前スレが500kので、第百二十一話を最初から投下しなおします・・・
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(前編)
ジャミル達が救出される約18時間前、ガロードは新連邦本部の廊下をフロスト兄弟に両脇を固められ歩いていた。左手に見える窓からは
雪をかぶった山脈が見え、そのふもとには広大な針葉樹の森林が広がっている。ガロードが元々住んでいた北アメリカ大陸では見ることの
できなかった豊かな自然の姿がそこにあった。
彼と同じ速度で歩くフロスト兄弟は武装をしていない。その気になれば逃げることも可能だろうが、ガロードは動かなかった。現状、
ティファは別室に隔離され、パーラにいたっては基地のどこかに捕らわれている。1人で逃げることなど、彼の中には選択肢として存在しなかった。
「ガロード・ラン、これから君が対面する人物は新連邦の最高責任者だ。粗相の無いようにな。」
「…そんなにすごいやつなのか?」
シャギアの言葉にガロードは静かに質問する。ブラッドマン卿の名前は以前から知っていた。新連邦政府樹立、エスタルドの解体など、
彼の指揮の元で世界は大きく動いてきた。
「一般人では会うことのできないような人物さ。あの方は、いまや地球の”王”なのだからね。」
オルバは面白そうに、そしてガロードをあざ笑うように笑みを浮かべる。彼がいかに無力で、小さな存在であるかを認識させるかのようなその口ぶりに、
ガロードは今更反応する気にもならなかった。最優先課題はここをどう脱出し、ジャミルたちと合流するかだ。
しかし今はまだそれを実行に移すべき時ではない。笑みを浮かべたままのオルバを無視しながらガロードは廊下を歩き続けた。
程なくして目的地へと到着する。木でできた両開きの重厚なドアの向こうに新連邦軍の最高司令官がいる、そう考えるとガロードも少しばかり緊張した。
「ガロード・ランを連れて参りました。」
『入れ。』
聞こえてきた声は低く、すこし掠れていた。年齢は60歳前後だろうか、ジャミルやテクスに比べてかなり年上であることはすぐに見当がついた。
扉の向こう側に待っていたのは中世貴族が皆で食事を取るために使っていたと思われる装飾の施された長机と、ガロードと反対方向に
座る一人の老人、さらにその傍らに立つ髪の長い男だった。老人の後には大きな窓があり、そこから差し込む光がまるで後光のように映り、
ある種神々しささえ感じられた。まるい頭には髪は生えておらず、鼻の頭には大きな黒子が1つ。体形は樽のようにウエストが広がっており、
一体何を食べたらそんな風な体形に慣れるのか不思議なくらいだ。
「かけたまえ。」
小さくもぎらついた両眼がガロードを目の前の席へと促す。ガロードはそれに従い席に着いた。
「まずは、礼を言わねばなるまいな。革命軍の奇襲作戦を察知して宇宙軍を向かわせたのだが、君達が先にコロニーレーザーを破壊してくれたのだからな。」
「…俺はあんた達のためにやったんじゃない。人がいっぱい死ぬのがいやだからああしたんだ。」
穏やかに話すブラッドマンとは対照的にガロードの声には嫌悪感が混じっていた。
フリーデンは彼らと敵対していた。ローレライの海の件もエスタルドの件も、彼らが事を起こさなければあんな結果になることもなかったのだ。
ブラッドマンは彼の心中を気にする様子も無く、穏やかな声で話を続ける。
「それは我々も同じだ。我々は常に”自由”を守るために戦ってきた。最初に攻めてきたのは革命軍だ。諸悪の根源は、常に宇宙にある。」
「でもあんた達だって、地球統一の名目でいろんなところで戦いを起こしたじゃないか?」
「大きな秩序を構築するためには、ほかに方法がなかった。それとも君は、常に小国に正義があるというのかね?」
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(中編)
ブラッドマンの言葉をエスタルドのウイリスが聞いたらどう思うだろう。それでは”新連邦政府に従わなかったエスタルドが悪い”と
言っているように聞こえる。大きな秩序を作るために”多少の犠牲は仕方が無い”という考え方は、ある意味で正しい。だが、目の前で
犠牲になった者達を切り捨てる非情さもかねそろえている。
やっぱ、この手の人間とは反りが合わないな
ガロードは確信した。
ガロードとブラッドマンの話は続く。彼らはコロニーの情報を求めてきた。そこでガロードは条件としてジャミル達フリーデンのクルーの
解放を要求する。それをあっさり承諾し、さらにティファをこの部屋に呼ぶように指示を出すと、そこで彼らの会話は途切れてしまった。
新連邦軍の”親玉”を前にして気を許せないという緊張感と、年端も行かない子供を相手に会話をしなければならないことへのわずらわしさが、
2人の会話を途切れさせていた。
エプロンドレスを身につけた女性が2人の席にコーヒーを置く。ブラッドマンがそれにミルクと砂糖を入れて口をつける一方、ガロードはじっと
ブラッドマンを見つめていた。
「飲まないのかね?」
「ああ、俺コーヒー嫌いだから。」
ガロードにとってここは敵地、出されるものは信用できないものばかりだ。何が入っているかわかったものではない。
「そうか。まだまだ子供のいうことだな、これの味がわからんというのは。」
「Mr.ブラッドマン。申し訳ありませんが、お薬の時間です。」
横にいた長髪の男の言葉にうなずくと、ブラッドマンは彼から青と白のカプセルを3錠受け取り、一口に飲み込む。それを見たガロードは今度から
自分からブラッドマンに話しかけた。
「アンタ、どっか体が悪いの?」
「なにぶん私も年だからね。」
「そっか。俺は薬が好きじゃないんだ。物によっては、元々の成分はカビから取るやつとかもあるらしいし。」
俺はカビの成分なんて飲みたくないと表情を変えぬまま告げると、ブラッドマンはそれを鼻で笑った。
「ギルよ。彼は薬がどういうものかわかっていないらしい。」
「ガロード・ラン、人類はカビや微生物から成分を抽出して精製した薬、抗生物質のおかげでそれまで治療が不可能とされてきた難病を解決してきた。
君はその恩恵を受けて今この場にいるのだよ? そして、中にはそのさらに先の”恩恵”を受けた者たちもいる。」
「恩恵がどうとか、俺は興味ない。ただね。」
ギルと呼ばれた男に視線だけを移す。すこし癖のある長髪に白い肌に均整の取れた顔立ち。微笑を浮かべているその姿はまさに”聖人”そのものだ。
だが、だからこそ信用できない。
「得体の知れないものは信用しない、ってことさ。」
ガロードの発言にギルバート・デュランダルは眉間にしわを寄せる。なにか言い返そうとしたところをブラッドマンが左手を上げ、それを制した。
「私は彼を信頼している。今飲んだ薬が毒であることなど、ありはしないよ。」
「…そうかよ。」
そもそも彼はガロードの忠告を聴く気が無いのだ。このような輩を相手にはなしをしたところで、議論は平行線にしかならない。ガロードはそれ以上
口を開かず、ティファが来るのを待った。
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(後編)
「ティファ、アディールを連れて参りました。」
沈黙を破ったのはティファをつれて戻ってきたオルバだった。彼女はガロードの側に座ると、正面に座るブラッドマンをまっすぐに見つめた。
「ティファ・アディール、君は革命軍最高指導者のザイデル・ラッソと対面したそうではないか。その時の事を詳しく話してくれないか?」
「お断りします。」
ブラッドマンの頼みを彼女は一蹴する。表情を変えるブラッドマンからガロードに向き直ると、彼女は”感じた”事を口にした。
「ガロード、あの人は約束を守るつもりはありません。」
「…やっぱりそうか。」
「コロニーの指導者はゆがんだ心を持っていました。その人とよく似た空気をこの人に感じます。」
ガロードはブラッドマンを睨みつける。最初から信用できないと感じていたことが、まさにその通りだった。先ほど彼らはジャミル達を
”政治犯”といっていた。とどのつまりは”国家の敵”、情状酌量の余地など、最初から無かったのだ。
「ティファ、それのゆがんだ心の大本がなんなのか教えてくれ。」
「え?」
「俺は知りたいんだ。世界を動かしている奴らが、心の奥底で何を考えているのかを…!」
「わかったわ。…ガロード、私の力になって。」
「わかった。」
少年と少女は二人がかりでブラッドマンの心の中に侵入した。
彼のここにはいろいろな”思い”があった。家族への”思い”、部下への思い、組織への思い、敵である革命軍への思い。それらとは
また別にある、心の奥底に眠るもっと原始的な思い。
“支配欲”
彼の場合”それ”が特に強かった。自分が頂点でなければならない。従わなければ従わせる。そうでなければ気がすまないのだ。
そして今この世で彼に跪く姿勢を見せていないもの。革命軍、そして以上に従わせるべき存在を彼女は垣間見てしまった。
「D.O.M.E…!」
「!!?」
「月の…D.O.M.E…!!」
ガタッと席を立ったブラッドマンの表情がゆがんでいたことは、言うまでもなかった。
久々の更新GJでした!
otu
スレ立て、投下乙!
俺、神様信じる!
よし、どんどん行こう
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(前編)
「ティファ・アディール! 君は力の使い方を誤った!! もっともそれは、ニュータイプという物の悪い癖なのかもしれんがな。」
右の拳を長机に叩きつけてブラッドマンは怒りをあらわにする。今まで一度も触れられたことの無い自らの心の奥にある思いを
無遠慮に見られたことに、まだ明かすべきでないその思いを勝手に暴露されたことに彼はかつて無いほどの怒りを覚えていた。
「私は、自分を」
「君達ニュータイプに力があることは認めよう!」
ティファの言葉をさえぎって彼は自分の考えを続ける。本来支配すべきニュータイプに自分の心の”弱み”を見られたことで、
彼自身気づかないうちに遠慮がなくなっていた。
周りにシャギアやオルバ、デュランダルがいることを気に留める様子も無く、彼は”新連邦政府最高責任者”としてではなく
”一個人”としての考えを叫んでいた。
「だが、使いこなす術を知らない。だから我々がその道を示そうというのだ!」
「道具になれってことかよ!?」
ガロードは思わず立ち上がり叫び返す。ニュータイプを”道具”として扱う。そういう考えの下でティファがどれだけつらい目に
あってきたかは一番彼が見て来たことだ。その考えの元で行動するというのであれば、なおさら彼女を新連邦に渡すわけにはいかない。
ガロードの思いは一層強くなった。
「そうだ。ニュータイプが人類の革新なのかどうか、私にはわからん。わかりたいとも思わん。ただ必要なのは、確固たる”力”だ!」
社会というシステムの中では一個人の品格や徳は見られることはほとんど無い。あくまで必要なものはその人物の”能力”、つまり
”力”だけだ。物事を大局的見地で見るのであれば、上の者が力のある者を使って社会をうまく回していくという考えは”正しい”考え方だ。
しかし、それは人間を”部品”としてしか見ていない。
世界をより良い方向に向けるために“道具”になれ
デュランダルは彼の考え方がある種自分と通じる所があると感じた一方、今目の前で醜態をさらすブラッドマンの姿が自分と重なって見えていた。
太陽が西の山脈の縁に隠れ、東の空にオリオンのリゲルが輝き始める頃、レイはパーラが閉じ込められている倉庫の前にいた。左の脇に
折りたたまれた毛布を抱え、腕にはコッペパンと牛乳パックが入った袋を提げている。今は冬であり、暖房の無い部屋で生活をするにはかなりつらい時期だ。
倉庫に保管されているものは温度管理のいらないものばかりで、当然暖房などの設備は無かった。
「…俺も酔狂な事をする。」
レイは自分の行動があまりにも珍しいことにガラにも無くため息を漏らした。
上からはこのような事をしろという指示は出ていない。あくまで彼”個人”としての行動だった。
なぜこんな事をしているのか。理由は浮かんでこない。理由をひねり出すとすれば、今彼女の置かれている境遇があまりにも”惨め”なため、
同情しているのかもしれない。入り口の南京錠を外しさび付いて動きの悪い扉を開けると、中にこもっていたかび臭い空気が噴出してくる。
中で何の反応が無い事を確認すると、レイは中へ入って後手で扉を閉めた。
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(中編)
と、同時に上から声が聞こえた。
「ダァリャァァァァッ!!」
レイは左へ大きく一歩踏み出し、上から振ってきた襲撃者をよけると、空いていた右手で腰に携えていたナイフを抜き、上段から
襲撃者の左肩を目指して振り下ろす。グリップで鎖骨の辺りを強打し、さらに痛みでしゃがみこむ”彼女”の左の首筋に幅が広く
ゴツいナイフの切っ先を突きつけた。
「パーラ・シス、まだやるか?」
「ちきしょぉ…。」
彼に襲い掛かったのは言うまでもなくパーラだった。左腕は痛みで動かすことができない。さらに相手は武器を持ち、こちらに
突きつけている。勝算は無い。
「一つ忠告しておく。上から襲い掛かる方法は悪くは無い。ただ、攻撃の際にいちいち大声を出していては敵に気づかれ、今のように
反撃をもらう。…暗殺するなら黙って攻撃しろ。」
「わかったよ。んで一体アタシに何のようだ?」
痛む左肩を押さえながら観念した様子のパーラだったが、彼がなぜここに来たか理由を考えた瞬間、両手で自分の体を覆い隠して後に下がり始めた。
「まさか、遂にアタシの体を弄びに来たか!?」
「そんなことは絶対にしないから安心しろ。」
「…あっそ。んなさらりと否定しなくても…。」
「お前こそ、そんな猿のような冗談を言うのは止めにしておけ。俺はやる気は無いが、他の人間はやるかも知れんからな。」
レイはナイフをしまうと、脇に抱えていた毛布を座り込んでいる彼女のひざの上に放り投げ、その上に食料の入った袋を置いた。渡された
それらを前に、パーラは目をパチクリとさせる。
「夜は冷える。とっととそれを腹に入れて毛布に包まっておけ。」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
用を済ませたレイが倉庫を後にしようと入り口から半歩踏み出した所でパーラは彼を引き止める。動きを止め振り向きもしない彼にずっと
気になっていた事を言った。
「なぁ、ガロードとティファの状況だけでも教えてくれよ。あいつら大丈夫なんだよな?」
「…少なくとも彼らは、お前よりは良い待遇をされているはずだ。お前こそ、なぜ他者の心配をする? 少なくとも今は彼らよりもお前の
身のほうが危険だぞ?」
外に出てむき直り、扉の取っ手に手をかけレイはパーラに質問する。ガロードやティファと同様、彼女も革命軍の情報を持った数少ない情報源だ。
そういう意味では利用価値はある。しかし、ガロードたちと違って新連邦側は彼女と交渉のカードを持たない。情報の確保は彼女ではやりづらいのだ。
それを知ってか知らずか、彼女はレイの質問に返答する。
「仲間の心配をして何が悪いんだよ? お前だって、仲間とはぐれたら心配ぐらいするだろ!?」
「…仲間か。そんな物は、今の俺にはいない。」
そうポツリともらすと、レイは扉を閉めた。
仲間の心配をして何が悪い?
