連続テロに対する報復戦争の国際法的な正当性は成り立たない:加藤尚武
1、国際法上の「戦争」とは、単に軍事行動が行われたという時点では成立せず、
主権国家もしくはゲリラ団体が戦争の意思表示をすることで成立します。ゆえに、
今回の連続テロは犯罪であって、戦争ではありません。犯罪として対処すべきです。
2、国際法では、いかなる紛争にたいしてもまず平和的な解決の努力を義務づけ
ています。ブッシュ大統領が、連続テロの今後の連続的な発生の可能性に対して、
平和的な解決の努力を示しているとは言えないので、新たな軍事行動を起こすことは
正当化されません。
3、国際法は、報復のために戦争を起こすことを認めていません。したがって、
たとえ連続テロが戦争の開始を意味したとしても、現在テロリストが攻撃を継続
しているのでないかぎり、報復は認められません。
4、連続テロに対する報復戦争が正当防衛権の行使として認められるためには、
現前する明白な違法行為に対しておこなわれなくてはなりません。予防的な正当防衛は、
国際法でも国内法でも認められていません。連続テロに対する報復戦争を正当防衛権の
行使として認めることはできません。
5、国家間の犯人引き渡し条約が締結されていないかぎり、犯人引き渡しの義務は
発生しないというのが、国際法の原則です。「犯人を引き渡さなければ武力を行使
する」というアメリカ大統領の主張は、それ自体が、国際法違反です。
以上の理由によって、私は連続テロに対する報復戦争は正当化できないと判断します。
このアピールのいかなる形の転載にも同意します。
9月19日 加藤尚武(鳥取環境大学学長、日本哲学会委員長)
これってどうなんですかね。国際法勉強してる方、評価願います。
世界はロシアのチェチェン侵攻にも批判的だった。
でもロシア人はモスクワでかなり激しいテロをやられていたから支持した。
それでプーチンが大統領になったんだよね。
今回のアフガン侵攻にも当然世界は反対。
アメリカの報復を支持する人が過半数を超えたのは米国とイスラエルだけ。
>>1 米国がやろうとしているのは「制裁」、
「報復」ではない。
意図的な誤訳か?
どっちかによって結論がまるで違うのだが?
単なる勘違い?
>>1 よその板(ニュース議論)でも言われました。よもや加藤先生の思い違い?
それとも実質報復戦争だとみなしているんでしょうか。
age
制裁もさ、憲章7条でやればOKなんじゃないの?
age
>>1の言い分だと、犯人の身柄引渡し条約を締結していない国は、養成した兵士を使ってテロ活動すれば、法的に相手がノーガードの戦争をやり放題になっちゃうわけよ。
そんなの許されんよ。
許されるとしたら、国際法が間違ってるね。
現在、国連憲章のもとでは宣戦布告による「戦争」の概念は否定されている。
「戦争」と「自衛権の行使」などとは概念上一応区別される。
1のコピペは最初の段落で間違ってる。
------------------------終了-------------------------------
age
実際,どの条文のどういった文言解釈になるんですかね?
