あなたの理想のをきかせてください。
ちなみに今日の僕はこうなっている予定でした。
朝
あまりの寒さに歯を食いしばりながら、銀色のポルシェのエンジンキーをまわす。
今日は午前中、法廷に出れば仕事は片付くはずだ。多少やっかいな事件だが、
和解の話も進んでいるので、まあ何とかなるだろう。暖気運転もほどほどに、
アクセルを踏み込むと、独特の咆哮が地下駐車場に響いた。
昼
飛び込んだすし屋で、慌てて上にぎりをかきこむ。書類にしょうゆをこぼしてしまった。
午後は事務所に戻って仕事の整理をしなければならない。そうだ、事務員の女の子に、
チョコレートケーキでも買っていってあげよう。書類をかばんに詰め込み、店を出る。
どんよりとした雲が空を覆っていた。
夕方。
7時半頃彼女と待ち合わせだ。虎ノ門の事務所なので6時ちょいに出れば十分間に合うだろう。
彼女とは修習時代に知り合った。現実的な彼女はクリスマスなんてどうでもいいというが、
実際は僕とのクリスマスデートを喜んでいるようだ。水色の箱に入ったプレゼントを
大事にかばんに入れ、途中花屋に寄り、ちょっとした花束を買った。
夜
今日のクリスマスディナーは程々といったところだった。客層はいかにも奮発して来たという感じの
おのぼりさんが多く、雰囲気はいまいちだったが、夜景が素晴らしかったのと七面鳥が絶品だった
のがよかった。
途中で緊急の電話が入り、事務所に戻らねばならなくなった。依頼人にクリスマスを楽しむ
余裕がないのは当然のこと、彼女をマンションに送り届け年末の予定を聞いた後に、
キスで車から追いだす。
皇居横で信号待ちをしながら、クリスマスってこんな感じだったかなあと考えていると、
フロントガラスに雪が落ちてきた。
長いよばーか