倉庫を離れてもパーラの言葉がレイの脳裏に響いていた。確かに新連邦の中でよく話す者はいる。しかし、それは仕事上の関係であり、本当の意味で
わかりあえた”仲間”ではないと彼は考えていた。彼女はガロード達と苦楽を共にしてきたからこそ、そういうことが言える。しかしレイは違った。
「ミネルバを離れて、ようやくわかった気がするな。…これが、”寂しい”ということか。」
士官学校時代からずっと行動をともにしてきた仲間と離れ、今彼は自分が守りたいと思う人物を1人で守っている状態だった。信頼の置ける人間が1人いれば、
2人いればと思うときも多々ある。息をつく暇も無い今の状況に、レイもいささか疲れを感じていた。
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(後編)
ギルの役に立つ事をする
その行動理念が彼の思考を狭め、行動の幅をなくし、自らを追い込んでいることにようやく気がついた。この枠を取り払うことができたら、
自分はどれだけ羽ばたくことができるのだろう。しかしギルを放っておくわけにはいかない。
“変わること”を望む心と”変わらないこと”を望む心の間で、彼は揺れたのだった。
「うぅぅぅ〜〜〜…! 寒ッ…。」
レイからもらったパンと牛乳を胃袋に収めたパーラは、毛布に包まって冷たいコンクリート製の床の上で横になっていた。近場にあった
レンガを枕代わりに頭の下に敷いていると、自分が修行僧にでもなったような気分になる。
今の時間が一体何時なのかはわからないが、倉庫の壁の隙間から入る光が無い以上、既に日が暮れていることは間違いない。
これからさらに気温が下がる。一定の気温に保たれていた宇宙での生活になれていた彼女にとって、今の状況は拷問といっても過言ではなかった。
「くそー、あのキザヤロー…。パンとか牛乳を持ってくるぐらいだったら、もっと他の物も持って来いよなぁ…!」
寒さで震える体を必死に毛布で覆いながらパーラは捕虜としての待遇に不満を募らせる。銃殺されないだけマシだという考え方をする者もいるが、
彼女はこれが初めての捕虜生活だ。そんな風に考える余裕なども無かった。
コツッ…
ふと、側頭部に何かが当たる。まぶたを開けて目の前に落ちてきたものが小石である事を確認すると、天井のゴミでもおちてきたのだろうと思い
彼女は再びまぶたを下ろし眠ろうと意識を沈めた。
コツッ…!
と、今度は先ほどよりも強く頭に石が当たる。落ちてきた程度の強さではないように感じ、彼女は上体を起こした。倉庫の天井から冷風と月光が
彼女の上にある事に気づき違和感を覚える。
「月の光…? あッ!!」
倉庫の屋根を無理やり引き剥がして作った穴から見えたのは、紛れも無くガロードとティファだった。
乙!
お!お!乙、連載継続で安心しました
ストーリーは終盤ですか、完走応援しています
乙!!レイにも救いがありますように
保守
保す
保守
今回の話を書いていて思ったこと
ビームとミサイルじゃ移動速度が違うからミーティア付きフルバーストしても
同時に命中することはあり得ないのでは?
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(前編)
「この後に及んで逃亡するとはな。」
「彼らの部屋の警備兵、降格だね。」
「いや、左遷だな。」
シャギアとオルバは顔をしかめつつ格納庫へ向かうため寝室を後にした。
捕まえていたガロード・ランとティファ・アディールの脱走。彼らが脱走を試みる可能性は十分にあった。そのために部屋の入り口、
さらに捕らえていた棟の周りにも複数の警備兵を配置して万全を期したつもりだった。
しかし、彼らはその二重三重の警備網をすり抜け、さらにGコンを回収し、パーラ・シスともども脱出したのである。
「大佐!」
後からレイが追いついて声をかける。シャギアは彼の顔を見て、既に状況を察している事を理解した。
「レイ少尉、キラ曹長はどうしている?」
「第8格納庫で現在発進準備中です。」
「第8格納庫? あそこは確か彼が試作型ドートレス・ネオの改修を行っていた所だったね、兄さん。」
「ああ。そしてまた、新たな装備を開発していたはずだ。確か開発コードは”メテオ”。」
宿舎の玄関で待機していたジープに3人が飛び乗り、機体の保管されている格納庫へむかう。その最中、滑走路に見慣れない
赤い機体が3人の目に止まった。
「あの機体、キラ曹長か?」
赤い機体の中心には黒いフリーダムの姿が見える。両腕に赤い棒状の装備、さらに背面には戦闘機を思わせるような大型飛行用バーニアに
姿勢制御スラスター。対艦専用装備”メテオ”、その姿にレイは見覚えがあった。
「あれはまさか、ミーティアか!?」
「ミーティア?」
レイの聞き慣れない言葉にオルバは思わず聞き返す。レイは顔をゆがめたままそれを説明する。
「あれはフリーダムとジャスティス専用の強化装備です。マルチロックオンシステム搭載、さらにミサイル、大口径ビーム砲、大型サーベルなど
武装は多岐にわたり、連邦軍一個中隊程度ならあっという間に撃退できるほどの性能を持っています。」
「それはまた、とんでもない物を作ったものだな。」
「サイズもアシュタロンよりも大きいね。」
シャギアとオルバが感心する一方、レイは不安に駆られた。あの装備があれば、今いるこの基地すら簡単に落とすことができるのだ。もし万が一、
彼がこの場で牙をむいたら。
考えただけで寒気がした。
「けど相手はたかだかMS1機と戦闘機1機、あそこまでの大荷物を持っていく必要は無いと思うけど。」
「試作機だからな。実戦データがほしいのだろう。」
滑走路を離陸し朝焼け広がる東の空へと向かっていくフリーダムの姿にオルバとシャギアはそう感想を漏らす。レイは不安を拭えないままレジェンドの
置かれている格納庫の中へと入っていた。
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(中編)
『なぁガロード、本当にこっちで良いんだな?』
パーラは何も映っていないレーダーを見ながら心配そうな表情を浮かべていた。新連邦軍の基地を脱走から2時間、今の所追っ手は無い。
ティファの導きに従い進路を決めたものの、未だ何の変化も無いことにパーラは不安を募らせていた。
「ティファ、こっちで間違いないんだよな?」
「はい、ジャミル達も今こちらに向かっています。私達の新たな仲間を連れて。」
「仲間、か…。その様子だと、俺たちの知ってる連中じゃないみたいだな。」
『てことは、ミネルバじゃないわけか。』
「はい、シンさんたちではありません。」
ミネルバとは中継衛星で別れて以降連絡を取っていない。こちらはティファを助け出してからすぐに地球に降下したが、あちらは陽動も
かねてあちこちで暴れまわっているのだろう。しばらくしたら地球に降下すると言っていたが、それがいつになるかまでは話していなかった。
「あいつらのことだから大丈夫だとは思うけど…。」
ビビーッ!! ビビーッ!!
『他人の心配より、まずはあたしらの心配をしようぜ。追っ手が来なすった!』
ダブルエックスのレーダーにもGファルコンのレーダーにも機体はきっちりと映っていた。敵機のデータは最新版に更新済み、追ってきたのは
Gファルコンをワイヤーで絡め取ったあの”フリーダム”だ。しかし先日とは違う点もあった。
「…本当にフリーダムかこれ? 宇宙で会った時とは桁違いに熱量が大きいぞ?」
『あいつに間違いないようだぜ? ただし、追加武装付だけどな。』
Gファルコンから送られてきた映像を見てガロードとティファは驚きの表情を浮かべた。確かにフリーダムだ。しかしそれは中心部だけの話、
両腕には大口径のビーム砲、さらに背面には大型の飛行ユニット、その両翼にはビーム砲が二門確認できる。推力はおよそGファルコンの2倍程度、
追いつかれるのも時間の問題だ。
「俺たちを追っかけるにしたって、物騒なもの持って来すぎだぞ!」
『2人とも、しっかり歯食いしばっとけよ!』
「へ?」
『ロックオンされた!!』
操縦桿を握りなおしながらパーラは高度計とレーダーに目を向ける。フリーダムがどんな攻撃を仕掛けてくるかは今の所不明だ。だったらバルカン系、
ビーム砲系、ミサイル系、その全てに対しての対応が必要となってくる。上下左右、さらに前後と三次元的な回避行動が要求された。
「パーラ、ドッキングアウトして応戦を!!」
『んな事してる暇ねぇよ!!』
パーラの返答とフリーダムの攻撃開始はほぼ同時だった。恐らく飛行ユニットに格納されていたミサイルだろう。左右、さらに上から無数のミサイルが迫ってきた。
その数40発弱。
『MSに乗ってる奴が、今度は戦闘機モドキだぁ?』
「ぱ、パーラ?」
『こちとらずっとこのGファルコンに乗ってんだ! そんなぬるい攻撃が当たるか!!』
機体の無茶な回避運動の中でガロードは思わず舌をかみそうになった。ミサイルをギリギリまでひきつけて逆噴射、可能な限り減速しさらに高度を一気に下げる。
それまで眼前にいた目標を追っていたミサイルには目標が消失したように映ったに違いない。大半のミサイルがあらぬ方向へと飛び去り、燃料切れで次々と地表へと落下していく。
目標を見失わなかった一部のミサイルも機首のバルカンで一掃された。
『戦闘機の戦い方を見せてやる!』
フリーダムが次の行動を見せる前にパーラはGファルコンをフリーダムの後に回りこませる。戦闘機は進行方向、前面に対しての武装は持っている。しかし、これが後面については
ほとんど武装らしいものを積んでいないのだ。”後を取ったら勝ち”戦闘機同士での戦いにおいて例外はない。
『くたばれ!!』
後を取ったGファルコンは両翼の拡散ビーム砲を発射して眼の前にある2基のメインスラスターを破壊する。爆発と黒煙を上げながら地表へ落下していくフリーダムを尻目に
ガロードは声を上げた。
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(後編)
「今だパーラ! ドッキングアウト!」
『あいよ!』
相手の”本体”が出てくることは容易に予想できる。MS戦に備えダブルエックスはGファルコンと分離した。
「ミーティアであんなむちゃくちゃな回避はさすがにできないな…。いや、メテオか。」
メテオユニットを切り離して上空にいる敵機に向かうジャッジメントフリーダムの中でキラは呟いた。左の操縦桿の脇に取り付けられている
小型モニターには先ほどのGファルコンの動きの記録が完了した事を示す文字が映っている。そもそも宇宙での戦いを想定しているこの大型装備
”メテオ”を地上で使うこと自体が無茶なのだ。だがそれでもなるべく早く実験をしておきたかった。北米大陸にいる”彼ら”を相手にする前に。
「データは取った。本気で行かせてもらうよ。」
キラの中で何かがはじける。前にも何度も感じたことのある戦闘中に意識がクリアになる感覚。両腰に取り付けられていた実体剣”エッケザックス”
” ナーゲルリング”を両手で引き抜くと機体のスピードを7割まで上げた。
「カリドゥススタンバイ、剣を受け止めた瞬間に一気に撃ち抜く!」
眼前には既にダブルエックスがいる。双剣を上段から振り下ろすと、ダブルエックスはそれを左に回避してライフルで反撃してきた。
今回で2回目の戦闘になるが、互いに技量が高いことは把握しているため、腹の探りあいになっている間が否めない。近づいては遠ざかり、一進一退の攻防が続く。
「くそ、このままじゃ…!」
ガロードは焦っていた。追っ手がフリーダムだけとは考えにくい。自分達が逃げ出した事を考えるとフロスト兄弟が出てくることは間違いないはずだ。
できればさっさと逃げて距離を稼ぎたい所だが、この状況を打開するカードは今の彼には無かった。
「もう少しがんばって。皆が来るから。」
ティファがジャミル達が近くまで着ている事を教える。だが敵もそこまで来ているのだ。
敵が先が味方が先か、状況を打開する次の一手は互いにすぐ側まできている”援軍”である。
パーラも援護をして2機でフリーダムを攻撃することで今の均衡を保っている。今ガロードにできることは援軍が到着するまでの間、この均衡を崩さないように
することだけであった。
乙!!パーラとGファルコンがかっこいい!!
問題は、カリスはいいとしてジャミルたちの新しい仲間(汗)とキラが再開したら・・・
あなたに乙を
しっかし、新たな味方wが裏切らないか心配だ
>>21 まあその心配はいらないだろ。ラクスを(多分)北米に残したまま
裏切るとも思えないし。
むしろ新連邦の方を心配しちゃう。キラを繋ぎ留めておけるのかと。
ミーティアもどきの登場は今後
ミーティアもどきを兄弟の機体に装備
↓
Let's虐殺タイム
ってな展開があるとか言う話ではないよな?
兄弟の機体にミーティア付けられんのか?
