。
キンキキン!!チュイィーン… 銃弾が金属音を立てて机に弾かれる。
(うぐ…痛ったぁ〜…)
亞瑚の小さな手足から真っ赤な血が流れる。
(…〜〜ッ!!)
激痛に身悶える亞瑚の潜んだ机の元へ、拳銃を構えジリジリと詰め寄るCTU捜査官たち。
ドッカァーーン…その時、遠くで仕掛けた爆弾の一個が爆発した。
「何だ!爆発か?」
一斉に慌てふためく捜査官たち。
ガッシャアアアーーー… 間伐入れずに大型のトラックが入り口の強化ガラスを突き破って突入してくる。
「今度は侵入者だ!発砲しろぉ!!」
バババババ…一斉に発砲する捜査官たちを次々と蹴散らして突っ込んでくるトラック。
「リーックス!!」
手負いの少女が腹の底から叫び声をあげる。
バリィン…粉々に砕け散るトラックのフロントガラス。低姿勢のまま懸命にハンドルを切るリックス。
ギャギャギャギャ…ドゴォォン!!!!
リックスのトラックはそのまま蛇行運転し、オフィスの壁に激突して止まった。
794†AKO†:2006/03/09(木) 04:03:04 ID:7agpNN+8
「逃げろぉ!」
大柄な男が運転席の窓を開けて少女に向かって怒鳴る、その顔は既に血だらけだ。
「俺はここでこいつらを食い止める、お前は早く逃げるんだぁあッ!!」
「く…こいつも早く射殺しろぉおおッ!!」
起き上がった捜査官の1人がそう叫んだ直後、
ドォーーーーーン!!!… 2個目の爆弾がすぐ近くで爆発した!
うわぁぁああ… 爆発の衝撃と振動の煽りを喰らってバタバタと倒れてゆく捜査官たち。
CTU本部はもはや壊滅状態だ。立ち込める噴煙、徐々に勢力を増してゆく火災。
「亞瑚ぉおお、早くCPUを持って逃げろぉおおッ!!!!」
野太い重低音がオフィス内に反響する。
トラックを飛び降り、負傷した捜査官たちを一人残らずマシンガンで撃ち殺してゆく手負いのリックス。
「うぉおおお!!!」
ズガガガガァァーー!!! …乱舞する銃弾、飛び散る鮮血、既にCTU捜査官たちは全滅…瀕死状態だ。
すぐにCIAが要請した武装特殊部隊が到着した。無線で司令部に確認を取る指揮官。プツ…ザァァーー…
795†AKO†:2006/03/09(木) 04:05:26 ID:7agpNN+8
プツ…ザァァーー…
「メーデー、メーデー、こちらCTU本部、至急火災の消火及びテロリストの潜滅、並びに事態の沈静化にあたります」
亞瑚はドサクサに紛れてCTU本部を飛び出し、脱出に成功。
取り残されたリックスが全身に銃弾を浴びながら、最後の気力を振り絞って、突入してきたCIA特殊部隊をマシンガンで蹴散らしてゆく。
バツンッ!!!… 遂にリックスの頭部を特殊部隊員の銃弾が撃ち抜いた。
意識を無くしながらも、マシンガンを撃ち続けながら倒れ込むリックス。
ドキュンッ!!!… 死んだリックスの銃弾がトラックの燃料部分を撃ち抜き着火した!
バガァァアアアアーーーーーーン!!!!!… CTU内部で爆発炎上するトラック、
ぎゃぁぁああ……襲いかかる爆発と熱風に巻き込まれて、多数の特殊部隊員たちが死んでゆく。
はッ!はッ!はッ!! …外の検閲所を走り抜ける途中、爆風の煽りを受けて吹き飛ばされる亞瑚。
「きゃあッ!」
796†AKO†:2006/03/09(木) 04:06:59 ID:7agpNN+8
はッ!はッ!はッ!! …外の検閲所を走り抜ける途中、爆風の煽りを受けて吹き飛ばされる亞瑚。
「きゃあッ!」
ドシャアーー… 乾いた地面にゴロゴロ転がる亞瑚のCPUがバキッと故障した。
「しまった!」
もう制御が効かない!3個目の爆弾がやがてタイマー通りに爆発した!!
ドッガガァァーーーーン!!!!! …ゴゴゴゴゴ…
3個目の爆弾の爆発により、CTU本部の支柱は完全に砕かれるように設置してあった。
つまり、3個目の爆発により…ビルの倒壊が始まる!!
ゴゴゴゴゴ…ドドドォォォォーーーーン… ビルが地響きを上げて崩れ落ちていく。

セキュリティーエリアもろとも完全に倒壊する巨大ビル。テロ対策機関、CTUの最後だった…。
797†AKO†:2006/03/09(木) 04:08:58 ID:7agpNN+8

