82 :
3/4:2007/01/02(火) 15:57:12 発信元:124.84.116.78
「それより――」
不意に店員がカウンター越しに顔を寄せてきて、ひそひそ話をす
るように手のひらを立てた。反射的に、僕は利き耳をそちらに寄せ
る。
「――彼女と、何かあったんですか?」
僕はまたまずそうにコーヒーをすすった。予想通りの質問だった。
彼女の方を盗み見る。相変わらず、僕にちらちらと不審げな視線
を送っている。
そりゃあ、同僚があんな様子なら気にもなるだろう。
「それはですね――」
気は進まなかったけれど、僕は事情を説明した。簡単な事情だっ
たから、すぐに理解してもらえた。
「悪い子じゃあないんです。仲良くしてやってください」
正直僕にも非はあると思うのだけど、店員は特にコメントもせず、
それだけを告げた。
「そういえば、どうして僕が新参者だってわかったんですか?」
そのまま話を終えるのも後味が悪かったので、僕は別の話題を振
った。店員は少し苦笑気味に顔を崩す。
「人の出入りが少ないところだからっていうのもありますけど……、
なにより、防寒対策が成ってないのが一目でわかりましたから」
自分では特に違和感を感じなかったけれど、どうやら慣れてない
のが一目瞭然だったらしい。
いい機会だったので僕はいくつか防寒に関する質問をして、店を
出た。
83 :
4/4:2007/01/02(火) 15:58:12 発信元:124.84.116.78
午後からは自警団に行くよう指示されていた。18歳から27歳
の間に、準団員として三年間在籍する義務があるらしい。兵役みた
いなものだろう。
本部で教本と装備を受領し、作業服に着替えていると、不意に背
中から声をかけられた。
「よぅ。兄さん、生まれはどこだ?」
馴れ馴れしい態度と内容に面食らっていると、そいつは軽く笑っ
て「言いたくなきゃ言わなくていいよ」なんて言った。
「こうして入団の日付が重なったのも何かの縁だろ。仲良くしようぜ」
握手を求めてきたので、僕は曖昧に笑いながらそれに応えた。
ボーリャと名乗った彼は、まだあどけなさの残る、少年といって
もいい顔立ちの青年だった。お世辞にも長身とは言えない僕よりも、
更に一回り小さな体躯をしている。歳を聞くと、二つ年下だった。
この前誕生日を迎えたばかりだという。
「健全な開拓民の義務だからな。
仕事が決まらなければ、正規団員になることも考えてんだ」
そう言って、初めての同僚は屈託無く笑う。あまりに無邪気な様子
だったので、思わずこちらも顔が緩む。馴れ馴れしい態度も、なんだ
か許せる気がした。
「そういや、あんたの名前を聞いてなかったけど」
不意打ちの質問に、僕は一瞬言葉に詰まる。一度口を開きかけてか
ら、視線を反らして言い直した。
「……トトって呼んでくれればいい」
「ん。よろしくな!」
ボーリャは、また無邪気に笑った。
その後は宣誓式があったくらいで、すぐに帰宅を許された。
改行の感覚が掴めなくて、なんだかバタバタした投稿になっちゃった。
これじゃあ番号振ってる意味無いよね。シベリアの最大行数とかってどうなってるんだろう。
それにしても、規制解除遅いなぁ。早く解除されないかなぁ。
いっそのこと、規制中に完結を目指してみようかな。
85 :
1/5:2007/01/03(水) 00:14:11 発信元:124.84.116.78
「よーし、お前ら、休憩だ。昼飯にしよう」
親方の声に、思わず体が弛緩した。
「お疲れ。……まぁ、最初はそんなもんさ」
ほとんど付きっ切りで仕事を教えてくれていたおっちゃんが、苦
笑気味に肩を叩いてくれた。
僕の仕事ぶりは、一言で言って、酷いものだった。おっちゃんは
慣れてないんだから仕方ないよ、なんて言ってくれたけど、どう考
えても僕は足を引っ張っているだけだ。
作業場の片隅に腰を下ろして、出されたお茶を片手に食べ慣れな
