( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★43
( ・∀・) いやあ…だってさあ…
川*` ゥ´) それで、妹さんは元気?
( ・∀・) うん
川*` ゥ´) どこに住んでるの?あたしてっきり、シベリアに住んでるとばかり思ってたけどさ
( ・∀・) 僕と同じとこだけど…てか、なんで?
川*` ゥ´) ブーン系図書館知ってる?あそこに凄く美人な職員がいるんだけど、妹さんそっくりなんよ
( ・∀・) あの人か、見た見た、僕もびっくりしたよ
川*` ゥ´) 最初さ、てっきり妹さんかと思って話しかけちゃったんよ。したら名前も同じなのね、本当吃驚した
( ・∀・) 僕も、職員証を見たとき声上げそうになってさ…おもしろい事も有るんだね
川*` ゥ´) ねー
ぐだぐだ、ぐだぐだと飲み食いしながら話し込んでいたら外はすっかり暗くなっていた。
川*` ゥ´) いやー随分話し込んだね
( ・∀・) 一生分くらい話したんじゃね
川*` ゥ´) ねーよ、短いよ一生分
( ・∀・) まだまだ話したり無いの?
川*` ゥ´) これからさー、また話したくなるかもしんないじゃん?
( ・∀・) そうだね…そうかもしれないね
歩くうちに気温は容赦なくさがり、息が白い。ヒールは寒さのせいで肌が赤みを帯びている。
川*` ゥ´) しっかし、あんたも相変わらず性格悪いなー
( ・∀・) 変える気が起きないよ、今さら
川*` ゥ´) 妹さんも忍耐強いわね
( ・∀・) はっはっはっ。バレンタインデーもホワイトデーもクリスマスも、ばっちり2人で祝ったぜ
川*` ゥ´) どんだけやねーん
( ・∀・)+ 本命チョコだったしなっ!
川*` ゥ´) どや顔うぜえ…
( ・∀・) まあでも、妹以外からのチョコも、欲しかったな
938 :
( ・∀・)幸せになるようです:2012/04/03(火) 20:53:54.92 発信元:111.89.140.2
川*` ゥ´) そうなん?贅沢なやつめ
( ・∀・) いやあ、だって嬉しいじゃないか
川*` ゥ´) はいはい、ただし美人に限るんだろ
( ・∀・) そんな事はないよ、たとえば、君は割と平凡な顔立ちだろう?
川#` ゥ´) 首絞めんぞテメエ
( ・∀・) しかしそんな君からでも、貰えれば嬉しいものだよ…チ〇ルチョコとか板チョコまんまでなければね
川*` ゥ´) …う、嬉しいの?
( ・∀・) くれるのかい?
川;` ゥ´) えー…あー…
川*` ゥ´) …やっぱいいや。めんどいし…あたしみたいな不美人が渡したってしょうがないし
( ・∀・) そいつは残念…というか、君は平凡だと言ったろうが
川*` ゥ´) 同じだろ
( ・∀・) 違うよ、ぜんぜん違うよ。僕が言う平凡とは、特に欠点も無いってことさ
川*` ゥ´) いやあ…むしろ欠点しかねえよ
( ・∀・) そんなに自分を卑下するなよ
僕はヒールの両頬を優しく、かつ素早く両手で捕らえ。
川;` ゥ´) な、な、な?
