IP開示や名誉棄損裁判を起こされている人6

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539無責任な名無しさん
発信者情報開示請求事件
東京地方裁判所平成23年(ワ)第35106号
平成24年5月23日民事第32部判決
口頭弁論終結日 平成24年3月7日

     判  決

原告 A
原告 B
上記両名訴訟代理人弁護士清水陽平
同訴訟復代理人弁護士武内優宏
被告ソフトバンクBB株式会社
同代表者代表取締役C
同訴訟代理人弁護士高橋聖
同 大島正照
同 長田旬平
同 森安博行
同 熊谷祐香
同 佐々木政明
被告KDDI株式会社
同代表者代表取締役D
同訴訟代理人弁護士星川勇二
同 渡部英人
同 星川信行
同 竹本英世
被告イー・アクセス株式会社
同代表者代表取締役E
同訴訟代理人弁護士金子和弘
   主  文

原告らの各請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は,原告らの負担とする。
540無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:23:42.40 ID:+f3661of
     事実及び理由

第1請求
1被告ソフトバンクBB株式会社は,原告Aに対し,別紙投稿記事目録1記載の各
投稿記事に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 被告KDDI株式会社は,原告Aに対し,別紙投稿記事目録2記載の各投稿記
事に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
3 被告イー・アクセス株式会社は,原告Bに対し,別紙投稿記事目録3記載の各投
稿記事に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要
本件は,原告らが,氏名不詳者がインターネット上の電子掲示板にした書き込み
によってプライバシーなどの権利を侵害されたと主張して,同書き込みについてイン
ターネット接続サービスを提供した,いわゆる経由プロバイダである被告らに対し,
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関す
る法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,上記書き込みを行った氏名不詳者の
氏名等の情報の開示を求める事案である。
1前提事実
 以下の各事実については,証拠等を掲記する事実は当該証拠等によりこれを認
め,その余の事実は当事者間に争いがない。
541無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:24:54.43 ID:cZlnvFgm
(1)原告A(以下「原告A」という。)及び原告B(以下「原告B」という。)は,いずれも,
平成23年6月当時,岩手県北上市立a小学校(以下「本件小学校」という。)の教員
であった者である(甲5及び6)。
(2)被告ソフトバンクBB株式会社(以下「被告ソフトバンク」という。),被告KDDI株
式会社(以下「被告KDDI」という。)及び被告イー・アクセス株式会社(以下「被告イ
ー・アクセス」という。)は,いずれも,いわゆる経由プロバイダであり,法2条3号にい
う「特定電気通信役務提供者」に当たる。
(3)氏名不詳者は,インターネット上の匿名掲示板である「2ちゃんねる」(http:/
/www.2ch.net。以下「本件ウェブサイト」という。)内の「【つこうた】F」と題するス
レッド(以下「本件スレッド」という。)において,別紙投稿記事目録1から3の各「投稿
内容」欄記載の書き込みを,同目録1から3の各「投稿日時」欄記載の年月日に行
い,不特定多数の閲覧に供した(甲1,弁論の全趣旨)。
 以下,別紙投稿記事目録1から3記載の各書き込みを「本件各書き込み」と総称す
るほか,本件各書き込みのうち,同目録1記載の各書き込みを「本件書き込み1」と
総称し,同目録1記載の各書き込みについて,各「番号」欄の記載に従い,例えば,
「番号」欄「132」記載の書き込みを「本件書き込み1−132」などというほか,同目録
2及び3記載の各書き込みを「本件書き込み2」及び「本件書き込み3」という。また,
本件各書き込みの発信者を「本件各発信者」と総称する。
(4)本件各発信者は,本件書き込み1については被告ソフトバンクを、本件書き込
み2については被告KDDIを,本件書き込み3については被告イー・アクセスをそれ
542無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:26:26.76 ID:UjSXfR/M
ぞれ経由プロバイダとして書き込んだ。
(5)被告ソフトバンクは,本件書き込み1に係る発信者の,被告KDDIは,本件書き
込み2に係る発信者の,被告イー・アクセスは,本件書き込み3に係る発信者の氏名,
