状況証拠の積み重ねによる裁判

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54畑蔵会事件 控訴審判決(猪名川事件ルート)
2-1-2.詳細な主張 

@「被告人Bに対する警察調書は、Bに対して、取調官が『素直に認めないと、死刑になるゾ』
という 脅迫 を加えて、その影響下で作成された。よつて、このような調書には
証拠能力はないから、証拠排除されなくてはならない。」
A「警察官は、Bに対して、”右向け右”などと号令をかけて、自己の意図するままに
マインドコントロールして、自白調書を作成している」
B「自白調書が、客観的状況と矛盾するにもかかわらず、無条件に証拠採用決定
をした 原審の判断は 違法である」
C「否認調書を取り調べる事もなしに、これらの自白調書を採用している 原判断は、
いずれも 審理不尽(しんり.ふじん)である」
55畑蔵会事件 控訴審判決(猪名川事件ルート):03/07/16 18:15 ID:KAYdqeyR
2-2.当裁判所の検討

そこで 記録を調査し 当審での 事実調べ の結果を経ても、
原審が 自白調書を「採用」して、「証拠の標目」に挙示したのは
相当であると 認められる。 以下、所論に則して検討する。

2-2-2.論点に対する判断

@について:被告人Bは、当審・原審でも 弁護人が@で指摘するような供述をする。
      しかしながら、警察官の原審証言(2001年11月)に照らせば、
@のような事実はなかったとするべきであり、@の所論は採用できない。

なるほど、たしかに、不当な取り調べが行われていたことは 記録からもうかがえる。
      しかしながら、「本件における」不当な取調べは、自白調書を排除するほどの
ものとまでは認められない。すなわち、
(1)被告人Bは、比較的早い時期から、検察官の前では「殺意」を「認める」供述をしていたこと
(2)「殺意」を形成した「動機」について
 ”かつて、わたしの家庭では、父が母に暴力を振るっていた。そのことから、被害者がM子
(原審で懲役6年を宣告された)に暴力を振るっているのに腹が立ち、殺意をおぼえた”
など、私事、わたくしごと にかかわる 具体的理由までも述べているのであり、

これらの (1)(2) に照らせば、各自白調書の 任意性 に疑問を生じさせるような
事情は見受けられない。

Aについて:なるほど、同警察官も、原審証言(2001年11月)で、被告人に
      あいさつを求めたことは認めている。しかし、同時に、同警察官は、
取調べの時にはいつも、号令をかけて あいさつを求めているというのだから、
「上記号令に基づいて、被告人を自己の意のママに操った」という弁護人主張
は採用できない
56畑蔵会事件 控訴審判決(猪名川事件ルート):03/07/16 18:24 ID:KAYdqeyR
Bについて:仮に、自白調書の一部に 客観的事実に反する点があつたとしても
      本件においては、自白調書を「証拠排除」するほどの重要性までは
見出しがたい。この点の所論も、また、採用できない。

Cについて:否認調書と弁護人が主張する、当審弁護側請求番号「7番」「8番」の調書は、
      いずれも、「殺意」を「認める」内容であつて、
到底、これは「否認」調書とは 認められない。
また、弁護人は、「検事調書」についても 警察でのマインドコントロールの影響下のモノ
で、証拠排除を求めている。

しかしながら、 上記「マインドコントロール」は 関係証拠上、認められず、
この点の所論もまた、採用の限りではない。

3.控訴趣意中、事実誤認の主張について

弁護人両名は、「被告人2名については、いずれも、犯行当時、殺意はなかった」として
傷害罪の限度で刑事責任を負う と主張される。

しかしながら、記録を調査し、当審での事実取り調べの結果をもあわせてみるに
原判決が 補足説明の項目で説示するところは いずれも正当であつて
当裁判所もこれを 是認 することができる。
以下、所論に則して、検討を加える。