い硬いパンをかじる。あんまりおいしくない。手袋を外した両手に
目を落とす。かじかんで赤くなった手先がじくじくと痛む。
周囲には肉体労働者らしく体格のいい人ばかりで、明らかに自分
の存在が浮いている。
お馴染みのため息が漏れた。うまくいかねえなあ、と思う。
新しい土地、新しい社会の中で、新しい自分を見つけたいと思っ
ていたのに、この体たらくだ。
予想してなかったわけじゃない、けど――それでも僕は、新生活
早々にして、少しだけ、嫌になっている。
「ん、んん」
顔をしかめて、咳払いをした。よくない考えに陥りかけている。
何か、気を紛らわすものを探して――ふと、ポケットの中に馴染
んだ感触を見つけた。
86 :
2/5:2007/01/03(水) 00:15:45 発信元:124.84.116.78
取り出してみると、思ったとおり、それはちびた鉛筆だった。作
業着は私物で、前の土地から持ってきたものだったから、当時の持
ち物が紛れ込んでいたのだろう。
僕は懐かしい気持ちで、それを眺めた。これを使っていた頃は、
まだ楽しい思い出の方が多い。
絶好の暇つぶしを思いついて、僕はポケットからメモ帳を取り出
した。質の悪い用紙だけど、ただの暇つぶしだし、十分だ。
鉛筆の先を用紙に乗せて、一瞬ためらう。でも、思い切ってそれ
を滑らせた。
十五の時に覗き見た、あの光景を思い描く。湯煙の合間に覗く艶
やかな長髪。白磁のような肌に包まれた、豊満な体のライン。
目に浮かぶ淡い光景をメモ用紙に重ねて、ちびた鉛筆でそれをな
ぞる。大まかなラインを少しずつ削りつつも、リアルタイムにデフ
ォルメの判断をする。乳と尻はちょっと水増し。
「……う、上手いもんだな」
「うわあっ?!」
いきなり背後から声がかかって、僕は文字通り飛び上がった。親
方だった。いつの間にか集中していたらしく、全く気付けなかった。
「え、あの、その、えーと」
悪い遊びが見つかった子供のように、僕は狼狽した。言い訳を探
して、言葉が継げない。頭が真っ白になる。
「それ、俺にくれないか」
「――は?」
だから、親方の言葉にも、間抜けな反応を返すことしかできなか
った。
87 :
3/5:2007/01/03(水) 00:16:45 発信元:124.84.116.78
公共住宅の前には、ちょっとした広場とベンチがある。
僕はそのベンチに一人で座り、時間を潰していた。こちらに来て
から初めて顔を覗かせた太陽のお陰で、今日は少しだけ暖かい。
僕は、ポケットからメモ帳を取り出した。例のページを見る。裸
でシャワーを浴びる美女の後姿。描きかけだからと断ったけど、完
成したらタバコと交換する約束になった。僕は別にタバコを吸わな
いのに、向こうが強引にそう約束させた。よっぽど気に入ってくれ
たらしい。
思い返して、僕は少し笑った。まるっきり、数年前の焼き直しだ
――嫌でも昔のことを思い出す。
十五の時、僕たち家族の住んでいたアパートの隣室に、とんでも
なく綺麗な女の人が住んでいた。どうやら未亡人だったらしいけど、
詳しいことは今でも知らない。親しい付き合いがあったわけじゃな
いけど、当時の僕はその人にくびったけだった。
それだけだったら、ただの思春期の甘酸っぱい思い出で済んだん
だろうけど――ところがある時。ペンキ塗りのバイトをしていて、
僕はとんでもない発見をした。近くのアパートの屋上から、その人
の浴室を覗くことができたのだ。夏場だったせいか、窓も開けられ
ていた。以来、毎日のように僕はそこに通うようになった。通うた
びに、その人が水浴びをする姿が、目の奥に焼きついた。
それを絵に描いてみようなんて思いつくのに、そんなに時間はか
からなかった。僕は昔から絵を描くのが好きで、テレビや漫画なん
かを通して見える「憧れ」を、チラシの裏やノートの切れ端でしょ
っちゅう形にしていた。当時の憧れは、まさしく彼女の裸身だった
