「うわー、遅くなっちゃった……デュオ怒ってるだろうなあ」
たかたかたかっ
「デュオ、待った?」
「遅せーよヒルデ、もう夕方だぜ?」
「ごめんね。別な用事が入ってたのすっかり忘れちゃってて」
「ちぇー。せっかく今日は時間があるから、帰りにどっか寄ってこうと思ったのにさ」
ぶー
「ごめんごめん。お詫びに、今日は何でも言うこと聞いてあげるから」
「えっ……何でも?」
きらん
「それって、何を頼んでもいいってことか?」
「まあ、出来ることだったら」
「そうかぁ……うーん……」
「(……あれ?なんか考え込んじゃってるみたい。軽いつもりだったのに)」
一分経過
「むー、そうだなー」
「(なに頼もうとしてるのかな……変なこと考えてるんじゃないでしょうね)」
二分経過
デュオ「うーん、なんでもいいのかあ……んー……」
ヒルデ「(な、なんだかほんとにやたら真剣……ちょっと不安……)
たらー
三分経過
「そうだなー……あんなこともいいかなー……いや、さすがにそれはちょっとキツいか」
「(その『あんなこと』の内容が気になるんだけど……
まさか『あんなこと』ってあのあんなことじゃないでしょうね……)」
たらたら
そして五分経過
「……(どきどき)」
「おーし、それじゃあ……」
にかっ
「(来た!)」
どっきん
「夕メシに分厚いステーキを2枚焼いてくれ! あ、ニンニク抜きでね」
その夜、台所にて。
じゅーじゅー
「……ほっとしたけど……なんか女としてステーキに負けたって感じがする……」
しくしく
そして食卓。
かちゃかちゃ
「デュオってニンニク嫌いだったの?」
「いや、嫌いじゃないしスタミナもつけたいところだけど、ニンニク臭くっちゃ後に支障があるしなー」
「あと?」
「こっちの話。しっかしこのステーキ美味いなー」
はぐはぐ。
「あっ!まだいただきますを言ってないでしょ!」
「固いこと言うなって」
食後。
にっこり
「さーて。肉をいっぱい食って気力が充実しました」
「?」
「いま歯も磨いてきたんで準備は万端」
「??」
くいくい
「ちょ、ちょっとデュオ、まだ洗い物が残って」
「そんなもんあとあと。なんなら俺が後でやっとくって」
がちゃ
すたすたすた
くるっ
「で、ちょっと確認したいことがふたつ」
「?」
「夕方、『今日はなんでも言うこと聞く』って言ったよな?」
「うん」
「ひとつめOK。まだ夜9時、今日のうちだ」
「なんなの?」
「確認ふたつめ。『今日はなんでも言うこと聞く』のに、回数制限はなかったよな?」
「え? う、うん……(嫌な予感が:汗)」
「よし、ふたつめもOK。それじゃよっこいせっと」
ひょいっ
ぼふん
「……え、ええっ?」
「ステーキ食ったから体力万端。ニンニクも効くけどキスできなくなっちまうしな」
がばっ
「えええっ?」
にやり
「さーて、それじゃ改めて、何でもいうこと聞いてもらうとするか」
「ちょ、ちょっと待ってまだその心の準備があう!」
ぷちっ
ぱく
「ステーキ、ほんとに美味かったぜ」
「ばか」