東京地判平成16年9月29日不開示決定取消請求事件

このエントリーをはてなブックマークに追加
1氏名黙秘
裁判官:菅野博之 市原義孝 本村洋平

原告 a
被告 司法試験管理委員会委員長訴訟承継人 法務大臣 b
指定代理人 c 外4名

一 司法試験管理委員会委員長が原告に対して平成15年4月23日付けでした、
処理情報の一部不開示決定処分(ただし、平成16年3月26日付け処理情報の
一部開示決定処分による一部取消し後のもの)のうち、平成11年度口述試験の
総合順位を開示しないとした部分を取り消す。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを6分し、その5を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
2氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:31:22 ID:???
   事実及び理由

第一 請求
 司法試験管理委員会委員長が原告に対して平成15年4月23日付けでした、
処理情報の一部不開示決定処分(ただし、平成16年3月26日付け処理情報の
一部開示決定処分による一部取消し後のもの)を取り消す。
第二 事案の概要
 本件は、平成9年度から平成11年度までの各年度の司法試験第二次試験の
受験者である原告が、司法試験管理委員会委員長に対し、行政機関の保有する
電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報
保護法」という。)13条1項に基づき、司法試験第二次試験ファイルに記録された
自己の試験成績等の処理情報の開示を請求したところ、司法試験管理委員会委
員長が、行政機関個人情報保護法14条1項1号ニ及び3号に該当することを理由
として、請求を受けた処理情報の一部につき不開示決定処分をしたため、これを不服
とする原告が、その取消しを求める事案である。
 なお、平成16年1月1日、司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成
14年法律第138号。以下「改正法」という。)が施行され、国家行政組織法3条2項に
基づく委員会であった司法試験管理委員会は、同法8条に基づく合議制の機関である
司法試験委員会に改組された。これに伴い、改正法の施行前に、法令の規定により司法
試験管理委員会の委員長がした処分その他の行為は、改正法の施行後は、当該法令の
相当規定により法務大臣がした処分その他の行為とみなされることとなったため(改正法
附則3条2項)、法務大臣は、本件訴訟を承継した。
3氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:32:25 ID:???
1 司法試験制度の概要
(一)司法試験の目的
 司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及び
その応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験であり(司法
試験法1条1項)、司法研修所における将来の法曹としての教育を受ける際に要求
される一定の学識及びその応用能力を有するか否かを判定するための試験である。
(二)司法試験の実施機関
 前記のとおり平成16年1月1日に改正法が施行されるまでは、司法試験に関する
事項を適正に管理するため、法務省の外局として司法試験管理委員会が置かれ、
司法試験に関する事務を担当していた(改正法による改正前の司法試験法(以下
「旧司法試験法」という。)12条、12条の2)。
 司法試験の試験問題の作成及び試験の採点並びに合格者の判定は、司法試験
管理委員会の推薦に基づき法務大臣が任命する司法試験考査委員(以下「考査
委員」という。)が行うこととされ(旧司法試験法15条1項)、司法試験の合格者は、
考査委員の合議による判定に基づき、司法試験管理委員会が決定することとされて
いた(旧司法試験法8条1項)
4氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:34:18 ID:???
2 原告の試験成績の開示請求等
(一)原告の司法試験受験歴等
 原告は、平成9年度から平成11年度までの各年度の司法試験第二次試験を
受験した。そして、平成11年度の司法試験に最終合格し、平成12年度司法修習
