561 :
氏名黙秘:
沸騰法務ビジネス(上)存在感増すプロ集団――M&A・再生、陰で演出。
2005/07/14, 日本経済新聞
合併・買収(M&A)など、企業の存亡にかかわる取引の舞台裏で大手法律事務所が存在感を増している。
商法や税法、証券取引法など多分野に精通した企業法務専門のプロ集団。高度な知識とスキルは時に企業の
命運を左右する。
大手に人材集中
「すぐに取締役を集めてください」。五月二十三日夕、ブルドックソース社長の池田章子(61)の電話が鳴った。
相手は投資ファンドのスティール・パートナーズらによる株式取得以来、顧問を依頼する西村ときわ法律事務所
(東京・港)の弁護士、岩倉正和(42)。
イカリソース(大阪市)が翌日に会社更生法を申請すると聞きつけた岩倉は「いち早く支援表明を」と説いた。
グループ化できれば勢力拡大につながる。深夜零時からの取締役会で決議し、岩倉ら弁護士四人が立ち会い
支援発表の声明文作りに着手。翌朝すぐにスポンサーの名乗りをあげた。
大手法律事務所の弁護士が経済案件を陰で演出するケースが増えている。ダイエーは長島・大野・常松
(東京・千代田)、カネボウは西村ときわなど、産業再生機構の大型再建案件でも限られた事務所が法務アドバイザーを
独占した。
国内の弁護士人口は約二万一千人。大半は一人事務所で活動する。だが、企業法務では大手に人材も
仕事も集中する。
再生機構専務の冨山和彦(45)によると「総合力が必要な案件では大手に頼らざるを得ない」。再建スキーム検討や
権利関係の精査など、専門知識を持つ数十人規模の弁護士が必要な場合もある。ブレーンとして経営の支え役ともなる
人材の質と厚みがモノをいう。
約二百人の弁護士を抱える森・浜田松本法律事務所(東京・千代田)は昨秋、東京駅前の新築ビルの六フロア、延べ
床面積九千平方メートル弱に移転したばかり。だが「三年先には満杯になる」と代表弁護士の米正剛(51)。
今月一日付で知財訴訟に強いマックス法律事務所を吸収。再移転先の物件探しを始めており、弁護士六百人、職員含め
千五百人収容できるオフィスが条件だ。テナント誘致に励む不動産会社からは「狙い目はIT(情報技術)系か弁護士事務所」
との声も漏れる。
562 :
氏名黙秘:2005/07/15(金) 09:59:41 ID:???
年収1億円超
「この放棄計画が銀行にも最良のはずです」。森・浜田松本の弁護士、藤原総一郎(38)は三月、フジタと三井住友建設から
依頼を受け、債権放棄を渋る金融機関との交渉の矢面に立った。
私的整理が万一不首尾に終わる場合に備え法的整理の準備も進めた。部下六人と資金繰りや現場の対応マニュアルを作成。
「決着まで三カ月、一日十六時間働いた」
藤原の昨年分の所得税は二億円を超えた。大手ではキャリア十年前後で経営幹部(パートナー)に就く。その平均年収は一億円超。
一流弁護士の報酬は上場企業のトップを軽くしのぐ。
ニッポン放送の争奪戦。ライブドア、フジテレビジョン含め三社が支払った弁護士費用は十億円近いとみられる。M&A案件の増加などで
法務サービスの市場が誕生。買収防衛策などの“新商品”開発を促し、それがまた市場を広げるという連鎖の構造にある。
再生機構の冨山は「日本の経済規模なら二百―三百人級の大手が十は必要」と指摘している。
=敬称略
【表】日本の5大法律事務所(12日現在)
順位 事務所名(所在地) 弁護士数
1 森・浜田松本(東京・千代田) 199
2 長島・大野・常松(東京・千代田) 196
3 西村ときわ(東京・港) 184
4 アンダーソン・毛利・友常(東京・港) 177
5 あさひ・狛(東京・千代田) 142
(注)外国法弁護士は含まない