指で無理矢理、口角を上げさせた。
( ・∀・) ほら、良い笑顔じゃないか
川#` ゥ´) なにするのさっ
( ・∀・) 僕は好きだよ、この笑顔
言い終えると同時、ヒールの顔は耳まで朱色がかった。本当扱いやすい奴である。
( ・∀・) 扱いやすい奴め
川;` ゥ´) な、なにさっ
僕の手をふりほどいたヒールは、自分の頬をぺちぺち叩く。
川;` ゥ´) き、きさま公衆の面前でっ
ちなみに今立っているのは、ホテル・シベリアにほど近い大通りである。
( ・∀・) 公衆の面前いっても人は…あ、遠くに1人いたね
川;` ゥ´) うー…
( ・∀・) ごめんごめん。だって、君とは笑顔でお別れしたかったんだもの
川*` ゥ´) なに言ってんのさ…今生の別れじゃあるまいに
( ・∀・) そうだね
川*` ゥ´) やれやれ…まあ、会えてよかったわさ
( ・∀・) うん、それじゃあね
川*` ゥ´) せっかく連絡先交換したんだし、また会おうぜ
( ・∀・) うん
川*` ゥ´) んじゃねーっ
手を振り合ってから、ヒールは花屋の隣にあるアパートへ。
( ・∀・) 姉弟で2人暮らしか…羨ましいなあ…
人気が無い事を良いことに、盛大に溜息をついた。
( ・∀・) ごめんね、嘘ばかりで。君とだけは湿っぽい話をせず、昔みたいに楽しくお別れしたかったんだよ
僕はもう一度小さく手を振って、体調を崩す前に、暖かいホテルへと足を踏み入れた。
(;・∀・) …あ、本返すの忘れてた…閉館時間すぎてるし…
―――春、僕が高校二年生になったばかりの週末、父親が皆を祭りに連れ出した。
妹の誕生日を、ややフライングではあるものの、祝うためだ。
近頃ますます人見知りが激しくなり、常に睨むような目つきになってしまった妹も、この日ばかりは丸みと年相応の幼さを取り戻す。
僕だって前日に行こうと言われてからはやる気持ちを抑えきれず、当日は家の誰よりも早起きしてしまい、トイレから帰ると妹から隣が寒いと怒られた。
母親は、急に家庭的になった父親に戸惑いつつも朝から準備をし、電車とバスと歩きでイベント広場に向かった僕らは円満で物静かな家族そのものだった。
父親が母親を気遣う様子など、たといそれが周りの視線故だとしても、久しぶりに見れて嬉しかった。
僕は希望を抱き始め、手を繋いでいる妹も視線で同じ物を感じたのだと伝えてきた。
幸せだった。
鼻を擽る暖かい香り、頬を撫でる優しい風、見上げる空の青さと舞い散る桜の美しさ、繋いだ右手に伝わる熱量、喜び溢れる妹の横顔、穏やかな両親。
ひょっとしてコレは夢なんじゃ無いのかしらんと、いらぬ心配すらもした。
きたか
花見祭りの会場は老若男女いりみだれ、桜の花は咲き乱れ。
最果てのシベリアにはこんなにも人がいたのかと、生まれて初めて祭りに来た妹は興奮すると同時に怯えたが、しだいに負の感情を僕に訴えなくなる。
本当に幸せだった。
僕らは、本来こう在るべきなのだという、もしもの世界が現実として展開していた。
どちらを向いても人がいる会場はしかし、わざわざ場所取りをする必要はなく、出遅れたグループも広い会場で良い席にシートを敷くことは容易くて、それはシベリアンが当然の如く成した、配慮と配置の妙技を物語っていた。
夢のように幸せなのに決して夢でなかった一日を終えた夜。
僕は、妹と約束をして、それは結局不可能になってしまう。
急に穏やかさを取り戻した父親へ、希望ではなく疑念を抱くべきだったのだ―――
***
ブーン系小説シベリア図書館の朝は早い。
('A`) おはようございまーす
( ・∀・) おはようございます
('A`) 今日の来館者第1号ですよ
( ・∀・) 開館と同時ですもんね
('A`) 朝飯ちゃんと食べたんすか?
( ・∀・) 勿論、最高の朝食を味わってきました…ところで館長はいらっしゃいますか?