生に採用され、平成13年10月5日に司法修習生の修習を終えた。(甲5、弁論の
全趣旨)
(二)原告の開示請求
 原告は、司法試験管理委員会委員長に対し、平成15年4月2日、行政機関個人
情報保護法13条1項に基づき、原告に係る昭和58年度以降の司法試験第二次
試験ファイル中、別紙記載の全34のファイル記録項目のうち、番号15の「一次合格
申請」、番号16の「筆記試験免除・高等試験行政科合格申請」及び番号32の「筆記
試験免除区分」の3項目を除いた31項目の開示を請求した。なお、ファイル記録項目
のうち、番号26の「論文式試験の順位ランク」は、前記1(五)(2)の論文式試験の
成績通知における「科目別順位ランク」及び「総合順位ランク」と同一の内容である。(乙17)
(三)原告の開示請求に対する一部不開示決定
 原告の上記開示請求に対し、司法試験管理委員会委員長は、平成15年4月23日
付けで、次の〔1〕ないし〔7〕の各項目を開示することにより、行政機関個人情報保護法
14条1項1号ニ及び3号に該当することとなると認められるとして、これらの項目につき
不開示とする決定(以下「本件不開示決定」という。)をするとともに、その余の項目を開示
することとし、原告に対して不開示決定書及び開示書を郵送により交付した。
 不開示とされた項目は、原告のファイル記録項目が存在する年度のうち、
〔1〕番号23の「論文式試験の科目別得点」の平成9年度分から平成11年度分まで
〔2〕番号24の「論文式試験の総合得点」の平成11年度分
〔3〕番号25の「論文式試験の総合順位」の平成11年度分
〔4〕番号27の「論文式試験の制限枠合格の有無」の平成11年度分
〔5〕番号29の「口述試験の科目別得点」の平成11年度分
〔6〕番号30の「口述試験の総合得点」の平成11年度分
〔7〕番号31の「口述試験の総合順位」の平成11年度分
である。(甲1)
5氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:36:43 ID:???
(四)開示項目に関する当時の取扱い
 司法試験管理委員会においては、平成15年当時、別紙記載のファイル記録
項目のうち、番号23の「論文式試験の科目別得点」については、当該年度の論文
式試験の合格・不合格の別を問わず不開示とされ、番号24の「論文式試験の総合
得点」、番号25の「論文式試験の総合順位」及び番号27の「論文式試験の制限枠
合格の有無」については、当該年度の論文式試験合格者については不開示とされて
いた(つまり、当該年度の論文式試験不合格者については、開示する取扱いとされていた)。
 また、番号29の「口述試験の科目別得点」については、当該年度の最終合格・不
合格の別を問わず不開示とされ、番号30の「口述試験の総合得点」及び番号31の
「口述試験の総合順位」については、当該年度の最終合格者については不開示とされて
いた(つまり、当該年度の口述試験不合格者については、開示する取扱いとされていた)。
 本件不開示決定は、このような当時の司法試験管理委員会の取扱いに従って行われ
たものである。(乙17、弁論の全趣旨)
(五)本件訴訟の提起
 原告は、平成15年6月30日、本件不開示決定の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。
(当裁判所に顕著な事実)
6氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:37:18 ID:???
(六)成績通知についての取扱いの変更
 司法試験委員会は、平成16年2月23日、第二次試験の受験者に対する成績通知につ
いての取扱いを変更し、平成16年度の第二次試験から、それまで不合格者に対してのみ
行っていた論文式試験及び口述試験の成績通知を、合格者に対しても拡充することとした。
そして、論文式試験合格者に対しては、科目別順位ランク、総合順位ランク及び総合得点を、
口述試験合格者に対しては、総合得点をそれぞれ通知することとした。(乙25)
(七)本件不開示決定の一部取消し
 上記(六)の成績通知についての取扱いの変更に伴い、被告は、平成16年3月26日付けで、
本件不開示決定のうち、平成11年度論文式試験の総合得点及び制限枠合格の有無並びに
同年度口述試験の総合得点に関する部分を取消し、これらの処理情報を開示することとして、
原告に対して開示書を送付した(以下、上記一部取消し後においても不開示とされた処理情報を
「本件不開示情報」という。)。(乙18、19)
7氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:39:08 ID:???
第三 争点に対する判断
2 司法試験予備校と受験者の勉強方法について
(一)司法試験予備校
 現在、大手とされている司法試験予備校が3、4校あり、各校とも、2年間で試験
範囲全体を一通り勉強するコースや1年間で司法試験に最終合格することを目指す
コースなどの多彩なコースが用意されている。これらの司法試験予備校は、論点
ごとに判例や学説を要領よく整理して、設問やその解答を記載した教材や、過去の
試験問題(いわゆる「過去問」)や想定問題とそれらの解答例を集めた問題集などを
編さんしており、これらを使用して上記コースの受講者等に受験指導を行っている。
また、司法試験に関する情報を掲載した受験情報誌等も発刊しており、考査委員の
氏名や顔写真等の情報もこれに掲載されている。
 これらの司法試験予備校は、論文式試験の直前には、考査委員の顔ぶれなどから
論文式試験の問題を予想して、直前答案練習会を開催し、受講者に対して模範解答を
示している。
そして、試験終了後には、出題された論文式試験問題の模範答案を自ら作成し、あるいは、
受験者から再現答案を募集し、これに独自の解釈で答案の評価を行い、「A答案」等の
ランクを付けて、受験情報誌に掲載するなどしている。
 口述試験についても、試験終了後、試験における考査委員と受験者との問答の内容を
再現し、考査委員の氏名が判明した事例についてはその実名を明らかにして、受験情報誌に
掲載するなどしており、問答の内容が批評や分析の対象とされている。
8氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:40:02 ID:???
(二)受験者の勉強方法
 現在、受験者の多くは、司法試験予備校に通って、受験勉強を行っている。
合格者の多くは、大学の1、2年生のころから司法試験予備校に通い始めており、
初期は週2日程度のコースに通っている者が多いが、勉強が進むに従って、しだ
いに司法試験予備校への依存度が高まっていく傾向がある。
 これらの受験者の多くは、受験勉強の開始の当初から、司法試験予備校が
編さんした前記教材を読み、論点ごとの判例や学説の状況を記憶していく。そして、
それが終わると、過去問等を集めた前記問題集を読んで、解答例を記憶していくと
いう勉強方法を採っている。大学の教科書や基本書と呼ばれる概説書は、参考と
して見る程度の者も多く、読み通した基本書が一冊もないという者もいる。
 このように、現在の受験者には、論点・解答例暗記型の勉強方法を採っている者が
多いのが実情である。
9氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:40:54 ID:???
3 第二次試験の解答の現状と受験者の能力判定について
(一)論文式試験
 考査委員からは、ここ数年の論文式試験の答案について、〔1〕表面的、画一的、
いわゆる金太郎飴的な答案が多い、〔2〕同じような表現のマニュアル化した答案が非常に多い、
〔3〕答案のパターン化が進んでおり、同じ間違いをしている答案が多い、〔4〕答案の
パターンは、大手司法試験予備校の数と同様に、だいたい三つか四つのパターンに別れる、
〔5〕各論点ごとの解答例のパターンを組み合わせて書いた答案が非常に多い、〔6〕フレーズや
文章の運びが同じものが多く、接続詞まで全く同じ答案があったなどの指摘がされている。
 これは、受験者の多くが、前記のような論点・解答例暗記型の勉強方法を採っており、
自分の頭で論理を構成したり、説得的な論述を工夫したりすることなく、覚えた知識を吐き出す
だけの答案作成方法を採っていることが原因と考えられる。このような画一的答案の増加のため、
受験者の能力判定が年々困難になってきており、合格者数の増加ともあいまって、合格者の質の
低下を来しているとの認識が考査委員に共通のものとなっている。
10氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:41:33 ID:???
このような事態への対処として、考査委員の側でも、出題や採点に当たっては、
様々な工夫をしており、種々の法律上の問題点を有機的に組み合わせ、全体としての
論述構成に工夫を要するような問題を作成したり、また、問題にヴァリエーションを持た
せるために、
「なお、○○の場合はどうか。」などの付加問を付けるなどしている。しかし、上述の
