「本当は私あのロースクールに行きたくなかったの」と緑は言って小さく首を
振った。「私はごく普通の受験期間で現行試験に合格して研修所へ入りたかったの。
ごく普通の人が合格する標準的な期間で。そして楽しくのんびりと青春を過ごし
たかったの。でも親の見栄であそこに入れられちゃったのよ。ほら適齢期を過ぎ
た娘が両親の家でごろごろしてるとそういうことあるでしょう?この娘は目的を
もって勉強しているから、結婚しないんだ、ってね。で、入れられちゃったわけ。
六年通ったけどどうしても好きになれなかったわ。一日も早くここを出ていきた
い、一日も早くここを出ていきたいって、そればかり考えて学校に通ってたの」