('A`) あと半時程で来るはずです
( ・∀・) わかりました、待ちます
('A`) 御覧の通り、来館者は貴方だけですので好きな席でお待ち下さい
カウンターからぐるりと館内を見渡すとアサピーさんが窓のカーテンを開けていた。
読書用の、長机が並ぶスペースは眩い陽光に満遍なく照らされ、地味ながら細かな装飾のされた大きな窓の汚れをチェックし、満足そうに肯いたアサピーさんは巨大な本棚同士の狭間に消える。
( ・∀・) 几帳面ですね、アサピーさんて
('A`) じゃなきゃ当館の司書は勤まりませんよ。なにせ当館の蔵書は無計画に増え続けていますから
ドクオさんは、今朝はカウンターの受付に陣を構えている。
カレンダーやらペン立てやら、小物が幾らか置いてあるカウンターはピカピカに磨き上げられており、いかにも座り心地の良さそうな椅子に座ってティーカップを傾けるドクオさんは、まるで大企業の辣腕経営者だ。
( ・∀・) さて
僕は明るく暖かな館内で、今度は真剣に、作品を物色し始める。
僕はタイムリミットが短いことを知ってしまった。
だから、新しい楽しみを見つける事なんて意味がないと思っていたが、こうして朝早くから楽しみを求めている。
僕は貪欲な人間で、我が儘で、卑しいけれど、物語は僕を拒んだりしない。僕が拒むことは有るというのに。
( ^ω^) おはようございます
三冊目の短編を読み終え、棚に戻したところで館長が顔を出した。朝も変わらず柔らかな笑顔を浮かべ、落ち着き払った足取りでカウンター奥の部屋へ入ると、またすぐに出てきた。どうやら鞄とコート、シベリア帽を置きに行っただけのようだ。
ドクオさんが僕の方を見ながら二、三言告げると、早歩きでこちらに来た。
( ^ω^) おはようございます。今日も来てくれたんですかお
( ・∀・) おはようございます…昨日は、失礼しました。蔵書も持って行っちゃって、すみません
( ^ω^) 気にしなくても大丈夫ですお
( ・∀・) これ…お返しします
館長は僕が差し出した本を両手で受け取ると、カウンターへ戻りドクオさんに渡し、また僕の元へ来た。
( ^ω^) 今日はもう、何か読みましたか?
( ・∀・) ええ、短編を三冊…あの、館長さん
( ^ω^) なんですかお?
( ・∀・) 怒らないんですか?
( ^ω^) 怒るもなにも、貴方は当館の貸し出し規約に則って借りた本を返した、それだけですお
( ・∀・) 規約に則るって、僕はただ引っ付かんでそのまま飛び出したんですよ?
( ^ω^) 手続きはこちらで済ませましたお
( ・∀・) 僕が読んでいた本のタイトル、見てたんですか?
( ^ω^) いえ、見たのは貴方が開いていた頁だけですが、それで十分事足りますお
( ・∀・) そう、なんですか
( ^ω^) では、私は仕事がありますので、これで失礼します
立ち去ろうとした館長は、はたと足を止め振り返る。
(;^ω^) あっぶね…これを忘れるところでした
差し出されたのは、桜が押し花にされた栞。
( ^ω^) 昨日は渡し損ねてしまいましたが、よければお持ち下さい
( ・∀・) …ありがとうございます
全体的に暖かで、淡い中に鋭い色が少し入れられた、あざやかで手頃な栞を僕は両手で受け取った。
( ^ω^) ブーン系小説シベリア図書館は、いつでも貴方を応援していますお。では、失敬
支援
颯爽と歩く館長の後ろ姿は、悔しいけれど格好良くて、ツンが惚れるのも納得できた。
ξ゚听)ξ おはようございまーす
( ・∀・) …
ツン、僕の妹だったツン。僕は死ぬ前にどうしても君に会いたかった。
('A`) おはよ。ツンさん、紅茶飲む?ギコさんから良い葉を貰ったんだ
ξ゚听)ξ あら、お願いするわ
自分は長生きするだろうと根拠なく思っていた頃は、妹の事を忘れようとしてさえいたのに、終わりが見えた途端たまらなくなった僕は浅ましく愚かしい。
(-@∀@) おや、良い香りですね。ギコさんからいただいたやつですか
('A`) そ。たまには良いだろ?
ツンの為にも、僕の事は忘れていて欲しい。
でも思い出すんじゃ無いかと期待していた僕もいる。どっちが本当なんだろう?どっちも本当の僕か。
兄としての矜持を貫くのならば、ツンにはこのままでいて欲しい。そのためには僕が姿を表さないのが理想なのだけれど。
じゃあなんで僕は、ツンが思い出してしまうかもしれないと解っていて尚此処に来たのか。
それは兄として妹の顔を見たかったんじゃない、そんなの言い訳にもならない。
( ^ω^) おっ、紅茶かお?
