機動戦士ガンダムSEED DESTINY PHASE-214

このエントリーをはてなブックマークに追加
402通常の名無しさんの3倍
「ねぇ、キラ、呼んで?」
「キラの声で」
「俺の名前」
「呼んで」
「そして」
「言ってよ」

愛してるって

自分に触れ始めた頃の、彼を苛んでいたようなあの揺らぐ光は何処にも見えず、狂気にも近い暗い濁色がその眼に広がっていく。それを見た瞬間、キラは身体の内部から凍りそうな恐怖に目の前が真っ暗となった。
「はっ、あ、んぁっ…ふ、ぅあっ…」
荒い呼吸音。軋むベッドのスプリング。目の前でぐちゃぐちゃに乱されるシーツ。思考。意識。

『これ以上僕らは一緒にいてはいけない』

きっと、このままいけば、きっと、このままこの想いを受け取れば。僕らは幸せになれるだろう。泣きたくなるほど幸せな二人になるだろう。
アスランは僕という存在に溺れるだろう。僕もアスランという存在に溺れるだろう。
そして二人で世界は閉じてしまう。他はいらない。他に何も必要ない。互い以外は無くても在っても変わらない。
そんな未来が、キラには確かに見えた。
そして溺れて溺れて気づいたときには二人ともぼろぼろになって幸せだと呟きながら死ぬだろう。壊れるだろう。壊すだろう。二人だけの幸せのために誰かを傷つけるだろう。泣かせるだろう。
それがとてつもなく怖くて、恐ろしくて。そして、とてつもなく哀しい。
「泣いてるのか?キラ…」
泣かせるつもりじゃなかったんだ、と、彼のほうが泣きそうな顔で瞳の傍に口付けを落とす。
頬を濡らすのは涙。だがそれはこの行為に泣いてるわけじゃない。この行為の先に待ってる未来に涙を流すのだ。
今ならまだ引き返せる。今ならまだ、間に合う…まだ、間に合うから―――
だから、僕は今、君に最低の言葉を投げつけよう。

「僕は君を愛していないよ」
「昔も」
「今も」
「これからも、ずっと」

「僕は君を愛さない」