兄は和田より融通の利かなさそうな羽、弟には邪魔なコト極まりない甲羅があるのに。
保守
保守
議長「ミーティアもどきはレイが使えば問題ない」
むしろ変形した状態で合体
サテライトランチャー+フルバースト
腹にくっつくから邪魔じゃないかな、ミーティア
正確には背後から横っ腹を挟むんだけどな
それでも邪魔
サテライトフルバーストなんてとんでもないことを・・・ さてミーティア合体はともかく、
今度のガンダム無双3でダブルエックスの参戦が決定したそうです
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(前編)
「このままじゃ埒があかない。」
両腕のワイヤードビームライフルで攻撃を続けながらキラは呟いた。フリーダムが2本の実体剣で接近戦を挑んでも、
ダブルエックスは後退して射撃戦に持ち込む。接近戦を避ける姿勢は明らかだ。状況は膠着していた。
「なら、これでどうだ!」
鍔迫り合いになった時に使う予定だったカリドゥスをビームライフルの合間に出力を半分に下げて織り交ぜる。出力を下げたと言っても、
元々通常のビーム砲の4倍強の出力を持つ火器だ。命中すればただではすまない。
だがダブルエックスはそれを難なく回避する。ジャッジメントフリーダムの元となった機体”ストライクフリーダム”のデータはシンから譲り受け、
機体データベースに登録済みだ。武装がわかっていれば対応すること難しいことではない。それに、腹部にビーム砲を持つ機体とは既に何度も戦ってきた。
ヴァサーゴの持つメガソニック砲に比べれば拡散、収束といった幅広い使われ方がされていない以上、彼からすれば”固定式の高出力ビーム砲”でしかなかった。
だったら対応は簡単だ。砲門のある”正面”に位置取りをしなければ良い。
ダブルエックスはフリーダムの左右へランダムなパターンで移動を繰り返しながら攻撃を続ける。接近しなければ自慢の双剣も役立たず、正面に回らなければ
カリドゥスも脅威ではない。残る警戒すべき武装は背中の羽に格納されたダークブルーの”ドラグーン”のみ。
「向こうが”切り札”を切ったらこっちは負ける。このままじゃ…!」
「ッ! 危ない!!」
焦る彼の言葉とティファの危険察知はほぼ同時だった。ガロードはそれにすばやく反応し操縦桿を操る。一拍遅れてレーダーが高熱源体の急速接近を知らせた。
レーダーに反応してからでは恐らく機体は飛来する高熱源体の直撃を受けていたに違いない。ティファのおかげで、間一髪でよけることができた。
「クソ、あっちの援軍の方が早かったか…!」
回避した高熱源体はビームだった。しかも今までに何度も見た記憶がある。あれだけの出力を出せる武装はそう多くは無い。朝焼けに染まる空に現れたのは
予想通りヴァサーゴとアシュタロン、さらにレジェンドに20機のドートレス・ネオだった。
戦力差は明らかに敵側が上、勝率は限りなく”0”に近くなってしまった。
『キラ曹長、どうにか足止めはできたようだな。』
「申し訳ありません。足止め”しか”できませんでした。」
『彼らが一流のパイロットなのは僕らも知っている。君はよくやったよ。』
『ああ、だから我々も手加減をしない。』
『ここが彼らの墓場になる。』
全機が一斉にダブルエックスとGファルコンに襲い掛かる。フロスト兄弟の隙の無い連携にレジェンド、フリーダムの援護射撃、さらにドートレス・ネオの物量。
攻勢を受ける側に回ったガロード達には、ビームが叩きつける雨の様に思えた。
「クソ、このままじゃ…!」
ビビーッ! ビビーッ!
シールドを構えて後退するダブルエックスの後方に別の熱源を感知する。識別不明、熱量から戦艦クラスの物体であることはわかったが、
それ以上のことは分からなかった。
さらにMSの発進も感知。機体識別を見て、ガロードは目を見開いた。
「こ、これは!?」
「間に合いました。」
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(中編)
ティファが安堵の表情を浮かべる。24対2では勝機は限りなく”0”に近い。しかし、共に戦った事のある仲間がいるならば話は別だ。
GXにエアマスター、ベルティゴにジャスティス、さらに戦艦上に現れたレオパルドの機体名を見てガロードは思わず叫んだ。
「みんな!!」
『無事かガロード!?』
『お久しぶりですね。』
『ちゃんとティファをつれてきたんだろうな!?』
『はいはい、今は眼の前の敵に集中しましょうね。』
『了解、一気に蹴散らす!』
ジャミル、カリス、ウイッツ、ロアビィ、アスランがそれぞれ言葉をかける。皆の変わらない姿にガロードは喜びと安堵を感じた。
「みんな無事なんだな!?」
『ああ。それからカリスが強力な助っ人を連れてきた。』
GXの後方からさらに1機の白いガンダムが姿を現す。今までに見たことのないタイプのガンダムから通信を受けると、メインディスプレイに
紫色のパイロットスーツを着込んだ30歳前後の男が姿を現した。
『ネオ・ノアロークだ、よろしくな。んでこれが俺たちの母艦、強襲機動特装艦”アークエンジェル”だ。』
『アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。はじめまして、ガロード君、ティファさん。』
戦艦からの通信を開くと、右側のモニターにネオと同年代と思しき女性が映る。黒髪にきつめの口紅。その女艦長は普通の生活の中では
到底身につくことの無い”威厳”のようなものが彼女から感じられた。
無論、それはジャミルのそれより小さなものではあったが。
『積もる話は後だ、今は眼の前の敵を叩く!』
「了解!」
24対2から24対7+αへ。数の上ではこちらの不利は変わっていない。しかし、フリーデンのMS乗り達が集まれば戦力は2機なら4倍、
3機なら8倍になる。戦闘が始まって数分、シャギア達に同行していたドートレス・ネオ部隊は瞬く間にその数を減らしていった。
「クッ…!」
『兄さん!』
「やはり彼らが集まると脅威以外の何物でもないな…。ここは引くぞ。」
『了解…。』
シャギアは残る機体に撤退命令を下す。殿を務めるレジェンドとフリーダムを残し、ドートレス・ネオ部隊は撤退を開始した。
と、フリーダムのコックピット内で電子音が響く。通信を呼びかける時のアラーム音だ。回線はプライベート回線、相手はレジェンドに乗るレイ・ザ・バレル。
「こちらフリーダム。」
『キラ・ヤマト、お前はあの戦艦を知っているはずだ。』
「うん、知ってる。」
『ここで貴様に言っておく。俺はお前が一体どういう考えでこの場にいるかは知らん。知りたいとも思わん。だが、俺はいまだにお前を信用していない。』
「信用を勝ち得たとは思ってないよ。君にも、議長にも。」
『なら、信用を勝ち取って見せろ。』
「どうやって?」
『アークエンジェルを撃て。』
ピクリと、キラの指が動いた。ディスプレイの向こう側のレイも表情は変わらない。互いにどうとも判断することのできない表情で互いを見据えた。
「それで、判断できるの?」
『少なくとも敵対意志があることは伝えてもらわねばならない。』
「了解。」
キラはドラグーンを開放した。
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(後編)
突如フリーダムの放ったドラグーンにガロード達は身構えた。
「あいつ、切り札を出しやがった!」
『各機散開して迎撃! あれを1人で複数相手する必要は無い、1機ずつ確実に撃破しろ!!』
ジャミルの声に各々が別々の方向へと散開する。それまでアークエンジェルの前面に展開していた各機がレオパルドを残して全て
艦の前方から離れたのだ。これを見逃すキラではなかった。
「さよなら。」
それを待っていたキラは既にロックオンしていたカドリゥスを発射する。先ほどのダブルエックスとの戦闘時に使ったような出力調整版ではない。
一撃でブリッジを破壊するための一撃だ。
もしこれを察知してドラグーンの迎撃を行わなかったとしても、結果は同じであっただろう。何せドラグーンもカドリゥスも、最初からブリッジを
狙っていたのだ。ドラグーンによって蜂の巣になるか、カドリゥスによって風穴を開けられるか。ただそれだけの違いでしかなかった。
ブリッジの面々はフリーダムからビームが発射されたことに愕然とした。ノイマンは舵を持ったまま、ミリアリアはフリーダムに必死に呼びかけながら、
チャンドラは頭を抱え、マリューは自分の判断を誤った事を後悔しながら最後の瞬間が来るのを待った。
だが、それを止めるために必死に動いた男がいた。
「アークエンジェルは!」
ネオの乗るストライクがカドリゥスの射線上に入りシールドを構える。ストライクのシールドはABCコーティングされているのだ。防ぐことができるはずだ。
いや、防がなければならない。そんな気持ちに彼は駆られた。
「やらせん!!!」
シールドに着弾すると、機体が激しく振動する。シールドはあまりに出力の高いビームに変形し、徐々に原型を保てなってきている。それは機体も同じで
精悍としたストライクの頭部が徐々に熱によってゆがみはじめる。
「絶対に…!」
脳裏によぎるものがあった。以前もこんなことがあった気がする。そう、こうやってストライクを駆り、アークエンジェルを守った記憶が。なぜか、
理由は簡単だ。あそこには守りたい物が、守りたい人がいるからだ。
「やらせるかぁぁぁぁっ!!!」
ビームを受けきるとシールドとそれを持っていた左腕が爆砕する。それと同時に機体はアークエンジェルの甲板へと落下した。頭部は半分以上焼けただれ、
左肩の付け根はビームによる高熱で中の配線まで完全に融解してしまっている。
「…今回は、命からがらどっちも守れたようだな。」
コックピットのモニターには何も映し出されていない。しかしネオ、いやムウは自身が何を守ったかはっきりと理解したのだった。
GJ!
ムウの記憶が戻ったか。
ストライク、よく頑張った!
「不可能を可能にする漢」の帰還ですな!
ムウGJ!
GX氏GJ!
漢になれるかはこっからだろ、ネオ時代と向き合わなければ本編と同じ只のオスで終わる
何話か前にステラのことやシンのこと回想してたっけ
どっかできちんと向き合うのではないかと
ようやく更新できた
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(前編)
「キラ曹長が敵を1機落としたか。」
『でもフリーデンの機体じゃないからね。パイロットの腕も、たいしたこと無かったんじゃないかな?』
「かもしれんな。」
ダブルエックスの撃墜に失敗したシャギアたちは基地への帰路についていた。ヴァサーゴ、アシュタロン、レジェンド、そしてフリーダム。
4機のガンダムと10機のドートレス・ネオ。計14機のMSが空を行く様は地表から眺めると中々に壮観だ。
しかし彼らは今回の出撃で何の成果を得ることもできなかった。北米大陸の反抗勢力、通称”バルチャー連合”が飛行可能な大型戦艦を
保有しているという情報は既に新連邦軍内部でも知れ渡っている。今回の接触でそれが確認できたことは成果に値するが、ダブルエックスを取り逃がし、
挙句バルチャー連合に合流されてしまったことは明らかに失態だった。
『シャギア大佐、申し訳ありませんでした。』
「いや、君が敵の数を減らしたことは評価に値する。何せ、あちら側の旗機であるガンダムを落としたのだ。これでバルチャー連合の指揮が下がることは間違いない。」
『彼らの戦力は前大戦時の遺品がほとんどだ。いくら数をそろえても、こっちの最新鋭機バリエントやガディール、ドートレス・ネオの敵じゃないよ。』
申し訳なさそうに目を伏せるキラにシャギアとオルバは穏やかな口調で言葉を返した。少なくとも報告書に記載する内容で良い内容が増えたことは間違いない。
それに、彼が戦艦のブリッジを何のためらいも無く破壊しようとした事のほうがシャギアにとっては安心材料だった。
あのローレライの海の時のように勝手な行動を資格なっただけマシ、という所か。
シャギアはそう思いつつその言葉を口には出さなかった。あの時は敵機の撃墜命令を出していたにもかかわらず、彼はそれに従わなかった。その後更生施設”ケルベロスの檻”で
どのような教育を受けたかは知らないが、今はきちんと命令を聞き、敵を撃墜するようになっている。それはあの頃を知る彼からすれば大きな変化であった。
しかし気になる点もあった。彼が”本心”で彼らに協力しているかどうかだ。
今のキラ・ヤマトの行動に悪い点は無い。それまでが悪い点を抱え込んでいたからこそ、逆にそれがあまりにも少ない状態であることにシャギアは違和感を覚えていた。
まぁ良い。我々兄弟は真に世界に認められるべき存在だ。この程度の小物を御せなくては話しにならない。
シャギアはそう思い直し、眼前に迫った基地へと機体を進めた。
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(中編)
一方無事合流を果たしたガロード達は強襲機動特装艦アークエンジェルの格納庫で再会の喜びを分かち合っていた。
格納庫の一角でわいわいと騒ぐ者達がいる一方で、困ったように頭をかく人物もいた。
「こりゃ、完全にオシャカだなぁ…。」
コジロー・マードック、アークエンジェルのメカニック主任を任されている古株の乗組員の1人である。眼の前には左腕を失い、
頭部のほとんどを融解させたストライクが無残な姿で置かれている。アークエンジェルのブリッジを守った名誉の負傷。
できることならば修復したいが、状態がひどすぎてとてもそれをできるような状態ではなかった。
「やっぱ、修理は無理か?」
「一佐や代表がどれだけお願いしても、今の資材では修復できませんよ。頭、左腕、さらに胴体、外装はほとんどダメです。」
「…そうか。ま、今回はよくもってくれたよ。」
機体をここまで損傷させた張本人であるネオもバツの悪そうな表情を見せる。機体の損傷具合はコックピットにいてはわからないのだ。
いくらセンサーで異常を感知しても、実際はもっとひどい損傷である場合はよくある事だ。
「申し訳ないですけど、一佐には違う機体に乗ってもらうしかありませんな。」
「…わかった。んじゃ、なんに乗るかは考えておくよ。」
「お願いしますね。…ん? 今回は?」
どこか納得に行かない表情にマードックを格納庫に残しネオはその場を後にする。ノーマルスーツを着たままヘルメットを片手に