加藤先生は元々京大総合人間,哲学プロパーの方で,
国際法や法哲の方ではないですよねえ。滅多なこと言わない方が
良いと思うんですが,ってあそこまで地位が固まってれば何言っても
良いのかな。
国際公法選択だった方にご教示頂きたいですが…
絶対数が少ないか 泣
正直
>>12 >>13 が正しい。
しかし、まあそれじゃ身も蓋もないので
一応「自衛権の行使」のことを言ってると
解釈したらいいんじゃないの。
で、まあアルカイダが犯人だとしよう。
すると、自衛権行使は憲章51条によると
「武力攻撃が発生したとき」
に認められる。
これが先制的自衛を認めるか否かで問題になる文言ではあるが、
いずれにせよ今回のテロの事例では
アメリカは直接武力攻撃を受けているので
自衛権行使の典型的な事例と考えられる。
なお、憲章には明文が欠けるが
戦争の違法化を実質化するためには、
自衛権は抑制的に行使すべきであるので、
必要性の要件が必要になると私は考える。
このケースでは
首謀者が未逮捕であること、
アルカイダのネットワークが健在であること
等から行使の必要性は消滅していないと考えられる。
結局アメリカはアルカイダ(私人)に対して自衛権を行使できる。
これから考えると1は何言いたいのかわからん
(私人でも武力行使の主体になるし、自衛権の行使に
宣戦布告等の形式的な意思表示は必要とされない。
今回アルカイダは事実行為によって
事実上の武力行使を行っている。
一方アメリカは議会によって宣戦布告を行っている。
よって双方ともに要件を欠くわけではない。)し、
2はそもそも自衛権が発動できる段階なので
一般的な紛争とは様相を異にするため当てはまらない。
3は意味不明。
4は予防的正当防衛(先制的自衛のことか?)とやらと言っているが、
そもそも今回の事例は当てはまらない。
今回は直接攻撃を受けたことに対する自衛権行使の事例。
よって1〜4までの意見には賛成できない。
あと、最近の国際テロ行為に関する多国間条約においては
普遍主義を採用するのみならず、
各締約国に対して犯罪の訴追・処罰のための特別の義務を設定している
そして、
犯罪行為がたとえ政治的要素を含んでいても当然に引渡犯罪と見なされる。
(ハーグ条約、モントリオール条約、ローマ条約など参照。)
ただし、それにより各締約国が自国において訴追をする
権利が失われるわけではなく、引渡義務は必ずしも発生しない。
しかし、今回の事例においてはアフガニスタンは
自国における訴追を行う意思がそもそも無く、
しかも締約国であるかどうかも疑わしい。
従って、テロ行為などの国際犯罪の処罰確保という諸条約の精神から考え、
引渡義務が発生すると考えてもさほどの問題はない。
よって5についても賛成できない。
こんな感じかな・・
乏しい知識と記憶を元に考えてみたけど・・。
拙文スマソ。
でも、
>>1 の論評ってそもそも国際法の話なのかね?
ちょっと突っ込みどころが多すぎると思うのだが・・。
あと、
憲章7条所定の手続に沿えば
国連軍により
制裁が可能になる。
>>10 も正しい。
age
21 :
あんまりよくわからんけど:01/09/26 02:46
戦意の表明は黙示で足りるはず。
あと、安保理が必要な措置をとるまでの間は
個別的・集団的自衛権の行使は認められてる。
自衛権の行使には、規定はないけど、
必要性と均衡性が要求されると考えられているが、
前者の要件は十分に充たしてると思われる。
後者は今後の武力行使の態様次第。
ただ、個人的には、現行の国際法が想定していない事態が生じていると思うから
国際法に忠実に則って手続を進めていくことには無理があるんじゃないかな。
国際法が今回の事件を解決する有効な手段を提供しきれていないんだから、
国際法を根拠に、アメリカの軍事行動はイカン、と言うのもねぇ
なるほど,非常に参考になります(マジレス)。
国連憲章51条によれば、自衛権が行使できる要件は
