93 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:
94 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/06 14:39 ID:MdmYQdnb
第1.検察官の控訴趣意
論旨は、要するに、
「原判決は、検察官請求番号”甲”202号証,203号証の 各自白調書と、
実況見分調書などを 平成13年11月8日に【証拠排除】する 決定をしたが,
これらは、取調官のT巡査部長の 脅迫行為 が あつたとされる時点より 前
に作成されているから、これらについて 証拠排除 の決定をした 原判決には、
訴訟手続きの法令違反(
http://www.houko.com/00/01/S23/131B.HTM#379)があり,
なおかつ,その他の 自白調書類などについても 任意性があるのに,
任意性を認めなかった 原審の措置には、
判決に影響を及ぼすことの明らかな,訴訟手続きの法令違反がある」__訴訟手続きの法令違反の主張
95 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/06 14:40 ID:MdmYQdnb
「被告人が、【犯人】であることは、関係証拠上 明らかであるのに、
これらを看過して 被告人 を【無罪】とした 1審判決には、
判決に影響を及ぼすべき、事実誤認(刑事訴訟法382条)がある」___事実誤認の主張
と、いうのである。
第2.当裁判所の判断
〈1.総論〉
そこで、記録を調査して、当審における事実取り調べの結果をも 併せて検討するに、
【要旨第1】
被告人の 原審公判における供述は たやすくは信用できず、かえって、
@取調官のT巡査部長の原審証言,A取り調べ検察官のK検事の原審証言 は信頼できる
のであって、
これらの自白調書・実況見分調書の 任意性 は充分に認められる。
そこで、以下、所論および 答弁にかんがみて、
説示する。
96 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/09 17:42 ID:vAn1cRwH
97 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/10 12:53 ID:tJhWl+sI
Dそして、平成12年5月10日に京都地方裁判所で行われた 原審.第1回公判で
被告人は、本件 公訴事実 を 否認 し、
E現在にいたつている。
◇(2)原審裁判所の判断
原審裁判所は、
平成13年11月08日付け 証拠決定(引用者注:判例時報に掲載済),
平成15年2月28日宣告の 原審判決(
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_home.nsf/CoverView/HP_C_Kyoto?OpenDocument)
において、それぞれ、
@警察官調書については、T巡査部長が、あたかも暴力団関係者の力を誇示して、
被告人の家族に脅迫を加えるかのような 違法な取調べをした と【認定】し、
A検察官の調書についても、K検事がT巡査部長による 違法な取り調べを遮断する措置を取らず、
自白すれば執行猶予がつく可能性や、医師免許の取り消しについてなどの事由を、被告人に質問するなど、
およそ、被告人の心理状態に配慮をしていないとして、
それらの検察官調書の 証拠能力を排斥した。
Bまた、実況見分調書についても、その実質は、自白と同様の趣旨に過ぎないし、
T巡査部長やK検事による 不適切な取調べの影響を受けているなどとして
証拠能力を否定した。
98 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/11 12:05 ID:SQ0fArTk
◇(3)当裁判所による検討(総論)
ところで、原審裁判所の判断は、上記 調書の証拠能力を否定する主たる理由として、
T巡査部長による脅迫行為を<認定>している。
すると、仮に、これが<否定>されれば、これらの調書については 任意性 が肯定され、
証拠能力を有する、といわなくてはならない。
◇(4)弁護人の見解(総論)
なお、弁護人は、答弁書の中において、本件では、捜査段階で
・利益誘導や
・約束による自白 により、被告人の自由な意思決定を害して
これらの調書が作成された___と主張している。
◇(5)自白調書の任意性判断の概論
しかしながら、@本件では、仮に、T巡査部長による,不当な取り調べがあつたとしても
そのことと、自白との間に 「因果関係」 を肯定することは困難であるし、
A本件においては、長時間にわたる取り調べがあつたとしても、
それだけをもって、任意性を否定することはできない。
(cf.
