http://web.archive.org/web/20090202001056/http://members.at.infoseek.co.jp/tanepo/hatu.html 朝日新聞2003年8月29日夕刊「アニマゲDON」
ロボットアニメの金字塔「機動戦士ガンダム」のテレビシリーズ第9作「機動戦士ガンダムSEED」
(TBS系で放映中)が、9月末の最終回に向け、物語もヒートアップしている。
遺伝子操作で高い知能と運動能力を得た「コーディネーター」と、遺伝子操作をしていない「ナチュラル」との、人類を二分する戦争を背景に、
苦悩する少年らの濃密な人間ドラマと、スピード感あふれる戦闘描写を展開する。福田己津央監督が、作品にこめた思いを語った。
「ファーストガンダム」(シリーズ第1作)が世に出てから二十数年。今の子供達に、お父さん世代が「ガンダム」から受けた感覚、体験、衝撃を伝えたい。
ファーストに似た骨格の物語を今の感覚で作ることで、「ウルトラマン」「仮面ライダー」が成功したように、親子2世代で楽しめる作品を目指した。
作るにあたって三つの点を抑えた。ガンダムのデザインはファーストから離れないものにすること。
世界大戦的な戦争をリアルに描くこと。そして少年少女のドラマにすること。視聴者が感情移入できると同時に、美しいキャラクターをたくさん出すのが今のファンの要求でもあるから。
ファーストにあってこれまでの「ガンダム」になかったのは、エンターテイメント性。それは、感情移入できるドラマがあるかどうか。
SF性にこだわりすぎるととっつきにくくなるし、過去の作品と同じことはしたくないという意識が強すぎると設定や話が分かりにくくなる。
大切なのは、芝居をきちんと積み上げてそのキャラをしっかり作っていくこと。
「SEED」の成功は、こうしたポイントに加え、番組で使った曲がヒットしたことと、ゲームやマンガ、グッズなど
ガンダム関連商品全体の盛り上がりがあったからでは、と思う。
ようやく終わりがみえてきたけど、「ガンダム」ってつかれますね。
常に生死と向き合うシリアスなドラマの中で、人を殺す兵器をかっこよく描けるのか。イラク戦争が起きている時に、核兵器も出てくる
こんなアニメをやっていいのか。苦しむ日々でした。
遺伝子操作という現代的なテーマを取り入れたたが、これには親の経済力が子の学力を決める現実への皮肉も込めた。金をかけて
塾に入れるのも金で遺伝子をいじるのも、不公平なのは同じ。死ぬことより群れからはじかれることを恐れる少年たちの描写は、今の子供たちを映している。
見ている子供たちには、そんなところにも気づいてほしい。
コーディネイター側のザフト軍とナチュラル側の地球連合軍の戦いが激化する中、コーディネイターながら連合に属していたキラは、敵同士として
戦っていたアスラン、戦艦アークエンジェルの仲間と共に、連合ともザフトとも離れ、戦争集結のための困難な戦いに挑む。
福田己津央監督は60年生まれ、ほかの作品に「GEAR戦士電童」など。「SEEDの最終回は、殲滅戦へ行き着こうとする流れを食い止められるのは組織よりも個人の力、という帰結にした」
??朝日新聞2003年8月29日夕刊「アニマゲDON」より引用