【プロセス】松井茂記vs長谷部恭男【「切り札」】
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氏名黙秘:
第三ラウンド:規制目的二分論
長谷部『憲法』第三版 p.251
国会が特定の業界の保護をうたって法律を制定した場合,それは国会が
本来果たすべき交渉と妥協の利害調整の結果であるから,裁判所が立ち入った
審査を行う必要は無い。その立法がなされる以前の法律状態も,それ自体
なんらかの利害調整の帰結と考えることが出来,裁判所として新たな利害調整の
結果よりも以前のそれの方が優れていたと判断すべき根拠は見出しにくい。
このような場面では,私的利害の抗争と妥協の結果こそが「公共の福祉」に他ならず,
その他に「公共の福祉」を決定する独立の判断基準が存在するわけではない。
消極的警察目的の立法は,より普遍的で強い正当性を標榜するからこそ,
その立法目的が反対派の目を眩ます意図で濫用される危険を抑制する必要がある。
松井『日本国憲法』第二版 p.552
およそ経済規制立法は特殊な利益を追求するレントシーキングな規制であるから,
それを隠して国民の生命・健康の保護をうたうような規制の場合にはやや厳格な
基準が正当化されるとして,二分論は結果的に支持できるとする見解がある。
すべての経済規制立法がレントシーキングなものかどうか疑問があるが,たとえそう
だとしても,国民はそのことを分かっているはずであるから,特に厳格な審査は正当化
されないであろう。