ロースクール 論文過去問検討スレ

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11答案例その1―1
1.本問事例で憲法上問題になる点は、日本政府とA国政府の間で
締結された政府間協定が憲法73条3号にいう「条約」に該当するか
否かである。該当する場合、国会の承認を得ることが必要となり、
本問事例での野党の主張である「国会の承認手続を踏むべき」とい
う点が正当ということとなる。
2.条約とは、外国または国際機関との間で、国際法上の権利義務
の創設・変更に関する文書による合意をいう。本問について見ると、
政府の主張に従えば、本問協定は従前の条約の内容を変更するもの
ではなく、「国際法上の権利義務の創設・変更」はないこととなる。
 従って、本問協定は、いわゆる「行政協定」、すなわち、条約を
執行するために必要な技術的・細目的な協定ということになる。
 その意味では、本問協定は「条約」に該当せず、政府の主張が正
当ということになりそうである。
12答案例その1―2:2011/05/25(水) 23:43:58.67 ID:???
3.しかし、あらゆる「行政協定」について、国会の承認手続を不
要と考えるのは正当であろうか。
 そもそも条約において憲法が国会に条約承認権を与えた趣旨は、
国の対外的作用に対して国会の民主的コントロールを及ぼすことに
ある。とすれば、あらゆる行政協定について国会の承認を不要とし、
行政協定の締結行為全てを憲法73条2項にいう「外交関係の処理」と
考えるのは妥当ではなく、その具体的内容により、国際法上の権利
義務に影響のある行政協定については、民主的コントロールを及ぼ
す必要性があると考えられる。
 本問では、日本政府とA国政府両国の経済協力に関する政府間協
定であり、その規定のよっては、日本政府に権利義務の創設・変更
がないとはいえない。そのような条項が存在した場合には、条約の
内容が形式上変更されていなかったとしても、実質的に新たな権利
義務の創設・変更を行う「条約」に該当することとなる。そのよう
な事情がうかがわれる場合、本問行政協定は、その範囲で「条約」
と同視すべきである。通常、経済協力を行う場合、相手国に対して
何らかの優遇措置を行ったり、相手国より優遇措置を受けたりする
ような要素を含むものである。その意味で、「国際法上の権利義務
の創設・変更」が行われているのが通常である。
 従って、本問協定に関しては、実質は条約と同視でき、国会の承
認が必要と考えられる。
4.なお、野党は「国際的な経済協力のあり方に関して国会決議を
行うこと」を求めているが、そのような一般的な決議は政府を拘束
するものではなく、また、憲法73条2号にいう「外交関係の処理」
そのものに法的拘束力を及ぼすものでもない。ただし、事実上の効
力として、そのような決議が行われた場合、決議内容と抵触する条
約の承認が得られなくなるという効果は考えられる。その意味で、
法的拘束力こそないものの、その決議に沿った条約の締結・不締結
が事実上求められることになる。このような影響は、行政に対する
民主的コントロールのありかたとして、民主的外交関係として望ま
しいものと考えられる。