「そこを動くな!」
草村に隠れて息を潜める亞瑚の周囲を、2人の特殊部隊員が包囲していた。
「…ぁう!」
時折走る突き刺すような痛みに身悶える少女。両腕と左脚に銃弾を撃ち込まれ、息も絶え絶えだ。
(はっ!はぁ…痛みで…動けない…)
「くぅ…〜ッ!」
地面に這いつくばった態勢で、亞瑚は呻き声をあげる。腕と脚から流れた血は、既に固まりかけている。
可愛い顔は土埃と涙に汚れてぐしゃぐしゃだ。
「構わん!見つけ次第に射殺しろ!」
特殊部隊員の怒鳴り声が徐々に近づいてくる…見つかるのは時間の問題だ。
(死んじゃう…誰か…お願い…助けて…!)
歯をガチガチと震わせて、少女は悲壮な表情を浮かべて泣きじゃくる。
サク…サク… 慎重に草を踏みしめる音がすぐそこまで近づいてくる!
(もう駄目…殺されちゃう…!)
亞瑚が死を覚悟した時だった。
798†AKO†:2006/03/09(木) 04:11:07 ID:7agpNN+8
「おい、お前ら…物騒だな…こんな草村で戦争ごっこかよ?」
馬鹿にするような若者の声が亞瑚の耳に聞こえてきた。
「何だ貴様、邪魔をするな!」
次に隊員の苛立った罵声が聞こえる。
「貴様だと?てめぇら、一体何様のつもりだよ、あ?」
若者の声が途端に怒りに満ちてゆく。
「部外者は他へ行けぇ!撃ち殺されたいのか!!」
「んだと?てめ、もっかい言ってみろ」
少女の耳に、人がもつれ合う音が聞こえる。
「そこをどけぇえ!!」
ガチンッ…隊員の1人が若者に拳銃を突きつけた。
直後…
「イヤッハァーーーーッ!!」
バキィッ!!! …誰かが叫びながら暴れ出した!
ザザザ… ドガッ!!! バキィッ!!! …ガスッ!!! ドサッ…
「動くな!本当に撃ち殺すぞぉお!」
「ィーーーーヤッはぁ〜〜〜〜!!!!!!」
バキィグシャアッ!!!!! … ドサッ… ザザザ…
「ざけてんじゃあねえぞコラぁあッ!!!!!!」
ボキボキィッ!!!!! …ぐわぁああああ…
少女は、そこまで聞いて、気を失った…。
799†AKO†:2006/03/09(木) 04:13:05 ID:7agpNN+8

【アリシア・クライン・オバール】
少女の意識が戻ってきた。
「う…ここどこ…?」
少女は、ベッドに仰向けになったまま、ゆっくりと辺りを見回した。
いつの間にか、彼女は病院の個室に寝かされていた。時刻はもう深夜、窓の外は真っ暗だ。
数本の点滴チューブが手足に繋がれている。点滴に溶けてる薬のせいか、不思議と痛みは感じなかった。
「ん〜…?」
スゥ…スゥ…ベッドのすぐ傍で微かな寝息が聞こえてくる。少女は、寝ぼけ眼を闇に凝らしてみた。
(あれぇ…誰だろ?)
シャツに皮のジャケットを羽織り、髪をムースで逆立てた男が腕組みして椅子の上に寝ていた。
(アタシ…確か爆発に巻き込まれて…)
亞瑚は、そこからの記憶を懸命に辿った。
(あ……草村で…この人が助けてくれたんだ…)
ぐぐ…亞瑚は何とか上体を起こそうとした。
「きゃっ!」
ズキン…すぐに、両腕と左脚に激痛が走り、少女は思わず悲鳴をあげた。
「ん…目、覚めたか…」
ギシ…少女の声を聞いて椅子から身を起こした男が、前屈みに、少女の小さな顔をジッと覗き込んだ。
「な…何よ」
800†AKO†:2006/03/09(木) 04:13:46 ID:7agpNN+8
ベッドに仰向けのまま男を見つめて、少女は照れ臭そうに呟いた。
「いや…何にも」
男は落ち着いた口調で、静かに答えた。
「君…名前は?」
亞瑚の胸がドキンと鳴る。彼女は有名なテロリスト、果たしてバレないだろうか。
「……アリシア。…アリシア・クライン・オバール」
少し迷った挙げ句、亞瑚は本当の名前を告げた。コードネームを答える程、彼女は馬鹿じゃなかった。
「う…何で、アタシ助けたりなんかしたのよ…?」
男の低い声は、まるで全てを見透かしているかの様に、淡々と落ち着いている。
「だって……心の中で叫んだろ?…助けてって」
「はぁ〜?…何ワケ分かんない事言っちゃってんのぉ?あんた、馬鹿じゃない?」
プッ、キャハハ…亞瑚は思わず甲高い笑い声を上げた。
801†AKO†:2006/03/09(木) 04:15:03 ID:7agpNN+8
「あっははは…やだ、お腹痛ぁ〜い」
「ははは…」
男もつられて笑った。
ひとしきり笑い終えると、少女は、大きな溜め息を吐いた。
「あんた、名前は?」「…んなもん、忘れちまった」
そう言って男は軽くおどけてみせた。
「ま、今んとこ、俺はお前の身元保証人だ」
「はぁ〜〜〜?」
「お前がERから病室に移送されるまでの間、お前の為に色々と面倒な手続きを全部済ませたのは俺だ。」
「あぅ…べ、別に助けてなんて頼んでないし…」
少女はぶっきらぼうに吐き捨てた。
「感謝してくれよ?」
少女は、初対面のこの男に、急速に魅了された。少女の胸の鼓動がドキドキと高鳴った。
「で、何。あんたがアタシの白馬の王子様ってワケ?」
瞳をキラキラと輝かせながら、からかう様な口調で少女は聞いてみた。
「あぁ…まぁそんなとこだ」
さり気なく少女を一瞥すると、ふっ、と笑って視線をそらした。
802†AKO†:2006/03/09(木) 04:18:28 ID:7agpNN+8