とおり、大多数の受験者が論点・解答例暗記型の答案を作成するため、せっかくの出題の
工夫が生かされていないのが現状であり、付加問についても、司法試験予備校の指導等に
従ってこれを無視する受験者が少なくないとの指摘がある。
11氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:42:12 ID:???
(二)口述試験
 口述試験についても、論文式試験と同様にパターン化が顕著であるとされており、
考査委員からは、〔1〕典型的な論点については、答えることができるが、少し応用的な
問題については、全く答えられない者が多い、〔2〕一般の基本書には書かれていない
ような内容を、一言一句違わずに述べる受験者が増加している、〔3〕自分自身で考えて
いるのではなく、暗記している知識をいかに出すかということのみに終始している者が多い
などの指摘がされている。
12氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:43:19 ID:???
二 本件不開示情報が行政機関個人情報保護法14条1項1号ニに該当するか否か(争点1)について
1 論文式試験について
(一)前記認定事実のとおり、最近の司法試験第二次試験においては,司法試験予備校が編さんした教材を
読んで、論点ごとの判例や学説の状況を記憶し、その後、過去問等を集めた問題集を読んで、解答例を記憶する
という論点・解答例暗記型の勉強方法を採る受験者が増加しており、その結果として、出題者側の工夫にもかか
わらず、答案の画一化、パターン化が進み、受験者の能力判定が年々困難となり、論文式試験を通して各受験者の
理解力、推理力、判断力、論理的思考力、説得力、文章作成能力等を総合的に評価して採点をするという論文式試験の
選抜機能の低下が生じていることを認めることができる。
 また、前記認定事実のとおり、大手の司法試験予備校は、教材や過去問等を集めた問題集を編さんし、これらを使用
して受講者等に受験指導を行っているほか、考査委員に関する情報その他の司法試験に関する情報を掲載した受験
情報誌を発刊するなどしており、さらに、論文式試験直前には、試験問題を予想して直前答案練習会を開催し、試験後には、
出題された試験問題の模範答案を自ら作成するとともに、受験者から募集した再現答案に独自の解釈で答案の評価を行い、
受験情報誌に掲載するなど、高度の情報収集力に基づき、多様な方法を用いて、様々な第二次試験対策を実施しており、
受験者に対して極めて強い影響力を有していることが明らかである。 
13氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:44:20 ID:???
(二)このような状況の下で、論文式試験受験者の科目別得点が開示された場合には、
司法試験予備校において、受験者から募集した多数の再現答案と科目別得点との関係を
分析し、高得点答案の共通点・パターンなるものを抽出し、論文式試験の予想問題について、
それらの共通点・パターンに基づく答案表現例を多数作成して受験者に示すなどの受験指導
を行うことが容易に推測されるというべきである。なお、現在でも、論文式試験の科目別順位
ランクは、本人からの請求があったときには開示されているが、順位ランクでは1位から2000
位までがすべてAランクとされており、Aランクに属する答案の中にも相当のばらつきがある
はずであるから、これを前提とした司法試験予備校における再現答案の分析も概括的なもの
にならざるを得ないのであって、科目別得点を開示した場合には、これと比較してはるかに詳細な
再現答案の分析が可能となる。
14氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:45:31 ID:???
(三)また、論文式試験合格者の総合順位を開示した場合においても、高順位者については、
各科目とも高得点を得たものと推断されて、上記科目別得点の高得点者の答案についてと同様
の状況が生じるであろうことが容易に推測される。なお、現在でも、司法試験第二次試験論文式
試験得点別人員表の開示を受け、この表と自分の総合得点とを照合することによって、おおよその
総合順位を推計することが可能であるが、受験者皆が上記人員表の開示を受けているわけでは
ない上、具体的に特定された確定的な総合順位そのものの開示を受けることと、総合得点と上記
人員表との照合によりおおよその総合順位を推計することとの間には、隔たりがあるというべきである。

