【ソウル=前田泰広】不法滞在で強制退去処分になった韓国人の女(51)が、指紋の照合で外国人の
身元を確認する生体認証(バイオ)審査を通過し、日本に不法入国していた事件で、韓国警察が、
この女を旅券偽造容疑で逮捕していたことがわかった。
日本と同じバイオ審査を導入している米国政府も、女がバイオ審査をすり抜けた経緯に強い関心を示し、
韓国側に捜査情報を提供するよう非公式に要請している。
韓国警察関係者によると、女は、不法入国をあっせんするブローカーに自分の顔写真を提供するなど
ブローカーと共謀して自分の旅券を偽造したとして、今月20日、韓国国内で逮捕された。
女が、この偽造旅券を使って青森空港から不法入国したのは昨年4月で、長野市内に潜伏中の同8月、
東京入管に摘発され、再び韓国に送還された。
同12月には韓国南部の都市で読売新聞の取材に応じ、「青森空港でバイオ審査を受けた際、
特殊なテープを両手の人さし指にはって指紋を変造した」と証言していた。
女に特殊なテープを渡したのは「ミスター・リー」と名乗る男で、韓国警察が複数の人物をリストアップ
して女に顔写真を示したところ、うち1人について「見覚えがある」と供述したという。
この男は現在、所在不明で、韓国警察は行方を追っている。
一方、韓国当局関係者によると、米国政府側が、今回の事件に関する情報の提供を求めてきたのは今月中旬。
テロ対策を担当する米国土安全保障省が、特殊なテープがどのようなものか調査に乗り出す用意があると説明したという。
米国は2001年9月の米同時テロを契機に、04年1月から、空港などで外国人の指紋を読み取るバイオ審査を
導入しており、今回の事件と同じ手口で米国に不法入国されることを警戒しているとみられる。
(2009年1月22日03時04分 読売新聞 社会)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090121-OYT1T01151.htm