・宇宙空間
・ゴラスの周回軌道でその強大な重力に翻弄されるカプセル型観測ロケット。
・観測モニターから伺われる、表面に爆流渦巻くゴラスの激しいカット・バック。
・その、あまりにも物凄いゴラスの様子に遂に気絶するパイロット・金井(久保明)。
・不気味な雰囲気を盛り立てて疾走する石井歓の音楽。
・母船・おおとり号から必死に交信を試みる副艇長(佐原健二)。
「カプセル1号! カプセル1号! ・・・・金井! レバーを引くんだっ!!」
・南極本部推進力機関センター
(アナウンス)
―(120秒前!)
真田技師「ゴラスの軌道を変えることは不可能という報告が鳳号から入ったそうです」
フーバーマン博士「Fate of the Earth depends on what we do it now........
(地球の運命は、かかってこの南極計画にある!)」
(テレビ放送アナウンサー)
――すでに秒読みが始まっております。
推力660億メガトンのジェットパイプが一斉に火柱を上げると共に
果たして地球が動き始めるかどうか
また、その加速度はどうか
(アナウンス)
―(60秒前!)
(テレビ放送アナウンサー)
―地球の運命をかけ、人類の希望をつなぐ一瞬は刻々に迫っています
・・・・・
・・・・・
全世界の人々が 月や火星に派遣されてる人々も ゴラス観測から
帰りつつある宇宙船の乗組員も 祈りを込めてこの秒を刻む音に
耳を傾けているでしょう
―(20秒前!)
―重水素 冷却状態異常なし!
―中性子 加速開始!
―暖速剤 異常なし!
―臨界量 構成!
―10秒前!9,8,7,6,5,4,3,2,1、ZERO、ファイヤー!
・スイッチを入れるフーバーマン博士
・制御パネルがいっせいにランプ点灯
・いっせいにロケット噴射を始めるジェットパイプ
・発光する南極大陸と宇宙ステーション
・宇宙ステーション
――こちら重力圏外観測本部
成功です
加速度1.10×10のマイナス6乗Gで地球は動き出しました
・南極本部
(歓声)
・南極本部報道席
――大成功! 大成功です
南極計画の第一歩は大成功です
・力強くロケット噴射を続けるジェット・パイプ群
(俯瞰→TV画面)
・園田家居間
(アナウンサーの声)(・・・・人類は自らの意思と力で地球を動かしているのです!)
――うわぁ!動いた動いた!
・園田邸での田沢博士と智子
―僕は万に一つの不幸を恐れているんですよ。
もし機械の一部に故障が起きたって人類は滅亡するかもしれないんですよ。
やっ、それを思うと僕は科学者として・・・
―いや。先生がメソメソなさるなんて。
これ以上のことは誰がやったってできやしないわ。
たとえこのまま地球が消滅しても、人類が滅亡しても
先生方に感謝しますわ。
世界中の人が。
―ありがとう。
・宇宙ステーション内のおおとり号乗員
(アナウンス)
―全宇宙ステーション並びに宇宙艇へ
こちら地球国連ゴラス対策委員会指令205号
直ちに所属宇宙港へ帰投せよ
ゴラスは冥王星軌道を越え太陽系に侵入
あと45日で地球に到達します
終わり
―行こう
―では
・南極基地
・点検中の真田技師と米人助手
―On your order.(異常なし)
―うん。あと45日だ。絶対に故障は許されない。
(地響き)
―あ、地震だ! うぁ!
(ジェットパイプ基幹プラントを破壊する怪獣マグマ――真田技師と助手・・・殉職)
・南極基地推進力機関センター
田沢「我々が心配したように46時間の誤差は取り返しようもありません」
(ブザー音)
― こちら昭和基地海流観測隊 23:00(ふたさんまるまる)現在 安全水位突破10メートル
田沢「非常警報発令」
(サイレン)
・南極基地報道席
アナウンサー「こちらは南極基地推進力機関センターであります。
東京時間23時 非常警報が発っせられました。
ただ今からラジオ・テレビのスイッチを切らないようにお願い致します。
ただ今からラジオ・テレビのスイッチを切らないようにお願い致します。」
(無人化した都市部)
(闇夜に満月大に真紅に輝くゴラス)
(潮力の変動による気圧変化で激しくなってくる風)
(山間部に避難するバス、自動車)
・山間部避難地帯
― B地区の方はこちらへお集まり下さーい!