向かった先は彼の自室、ではなかった。
「さて…。一応、話だけはしておかなきゃな…。」
目的地を目の前にして疲れた肩やら首やらを動かす。すこしでもリラックスするためか、それとも自分の不安を和らげるためか。
自分でも判断する事は簡単ではなかった。
眼の前には士官クラスに割り当てられた部屋、部屋の主はアークエンジェル艦長マリュー・ラミアス。彼がこうやってここに来るのは初めてではない。
依然訪れた時にはもう1人別の仲間がいた。名前はナタル・バジルール。アークエンジェルの元副艦長、そしてもうこの世にいない人物だ。
「なんか、改めてくると緊張しちまうもんだな。」
“以前”はここに来ることに何のためらいも無かった。”先日”までは来たとしても何の気持ちもわかなかっただろう。だが”今”は違う。
この部屋の主との関係を思い出すとそんなことは言っていられなかった。
大きく気を吐いて扉の操作パネルを押そうとする。パネルに指が触れる寸前、彼の手は動きを止める。脳裏に4人の少年少女の姿が浮かんだのだ。
「…悪りィ、マリュー。俺はまだ、ムウ・ラ・フラガには戻れないわ。」
自分は今、眼の前の”幸福”に手を伸ばそうとしていた。こんな”死”がすぐ側にある生活の中で”幸福”をつかむことは誰にでもできる簡単なことではない。
たとえそれをつかんでも誰も彼を咎める事はしないだろう。
しかし、彼は多くの”命”の上で今を生きている。死んでいった仲間達や、死なせてしまった部下達。年端もいかない子供たちを戦わせ、死なせ、約束を破った自分が、
自分だけ穏やかな生活を手に入れることが果たして良いことなのだろうか。
「おれはまだネオ・ロアノークとして、やらなきゃいけないことがある。果たさなきゃならない義務がある。」
誰も彼の考えを咎めた訳ではない。彼に意見したわけでもない。
しかし彼は、自分に十字架を科した。本来存在しないはずの人間”ネオ・ロアノーク”が最後にすべきこと、それが終わって初めて彼が”彼自身”の戻ることが
許されるのだと。
最愛の人には会わず、ただ自身の心にのみ誓いを立てたのだった。
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(後編)
「そうか、シンは今宇宙にいるのか。」
「ああ、元々あのミネルバのクルーだって話しだし、元の鞘に戻っただけの話だけだ。」
アークエンジェルのブリーフィングルームに集合した一同の前でガロードは自分が宇宙で見てきたものを話した。クラウド9のこと、
新型MSクラウダのこと、ジャミルの宿命のライバルランスローのこと、そしてわずかな間とはいえ行動を共にしたミネルバのこと。
ジャミルたちは静かに彼の話しを聴いた。
「しっかし、まさかあの馬鹿が宇宙にまでいっているとはなぁ…。」
「シャトルにつかまって宇宙に出るなんて、俺たちの感覚からするとちょっと信じられないね。」
シンが宇宙に出た方法を聞いてウイッツとロアビィはあきれたように肩をすくめる。宇宙に上ったことのあるジャミルやアスランからしても
シンのやり方は正気の沙汰ではないため、彼らも顔を縦に振った。
「最悪、摩擦熱でシャトルごと消し炭になっていただろう。」
「まぁ、シンらしいと言えばシンらしいが。」
「ねぇねぇ、そのミネルバって艦と通信できないモンなの? だって今宇宙にいるんだったら、地球に降りてもらってバルチャー連合に
協力してもらえないかしら?」
横からトニヤがガロードに質問する。ミネルバの性能はアークエンジェルのデータベースにあった情報から見て、かなりの重装艦だ。
アークエンジェルとミネルバ、この2艦が艦を並べることができたならば、それだけでかなり士気が高揚するはずだ。
「うーん、多分無理。今あいつらがどこにいるかわからないし…。」
「だが、我々が彼らと接触するのは、案外すぐかもしれん。」
「? 何でだよ?」
ジャミルの言葉にガロードが反応する。ティファを取り戻したことで、フリーデンの面々には宇宙に上がる理由が無いのだ。それなのに
なぜそんな事を言うのか、ガロード以外のクルーも不思議そうな表情を浮かべた。
「革命軍はダリア作戦を失敗したおかげで奇襲手段が無くなった。反対に新連邦軍はこれから戦力を増強し、それらを宇宙へと上げるだろう。」
「また、15年前のような戦争が起こる可能性があるということですか?」
「今の段階でも、互いに銃を抜いていると言って良い。開戦はそう遠くはないはずだ。」
サラの不安にジャミルもうなずく。それを聞いた一堂は一様に表情を暗くした。その空気を察してか、ジャミルはみなに向き直った。
「だがすぐにコロニー落としをするようなことにはならないだろう。それぐらいの時間は残されている。」
「ふむ、モカの配合が多めだな。私なら、もう少し量を減らしてキリマンジャロを入れる。」
「なるほど、アンタも中々”通”な様だな。」
ブリーフィングルームを出たジャミルとテクスにバルドフェルドはここの所一番好きは配合のコーヒーを振舞った。配合の割合を見抜いたテクスに
バルドフェルドが感心しコーヒー談義に花を咲かす一方で、ジャミルは会話に参加せずただコーヒーのカップの中を覗き込んでいた。
「あんたは、この配合気に入ったかい?」
「…すまない、今はそんな事を話す気分になれない。」
「やはり開戦が心配か?」
テクスの言葉にジャミルは答えない。それを2人は”YES”と取った。
「…あんたの話は聞いている。確かに前大戦の最終局面で直接的な引き金を引いたのはあんたかもしれんが、所詮末端の兵士がしたことだ。深く
考える必要はないと思うが?」
「あの戦争を経験しているからこそ、なのかもしれん。」
外は夜空を流れる雲の間から月が顔を覗かせている。それだけを見ればこの世界のどこかで戦争が起ころうとしていること自体ウソのようだ。
「私が当時垣間見た未来は、そんなものではなかった。」
「開戦を止めたいか?」
「わからない。だがそれを止めることが、あの戦争を体験し、今を生きる私の責務なのかもしれん。」
ジャミルは一気にカップの中のコーヒーを飲み干したのだった。
新作乙!
やはり虎とドクターが一緒になると、話はそっちに行くかw
TVの方は論外としてだ、
幾多の二次において自分の行動に責任を取ろうとするネオの図というのはやたらとカッコイイ。
ムウとしての記憶が戻らないままそうするだけでも大したものなのに、
戻ってなお言い逃れる事なくネオの所行まで背負い込み落とし前をつけようとするパターンなんか
最高に燃えるものがある。
今回の場合もいい方向に大化けしそうで楽しみだけど、しかし概して
そういうきれいになったムネオの死亡率って限りなく高いんだよなあorz
GJ、そういえば死に損ないって死亡フラグだったっけ。生きてー、ネオ
Xの話をまとめなきゃ・・・
運命キャラのまとめもしなきゃ・・・
改変した奴らの行く末も書かなきゃ・・・
エンディングテーマソングはあいつに何を・・・
プチッ
ああぁぁぁぁあぁぁやることがおおすぎる!!
あたまがバカになるぅぅぅぅッ!!
そんなときに書いたやつですので、お目汚しでごめんなさい。
今回は”幕間”。本編の、あくまで何気ないワンシーン(?)です
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(前編)
コズッミック・イラ70、強襲機動特装艦”アークエンジェル”は誕生した。幾多の戦場で勝利し、戦後軍人たちの間で
”不沈艦”と呼ばれることとなる。それから3年、改修されたアークエンジェルはそれまで行動可能だった宇宙、
空に加え海中での航行もかつどうできるようになった。宇宙を駆け、空を舞い、海を行く。この艦は今や行けぬ場所など
無いと言っても過言ではないだろう。
だがこの艦の改修箇所はそれだけではない。一般的には”風呂”と呼ばれるそれは、艦の動力部で発生する余熱を利用して
湯を作り、乗組員の体の体調・衛生管理のために使われている。
“風呂”がある戦艦がほかにないわけではない。ただこの艦の風呂が特殊な点は、その風呂を露天風呂風にアレンジしたことだ。
本物の岩をわざわざ中に運び込み、セメントで隙間を埋め、さらに見た目はほとんど竹と見分けのつかないプラスチック製の柵で
男湯と女湯を分けるという念の入れようである。
一体誰がこれを作ろうと言い出したかは定かではない。しかしそれがある以上、活用せねば本当に無駄になってしまう。
そんなわけで、ユーラシアの北側の大地を進むアークエンジェルでは今日もその風呂、通称”天使湯”に入ろうと衣類と
風呂道具一式を持った面々が集まっていた。
立ち込める湯煙の向こうに少女が1人、バスタオルで胸から臀部まで隠した状態で周りを見回していた。普段は腰下までとどく
艶やかな長い髪を持つ彼女だが、それは今丁寧に後頭部でまとめられており、日焼けしていない白い新雪のようなうなじが
あらわになっている。いつもピンク色の長袖シャツの下に隠れて見えない肩のラインやその背中には未だ子供と大人の中間にいる
”少女”独特の青臭さと女性らしさの”共存”があった。
ほっそりとした体つきの彼女は女性が持つ胸部のふくらみも小さめで、バスタオルで隠した先端の突起が今にも見えそうな
ところまで下がっている。自分でも多少気にしているのか、ずれ落ちるバスタオルを直しながら彼女、ティファ・アディールは静かに
湯船へと近づいていった。
時刻は夜の10時過ぎ、他に湯船につかる者はいなかった。と言うのも、この天使湯を体験していない人間は現在乗艦している
メンバーで3人しかいない。ガロード・ラン、パーラ・シス、そしてティファ・アディール。彼等が最後の合流組みであり、
もっとも長く風呂やらシャワーやらと無縁の生活をしていたのだ。宇宙にいてはろくに体を洗うことができず、新連邦軍に
捕らえられてからはそんな事をさせてはもらえなかった。
ティファとて一端の女の子なのだ。身だしなみには気をつけたいと思う。特に思いを寄せるガロードの前では。
その事を知っている(フリーデンのクルーの間ではガロ×ティファは周知の事実だが)フリーデンの副官サラ・タイレルが
彼女にこの天使湯の事を教え、入浴を勧めたのである。彼女の情報どおり、混雑のピークが過ぎた温泉はただ静かに湯気が上がる
水面があるだけだった。
一通り体をお湯で清め、右足から水面に波が立たないよう静かに体を沈めていく。あまり筋肉のふくらみも無く、また女性としての
ふくよかさも発展途上の白い肢体を、お湯は足の指先、土踏まず、かかととくるぶし、さらに脹脛、ひざ、太ももと順々に受けいれていく。
誰にも自分から見せた事の無いその肢体が湯船につかりきると、湯船の縁にある平らな石に頭を乗せ、しばらくの間そのぬくもりに身をゆだねた。
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(中編)
「ねぇサラ、ティファ知らない?」
「ティファ? 何かあったの?」
女性陣に与えられたベッドエリアで就寝の準備を進めていたサラはトニヤの声に振り返った。化粧を完全に落として素顔になった
彼女は普段の副官としての顔ではなく年相応の女性に戻っている。唇のルージュの無い彼女は普段よりも表情が柔らかく感じられた。
「今パーラとエニルとで話してたんだけどさ、ここってお風呂あるじゃない。だから、ちょっちみんなで”裸の付き合い”をしようと思って。」
「とか何とかいって、昨日私にしたみたいに彼女をからかうつもりじゃないでしょうね?」
「あ、ひどーい。私だっていつもあんなじゃないわよ。ただ、サラがあまりにも”いじめてオーラ”を出してたからついついね。」
「私はそんな物出していません! もう…。水着が豹柄だからって、あなたまで肉食獣にならなくても良いのに…。」
「大丈夫、ティファはかわいいかわいい白いウサギさんだから。あ、ウサミミつけるとかわいいかも。」
「格好の得物じゃないの…。」
「ウサギはかまってあげないと寂しくて死んじゃうのよ?」
トニヤの表現にサラはあきれたように肩を落とすものの、彼女の考えも一理あると納得する。ティファと関係が強いのはガロード、
ジャミル、テクスの3人で、女同士であつまって話しをしたことは両手で数えるほどあっただろうかという程度だ。彼女の隣には
ガロードがいて、ティファ”だけ”でいることが少ない。今更だが、これは彼女の事を良く知るチャンスになるかもしれない。
「…まぁ良いわ。私もいく。」
「でもティファは?」
「ティファは先に入ってるわ。」
「そうなんだ。…よし、今夜はウサギ2羽だ。」
「何か言った?」
「ん〜ん、なんでもない。」
“天使湯”と書かれた暖簾の前に4人の女がいる。トニヤ・マームにサラ・タイレル、そしてエニル・エルにパーラ・シス。
趣味も性格も違う彼女達に共通するものは脇に着替えと石鹸、シャンプーなどのボディケア用具一式を持っているという点だ。
「あたし温泉って初めてなんだよなぁ。」
「宇宙には無かったの? 宇宙温泉。」
「…んな物ないって。んじゃさっそく、地球でのお楽しみ1件クリアだ!」
厳密に言えばこの天使湯もお湯を沸かしているだけなので天然の温泉ではないのだが、パーラはうれしそうにその暖簾を
くぐっていく。後に続くエニルとトニヤはアイコンタクトをかわした。
得物は2人? それとも3人?
目標は2人、できれば3人ね
2人のその様子に明らかに何か打ち合わせをしたように感じたサラは、2人に聞こえないように小さく息を吐く。何か事件が
起こることはほぼ間違いない。その被害をどれだけ抑えられるかは自分にかかっているのだ。
やる気の折れそうな心にそう言い聞かせてサラは暖簾をくぐった。
………十中八九巻き添えになることに頭を抱えながら。
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(後編)
「ムムム…!」
「な、なんだよ?」
シャツを脱いで水色の下着だけになったパーラの後で同じ黒いレースの下着姿のトニヤが険しい表情になっていた。17歳のトニヤに
15歳のパーラ、二つ年下であるパーラの半裸体にトニヤから注がれる視線は真剣であり、敵視の眼差しだった。
「あんた、なんでこんなにお尻キュって引き締まってるのよ!」
「わッ! ちょっと待て、尻にさわるな!」
「スポーツしてた人の筋肉でガチガチになったお尻じゃなくて、小さくまとまって、やわらかさはむしろ私のよりもやわらかいじゃない!?
