うさぎぼうりょくのゆるせない話

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25zin ◆qZKKO9ORxw
ホームステイの巻

いわもとは知り合いの牧場主に招かれて、大雪山・旭岳の麓の牧場にホームステイしていた。
朝夕、牛の世話をして昼間はスキーに行ってよいという約束。
牧場主には二人の娘がいて、上の娘は、言葉どおり釈由美子似だった。下の娘は小倉優子似という話だったが、どう見ても親馬鹿である。
牧場主は、いわもとを上の娘の婿養子にして跡取りに、と考えているようだった。
午後に到着してその晩は歓迎式をしてもらい、翌日は仕事を覚えるだけで一日が終わった。三日目、二人の姉妹を連れて近くの山にスキーに出かけた。

山頂が近づいたころ、後ろから「いわもとさーん」と呼ぶ声が聞こえ、いわもとはゾゾっとした。
振り向いたら、やはりzinだ。
あとちょっと、というタイミングで必ず現れ、台無しにして帰る男だ。無邪気な笑顔で近づくzinをけり倒したい衝動にかられたが、姉妹の手前、いい人を演じなければならない。
滞在先を教えた相手が彼の後見人だったことを、すっかり忘れていた。
26zin ◆qZKKO9ORxw :2008/06/07(土) 20:10:58
zinは、牧場主と共通の知人であるサラブレッド生産者を介して、ホームステイを頼み込んだらしい。日高とはずいぶん離れた場所なのだが、地縁というのはわからないものだ。
ひきつった笑顔を見せながらzinを姉妹に紹介し、いわもとは姉と、zinは妹と滑ることになった。
見れば、相変わらず軽量板のSINTESIにリンケンのビンディングという、わけわからん組み合わせだ。

zinの背中を見るたびに蹴飛ばしたくなる衝動を抑えつつ、母屋に戻った。本とDVDと衣装がたっぷりつまった土産袋をzinから手渡されると、怒りもおさまってきた。
まあ、面倒な仕事を全部押し付ければいいか、と考えると、気が楽になった。目論見どおり、いわもとの言いつけた作業は何でもホイホイやった。仕事は全部zinにやらせて自分は姉妹とスキー三昧なのだから、これはこれで結構なことだ。
不思議と今回に限り、株で大損した話や風俗遊びなど一切言わない、という言いつけをzinは守った。しかし、いつ爆発するかわからない不発弾の上を歩くような気持ちに、変わりはなかった。
27zin ◆qZKKO9ORxw :2008/06/07(土) 20:12:57
ホームステイが始まって5日目、妹が友人と遊びに出かけたので、いわもとは姉をデートに誘い出そうと画策した。しかし、zinがついてくるに決まっているので、どうやって阻止するか??
そこで、zinの馬好きを利用することにした。馬の世話を命じたところ、馬に話しかけたり撫で回したりで、もう、いわもとや姉妹のことは眼中になくなった。
馬を触らせるとほかの事をやらなくなると思って、それまで禁止していたのだが、変なところで幸いした。結局、夕食時までzinは馬にまとわりついていたらしい。こういうところは、単純で扱いやすい。

いわもとが家族の一員のような雰囲気になってきて、zinは自分が異物であることに気づき始めた。
昼食時、自分がいわもとの邪魔をしていることにzinもさすがに気づいたらしく、食事が終わるとそそくさと荷物をまとめて帰って行った。
28zin ◆qZKKO9ORxw :2008/06/07(土) 20:13:26
その日の夕食後、いわもとが席を離れたあと、そろそろ婿養子の件を話してみようか、と家族でまとまった。
部屋に戻ったいわもとは、Zinから飛行機に空席があったとのメールが入り、「あー、今回だけは邪魔されずにすんだ」と安堵した。
Zinがいなくなったら急に土産袋の中身が気になりだした。邪魔者がいなくなってリラックスしたせいか、袋から出てきた松浦亜弥風のコスプレ衣装を着込み、洋物ノーカットAVをノートパソコンで再生しながらぶっこき始めた。
一週間も休んでいたせいか、興奮の度合いが違う。ホームステイ中ということをすっかり忘れ、自分のアパートにいるのと同様、無防備になっていた。
まさに果てようとするその瞬間、「いわもとさん、いいですか」と後ろから牧場主の声が聞こえて扉が開いた。背後には家族全員の姿が・・・・・ 。





 
29zin ◆qZKKO9ORxw :2008/06/07(土) 20:13:53
翌朝、誰一人言葉を発しない気まずい雰囲気のまま、食事は終わった。いわもとは、誰とも目を合わすことがなかった。家族間でも、会話はほとんどなかった。
朝食を済ませてから手早く荷物をまとめ、短い挨拶とお礼を述べて、いわもとは帰路に就いた。別れの挨拶に出てきたのは、牧場主一人だった。

飛行機が離陸するとき、離れ行く北海道の大地を見ながら「あー、今回もzinに邪魔されたー」と悔しさがこみ上げてきた。
この恨み、どうやって晴らすか?
弱層検査でずっぽりいったら、先に滑らせて上でトラバースしてやるか?
買ったばかりのベクターに逆向きのステップを彫ってやるか?
思案をめぐらせているうちに、眠りについた。

(今回は、全部フィクションです。実話は一切含まれていません。登場人物とスス板のコテハンは、一切関係ありません。牧場主さん、変な物語に登場させて、ごめんなさい)