わけだ。最初は上手く描けなかったけど、三回も通うとコツを掴ん
で、デフォルメしつつ多少のアレンジまで加えられるようにまでな
った。
88 :
4.5/5:2007/01/03(水) 00:19:29 発信元:124.84.116.78
そうして、そこに通うようになってから少し経った頃。いつもの
場所で、いつものように彼女の姿を描いていると、唐突に声をかけ
られた。彼は駐留軍の軍人だと名乗ったから、捕まえられるのかと
僕は怯えたけれど、そうじゃなかった。なんと、彼は僕と同じよう
に彼女のファンで、僕の描いた彼女の絵を買い取りたいと言い出し
たのだ。
彼と、彼の仲間数人に同じように絵を売ってやって、これは使える
と僕は確信した。以来、僕は少し妹で「構図の勉強」をして、進駐
軍の兵士たちを相手に春画――そんな大層な名前を頂くような絵柄
じゃ無かったんだけど――を売るようになった。小遣い稼ぎ程度に
は儲かって、一部の兵士たちの間では話題になった。隣の未亡人が
引っ越して居なくなってしまった後も、しばらくはその商売を続け
ていた。
思えば、あの頃はまだ、絵を描くのが楽しかった。いいと思うも
のを、好きなように描いて、それを認めてくれる人が居て。
僕は、どこで間違えてしまったのだろう。
89 :
4.5/5:2007/01/03(水) 00:21:12 発信元:124.84.116.78
「……ねぇ、ちょっと」
聞き覚えのある声が、追憶の渦から僕を引きずり出した。初日の
彼女が、僕の顔を覗き込んでいた。
「聞こえてる?」
「ん……、うん」
軽く目を擦る。ちょっとだけ眠りかけていたらしく、涙が滲んで
いた。こんなところで寝たら死ぬわよ、なんて笑えないことを言っ
て、彼女は少しだけ口元を緩めた。
それから一瞬視線を反らして、渋い顔になった後、少し無理をし
て微笑みを作り、彼女は言った。
「一昨日は、悪かったわ。そっちの事情も考えないで」
「ん、いや、いいんだよ。僕の方こそ、手伝ってやれば良かった」
いいのよ、なんて返して、彼女は安心したような顔になった。彼
女の方から謝罪の言葉を切り出してきたのは、少し意外だった。喫
茶店の店員が言っていた通り、そんなに悪い子でも無いのかもしれ
ない――気は強そうだけど。
そんなわけで、僕は彼女の印象を改めたんだけど――
90 :
5/5:2007/01/03(水) 00:22:44 発信元:124.84.116.78
「ねぇ、何見てるの?」
ところが。そのまま立ち去っておけばいいものを、彼女は僕の手
にしたメモ帳に興味を示した。あろうことか、寝ぼけて反応の鈍か
った僕から見事にそれを掠め取りやがった。
最初のページを開いて、彼女は見る見るうちに顔を引きつらせる。
「え、えーと、これは――萌え絵という奴?」
会話を続けようとする努力が痛ましい。でも、声が明らかに震え
ている。顔も真っ赤だ。
「そうだねぇ。まぁ、似てるといえば似てるかな」
漫画やアニメのトレースから絵の世界に入った僕の絵柄は、多少
そちらに偏っているし。
なんて、その努力を買って真面目に答えてやったのに、彼女は早
々に僕にメモ帳を押し返すと、それじゃ、なんて短く呟き、共同住
宅の方へと早足で駆けていった。……まぁ、女の子なら当然の反応
だと思う。
僕は苦笑しつつ、その背中を見送った。なんとなく、これからも
彼女とはずっと上手くやれない予感がした。
書き忘れ。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
まぁ、気にする人も居ないと思うんだけど。
それと、シベリアを覗くようになったのはつい最近なので、なんだか細かいところがおかしかったり違和感を覚えたりするかもしれません。そんなときは、舞台は飽くまで「開拓街」だって言い聞かせて無理矢理納得してください。
あと、番号振るのはもうやめようと思った。無理だこりゃ。
