政治の道具と化したアフガン拉致の悲劇
ttp://www.chosunonline.com/article/20070803000001 与党系の大統領候補のうちのある人物が2日、米国のブッシュ大統領に対し、
「アフガニスタンで起きた韓国人拉致事件は米国の対テロ戦争に端を発するもの
だけに、米国が積極的に取り組むべきだ」との内容の書簡を送ったとし、その内
容を公開した。そして与党系議員33人もまた、同じような内容の声明文を発表し
た。彼らの行動が、事態解決を願う強い気持ちから生まれたものなのか、あるい
は自分たちに向けられたテレビカメラを意識したが故のものなのかは分からない。
一同は「米国政府は、人質が米国人だったとしたら果たしてどうしていたか考
えてみるべき」と語った。一方米国はイラク戦争以降、たった1人の例外を除き、
人質解放のための交渉には応じないできた。そのため6人の米国人が殺され、10
人以上が今も消息不明のままだ。与党系議員らの要求しているとおり、米国政府
が今回拉致された韓国人被害者が米国人と同じ基準で扱ったとして、何がどう変
わるというのだろうか。
大統領府の報道官はこの3日間というもの「(米国政府より)アフガニスタン政
府の対応がより重要だ」とし、「米国が解決しろ」という反米団体の主張が事態
の解決に役に立たないとの立場を強調している。外交部の関係者も「基本的には、
韓国の国民が行ってはならないところに行ってしまったことから始まった問題」
とし、「それが米国の責任とは、理屈になっていない」と語る。この関係者は「米
国が韓国に、刑務所に収監されている犯罪者を解放しろと要求したとして、韓国
がそれに応じることができるだろうか」と反問した。
また与党系のほかの大統領候補ですら「米国も人質を助けようとしているが、
状況がそれを許さないだけ」とし、「(その困難な状況を利用して)反米感情を
あおろうとするのは、非人道的な行為だ」と語っている。この候補は「米国政府
との連携が重要であり、その点からも軽はずみな言動は御法度だ」とし、「一つ
間違えば犯行グループに利用されてしまう」と語った。これこそが、常識人の発
想だ。
ところが5政党の各院内代表はこの日、米国政府に協力を要請するとし、そろっ
て米国に向かった。一昨日の会合でそうしたアイデアが飛び出し、その日の夜の
うちに航空券を手配したという。こんな日程では、米国側との間で事前に会談な
どの予定を組めたはずもない。米国に行って公衆の面前で駄々(だだ)をこねる
のが解決への道とはとても思えないが、それ以上に何のあてもなくとりあえず行
ってみれば何とかなるのではないかという発想そのものが、韓国政治の水準をよ
く表している。
この「アポなし米国訪問」にはハンナラ党も加わっている。ハンナラ党は2002
年、「ヒョスン・ミソン事件(2人の韓国人女子中学生が米軍の移動車両にひかれ、
死亡した事件)」をきっかけとした反米旋風の際に、ろうそくデモに合流した前
歴がある。今回の事件が、かつてヒョスン・ミソン事件がそうだったように、逆
らいようのない反米世論の高まりにつながっていくことを恐れているのだろう。
現在、一部の与党系勢力が見せている行動は、アフガニスタンでおきた悲劇に乗
じて政治的利益を上げ、大統領選挙前に勢いづけたいとの思惑から生まれたもの
にほかならない。そうした展開の中、野党はひょっとすると与党系勢力に世論を
持って行かれてしまうのではないかと恐れ、何とかもぐり込んでおこうとしてい
るようだ。