ξ゚听)ξ ドクオさんが煎れたの、素敵な香りよ
兄以前に独りの男性である僕はつまるところ、夢を見たかったのだろう。
過去を忘れたツンが、また僕を好きになってくれやしまいかと。ツンが、環境のせいでなく純粋に僕の事を好きになってくれたんじゃないのかと。
妄想するだけで殻に閉じこもり無駄にモラトリアムな日々を消化していた僕と違って、彼女は1人の女性として幸せを掴んだ。
どうして違ったのだろう?なにを間違えたのだろうか、僕は。
ξ゚听)ξ おはよう。ここ良いかしら
( ・∀・) …おはよう、どうぞ座って
ξ゚听)ξ 紅茶は飲める?
( ・∀・) ありがとう、いただきます
ξ゚听)ξ …ふう
( ・∀・) …美味しいですね
ξ゚听)ξ カウンターのドクオはね、ああ見えて教養が深いの。紅茶の入れ方も、小さい頃に教わったそうなのよ
('A`) …
( ・∀・) …いやあ、見えないなあ…
ξ゚ー゚)ξ ふふっ、私もよ
僕が対面に座るツンのためにできることは、もうひとつだけだと思う。
ξ゚听)ξ それにしても不思議だわ。貴方とは初対面よね?
( ・∀・) はい
953 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/04/03(火) 21:45:44.60 発信元:206.223.150.45
また猿になったかな
(´・ω・`)支援だよ
配達
634 名前:名も無きAAのようです :2012/04/03(火) 21:47:10
すみません誰かシベリアブーン系図書館に
さるった
と伝えてください
しえええんん
956 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/04/03(火) 22:00:46.00 発信元:206.223.150.45
猿よけ
ξ゚听)ξ それなのに、初めて会った気がしないのよねえ
( ・∀・) 実は、僕もです
それは兄としては幸せなのだけれど、僕としては悔しいことで。
ξ゚听)ξ そういえば貴方、栞は貰ったの?
( ・∀・) うん、もらいましたよ
ξ゚听)ξ よかった。綺麗でしょ、あの栞
君の方が綺麗だよ、と僕が言ったところで変な顔をされるだけなのだろう。
ξ゚听)ξ 明日、お花見祭りが始まるわ。会場にいけば、もっとたくさんの桜の花を見れるわよ
( ・∀・) あれって、色んな出店があるらしいけど、あなた方も出るんですか?
ξ゚听)ξ ええ。展示をね。会場行って、仕事しながらお花見するわ
( ・∀・) 良いですね、しかも恋人と一緒なわけだ
ξ*゚听)ξ …
ξ*^ー^)ξ 羨ましいでしょ?
ええ、本当に、まったくですよ。
―――家に灯油をまき散らした父親が母親を殺し、首を絞められていた妹を無我夢中で助けたら結果的に父親が死んで、今後人殺しとして扱われる事を想像したらとてつもなく怖くなり証拠を消そうと父親の遺した液体に火を放つ。
轟々と燃え盛る炎、舞い散る灰、立ち上る煙。あまりに嘘臭い状態、その向こう側から日が登り始めた。
家を燃やす火から日が出てきたようで、神秘的で夢みたいな光景を背中の妹にも見せてやりたいと思ったのだが妹は気絶している。僕は気絶している妹を、背負ったままで起こした。
僕の声にゆっくりと目を開けた妹は、開口一番問いかける。貴方はだあれ?