何をどうやったらこんな美尻ができるのよ!」
トニヤは中腰の体勢で彼女の臀部を下着の上から撫で回し、小さく実の詰まった肉の感触をゆっくりと確かめていく。彼女は宇宙での生活が
長いためか、トニヤやエニルと違って肉が柔らかい。未だ同性ですら触らせたことの無い肉をまだ知り合って間もない年上の女にいじられることに
パーラは顔から火が出るほど恥ずかしかった。
また撫で回すトニヤの姿もまた見るものの目をくぎづけにする。褐色の肌に黒のレースから覗く腹部や背中の皮膚はしなやかに躍動し、うっすらと
肩甲骨や肋骨が浮き彫りになるその上半身は、健康的でありながらひどく大人の女の匂いを醸し出す。
「でも、胸の大きさは私達と多差ないのよね。」
「わ、お前まで!? やめろって!!」
「そうなのよ。そこがわかんないのよねぇ…。宇宙で生活するとスタイルが良くなるってホントなのかしら?」
臀部に注意がいっていたおかげで前が無防備になっている。それを見たエニルはすかさず前から彼女の両方のふくらみをすくい上げる様に
左右それぞれの手で覆った。
「つか、お前はバスタオルぐらい巻けよ!」
「良いじゃない。この練り上げられた肢体を隠す必要なんて、私は感じていないわ。」
下の下着のみ装着しただけで自身自慢の肉饅バストを見せびらかすかのような半裸状態のエニルはパーラの色気の感じられないスポーツブラの中へ
手をいれ、乳房の質感や重量をゆっくりと確かめるようにいじる。
「や、やめろって…!」
「感度良好…、男に好かれる体しているわ。」
「…いい、加減にしろぉっ!!」
羞恥心の限界に達したパーラは両手でエニルを押しのけ、後ろのトニヤの手を振り払いロッカーに背をあずけて身構える。この体勢ならば後方からの攻撃も無く、
前方からの攻撃のみの集中できる。戦闘機乗りは後ろから追いかけることは好きだが、追いかけられることは嫌いだった。
「お前ら、一体何を考えてんだ!!」
「あちゃー、逃げられちゃったか。」
「良いじゃない。”前菜”としては十分でしょ。」
「…そうね。じゃあ”メインディッシュ”、いくわよ。」
トニヤとエニルは彼女への関心が失せたらしく、最後の着衣を外してバスタオルを巻くとさっさと浴室へと入っていた。あまりの急展開ぶりにパーラが呆然としていると、
サラがぽんと彼女の肩を叩いた。
「良かったわね。あの程度で済んで。」
「あの程度って、あんたも何かされたのか?」
「昨日、ね。あれこれ口ではいえないような事をされたわ…。」
「何されたんだ…?」
昨日された事を思い出して頭を抱えるサラとげんなりとした表情のパーラ、2人はそろって大きなため息をついたのだった。
支援
49 :
通常の名無しさんの3倍:2010/11/05(金) 09:13:04 ID:veXU/TW2
>45-47
うん…まぁ、とりあえずGJ…
しかしなんだってあの二人は、こうもダメ人間ぽくなるんだかw
めめめ、メインディッシュはまだですかな?
保守
もしいまの時代にXが放映されていたら
サラとかトニヤとかもネタに同人誌が出てるんだろうなぁ・・・
とか今回の話を読んで思った
>54
ダグオンの方に女性は持っていかれると思う。
あまりX擁護に出ないけどアレはアレでOVA出るほどの人気があった。
しかもエヴァ熱も冷めて無かったしな
Xの同人誌なんて2つしか見たこと無いなぁ・・・
それはさておき幕間投下。とりあえず次回からは本編に戻ります
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(前編)
湯船に体を沈めてから5分弱。ティファの体は良い頃合に温まっていた。皮膚の下に存在する多数の毛細血管は熱によって拡張され、
白い陶磁器の様だった彼女の皮膚を淡い桜色に染める。頬もすこし紅潮し、湯の気持ちよさに彼女の表情も穏やかで緩んだものになっていた。
と、彼女は脱衣所に人の気配を察知する。数は4人、誰かはすぐに”感じる”ことができた。
「サラさん達?」
彼女にとって良いお姉さんであるトニヤとサラ、トニヤの友人であるエニル、そして宇宙でティファ救出に一役買ってくれたパーラ。
彼女達が風呂場に来ることは聞いていなかったが、別段それに不快感はない。しかし、気になったのはトニヤとエニルだ。
彼女達に”感じた”それは、一言で言うなら”いたずら心”だ。しかも自分に向けられた。
「お、いたいた。」
「湯加減はどう? ティファ。」
髪をタオルで無理やり頭部に纏め上げ、胸から太ももの付け根までバスタオルで隠したトニヤと、頭に巻いているヘアバンドを外し、
トニヤと同じようにバスタオルを巻いたエニルが彼女の前に現れる。身長があり、なおかつスタイルの良い2人がこのように並び立つと、
ティファには眼の前に2人の女神が光臨したように感じられた。
2人はおもむろにバスタオルを外して湯船の縁に置くと、ティファを挟むようにしてお湯に体を沈めた。両側を固められたティファは
2人を交互に見ると、戸惑ったように視線を下に落とし、頬を赤らめる。
「ん? どうしたの?」
「い、いえべつに…。」
「たいしたことじゃないなら、ちゃんと言いなさいよ。別に私達はそれで怒る様なことはしないから。」
エニルはティファに発言を促す。視線を泳がせてどうしようか迷うティファを見ていたトニヤはプっとふきだした。彼女の視線を追っていて、
何を見ていたか見当がついたのだろう。トニヤからすればたいしたことではないこと、でもティファからすれば重要なこと。
それはすなわち”身体的特徴”だった。
「トニヤ?」
「ゴ、ゴメン。ティファが何言いたいかわかっちゃったからさ、おかしくて…。」
「…へぇ。それは、本人の口から直接聞きたいわね。」
ティファの左隣に座るエニルはそっと彼女と体を密着させる。それによりティファの左腕にはエニルの発育しきった豊かな乳房が押し付けられ、
なまめかしくかたちを変形させる。その弾力、質感がティファにとっては未知の感触だったらしく、思わずエニルの顔と胸を視線が何度も往復した。
「うんうん。ぜひ、本人の口から聞きたいわよね?」
それを見た右隣に座るトニヤは、エニルと同じように体を密着させこちらも同じようにたわわに実ったそれを押し付ける。左を見ればエニルの
白いプリン、左を見ればトニヤの褐色のゼリー。両方を見比べながらティファはどうして良いかわからず右往左往した。
「ねぇティファ。あんたは今何を見比べたの?」
「え、えーと…。」
「私とトニヤ、あなたが交互に見比べているものは何かしら?」
「い、…いえ、その…。」
2人はさらに彼女との体の密着度を上げていく。それまで上半身だけだった密着部が太ももを摺り寄せ、それぞれ浮き出た骨盤の縁を押し付け彼女の
横っ腹に密着させる。完全に肉布団にはまれたティファはただただ状況が好転する事を待つことしかできない。
そして、トニヤとエニルはそれを許さなかった。
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(中編)
「ティ〜ファ〜? どこを見比べたの〜?」
「素直に白状しないなら、あれこれして変な声出させちゃうわ。」
彼女達の密着度が上昇する中で、既にティファの太ももはトニヤたちの支配下に有った。普段ロングスカートの中に隠れて
見ることのできない太もも。それをトニヤとエニルは指先で軽くなでる。初めは静かな湖面に小さな波を作るような繊細なタッチで、
それが徐々に指から手まで触れる範囲が広がり、最後には手全体を使って撫で回すようになっていた。
「や、やめてください…。」
「い・や♡」
「だ・め♡」
ティファの静止の声を無視し、トニヤとエニルの攻勢は更なるステップへと上がる。それはつまり、今まで以上に彼女が知らない
未知の域へと駆け上がる事を意味する。”そういう事”に対する知識を持たない彼女には、これ以上何をされるかわからず涙目になっていた。
しかし、トニヤとエニルの攻勢はここでストップする。彼女達も来るであろうとわかっていた乱入者によって、彼女達の手は止まった。
「2人とも! いい加減にしなさい!」
大声で二人を止めたサラの姿が、ティファにはこの時ばかりはガロード以上の救世主に見えたのだった。
「まったく、やりすぎよ二人とも!」
「だって〜、ティファが可愛かったんだもん。」
「無垢な物ほど、穢してみたいと思わない?」
ティファ、パーラ、サラ、エニル、トニヤが円になって湯船につかる。サラは先ほどの件を叱責する一方で、トニヤは舌を出して笑顔で謝罪の
言葉を口にし、エニルはフフッと妖艶な笑みを浮かべた。はっきりいって、二人からはぜんぜん反省の色は見えなかった。
「あんたら、それじゃただのスケベ親父だぞ。サテリコンの中にもいたけどさ。」
「あ、やっぱりいるんだ。そういう奴。」
「あったり前じゃん。こういうこと言うのは何だけど、サテリコンの仲間には女少なかったんだぜ? そりゃ男どもがあれこれやってるのいやでも目に付くって。」
肩をすくめながらパーラはサテリコン時代の苦労話をあれこれと話し始める。それをみなが真剣に聞く中、ティファはパーラの胴体に揺れる二つの
半玉の桃に目が向いていた。
視線に気づいたパーラはすばやく両手でそれを隠し、逃げるように体をひねった。
「あ、あんまりじろじろ見るなよ。お前だって、同じものがついてるだろ?」
「あ、いや、その…。」
「なんだかんだいって、やっぱり気にしているのね。」
トニヤはティファの両肩に手を回し、ニコニコしながら自分の方へ引き寄せる。先ほどのような露骨な密着ではなく、あくまで年上者としての動きで。とりあえず
サラからの制止の声は無かった。
「ティファ。胸をおっきくする方法、知りたい?」
「え!?」
「ティファだったら、絶対にできる方法なんだけど。」
「トニヤ。」
「大丈夫大丈夫。ここではできないし、何より私達じゃ絶対にできないから。」
トニヤはサラに右手の人差し指を立ててチッ、チッ、チッ、と左右に振る。彼女の考えるやり方が検討もつかないサラはいぶかしげに首をひねった。
「彼女にできるけど私達にできない方法? そんなのあるわけ無いじゃない。」
「ぜんぜん簡単よ。ティファ、ガロードの揉んでもらいなさい。」
トニヤの発言にティファ、サラ、パーラは固まった。
一方発言したトニヤは得意顔を浮かべた。
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(後編)
「え、ええ? なんだよそれ?」
「だぁから、ティファはガロードのこと好きでしょ?」
「は、はい。」
「だったら、好きな人に揉んでもらって、いっぱい女性ホルモン出して、女性らしい体を手に入れるのよ!」
ぐっと手に力を入れる彼女を横目に見ながら、サラはあきれて大きくため息を漏らす。そもそも、揉んで大きくなるというのなら
個人差(個体差)など存在しないはずだ。
揉まれただけ大きくなるなどありえない。
「まったく、何を言い出すかと思えば…。」
「あ、サラ信用してないわね?」
「当たり前でしょう。それで胸が大きくなるというのなら、世の中胸の大きさで悩むことなくなるじゃないの。」
「よしわかった。じゃあ実験しましょう。」
「実験?」
「そう実験。サラを実験台にして。」
「…えぇッ!?」
サラが立ち上がるよりも早く、エニルがサラを後ろから羽交い絞めにする。腕を押さえられ、体の前面を隠すことができなくなった
彼女は顔を真っ赤にした。
「ちょ、ちょっと!」
「もんどう♡」
「むよう♡」
「きゃ、ちょっと、やめt( ゜ロ ゜;) 男湯に誰かいたら!!」
「大丈夫よ! だれもいないから!!」
デザートにとりかかった2人によって、サラはあられもない声を風呂場に響かせる。年下組みのティファとパーラはその様子を、
目を覆いながらもしっかりとその姿を網膜に焼き付けたのだった。
一方男湯では、サラのリアルな声を聞いている人物達がいた。
「…まったく、若いって良いな。」
「………。」
湯船の中で体を伸ばすフリーデンの年長組み。ジャミルとテクス。2人はティファがトニヤとエニルに攻められている時からずっと、
その生のサウンドがリアルタイムで聞こえていたのである。
2人とも真顔で何を考えているかは皆目見当がつかないが、未だに浴室を後にする様子は無かった。
「あいつらがああいう話題で盛り上がっているのは私も初めて聞いた。」
「…私もだ。」
「あんな話題で盛り上がるのも、若いうちだけさ。」
「これも”若さゆえの過ち”というわけか…。」
彼らは女湯聞こえる普段聞くことのできない声に今しばらく耳を傾けることにしたのだった。
GJ!
こういう時、真面目なキャラは損だよね。
サラよ、健やかにあれ……。
GJ!
しかし、ジャミルとテクスよ。あんたらガキじゃあるめぇし、聞こえないフリしとけよw
まとめサイトがインフォシークだったせいか見れなくなってる
>>63 X本スレだとちゃんと行けるからおかしいなと思ったらそういうことかw
>>61 つうかテクスはともかく女湯の様子を正しく理解してるジャミルなんかジャミルじゃないやいw
ジャミルなら
「何で風呂場に果物だのゼリーだのプリンだの持ち込んでいるのだ?」
と本気の真顔で尋ねてるはずだw
知識としてだけだろwだから動じないのさw
保守
保守が見えた
ティファの胸は果物にたとえるとなんなのだろう・・・?
そんなに大きい方ではないはずだし
ティファの胸・・・ 解答あえてするなら、小皿? 小さめの茶碗?
