地裁と高裁、どっちがリベラル?

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128逆転無罪判決の事例
判示事項: いわゆる休日夜間に地下鉄電車内で発生したとされる「ちかん被害」について、
      被告人と事件との結びつきを認めた 第1審判決が
      控訴審で破棄されて 無罪が言い渡された事例___ http://www.kyuuenkai.gr.jp/
                               http://www.geocities.jp/chikan_enzai/
判決要旨:事件と被告人を結びつける被害女性の供述には、重大な変遷があり、これを到底信用すること
     ができず、一方、被告人の供述は捜査段階から一貫しており 特に これを否定することができない以上


被告人と事件を結び付けるべき その他の証拠が何ら存在しない 本件においては、犯罪の証明がなく、
これに反する認定をした1審判決には、判決に影響を及ぼす事が明らかな事実誤認があり、
破棄を免れない。

被告人:不拘束
被告事件名:大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 違反
     http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/oosakameiwakuyourei.htm

事件番号:平成16年(う)第676号 (http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/$help )

被告人に対する 大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 違反
被告事件について、大阪地方裁判所(刑事2部.単独3係り)が 平成16年3月3日言い渡した判決に
対して、
被告人から控訴の申し立てがあつたから、当裁判所は、次のとおり判決する。

                  主 文
原判決を破棄する。
被告人は無罪
                理 由(要 旨)
序論.
  本件 控訴 の趣意は、主任弁護人N,弁護人 高見秀一(元裁判官),弁護人H,ら 連名作成の
  控訴趣意書に、これに対する答弁は、 大阪高等検察庁 検察官P1 作成の 答弁書記載のとおり
であるから、これらを援用して、説明に代える
129逆転無罪判決の事例:04/11/09 18:01:44 ID:Y/+9iETJ
                  第1.控訴趣意
論旨は、要するに、

「被告人は、2003年1月27日の19時30分頃から33分頃にかけて、大阪市高速交通鉄道1号線
通称 ”地下鉄御堂筋線”の なかもず行き電車内において、被害女性Xに対して
着衣の上から臀部を触るなどした__と認定されて 有罪判決を受けたが、
被害者供述には著しい変遷が見られて 到底、これを信用する事ができないのに、

被害者供述の信用性を認める一方、
捜査段階から一貫して 無実 を主張してきた被告人の弁解を排斥した 原判決には
判決に影響を及ぼす事の明らかな 事実誤認がある」 というのである。

            第2.当裁判所の判断

そこで、記録を調査し、当裁判所での事実取り調べの結果をも 併せて検討する。

           1.証拠上、争いのない事実
2003年1月27日
19時30分頃、大阪市営地下鉄1号線(御堂筋線)の淀屋橋駅を19時30分頃発車する電車に、
被告人も、被害者も、ともに 同一車両内に乗車していたことは明らかである。
130逆転無罪判決の事例:04/11/10 15:08:22 ID:EysNuAjH
・そして、この日は、休日の夜間であったこと(http://www.hf.rim.or.jp/~kaji/cal/cal.cgi?2003 )
・被告人は、このとき、黒いリュックサックと傘を、それぞれ、手に持っていたことが認められる。

そして、被害者Xは、心斎橋駅到着直前、被告人に 「何してるの?こんなことして、楽しい?」
などと声をかけ、なんば駅到着の際、被告人の手を掴んだまま、駅員に引き渡した。

         2.被害者Xの供述の信用性

なお、被害者Xは、・平成15年5月21日の 原審第2回公判
         ・同じく6月11日の 原審第3回公判 にて、それぞれ証言したが

弁護人から 刑事訴訟法328条(http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#328)により請求せられた
・弁護側証拠請求番号4番 警察官調書
・弁護側証拠請求番号5番 検察官調書____によると、

【要旨第1】
 被害者Xの供述には、所論が指摘するような変遷があり、証言の信用性を損ないかねないような事情
 がないか、どうかを考察する必要がある。


**(1)被告人を発見したときの状況についての X供述の検討

                @Xの供述
・警察官調書における X供述(骨子)

「自分の左斜め後方 に被告人がいた」等
131逆転無罪判決の事例:04/11/10 15:08:53 ID:EysNuAjH
・検察官調書における X供述

「淀屋橋駅に電車が着いたとき、私の周りは、かなり混雑していた」等

・法廷証言(原審第2回・第3回)

「わたしは、ちかん被害に度々遭ってきたので、周囲をよく確認してから電車に
乗ることが多い。梅田駅から乗車した電車内で、被告人の様子はおかしかった。」等

            A当裁判所の検討 

そこで検討するに、この部分についての X供述は、警察官調書・検察官調書・法廷証言と、
いずれも異なっていて、
・法廷証言では、検察官調書を 実質的に訂正する内容となっているうえ、
・法廷証言では、被告人に怪しい様子があつたことを強調する内容となっているのであり、

