宝島社刊「モンダイの弁護士」

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32氏名黙秘
司法ジャーナルの記事より
http://www.shihoujournal.co.jp/


【弁護士犯罪者列伝】史上最高、懲役9年が確定、服役している八木康次という男

●奈良の河辺幸雄も脱帽のケース

 別項で取り上げている奈良弁護士会の河辺幸雄弁護士(52)の事件は被害者
155人、被害金額8億7800万円、弁護士がかかわる詐取事件として、被
害者数、被害金額で過去最大規模に発展する雲行きだが、弁護士仲間、公証人
まで巻き込み、被害者1人から総額24億1000万円を着服横領した弁護士
がいたので紹介する。その弁護士は第二東京弁護士会にいた八木康次(62)=
97年12月22日除名処分=である。

●同期の二宮征二郎弁護士も巻き添えに

 東京地検特捜部は96年11月、八木を業務上横領、有印私文書偽造などの罪で
東京地裁に起訴した。八木の証拠隠滅を図ったとして、同期の東京弁護士会所属、
二宮征二郎弁護士(60)=後に東京弁護士会から業務停止2年の懲戒処分=を略式
起訴。東京簡裁は20万円の罰金を命じた。
 八木は、事件当時88歳だった東京銀座の天ぷら店経営者の女性(故人)から宅
地の売買交渉を依頼され、預かった売却代金計24億1000万円を着服横領。さ
らにその事実を隠すため「貴殿に私の財産全てを贈与します」という、この女性名
義の証書を偽造していた、などとされる。

●検察側冒頭陳述が明らかにした悪行

 検察側は97年2月10日開かれた第1回公判における冒頭陳述で次の事実を
明らかにした。
「八木は85年ごろから不動産投資を始め、東京都内の土地などのほか米国でも
ビルを買収。90年には30億円の負債を抱えた。
 このため、90年8月と91年3月の2回、東京・銀座にあった飲食店の土地
などの売買交渉を依頼した女性(93年に93歳で死亡)の銀行口座から、同女
が老人性痴呆症を患っていたのに乗じ、次々と現金計24億1000万円を引き
出し、債務の返済に充てたばかりか、八木の子供にも財産を贈与するとの遺言状
まで書かせた。売買交渉では当初の価格の2倍に引き上げた。
 女性の死後、遺言状の内容などを不審に思った依頼人の養女の紛議調停申立て
で、八木が所属する第二東京弁護士会が調査に乗り出すと、八木に全財産を贈与
するとの贈与証書や1億―2億円を受け取ったとの政治家名義の領収書などを偽
造した」と。
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続き

●記者の知る限り最も悪質な弁護士犯罪

検察側の冒頭陳述を聞いて、記者の知る限り最も悪質な弁護士犯罪と感じた。
横領した金額はこれまでに例のないほど巨額であり、しかも被害者は老人性痴
呆症で高齢だったからだ。加えて発覚しそうになると、偽造文書を提出するな
ど、弁護士であることを悪用して罪を逃れようと図っていたな言語道断。弁護
士に対する信用を大きく傷つけるものだ。

●検察側は八木に懲役12年を求刑

 八木に対する論告求刑公判は98年12月25日、東京地裁(山崎学裁判長)
で開かれ、検察側は懲役12年を求刑した。
 検察側は論告で「私利私欲のために弁護士の立場を悪用し、老人痴呆症の依
頼者を食い物にした卑劣極まりない犯行。職業倫理は微塵もなく、法曹全体の
社会的信用を著しく害した」と厳しく非難した。記者もわが意を得た思いだっ
た。
 弁護側の最終弁論は99年3月14日に行われ、弁護側は「依頼人から財産
運用の許可を受けており、横領は成立しない」などと起訴事実の大半について
無罪を主張。結審した。

●東京地裁の山崎裁判長、八木に懲役9年

 八木の判決公判は99年3月26日にあった。判決に先立って八木の最終意
見陳述があり、「私の行為は、社会的、倫理的に大きく反しており、弁護士と
して人間として反省すべき点がある」などと述べた。
 山崎裁判長は「弁護士倫理を土足で踏みにじり、一般社会の弁護士に対する
信用を大きく傷つけた責任は重大」と総括、懲役9年を言い渡した。
 弁護士に対する判決では異例の重さの量刑といえた。
 判決理由で山崎裁判長は、犯行の動機について「不動産投資の借入金返済の
ため預り金を着服しており、弁護士たる者として到底許されない悪質な犯行。
現段階で被害弁償もなされていない」と指摘、八木が弁護士会の懲戒処分を免
れようと横領の事実を隠すため各種文書を偽造した点について「身勝手で厚顔
無恥。うそをうそで塗り固め、犯行の悪質性を増大させた」と断じた。
 八木の弁護側は判決を不服として控訴した。
3432:02/04/15 16:35 ID:???
続き

●2審の東京高裁も1審の東京地裁判決を支持

 1審の東京地裁で懲役9年の判決を受けた八木の控訴審判決で、東京高裁の
河辺義正裁判長は2001年2月15日、1審判決判決を支持し、弁護側の控
訴を棄却した。
 河辺裁判長は判決理由で「高齢の女性の信頼を裏切り、財産のほとんどを食
い物にした卑劣極まりない犯行。社会の弁護士に対する信頼を根底から失墜さ
せた」と八木を厳しく非難、弁護側の「被告は横領したとされる金の処分を女
性から任せられていた」との無罪主張について、同裁判長は「弁解に沿う客観
的事実は全くない」と退けた。
 弁護側は判決を不服として上告した。

●最高裁第3小法廷、上告棄却の決定

 最高裁第3小法廷(奥田昌道裁判長)は01年6月14日までに、「被告
の上告を棄却する」決定をした。上告してから僅か3カ月後の門前払いであ
る。八木はこの判決により懲役9年が確定、服役した。
 
●八木の犯罪は極めて例外的出来事ではない!

 弁護士の中には冤罪や公害、薬害、高利金融、悪徳商法の被害救済などに
力を尽くしている人も少なくないのも事実だが、八木の事件を「極めて例外
的出来事」と言い切れることはできない。今の弁護士界は問題弁護士が50
00人はいるからだ。全弁護士の約4分の1である。問題弁護士に対する監
視機関の必要性を痛感する。