地裁と高裁、どっちがリベラル?

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135一部無罪の判決例
判示事項:いわゆる 窃盗事件における「共同正犯」との認定をした原判決が破棄された事例

判決要旨 (一)本件 窃盗事件につき、関係証拠に照らすと、被告人について
        共謀の事実を認めることはできないから、これに反する認定をした原判決
        は 破棄を免れない(自判.無罪)
     (二)なお、覚せい剤自己使用については、量刑不当の主張がされているが、
        原判決は 窃盗事件と覚せい剤事件を 併合罪の関係にあるとしているから、
        結局、原判決は 、覚せい剤事件をふくめて、全部 破棄されなくてはならず、
        それを踏まえて、再度、覚せい剤事件について、刑を量定する。

2004年11月09日判決宣告
 裁判所書記官○○○○

被告人:勾留中
事件番号:平成16年 (う) 第1013号
被告事件名:@窃盗,A覚せい剤取締法違反(自己使用)

被告人に対する、窃盗・覚せい剤取締法違反 各被告事件につき、
奈良地方裁判所.葛城支部(http://courtdomino2.courts.go.jp/K_access.nsf/3e7559fdc45c994e49256b13000483a3/23515f5de2403bb049256b5e001248bf?OpenDocument
が言い渡した判決に(http://courtdomino2.courts.go.jp/cdistrict.nsf/TOP?OpenPage
被告人から 控訴の申し立てがあったから、当裁判所は次のとおり判決する。
136一部無罪の判決例:04/11/11 18:10:03 ID:S2r+TGmm
                  主 文

原判決を破棄する。被告人を懲役1年2月に処する。原審での未決勾留日数中、40日を
         その刑に算入する。
本件 公訴事実中、窃盗の点について、被 告 人 は、無 罪。

             理 由(要 旨)
序論.
  本件 控訴の趣意は、弁護人作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は
  大阪高等検察庁検察官作成の 答弁書に記載されているから、これらを引用する。
                第1.控訴趣意
▽(1)事実誤認の主張
  論旨は、「被告人は、原判決が認定・説示する 第2の事実(窃盗事件)については
犯罪の意思がなく、無罪であり、本件は あくまでも S男の単独犯行である。
これに反して、被告人を 本件窃盗の 共同正犯と認定した原判決には、判決に影響を及ぼすべき
事実誤認がある。」というものである。

▽(2)量刑不当の主張
   論旨は、「被告人を懲役1年6月の実刑に処した 原判決は、これが、重すぎて不当である」
   というのである。
               第2.当裁判所の判断

そこで、記録を調査し、当裁判所における事実調べの結果をも 併せて検討する。

               ▽(1)事実誤認の主張について
そこで、検討する。
(なお、論旨は、正確には、「事実誤認 乃至は 法令の解釈適用の誤り」を主張する趣旨であると解される。
137一部無罪の判決例:04/11/11 18:10:41 ID:S2r+TGmm
**(1)証拠上、認められる事実

記録を調査し、当審での事実調べの結果をも併せて検討するに、
・被告人じしんの 検察官調書
・被告人じしんの 警察官調書
・被告人に対する,現行犯人逮捕手続き書
・問題の「被害店舗」の警備員T子の 当審公判での 法廷証言
・写真撮影報告書2通
・実況見分調書2通 ___などによると、次の事実が認定できる。

すなわち、事件当日、奈良県大和高田市に所在する 大型商業施設「M」店を訪れた 
被告人およびS男は、カバン(約3800円相当)や1900円相当の商品を手に取り、眺めるなどしていた。
その際、S男の行動に不審を感知した 同店警備員のT子は、S男の行動を、以後、注意深く観察した。

S男は、T子に監視された状態のままで、エスカレータ内で、〈問題の,手提げカバン〉を持って
上の階に移動した。

さらに、S男および被告人は、かねてから行く予定であった 携帯電話ショップへ立ち寄り、
所用を済ませたものの、同階での レジ精算を済ませないまま 店から出たところを
警備員T子に咎められ、
そのまま両名は、保安室へと連行された。

