◇実務スレを実践する講座・本◇

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407備忘録
712 名前:”管理”人2号 投稿日:03/10/30 23:03 ID:???
それから、ホネカワ若手の再現答案です。ウチのサークルでは最優秀との評価
ですが、実務式からのご評価に興味があります。いかがでしょうか?

一 小問1
1 この点について、最高裁判決は、平成7年12月1日、「合理的な根拠に基づいて
各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではない」とい
う規範を示した。
 そして、本件事案において、裁判所は「民法723条の立法趣旨は、父性の推定の重
複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防止することにあると解される」と
あてはめ、憲法14条1項に違反しないものと判示した。
 なお、同判決は、国会の立法不作為を国家賠償責任として争った事案で、「国会及び
国会議員の立法行為(立法不作為を含む)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反
しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというように、容易に想定し得な
いような例外的な場合」という規範において、上記の論旨から本件事案も「直ちに前示
の例外的な場合に当たると解する余地のないことが明らか」と結論づけたものである。

2 上記平成7年最高裁判決の事案で、上告人は、@嫡出推定の重複の回避は技術上の
問題であり、再婚をする権利は基本的人権であるから、技術上の問題を理由として基本
的人権を制限することは、基本的人権尊重の理念に反するA女性についてのみの再婚禁
止期間は、「性別による差別」に該当する、B基本的人権の尊重の理念に照らし、LR
Aの基準が採用されるべき、CDNA判定により、父子関係の有無を確実に判定できる
ので、父性の混同は生じないのであるから、立法者は、「女についてのみの再婚禁止期
間を設けないで、嫡出推定が重複する場合には後夫の子と推定し、この推定は親子不存
在確認の訴えによって覆えし得るものとする」方法を選ぶべきである旨主張していた。

3 私は、上告人の主張にも傾聴する価値があるとは思うが、Cを断ずるには未だ時期
尚早の感もあり、最高裁判所の判示内容が現時点でも妥当であると考える。
408備忘録:03/11/04 10:55 ID:???
713 名前:”管理”人2号 投稿日:03/10/30 23:03 ID:???
二 小問2
1 本小問も前小問同様、「性別による差別」が問題となり、「合理的な根拠に基づい
て各人の取扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではない」との規
範があてはまる。

2 私は、上記最高裁の規範について、より具体的には、@取扱いの区別を生じさせた
社会的背景、A取扱いの区別によって受ける利益、B不利益を被る側の救済手段につい
て総合的に判断して、「合理的な根拠」に基づいているか否かを総合的に判断するのが
妥当であると考える。

3 これを本文についてみると、@かねてから女性の社会的地位は低く、女性のみに入
学を認める学校は、その地位向上のためであったこと、そして、現実には、残念ながら
現在でも女性の地位は低いといわざるを得ない、A女子校の存在によって、女子の教育
水準の向上に役立っており、女子の就業率向上等による社会的利益は極めて大きいこと
、B男子において、当該女子校でなければ学習できない特段の事情は想定しづらく、一
般には男子の方が多様な進学機会があると考えられること等を総合的に判断すると、取
扱いの区別は合理的な根拠に基づいているといえる。

4 したがって、本問の願書受理拒否は違憲ではない。
以上→右寄せ
409備忘録:03/11/04 10:57 ID:???
897 :サワ ◆tWgrXBBMXQ :03/11/03 19:08 ID:???
再現答案のご依頼を受けたのですが、さすがに2ちゃんねるとなると
皆引いてしまって(笑)。

今年の合格者の猫丸さんという方から「刑法各論くらいなら揉めないので
いいのでわ?」というお許しを、ようやく、得ました。
410備忘録:03/11/04 10:58 ID:???
898 :氏名黙秘 :03/11/03 19:09 ID:???
一 本問各所為の評価
1.上記運転免許証の氏名欄に本名である「甲」と記載のある紙片をはり付けた
所為

