地裁と高裁、どっちがリベラル?

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255無罪主張が排斥された事例(2)
裁判長(スヤマ):それでは、理由の要点でありますが、本件控訴の趣意(http://www.houko.com/00/01/S23/131B.HTM#376)は、
         弁護人が出された【控訴趣意書】の通りであり、これに対する答弁は,
検察官作成の答弁書記載のとおりですから,これらを引用して説明に代えます。

論旨は、要するに、無罪の主張ですが、「原判決が、被害者を被告人を突き飛ばして転倒させ、
全治10日間のケガを負わせたとの事実を認定したのは 誤り であり、原判決には判決に
影響を及ぼすことの明らかな事実誤認がある」というのであります。

 そこで検討した結果ですが、被害者の供述の信用性は、関係証拠により認められますし、
原判決が その補足説明の項目において、被告人・T証人・K証人の公判供述の信用性を排斥して
被告人を有罪と認定したのは相当であり、当裁判所での事実調べの結果によっても、
この結論は変わりません。
以下、弁護人の主張に鑑みまして、補足して、検討を加えてゆくことにしますが、
【要旨第1】当裁判所が最も重視したのは,いわゆる、「客観的に動かしがたい事実」であります。
      なるほど、弁護人は、被害者の捜査供述と公判供述の矛盾点を強く、主張されていますが、
http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#328
当裁判所としては,被害者のキズが、どのような状況によって発生したのか、ということを中心に
検討を加えさせて頂いたワケであります。
256無罪主張が排斥された事例(3):2006/01/02(月) 23:35:00 ID:w2qroGA3
裁判長(スヤマ):所論はですね、N証人(検察官申請証人)の原審公判供述を巡って、
         「原判決は、証拠の評価を誤っている」などと主張されます。
そこで、先に述べたように、 「客観的な,動かしがたい事実」を中心にして検討を加えますが、
・被害者は、事件後、自ら病院へ出向いて診察を受けていますし、
・事件翌日に警察官によって写真撮影された 被害者の部位には、アザがはっきり映し出されています。
・とりわけ、この左上腕部のアザについては、路面との衝突によるものと考えるのが相当ですから
      【要旨第1の2】これらの アザの写真は、被害者の受傷状況に関する
N証人および被害者の供述の裏づけであります。ですから、これらの事情に照らし、
N証人および被害者の供述は、全面的に信頼できる__というべきであります。
         次に、所論を 詳細に 検討してゆくことにしますが、
まず、原審での
N証人への公判速記録から、肝心なヤリ取りを 抜粋してみます。

弁護人 「普通というのは、左側のことですか」
N証人「左側ですかね。」
弁護人「要するに、左側で、持っていた?」
N証人「はい。」
弁護人「被害者**さんから見て左側に、倒れていったワケですか」
N証人「はい」____このようなヤリ取りがされておりますが、
      N証人のアンサー(answer:答えのこと)は、すべて、「YES」なんですね。

257無罪主張が排斥された事例(4):2006/01/03(火) 23:32:29 ID:vuMxdo23
裁判長(スヤマ):ところで、この速記録部分は、自転車の転倒を巡るヤリ取りでありますが,
         自転車は、≪わが国では≫通常、左側を押して歩く、という使用は為されない
ワケでありますから、N証人の この問答部分は、原審弁護人の誘導的な質問に乗っかった、
いわば、カン違いの証言である、と解すべきでありましょう。
【要旨第1の3】しかも、仮に、このN証言が正確であったと 仮定 してみてもですね、
≪賢明なる弁護人は,≫お分かりと思いますがコノ部分は、
        被害者およびN証人の供述の 核心部分 には 影響しないワケであります。
(引用者注:東電事件控訴審判決 http://www.ishidalaw.gr.jp/ronsetu/touden/kousohanketuyoushi.htm
          さらに、所論について検討を加えてゆきます。
所論は、「被害者
およびN証人が、捜査段階での検察官による事情聴取の際に話した内容が録取された 検事調書 の中には,
公判供述と矛盾する部分がある(法328条、参照 http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#328)」
と言うのです。なるほど、確かに、所論の指摘するように、
・当審で、これら328条書面等を取り調べた結果、
(1)暴力団員Sを巡る状況,および(2)水商売のmグループを巡る状況につき、
所論が指摘するような ”自己矛盾”供述が 録取されていることは明らかであります。
               しかしながらですね、
客観的証拠に照らして検討しても、コノ部分は、被告人の犯人性について、影響を及ぼさない
ことが明らかというべきです。 要は、当裁判所としては、 先ほども触れましたが、
核心部分 こそ重要である___ということですね。(引用者注:なお、大阪高裁H15.11.05判決
も、参照)
258 無罪主張が排斥された事例(5):2006/01/03(火) 23:33:13 ID:vuMxdo23
裁判長(スヤマ):最後に、被告人の 否認供述の信用性であります。被告人およびT証人は、原審公判
         で、被害者が尻餅をついて、倒れたんだ、と述べています。
【要旨第2】しかし、被害者が尻餅をついた場合、先ほど説明したような 写真のキズが付くモノでしょうか?
      さらに、被告人の公判供述は、捜査段階の供述と比べて変遷し、
その理由についても、合理的な説明はできていないのであります。
 また、T証人・K証人について、所論はイロイロと力説をされるのですが、
 この2名はいずれも、被告人と強い利害関係を有するワケですから、同人らの供述は、
これを無条件に信用するというわけには参りません。

 結局、このような状況に照らして、被告人の供述__これは否認供述ですが___は、
 信用できないということであります。
≪賢明なる弁護人各位は≫当裁判所の見解を理解していただけると、我々は確信しております。
259上訴権の告知等(6):2006/01/04(水) 23:40:54 ID:ubMHGbMp
裁判長:そういう次第で、論旨には理由がないということで、控訴を棄却し、
    当審での未決のうち、120日は原判決の刑に算入する、という扱いです。
そして、訴訟費用は、被告人には負担させず、国の負担ということにします。

この判決に不服がある場合には、2週間以内に、最高裁判所(http://courtdomino2.courts.go.jp/home.nsf/SiteMap?OpenPage
あての上告申立書を,この大阪高等裁判所に出して 上告の手続きを取ることになります。
その点については、弁護人とよく、検討してください。以上で言い渡しを終わります。

                             2005年10月21日
                            大阪高等裁判所第6刑事部