まぁそんな感じでしょう。
と、次話投下
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(前編)
北アメリカ大陸にあるバルチャー連合の基地に身を寄せてから三日、フリーデンのクルー達はあてがわれた宿舎で穏やかな時間を
過ごしていた。新連邦軍と宇宙革命軍が開戦の準備を着々と進めているという情報が入る一方で、彼らはこれからどう行動を
取るべきなのかそれぞれに迷っていた。
“戦争が起こること”に対して不快感を示すものは数多くいる。それは15年前にあの悲惨な戦争を経験し、それから今まで
生き抜くことができた人々にとっては当然の考えだ。
しかし、バルチャー連合の上層部の中には”自ら戦争を止めよう”とする者はいなかった。そもそも彼らにとって、当面の敵は
自分達の勢力圏を脅かす新連邦軍のみであり、宇宙革命軍が宇宙で何をやろうと、関心を向ける必要が無かったのだ。少なくとも、
自分達に直接的な被害が出るような事態にならない限りは。
だが、そんなバルチャー連合の中で自ら行動を起こそうとする一派が現れた。リーダーの名前はラクス・クライン。バルチャー連合に
参加して一番期間が短く、なおかつバルチャー連合のリーダー格中一番年下の少女である。ルックス、スタイル、そしてその美声に
注目が集まる一方で、彼女達一派通称”クライン派”の行動を非難する声は水面下では多く聞かれた。
理由は単純だ。他のリーダー格の者よりも年下で、なおかつ言動、行動は過激な面が多いためである。”戦争をやめさせるために戦う”と
声を上げるのは良いが、実際彼女達が持つ手札では何もすることができないのだ。戦力も戦艦エターナルとアークエンジェルの2隻のみ。
政治的な交渉のパイプも持たず、力不足が否めなかった。
“思いだけでも、力だけでもダメ”と以前誰かが言っていたなと思いつつラクスはため息を漏らすと、自室の窓の外に広がる青い空に目を向けた。
と、その視界を赤いMSが横切る。目でそれを追うと、赤いガンダムがなにやら背中に大きな装備をして空を飛んでいた。地上ではそれを眺める
ガロードたちの姿があった。
「なんだか楽しそうですわね…。」
自分とあまり年齢の離れていない彼らがなにやらはしゃいでいる姿を見ていると、自然に頬が緩んだ。
「確かに楽しそうではあるが、今はそんな事を話している場合じゃないだろう?」
「宇宙革命軍が動きを見せた。これでまた、戦争に一歩近づいた。」
だが同室していたカガリとアスランは渋い表情だった。彼女と再会し、ジャミル達への紹介は済んでいる。今は彼女の自室に集まって互いの情報の
交換を進めていたところであった。その最中にもたらされた情報、それが”宇宙革命軍が月に向かって進軍を開始した”というものだった。
彼等が月に到着するのは遅くとも一週間後、それにあわせて新連邦軍も動きを見せるはずだ。アスランの言ったとおり、世界は再び戦争への道を歩もうとしていた。
「宇宙革命軍と新連邦、ザフトと地球連合。私達の世界もこの世界も宇宙と地球はこんなにもいがみ合っているのでしょう?」
「俺たちの世界ではコーディネイターとナチュラルの確執があった。こっちの世界ではニュータイプに対しての捉え方、価値観の違いがある。」
「私からすれば、正直ニュータイプがいっぱい居たからと言って、ケンカする必要は無いと思うけどな。」
「カガリはそれで良いかもしれないが、ザイデルやブラッドマンはそうは行かないのだろう。」
それぞれの指導者の名前を出してアスランは肩をすくめた。ザイデルはニュータイプを”スペースノイドは全てニュータイプであり、人類の革新”としているのに対し、
ブラッドマンは”オールドタイプに従うべき存在”としている。それぞれの言い分はわからなくもない。しかし、よそ者の彼女達にはどちらも”間違い”に聞こえた。
「人は分かり合えるはずなのに、どうして他者を完全に排除しようとするのでしょう…?」
窓の向こうに見える滑走路でふざけあうガロード達の光景は平和そのものだ。しかし、その一方で世界の悪意は確かに増殖を続けていたのだった。
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(中編)
シンはその時眠っていた。眠っているはずだった。ルナマリアと交替で休息を取っている彼は、時計では標準時0時の1時間前に
ベッドに入った。そこまでは覚えている。しかし、彼は今宇宙にいた。
「ここは…?」
パイロットスーツに身をつつみ、ディスティニーのコックピットに座っている。眼下には月面、そして巨大なパラボナアンテナが見えていた。
「あれは…?」
どこかで見たことのあるような巨大なアンテナ、その周辺に設置されたかなりの数の太陽電池パネル。ざっと数えて30枚以上の
それらからはそれぞれ中央部にそびえるパラボナアンテナにその送電ケーブルが延びている。
計器に目をむけ現在の位置を確認する。ポイント2004。高度を下げ、アンテナ施設に近づくにつれてポイントは徐々に数値を変化させていく。
施設に着地して再び位置を確認する。
ポイント1996。確かに計器はそう数値を示していた。
Pi! Pi! Pi! Pi!
ベッドの上に備え付けられた時計からアラームが響く。それまでの静寂を破る機械的な音にシンは重たいまぶたを開いた。今いるのは
自室のベッドの上、ディスティニーのコックピットではない。
「夢…、か。」
寝癖でぐちゃぐちゃになった髪を手で整えながらシンはもう一方の空いた手でアラームをストップさせる。時刻は就寝してから約6時間半、
十分な時間眠っていた。それと同時に、先ほどの夢がやけに鮮明に頭に残っていた。
「まったく、夢の中までディスティニーに乗ってるなんて…。やっぱりストレス溜まってるのかなぁ…。」
服を着替えザフトの赤い軍服に袖を通す。交代の時間まであと2時間弱、別に急ぐ必要があったわけではなかったが、シンはすばやく準備を
終えると部屋を後にした。
「施設全体の状況把握率は現在52%…。思ったよりもはかどってないわね。」
「ここは旧連邦のトップシークレットですからね。」
「それだけセキュリティーがきびしいってことか…。」
タリア、アビー、アーサーはブリッジのメインモニターに映るさまざまなデータを見ながら状況の推移を見守っていた。
ダリア作戦を阻止してサイレントランを続けていたミネルバは、一昨日旧連邦が建設したマイクロウェーブ送電施設の第1宇宙港に入港した。
今は施設内部の調査と艦、及びMSの整備に人員を割いている。
幸いなことに送電施設の設備はそのほとんどが稼動可能な状態にあったため、艦の外装の修理やMSの整備などは順調に進んでいた。
その一方で施設内の調査は難航していた。何よりセキュリティーが厳しく、ドア一枚のロックを解除するにも1〜2時間はかかってしまう。
タリアの口から出た施設全体の状況把握率52%のうち、40%が外に太陽電池パネルなどの外部の施設だ。中枢部などは未だに拝めていなかった。
「でもなんだか気味が悪くないですか?」
「? どういうことだ?」
「だって、施設内部のセキュリティーはこんなに厳しいんですよ? だったら、外のセキュリティーだって同等のレベルのものが配備されていないと
おかしいじゃないですか。」
アビーの指摘した点はタリアも気になっていた点だった。中のシステムは確かにまだ生きている。だからこそセキュリティーが働いているのだが、
なぜ”内部”は働いていて”外部”は働いていないのか。長年太陽風や放射線にさらされたといっても、元々それを想定して作られているのだ。
生半可なことで故障などするはずも無い。
まるで”招き入れられた”かのように入港したものの、その後”まだ入ってはならない”とばかりに基地内部のシステムが働く。これが単なるシステムの仕業なのか?
タリアには何かしらの”意志”が介在しているように感じられてならなかった。
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(後編)
「…我々の事を味方と認識しているわけは…」
「無いわね。」
「無いですね。」
「…ですよね。」
限りなく0%に近い意見をタリアとアビーがばっさりと切り捨てると、不用意な発言だったとアーサーは肩を落としたのだった。
「あ、シーン!」
「お勤めご苦労さん。なんか変わったことは?」
「ないない、基地周辺はいろいろ見てまわったけど、どこもただの月面よ。」
格納庫に着いたシンをルナマリアはミネラルウォーターの入ったボトルを投げて出迎える。それを受け取ったシンはボトルの
先端から伸びる吸引用のチューブに口をつけつつ、彼女が見てまわった基地周りの状況を聞いた。
外は見渡す限り何も無い無とクレーターの世界。今回彼女が見てまわった中では敵の接近してきた様子も無く、新たな発見は何も無かったという。
「しっかし、月面の地図はあっちもこっちも同じのなのね。なんだかそれも不思議だわ。」
「なぁルナ。」
「ん?」
「ポイント2004と1996って、お前見に行った?」
「何言ってるのよ。ポイント2100から1900まではこの基地の敷地じゃないの。」
「あ、…そっか。」
電子パネルに表示された地図上では2100から1900までは確かに基地の端と端になっている。それを確認すると、シンはポイント2004と
1996を地図から探した。そして、ようやくそれに気づいた。
「…そっか、そういうことか。」
「? シン?」
「ここが、こここそが、”始まりの場所”なんだ。」
シンは”こちら側”に来る時に大きなパラボナアンテナを確認している。そして、ポイント2004と1996は基地中央にそびえる
マイクロウェーブ照射用の大型アンテナの端と端を指していたのだった。
更新乙
遅くなりましたが、GJです。
・・・これは、帰還エンドフラグか?
テレたまが追いつきます
保守はいります
PCが年末年始2度にわたりクラッシュ・・・
それはさておき、あけおめ
もう一踏ん張りお付き合いください。
今回はちょっとオリジナルな内容が先行してますが郷了承を・・・
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(前編)
定期偵察の時間になった為、シンはディスティニーで出撃した。第一宇宙港のすぐ近くにある第八ゲート、ゲート入り口から
見える月面の風景はシンが最後に”あちら側”で見た物となんら変わりなかった。見上げればとても数えきることのできない
ほどの星々、そしてその中でひときわ白く輝く太陽と青い地球。生物の本来存在し得ないそこはただ静かにそこに存在するだけであった。
「さて、現在地は…。」
月面に機体を着地させると、シンは操作パネルを操作して左側のモニターに現在の位置を表示させる。クレータの位置は宇宙の
ゴミが月に衝突するたびに変化するため当てにはできない。位置の算出は地球同様、緯度と経度で算出されている。
「この基地は地球に見える側のほぼ中心か…。」
月の自転は一回転につき一ヶ月、さらに公転周期も一ヶ月。常に同じ側が地球側に向いていることになり、月の裏側は普段地球の
人々には見えない。それを利用し、”あちら側”ではレクイエムなどというとんでもない大量破壊兵器が作られた。
無論、このマイクロウェーブ送電施設から供給されるエネルギーで発射させるサテライトキャノンも立派な大量破壊兵器なのだが、
少なくともシンはそれが無差別に使われた所を見たことが無かった。
シンはそんな事を考えつつ、機体を偵察軌道へ乗せる。レーダーに反応無し、前大戦時の遺品と思われるMSや戦艦の残骸などが
多数ある一方で、動くものは一つも見当たらなかった。
「…でも、この基地は十五年間本当にただ放置されていたのか? 宇宙にはイエーガーたちだっているのに…。」
ここはいろいろなパーツを回収でき、拠点としても利用価値は高い。少なくとも前大戦で疲弊した地球同様、物資の少ない宇宙では
ここはこの上ない”餌場”と言っても良いはずである。しかしなぜ、今までこうも無傷でいられたのか?
その存在そのものが発見されていないのか? それとも発見されても近づけなかったのか? はたまた既に何者かの支配下にあり、
ミネルバが彼らによって基地に招きいれられたのか?
シンはどこか得体の知れない何かが自分たちの周りで行動を起こしているようで、自分達が大変な状況に置かれているのではないかと
心配を募らせたのだった。
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(中編)
「君達の意見には、賛成できないな。」
バルチャー連合のリーダーであるルーファスはクッションの効いたソファーの背もたれにその長身を預けながらラクスに返答した。
今彼等がいるのはルーファスの執務室、ラクスは革命軍が動きを見せたことに対して、自分たちも何かしら行動を起こすべきだと主張したのだ。
返答を聞いたラクスは動きを見せない。横に控えているネオとマリューも同様だった。彼は左耳からたれた自身の長い黒髪をかきあげ、
両手で手遊びをしながら目の前に立つ彼女達の様子を伺う。
「…なぜです?」
「前々から散々話したとおり、我々の敵は新連邦政府だけだ。」
「しかし、また戦争が起これば15年前の悲劇が繰り返されるかもしれないのですよ?」
「だろうな。」
「あなたは、それで良いのですか?」
「…ラクス嬢、今の北アメリカ大陸をどう見る?」
ルーファスはラクスの質問に質問で返答する。ラクス、ネオ、マリューが表情を変えるのを見て、ルーファスは手を上げて彼らを制した。
「まてまて、別に君達の質問に答えないわけじゃない。まぁ聞いてくれ。私は今の北アメリカは戦前よりもずっと混沌とした状態だと思っている。
経済の中心地だった大陸の東西の海岸はコロニー落としの時に発生した津波でオシャカ、内陸部も砂漠化して見る影も無い。それがようやく治まって、
この大陸に“秩序”が戻り始めているんだ。」
ルーファスの話は続く。戦後の動乱の中で彼が感じたものは”秩序”の重要性だった。無法地帯と化したそこでは老若男女、けが人病人問わず
1人の人間としか見られない。つまり、“人”が“獣”に “退行”してしまう世界なのだ。それまであった決まりごとも法律も何の意味も持たない。
ただ強いものだけが生き残る、そんな世界である。
「この二、三年でこの大陸もようやく人が人として暮らせるだけの環境が整ってきた。それはこの大陸の人間が築き上げた血と汗と涙と努力の結晶だ。
俺はそれを新連邦政府なんていうよそ者にかき回されたくないんだよ。」
「…なるほど。南インド諸島をみつけたコロンブス来訪のあと、南北アメリカ大陸の先住民達の生活が滅茶苦茶にされたときの二の舞はゴメンということか。」
「ああ。」
「しかし、それで良いのですか? あなた方は、周りの人々が苦しんでいる時に手を差し伸べようとはしないと? 本気でそういうおつもりなのですか?」
「違うなラクス嬢。手を差し伸べようとしないのではない。」
ルーファスは真剣な眼差しでじっとラクスを見つめる。その瞳からは彼の切実な気持ちが感じれらた。
「守りたくても、今の我々では他を守ることができないんだ。仮に守ったとして、疲弊して本丸であるこの北アメリカを守れなかったら、本末転倒なんだよ。」
自分達は既に守りたいものがあり、そのため働いている。今はまだ、他に回す余裕が無いのだと、彼は言った。
「あなた方のすべての力を私たちに貸してくれとは言いません、少しでいいのです。お力をお貸ししていただけないでしょうか? 」
「…力か。ラクス嬢、君達の言う”力”とは一体なんだ? この場合はMSなどの戦力のことと俺は解釈したが?」
ルーファスはゆっくりと体を背もたれから起こすと、下からラクスを見上げる。その視線に好みの女性を見定める時のようないやらしさは存在しない。
あくまで彼女という人間を見定めるために彼は彼女を見つめた。
「力とは、誰もが持っている”何かを実現しようとする力”です。」
「…ずいぶんと漠然としているな。」
小さくため息をつくと、彼は席を立ち真後ろにある大きな窓に向き直る。窓の向こうには晴れ渡った夜の空に大きな満月、そして窓の内側には彼の顔が映った。
齢三十三歳でこの所帯の大きな組織のリーダーをやっているのだ。顔にはその苦労がしわとなり年輪のように刻まれている。
「“力”を表す言葉はいろいろある。腕力、脚力、筋力、知力、魅力、権力、経済力、組織力、支配力、統率力、武力、政治力! 俺がぱっと頭に浮かんだ物だけでも
これだけある。時間をかければもっといっぱい探し出すことができるだろう。ここで聞かせてもらうが、君たちが持っているその力とは、具体的にいったいどんな力なんだ?」
ラクスたちに目を戻して彼は問うた。ラクスは動かず、マリューとネオはそれぞれ考えるように首を傾げたり、天井を見つめたりした。すぐに返答が返ってこないことに
ルーファスはさらに言葉を続ける。
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(後編)
「君たちはどうやって新連邦と革命軍の戦争を止める? 政治力、パイプ役を使っての政治的な和平か? 経済力、平和を金で買うか?
