○● バラの国の月組語り ●○ 第九十一夜

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311タイガー ◆u.TIGERV.k
「バラの国の王子」見てきました。
ネタバレになりますが、ご要望ですので感想など。よろしく。

劇団四季で何度も見てきた「美女と野獣」の宝塚版だと思っていましたが、
いろいろと設定も異なり、演出も含めて新鮮な面白さがありました。
しかし劇団四季には世界に誇るアジアのベル・木村花代がいたこともあり、
もともと完成されたミュージカル作品でもあり、今回の「バラの国…」を
それと比べても仕方がないのは明白です。

仕方がないとはいえ、劇団四季の野獣はかなりデカくて怖いのに対し、
宝塚の野獣は小さく、とてもベルを食べてしまうようには見えませんでした。
もっとデザインに工夫が必要だったのではないか…ということは申し上げておきましょう。

けれど、当然とはいえ動物たちを着ぐるみにしなかった演出はよかったですし、
動物のお面でなかったのもよかったです。
さらに、最もカッコいい動物は「虎」である…という設定は称賛に値するでしょう。
ま、それはさておき。
312タイガー ◆u.TIGERV.k :2011/05/06(金) 02:39:28.19 ID:Wz2ExERW
総じて述べてしまうと、1幕で描くために登場人物(動物)同士の関係性が浅く、
野獣も最初からやさしくていい人のようで、ベルの影響によってだんだんと人間性を
とりもどしていく…という主要な展開がバッサリと無くなっているのが大変残念でした。

美女と野獣は最初から激しく憎み合っている訳でもないので、たんに仲良くなって
めでたしという話です。ハッピーエンドだろうと、感動の薄さはどうしようもありません。
ベルの一家のシンデレラのパクリのような設定も有効ではないように思います。
野獣に対抗するのが身内という設定は、最後に慈悲深さを印象づけたかったのでしょうか。
そもそも自分の愚かさが原因で野獣に変えられる…という設定ではないので、
野獣はただの気の毒な王子様なのです。時間がないからとはいえ、この設定に
無理があったと言わざるをえないでしょう。
龍真咲の役が何か必要だったのかも知れませんが、それがバカ殿ではお気の毒です。
みりおの虎も、あれではお花畑で暮らすパンダです。

この作品の本来の登場人物たちは、それぞれに多くの葛藤を抱えているのです。
みりお以下のお城の家来たちの苦悩もまったくといっていいほど表現されていません。
醜い姿でありながら愛して欲しいと願う野獣の葛藤も、本当に希薄です。
ベルにしても、本人は何も悩んでいる様子は感じられません。バカ殿に言い寄られて
困っているだけの話です。

タイムリミットが迫るという設定もありません。こんな状態で、どんなクライマックスを
迎えろというのでしょうか。

私が思うのは次のようなことです。宝塚よ、やるならちゃんとやれ。
出来上がった作品を宝塚キャストでやるのはよし、駄作覚悟でオリジナル作品を演じるのもよし。
設定だけ借りてきて、都合のいいように話をいじるのは無し。以上かな。