>>800 俺もかなり無理あるかな、と思いながら書いたんで。
思い切って載せてみようよ。期待してます。
続き書きます。
朝食の時間が来た、飯を喰いながら、俺の心はリベンジに燃えていた。
『あのジジイ、人をはめやがって。俺を怒らせたこと後悔させてやる』
飯は不味かったが、怒りを燃やすエネルギーに変えるために喰いきった。満腹になると無性にタバコを吸いたくなったが、それは無理な相談だ。
ぐわータバコ吸いてー。俺が悶々としていると、鉄格子の前に看守が立っていた。
「28番、出ろ。運動だ」
運動?何だろう?ラジオ体操でもするのか?だが、左腕が吊られたこの状態で運動などできっこない。俺は不審に思いながら房を出た。
看守に先導される形で、留置所と上の階をつなぐ階段の踊り場にやってきた。そこには木箱の後ろにもう1人の看守が控えていた。
「お前の番号のタバコを取って中庭に行け」
俺は28と書かれた横にある二つの穴に突っ込まれたセブンスターを、2本とも引き抜き中庭に向かった。
『運動とはタバコのことだったのか。でも火はどうするんだろう?』
タバコを渇望していた俺はソッコーで中庭に向かった。中庭には看守と二人の男がいた。二人の男は無表情でタバコを吸っていた。
「火はこっちだ」
看守が俺に声を掛ける。看守に火を点けてもらい、俺は煙を肺の奥まで吸い込んだ。生き返った感じがした。
「運動」の後、ニコチンを注入できた所為か、少し気持ちが落ち着いた。落ち着いてリベンジの方法を考えていると、看守がやってきた。
「28番出ろ」
『…今度は何だ?』そんなことを考えながら房を出た。看守は階段を上り、俺はその後ろに従った。看守がドアの前で止まった。
「入れ」言われたとおりに、ドアを開き部屋の中に入った。室内には俺の私物が並べられ、過不足が無いかの確認が行われた。確認が終わると、俺はロビーに向かわされた。どうやら釈放らしい。
ロビーには増田が居た。俺の姿を認めると増田が口を開いた。
「本多、災難だったな。ちょっと時間貰うぜ、色々話したいことがあるんだ」
俺たちは連れ立って増田の車に乗り込んだ。増田はキャスターマイルドに火を点けると迫力のある笑顔で口を開いた。
いいね、こういう予想外の展開。
亮骨折の伏線、消化まだ?
>>803 サンクス。
>>804 最初に考えていた展開がクソだったので、今必死こいて考えてるところです。
続き書きます。
「その腕どうした?」車を浦和方面に走らせながら増田が言った。
「チャリンコのババアに引っ掛けられて、こけたとき折っちゃいました」
「お前、カルシウム足りないんじゃないか。牛乳とか骨ごと食える小魚とか食ったほうがいいぜ」
増田はなかなか本題を切り出さなかった。俺は思い切って増田に尋ねた。
「あの、増田さん話って何ですか?」
俺の言葉に増田は少し唇を歪めた。
「お前を、神山のところに貸し出すのは、夕べまでだったよな」
「はい」俺は頷いて言った。増田が言葉を続けた。
「色々調べたら、今回かなりでかい話のようだな。で、うちの組もこの話に乗りたいんだ」
「俺が組の代表になるんですか?それともこの話、降りろと?」
「どっちも不正解だ。お前は神山に貸し出したままにしておく。お前にはうちの代打ちのアシストをして欲しいんだ」
増田の言葉は俺の気持ちを萎えさせるのに十分なものだった。
その提案は、非常に腹黒いもので。神山から延長料金を吸い取った上に、土地を巻き上げる腹だとすぐに分かった。
「…神山さんが、俺を引き続き雇うかどうか分かりませんよ」
「大丈夫。今からお前以上の打ち手を捜すのは不可能だ。この勝負、きっちり仕事すれば、お前にもっといい仕事廻してやるよ」
「でも、うちの代打ちが参加するって分かったら。神山さんがうんって言うわけないですよ」
「うちがこの勝負に噛むってことは、ぎりぎりまで分からないようにする。心配するな」
車は南浦和の駅前まで来ていた。こんなことでは代打ちとして失格なんだろうが、増田の策略に納得できない気持ちで一杯だった。
俺は口を開き、増田に言った。
夜の楽しみの一つです。
応援してます。 ガン( ゚д゚)ガレ
>>807 応援ありがとう。
期待に応えられるように、頑張ります。
続き書きます。
「増田さん。即答はできません。少し考えさせてください」
俺がそう言うと、増田はタバコに火を点けながら言った。
「おいおい、悩む必要なんか無いだろ。こんな美味しい仕事、滅多に無いぜ」
「…確かに美味しい仕事だと思います。でも、考えさせてください」
「まぁいいだろう。明日神山たちと会うことになってる。お前の住処まで迎えに行くから、車の中で返事をしてくれ」
南浦和の駅から、俺の住処目指して車は進んでいった。マンションに到着すると、増田が言った。
「いい返事期待してるぜ」
マンションの中に入り、部屋に帰った。ドアを開けると、アニキが俺めがけて飛びついてきた。
「どうした?アニキ。俺がいなくて淋しかったのか?」
右手一本でアニキを抱き上げ、部屋の奥へ進んだ。アニキは甘えた声を出し、俺の顔を舐めまわしていた。
リビングでは、テレビの前で力尽きたように香が眠っていた。
「香…寝てるのか。なんか掛けないと風邪ひくな。アニキちょっと降りて」
アニキを下に降ろし、毛布を香に掛けてやった。香の寝顔に少しムラムラしたが、そのままそっとしておくことにして、アニキと存分に遊ぶことにした。
アニキと遊んでいるうちに、時間は1時を回っていた。「腹減ったな。アニキお前も腹減っただろ。今用意するからな」
俺は、ドライドッグフードに牛乳をぶっ掛けたモノを兄貴に与え、自分のために冷食のピラフを皿にあけレンジに突っ込んだ。
「アニキ、美味いか?ゆっくり食えよ」
アニキは旺盛な食欲で皿の中のえさを食っていた。それを眺め、和んでいると、香が起きてきた。
「亮ちゃんやっと帰ってきたんだ。毛布、亮ちゃんが掛けてくれたの?アリガト。今日は遅かったね、ごめんね途中で寝ちゃった」
「気にしなくていいよ。遅くなったのは、理由があってね」俺は事の顛末を話した。
変換ミス。
×兄貴
○アニキ
済みません…。
常居さんおつ。
作中に「」が多いのは意図してやってる事?