「武力攻撃が発生した場合(if an armed attack occurs)」となっている。
この「武力攻撃」とは、「陸海空軍その他これに準ずる軍事手段を用い
国境線を超えて行われる組織的な軍事行動」とされる。
武力行使のなかでも最も重大な方式をいう。
国境警備機関の突発的な衝突や外国民間機の領空侵入といった程度
の実力行使は含まれない。
したがって今回のテロは自衛権行使の対象とはならない。
また自衛権の保護法益は、主に国家の領土保全とされる。
それを拡張して、一定の在外権益も自衛権の保護法益になると
する見解もある。
いずれにせよ今回のテロはアメリカの領土保全を侵害する
ものではない。
結局、テロに対する報復として、自衛権を援用することはできない。
[参考文献:山本草二「国際法【新版】」(有斐閣、1994)、733-736]
武力行使が認められるのは、安保理決議が
武力行使容認決議を出した場合に限られる。
現行国際法が想定していない事態だから、国際法を忠実に
守らなくてもいい、という意見には賛成できない。
(コソヴォ紛争のNATO空爆はまさにそういう事例だったが。)
そういう場面でこそ法解釈の腕前が問われている。
「法とは何か」を考え、適用可能な法規を見つけ出し、
自分達の利益を守るための抗弁を何とか考え出す。
事態をパワーポリティックスに委ねてしまうのではなく、
国際関係における「法の支配」をどこまでも貫かなくてはならない。
司法試験で出てくる国内の紛争解決も同じ。
現行法の十分に想定していない事例に対しても、
一般条項や拡大解釈・類推解釈を駆使して
何とか法的な解決を試みる。同じことが国際紛争にもいえる。
>>23 >国境警備機関の突発的な衝突や外国民間機の領空侵入といった程度
>の実力行使は含まれない。
>したがって今回のテロは自衛権行使の対象とはならない。
民間機の領空進入のレベルを遙かに越えていると思うが。
25 :
あんまりよくわからんけど:01/09/27 00:28
>>23 おれ程度の知識じゃ太刀打ちできないはわかってるけど…
今回の事件にしろコソボの時にしろ国際法の弱さみたいなものが
おもいっきり露呈するよな。
結局、法的な解決がもっとも望まれる場面で有効に機能しない。
拘束力なんてないも同然になるし。
だからといって法的な解決を放棄すべき理由にはならないけどね。
でも、なーんか無力感は否めない…
>24
憲章51条の「武力行使」とは、たとえばクウェート侵攻ぐらいの規模の
領土への侵略をさす。今回のテロは「武力行使」に該当しない。
ただ、国連憲章51条の自衛権以外にも、一般国際法上の自衛権が
別枠で存在する。こちらでテロに対する報復の武力行使を論じる
余地はある。諸説がこみいってて難しいからもう書かないけど。
ただ、アメリカのような大国は武力行使に安易に訴えがちなので
こういう場合こそ法的な裏付けが厳格に問われなくてはならない、
と自分は考えるのだ。
オワリ
> 憲章51条の「武力行使」とは、たとえばクウェート侵攻ぐらいの規模の
> 領土への侵略をさす。今回のテロは「武力行使」に該当しない。
「武力攻撃」に訂正
>>24 いや、
>>23-26-27
が正統的な解釈だよ。
ただこれって極限事例なんで・・。
結局今回はアメリカもNATOも自衛権行使
という形式を取るみたいだからね。
しかも世界の大半の国がこの方式を追認。
もしかすると解釈が変更されるかもね。
ちなみに、
武力攻撃は
@国境警備機関の突発的な衝突や外国民間機の領空侵入といった程度
の実力行使は含まれない。
また
A「間接的な武力行使」
(他国の反乱団体に対する武器の提供と兵站上その他の支援が合体したもの)
は含まれないというのが正統的な解釈なんだが・・。
今回の民間機による特攻ってのは
@Aのいずれにも該当しないんだよね。
25-26氏があげておられる事例が@Aに
該当しないのは明らかなんだけど、
今回の事例はどうなのかなあ?
