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弁護士事件 裁判例集(刑事):
大阪弁護士会の会員だった被告人につき、
不法両得の意思を認めて有罪とした1審判決が
控訴審でも是認された事例
事件番号;平成15年(う)1772号.業務上横領被告事件
被告人_勾留中
2004年7月01日判決宣告
裁判所書記官 〇〇〇〇
被告人に対する 業務上横領 被告事件につき、
平成15年9月30日、大阪〈地方〉裁判所が言い渡した判決に大して
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_home.nsf/CoverView/HP_C_Osaka 被告人から控訴の申し立てがあつたから、
当裁判所は 次のとおり 判決する。
主 文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中 220日 を 原判決の 刑 に 算入する。
理 由(要 旨)
序論
本件控訴の趣意は、@主任弁護人O(司法修習1期)作成の控訴趣意書
http://www.bunsai.com/book-data/law-b.htm A相弁護人F作成の 控訴趣意補充書
B被告人 本人 作成の 控訴趣意書に、
これに対する 答弁 は、
大阪高等検察庁検察官P1(K検事)作成の 答弁書 に
それぞれ記載されたとおりであるから、これらを援用して 説明に代える。
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弁護士事件 裁判例集(刑事):04/07/13 18:35 ID:UiVfbUoS
(なお、主任弁護人は、当審の第1回公判において、事実誤認の主張は,原判示2・原判示3
についてのみ主張し、その他はすべて 量刑不当の主張に尽きる旨を釈明された。)
第1.控訴趣意中、事実誤認の主張について
論旨は、「原判示2のT子に対する,M海上火災保険相互会社から 同人に支払われた金員が、
S銀行堂島支店等の 被告人名義の3銀行口座に振り込まれた件と、
原判示3の S子に対する件について, いずれも 被告人には 不法両得の意思はないから無罪
であり、現に、この二名については 委託の趣旨に反する金銭流用などなかつたのに、
これらの点につき 有罪とした 原判決には、
判決に影響を及ぼすことがあきらかな 事実誤認がある」__と、いうのである。
そこで記録を調査して検討するに、
原判決が,その (争点に対する判断) の項で ,@被告人、および A原審弁護人(G弁護士)
の主張を排斥して 有罪 としたのは 相当 であつて,
当審における事実取り調べの結果を併せて検討しても、
上記判断は左右されない。
以下、所論に鑑みて 説示 する。
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弁護士事件 裁判例集(刑事):04/07/13 18:35 ID:UiVfbUoS
要旨第1】まず、弁護士が顧客から 預かり金を受領 する際には,
自己の,一般債権者に対する責任財産と、
預かり金 とは 分離して保管 すべきであり,
この点は、 原判決 が、その (争点に対する判断) の2項で 説示するように,
所属弁護士会の倫理規定のいかんを問わず、分離保管が為されるべきである。
なお、T子に対する入出金について検討するに,
・平成8年7月18日,T子に対して,その実父の交通事故に起因する M海上火災
保険相互会社からの,1700万円の現金が 同人の銀行口座へと振り込まれ、
・上記をはるかに超える金額が T子の口座から引き出され、被告人管理の銀行口座へと
振り込まれたこと__が、関係証拠から 明らかである。
なお、関係証拠によると、
これら、T子から振り込まれた金員は、そのほとんどが、被告人「個人」による
@株の信用取引、Aマンション投機 などに使われていたことが明らかである。
なお、所論は、 「被告人には 金銭管理能力もあり、現に、T子へは弁済行為をしている」
などよ主張する。
そこで、当裁判所が、被告人の資産状況についてみるに、関係証拠によると、
計算上は、弁済余裕があることはうかがえるものの、これらの資産は、
(1)ローン返済資金 や (2)証券取引上の株券 などであり、被告人自身が 即座には
処分しえない性質の財産であったのであるから、
現実の弁済可能性は乏しかったことが伺える。
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弁護士事件 裁判例集(刑事) :04/07/27 12:20 ID:cXoW3VkS
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弁護士事件 裁判例集(刑事):04/07/27 12:21 ID:cXoW3VkS
すなわち、本件は、
弁護士である被告人が、その依頼者5名からの預かり金を自己の用途に流用した
業務上横領の事案であるが、
被告人は、これらの「預かり金」を@株の信用取引,Aマンション投機などに充てていた
のであり、
【要旨第2】 これらは 弁護士にあるまじき行為というほかはなく、
被害者の受けた精神的苦痛は甚大であつたことのほか、
弁護士の社会的信用を失墜させたこと
そして、被害弁償がごく一部にとどまっていること
に照らせば、被告人の刑事責任は、相当に重い。
そうすると、@所属弁護士会から「退会命令」を受けていること
Aこの有罪判決が確定すれば、「法曹資格」をも失うこと
B被告人自身の反省状況
C健康状態
D家族の状況
___など、被告人のために酌むべき事情を 充分に考慮しても、
原判決の刑は やむをえないのであつて、
これが 「重すぎて不当である」とはいえない。
論旨は、理由が ない。