気に障ったらごめんね
812 :
( ´∀`)ノ7777さん:04/10/18 01:13:54 ID:RobzSbca
age
>>811 意図的にやってます。
別に気に障るようなことは書かれていないと思いますが。
続き書きます。
814 :
どざエモン:04/10/18 18:27:38 ID:Y0tTRgWa
毎日ありがとうございます。読んでいると学生時代雀荘で
バイトしていたときにヤ○ザがセットで打っていて
ティッシュボックスに万札つめてティッシュを引き出すように
金のやり取りしていたことを思い出します。
これからもがんばって下さい。
逮捕されたことを話すと、香は特に気にした様子も無く笑いながら言った。
「捕まっちゃったんだ。でも、逮捕されても仕方ない仕事してるんだから。気にしなくていいじゃん」
俺は香が慌てると思っていたが、そんな様子は全く無かった。俺は少し拍子抜けして言った。
「それもそうだな」
昼飯を食い終えてから、香がアニキの散歩にいくと言った。気晴らしのため俺も散歩に付き合うことにした。
近所の公園で、アニキは嬉しそうに走り回っていた。香や俺にじゃれ付きながら遊ぶアニキの姿を見て、心が洗われる思いだった。
ボーっとしながら小さな幸せを味わっていると、着メロが俺を現実に引き戻した。電話の相手は神山だった。
「もしもし」
「本多さん、神山です。さっきようやく釈放されました。夕べはあんなことになって申し訳ありませんでした」
「気にしなくていいよ。悪いのはあのジジイだ。神山さんも俺も被害者みたいなもんだから」
「ありがとうございます。ところで本多さん、増田さんには会われましたか?」
「あぁ、俺の身元引受人になってくれた。昼前まで一緒にいたよ」
「増田さんは、今回のことで何か言ってましたか?」
「神山さんが望むなら引き続き貸しておくって言ってた」
俺は、増田の腹黒い計画には触れずに、そう言った。受話器の向こうで神山がほっとした声で言った。
「そうですか、良かった。本多さん引き続きお願いします」
「神山さん、明日俺と増田さんと会う話は聞いてる?」
「そのことは兄から聞いています。でも、その前に増田さんの考えを知っておきたくて電話しました」
「それじゃぁ、明日。やるんだったら俺は全力を尽くすから」
そう言って、電話を切った。『…増田がはめようとしているのに…そこまで他人を信用できるなんて…』
俺は、手放しで俺たちを信頼する、神山を哀れに思った。「なんでそこまで他人を信用できるんだよ」今度は声に出してつぶやいた。
タバコを咥え火を点けた。ゆっくりと煙を吐きながら、「なんでだよ…」もう一度つぶやいた。
816 :
800:04/10/19 10:48:06 ID:/jnghlav
なんつーか意外な展開ですねえ、常居タン乙。
載せる勇気がないって言うか、
>>127なんだけどね、実は。
話の内容がスレ違いになりそうな気がしてならないのよね・・・
あとでさわりだけうpしようかしらね。
1.Prologue(旅立ち)
どこにでもあるような家庭の居間。家族でくつろいでいるようだ。男が少女とトランプ遊
びをしている。どうやら親娘のようだ。母親はみあたらない。手馴れたさばきでカードを
シャッフルし、娘の前に出す。娘はカードを全て受け取り、ぎこちない体裁でカードを
シャッフルし始めた。どうやら父親のマネをしたいようだ。少女は10歳くらいだろうか。
まだ膨らみもほとんどない胸の前で必死になってカードを切っているが、うまく下段から
上段へカードをすべらせることが出来ないようだ。それでも必死にやっている少女を父親
は優しいまなざしで静かに見つめていた。いつもであればすぐ父親にカードを返し、いつ
ものように華麗なカードさばきを見せてもらうのが少女の毎日の楽しみであった。
今日はいつもより長い時間カードが少女の手元にある。飽きてすぐに父親に返してしまう
カード達がいつまでたっても少女の手元で必死になってもがいている。少女の目は真剣そ
のものになっていた。
飽きたのであろうか、ふとシャッフルする手を止め首を上げた。視線の先には父親の顔が
ある。まなざしは先ほどのまま。そのまま視線を動かさずに、カードの1番上をめくって
床に置いた。スペードのジャック。そしてそのまま2枚目をめくって隣に置いた。カード
の中央に大きなスペードマークが描かれていた。
「リオはねえ、でぃーらーになるの!」
2.