【爆破事件から翌日】
亞瑚の回復力は凄まじかった。ERから近くの病院に搬送されて、まだたったの1日。
1人でなんとか簡単な歩行が出来る程度には回復していた。
【病室にて】
茶髪の男が、ベッドに寝そべる少女といがみ合っていた。
ベッドに寝ながら、少女がずっと手鏡片手に化粧をやめようとしないので、茶髪は呆れていた。
「かぁ〜ッ、お前ぇな、いつまで眉毛書いてりゃ気が済むんだよ?」
茶髪がボリボリと頭を掻きむしった。
「放っといてよ。あんたにゃカンケーないだろッ!」
パリィン…茶髪に投げつけられた手鏡が床に落ちて割れる。反発心を露わに茶髪に突っかかる少女。
「オィオィ…何そんなにムキんなってんだよ?」
(くそっ、このジャジャ馬め…!)
温厚な茶髪も流石に困り果て、遂に懇願の眼差しを少女に向けた。
鬼の様な形相で茶髪をジッと睨みつけていた少女だったが、やがて寂し気に視線を落とした。
「アタシ…孤児だったんだ…」
やがて少女が自分の辛い生い立ちを語り始めた…。とある政府の機密研究機関から脱走して今に至る経緯など…
803†AKO†:2006/03/09(木) 04:19:39 ID:7agpNN+8

「で…柚羅とやらに引き取られ、テロリストになったってワケか…」
「悪気はなかったんだよ、でも、他に生きてく道もなかった」
「…」
茶髪はイスに座ったまま、両腕を組んで、黙って少女の話に耳を傾けた。
これまでの破壊活動で、たくさんの罪もない人々を殺めてきた少女…。
「どう、これで愛想ついた?最低でしょ、こんな女」
亞瑚は一気にまくし立てると、唇を尖らせて、ぷいっと顔を背けた。
「ふぅ…」
深く溜め息を吐くと、茶髪は黙って、少女の美しい金髪をサラリ…と優しく撫でつけた。
少女が、チラッと茶髪の手と顔を交互に見て、ムスっとしたまま視線を背けた。
「不自然なんだよね…」
「ん…どこが?」
「あんたさ…突然現れて、勝手にアタシ庇って、これからアタシの事どうしよってゆーのさ?」
意を決した亞瑚は複雑な表情をして、茶髪をキッと睨みつけた。
「な?ど、どうもしねえよ…」
ギクシャクする茶髪の態度を見た亞瑚は確信した。
804†AKO†:2006/03/09(木) 04:21:44 ID:7agpNN+8
「あんたさ…捜査官でしょ」
「んなこたどうだっていいだろおッ!!」
突然、茶髪が血相を変えて怒鳴ったので、少女は一瞬、ビクッと身震いした。
「…だって」
少女は負けじと茶髪を睨み返す。
「……だって…」
体を震わせる少女の目に大粒の涙が浮かんだ。
「心配すんな…俺は捜査官じゃねえ…」
茶髪の男は、ベッドに横たわる少女の頬にキスをした。
「安心しろ…お前を守ってやる」
「…」
少女はコクンと頷くと、黙って静かに目を閉じた。
スゥ…スゥ…やがて寝息を立て始める少女。まだかなり疲れが溜まっていたらしい。
(政府軍が絡んでやがるのか…チッ、厄介なヤマになりそうだな…)
茶髪の男は少女の無垢な寝顔を見ながら、ギュッと拳を握りしめた。
805†AKO†:2006/03/09(木) 04:24:22 ID:7agpNN+8
【その数時間後】

少女は寝たふりをしていた。
プルル…茶髪の携帯が鳴る。ピッ…
「はい、こちらN.J。」
「容疑者の身柄は確保したか?」
受話器からFBI部長刑事エリックの声がした。
「確保しました。現在、ロス郊外のセンチネル州立病院に移送しております。」
N.Jの冷静な声が続く。
「CTUワシントン支部から派兵されてきた部隊員が2名負傷しました…が。」
「そうか、良くやった。今から10分以内にこちらの刑事を3名向かわせる。速やかに身柄を引き渡せ。」
「は、かしこまりました。」
ピッ…N.Jが携帯を革ジャンのポッケに仕舞う。
スゥスゥ…寝息を立てつつ、亞瑚は内心、酷く動揺していた。
これから警視庁に身柄を拘束され、手痛い尋問が待っている…。その先には、冷たい牢獄の中。