これらの 供述変遷の経緯 には 著しい問題点があると言わなくてはならない。

**(2)ちかん行為の態様 (この部分については、引用を省略する)
**(3)被告人に声をかけて、「私」人逮捕したときの状況(法213条 http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#213

              @X供述
・警察官調書
      「こんなんして、面白いン? ヤメテや! と被告人に言った。
周りには、女性客やカップルもいた。」
132逆転無罪判決の事例:04/11/10 15:09:23 ID:EysNuAjH
・検察官調書
      「被告人は、はいはい、と口篭もるような返事をした。駅員に突き出そうとするとき、
被告人が抵抗する様子はまったく、なかった。」
              A当裁判所の検討    
そこで、この点について
検討をするが、被害者Xは、警察官調書⇒検察官調書⇒法廷証言と 回を重ねるたびに、
徐々に、「意識して 被告人を見ていた」ことを強調する内容へと 「変遷」している。
 さらに、関係証拠に照らして、被告人が手に提げていたカバンの形状についても、
「後で」そのような情報を入手した 可能性がある。

【要旨第2】なるほど、ちかん被害者は、その被害当時、興奮やショックにより
      冷静な心理状態ではいられず、記憶などにも 変容 を起こす可能性は否定できないから、
一般的には、「被害状況」についての 供述が <ある程度は>変遷してゆくことは
合理的に説明できる。
しかしながら、本 件 の 被害者X供述においては、もはや、そのようなものではなく、
その変遷の「過程」と 供述内容は、あまりにも 不自然・不合理であると言わざるを得ない。
         (この点は、所論が指摘するとおりである。)

             3.被告人供述の信用性

なお、被告人は、捜査段階から一貫して、犯行を否認している。そして、先ほど検討したように、
・本町駅で<乗客が乗降中に>ちかん被害を受けたとする 被害者供述には 疑問点があり、
・なおかつ、ちかん被害の「開始時期」について、被害者Xは、警察官調書・検察官調書では
 あいまいな供述をしているのであり、
133逆転無罪判決の事例:04/11/10 15:09:53 ID:EysNuAjH
これら2点をも 併せて検討すれば、被告人の供述が虚偽であるとはいえない。

            4.被告人<以外の>者の 犯人可能性について

@被害者Xは、原審にて、主尋問と反対尋問で、カップルを見た時の状況について
正反対の供述をしていること(←原審第2回公判速記録:第3回公判速記録)
Aそして、関係証拠やこれまで述べてきたことなどを総合すれば、
 被害者は、被告人の方向へと振り向いた様子については 冷静に把握できておらず、
 かなり興奮した状態だった可能性が高い。

そうすると、@Aと その他関係証拠を 併せて検討すれば、
 ・被告人<以外に>ちかん加害行為をした 犯人 がいなかつたとは 言えない。

【原判決】は、「本件では、被告人以外の犯人可能性は考えられない」と<認定>したが、
このような 原判決の判断は 誤 り であると 当裁判所は考える。
              5.被告人の行動について 

被害者Xは、先ほど触れたように、あたかも、被告人自身が、Xに犯行を認めたかのように
法廷で述べる。
しかしながら、
「被告人は 黙っていた」(被害者 警察官調書)というのであるから、
被告人が <犯行を 認めた>とする被害者証言(原審第2回・第3回公判速記録)を
直ちに信用するわけにはいかない。
134逆転無罪判決の事例:04/11/10 15:10:16 ID:EysNuAjH
関係証拠を検討すると、当時の被告人の言動は、
 「ちかん加害者」と 誤解された者の 為すべき行動とは、必ずしも不自然とはいえない。

被告人の行動について、これを不自然とする【原判決】の<認定>は、
失当である、と 当裁判所は考える。
             6.事実認定の結論

【要旨第3】
以上 検討してきたように、被害者X供述には、その根幹たる部分に 看過しがたい疑問点があり、
他方で、被告人の<否認 供述>を 排斥するだけの 合理的理由も見出せないほか、
そのほかには、被告人と 犯行を結びつける 何らの証拠も 存在しない
のであるから、本件については【犯罪の証明】は【ない】ものと いわなくてはならない。

論旨は、理由が「ある」。
              第三.破棄自判
よって、
刑事訴訟法397条1項、382条により、原判決を破棄し、
同法400条但し書きに従い、本事件につき、さらに判決をすることとする。

本件 公訴事実については、関係証拠を検討しても 「犯罪の証明」はなく、
刑事訴訟法336条に則り、http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#336
被告人に対して 無罪 の判決を為すべきである。
 よって、主文のとおり 判決する。
                             2004年11月09日
                           大阪 高等裁判所 第1刑事部
                                裁判長 裁判官:瀧川義道
                                     裁判官:竹田隆
                                    裁判官:増田周三