(四)そうすると、論文式試験の科目別得点又は同試験合格者の総合順位を開示することにより、
受験者らは、ますます、高得点を得たとされる答案の書きぶり、論述の運びなどの外形を模倣する
ことに力を注ぐようになり、その結果として、答案のパターン化、画一化に一層の拍車がかかることは
明らかである。そして、論文式試験を通して各受験者の理解力、推理力、判断力、論理的思考力、
説得力、文章作成能力等を総合的に評価して採点をするという論文式試験の選抜機能が一層低下し、
司法試験事務の適正な遂行に支障が及ぶものと認められる。
 したがって、これらの開示は、司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすものということが
できるから、本件不開示決定のうち、これらを不開示とした部分は、適法というべきである。
15氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:46:48 ID:???
(五)これに対し、原告は、〔1〕法務省のホームページには論文式試験の出題趣旨が
掲載されており、法務省自身が論点中心の勉強方法を後押ししている上、出題趣旨の
公表により答案の画一化傾向に拍車がかかるはずであるのに、実際にはそうなっていない、
〔2〕口述試験において、受験者の真の理解力、思考力等を事後的に確認することが
できるなどとして、論文式試験の科目別得点等の開示によって司法試験に関する事務の
適正な遂行に支障が及ぶことはない旨主張する。
 しかし、法務省が公表している論文式試験の出題趣旨は、主要な問題点を簡潔に指摘して
これを説明しているものにすぎず、答案に記載すべき具体的な事項や採点基準に関する
事項を明らかにしたものであるなどとは到底いえない(甲3により認められる。)。したがって、
法務省が論点中心の勉強方法を後押ししているとか、出題趣旨の公表により答案の画一化
傾向に拍車がかかるはずであるなどという原告の前記〔1〕の主張は、いずれも当を得ない
ものというべきである。
 また、論文式試験と口述試験には、それぞれ別個の観点から、その受験者が法曹になろう
とする者として必要な能力を有しているかどうかを判断し、これを有していると認められる者を
選抜するという機能があるのであるから、口述試験において受験者の真の理解力、思考力等
を確認することができるので、論文式試験の選抜機能が低下しても司法試験に関する事務の
適正な遂行に支障が生じないということに帰する原告の前記〔2〕の主張も、失当というべきである。
16氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:48:15 ID:???
2 口述試験について
(一)前記認定事実のとおり、口述試験においても、論点・解答例暗記型の勉強方法を
採る受験者が増加した結果として、論文式試験と同様に解答のパターン化が進んでおり、
自分自身で考えるのではなく、暗記している知識をいかに出すかということのみに終始
している者が多く、典型的な論点については答えることができるが、応用的な問題につい
ては、答えられない者が多いことが認められる。そして、試験終了後、再現された考査委員と
受験者との問答の内容が受験情報誌等に掲載され、批評や分析の対象とされているという
実情がある。したがって、仮に科目別得点が開示されることになった場合には、これらの
再現例に対する具体的な得点が明らかになり、高得点とされた再現例をうのみにして無批判に
勉学の指針とするなどの風潮が、受験者の間に広がるおそれがあることは、否定することが
できない。
 しかしながら、口述試験は、論文式試験とは異なり、考査委員と受験者が対面して行われる
ものであるから、考査委員において、あらかじめ用意した設問のみについて質問をするのでは
なく、受験者の解答の内容を踏まえて、さらに、応用的な問題について尋ねたり、判例の立場と
異なる反対説について尋ねたり、根拠や理由を尋ねるなどの工夫をすることが可能である。
そして、実際にも、各考査委員は、このような方法によって、単なる表面的な知識ではなく、
受験者の真の理解力、思考力等を評価し、その結果として、法曹としての適格性を判断すると
いう口述試験の目的が達成されているものと認められる(甲13及び弁論の全趣旨により認めら
れる。)。
 このような口述試験の論文式試験との差異に照らすと、口述試験においては、解答の画一化、
パターン化の進行によって受験者の能力判定が困難になり、選抜機能が低下するという現象が
現に生じているとは認め難く、さらに、仮に科目別得点が開示されることになったとしても、口述
試験の選抜機能が損なわれるとは考え難く、これを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、この点に関する被告の主張は、採用することができない。
17氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:49:32 ID:???
(二)他方で、考査委員と受験者が対面して行われるという口述試験の特色から、口述
試験の科目別得点の開示については、次のとおり、別途考慮すべき事情がある。
 すなわち、前記認定事実のとおり、受験情報誌等において考査委員の氏名とともに顔写真が
公表されているため、口述試験を受けた受験者は、自らが受けた口述試験の考査委員を
容易に特定することができる。そのため、科目別得点を開示すれば、受験者は、どの考査委員が
自分に対してどのような採点を行ったのか、不合格となった場合には、どの科目のどの考査委員
の採点によって合格点に達しないこととなったのかを具体的に知ることが可能となることが明らか
である。
 仮にそのような状況になったときには、受験者等によって、いたずらに個々の考査委員による
採点の適正さ等を問題視し批判するような動きが現れるおそれがあり、殊に口述試験の不合格者に
よって、低い採点をした考査委員に対していわれのない誹謗中傷がされるおそれがあると考えられる。