(水平線の彼方、ゴラスに吸い寄せられていく月―地表から)
(ゴラスと衝突する月―宇宙空間から)
(ゴラス表面の大爆発映像―望遠鏡の視点から)
・南極基地推進力機関センター
(望遠鏡からジェットパイプ制御クルー席に振り向く田沢博士)
田沢「推進速度」
米人技師「Ninety three meter per second, having we are a control. (秒速93メートル 異常なし)」
田沢「良し」
・南極基地報道席
(アナウンサー)
「海水の移動に伴う高潮がすでに始まっております。
中部太平洋、日本海、支那海では相当時間継続する見込みであります。」
・海岸沿いの鉄道に押し寄せて来る津波
・勝鬨橋近辺を荒れ狂う津波
・有楽町駅近辺に流れ込んでくる濁流と稲妻
・オフィス街に流れ込んでくる濁流
・さらに水没の度を深める勝鬨橋近辺
・堤防を越え、船など共にこちらに向かってくる津波
・市街地を押し流していく津波
・オフィス街に流れ込んでくる濁流
・勝鬨橋を押し流す勢いで海から流れ込む津波と空は激しい稲妻―彼方に東京タワー
・寺社に押し寄せる津波―奈良・京都近辺
(この間、セリフもなく音楽と津波・稲妻の効果音のみで、圧倒的な描写力の画像の積み重ねで
本編を支え続ける円谷特撮)
・園田家疎開先の別荘―激しい稲妻音と強風
園田博士「速男、歩き回っちゃいかん。じっとしてるんだ」
速男「大丈夫だよ!」
・雷鳴―地滑りが起きる富士山麓宇宙港のシーン
速男「あ!今度は武州山の北側が!」
・山崩れを起こす武州山
・園田家別荘で不思議そうな顔をしている記憶喪失の金井
―歩き回る途中でラジオを蹴飛ばし、スイッチが入る
(ラジオ放送)
―再び南極より実況をお送りいたします・・・
滝子、金井に組み付く
滝子「金井さん、だめよだめよ」
滝子と智子に押さえつけられる金井
(ラジオ放送)
―怪獣マグマの出現により失われた72時間は噴射方式の改善により・・・
園田「静かに・・・静かに寝かしなさい。水を持ってきて!水をはやく!」
(ラジオ放送)
―その36%を取り返し、損失を46時間に縮めております。では、マイクを推進力センターに切り替えます・・・」
智子「金井さん!」
縁側から入ってくる速男、テレビのスイッチを入れる。
(アナウンサー)
―こちらは、南極本部であります。
・南極基地報道席
(アナウンサー)
「ジェットパイプは押し寄せる海水の中に、ますますその火勢を強めております!」
・ジェットパイプの噴射炎をバックに推進力機関センター。 押し寄せてくる津波。
・ジェットパイプ制御ルーム
田沢「Mag, Check computer with you. (計算機を見てくれ)」
Mag 「Yes, right away(はい)」
・推進力機関センターにさらに押し寄せる高波―背後に力強く噴射を続けるジェットパイプ群
・望遠鏡の視点―迫り来るゴラス―時計の秒針の音
・望遠鏡から顔を上げ、ヘッドホンをはずす田沢博士
ギブソン博士「Two minuites ago.(あと2分!!)」
・迫り来るゴラス
・噴射を続けるジェットパイプ群
(アナウンサー)
―いよいよ最後の瞬間が近づきつつあります。あと2分、あと2分でゴラスが地球に最も近づく瞬間が参ります。
・テレビ画面のゴラス―アップとともにテレビの枠が周囲に移動、ゴラスが全画面拡大―食い入るように見つめる金井
滝子、智子「金井さん」 園田「金井君」
・ゴラス表面の爆発映像ー脂汗を流して見つめる金井―激しいカットバック―宇宙空間でカプセルに乗った時の記憶映像―フェードアウト
滝子(金井さーん)(金井さん)(金井さん!)「金井さん!金井さん!」
・気がつく金井
滝子「気がついた」
金井「君か・・・」
滝子「あたしが誰だかわかるの?」
・深くうなずく金井―周囲を見渡してから、険しい表情
金井「おおとり号は? ゴラスはどうなりました?」
園田「今、地球は動いとる」
・テレビをさす園田。石井歓の力強い音楽が開始。
・移動していく地球
・迫り来るゴラス
・秒針
・見つめる田沢、ギブソン、フーバーマン博士達
・秒針
・逃げる地球
・噴射を続けるジェットパイプ群
・発光する南極大陸とともに逃げる地球
・田沢博士アップ
・秒針残り時間数秒に近づく
・宇宙空間から――ゴラスの影に隠れる、逃げてゆく地球
・ゴラス通過―!