武力、ご自慢のガンダム部隊での武力による鎮圧か? 魅力、君の得意とする歌で戦場のすべての人間を感動させて戦いをやめさせる気か?」
「私達は戦場にいるすべての人の心に、平和を望む”心”があると信じています。その心を動かすのです。」
「どうやって? そんな形もなく、動くかどうかわからないものに君たちは賭ける気なのか? 私にはその考えは理解できないな。」
ルーファスは彼女の言葉を鼻で笑うと、肩をすくめる。今まで別段動きを見せなかったマリューとネオは彼の行動に彼女たちは表情をゆがめた。
「おいあんた、結局何が言いたんだよ?」
「具体的にどうやって戦争を終わらせるかがわからないのでは、こちらとしては協力できないと言ってるんだ。さっきも言ったが、こちらは大所帯だ。
彼らをそんな何のプランもない作戦に参加させるわけにもいかない。それでは単純に、彼らに“死んでこい”といっているようなものだよ!!」
彼の口調は、それまでの話の中で一番強かった。
“戦う”ということは彼も否定しない。彼自身、そうやって北アメリカ大陸の平和を“勝ち取って”来たのだ。方法を否定するつもりはさらさらない。
しかし、それも正面からただぶつかればいいというわけでもないのだ。勝利へのシナリオがない限り、彼は絶対に動かないと心に決めている。それが、
今の地位を勝ち取るに至ってもっとも必要だった彼の“力”であった。
「…プランを提示すれば、協力していただけるのですか?」
「考えんでもない。しかし新連邦軍と宇宙革命軍の両軍を相手にするとなると、我々の持つ戦力だけでは逆立ちしても勝てん。」
「私たちの目的はあくまで戦争をやめさせることです。両軍を倒すことではありません。」
「…まったく、“思い”だけは一人前だな。」
彼は頭をかきながら自分の執務用の机に入れられた大きないすに腰掛けると、改めてラクスに言った。
「とにかく、そんな闇雲な行為に我々は協力できない。さらに言うならば、君たちが自分たちで勝手にやるというのであれば、止めたりはしない。話は以上だ。」
「ルーファスさん、結局彼らの協力要請を蹴ったんですか?」
「…ああ。」
秘書の言葉にルーファスはじっと外の月を見ながら答えた。地球に一番近い天体。そこに向って新連邦軍も宇宙革命軍も部隊を進軍させている。
また世界を二分する大きな戦争になることはほぼ間違いないだろう。それを嫌悪する気持ちは確かにあるし、できることならとめたいとも思う。
しかし、今の自分たちの力ではどうにもならないことはよくわかっていた。
「彼ら、どうしますかね。」
「あいつらは馬鹿だ。」
ルーファスはラクス達のことをそう断言した。彼がこういうことを言うことが珍しかったらしく、秘書は少し驚いた様子で顔を上げた。
「珍しいですね、あなたがそこまで言い切るなんて。」
「ああ。頭の中で“思い”だけが先行して行動が追いついていないんだよ。だが、馬鹿の行動は予想がつかない。もしかすると…。」
「もしかすると?」
「もしかすると、“思い”が “力”に変わるかもしれん。」
コーヒーメーカーでコーヒーを作る秘書を見ながらルーファスは肩をすくめたのだった。
>>78-80 新年OO(おめでとうございます&乙)。
オリキャラのルーファス反連邦代表(仮)もなかなか求心力のある人物だという
ものは察せられるかと思います。
まあここでラクスがルーファス氏を説得したところで肝心の反連邦組織の議会は
紛紛糾糾してろくに統一行動を取れたものではなかったと思いますが。
なにしろ新連邦の分析では組織の結成自体予想外で、カリスが「所詮は反新連邦だけの組織」
と言うくらいまとまりが無いくらいだし。
新年早々乙です。
そろそろ保守を
保守ドモです。それでは張り切って次の話を投下します
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(前篇)
ティファは今自分が夢を見ているのだと確信した。昨日、彼女の人生の中で最高の出来事があった。そしてその興奮とぬくもりを
感じながら床についたこところまでは覚えている。
しかし、今いる場所は彼女のベッドの上でも、そもそも地球ですらなかった。
そこは光と闇しか存在しない空間で、彼女は前方に向かって真っすぐに進んでいる。時折光の点が彼女の進行方向からあらわれては
彼女の上下左右を通り過ぎていく。一番近いものとして例を挙げるならば“宇宙”か。何もない空間でありながらはるか彼方には
人間など比べ物にならないほど巨大なものが確かに存在する世界。
彼女は自分の持つ“力”のおかげで普通の人間が見ることのないような“夢”を見ることが多々あるが、今回のような夢を見たことは
一度もなかった。
と、前方の空間からティファは“声”を感じた。“声”は本来聞くものであって感じるものではないが、今回はこちらが適切な
表現だろう。何せ、彼女は相手の声を自分の耳で聞いてはいないのだ。彼女が“力”を持っていなかったら、おそらく“彼”の声を
聞くこともなかったに違いない。“力”と“力”で会話する。つまり相手も“ニュータイプ”ということだ。
声を聞いてしばらくすると、彼女の前にバレーボール程度の大きさの光の球が現れた。それはティファの前までくると、
改めて彼女に呼び掛ける。人の形を成さない“人”に呼ばれ、ティファは驚きを覚えた。
「あなたは誰?」
彼女の問いにその光の球が答える。彼の“名”を聞くと更なる驚きが彼女を襲い、そして納得させた。ああ、なるほど。
この人がブラッドマンやザイデルが言っていた人、“ファーストニュータイプ”と呼ばれる存在“D.O.M.E”なのだと。
D.O.M.Eは彼女に言った。
“月へ来てほしい“
「月へ?」
彼女の聞き返す声に反応し、周りの空間が目のくらむような光に包まれる。光が消えると、彼女は巨大な岩の塊の前にいた。
直径が何kmになるかなど皆目見当もつかない。その岩の塊が月だということを理解するまで少し時間が必要だった。
それが月だと理解する決め手になったのは月のほぼ中央に見えたある施設だ。実際に見たことは一度もない。しかし、彼女は
その施設と密接な関係を持っている。ガロードと出会って間もないころに一度だけアクセスした場所、すべての始まりの場所であり、
答えを内包するゴール。
マイクロウェーブ送電施設、それがその場所の名前だった。
彼女が目を覚ますと、一同は安心したように大きく息を吐いた。
そこはバルチャー連合に間借りしているフリーデンクルーに割り当てられた医務室で、彼女の寝かされているベッドの周りにはガロードや
ジャミル、テクスといったいつもの面々が顔をそろえている。ガロードにいたっては彼女のことをよほど心配していたらしく、眼尻には涙が見えた。
ガロードったら、と呆れ3割喜び7割で彼女は彼の心配する声にこたえると、視線をジャミルに向けた。
「お願いがあります。」
「お願い?」
「私を、月へ連れて行ってください。」
「月へ?」
ティファは大きくうなずいた。
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(中篇)
「なるほど、それでわたくし達に白羽の矢が立ったのですね。」
「無理を言っていることは重々承知している。しかし、我々はどうしても月へ行かなければならない。」
ジャミルはバルチャー連合内で宇宙に上がることができると考えられる勢力の代表と会談した。勢力の名は通称“クライン派”、
フリーデンのクルーを救出したアークエンジェルもこの会派に属している。
代表者となっているラクス・クラインという18歳の少女は、まっすぐに彼のサングラスの奥に隠れた瞳を見つめる。その視線を
受けながらジャミルは静かに彼女の返答を待った。
「なぜわたくし達なのか、理由を聞かせていただけますか?」
「あなた方がルーファス殿に月での戦いをやめさせる為に部隊を派遣すべきと進言したことは既に聞いている。つまり、あなた方は
宇宙で行動可能なMS、戦艦の所在を知っている。…あるいは、持っているということになる。」
MSは調整をさえすれば宇宙での行動も可能になるが、戦艦はそうはいかない。今は亡きフリーデンを宇宙で使ったならば、
おそらくすぐに艦内の空気が宇宙空間へ漏れだしクルー全員が窒息するか、推進力を持たないために立往生をするに違いない。
15年前に宇宙に上がった経験のあるジャミルはそれを知っていた。そして、窓の外に見えるアークエンジェルがその諸々の問題を
すべてクリアしていることも。
「確かにアークエンジェルは宇宙でも行動可能です。しかし…。」
「私はかつてニュータイプと呼ばれた。」
口ごもるラクスの次の言葉を予想してか、ジャミルは彼女の言葉を遮った。彼女の言いたいことは容易に予想がつく。
そして、それは彼も賛成する事柄であった。
「私が当時垣間見た未来には、戦争などなかった。そして前大戦の体験者としても、今の状況を見逃すわけにはいかない。」
「…協力していただけるのですね?」
「それはお互い様だ。」
「わかりました。ではさっそくあなた方にやっていただきたいことがあるのですが。」
ラクスは胸の前で両手を合わせ、今回ジャミル達の協力を得られたことを神に感謝するように目を閉じると、さっそく次の
段階の話を始めた。月での戦闘は避けられないことが間違いない以上、悠長に構えている時間はない。ジャミルもそのまま話を続ける。
「なんだ?」
「今アークエンジェルの整備主任であるマードックさんが地下の第6格納庫に置かれていた前大戦の“遺産”を整備中です。皆さんの
メカニックの手を貸していただければ、月へ行く日程が早まるのですが…。」
「それは構わない。後ほど部下を向かわせよう。」
「ありがとうございます。」
「それで、その“遺産”というのは一体何なのですか?」
後ろで控えていたサラにラクスは二コリとほほ笑むと、右の人差し指を立てて口の前に持って行った。
「今回の作戦はルーファスさんには内緒ですよ。」
「代表に報告しなくていいのか? この基地の遺産なのだろう?」
「報告したら止められますから。ちなみにマードックさん達が現在進行中の作戦名は、“復活の白き箱舟”です。」
「箱舟?」
「ちょっと気取った言い方ですけどね。要は汎用戦艦の奪取です。」
ラクスはジャミル達に作戦の内容を、声をひそめて話し始めた。
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(後篇)
ジャミルとラクスの会談から4日が過ぎた。正確には会談終了から3日と13時間、現在時刻は午前4時という時間である。
周りは夜の闇に包まれており、動き回るものはまばらな人間など時刻だ。
だがそんな時間でありながら活動している面々がいた。ろくに手入れされていないぼさぼさの中年男と野球帽を反対向きに
かぶった少年、そのほかにも多く人間が音をたてないようにこそこそと作業を行っている。
「戦艦の大気圏脱出用ブースターの準備はこれでOKだ。あとは電装系の最終チェックと、MSの搬入だな。」
「ありがとう。あとは自分たちでできるから、あんたらは自分の艦に戻りなよ。」
「おう。しかし、お前は大した奴だな。」
「見た目は子供でも、腕とアイデアは一流だぜ?」
「ハハ、違いない。」
マードックはキッドのセリフに思わず笑みが漏れた。相手は13歳の彼からすると甥っ子ぐらいの年しかないのに腕は彼と同等、
いやそれ以上かもしれない。自分も負けてられないと新たに気合を入れなおし、マードックは自分の艦へと走って行った。
「さて、こっちも急いでMS積み込むぞ!」
『ウィースっ!!』
ロココやナインなど、キッドが従えるメカマン軍団が小さいながらも力強い返事をする。出発は夜明け、残り時間が少ないからと言って
焦ることもなく、彼らは仕事をこなしていった。
一方その頃、アークエンジェルとエターナルも着々と発進準備を進めていた。ジャンクパーツからでっち上げた即席のブースターの
確認作業を行うブリッジではそれぞれ今回発進する艦同士を通信で逐一情報の交換を行う。
「エターナルはあと1時間半ほどで準備が終わります。」
『アークエンジェルも1時間かからない程度には。』
『我々はあと2時間はかかる。』
「でしたら、先陣はマリューさん達でお願いいたします。」
『わかりました。』
『了解した。しかし、本当にいいのか? 勝手に戦艦を持ち出して。』
「ルーファスさんはわたくし達に言いました。」
メインスクリーンに映るジャミルとマリューを前に、艦長席に座るラクスはクスリと笑う。全く問題ないと言いたげな表情にジャミルもマリューも閉口した。
「君たちの作戦は受け入れることはできない。そして、君たちが勝手に行動するのであれば、我々もそれを止めないと。」
『つまり、最初から彼は黙認するつもりだったと?』
「あの方も心の中では戦争を止めたかったのかもしれません。しかし、今の立場があるから自分で動くことができなかった。」
ルーファスはラクス達に今の北アメリカ大陸の状況を教える際に本当に熱く語っていた。彼の平和を思う気持ちにウソがあるとは思えない。
しかし、組織の長である彼が動けばそれは組織で動くことでなり、バルチャー連合が動けば当然新連邦も動きを見せる。そんなリスクがありすぎる策をとるよりも、
まずは現状を維持することを彼は選んだにすぎないのだ。
そしてラクスもその選択を否定はしない。
『本人にその真意を聞く時間は、残されていないようね…。』
『もし仮にそうであれば、我々はこの作戦を何としても成功させねばならない。ルーファス殿の思いを我々は託されたも同然だ。』
「そうですわね。行きましょう、戦争によって互いに傷つけあい、未来を閉ざさないために。」
東の空が朝焼けに染まり、山の峰から白い太陽がようやく顔を見せ始めたころ、3隻の戦艦が宇宙へ向けて発進した。1隻目は大天使を表す“アークエンジェル”、
2隻目は永遠の平和という願いを込められた“エターナル”、そして最後の3隻目は答えを求めてさすらう自由の箱舟“フリーデン”であった。
乙!