うう。それにしても人イネ。いつか目に留めてくれる人が居ればいいんだけど。
中心街の自警団本部から少し歩けば、すぐに荒野が開ける。
自警団の基礎教練は、そうした荒野の一角で行われた。かつては
訓練場があったそうだが、吹雪で破壊されてしまったそうだ。
「トトー、大丈夫か?」
青く澄み渡った空の端から、ボーリャが覗き込んできた。朝から
続いていた教練も、ようやく休憩時間に入ったらしい。
僕はというと、最初のマラソンで貧血を起こして、既に雪原に転
がされていた。
「元気だなぁ、ボーリャは」
「ん。そりゃ、都会モンと比べりゃあな」
そう言って、ボーリャはニカッと笑う。出身は話していないとい
うのに、どうやら僕のことを都会モンと決め付けてしまったらしい。
まぁ、あながち間違ってはいない。
「……そいつが例の?」
と、不意に、やたら低い声が響いた。初めて聞く声だ。反射的に
視線を向けると、逆光にシルエットが浮かび上がっていた。かなり
大柄だ。
立ち眩みがしたけど、なんとかふらつかずに立ち上がれた。ボー
リャの連れてきた人物をを見る。長身の男だった。釣り目がちの鋭
い目つきが、値踏みするようにこちらを伺っている。
「えーと……?」
「ん。こいつは、サーシャ。友達なんだ」
「少しは、話を聞いてる。よろしく」
短い言葉にも、いちいち威圧感というか、迫力があって反射的に
萎縮してしまう。愛想笑いを貼り付けるのに苦労した。サーシャは
ボーリャよりも一つ年上とのことだった。それはつまり、僕よりも
一つ年下ということで。……なんだか立場が無いと思う。
サーシャは一年前から自警団に在籍していて、僕らよりも先輩だ
った。自警団で困ったことがあったらこいつに聞け、なんて、ボー
リャは言ったけど――
「……何だ?」
「い、いや」
正直、ちょっと怖くて聞けそうに無い。
「そんでさ。サーシャともう一人呼んで、今夜お前んちで歓迎会やるから」
「へ?」
ボーリャの突拍子も無い言葉に、思わず間抜けな声が漏れた。
「い、いいよ。そういうの苦手なんだ」
「遠慮すんなよ。わかんないこともあるだろ?」
それからも色々理由をつけて断ろうとしたけれど、休憩終了の笛
が鳴って時間切れになった。
「……気にするな。騒ぐ理由が欲しいんだよ」
走っていくボーリャの背中を見ながら、サーシャがぼそりと言っ
た。表情に乏しい顔が、なんだか苦笑しているように見える。
お馴染みのため息が漏れた。なんだか妙なことになってしまった。
その三人目というのが、それは面倒な奴だった。
「一番! スラヴァ! 歌います!」
「おー、歌え歌え」
端的に言って、うるさい。
「トトも歌います!」
「歌わないよ」
そして、馴れ馴れしい。
ここに来てから馴れ馴れしい人には何人か会ったけど、実際に近
くまで寄られてしまったのはこのスラヴァが最初だ。
合流した時から調子のいい奴だとは思っていたけれど、酒が入っ
てからはますます酷くなっている。見ているだけなら面白い奴で済
んだろうけど、実際絡まれてみると迷惑でしかない。
最初はボーリャがある程度抑えていてくれたけれど、そのボーリ
ャも酒が進むにつれなんだか怪しい目になってきて、終いには煽る
ようになった。サーシャはというと、最初から部屋の隅でよくわか
らない酒をちびちびとやっている。視線でそれとなく救援を求めた
けど、軽やかに無視された。さっきから、かわすのがいちいち上手
い。三人は幼馴染だというから、互いに扱い慣れているのだろう。
そして、それがわかっているからこそ、このスラヴァは僕に狙い
を定めたわけだ。
「トトはノリ悪ぃいなー。ダメだなー」
「ダメだなー」
僕は困り顔で相槌を打つしかなかった。
本当に手に負えない。
こういう奴は、こっちの事情なんかお構いなしに近寄ってくるく
せに、興味を失うのも早い。だから、あんまり入れ込んでしまうと
あっさり裏切られたりする。そういうのは、もう嫌と言うほど経験
してきた。