少女の口から聞く初めての決意の言葉に父親は一瞬とまどった。娘の口からその単語が出
てくるとは想像もしてなかったからだ。Dealerという単語は彼にとって大きな意味があっ
たから。その忌まわしき単語を今目の前で娘が口にしている。
「リオ、ディーラーなんて言葉、どこで知ったんだい?」
「へへ、内緒だよ」
父親の顔がみるみるうちに青ざめていった。よほどのことがあるのかもしれない。リオは
そんな父親に対し驚いて言葉を付け加えた。
「あ、ウソウソ。あのね、リオはお母さんみたいにでぃーらーになりたい」
「・・・リオ、どこでそれを知ったんだ?お母さんがディーラーだったなんて」
根が正直なのだろう、リオはためらいもなく説明を始めた。真剣なまなざしはまだ途切れ
ていない。
「・・・お母さんの日記、読んだんだ。お母さんいなくなってもう2年くらいだっけ?い
なくなったお母さんの部屋でゆっくりするのがすごく落ち着くから、いつもそうしてた。
ベッドの下から日記を見つけたの。お母さんはカジノのディーラーだったんだね。わた
し、カジノって行ったことないからどんなトコだかさっぱりわからないケド」
「・・・」
「お母さんが突然いなくなったあの日のことわたしは覚えてる。お母さん、ものすごく苦
しそうな目をしてた。でも、精一杯のおめかしをして出かけていった。いつもより、すご
くすごくおめかししてた」
父親の表情を見据えたままリオは話を続けていた。
「お母さん、まだどこかにいると思う。だからわたし、お母さんを見つける」
>>814 そのような場面は、漫画でしか見たことありませんが。
実物を目の当たりにしたら、かなり引きますね。
>>816 待ってました。
カジノのカードゲームはポーカーとブラックジャックぐらいしか分からないけど。
続きが楽しみです。
続き書きます。
神山が俺に信頼を寄せる理由をあれこれ考えていた。だが、いくら考えても、納得のいく答えは出てこない。
ジャンヤのオーナーと客。神山と俺の関係は、それ以上でも以下でもない。
神山の店は、レートがレートなので結構きつい打ち手が多い。中には俺に勝るとも劣らない打ち手もいる。それでも俺に仕事を依頼してきた。どうして?
そこまで考えたとき、タバコの火がフィルターの近くまで燃やしていた。タバコを足元に落とし、もみ消しているとアニキが俺に向かって駆け寄ってきた。
「亮ちゃん、そろそろ帰ろう」
香が息を切らしながらアニキの後を追って、走ってきた。ケイタイを見ると5時近くになっていた。
家に帰り、夕食に出前を頼んだそばをすすりながら、香が言った。
「今度のお仕事どうなったの?」
「増田さんが、もうしばらく俺を貸しておいて、再勝負するってことになった」
「じゃぁ、勝ったら500万?」
「そういうことになるね」
「亮ちゃん落ち着いてて、なんか頼もしい。きっと勝つよね」
香の言葉に俺は曖昧に頷いた。香には落ち着いているように見えるのだろうが、俺の心は迷いに迷っていた。
『…増田の提案は、とても納得できるものじゃない、汚すぎる。でも、神山に尽くす義理も無い。だが、神山は俺を信じている。
できれば期待には応えてやりたい…こんなこと、まともな代打ちなら悩んだりしないんだろうな…』
「亮ちゃん、片手じゃ食べづらい?食べさせてあげようか?」
俺の動きが止まったのを見て、香がそう言った。「え、あっ。ちょっと考え事してて。大丈夫だよ」
俺はそう言ってそばをすすった。いくら考えても結論は出なかった。俺だけだったら、一匹狼でもどうにかやっていける。だが、今は香とアニキがいる。このことが俺を悩ませた。
ディーラーで、リオで、スロ板とくれば期待しまくりです!
がんがってください!
822 :
( ´∀`)ノ7777さん:04/10/20 01:46:10 ID:aa/gWPeI
新しいのキテル!楽しみにしてますよ!127=800タン鳥つけたら?
