Z金髪プリンセス

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279二人えっち1
春が過ぎ、夏に至るある日
うっそうとした森に隠れるようにして建てられた家
金髪の女性が木製の椅子の背もたれに身体を預け、開け放っている窓から外の少年を眺めている。
少年は上半身裸で丸太を割るために斧を振り上げている。
少年の肌は褐色だがそれと反比例するように髪や瞳の色素は薄かった。
斧が振り下ろされ、丸太が薪へと変わる。
少年の肢体ににじんでいた汗が周囲に飛び散り、後ろで結っている銀髪が揺れた。
少年の身体は痩せているが決して脆弱とは言えず、その引き締まった肢体からは力が感じられた。
「ふぅ」
金髪の女性の口から吐息が漏れる。
金髪の女性は少年の一挙一動を見逃さないように、見つめ続けた。
「ロランは逞しくなった・・・」
金髪の女性はつぶやいた。
ロラン=セアックはここに越して来た1年前に比べ成長している。
以前は自分とほぼ同じだった身長が頭一つ大きくなり、高い戸棚にある物を取る時に使っていた脚立の使用回数がグッと減った。
ジャムのフタを開ける時も自分が開けられなかったら、大抵はロランも開けられなかったし思い切り力を込めないと開けられなかった。
が、今は自分が差し出せば1秒も掛からない内にいとも簡単に開けてくれる。
以前、彼は自分にとって甘えられる存在ではあったがイマイチ頼りなく、
寄りかかったら抱きしめてはくれるがいっしょに倒れてしまいそうな危うさがあった。
だが、今のロランは甘える事も出来るし寄りかかっても倒れず受けとめてくれる力強さも持ち合わせていた。
そして美しさにも磨きがかかった。しっとりとした艶のある銀髪が肩まで伸び中性的容姿が更に女性的になった。
以前は美しいというより可愛らしいという形容詞がピタリと合ったロランだが今は美しいという形容詞がの方がしっくりくる。
その美しさは男女という枠を超越していて、男性からでさえロランは愛欲の対象となりえるだろう。
それだけロランは魅力的だった。
それに比べ自分はどうだろう?この1年でなにかが変わったろうか?
何も変わってはいない。お料理は相変わらず下手だ。お洗濯もロランの方が手際が良い。
お掃除も何かを壊してしまいそうになる事がしばしばだ。
身長も伸びていない。プロポーションも変わっていない。髪形もロランの好みに合わなかったらと思うと怖くて変える事が出来なかった。
自分は何も成長していない。
「はぁぁぁ・・・・・」
自己嫌悪と無力感の塊が肺と喉を通り、口から吐きだされた。
「ディアナ様」
「え!?」
いつのまにかロランが窓の傍に立っていて、自分の顔を覗き込んでいたのでディアナは慌てた。
「どうしたんですかぼんやりして?ため息まで・・・」
「い、いえ、少し考え事を・・・」
「もう少し待っててくださいね。後でお茶淹れて差し上げますから。とてもいいお茶っ葉が手に入ったんですよ」
「それは・・・楽しみですね」
「はい。スグにこれを片しちゃいますから」
「そんなに急がなくて良いですよ。こうして・・殿方が働いているところを見るのも中々楽しいものですから・・・」
「そうですか?」
「そうです・・・・」
「ディアナ様、ご気分でも悪いんですか?」
「いえ・・そんなことは・・」
「ちょっと失礼します」