だから、特にこういう人間とは関わらないように、気を遣うつも
りでいたのに。
「……体は正直」
「あぁー? なんか言ったか?」
ろれつの回らない問いかけには答えず、僕は苦手なアルコールを
煽った。苦い。まずい。甘っちょろい僕には身に凍みる。
96 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/01/31(水) 00:04:35 発信元:222.2.214.249
今北
>>21のお題で短編書いてみた。
「人形」
当初、プラスチックで出来た顔は肌の艶やかさを一層に引き立てたが、
遊んでいる内に艶やかさは消えたどころか、印刷された目が消えかかり、
しかし、長年見てきたものだけに、不気味さは感じず、
楽しそうに笑っているように見えた。
よくある話で、身近な人の変化には気づかないと言ったところだろうか。
長年の付き合いがある人形だが、もう私には必要の無いものであり、
母親、父親と共に実家に留守番して貰う事にする。
長年お世話になりました。私は嫁ぎます。
感想・批評・酷評ってしてもぉk?
まぁたいしたことは言えんけど
>>97 したけりゃすればいいんじゃないか。所詮は死に掛けの過疎スレだろう。
文章うp汁!俺がお前らを小説家にしてやる
100 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/02/10(土) 12:51:47 発信元:124.35.201.49
日本国民の1/8が信者である巨大な宗教団体があって
その団体の指導者が死ぬ間際に
「祈るだけでは駄目だ、行動を起こせ。
武器を持ち、武力をもって世界に広めるんだ、でないと地球は仏罰によって滅んでしまうだろう。」
と言って死んでしまったのを機に日本で戦争が起こる・・・。
って話を考えついたけど誰か続き書いてくれ
101 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/04/11(水) 09:07:59 発信元:61.124.145.105
102 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/06/09(土) 17:13:53 発信元:211.2.102.243 BE:604219695-2BP(51)
>>1は筆を握った
しかしその筆先はなぜか震えている
無理も無い
こんなスレを立てたばかりに
妙な罪悪感がつきまとうのだろう
「くそ!なんでこんなハメに…」
>>1の後悔とは裏腹に住人たちの期待は膨らむばかりであった…
>>100 内紛と革命は紙一重だな、とそれを読んで思った。
104 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/07/25(水) 01:40:42 発信元:61.113.89.178
自称小説家なら誰でもいつでもなれる
105 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 14:04:19 発信元:221.188.54.237
澄んだ軽い空気が、空へ浮き上がる、空の青さの目立つ、冬の朝―――
少年は登校中に見かけた幼馴染の少女を後ろから驚かした。
すると少女は声も上げず、死んだ。
ショック死だった。
少年は絶望した。こんなつもりじゃなかった。
倒れた少女の前に立ち尽くす少年。
透明な少女の魂をまとい、軽く浮き上がる空気。
少年の意識も一緒に浮き上がりそうだった。
いつもより青く、大きく感じる空に、吸い上げられそうになった。
しかし、少年は大地に居る自分を見下ろし、必死に自分を取り留めた。
どこか現実を感じられない、浮き上がった意識と
体の中で現実を覚まそうと、目覚ましベルのように鳴る心臓の音。
少女を隠さないと、殺人犯になってしまう!