これを自衛権行使に近づけて考えるか、
あくまでも制限的に考えるかは価値観かなあ・・。
超大国の自衛権濫用の防止か
テロ防止に対する実効的手段の確保か
という結構微妙な判断を強いられるね。
法解釈って難しいね。
ちなみに、
前回、記述を単純にするため武力行使に含めたけど、
「武力行使に至らない程度の違法な実力行使」
であるとの認識に立ちながら
リビアのテロ行為に対して自衛権行使を主張した
事例も存在するからね。
(ただし、このケースは在外自国民保護の事例。
今回の本土攻撃の事例とは異なるという解釈も可能。)
これからすると武力攻撃自体を必然的に自衛権行使の要件とは考えない。
もっと正確に言うと憲章51条の「武力攻撃」という文言を
もっと実質的に考えようという立場が存在し得るね・・。
まあ、結構争いがあるところなので色々ですな。
まあ、我々学生レベルで別に法解釈を放棄したりする必要はないけど、
実際は政治の世界が絡み、しかも慣習法の要素が強く、明文化が遅れている
国際法の世界の話である以上
>>25氏の感想もまあ、確かにって気がする。
悩ましいね・・。
>>28 >ちなみに、
>前回、記述を単純にするため武力行使に含めたけど、
>「武力行使に至らない程度の違法な実力行使」
ここの武力行使って文言「武力攻撃」の間違いだよ・・。
訂正。
鬱だ氏脳。
面白い面白い。あげあげ。
ピッ! ∩∧,,∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ミ,,・∀・ミ< えーっと・・国連軍がタリバンに対して空爆開始。
ミ ミ \_____
\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄U ̄ ̄.\
||\ |FUSA NEWS| \
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キャ! ∩∧,,∧∩ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ミ,,>∀<,,ミ< なんちって!
ミ ミ \_____
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| | ^ミ>w<ミ^....| ◎ |<ナンチッテ!
| | |\_\...|.. ...|
| | |──| | 田 |
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧ ∧ / ̄ ̄ ̄
( ) < 誤報かよっ!
./ | \___
(___/
/
勉強になります。age
33 :
加藤先生、新着アリ:01/09/27 23:16
新事例には、法実証主義でいきましょう。
35 :
法律勉強板より:01/09/28 08:08
17 名前:・・・・ 投稿日:01/09/26 17:44 ID:egMOZii6
哲学会の人に国際法の議論をされても・・。
>1、国際法上の「戦争」とは、単に軍事行動が行われたという時点では
>成立せず、主権国家もしくはゲリラ団体
国際法で今や戦争という概念は陳腐化している。テクニカルタームでの
"戦争"は確かに宣戦布告があってという国際慣習法があるが、
国連憲章始めとする現代の条約は用語として"戦争"(war)とはあまり
用いず、他国に"武力攻撃"(armed attack)を受けた場合、被害国は
自衛権を発動できる・・(国連憲章51条など)という文言になっている。
空爆・ミサイル先制攻撃、もしくはゲリラ作戦が中心となっている現代の
戦乱において、宣戦布告を要件とする"戦争"というのはほとんど意味を
成さない。
18 名前:・・・・ 投稿日:01/09/26 17:47 ID:egMOZii6
米国やNATOの自衛権の発動も国際法では発動に"急迫性"の要件
を求めるのが普通で、ビル爆破からこれだけタイムラグがあると、
国連安全保障理事会の強制措置(国連憲章7章)に求めるべき。
テロ組織もあくまでも国際法上は私人であって、国際法上の責任は問わ
れない。もちろん、テロ犯の所在する当局は国内刑法に基づいて、
もしくは犯人の国籍国は刑法の国外犯等で処罰すべき。
20 名前:・・・・ 投稿日:01/09/26 17:56 ID:egMOZii6
ただ、テロ犯に、訓練、資金、人員その他で国家的支援がある場合は
正規軍に準じて見なされて、ビル爆破は"国家による武力攻撃"ともなる。
ただ、もっと詳細に見ていくと、タリバンのように仮に反政府団体もしくは
内戦で、政府的な力を持つ軍事活動団体が同一国内に複数あって、
それにテロ犯が支援を受けている場合は、米軍が自衛権を発動すると、
無実のほうの政府の国家主権も問題になる。
また、テロ犯支援国がテロ犯の本拠地の隣国の場合も主権問題が
ややこしい。
公平性(形だけかも)を整えるには、国連の強制措置でやったほうが後々
良いのでは?政策としてもね。米国民からは非難轟々だろうが・・。
age