・時計の秒針、ゼロを通過
・観測モニターを急いで覗き込む田沢博士
・去ってゆくゴラス
・音楽フェードアウト・・・
・汗まみれの顔を望遠鏡から上げる田沢博士
・周囲の機械音がフェードイン
・モニターに額を預けてどっと疲れる田沢博士、やがて振り向く
ギブソン「・・・・We did it ? (成功?)」
田沢「・・・・WE DID IT ! (大成功だ!)」
・石井歓の勇壮な音楽開始、大歓声に包まれる南極基地
(おめでとうございます!)(おめでとうございます!)(Congratulation!)
「万歳ー!万歳ー!万歳ー!」南極のスタッフ総員で割れんばかりの拍手と歓声
(アナウンサー)
―全世界の皆さん! 南極計画は完全に成功しました!
ただ今地球は危機を脱しました!
我々の科学が・・・・・・!
人類の科学が、地球を救ったのであります!!
妖星ゴラスはこの瞬間から地球を離れつつあります!
・園田家疎開先別荘
園田「万歳ー!」
・縁側を開けて出てくる速男
速男「風もおさまったぞ」
園田「おお!」
・山間部避難区域
(万歳ー)
(B地区の皆さーん、こちらから出ますよ)
(ばんざーい)(万歳)
・園田家疎開先別荘
園田「智子、これは早速、南極の田沢さんに電話しなくちゃいかんな」
智子「はい ? 」
・南極本部推進力機関センター
田沢「第1号より10号まで、消化準備」
ギブソン「Now we phase are biggest plan . (仕事はこれからだ)
We must put Earth that half original course, (地球を元の軌道に戻さないと―)
Otherwise, we can't tell what my'd happen next....(大変な事になる)」
田沢「しかし推力機関は南極より北極の方が設置が厄介なんだぜ・・・・足もとぁ海だからな」
ギブソン「But we must do it.(然し、やらなくては・・・・)」
田沢「うん・・・やらなくちゃ」
・東京タワー
(ラジオ放送)
―ここ東京の空にも、平和の光がよみがえりつつあります。
・展望台のエレベーターが開き、入ってくる智子、滝子、金井、速男
(ラジオ放送)
―悪夢の高潮が引くにつれ 水底に没していた関東平野も再びその姿を現し始めました
・水面に没した東京―ビルの間の海水の上を材木などがゆっくり流れてゆく
滝子「うわぁ わが東京は全滅ね」
速男「また新しい東京を造ればいいさ」
智子「簡単に言うわねぇ」
金井「そうだよ。さっき南極から田沢さんも言ってたろ。
人類が残っている限り、無限の可能性があるんだ。
今度造る東京は、きちんと都市計画を立てて―」
・一面に水没し、数え切れない位のビルの頭が海面から出ている東京、大阪―彼方には水平線が見える荘重なシーン
(ニュース)
―ただ今から 国連科学委員会のメッセージをお送りします
皆さん 我々は勝ちました
・去りゆくゴラス
―妖星ゴラスはすでに太陽系から離れようとしております
我々は 全人類の平和への願いと
協力によって勝ち得た この勝利を
永遠のものにしようではありませんか――
・南極の発光が消える地球―宇宙空間から
― 糸冬 ―