まだ取り戻せない現実感を無視して、少年は少女を担いだ。
106 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 14:17:22 発信元:221.188.54.237
少女は思いのほか重く、少年は苦労した。
目が左右逆を向き、透明だった空気がだんだんと青く見えてきた。ヤバイ。
少年はあせり、服を脱いだ。
「そうだ!服を脱げば重さが軽くなって、少女を担げるようになるかも!」
少年はパンツ一丁になり、少女を担いだ。
「ワッショイ!ワッショイ!」
少女を下から小さく押し上げながら、一人で街一番の大通りへと向かった。
大通り。交通量が激しく、今日もたくさんの車が通っている。
そこへパンツ一丁の少年が少女を担いで道路の真ん中を塞ぎ、歩き出した。
「ワッショイ!ワッショイ!」
急ブレーキで急停止した赤いスポーツカーから、金髪の青年が現れた。
「おい!テメェあぶねぇだろうが!何してんだ!」
「ワッショイ!ワッショイ!」
もう少年の目は白目であった。
ただひたすらに、少女の魂を呼び戻す為、少女を担いでいたのだ。
金髪の青年は、少年の白目を見て、すぐにそれを悟った。
これは儀式なのだ――。
少年が、精一杯少女を救おうとする、儀式なのだ。
金髪の青年はパンツ一丁になり、少年と共に少女を担いだ。
「ワッショイ!ワッショイ!」
「わーっしょい!わーっしょい!」
二人の悲しい掛け声が、道路を塞いだ。
107 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 14:28:47 発信元:221.188.54.237
ざわつき、どよめく大通り。
周りの人々はすぐに異変に気づいた。
大通りで足止めを食らったトラックやタクシーから、運転手が飛び出てきた。
「ワッショイ!ワッショイ!」
「わーっしょい!わーっしょい!」
必死に少女を担ぐ少年と青年。
トラックから降りてきたハチマキをしたおじさんが二人の下へと静かに歩み寄った。
ハチマキは威嚇するでもなく、静止するでもなく、促すように二人の肩に手を置いた。
青年が、もしこの儀式を中断する気なら全力で戦ってやろう、などと腹の内で考えていると
ハチマキは微笑みながら言った。
「そんな腰の入ってない掛け声じゃ、少女は目をさまさんぞ。」
白目を向いた少年の顔は、もう真っ赤で、唾があわ立っていた。
青年は、より一層大きい声を腹からだして、少女を励ました。
ハチマキは着ていた洋服を脱ぎ、パンツとハチマキだけになり声をあらげた。
「うあっしょい!うあっしょい! それ!!」
108 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 14:41:06 発信元:221.188.54.237
今、3人の戦士が戦っていている。
地獄へと続く大通りを逆走し、少女の魂を連れ戻そうと叫んでいる。
「ワッショイ!ワッショイ!」
「わーっしょい!わーっしょい!」
「うあっしょい!うあっしょい! それ!」
まだ若い少年、まだ無垢な青年。
なにより、社会に惑わされず自分と少女のために戦うハチマキの姿。
それを見ていたメガネをしていたタクシーの運転手が、
知らず知らずのうちに流れていた自分の涙に気づくのに、そう時間はかからなかった。
メガネは下をうつむき、ネクタイをほどいた。
今まで、嫌な客、理不尽な客にも頭をさげて、ただ金の為に車を走らせる毎日。
何かのために戦うなんて事をすっかり忘れていた。
あばら骨をむき出しにした痩せた体を出し、パンツ一丁になったメガネは3人のもとへと歩んだ。
「私にも、少女の魂を運ぶ手伝いをさせてくれませんか。
魂を目的地まで運んでやるのが、私の仕事なんですよ。」
もう、メガネの目に過去の曇りは無かった。
「頼むぜ!」「あんたも漢だ!」
青年とハチマキがそう答えると、メガネも共に戦い始めた。
「ワッショイ!ワッショイ!」
「わーっしょい!わーっしょい!」
「うあっしょい!うあっしょい! それ!」
「アッソイ!アッソイ!」
109 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 14:52:07 発信元:221.188.54.237
育った環境も、考え方も、仕事も違う、4人の勇者が
ただ一人のお姫様の為に、必死に戦いをしている。
はたから見れば異様とも思えるその光景。
しかし、純粋に地獄へ戦いを挑む勇者一人一人の顔を見れば
人々の心に暖かいものが芽生えるのも、不思議ではなかった。
一人、また一人と 少女の担ぎ手が増えていく。
子どもから、女性まで。
少年の気持ちを繋ぎ、支えた。
