判示事項:児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
違反被告事件において、原審の適条が誤りであるとされた事例
判決要旨:本件のごとき、ホームページ上での児童ポルノ画像の展示行為は、
同法7条における「陳列罪」を構成するものであり、判文参照のような
事情の下では「販売罪」は成立しないから、これに反して「販売罪」の成立を認定した
原判決は破棄を免れない。
事件番号:平成15年(う)第1号
被告人:釈放
大阪高裁「第1」刑事部. 破棄自判
概説
本件は、いわゆる「児童買春」1件と、その際に「被害児童」の裸体写真を撮影し、
自己の作成するホームぺージ上に その写真を「画像」加工して 陳列し、
閲覧者から 合計15万円あまりの現金を 銀行口座に振り込ませた 事案である。
弁護人らの控訴趣意は、きわめて多岐にわたったが、今回、控訴審では
法令適用の誤り.の部分を認めて、原判決を破棄し、原審と同じ刑を宣告した。
なお、弁護側は、上告を検討中ということである。
(被告人は、宣告には欠席されたため、不在のまま言い渡しが行われている
318 :
児童ポルノの判決:03/09/18 20:36 ID:aOmn8qSO
主 文
原判決を破棄する。被告人を 懲役2年に処する。
この判決確定の日から4年間、右刑の執行を猶予する。
理由の要旨
1.控訴趣意
弁護人3名の控訴趣意書、および同補充書 では、事実誤認,訴訟手続きの法令違反,
法令適用の誤りなど、数十項目にわたる論旨が展開されており、検察官は、答弁書記載の
とおり陳述する。
2.当裁判所の判断
1).管轄違いの主張について
所論は、「児童ポルノ・児童買春禁止法は 児童福祉法の特別法だから、
少年法第39条の規定により、本件は 家庭裁判所に 管轄権が存するのであり、
原審は 管轄違いの判決をすべきであつた」という。
しかしながら、少年法39条の規定は、あくまでも限定列挙規定であり、
しかも 同法違反事件を 家庭裁判所とする 他の法令は何ら存しないのであるから
第1審を管轄する裁判所が 地方裁判所、または簡易裁判所であることは明白である。
所論は 採用できない。
2)法令適用の誤りの主張について
所論は、本件では 被害児童に「対価」を与えて 性交が行われていないから、
対償性がない、と主張するが……関係証拠によれば、被害児童に対して
携帯電話を買い与える約束を 被告人がしたことは明らかであり……この点の
所論も採用できない。
……(中略)……
3.破棄自判
よって、刑事訴訟法380条により原判決を破棄し、同法400条但し書きに
従い、本件について さらに判決する。
(罪となるべき事実) 被告人は
第1.平成13年6月8日午後5時16分から、同日午後7時9分頃にかけて、
大阪府枚方市<番地略>のXホテルにおいて、18歳未満の「被害児童」と
対償として携帯電話を購入する約束をして、同女と性交を遂げ
第2.
その1 . <住所略>の 当時の被告人宅において、パーソナルコンピュータを操作して
東京都千代田区大手町<番地略>のNTT系列接続業者管理にかかるサーバー内
において 児童ポルノ画像データを送付して、サーバー内部に記憶、増幅させて
再生可能な状態にさせた。
その2 . 上記サーバー内に 別途ホームページを開設して
被害児童の ポルノ画像13枚、
その他の 児童ポルノ画像12枚 のデータを送付した。
(量刑の理由)
本件判示第1の犯行は、 高校生に対して、対償を供与したうえで為された犯行であり、
その自己中心的な動機に 酌量の余地はない。
さらに、その際に撮影した写真を利用して 判示第2の犯行が行われたうえ、それにより 15万円あまりの対価を得たことに照らせば 被告人の刑事責任は重い。
しかしながら、@これまでには 前科前歴がないこと、A家族が被告人の監督を約束していること、B勤務先を懲戒解雇されたこと 等 被告人のために酌むべき事情も考慮のうえ、
主文の刑を量定した。
大阪高等 裁判所 第1刑事部
裁判長 裁判官;瀧川義道
裁判官:竹田隆
裁判官:奥田哲也