 そうなれば、考査委員としても、受験者に対する同情心や受験者に憎まれたくないという人間的な
感情にとらわれ、例えば、合否に直接影響するような特に低い採点を行うのをちゅうちょするなど、
自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢に萎縮的な影響を受ける可能性がある。
18氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:50:46 ID:???
これらのような結果は、考査委員が、自由で公正中立な立場から、受験者の法曹としての
適格性を総合的に判断するという、本来の採点の在り方を損なうこととなるというべきである。
(三)これに対し、原告は、〔1〕考査委員のほとんどが学者委員又は実務家委員であり、学者
委員も実務家委員も、その本来の職務において、学生あるいは事件の当事者その他の関係者
に対する人間的な感情にとらわれることなく、職務を行うべき責任を負っているから、口述試験
の科目別得点の開示により、考査委員が、自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢に
萎縮的な影響を受ける可能性はないし、仮にそのような可能性があるとすれば、そのような者は、
およそ学者又は法曹としても、考査委員としても、不適格であるにすぎない、〔2〕平成11年度以前
の第二次試験にあった、いわゆる法律選択科目の中には、考査委員が二人から四人程度しかい
なかった科目もあり、当該科目の受験者は、当該科目につき、自己の答案の採点者及び順位ランク
を知ることができ、どの考査委員が自分に対してどのような採点を行ったのかを知ることが可能で
あったが、これらの科目の考査委員が、論文式試験の採点において、受験者に対する人間的な感情に
とらわれ、自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢に萎縮的な影響を受けた事実は全く見
当たらないなどと主張する。
19氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:51:49 ID:???
しかし、司法試験は、国家試験の中でも最難関といわれるものの一つであって、このため、
司法試験の考査委員に対する受験者の関心は非常に強く、インターネット上でも考査委員に
関して膨大な量の書き込みがされており、不特定多数の氏名不詳者により、実名を挙げて
各考査委員の人格や外見等に対する誹謗中傷やいわれのない個人攻撃が日常的に行われて
いる(乙21の1、21の2により認められる。)。これらの中には、考査委員に対する直接的な
危害を予告するかのような脅迫的な書き込みすらあり、司法試験に失敗した受験者によって
法務省の幹部職員が脅迫を受けた実例も過去にある(乙23の1ないし8により認められる。)。
これらによれば、考査委員の心理的負担には極めて重いものがあり、特に、近時は、それが
増してきているものと推測される。このような現状にかんがみると、仮に口述試験の科目別得点が
開示された場合には、司法試験予備校による個々の考査委員の採点傾向等に関する情報の
公表に加え、考査委員に対する誹謗中傷やいわれのない個人攻撃が更に強まるであろうことは
必至であって、各考査委員の自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢が萎縮的な影響を
受ける可能性は大きいというべきである。したがって、原告の上記〔1〕の主張は当を得ないものと
いうべきである。
20氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:52:36 ID:???
また、原告の上記〔2〕の主張についても、口述試験は考査委員と受験者が対面して行われる
もので、双方とも相手を現実の人間として認識するものであることや、口述試験は合格率3パー
セント程度の難関を突破した論文式試験合格者に対して実施されるものであって、不合格となった
ときの心理的衝撃が大きいことなどの点を考慮すると、原告の主張は、口述試験と論文式試験の
差異を顧慮しないものであって、失当というべきである。
(四)以上の点を総合すると、口述試験の科目別得点を開示することは、司法試験に関する事務
の適正な遂行に支障を及ぼすものであるというべきである。したがって、本件不開示決定のうち、
口述試験の科目別得点を不開示とした部分は、適法である。
21氏名黙秘:2006/06/03(土) 10:54:07 ID:???
四 まとめ
 以上のとおり、本件不開示決定のうち、論文式試験の科目別得点及び総合順位を
不開示とした部分並びに口述試験の科目別得点を不開示とした部分は、行政機関
個人情報保護法14条1項1号ニに該当するから適法であるが、口述試験の総合順位を
不開示とした部分は、同項1号ニ又は3号のいずれにも該当しないから違法である。
五 結論
 よって、原告の請求は、本件不開示決定のうち、平成11年度口述試験の総合順位を
開示しないとした部分の取消しを求める部分については理由があるから認容し、その余は
理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事
訴訟法64条本文を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官 菅野博之 裁判官 市原義孝
裁判官本村洋平は、差し支えにつき、署名押印することができない。
裁判長裁判官 菅野博之
22お前らが前田や内田を貶すからw:2006/06/03(土) 10:57:14 ID:???
>司法試験の考査委員に対する受験者の関心は非常に強く、インターネット上でも考査委員に
>関して膨大な量の書き込みがされており、不特定多数の氏名不詳者により、実名を挙げて
>各考査委員の人格や外見等に対する誹謗中傷やいわれのない個人攻撃が日常的に行われて
>いる
23氏名黙秘:2006/06/03(土) 11:45:37 ID:???
何か説得力ない判決だな。
そんなことを言えば刑事の裁判官なんていつ刺し殺されるかわからんじゃん。
判決も匿名で書きますか?
24氏名黙秘:2006/06/03(土) 12:31:24 ID:???
刑事被告人>>旧試ヴェテねらー
25氏名黙秘:2006/06/03(土) 13:49:06 ID:q9RuAY3B
試験委員が良好と認めた金太郎飴答案が増えるのは良いことなんじゃないの?
26氏名黙秘:2006/06/03(土) 14:09:07 ID:???
地裁なのに妙に充実した判決文だな。ww
27氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:20:33 ID:???
どうしようもない判決だな
28氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:21:17 ID:???
そのうち判決もインターネットで批判されるからと匿名になるんじゃないかw
29氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:25:20 ID:???
これはマジ判決なの?
30氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:27:39 ID:???
ま じ
31氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:32:35 ID:???
>>23
刑事裁判官が刺し頃される可能性より、2ちゃんで該司法試験委員が匿名批判
される可能性の方が1000倍高いと思いますがどうでしょうか。
32氏名黙秘:2006/06/03(土) 23:35:55 ID:???
批判が嫌なら試験委員になるなよボケ