(1)文書とは、「文字その他の可視的可読的符号により、一定期間永続する状
態で、ある物体の上に意思又は観念を表示したもの」をいい、公文書とは、公務
所又は公務員の作成すべき文書又は図画をいう(155条)ところ、運転免許所
は国家公安委員会が作成した文書にあたるから公文書と認定できる。有印公文書
の「印章」につき、公務所の自署ということはあり得ないので、判例は記名印刷
を含むとする。したがって、運転免許証は有印公文書である。
(2)文書の偽造とは、「権限なく他人名義の文書を作成すること」をいい、文
書の本質的要素の改ざんは偽造となる(それ以外は、変造である)。運転免許証
上の運転者の氏名は、本質的要素であるから偽造である。
 なお、判例も、運転免許証の写真を貼りかえて、生年月日を改ざんした事案を
偽造と解している。
(3)また、偽造罪が成立するには「一般人からみて真正に作成されたものであ
ると誤信させるに足りる概観を有する」ことが必要となる。
 本問事案では、免許証の氏名欄に「甲」との名前の記載された紙片をはり付け
ているので、その免許証を直視すれば必ずしも一般人が誤信するとはいえないよ
うにも思える。
 しかし、裁判例(平成8年大阪地裁)は、同様の事案で「免許証を直接手に取っ
て見れば、改ざんされたものであることは容易に見破られるものであると判断で
きる場合でも、電子機械を通しての提示で一般人をして真正に作成された文書で
あると誤認させるに足りる程度であれば偽造罪となる」旨認定しており、本問で
も現にYが誤信したというのであるから上記裁判例の程度のものであると認定で
きる。
(4)そして、文書偽造罪においては、行使の目的が主観的違法要素であるが、
甲は「消費者金融X社から甲名義で借入れ名下に金員を得ようと企て」たという
のであるからこれも認定できる。
(5)したがって、この所為により、有印公文書偽造罪が成立する(155条1
項)。
411備忘録:03/11/04 10:59 ID:???
899 :氏名黙秘 :03/11/03 19:11 ID:???
2.甲が氏名欄に「甲」と記載し,住所欄には現住所を記載した借入申込書を作
成した所為

 文書の偽造とは、「権限なく他人名義の文書を作成すること」をいうところ、
甲が甲名義の文書を作成するのは、たとえその動機において不当な点があろうと
私文書偽造にはあたらない。

3.甲がこの借入申込書と運転免許証とを自動契約受付機のイメージスキャナー
(画像情報入力装置)で読み取らせ、X社の本社にいた係員Yにディスプレイ
(画像出力装置)上でこれらの画像を確認せしめた所為

 ここで、偽造公文書行使罪(158条1項)の「行使」とは、「偽造変造され
た公文書を提示、公布又は閲覧に供すること」をいうところ、X社の本社従業員
Yにディスプレイ上で確認させているのだから、閲覧の用に供したといえ、行使
が認定でき、偽造公文書行使罪が成立する(158条1項)。

4.甲が係員Yに貸出限度額を30万円とする甲名義のキャッシングカードを同
受付機を通して発行せしめた所為

 詐欺罪(246条1項)の構成要件はイ)欺く行為、ロ)相手方の錯誤、ハ)
処分行為、ニ)詐取、であるところ、本問では、イ)上記行使の行為が欺く行為
であり、ロ)係員Yはディスプレイをみて偽造のない真性な公文書と信じたのだ
から相手方は錯誤に陥っている、ハ)カードの発行がXの従業員Yの処分行為で
あり、ニ)甲は、キャッシングカードの交付を受けているのだから詐取も認定で
きる。
 以上から、甲に詐欺罪(246条1項)が成立する。
412備忘録:03/11/04 10:59 ID:???
900 :氏名黙秘 :03/11/03 19:11 ID:???
5.それを利用して同店舗内の現金自動支払機から30万円を引き出した所為

 本件30万円の現金は、Xが占有管理するものであり「他人の財物」である。
甲は、不法領得の意思をもって、他人の財物をその占有者の意思に反して自己の
占有に移転させているのだから、「窃取した」といえ、窃盗罪(235条)が成
立する。

二 罪数処理
 以上により、甲には有印公文書偽造(155条1項)、同行使罪(158条1
項)、詐欺罪(246条1項)及び窃盗罪(235条)が成立する。
 有印公文書偽造罪、同行使罪及び詐欺罪は、それぞれ順次、手段結果の関係で
あるから牽連犯(54条1項後段)となり、それらと、窃盗罪とは併合罪(45
条前段)の関係に立つ。


                                     以 上