頭を殴られたような痛みのあとに、僕は理解をした、妹は現実から逃げ切ったのだと。
僕は、何も言えなかった。炎と太陽の明るさに気付いた妹は暫し燃える家を眺めていたが、すぐにまた寝てしまう。
でも考えてみれば、僕にとっては都合が良かったのだ、だって訊かれたら困るから。
なんで家が燃えているのか、お父さんが何故狂ったのか、お母さんは何故殺されたのか、僕と妹はこれからどうすれば良いのか答えられない。
僕には荷が重すぎるのだ、妹を背負うので精一杯な僕はどうすれば良いのか分からないから、黙って炎を眺める。
次第に騒がしくなる路上で、目の前に広がる光景が別の世界の出来事に思えて、とても滑稽に見えた。
遠くから聞こえるサイレンでふと我に返った。帰るべき自分が有ることに驚いて、同時に悲しむ。
僕はまだ、僕であることが許されており逆に言えば狂ってしまったり、妹のように忘れてしまう事が許されていない。
いつのまにか僕の周囲には見知らぬ人達が立っており、赤いランプで定期的に照らされている野次馬は何を喋れば良いのか分からない様子。
まるで祭りの時みたいに大勢の人が集まり、皆で炎に魅入っていた。ここに居る全員が火葬を見守っていると思うと不思議な興奮が僕の中に芽生える。そう、火葬。
あの家が燃えているのは過去を火葬しているんだ、そうして新しい思い出を積み上げてゆけばいずれ忘れる事ができるかもしれないと。
そう思うと世界は、ますます滑稽に見えてきて僕はなんだか可笑しくなって。
支援じゃー
堪えきれなくなったところで、救急車の人が僕を羽交い締めにするみたく毛布で包み、消防車の人が放水を始めた。僕はとっさに叫んだ、消すな、と。
今までの何もかもを燃やし尽くして、焼け野原にならないと、僕は前に進めないと思ったから、だから―――
図書館を出で、ホテルへと戻った僕は荷物をまとめチェックアウトした。
太陽は高々と輝いているものの、雲が出てきた。最後まで快晴とはいかないようだ。
( ・∀・) (さーて…)
少ない荷物と、ショボンに貰った記念カード、それに館長から貰った桜の栞を持ってバスに乗り込む。
初めて通る道を眺めて思う、この世界は本当に広いと。
生まれ育った地でさえも、知らない場所や見たこともない道が山ほどある。
子供の頃に、うんと低い目線でしか見れなかったものは、幾年月生きていかなければ頂上を見ることができない。目線が高すぎると、細かな物は見えなくなる。
僕が今、バスの窓から眺めている視界には遙か宇宙までもが存在するというのに、僕は銀河を見ていない。
( ・∀・) (ま、だから何だって話だな)
僕には最早何もかもが些末事で、けれども些末な想いが溢れては消えまくる。
誰に語るでもなく誰に訊ねるでもなく、僕という自意識が無意味に積み重ねている記憶を意味ある物に昇華させるため、人は他人を欲するのか。
だから、僕の自意識は生まれたのか。僕の自意識は多分、計算に飽いた脳が思考という対話をするために造ったプログラムのようなものなんだろうか。
( ・∀・) (…うん、自分でもわけ分からん)
くだらない思索を巡らせている間に、バスは目的の停留所へたどり着いた。
暖房の効いた車内から一転、一面の雪原へと僕は降り立つ。
( ・∀・) さぶっ
シベリアには永久凍土が横たわっており、雪景色は日常の景色で、特に此処シベリア雪原は広大な平原が一面厚い氷雪に覆われている。
しょっちゅう吹雪いてしかもコレと言って何も見あたらない雪原に足を運ぶシベリア住民が多いのだから、人間てのはおもしろい。
おもしろいといえば僕が立っている停留所もそうで、長方形に敷かれたコンクリートの基礎の上、最低限、標識と真新しいベンチが据えられている。
全周囲見渡せど人工物はシベリア中央部から途切れなく続く細い道路と、無味簡素極まりないこの停留所だけである。しかも地平線は霧のように舞い上がる新雪で途切れ途切れにしか見えない。
( ・∀・) 本当になんもねー…
鉛色から白銀色へ、一歩前へ踏み出す。雪に足が沈み、体温は一気に奪われる。
( ・∀・) 気持ちいいな
どんどん歩く。どんどん、歩くうちに雪が振り出し上も下も真っ白に染まり、進むにつれ方向も時間もよく分からなくなっていったけれど恐怖は無い。ただ、小腹が空いた。
( ・∀・) あー…もういっか
振り返ってもとっくに雪しか見えない。いつの間にか荷物を捨てていた。あるのはカードに栞だけ。欲を言えばヒールからのビターチョコレートも欲しかった。