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/363C882294D8C43549256A850030A997?OPENDOCUMENT)
本件においては、
・(1)M弁護士が 弁護人として選任され
・(2)被告人の逮捕後も、連日、M弁護士や 逮捕後に選任されたO弁護士が、
京都府警察太秦警察署において、毎日30分から60分の接見をしていたこと
の経過が 関係証拠 により明らかである。
これらの事情をあわせて考慮すると、さきの<原判決の,説示>は、多分に性急な説示であつて、
当裁判所としては 賛同しがたいところである。
99 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/12 14:19 ID:AMMzUB+k
100 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/12 14:32 ID:AMMzUB+k
101 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/15 14:03 ID:IhJVPx16
102 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/15 14:05 ID:IhJVPx16
◇(9)T巡査部長による脅迫行為の「有」「無」について
この点について、検察官は、控訴趣意書の中で、
「 (1)ポン中.極道や ハトを飛ばすという言葉が、仮に、T巡査部長の口から発
せられていても、
それは、何ら、供述調書の任意性には 影響を及ぼさない。
(2)だいいち、ベラミ事件の実行犯は、B組若頭のMではない。
(3)そして、京都府警察の警察官の人数は、3万人などでは、ありえない。
__ようは、(1)(2)(3)について、被告人の発言こそ、虚偽である。」
「(4)たしかに、B組若頭のMは、平成12年、京都府警察太秦警察署
(
http://www.pref.kyoto.jp/fukei/shozaichi.html#sho)に
逮捕されているが、T巡査部長は、なんら、Mとは面識はない。
(5)じっさいの取り調べ時間と、被告人の原審法廷での発言には、 矛盾がある」
などとして、
「これらに照らすと、被告人は、<何らかの方法で>B組のMに関する情報を得
て、
話を創作したのだ」___と述べる。
103 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/15 14:05 ID:IhJVPx16
そこで、当裁判所として 検討する。
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_hotei.nsf/CoverView/HP_K_Osaka?OpenDocument&Start=1&Count=1000&Expand=1 まず、括弧1.についてであるけれども、T巡査部長は、原審法廷で、
「被告人とは、60回近くの事情聴取の際、雑談をふくめて、いろいろと話をした。
その中で、覚せい剤中毒者である暴力団構成員(←ポン中極道)のことや、
暴力団組織についても 話はしている」 と述べており、
この法廷証言は、具体的.かつ詳細で、たやすくは 排斥しがたい。
次いで、括弧2.括弧3.については、いずれも、暴力団カンケイや警察問題につい
て ある程度
「通じて」いる人物であるならば、このような情報は、すぐに判別できること
さらに、ハトを飛ばす、というコトバについても、T巡査部長の原審法廷証言
「被告人に危害を加える、という意味ではないし,第一,被告人のいうような
趣旨の取り調べをするのであれば、”ヒットマンを送り込む”と述べたほうが
効果は高い」___というのは、それなりに首肯できるし、
【要旨第一の2】
本件の取調べの経過などを参照して 判断すれば、T巡査部長が このようなこと
を実行する
というのはあまりにも 空想的 なのであつて、
被告人の原審法廷での発言は、なんら、信用できない。
104 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/16 17:36 ID:CpL0Gf03
また、検察官「当審」証拠請求番号2号の 留置場記録に照らせば,取り調べに際して、
その当時、弁護人らから 警察へ、改善の申し入れがされた形跡がなかつたことも,また,明らかである。
しかも、被告人の原審公判における発言には、多々、あいまいな点が存することなどに照らせば、
検察官の所論には、理由があるものと言わなくてはならない。
さらに検討を重ねると、
・珈琲をつくって自分で飲んだ点について、供述変更をしなければならない 利益が、
捜査当局には なかつたこと(cf
>>96)も認められる。
◇(10).脅迫の経緯についての 詳論
なお、所論は、「脅迫行為があつたとすれば、@実際には、被告人が 家族の安全確保の措置を取らなかったこと
A起訴後4ヶ月も経過してから、弁護人らに そのこと を打ち明けたことは、いずれも不自然」
などという。 そこで検討するに、
・被告人が、冷静に 利害得失 を計算していたことは、すでに 述べた 「供述経過」(
>>96)などから
明らかであるし、(取調べに際して、弁護人からの抗議が なかつたという事実は、T巡査部長や
K検事の 原審法廷での証言の信頼性を 高める ものである。)
・原審における 被告人の法廷発言を検討しても、結局、脅迫されたという事実さえ漏らさない限り、
たとえ 原審法廷で 犯行を否認 しても、なんら問題はない__ということになる。
105 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/16 17:36 ID:CpL0Gf03
◇(11)原審裁判所の措置に対する、小括
【要旨第2】
そうすると結局、当裁判所としては、
・(@)T巡査部長による 「脅迫行為」については、被告人による 創作 のおそれを否定できず、
・(A)自白調書等の 「供述 記載」 に照らし、T巡査部長とK検事の 原審証言は信頼性が高いものであり
・(B)自白に至った 経緯 についても 首肯できる
___という 結論に至った。
結局、これらの 自白調書については 刑事訴訟法322条1項により 証拠能力を認めるのが相当
である。 ◇(12)実況見分調書について
【要旨第3】 なお、これらの 実況見分調書については、
・T巡査部長は、その作成には 関与していないし、
・じっさいに、これらの 実況見分調書 を作成した 警察官らは、原審公判にて証言をしている
そうすると、これらの実況見分調書については、刑事訴訟法321条3項(
http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#321)により、
証拠能力を認めるのが相当である。
なお、弁護人は、その「答弁書」において、
「これらの実況見分調書は、
自白調書の延長に過ぎない。」と述べる。し か し な が ら、
【要旨第3の2】 署名押印が「不」要な,この種の調書については、
刑事訴訟法321条3項に掲げる要件「さえ」満たしていれば、
証拠能力を認めるのが相当であり、弁護人の主張は、採用できない。
106 :
特報:京都アジ化ナトリウム事件:04/08/16 17:37 ID:CpL0Gf03
第三.結語(破棄差し戻し)
結局、これらの調書を
証拠排除 した 第1審裁判所の措置には、訴訟手続きの法令違反(刑事訴訟法379条)があり、
これら調書の 内容 に照らして、この違法が 判決に影響する ことは明らかである。
したがって、その余の 事実誤認などの点 を検討するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
そこで、刑事訴訟法397条(
http://www.houko.com/00/01/S23/131B.HTM#397)により 原判決を破棄し、
同法400条 「本文」 に従い、本件を 原審裁判所である、京都地方裁判所へ差し戻すこととして
主文のとおり 判決する。
2004年8月05日
大阪高等裁判所 第4刑事部.「3」係
裁判長 裁判官 :白井万久
裁 判 官 :的場純男
裁 判 官 :畑山 靖