少女を励ました。
「ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ!」
祭りのボルテージも最高潮に達したとき、少女の体に異変が起こった。
110 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 15:02:10 発信元:221.188.54.237
少女のお腹が、真っ白に純白に光っている。
それに気づいた青年は、みんなを呼び止めた。
静まり返る一同。
しかし、その中でも一人だけ掛け声をやめない人物がいた。
少年だ。
「ワッショイ!ワッショイ!」
ハチマキが駆け寄り、少年を抱きかかえても、少年は踊りをやめようとはしなかった。
もう、意識が・・・。
悲しくこだまする少年の掛け声に包まれながら、少女は浮き上がる。
「おお」と周囲がどよめいた。
少女はどんどん浮き上がり、光を増した。
キーンという耳鳴りが聞こえたかと思うと、カメラのフラッシュのような閃光が走り、少女は跡形もなく姿を消した。
みんながクチを開いて、空中を見つめていた。
そこには、まだ戦い続け、叫び続ける戦士の悲しい声だけが響いていた。
111 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2007/12/14(金) 15:15:06 発信元:221.188.54.237
澄んだ空気が、悲しいこだまに包まれて大地へとどまる。
空の青さの目立つ、冬の昼―――
どことなく軽く感じていた空気に、生命が宿った。
空からフワリと温かく、それでいて冷たい光が降りてきた。
「雪だ・・・」
その光は少年の鼻の先へチョンと手を触れると
少年は我に帰った。
「あれ・・ボクは・・・」と、息を切らす少年。
ハチマキが少年を強く抱きしめた。
「もういいんだ。オマエはよくやった。」
ハチマキは泣いていた。少年の目からも涙がこぼれた。
メガネは、タクシーに寄りかかりタバコをふかした。
手の甲に落ちてくる雪を眺めながら呟いた。
「あの少女は、天使だったんだ・・・」
青年が少年の肩に手をあて、共に黙って空を見上げた。
青くて、したたかで、どこか人を呼んでいるような空。
そんな空が、少年には少女が笑ったように思えた。
おわり
112 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2008/01/05(土) 00:33:59 発信元:60.56.85.236
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/|\/ / / |/ / [ 祭 _] ∧∧
/| / / /ヽ 三____|∪ /⌒ヽ)
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| | |/| |__|/ 三三 三___|∪
| |/| |/ 三三 (/~∪
| | |/ 三三 三三
| |/ 三三
| / 三三
|/ 三三
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113 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2008/01/07(月) 02:55:32 発信元:218.43.24.49
ワ・・・ワッショイ!ワッショイ!
ワッショイ!ワ・・・
114 :
竹石敏規:2008/02/16(土) 22:42:03 発信元:218.251.68.4
【私の負け組「サイレント・テロ」活動】
勝ち組は負け組を馬鹿にしました。負け組の上に成り立つ勝ち組を引きずり落とすには負け組が競争社会を放棄すればいいのです
・とにかく競争心を持ちません。負けるが勝ちです。
・やむを得ず仕事をする場合も可能な限りさぼります。 がんばっても勝ち組に吸い取られるだけです
・食事…100円ショップ 吉野家 松屋で済ませます 高級飲食店で無駄金は使いません
・結婚、出産、生産性を促す社会活動には、加担しません
・己の健康状態など考えません。
・勝ち組の不幸 転落ニュースを楽しみます。頑張ったのに落ちてきた人を笑ってあげましょう。
・他人や社会には嵌められないようにチェックはしますが、競争には加わりません
・基本思考は、「人生なんて時間つぶし」
・奴隷労働型企業では、働きません 自分の働いた半分は楽している勝ち組に搾取されるだけです
・100人が一斉に頑張ってもそのうち5人がいい思いをするだけです。95人が頑張った分は5人に搾取されます
・高級品 高級車 住宅は、使いません買いません。ブランドいりません。
