>>991 予期しないハズレだったのか
近畿地方で予報・解説に携わっている気象技術者には、前日の夕方の時点で「イヤな雰囲気」を感じていた人も少なくないと思います。私もそのひとりでした。
本州南岸を前線が東へ進むパターンで、同じように気温が上がらず、痛い目を見たことが過去に何度もあるからです。
予報の基礎となるスーパーコンピュータのシミュレーションでは「南寄りの風が吹き込む→気温も上がる」と示されていましたが、
実際には「山地に阻まれるなどして、予想よりも南風が吹かない→気温はあまり上がらない」という展開で、予想気温が大きく外れるという経験をしている技術者も多いのです。いつも必ずしもそうなるのではありませんが、
そうしたハズレを苦い経験として記憶していることも多いわけです。
つまり、
◆ 現時点の可能性として、最も高いのは
「南寄りの風が吹いて、日中、気温が12〜14℃くらいまで上がる」というシナリオ。
◆ 可能性のひとつとして、
「南寄りの風があまり吹かず、あるいは、吹くのが遅く、
日中はあまり気温が上がらず9〜10℃くらいに留まる」というシナリオもあり得る。
という、大きく2つの展開(シナリオ)を頭に浮かべていた予報者・解説者も少なくなかったのではないでしょうか。
ただ、ここでひとつ問題が出てきます。
こうした状況を、「天気予報」としてはどう発表するのか。
気象台や民間気象会社が発表する天気予報では、示される予想気温の値は、基本的には「ひとつ」なのです。
こうした2つの展開があり得る際にも、どちらかひとつだけ示す「ズバリ」予報になってしまう根本的な危うさがあるのです。結論である数字を見ただけでは、どの程度の信憑性・自信度があるのか、
「ほぼ確実に14℃」なのか、「可能性は最も高いが、そこまで上がらない可能性も多分にある14℃」なのか、分かりません。
今回も、最も可能性の高い「12〜14℃」が予報として出され、この数字を見ただけでは「暖かくなるんだ」と断定的に思ってしまった方が多かったのかも、と推察されます。