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まず甲の罪責について論じる
甲においては せっかん バットでの足への殴打 バットでの頭部への殴打の3つの行為が
あるが 酒による判断能力の問題を除外して考えると 3つの行為は 皆
Aの身体に向けられた暴行であるから包括一罪と考えAの死亡に対する
刑責を論ずればよいこととなる
暴行を加えていて途中から殺意をもって殺した場合殺人罪で評価するのと同じである
本問はバットで足を殴る時点で判断能力が相当減退していたというのであるが、判断能力の減退は減刑事由
に過ぎないので犯罪の成立には影響がない。
甲は死んでも構わないと考えたのであるから未必の故意があり殺人罪が成立する。
(ここで未必の故意の説明をして知識のあることを試験委員にわからせる)
ついで甲について判断能力減退を理由として刑を厳刑すべきか損じる
甲は酒をのむと暴行することが多く、これを認識していたというのであるから
いわゆる原因において自由な行為の問題である
甲がいつも酒をのむとバットを持ち出し暴行し、その暴行の程度が、まかり間違ったら死の結果
を招くようであれば、甲はそれを認識しており、酒を飲まないということでそれを
防止できたのであるから 判断能力の減退は自ら知りながら招いた結果であり
刑の減刑をすべきではないことになる
これに対し日ごろの酒の上での暴行が死に至ると到底考えられない程度の暴行であれば
減刑をすべきこととなるがAが3歳であることを考慮すると、そのような場合
は殆どないと思われる。
ついで乙の刑責を論じる
乙は何もしていないのであるから刑責を問えないのではないかという問題があるが
乙はAの親権者でありAに対し保護義務がある
よって刑法218条の 生存に必要な保護をなさざる とし 219条の結果的加重犯
の適用となる
結論 甲は殺人罪 刑の減刑は行わない 乙は保護責任者遺棄致死罪