人の人生左右する仕事してんだぞ
33氏名黙秘:2006/06/04(日) 00:10:36 ID:???
>>32
自分の首を絞めるな。
試験委員のなりてが減って困るのは誰だ?
34氏名黙秘:2006/06/04(日) 00:12:31 ID:???
いやいや、試験委員になりたい学者は腐るほどいる。
ていうか、法学部の教授の夢は試験委員になること。
試験委員になるためにはあらゆる努力を惜しまない(現委員に媚を売って次を狙うなど)
のが法学部の教授。
35氏名黙秘:2006/06/04(日) 00:15:58 ID:???
何これ
よく長々と作ったもんだね
暇な人もいるんだな
36氏名黙秘:2006/06/04(日) 02:21:04 ID:???
地判の検索もできるのか
随分便利になったもんだなおい
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/584764A75FD804534925710A000659D7.pdf
37氏名黙秘:2006/06/04(日) 07:31:01 ID:???
>>36
どっから検索したん
検索URLきぼんぬ
38氏名黙秘:2006/06/04(日) 14:22:01 ID:???
>>34
なるほど。

ネット社会になり、芸能人をはじめとする著名人に対しては、
不特定多数の氏名不詳者により、実名を挙げて人格や外見等に
対する誹謗中傷やいわれのない個人攻撃が日常的に行われてい
る。
しかし、著名人になりたがる人は後を絶たんわな。