・学歴も金もいい女も思い出も墓場にもっていけません 。知能が高けりゃすばらしいなんてただの幻想です。みんな灰になるだけ。
・物事はかんがえよう 優劣なんてどうでもいい。負けたくないのは動物の本能ですが負けるが勝ちに持って行きましょう。
・勝ち組は負け組を眺めて気持ちよくなりました 逆に負け組だって基本は自分さえ気持ちよく生きれればいいのです
・テレビは宣伝会社、雑誌の記事はなにか買わせようと煽っているだけ
・勝ち組の競争の誘いにはのりません
・できるだけまめにオナニーし30後半までがんばって性欲と付き合っていきます
・ネットをフル活用しすべての娯楽、生活情報収集は基本料のみで済ませます
・ひとはすべて快楽で動いています。脳内の電気信号で一生振り回されているだけ
・快楽に貴賎はありません。ゴルフ、飲み屋、外食など無駄金を使わず、ごろ寝妄想オナニー、ネット、金のかからない趣味、自炊など
無限の可能性を各自で探すような快楽追求を心がけましょう。
【これを読んだニートはいますぐ3つ以上コピペしないとニートがさらに”長引きます”♪】
あぼーん
116 :
かめだ母:2008/02/16(土) 23:00:21 発信元:211.121.9.61
化粧品と住宅は高級品ですが、車はポンコツです。彼も三流大学です。
こどもたちは、三流大学にも入れませんでした。ゲーム三昧に父親が
教育しました。教育方針の違いで離婚しょうと思いながら、ザルや鍋を
彼になげつけましたが、どうにもなりませんでした。忍耐も限界。
117 :
とんま:2008/02/16(土) 23:09:00 発信元:211.121.9.61
豊胸手術する母親と生理にとまどう娘・・・彼女の身体はいったい何?
本当によくわからない。わからないのである。
ここはもらった
何書こうかなぁ……
やっぱり厨二かな……。
プロットモドキ。
主人公 男
目的 自分の成長。
ストーリー。
何をやっても長続きしない主人公が、人生をかけて一念発起。
他人と出逢い、成長していく過程を書ければいいなぁ。
キャラ
貧乏神。(幼女)
結城 はるか(ヒロイン)
高田 俊也(親友)
【序】
貧との日々。
【起】
貧との出会い。
【承】
厨二的に敵を用意して、バトル(貧はどうしよう……)【転】
貧の正体とかかなぁ
【結】
貧を助ける。
【終】
出来ればハッピーエンドにしたいなぁ
これじゃあさっぱり解らないかな……
もう少し煮詰めよう。
キーワード。
貧乏神と福の神。
束縛と拒絶。
観測と結果。
異能と平凡。
経験値で貧乏神が福の神に?何と戦うのか……
厨二前提だから、人なら異能、後は人外の何かかなぁ
さて、ここからがストーリーと……
貧乏神(呼称 貧)
キャラ付けは、過去形と現在形の逆転口調。
見た目は12〜14程度の少女。
上から、75 58 78 身長は145位。
髪は黒。ショート、(肩ほどのもの)
主人公。
貧の浸いてるアパートに引っ越して来る。
普通の少年。特技は左手で触れたモノの状態を解除する力。
例)状態を正常にする。つまり、傷を負うを異常とすると、その前の状態にするとなる。つまり、傷を治した様に見える。
例2)紙が折れているが異常ならば、折れていない状態に戻す。
制限)自分が正常な状態を知っていなければならない。
制限2)一定時間以上経過したモノは治す事ができない。
制限3)自分には使う事が出来ない。
制限4)任意で発動出来ない。
制限5)能力は対象により制限が変化し、効力も変動する。
制限6)認識出来ないものには作用しない。
制限7)この能力は反転する事もある。
以上を踏まえ、大前提として、自己の能力を認識していない事とする。
性格 気弱、
一人称 僕
備考 視界の切り替えと、髪形、服装の3点で性格の切り替えを可能とする。
ダメだ! ダメダメだ!
寂しい。
寂しすぐる
俺も何か書こうかな
127 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/01/01(木) 12:12:21 発信元:121.2.158.125
128 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/01/19(月) 00:12:28 発信元:210.153.84.196
残ってるもんだな
129 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/01/28(水) 16:04:02 発信元:202.215.32.235
遠慮しないでどんどん書いてください
131 :
いやあ名無しってほんとにいいもんですね:
支援あげ