住所等の別紙発信者情報目録記載の情報を保有している(弁論の全趣旨)。
2 争点
(1)本件各書き込みがなされたことにより,原告らの権利が侵害されたことが明らか
であるか(権利侵害の明白性)
(原告Aの主張)
ア 同定可能性
本件スレッドのタイトルや本件書き込み1及び同2の内容からして,本件書き込み1
及び同2が原告Aについて記載されたものであることは明らかである。
イ プライバシー侵害
本件書き込み1及び同2は,いずれも,本件スレッドのタイトルと併せて読めば,原
告Aが,本件小学校の同僚であったG(以下「G」という。)と不倫関係にあった(以下,
この事実を「本件不倫関係」という。)との原告Aのプライバシーに係る情報を記載す
るものであるから,原告Aのプライバシーを侵害するものである。
本件不倫関係は真実であるが,そもそも,原告AがGとの問で送受信していたメー
ルがウイルス感染により公開されてしまった結果,本件スレッドが開設され,本件各
書き込みが行われたのであって,本件不倫関係が原告Aにおいて公開を望まない
情報であったことは明らかである。このような本件の事情の下では,プライバシー侵
543無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:27:51.40 ID:kPDOaze1
害の要件として,非公知性は必要ではないと解するべきである。
仮に,非公知性がプライバシー侵害の要件となるとしても,本件不倫関係は,本件
スレッドという限定された場面においてのみ知られており,世間一般に公知であった
わけではないから,非公知性は肯定される。
違法性阻却事由の不存在
 原告Aは教員であるが,原告Aが誰と交際しているかは私的な事柄であり,勤務
先の地域性からしても,社会の正当な関心事とはいえない。
 また,本件書き込み1及び同2は,全世界に発信され,半永久的に閲覧が可能と
なるインターネットへの書き込みという形で行われたものであり,その表現方法も不
当なものである。
 よって,本件書き込み1及び同2が,公人に対する評価を下すに必要又は有益と
認められる範囲の表現として違法性が阻却されることはない。
エ したがって,本件書き込み1及び同2が原告Aの権利を侵害することは明らかで
ある。
(被告ソフトバンクの主張)
 本件書き込み1について,原告Aの主張は争う。
(被告KDDIの主張)
ア プライバシーの非侵害性
 本件書き込み2は,具体的事実を摘示するものではなく,たんに投稿者の雑感が
述べられているにすぎないものであるから,本件書き込み2自体から,原告AとGが
544無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:30:35.35 ID:6dVxE/bz
不倫をしていたとの本件不倫関係が明らかになるものではなく,原告Aのプライバシ
ーを侵害するものではない。
 仮に,本件書き込み2から,原告AとGが不倫をしていたとの事実が読み取れると
しても,同事実は,本件書き込み2以前の書き込みにより読者にとって明らかである
から,プライバシー侵害の要件である非公知性を満たさない。原告Aは本件不倫関
係が明らかとなった経緯を主張するが,いかなる経緯にせよ,公知になっている以
上,プライバシー侵害はないといわざるをえない。
イ 違法性阻却事由の存在
 仮に,本件書き込み2が原告Aのプライバシーを侵害するものであるとしても,本
件書き込み2は,公立小学校の教員という公人である原告Aについて,その教育活
動の資質に関する情幸削こついて書き込まれたものであるから,公人に対する評価を
下すに必要又は有益と認められる範囲の表現として,違法性が阻却される。
ウ したがって,本件書き込み2が原告Aの権利を侵害することが明白であるとはい
えない。
(原告Bの主張)
ア 同定可能性
 本件書き込み3の内容及び原告Bが原告Aの同僚である教員であったことからし
て,本件書き込み3の記載が原告Bに関するものであることは明らかである。
イ 権利侵害
原告Bは,本件スレッドを閲覧し,原告Aに対し人格権侵害にわたる攻撃がなされ
ていたことから,本件スレッドの管理者に対し,削除を申請したところ,本件書き込み
545無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:31:39.29 ID:CEPgT0KU
3がなされたものである。
 上記のような本件書き込み3に至る経緯に加え,本件書き込み3は,その内容自
体,原告Bについて,「頭の悪い」,「子どもが気の毒」と社会通念上許容される限度
を超えて侮辱するものであるから,本件書き込み3は,原告Bの権利を侵害するもの
であることは明らかである。
(被告イー・アクセスの主張)
本件書き込み3は,教師一般について,社会に出ていないのでどうしようもない旨
の一般的な意見を述べるに過ぎず,原告Bについて具体的事実を摘示してその名
誉を毀損するものではない。
本件書き込み3は,「頭の悪い」などの抽象的な表現にとどまっており,これにより,