39氏名黙秘:2006/06/04(日) 14:33:07 ID:???
(四)そうすると、論文式試験の科目別得点又は同試験合格者の総合順位を開示することにより、
受験者らは、ますます、高得点を得たとされる答案の書きぶり、論述の運びなどの外形を模倣する
ことに力を注ぐようになり、その結果として、答案のパターン化、画一化に一層の拍車がかかることは
明らかである。そして、論文式試験を通して各受験者の理解力、推理力、判断力、論理的思考力、
説得力、文章作成能力等を総合的に評価して採点をするという論文式試験の選抜機能が一層低下し、
司法試験事務の適正な遂行に支障が及ぶものと認められる。
40氏名黙秘:2006/06/05(月) 03:22:59 ID:???
でもこの判決書いてる奴らだって予備校通ってただろ
41氏名黙秘:2006/06/12(月) 00:37:58 ID:???
重要裁判例上げ
42氏名黙秘:2006/06/12(月) 00:42:19 ID:1IqQMa56
口述の順位が分って何が嬉しいの?
43氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:02:46 ID:???
好きな方法を選べ

@中央線
A練炭
B樹海
C睡眠薬
D首吊り
44氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:20:38 ID:id77edvM
判決って

長ったらしく読みにくて、読んでいるうちに分からなくなりもういいやってなる

ポイント絞って分かりやすく賭けや
45氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:28:13 ID:???
実務家登用試験なんだから、考えるより覚える方が先だろ。
勝手に考えて明後日の方向に突っ走る香具師より、
条文・判例を淡々と覚えて淡々と吐き出す香具師の方が、
実務家としては優秀。
46氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:48:34 ID:id77edvM
一番頭の悪い人間に向いているな
47氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:54:23 ID:???
>>46
だが、記憶力だけは抜群に良くなくてはならない。
48氏名黙秘:2006/06/12(月) 01:59:07 ID:id77edvM
俺は世界史とかは覚えられたが
法律用語は覚えられない

つまらないからだと思う

49氏名黙秘:2006/06/12(月) 02:15:20 ID:???
>>45
依頼人は学説や過去の判例を聞きたくて相談に来るのではない。
自分の問題の解決を求めて来るのだ。
事案への応用が出来ない知識など実務家としてはないのと同じ。
50氏名黙秘:2006/06/12(月) 02:47:02 ID:id77edvM
要するに実践的知識が重要なんだよ

判例は重要だが、学説とかほとんど無意味
51氏名黙秘:2006/06/12(月) 02:48:10 ID:id77edvM
目の前に事件がある
それに適切且つスマートな結論と理屈を与える

この能力が最重要

細かい法律用語とか学説をほじくってるベテランは
何か勘違いをしているんだよね
52氏名黙秘:2006/06/12(月) 03:38:01 ID:???
>>49
確かに、弁護士も商売としてやっている以上、食っていくためには、
いくら勝てる見込みが無いとはいえ、依頼人をその気にさせるために
理屈をこねる能力は必要だわなw
つまり、例えば、新しい判例が出たばかりの事案と同じ事案であっても、
「ああ、あれ?あれは過去の判例ですからw 大丈夫ですよww」
と言って説得するのが>>49の考える法律家というわけだ。
53氏名黙秘
なんじゃこれゃ。
優秀答案を開示したらそれを真似するから駄目だって?
優秀答案が金太郎飴でなく、きちんと思考しているものであれば、
みんなきちんと思考した答案を書くようになるだろ。
もし、優秀答案が金太郎飴答案であるなら、
それをあえて排除する必要なんて無い。

試験委員は自分たちに似た波長のものを選び取るだけで、
受験生のことなんてまったく考えていないということが良く分かるな。