状況証拠の積み重ねによる裁判

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207具体的事件より---ソウルファクトリー事件
(1)覚せい剤自己使用の嫌疑につき、被告人による犯行であると認定された事例
(2)覚せい剤使用時期について、幅のある認定がされた事例
(3)検察官の科刑意見のとうりの 実刑に処された事例

2004年3月05日 判決宣告 裁判所書記官 I

被告人:勾留中

被告人に対する 覚せい剤取締法違反 被告事件につき、当裁判所は、
検察官A,弁護人Lx出席のうえ 審理を遂げ、次のとうり 判決する。

      主 文

被告人を懲役2年6月に処する。
未決勾留日数中 40日を、その刑に 算入する。

      理 由 の 要 旨

(本件 公訴事実について)

本件公訴事実は、「被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、みだりに、
● 平成15年6月18日から、同月28日にかけて、
● 大阪府下 または その周辺において
覚せい剤である、フェニルメチルアミノプロパン 若干量 を (何らかの方法で)注射し、
もつて 覚せい剤を使用した」 というものである。
208具体的事件より---ソウルファクトリー事件:04/03/11 18:08 ID:gc/Xpq/P
(事実認定の 補足説明)
1.弁護人の主張
  「被告人には、覚せい剤使用の 故意 はないから、無罪である」
2.検討

 (1)証拠上 明らかな事実

証拠によると 以下の事実が認められる。
 @平成15年6月28日夜、大阪市港区市岡元町において 職務質問 を受けた被告人は、
 Aその後、警察署での事情聴取の際に 尿を任意提出したが、その尿からは 覚せい剤成分が検出された。
 B被告人は、平成15年6月18日から 6月28日頃までの間、大阪府下または その周辺から
   「外」へは 出たことがないこと
 C 被告人は、尿の任意提出から 5 ヶ 月 経 過 してから、逮捕され、起訴されたこと
   がそれぞれ認められる
 
(2)考察

ところで、覚せい剤は 規 制 薬 物 であつて、容易には摂取することができないものである。
また、通常、覚せい剤は、摂取後 30分から4日で、尿から排出されるが、稀に、10日を
過ぎても検出されることがある。
しかも、覚せい剤を、たまたま、事情を知らずに 摂取するということも、容易には考えがたいことである。

被告人は 当公判において、「クラブ S店で たまたま、他人のドリンクを飲んでしまい、
そのドリンクに 覚せい剤が混ざっていたかもしれない」と述べている。

しかし、被告人にあつては、平成4年から 覚せい剤使用を開始し、平成13年12月には
・覚せい剤使用,大麻取締法違反,窃盗罪 との併合罪で 懲役2年6月・執行猶予3年の
判決を受けるに至っていたのであるから、

覚せい剤常習者として、@覚せい剤の薬効 ,A覚せい剤独特の苦味などを 感知しえたはずであり、
209具体的事件より---ソウルファクトリー事件:04/03/11 18:09 ID:gc/Xpq/P
自らの 肉体的・精神的状態などから、もし仮に、「誤飲」したのであれば、そのことを明確に 記憶
しているべきであり、
平成15年11月9日に 逮捕された際、尿の任意提出から5ケ月近く 経過していても、
その後の捜査では、的確に 防御することが可能であった というべきである。しかるに、

@乙1号.弁解録取書__警察官調書
A乙3号.弁解録取書_検察官調書
B乙4号.勾留質問調書__令状部 裁判官 作成 の各 供 述 調 書 においては、

「問.キミには、覚せい剤摂取につき、思い当たるフシはないのか。
 答.いいえ、思い当たるフシは、ありません」
 
などと供述している(これらは、いずれも 同意書面)のである。

(3)その他、間接証拠について

このほか、@被告人は 覚せい剤常習者であり、現に 執行猶予期間中であつたこと
     A職務質問「直後」に、弁天町「派出所」で為された 警察官の 確認結果によると
      腕に 注 射 痕 が 確認され (これは、甲1,甲11号証__同意書面)
     B その注射痕は 比較的 新しいものであった (甲11号の 写真番号2番)。
     Cしかも、それらの 確認結果によると、頬もこけており、持参した飲料水を多量に飲むなど、
      覚せい剤常習者特有の 身体症状を呈していたことも 認められる。 また、
     D自宅への 2 度 目 の 捜 索 により、注射器を包んでいたらしき
      ビニル袋の破片が発見され、押収されていること (甲17号証__同意書面)も認められ、
     E 覚せい剤を 誤って 摂取した点につき、合理的な 弁解をしないこと
210具体的事件より---ソウルファクトリー事件:04/03/11 18:10 ID:gc/Xpq/P
などから、被告人が、公訴事実記載の範囲で、覚せい剤を使用したことは 優に認定できる。
 これに反する 弁護人の主張、被告人の弁解は 採用できない。

(罪となるべき事実) 公訴事実のとうり 認定


(量刑の理由)

本件は、執 行 猶 予 期 間 中 に為された,覚せい剤「自己使用」1件の事案である。
被告人においては、平成13年12月、窃盗,覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反の 罪で

懲役2年6月・執行猶予3年の判決を受けながら、わずか1年6ヶ月で 覚せい剤を使用したのであり、
捜査段階から 一 貫 し て  事 実 を 否 認 し、終始、不合理な弁解をしている
のであり、

この際、徹 底 し た 矯 正 教 育 を施す必要がある。
 そうすると、被告人の健康状態などを考慮しても、
 検察官の科刑意見のとうり の 刑 は免れない。
よって、主文のとうり 判決する。

2004年3月5日.大阪 地方 裁判所 刑事6部 単独1係.