一般読者が原告Bが頭が悪いと思うこともないから,社会通念上許容される限度を
超える侮辱行為であるとはいえない。
 したがって,本件書き込み3が原告Bの権利を侵害することが明白であるとはいえ
ない。
(2)原告に発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(正当理由の有無)
(原告らの主張)
原告らは,本件各発信者に対して,不法行為に基づく損害賠償請求等の準備を
しており,そのためには,本件各発信者の氏名等の発信者情報が必要であって,発
信者情報開示を求める正当理由がある。
546無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:33:11.90 ID:2Bs5b0bp
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1争点(1)(権利侵害の明白性)について
(1)法4条1項1号が定める「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の
権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは,発信者が有するプライバシー及び
表現の自由の利益と被害者の権利回復を図る必要性の調和という観点から,権利
麦害がされたことが明らかであることを必要とした要件であるから,権利が侵害され
たことに加え,違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを,
原告らにおいて主張,立証する必要があると解するのが相当である。
(2)本件各書き込みの権利侵害性
ア 後掲各証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(ア)平成23年5月当時,原告AとGは本件不倫関係にあったところ,原告Aが使用
していたパーソナルコンピュータが個人情報流出ウイルス(通称「仁義なきキンタマ」)
に感染したため,原告AがGとの間で送受信したメール(以下「本件メール」と総称
する。)が,インターネット利用者においてファイル共有ソフトを用いて取得すること
が可能な状態となった(以下「本件メール流出」という。)(甲5,弁論の全趣旨)。
(イ)氏名不詳者は,本件メール流出を受けて,平成23年5月24日,本件スレッドを
開設した上,投稿番号2の書き込みとして,原告が本件小学校の教員であること及
びGが教員であることを摘示し,さらに,本件メールの一部を転載した(甲1,弁論の
全趣旨)。なお,本件スレッドのタイトルの「つこうた」とは,個人情報流出ウイルスに
547無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:34:14.55 ID:e/y/u9Yh
感染して個人情報が流出したことを示すインターネット上の俗語である。
(ウ)また,本件スレッドには,投稿番号6の書き込みとして,原告AとGがいずれも既
婚者であり,子供があることが摘示されるとともに,本件メールのダウンロード先のU
RL及びダウンロードの際に必要なパスワードが記載された(甲1,弁論の全趣旨)。
(ェ)原告Bは,本件スレッドを閲覧し,同僚の原告Aを庇うため,本件スレッドの削
除を本件ウェブサイトの管理者に要請したり,本件スレッドに直接書き込みを行った
りしたところ,本件書き込み3等の原告Bについての書き込みも本件スレッドに行わ
れるようになった(甲6,甲8,弁論の全趣旨)。
イ 以上の認定事実を前提に,本件各書き込みの権利侵害性について検討する。
(ア)本件書き込み1及び同2について(原告Aの請求関係)
 原告Aは,本件書き込み1及び同2について,いずれも,原告Aが本件不倫関係
にあったことを摘示するものであるから,原告Aのプライバシーを侵害するものであ
る旨主張する。
 しかしながら,本件書き込み1及び同2は,本件不倫関係及びその具体的内容を
示す本件メールについて,本件スレッドのタイトルや,投稿番号2及び同6の書き込
み(前記ア(イ)及び(ウ))等により本件スレッドを閲覧する者において明らかとなっ
ていたことから,これを前提に,本件書き込み1及び同2の各発信者において,原告
AやGについて,公務員の最底辺である(本件書き込み1−493),原告AとGは教
師を続けると思う(本件書き込み1−505),恥知らず(本件書き込み1−535),原
548無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:35:49.99 ID:VLA4M6jr
告AとGは今後も不倫関係を継続する(本件書き込み1−553),税金泥棒(本件書
き込み1−723),教師を辞職するべきである(本件書き込み1−742),原告AとG
の配偶者が可哀想であり,子供は地獄である(本件書き込み2)などの旨の書き込
みをしているが,これは,原告A及びGが本件不倫関係にあることについての意見
ないし感想を述べたものであるといえる。