人間ってのは、いろいろな事を考える。
好きな女の子の事とか、エリオット・スミスの透明な歌声の事とか、ゴダールのカット割の事とか、そりゃもう何でも考える。
人間の脳は宇宙と例えた人もいたけれど、全くその通りだと思う。
それで、僕たちはいろんなことを考えるんだけど、いつも楽しい事やハッピィな事を考えてるってわけでもない。
そりゃ、楽しい事ばっかり考えていられるのならそうするんだけど、僕たちはなぜか悲しい事、苦しい事も考えてしまう。
うまくいかないんじゃないか、って、失敗する事ばっかり考えちゃう時も、ある。
その時はもう本当に苦しくて、いっそ消えてしまいたいと思うのだけれど、時間が経って、あらためてその事を考えてみると、
ああ、あの時は悩んでたなぁって、微笑んじゃったりする。それで、人間ってのはやっぱり悩んで悩んで成長するんだな、なんて
思ったりする。で、また悩む時がやってくる。繰り返し。
この話は、僕と、僕が好きだった女の子と、やっぱりその女の子の事が好きな、今はもういない僕の友達の話。
今はもう3人が揃う事は無いのだけれど、3人揃えば無敵だと思えた、10代の話。
僕が今ほど擦り切れてなくて、嘘をつくのもそれほど慣れていなかった時の話。
僕が12歳の頃、1991年、ニルヴァーナは後に世界にでっかい影響を残す事になる「ネヴァーマインド」を発表した。
多国籍軍はクウェートからの撤退を拒否したイラクに対し、空爆を開始した。
ルイス・フィーゴとルイ・コスタ率いるポルトガルがワールドユース選手権でブラジルをPKの末、4-2で下した。
僕たちは毎日テレビやなんかでその「世界のどっかで起こっているであろう出来事」を知っていたけれど、
それはどっか、現実じゃないみたいだった。
そんなことより、新学期にどっかのクラスに女の子の転校生が来るとか、誰かと誰かが付き合ってるとか、ボールペンをいやらしいことに
使って惨事になったとかそういうことのほうが僕らにとってはよほど現実的だった。
もちろん、ニルヴァーナは僕も大好きだったし、ルイ・コスタのファンでもあったのだけれど、別にそれがニルヴァーナやルイ・コスタ
じゃなくてもよかった。結果として、クールなロックンロールがあればよかったし、エキサイティングなプレイが見れればそれでよかったのだ。
僕たちにはやるべき事があった。
将来について考える、それだけが僕たちのやるべき事だった。
「このまま、3年生になって、どっかの塾かなんかに行って、そこそこの高校に入って、んでまた3年生になって、どっかの予備校か
なんかに行って、そこそこの大学に入ったり一浪したりして、んで4年生になって就職活動してどっかの会社に入って、何年かして
結婚したりなんかして、30歳位で親父になってどっかの郊外に30年ローンで家建てて定年まで働いて、当たり前のように病気になって
ああ俺は幸せだったなぁって死んでいくのは俺はイヤだ」
と、中学2年の夏、突然桜井冬樹は僕に言った。桜井冬樹というのは小学校の頃から僕と一緒につるむようになった苗字が桜なのに冬樹という
変わった名前をもつ、僕にとって唯一の親友だった。
僕たちは放課後いつものように帰り道にある大型レコードショップでぶらぶらとCDを物色したあと、となりにあるマクドナルドで
ぼんやりとハンバーガーを食べながら店内の女の子を眺めたりしていた。要するにやることがなかったのだ。
「なぁ、ヒロ、おまえは将来どうなるんだ?そうやって生きたいか?おれはイヤだ。俺は拒否する。あらゆる平凡を、だ。」
岡田博人というのが僕の名前でおそらくヒロトという名前の人間の80%はそう呼ばれる様に僕のあだ名はヒロだったが、まぁ名前の事はいい。
「お前ね、今俺たちがいるこの状況の、どこが平凡じゃないって言うんだよ?」と僕は冬樹の目も見ずに切り返した。
「そこなんだ」と、冬樹は言った。
「問題は今じゃない。これからどうするかだ。今俺たちは12歳の誰もがいてもおかしくない状況にある。で、ずうっとこのままっていうのは
俺は耐えられそうにない。じゃあ、どうすればいいか?」
まるでどっかの大学の教授みたいな言い方で冬樹は訊いてきた。
「平凡がイヤなら、とりあえず義務教育なんてのは放棄してどっかの発展途上国に地雷でも掃除しに行けばいい」と、僕は少し強く答えた。
「違うんだ、誰かのために生きるのはまっぴらだ。地雷なんか撤去したって喜ぶのは俺じゃない、俺は自分自身のために喜びたいんだよ」
キタキタキターーーー!!!
どれも続きが楽しみです。
その日は結局結論が出ないまま過ぎていった。夕べほとんど眠れなかった所為か、10時ごろに睡魔が襲ってきた。ベッドに入るとすぐに眠れた。
翌朝は7時ごろ目を覚まし、増田が迎えに来る午後3時近くまで悩んでいた。
「亮ちゃん、難しい顔。昨日の考え事の続き?」
香がアニキを抱きかかえながら心配そうに俺の顔を覗き込んだ。それをきっかけに俺は我に返った。
「そんなに難しい顔してる?」
香は頷きこう言った。
「うん、なんか今日、タバコのペースも早いし、ご飯もほとんど食べてないから。ワタシで良かったら相談に乗るよ」
その言葉に、いっそのこと香に打ち明けてしまおうかとも思ったが。それは神山と増田、両方を裏切るような気がしてはばかられた。
「心配かけてごめん。ちょっと仕事のことで考え事してたんだ。今日増田さんと会ったときに相談するから。香は心配しなくても大丈夫だよ」
俺は笑ってそう言った。その時インターホンが鳴った。
「本多さん、お迎えに上がりました」
相手はよく運転手をしている組員だった。俺は「すぐ下に行くよ」と答えて、香にウインクしながら「行ってきます」と声をかけた。香は投げキッスでウインクに応えた。
車内にはすでに増田が後部座席でくつろいでいた。組員が後ろのドアを開け、俺は増田の隣に腰を下ろした。
「本多、結論は出たか?」増田は笑顔で聞いてきた。その笑顔は、本人が意識しているのかどうかは分からないが威圧感があった。俺はプレッシャーを感じながら答えた。
「はい。増田さん、申し訳ありませんが今回は神山さんに協力します。組が金を取って俺を神山さんに貸している以上、今回は神山さんに付くのが筋だと思います」
増田が怒り出すだろうな、そう考えていたが、増田は冷静に言った。
「フン、筋は通っているな。お前の考え方、自分に酔ってるところがあるけど俺は嫌いじゃないぜ、
分かった。今回はうちの代打ちとガチンコでぶつかってきな」
増田の反応は予想外のものだった。「わがまま言って申し訳ありません」俺は増田に頭を下げた。
亮タン カコイイ !!
3.
