茨城 イノシシから放射性物質で狩猟者減
2011年11月05日 朝日新聞
狩猟解禁日を15日に迎えるが、今年はイノシシ猟が減りそうだ。県内の野生
イノシシから基準超の放射性物質が検出され、猟師が捕獲を敬遠。
頭数が減らないため、農作物被害への懸念が高まっている。
県環境政策課によると、今シーズンの狩猟者登録は昨年シーズンより
約700人減り、4183人(10月25日現在)にとどまる。
県は9月、生息地の16市町で捕獲したイノシシを検査。うち3市で国の
基準(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された。
県猟友会新治分会(土浦市)の杉田一徳分会長(66)らが駆除でとった
1頭からも890ベクレルが検出。県は、野生の捕獲イノシシを食べる
ことを控えるよう呼びかけている。登録の減少は、これを受けてのようだ。
杉田さんは、狩猟仲間から「肉を食べる楽しみがないならもう今年は猟は
やめる、という声を聞く」と話す。
結果、懸念されるのが農作物被害だ。県農林水産部によると、すでに
水戸市などで被害が増えているという。土浦市のクリ農家の男性も
「クリの半分は食べられている。これ以上、被害が増えるとつらい」。
杉田さんらは先月から有害捕獲を始めたものの、駆除が追いつかないのが
現状だ。猟友会新治分会は以前は90人以上の会員がいたが、今は20人程度。
有害捕獲のメンバーを集めるのも難しくなってきた。
イノシシによる農作物の被害は2009年で6742万円。県は適正数を
保つため、年に3千頭を目安に捕獲を指導している。狩猟と有害捕獲を
合わせて09年に2949頭、10年に2905頭が捕獲された。
狩猟での捕獲分が減ると、被害が増えることが予想される。
柿やクリに被害が出ている土浦市の農林水産課には、「これ以上被害が
増えると生産を続けられなくなる」との農家からの声も寄せられて
いるという。県は「駆除に向けた対策を、市町村と協議していく」としている。