機動戦士ガンダムSEED DESTINY PHASE-214
「う、あっ……な、で……!」
「うるさいよ、キラ」
ギリギリと悲鳴を上げる腕の関節。頭をシーツに押し付けられ酸素すら十分に補給できず、ただ擦れた声しか出せぬ口唇。首元に感じた熱い雄の吐息に身体がびくりと震えた。
「アスっ……」
こんな異常の状態に脳はついていかず、ただただ疑問だけが頭を巡った。
何故。何が。誰が。何のために。
答えの出ぬ問いに絶望すら感じてくる。違う。答えが出ているからこその絶望だ。
それでも必死に、湯部が白くなるほどシーツを握り締め逃げようと身をくねらせたキラに、アスランは熱をもった吐息に冷たい響きをのせて囁いた。
「逃げるな」
「っ………!」
雹のように尖った声音に身体が硬直する。
「お前との、泣きたくなるほど平凡で穏やかに過ごせるはずだった優しい未来を裏切ってまで手にいれた夜だ。逃がす気は無い」
獰猛な獣の瞳の奥底に自嘲じみた光が宿るのを、キラは恐怖に臆しそうになりながらも見てしまった。
「なん、でっ………?」
銀の月光に白く輝く肢体。潤む紫水晶は水を湛えたまさに至上の宝石。怯えるその顔に優しく笑いかけ額に口付けをおとしてやりたくなる。それと同時にこれまでにないほどにこみあげる暗い欲求。
振り向いた彼と目が合った。怖いと怯えながら信じられぬと理由を欲し、未だ自分の裏切りを考えすらしないその眸。
『今ならまだ間に合う』
その絹糸のような髪に唇を落とし、「すまない」と笑いかけ、優しく抱きしめる。
そう、今なら………今ならまだ――、
まだ、間に合う―――――……?
くっと身体をおりまげ嗤った。
今ならまだ?何だというのだ。もう、すべてが遅い。
動きを止め、一瞬迷うように揺れた双眸。昔から傍に在った大好きな翡翠。彼はそれを静かに伏せると、硬直していた指を急にぎゅ、と握り締め、次の瞬間には仰向けに倒され荒々しく唇を奪われていた。
「ふ、ん、ぁっ……ヤダっ、ぅんっ…」
上唇を食むように咬みつかれ、一瞬開いた歯の隙間から侵入してくる軟体物。ぐるりと口腔を舌で嘗め回され、奥に逃げるようにいた己のものを絡め取られた。くちゅくちゅと発する水音に意識に霞がかってくる。
「っ………!!」