「リオ・・・」
「これからディーラーの勉強いっぱいして、世界で1番のディーラーになるの。そしたら
お母さんにまた会えるような気がする」
「わかった。リオ、お前の気持ちはよくわかった。でも、今はダメだ」
真剣なまなざしで見つめるリオに向かってそういうのがやっとだった。
「リオ、今は普段の勉強に集中するんだ。普通の勉強も出来ない子はディーラーにはなれ
ないぞ。ちゃんと学校に行っていい子にしてる子だけがディーラーになれるんだ」
大きな手をリオの頭にのせ、くしゃくしゃにかき回した。リオは父親のこの愛情表現が大
好きだった。なでられた猫のように目を閉じて身をゆだねる。
「だからな、リオ。今はお母さんのことは忘れて普通の勉強をするんだ。大人になって、
それでもディーラーになることを諦めていなかったら、そのときはリオ、お前の好きにし
なさい。わかったね?」
「・・・うん・・・」
リオは顔いっぱいに不満げな表情を浮かべていたが。
>>816>>821 ありがd。常居タンが硬派でいってるので同じ路線もね、って思ってます。
いわゆる「萌え系」になっていくような気もしないでもありませんw
カジノ話はあくまでもオマケになりそうな悪寒。
>>822 ぶっちゃけ、続きまだ書いてませんwww自宅からうpできる環境がない
(ていうか正引き逆引きで蹴られてるorz)ので、うp頻度はかなり遅くな
ると思いまつ(´・ω・`)スマソ
なんかね、変に期待されると申し訳なくて・・・もすこし内容がかたまっ
て自信が出来たらコテ&鳥つけようかな、と。
>>828 ありがとう、頑張ります。
>>829 また臭いセリフ書いてしまいました。
続き書きます。
神山の店に入った時、部屋の中では神山と康が待っていた。
「神山、再戦の日取りは決まったか?」
開口一番、増田が神山に尋ねた。神山は冷静に答えた。
「はい、明後日の21時。場所は川越の前田屋という旅館に決まりました。増田さん、時間がありません本多さんを引き続き貸していただけますか?」
「ふーん、明後日か。いいぜ、本多を延長して貸しておく。ところで面子はどうなってる?また2対2とか3対1になるのか?」
「いえ、土地目当てに、2つの組が万田に参加することを要求し、万田も私たちも了承しました。その組が一人づつ代打ちを用意するようです」
神山の言葉に、顔色ひとつ変えずに増田は「そうか」とだけつぶやいた。俺は増田の腹芸にあきれるのを通り越して感心した。
その後、俺を貸し出す条件が話し合われた。今回は個人戦になった為、俺がトップを取り、賭けた金を得た場合追加料金が発生することになった。
「本多、頑張れよ。勝って追加料金発生させろよ」
増田が俺の肩に手を乗せて言った。俺は『このおっさんホントに芝居上手いな』と呆れつつ「頑張ります」と言った。
話し合いが終わったとき、俺は神山に聞きたかったことを尋ねた。
「神山さん。なんで俺にこの仕事依頼したの?麻雀の腕だけだったら俺とタメの人、ここの客にもいるのに」
俺の質問に、神山は少し考えてからこう答えた。
「本多さんの、負けてるときの打ち方が好きなんです」
「負けてるときの打ち方?」
「はい、腐らず熱くならず。冷静に事態を好転させようとする。そして必要なら、いくらでも大胆になれる。
それにお仕事柄、大きな場で打ちなれているから畏縮したり、変に気負うこともないでしょうから」
神山の賛美に、ケツが痒くなる思いだった。「期待に応えられるように頑張るよ」俺はその言葉を残して、増田とともに神山の店を辞した。
4.
7 Years Later(7年後・・・)
「リオ〜、ホント学校つまんないよね〜」
「そうだね〜。ホント眠くなるね」
はあ〜、学校は退屈の一言。いいかげん毎日毎日あんなに眠くなる授業ばかり受けてたら
頭がおかしくなっちゃう。隣の席にクリスが座ってなかったらあんな授業サボって近くの
公園でお昼寝でもしてるに違いないわ。
え?わたしが誰かって?