そうすると,本件書き込み1及び同2は,本件不倫関係及び本件メールという原告
Aのプライバシーにわたる情報についての事実を基礎とし,これについての意見な
いし感想を述べることを主題とするものであるが,本件不倫関係や本件メールにつ
いて,本件スレッドのタイトル並びに投稿番号1,2及び同6により本件スレッドを閲
覧する者にとって明らかとなっていた事実を超えて,新たに原告Aのプライバシーに
わたる情報を具体的に摘示するものではないから,本件書き込み1及び同2により,
原告Aのプライバシーが侵害されたとはいえないと解するのが相当である。
また,本件書き込み1−132や同1−539は,原告AとGが本件不倫関係にあるこ
とを摘示するものにすぎず,これも,すでに本件スレッドを閲覧するものにとって明ら
かな情報を超えて原告Aのプライバシーにわたる情報を摘示するものではないから,
原告Aの権利を侵害するものと解することはできない。
 以上の他原告Aの主張を勘案し,本件全証拠によっても,本件書き込み1及び
同2が,原告Aの権利を侵害するものであると認めることはできない。
原告Aは,本件メール流出が本件スレッドの開設に至る原因であることや,本件各
549無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:36:56.98 ID:kIvY5rhz
書き込みはインターネット上において半永久的に閲覧可能であるとの点をもって,そ
の権利侵害性を主張するものと解されるが,本件スレッドの開設者らの行為が原告
Aのプライバシーを侵害するものであるかはともかく,本件各書き込み1及び同2に
っいて,原告Aのプライバシーを侵害するものであると解することができないのは上
記説示のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
(イ)本件書き込み3について(原告Bの請求関係)
 原告Bは,その書き込みの経緯や記載内容からして,本件書き込み3が原告Bを
社会通念上許容される限度を超えて侮辱するものであることは明らかである旨主張
する。
 本件書き込み3は,特定の事実を前提とすることなく,原告Bについて,「頭が悪い」
と述べたものであるが,その文言自体は,理解力や思考力が低いことを示す侮辱的
な表現ではあるものの,単なる邦捻として使用され,そのように理解されることもある
表現であって,人格攻撃にわたるなど社会通念上著しく不相当な表現であるとまで
いうことはできない。
 また,原告Bが本件スレッドにおいて書き込みの対象となった経緯は証拠上必ず
しも明らかでないが,本件書き込み3が,原告Bが本件ウェブサイトの管理者に本件
スレッドの削除を要求したこと(上記ア(ェ))をもって,原告Bについて「頭が悪い」,
「教えられている子供が気の毒」と述べるものであると解されるとしても,それは,原
告Bが,本件スレッドに書き込みをしている者らの意図等を理解することができない
あるいは理解しようとしないということを,「頭が悪い」と表現したものであると解される
のであって,これを読む者に対し,原告Bについて理解力や思考力が低いとの印象
550無責任な名無しさん:2013/03/22(金) 23:39:59.34 ID:haWKwcfV
を直ちにもたらすものではなく,むしろ原告Bを揶揄する書き込みの一つにすぎない
と理解されるにとどまるということができる。したがって,これが社会通念上著しく不相
当な表現であるということはできない。
 以上の点に加え,本件スレッドの性質上,原告Bにおいて本件書き込み3に対す
る反論をすることも可能であったと考えられることをも考慮すれば,本件書き込み3
が,社会通念上許される限度を超えて,原告Bの名誉感情を侵害する違法な行為
であるということはできない。
2 以上のとおり,本件各書き込みによって,原告らの権利が侵害されたことが明ら
かであるということはできないから,その余の争点について判断するまでもなく,原告
らの各請求は,理由がない。
第4 結論
よって,原告らの各請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとして,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第32部
裁判長裁判官 白井幸夫 裁判官 水田直希
裁判官斎藤大は,転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 白井幸夫

(別紙)発信者情報目録
別紙投稿記事目録1から3記載の各投稿記事に係るIPアドレスを,同目録1から3
記載の各投稿日時ころに使用し,同目録記載の投稿用URL(http:<以下略>)
に接続した者に関する情報であって,次に掲げるもの
1氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
(別紙)投稿記事目録1(原告A ソフトバンクBB分)
(別紙)投稿記事目録2(原告A KDDI分)
(別紙)投稿記事目録3(原告B イー・アクセス分)