光つかんだ上村 CBC賞(G3)
サマースプリントシリーズの前哨戦「第44回CBC賞」(G3、芝千二百メートル)は15日、中京競馬場で行われ、上村洋行騎手(34)=フリー=
騎乗の単勝4番人気スリープレスナイトが2番手追走から鮮やかに抜け出し、初の重賞タイトルを獲得した。勝ちタイムは1分8秒0。
2着は11/4馬身差で2番人気スピニングノアール。
1番人気のトウショウカレッジは9着。
東京競馬の「第25回エプソムカップ」(G3、芝千八百メートル)は、4番人気のサンライズマックスが1分45秒9のタイムで快勝。
騎乗した横山典は、JRA重賞通算100勝を達成した。
明けない夜はない。そう信じて扉をたたき続けた長い日々。
重賞という希望が、手のひらからこぼれ落ちる度に、空を見上げてきた。約9年8カ月。記憶さえおぼろげとなる時を乗り越え、ついに上村が光をつかんだ。
「突き放してくれると思ったので、あとは必死でゴールまで追いました。
ずっと遠ざかっていたので、とてもうれしいです」。
ラスト1ハロン。
スリープレスナイトを先頭に導くと、そのまま後続の影を封じ込めた。
ロイヤルスズカで98年10月のスワンSを制して以後、さまよい続けた迷路(その間、重賞2着6回)。その闇の中で上村は、騎手人生の危機と遭遇する。
右目の違和感を覚えたのは、03年秋のこと。
視界に黒い点の映る飛蚊(ひぶん)症が進行。
次第に視力の低下を招き、入院生活を強いられることになる。
失明の恐怖と向き合いながらの手術は、4度にも及んだ。そして…。
「もう一度、ジョッキーとして勝負したい」。
04年秋、見失いかけた明るさを、自分の手で取り戻し、再びターフに帰ってきた。
「戻ってきた時に、最初に声をかけていただいた橋口先生の気持ちに、何とか報いたい。そう思ってやってきたので、本当に勝てて良かったです。でも、もっと上を目指さないと、と思っています。
かえって芝の方がいいぐらい。そう感じましたから」。
2番手をキープして、スパッと抜けた完勝劇。
しびれるような手ごたえの余韻を味わいながらも、上村の視線はさらなる高みを見据えていた。