わたしは、リオ。どこにでもいる高校生の女の子(だと思うけど・・・)。この街で生まれ
てずっと暮らしてる。絵描きのお父さんと今は二人暮し。お母さんは・・・わたしが10歳
のときに家を出て行ったきり戻ってこなくなってしまった。お父さんはそのことを全然気
にしてないみたいだけど、何故かはわからない。お母さんがいなくなった後、わたしの心
の中にあるのは「ディーラー」という言葉だけ。わたしとお母さんを繋ぐのはそれしかな
いから。お父さんが気にしてないのには何かワケがあるに違いない。だからわたしは
「ディーラー」になってお母さんが何故いなくなったのかを確かめたい。それだけを胸に
この7年間を生きてきた。
なーんて、堅っ苦しいことはナシナシ。もちろんソレも大事だケド、今はクリスと仲良く
ランチ食べに行ったり、ショッピングしたり、時には学校の男の子のことについて話しを
してみたり。そんなことをして過ごしてるのが楽しいのよね。クリスはわたしよりちょっ
と背の低い金髪のかわいい子。太陽がとっても似合うわたしの一番大事なフレンド。でも、
クリスってキレると手がつけられないのよね・・・敵には回したくないかも。わたしには
教えてくれてないけど、実は既にボーイフレンドがいるとかいないとか。休みの日、あま
り遊んでくれないのよね。なんか「忙しいから、あとでっ!」とか言っちゃって。電話の
先からなんか銃の音やらすごい轟音が聞こえたりするのはわたしの気のせいなのかしら。
クリスに聞いてみても「な・い・しょ」とか言ってまともに取り合ってくれないし。
そんな楽しい高校生活、楽しい友人との時間も終わりを告げようとしていたのに気づいた
のは、数日後のこと・・・
神山の店を出て駐車場の近くまで歩いた、俺が「失礼します」といいかけたとき、増田が口を開いた。
「本多乗れよ、お前の家まで送るぜ。それとよ、今面白いこと思いついたんだ」
後部座席に乗り込み、増田はキャスターマイルドに火を点け、笑顔で言った。
「本多、今回の勝負俺と握らないか?うちの代表とお前で点数の多いほうが勝ち。50万ぐらいでどうだ?」
「増田さん、相手もわからないのに受けるほど、俺は間抜けじゃないですよ。組からは誰が出てくるんですか?」
握っても構わないが、相手による。例えば遠藤が相手なら苦戦は免れないだろうし。組で最強の佳代さんが出てくるようなら、玉砕覚悟で闘わないといけない。
「うちの代表は長塚だ。お前も一度はやってみたい相手だろ?」
長塚は、俺より2週間早くデビューした若手の代打ちで、周囲からは俺と遠藤そして長塚が若手の三羽烏と呼ばれている。
「…長塚が相手ですか…面白いですね。どっちが上か、一度大舞台でやってみたい相手ですね」
俺は増田にそう答えた。答えながら、俺は長塚の風貌を思い浮かべた。
長塚は180を越える長身で、プロレスラーのような体つきをしている。その外見からは大味な麻雀を打つような印象を与える。だが、実際は非常に冷静で緻密な麻雀を打つ。一筋縄ではいかない相手だ。
「決まりだな」
増田はそう言うと右手を差し出した。俺はその手を握りサシ馬は成立した。車は俺の住処に向かって走っていた。
住処で降ろしてもらった俺は、気合を入れなおし、この勝負の必勝を誓った。
再勝負でも俺が打つと決まった瞬間から、調整は始まっていた。
調整などというと、大げさに聞こえるかもしれないが、平常心でいつもどおりの生活を続けるだけだ。
バイニンの中には、酒や女を断つ者もいる様だが、俺は我慢しない。下手に欲求を抑えると、ストレスが溜まり心にゆとりを持てないからだ。
いつもと同じく、香と酒を呑み、馬鹿話で盛り上がる。馬鹿話はじゃれあいに変わり、お互いに気分が高まったところでヤル。欲求が満たされ、心にゆとりが生まれるのを感じ、二人同時に絶頂に達した。
一戦終えると、俺たちは枕を並べまた馬鹿話を始めた。30分ほど経過すると、香の反応が鈍くなり、やがて寝息を立て始めた。
香を起こさないように、慎重にベッドから降りて、冷蔵庫からビールを取り出した。右腕一本で缶を開け、のどを鳴らしビールを流し込んだ。
「かーっ。美味すぎ」
のどが渇いていたので、飲み下した瞬間に思わず声が出た。今の俺は、心のゆとりと良い意味での緊張感、このバランスが絶妙なものになっていて、気合も充分に入っていた。
時計が午前3時を指し示した頃、睡魔が襲ってきた。俺は慎重にベッドへもぐりこみそのまま眠った。
俺が目を覚ましたのは、正午だった。充分な睡眠を取って、心地よい目覚めだった。
この日俺は、部屋から一歩も出なかった。香と馬鹿話、そしてアニキと遊ぶことによってゆとりを持ち。報酬のことを考え、緊張感も注入できた。
この日は、午前4時ごろまで起きていて、午後2時30分まで寝ていた。あくびをしながらベッドから降りると、香がこう言った。
「亮ちゃんおはよー。今夜のお仕事きっと勝つよね」
香の表情は興奮していた。無理も無い。成功すれば500万の勝負だ、興奮しないほうがどうかしている。
「任せておけよ。今の俺は絶好調だぜ」
俺も興奮を抑えられずに、顔を赤らめていた。
838 :
( ´∀`)ノ7777さん:04/10/24 09:52:52 ID:qw6ihMzW
さ 拙 / ,、r'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`';,、 ,r';;r" _ノ
く 者 L_ /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ ,';;/ ) お 隣
ら //;;/´ `' 、;;;;;;;;,,l;;' /ヽ 主 ど
ん. /.,';/ ヽ;;;;,l;L_ .,,、,--ュ、 ';;;;;;;;;i と お