(なお、この際、S男は 保安室から立ち去り、そのまま被告人「のみ」が その場に残され、
被告人が所持するバッグの中から、「未清算商品」二点が発見された為に、
被告人「のみ」が、その場で現行犯逮捕された。)

なお、大型商業施設「M」大和高田店は、地上部分4階.地下部分2階の建物であり、
買い物客が 商品を購入する際には、
・直営店のレジ
・または、その階のレジ___の、いずれかのレジで精算することになっている。
138一部無罪の判決例:04/11/12 19:17:24 ID:70bhmtJn
**(2)S男の行為

これらの事情に加えて、S男の捜査段階供述と 原審.法廷証言 などを併せて検討するに、

・S男の行為は、いわゆる 「包括一罪」 と解すべきものであつて、
 
被告人所持のバッグに、「当該 未清算商品」が 
S男によって「入れられた」時点においては すでに、「既遂」(きすい)に達していた
ことが認められる。

(なお、S男が手にとって、メガネ店から持ち去った サングラス1点については、
公訴事実には含まれてはいない。)

**(3)被告人の供述について

なお、被告人は当審公判において、
 「わたしは、あくまで、S男と一緒に 携帯電話の手続き更新のために、
この商業施設にいっただけ」であり、「S男の行為には、なんら、気付かなかった」
などと述べる。

また、捜査段階においても、警察官調書(KS)・検察官調書(PS)のいずれにおいても、
自白こそしているものの、「S男が、これらの品物を 自分のために買ってくれるものと信じていた」などと 調書記載 がされている。

結局、被告人の当審公判供述には、自己の刑事責任を軽減する意図で 誇張に表現されている
部分も含まれているものの、
全体として見れば、本件については 一貫した供述をしていることが明らかである。
139一部無罪の判決例:04/11/12 19:18:03 ID:70bhmtJn
また、S男も、原審公判供述などにおいて、
・窃盗の意思が発生した時点
・被告人自身の、この事件についての認識__について、
 
「店舗3階で、被告人から 『どうするの? 売り場に品物を返してきなさいよ』
と言われたが、自分自身としては、そのまま、これらの品物を万引きするつもりになった」
「品物2点については、被告人に内緒で、これらを被告人にプレゼントしようと思い、
ひそかに、被告人の所持品の中に、入れておいた」などと供述している。

すると、S男の供述内容は、被告人の公判供述と概ね 符合 しているのであり、
被告人供述の信用性を否定する余地はない。

**(4)事実認定の 結論

【要旨第1】すると、被告人は、S男との間で、商品窃取の共謀 を遂げたとは
      認められない。
また、被告人が、自己の所持品の中に 「未清算商品」があったことに気付いた時点では、
すでに、S男による窃盗は、「既遂(きすい)」に達していたのであり、
これらについて、被告人に刑事責任を問うことはできない。

結局、原判決には、所論指摘のような 事実誤認ないしは法令適用の誤りがあり、
これらが判決に影響を及ぼす事は明らかである。

論旨は、理由が「ある」。
             第三.破棄自判

よつて、刑事訴訟法397条1項(=控訴趣意に「理由がある」とき)により 原判決を破棄
するが、
140一部無罪の判決例:04/11/12 19:18:39 ID:70bhmtJn
 【要旨第2】原判決は、覚せい剤事件と 窃盗事件を 刑法45条の「併合罪」
       として、1個の刑を課しているから(科刑上一罪),
結局、原判決は、「全部」破棄を免れない。
そこで、量刑不当の主張についての 判断を省略して、
刑事訴訟法400条但し書きを適用して、当裁判所において、さらに判決をすることとする。

(罪となるべき事実)
         被告人は、法定の除外事由がないのに、
平成16年2月11日頃、奈良県北葛城郡≪以下略≫の自宅において、
フェニル.メチル.アミノ.プロパンを含む 覚せい剤を、水に溶かして注射し、
もって、覚せい剤を使用した____ものである。

(証拠の標目)(法令の適用)__朗読省略