全身だるいので、大の字に寝転がる。思いの外しっかりと沈み込んだ。空は、重たそうな雪雲で埋め尽くされている。
( ・∀・) はあ…寒い
吐き出す息は凍りそうで、手足の感覚は既に無い。
でも悲しくなくなっていた、だって僕が歩いてきた足跡は、どんどん降り積もる雪にに隠され、やがては消えてしまう。僕が汚してきた人生も、時と共に消えてゆく。
それでいい。
それがいい。
会っても思い出さなかったのだ、二度と会わなければ一生忘れたままだろう。
僕は幸せだ。自分の過ちを、誰にも知られないよう封印し、しかも大好きな女の子の役に立てるのだ。
( ・∀・) …ショボン。君は多分否定するだろうけどね、兄として僕は今幸せだし…救われるよ
これが理想ではないけれど、最悪ではない。
965 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/03(火) 22:28:35.98 発信元:210.153.84.136
支援、(´・ω・`)は全て承知してるのかな
当然兄妹だということも、( ・∀・)の覚悟も
妹の幸せが兄の幸せでなくて何だというのだろう。
僕の男としての生臭い欲望で、ツンを引きずり下ろすなどあってはならない。ならないのだ。
もう、顔を見たいなどという無謀な考えを持たないために、僕の思考は今日ここで止めてしまうべき。
然らずばでなく自ずから死ぬべきだ。
( ・∀・) しかし…居心地いいなここ。落ち着くわー
何もかもを包み込んでくれるから、だから。
( ・∀・) ぐっすり眠れそうだ
僕が消えれば事の真実を知る者はいなくなる。だから安心だ。ごめんよショボン、君にまで嘘をついたままで。
( ‐∀‐)
幸せを感じさせる桜の栞があるから、悲しくはない。
繋がりを感じさせる記念カードがあるから、寂しくもない。
だからおやすみなさい。
二律背反に縛られた僕にできるこれが、たったひとつの冴えたやり方。
…ごめん、やっぱ嘘。
やっぱり僕、凄く泣きたくなってきた。
***
おお・・・
「楽しかったね、ツン」
「うん、本当に」
「また、お花見しよう。桜の下で、お父さんお母さんに仲良くツンの誕生日を祝ってもらえるようにする。僕が約束するよ!」
「本当?嘘じゃないよね?」
「僕はツンに嘘をつかないよ。約束だよ」
「約束、忘れないでね」
「大丈夫、絶対に…忘れないよ」
「…うん!」
***
関連・(-@∀@)とある眼鏡の蔵書目録のようです・SF(すこしふしぎ)版
***
( ・∀・)幸せになるようです
終
970 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/03(火) 22:46:17.18 発信元:202.229.176.130
えっ、最後どうなったの
やっぱあの人だったか
972 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/04/03(火) 23:07:31.68 発信元:206.223.150.45
637:名も無きAAのようです
12/04/03(火) 22:47:37 ID:Fg.NLUHcO
シベリアに代理願います↓
以上です。
花見祭りにあわせて書きました。
某有名な著作やカード発行人になったようですから勝手に引用したり、amazarashiのワンルーム叙事詩という曲をネタに使ったりしたりしてます。
ありがとうございました。
創作板より作者のレス
乙 ふわふわした読後感だな
乙でした
975 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2012/04/03(火) 23:23:27.05 発信元:124.146.175.166
大変面白く読ませていただきました
3日間猿と闘いながら投下お疲れでした
二つ程質問したいことがあるのですが
1つ目は( ・∀・)の生死は初め予定どおりなのかな?
もうひとつは1つ目にも関連するけど最後のレスは回想でOKかな
>>975 描写不足ですんません
死期が迫っているのでシベリアに来たわけですが、最初から自分で死期を早めようと決意していたわけではありません
あと、回想でおkです。
――― ←これを入れ忘れてました。
乙でしたー
新スレの時期か
どや
どやぁ
昨日のブルカのログ誰か持ってない?