ぼ l |;|┌--‐フ ┌----、、 |;ヾr''‐ヽ, ,、ィ'r-‐''''''‐ヽ ';;;;;;く し
i |l ~~__´ 、 ``'__''''┘ |;;;;;l rO:、; ´ ィ○ヽ 'i;;;;;厶,
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人_,、ノL_,iノ! ', :i゙''''''''''`l' ` _人__人ノ_ヽ ヾ゙゙゙゙ニニ'\ ,' ト、,
/ ヽ. L__」 「 止 笑 L_ ヽ〈 i| Vi゙、
ハ ワ {. ヽ. -、、、、 ' ノ ま い 了゙, ,ヽ===-'゙ ,' , // ヽ
ハ ハ ヽ. ハ ) ら が | ',.' ,  ̄ , ' ノ /./ ヽ,
ハ ハ > /|ヽヽ、___,,,,、 'く ん > ヽ.  ̄´ / ,、 ' / / \
ハ ハ / ノ. | ヽ フ / ノ:lゝt-,-‐''" / ,.ィ゙ /
神山が迎えに来たのは、19時ちょうどだった。車に乗り込むと、神山が口を開いた。
「本多さん、今回は本多さんに全てを任せます」
「ああ、ブタバコに放り込まれて、逆に気合がみなぎってきた。神山さん、大船に乗ったつもりで安心していいよ」
神山は「頼りにしてます」と言い、車は川越に向かって順調に進んでいた。
前田屋には20時前に到着した。応対に出てきた仲居に神山が名乗った。「お連れ様が杉の間でお待ちです」仲居に先導され俺たちは「杉の間」に入室した。
部屋の中には、康が待っていた。俺の姿を認め、康が近づいてきた。
「本多さん、この前の勝負で本田さんの実力は分かりました。今夜もあの調子でお願いします」
俺は康の肩に手を置いて、こう言った。
「任せてください。あの日以上に気合が入っているんで安心してください」
俺の言葉に、康は安心したようで、何度も「お願いします」と言い続けた。
「杉の間」でお茶を飲んだり、菓子を食いながらまったりと開始時間を待っていた。康が買ってきた芋羊羹を食っていると、部屋の電話が鳴った。
神山がその電話に出ると、「はい。分かりました」と答え、受話器を置いた。
「本多さん、全員そろったようです。場所は萩の間。行きましょう」
俺たちは部屋を出て、神山兄弟を先頭に、「萩の間」へ向かった。
(*´д`*)ハァハァ 楽しみデス
>>840 期待に沿えるように頑張ります。
続き書きます。
「萩の間」には、人相の悪い連中が集合していた。長塚のほうに目をやると、そばに神山と面識の無い児玉という幹部が立っていた。
神山と面識の無い児玉を寄越したということは、うちの組がこの勝負に噛んでいることを、神山に悟らせないためだろう。
俺はすぐに二人から視線をはずし、タバコに火を点けた。
「小僧、また貴様か」
はずした視線の先には、万田が会田、岡部、美人秘書といった連中に取り囲まれ座っていた。
「ジジイ、この前はよくもはめてくれたな。たっぷりとお礼をさせてもらうぜ」
俺の言葉に、万田は醜い顔をさらに醜くゆがめ、こう言った。
「今回は岡部が打つ。貴様に地獄を見せてやる」
俺はジジイの言葉を聞いて、こう言い返した。
「ああ、そうかい。今回はサツは呼べない。貴様に地獄を見せてやる」
俺の言葉にジジイは顔を真っ赤にした。いい年こいて単純なジジイだ。からかうと本当に面白い。
最後の集団は見覚えの無い顔が並んでいた。こいつらが、勝負を申し込んできたもうひとつの組の連中なのだろう。
その中に、不気味な雰囲気を漂わせた25,6の女がいた。『この女が代打ちなのか?だとしたらかなり打てる要注意だ』
「さてと、始めようぜ」
児玉が長塚を促し、長塚が卓に近づき、そのゴツイ手の中で4枚の風牌をかき回した。
俺と岡部そして女が裏になった風牌に手を伸ばした。女が東を引き、無言で着席した。西を引いた俺が対面に座り、岡部が女の上家に腰掛けた。
長塚が席に座ると、女がサイボタンに触れた。サイコロは5,6俺の起家だ。俺は起家マークをセットして、サイボタンに手を伸ばした。
5.
「きゃはは、そうなのよ〜」
「そうなの?リオ、あったまわる〜」
例によって例のごとく悪友(とでも言うべき)リオとクリスの学校からの帰り道。それは突
然の切り出しだった。
「でもさあ、もうすぐ高校ともお別れよね。なんかやっぱり長いようで短かったね」
「う、うん。そうだね、クリス。なんかはやかったよね」
「あたしたち、いつまでも友達よね。あたしがどんな人間だったとしても、あたしと友達
でいてくれる?」
「え?どういうこと?いつまでも友達だけど・・・」
突然のクリスの問いかけに言葉を詰まらせたリオ。
「どうしたの?クリス。突然そんなこと言うなんて・・・らしくないじゃない」
「う、ううん。ちょっと、ね」
「クリス、わたし達何も隠し事しないって誓い合ったんじゃないの?なんでそんなに中途
半端なこと言うの?」
「うん・・・ごめん、リオ。実は・・・」
当人達はまったく気づいていなかったが、今まで晴天だった空はいつのまにかどす黒く、
雨雲に変わっていた。雨が降るのは時間の問題なようだった。
内容がない上にどこまで書いたか分からなくなる(´・ω・`)
更新遅くなってすんまそん。っていうか挫折しそうだよママン・・・
>常居殿
わしは何も言わずとも毎日楽しみに見ておるからのぅ。
がんばってくれたまえ。
>>843 ありがとう、頑張ります。
>>846 期待に応えられるように頑張ります。
続き書きます。
サイの出した目は4ゾロ。長塚の山から切り出された。配牌はこんな感じだった。
四五六八八BDF239北□□ ドラ二萬
『白を鳴ければ絶好の形だが…』
この面子が、簡単に字牌を切ってくるとは思えない。苦戦を予感しながら9ソーを切った。
