グレートメカニック9月号SEEDDESTINYメカニック特集(p7)「フォビドゥン・ヴォーテクス」
コズミック・イラ71年に勃発したヤキンドゥーエ戦役において、地球連合軍は水中戦でザフトに遅れを取っていた。
衛星からのデータリンクを通じてニュートロンジャマーの効果を著しく低下させ、レーザー誘導魚雷によるアウトレンジ攻撃によって、
ザフトの水中用MS群を相手に高い戦果を挙げていたとはいえ、
近接戦闘能力の無い潜水艦では、万が一、MSに肉薄された場合には対処する術が無く、撃破されるのを待つばかりという状態だった。
こうしてザフトの水中用MSに対抗するために、開発されたのがフォビドゥン・ブルー、ディープ・フォビドゥンなどのMS群である。
これらの機体は第2次サブランカ沖海戦において、圧倒的な戦果を挙げ、ヨーロッパ方面のザフト軍に壊滅的打撃を与えた傑作機であった。
この水中用フォビドゥンシリーズの優秀性が認められ、地球上の海軍基地の拠点への全面配備を前提として開発されたのが、
フォビドゥンブルー直径の量産型MS「フォビドゥン・ヴォーテクス」である。
装甲はTP装甲に加え、胴体周辺にはディープフォビドゥンからのフィードバック技術であるチタニウム耐圧殻を採用し、
潜行深度の向上及び潜水時間の延長が図られている。
量産機であるにも関わらず高コストのTP装甲を採用しているが、連合技術部の合金精製技術の発展により、
従来のダガータイプに使われている通常装甲と同等のコストでTP装甲を精製する事が可能になったためである。
地球連合海軍は元々、ダガータイプを基本設計とし、沿岸海域での活動がメインで安価に大量量産できるアクアダガータイプを欲していた。
しかしながら、非常に広大な地球の海域を防護するためには長大な航続距離と連続戦闘が可能な程の継戦戦闘能力、
沿岸部で活動を活発化させているザフト軍を撃滅できるだけの高度な強襲揚陸能力を付与させるべきだ、との声も挙がっていた。
そこで、基本設計はフォビドゥン・ブルーとし、
「一個小隊(3機編成)でザフトの一個潜水艦隊を殲滅できるだけの戦闘能力」
「実弾兵器を無力化するTP装甲と荷電粒子兵器を無力化するゲシュマイティッヒ・パンツァーからなる複合防護システムの採用」
「水分子を制御し水圧を軽減、また同時に機体と水との摩擦を緩和し、100ノットを上回る航行速度を発揮する事を実現する新型装甲アレイの採用」
「ザフトの沿岸基地の防衛システムを無力化できるだけの高出力フォノンメーザー砲を初めとする大火力」
「複雑な装備を管理できるようにするため、OSには新型のサポートシステムを採用しパイロットの負担を軽減させる」
上記の条件に沿って、開発は続けられ、ユニウス戦争の勃発した最初期に量産型1号機がロールアウトした。
大西洋連邦海軍基地に相当数が配備されると、ユーラシア、東アジアにも配備が進められた。
カムチャッカ沖におけるユーラシア連邦海軍の偵察隊とザフト軍の遭遇戦ではゾノ6機、グーン18機、アッシュ12機からなるザフトの水中MS部隊が、
6機のヴォーテクスからなる2個小隊と交戦し、全滅させられている。
東アジアの四国南東部に揚陸してきたグーン28機、ゾノ15機、アッシュ14機からなる強襲揚陸部隊はリニアガン・タンクを中核とする東アジア軍を奇襲で圧倒するも、
大阪湾沿岸基地と南海沿岸基地から出撃したヴォーテクス30機からなる増援部隊を送り込まれ、揚陸作戦は失敗に終わるなど、
地球各海域ではもはやザフト軍の潜水艦隊は身動きが出来ない状態であった。
この時点でフォビドゥン・ヴォーテクスはザフトの水中用MSに対して1:8という驚異的なキルレシオを有していた。
劇中のヘブンズベース攻防戦においては、4機のみが出撃し、ザフトの水中MSを圧倒するも、次第に物量の押されて撃破されている。
本来、ヘブンズベースには80数機のヴォーテクスが配備されていたものの、ロゴスの私兵として活動する事を嫌った地球連合正規軍は、
ザフトが侵攻してくる前に大半がヘブンズベースから脱出し、結果、ロゴスの傭兵が搭乗する4機のみが残されるという状態になっていたのである。
しかしながら、ヘブンズベース戦後のザフトの潜水艦隊は消耗しきった戦力を立て直すことができず、
結果的に、地球上の制海権を連合の手に渡す事になったのである。
地球の連合とザフトの制海権を巡る熾烈な攻防を決するきっかけとなった本機は連合海軍の救世主といえるだろう。