予想通り字牌が高い展開になった。半チャン5回の長くない勝負だ。この展開は充分予想できた。
5巡目、俺は1ソーを持ってきて、鳴かれることを覚悟しながら北を切った。
字牌を切ったことで、一瞬場の空気が重くなった。だが、誰も動かず、岡部が牌山に手を伸ばした。
俺の北切りをきっかけに、他の3人も動き始めた。俺の手が早いと読んでの行動だろうが、字牌が切り出され始めた。
7巡目、岡部が小考して白を切った。俺は間髪をいれずそれを喰った。
「ポン!」
俺の鳴きで場に緊張感が走る。手の高低にかかわらず、今回のような勝負では先制打が重要だ。俺は鳴いたことで一歩リードできたと感じた。
7ピンを切ってカン4ピンの聴牌。岡部が鋭い目つきで牌山に手を伸ばした。
「…失礼…」
岡部はまた小考して7ピンを切った。恐らく廻し打ちだろう。動きは無く、女が牌山に手を伸ばす。
「…リーチ」
女が手から一萬を出し曲げた。ここは俺が和りを目指し、他の3人がそれを阻止する展開になる、と予想していた俺は意外な感じがした。
『どういうつもりだ?確かに俺の手は安い。だが、まだ真正面から向かってくる状況じゃないだろう。和れる確信でもあるのか?』
長塚が降り気味に北を切った。女は動かない。俺は『4ピン持ってこい』と祈るような気持ちで牌山に手を伸ばした。
わくわく
盲牌した瞬間、それが4ピンであることが分かった。右腕一本なので華麗とはいえない動作で牌を倒す。
「ツモ、500オール」
小さいが先制できたことにほっとしながら、女をチラッと見た。彼女は無表情で牌を崩し、それを流し込んでいた。
『惜しいな、よく見ると美形なのに。あの無表情は綺麗な分、不気味さをかもし出すな』
などとくだらないことを考えながら、ツミ棒を出し、サイボタンに触れた。
サイコロが1と6を上にして止まった。対面に座る女の山から切り出す。初っ端は連荘を重視した打ち方だったが、一本場はある程度の手を狙いたい。
四五六八@CD(赤)E55東西北中 ドラ1ピン
楽しみな手になりそうな配牌だ。鳴かれても構わないと考えながら北を切り出した。
北に喰いつくものは無く、場は静かに進んだ。8巡目でこんな手に育った。
四五六七八@CD(赤)E4556
言うまでも無くドラを頭に、高め三色となるのが最高だが、そう都合よく行くとは思えない。それよりも三六九萬を先に引いて、つまらない手になる可能性のほうが高い。
俺がこの手をどのように持っていくか、と考えていたとき、長塚の切った發に岡部が喰いついた。
「ポン」
岡部が動いたことで流れが変わった。割と順調に来ていた俺の手が伸びなくなった。
ツモ切りを繰り返し、流れてしまった。岡部の一人聴牌。69ソー待ちの發のみ。俺は場の空気が、非常に重たく感じられ、軽い疲労感を覚えた。
東二局、女が5巡目で岡部からクイタン赤1を直撃。ソッコーを決めて岡部の親を流した。
和って親番を持ってきた女は、相変わらず無表情のままサイボタンに触れた。サイコロは1と4、女は流れるような手つきでドラをめくり配牌を取っていった。
俺の配牌はあまり魅力的なものではなかった。
二六九@DG599東西西中 ドラ1ピン
『…チートイかトイトイ。どっちにしても育てるのに苦労しそうだな…』
第1ツモは九萬。とりあえず一歩前進。無難に8ピンから切り出した。
俺はこの時、他の3人に大物手が入らないことだけを祈っていた。
ほとんど点棒が動いていないこの状況で大物手を成就されると、そのまま流れを掴まれてしまう可能性が大きい。ここは凌ぐことが重要だ。
廻しながら打ち進めて9巡目、3人に動きは無く、聴牌の気配も無い。廻しているうちに俺の手が妙にまとまってきた。
六九九@D99東西西□中中
どうやらこの局が、一回戦のターニングポイントになりそうだ。俺は追い風が吹いているのを期待しつつ牌山に手を伸ばした。
6.
山の天気のように、いきなり雨が降ってきた。近くを歩いていた人波が一斉に動きを早め、
あるものは店の中へ、あるものはカバンを頭上にかかげながら雨に対抗している。2人は
とりあえず手身近な店の軒下に立っていた。ちょうどその店は休みだったようで、ぴっち
りとシャッターが閉まっている。立ち話をするには十分な空間だった。その間にも人の波
はエサを見つけた蟻のようにせわしなく動きつづけているようにみえる。ただ、2人の目
にはまったくその光景は入っていないようであったが。
「怒らないで聞いて。リオ、実はあたし、これでリオとお別れしなきゃならない」
「・・・どうしたの?突然」
リオはそういうのが精一杯だった。使い古された疑問系のセリフ。
「リオとはもしかすると二度と会えないかもしれない。そんな遠いところに行かなければ
ならなくなったの」
2人は顔を見合わせることもなく、ただただ降る雨を見つめながら話を続ける。
「ごめん、ホントに・・・理由は話せない。もしリオと再び出会えたとしても・・・」
「出会えたとしても?」
「その時は、リオの敵になって現れているかもしれない!それでもリオ、あたしのこと友
達でいてくれる?」
当然のことながら、リオにはクリスの言っていることがまったく理解できていない。クリ
スがどこかに行ってしまうのは百歩譲って理解できる。しかし、何故次に会うときは敵に
なっているのか・・・リオはこのとき初めてクリスが泣いているのを見た。いつも明るく
太陽のような少女だったクリスが泣いている。まるで外で降る雨と連動しているかのよう
に。今降っている雨はクリスの涙なのだろうか。とめどもなく降る雨とクリスの涙。
「なんでクリスがそんなこと言うのかわたしには分からないけど、わたしはずっとクリス
の友達よ。二度と会えないからって、敵になったってわたしはクリスの友達よ」