新作キター
保守入ります!!
GX氏乙。
ついでに業務連絡、GX-P管理人様へ
第百二十二話が収録されていません、至急ご確認を。
保守
>>90 > 375 名前: ◆AWGx990A9U 投稿日: 2011/01/26(水) 20:45:54
> プロバが規制くらってるのでこちらで
>
> 風景画スレの90さんご指摘ありがとうございました
勝手にコピペったけどまずかったかしら
最近まともな感想ってないのか…?
まぁ作者の描写にケチ付けるとかいう話じゃなくて
具体的にどこが良かったくらいは書いてもいいんじゃないかと…
誰がどう言おうと、もう少しでこの物語も終わりです…。
長かったなぁ… 感傷に浸るのは後にしよう
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(前編)
「総力を挙げて、ゆがんだオールドタイプ共に鉄槌を下せ!!」
「ニュータイプ主義者どもに、真の正義を知らしめるのだ!!」
ザイデルとブラッドマン、それぞれの総大将の掛け声の下、月面基地をめぐる戦いは幕を挙げた。15年まえにも同じように
それぞれの思いを胸に行われた“戦争”という行為。母なる地球にあれだけのダメージを与えても、15年という長い時間をかけても、
人は変わることができないのだろうか。
「戦火の中に、真実はあるのだろうか…?」
ランスローの目には2人の総大将の大義よりも、目の前に広がる地獄のような光景のほうが胸に響いた。
革命軍が来るよりも早く月面のマイクロウェーブ送電施設へたどりついたミネルバ一行は、上空で繰り広げられる戦いを静かに見守っていた。
「アビー、戦況は?」
「今はまだ拮抗しています。両軍のMS、戦艦の数はほぼ同数。ただ革命軍は荷粒子反応弾なども使用しているため、火力では革命軍が有利です。」
「そう…。」
タリアはアビーの言葉にサテリコンの基地を破壊された時の光景が思い出された。
と同時に疑問が浮かぶ。サテリコンの当時の目的はダリア作戦の阻止であった。なら彼らの最終目標は一体何だったのか。
現ザイデル政権の打倒か、自らの独立か。彼女の知る限り、彼らはそんなことを考えるような人たちではない。となれば考えられるものは一つしかない。
“戦争のない未来”を作ること。それが戦争を体験し、つらい思いをしてきた彼らの切なる願いだ。
「彼らの思いは、天に届くのかしら…。」
戦争で消えていく命、それを彼女は知っている。ならば2人の指導者のために多くの人たちが本当に戦う必要があるのだろうか。タリアの胸中には
ザイデルとブラッドマンに対する強い憤りがこみ上げてきていた。
「しかし、我々はこれからどうすれば…?」
「アーサーそんな声を出さない。士気が下がるわ。」
「す、すいません。」
「…基地の防衛システムが先日革命軍に対して作動した以上、ここは今のところ安全と判断します。今は、上空の戦いを静観しましょう。」
アーサー同様、今後の見通しが立たない現状にタリアも不安な気持ちはある。だが今はまだ動くべき時ではない。勝負の時までのあとわずかな時間を
彼らはじっと待つのだった。
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(中編)
ビームスパイクがクラウダの強固な胴体をとらえる。だがスパイク自体の持つ推力ではクラウダの幾重にも重ねられた装甲を
貫くことはできない。
「ならば!」
レジェンドは胴体に打ち込まれた楔の尻を蹴り上げ、無理やり貫かせた。
これで4機。革命軍の新型は動きがよく、また防御力も高い。だが武装はライフルとビームカッターしか持っていないため、
ソリドゥス・フルゴールを持つレジェンドを相手にするには役不足だった。
『良い動きだ、レイ少尉。』
「は、ありがとうございます。」
『私とオルバは先行する。君は周囲の敵の掃討を頼む。』
「了解しました。」
飛び去るヴァサーゴとアシュタロンを見送ると、レイは周囲に展開する敵機の数と位置を確認する。前後、上下、左右すべてが
戦いに支配された世界。戦士としての自分がいるべき場所。
かつての“自分”もこの場所で生き、そして死んでいった。彼は自分という存在に絶望し、世界に絶望し、人間に絶望していた。
自分は長く生きることは叶わない。おまけに自然の摂理とはかけ離れた方法でこの世に生を受け、誰からも愛されることなく、
誰からも望まれない人間だった。
それがかつての“自分”だ。
ドラグーンを展開して左上前方にいたジェニス舞台を一掃する。敵を倒すことに戸惑いもためらいもない。自分はかつての
“自分”とは違う。守りたいと思う者があり、その為に行動し、満足している。
たとえその守りたいと思う対象から“ありがとう”の言葉をもらうことがなくても、その対象が別の何かを見ていたとしても、
彼はそれでよかった。
不意に、頭に不快な感覚が走る。かつての“自分”がまだ生きていか頃、何度か感じたことのある感覚。かつての“自分”の物ではない。
もっと攻撃的で、強い敵意をはらんでいる。
「これは、何者だ?」
それを感じた方向に目を向けると、戦場に一条の光が伸びているところを見つけた。戦場を縦断するその光、この場にいるすべての人間が
その先に目を向けたに違いない。知っているのだ。その光が何なのか、この後何が起こるのか。
光の先にガンダムダブルエックスを見つけ、傍らにアークエンジェルとエターナルの反応を確認したことは言うまでもなかった。
「ムラサメ隊はアスハの譲ちゃんの援護を! 俺は先行する!」
『一佐はどちらへ?』
「ああ、ちょっと知り合いに挨拶してくる!」
そう言ってネオは黄色く塗装されたムラサメを新連邦軍が展開する宙域へと向けた。目的は一つ、どうしても確認したいことがあったからだ。
ダブルエックスから転送してもらったデータのおかげで、革命軍のMSのデータも新連邦軍のMSのデータもほぼ最新の状態だ。機体識別に
アンノウンの文字はない。
しかしそのデータ上には無いものでネオは動いていた。頭に響く不快な感覚、ずいぶん前から感じていて、最近は全く感じていなかった感覚だ。
この感覚は忘れない。忘れたくても忘れることのできないものであった。
「まさか、あのクソ野郎がこっちに…?」
そんな不安が頭をよぎる。彼の知る限り、彼の言う“クソ野郎”は2年前に跡形もなく消えたはずである。その“クソ野郎”が生きているとなれば、
彼は確認せずにはいられなかった。
「…死にぞこないは、俺も同じだが…。」
レーダーの機影よりも自分の感覚を優先して彼は機体を進める。どの道機体を着ただけではパイロットが誰なのかわかりはしない。よほどのエースか、
運命の糸が繋がっていない限りは。
「見つけた!」
この不快感を発する相手は間違いなく眼前にいる灰色の機体に乗っている。この強まる不快感、間違いなくあの“クソ野郎”だ。
「ラウ・ル・クルーゼ!」
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(後編)
「ラウ・ル・クルーゼ!」
因縁の相手の名を叫びながらネオは操縦桿を操る。ムラサメはビームサーベルを右手に構え、灰色のドーム型バックパックの機体に
切りかかった。相手は左手のビームシールドを展開して攻撃を受け止めると、音声回線を開いてネオに叫んだ。
『何者だ!?』
「俺を忘れたか? お前の因縁の相手だぜクルーゼ!!」
『俺は、ラウじゃない!!』
ビームシールドを使ってムラサメをはじき返すと、ライフルでけん制して距離をとってにらみ合った。不快感の発信源は奴だ。
彼も間違いないと確信した。
「ラウじゃない? じゃあおまえは誰なんだ!?」
『俺はレイ・ザ・バレル、ラウ同様、うつろな存在であることは間違いないが、俺はあの人とは違う!!』
「…おまえも親父のクローンかよ!」
一定の距離を保ったまま両機は戦場を移動する。2人の戦いに割って入ってくる者はいない。二人だけの戦いがそこにはあった。
「貴様はフラガ家の人間か!」
『俺はネオ・ロアノーク、ムウ・ラ・フラガじゃねぇ!!』
「なら、もう何も言わん。俺はおまえを倒す。それだけだ。」
『やれるものならやってみな!!』
2機のMSは互いをただの強敵として認識し、戦いを再開する。血のつながりも不幸な宿縁も今は関係ない。敵を倒す、彼らの間に
残った言葉は実にシンプルでわかりやすい物だった。
「ダブルエックスは月面基地へ向かいます!」
「機関最大、フリーデン、アークエンジェル、エターナルはこのまま月を目指します。」
「了解!!」
宇宙戦艦の操縦は今回が初めてで、しかも先日マニュアルを覚えたばかりのシンゴはとても初めてとは思えない見事な操艦で
フリーデンを月面へと向かわせる。
前も後ろも敵しかいない。ならば、前を向いて進むしかなかった。
『フリーデン、一度補給に戻る!』
レオパルドのロアビィから通信が入る。先頭に入ってすでにかなりの時間が過ぎている。いくら機体がよくても、燃料や
弾薬がなければただのガラクタでしかない。
サラはレオパルドが抜けた穴をパーラとカリスにカバーするように指示を出す。官庁不在で艦が沈んだなんて話をしなくて
済むようにするために彼女は必死だった。
「シンゴ、艦の損傷率が上がってる、操艦でかわせる分はできるだけかわして! MS隊は艦の前方に展開、後方の敵は
アークエンジェルとエターナルに任せます!」
「了解、荒っぽくいきますよ!」
『エアマスター先行する! パーラBパーツよこせ! 機動性とミサイルで敵を蹴散らす!!』
『わかった!』
そして彼らも必死だった。戦場にいるものすべてが必死だった。
15年前から人間は、この有り余るエネルギーを他者を倒すために使ってきた。生物として余裕があるから人間はおかしなことをする。
余裕がなければそんなことを考えず、ただ目の前のことに集中するのだ。
しかし余裕があったからこそここまで進化できたともいえる。余裕がなければ周りを見渡すことができない。見渡して、自分と比べて、
やる気を出す者もいる。もちろん自分よりもすぐ他者を頼るものも、またそれをねたんだり、自分の力のなさに落胆したりする者もいるだろう。
10人の人間が存在すれば10通りの考え方があるのだ。しかし彼らは他者の考えを認めようとせず、それを悪とし、亡き者にしようとする。
“人類の革新”なんて言葉に彼らは今も踊らされている。自分の話で彼らはその鎖から解放されるのだろうか?
その問いに答える者はいない。全ての始まりを知っていても未来はわからない。予知できても変わることはよくある話だ。
D・O・M・Eはそうひとりつぶやいたのだった。
今回はランスローの台詞か、GJ
そして投下乙
二波乱ほど残ってそうですな、楽しみにしてやす
乙!
乙です。
にしても…アニメですら、まともに取り扱われず、スパロボでもRにしか出なかったGファルと合体したエアマスBをココで出してくれるとは、なんつー俺得。
やっと規制解除された〜。
リアルタイムで読んでいたのにすぐに書き込みが出来ず申し訳ない。
作者様、投下GJでした。
このまま最後まで突き抜けて下さい。
さてここでザフト勢力も乱入して新連邦にまわるのか
それともX終了後あらためてCE世界で決戦をするのか・・・?
アクセス規制のおかげでなかなか更新できず…
最近規制が多いような気がするのは気のせい?
それはさておき投下 内容を詰めすぎな感満載ですがご了承を
第百三十話『あんたたちは間違っている!』(前編)
ジャミルに助けてもらった。カリスにも助けてもらった。以前は敵として相対したランスローにも助けてもらった。
今の自分はいろんな人のおかげでここにいる。
ティファと出会う前の自分、一匹狼として行動していたころの自分だったらここまで来る事ができただろうか?
同じように宇宙を目指し、この眼下に見える月面基地まで来ることができただろうか?
まず無理だろうとガロードは思う。そもそもティファに出会わなければここに来る理由がない。理由がなければ物語は始まらない。
ガロードはコックピットのサブシートに座るティファとともに、物語の“ゴール”とも言うべき月面マイクロウェーブ送電施設へと機体を進めた。
「ダブルエックスが月面に到着しました。迎えを出しますか?」
「その前に通信回線を開いて頂戴。こちらの識別信号をきちんと出してね。」
「了解。」
『艦長! 俺たちはいつまでこうやって隠れていなきゃいけないんですか!?』
タリアの指示に対するアビーの返事と、ブリーフィングルームでノーマルスーツに身を包んだ状態で待機していたシンからの通信はほぼ同時だった。
シンとルナマリアには万一に備え待機の指示を出してある。その待機時間もすでに一時間を越え、シンは痺れを切らしていた。目の前でかつての仲間が
必死に戦っているにもかかわらず、自分たちは安全な場所で見ているだけということが彼は我慢できないのだ。
仲間思いといえば良いことではあるが、彼は軍人だ。場合によっては躊躇なく仲間を見捨てる決断もしなければならない。
「…シン、今通信をつないでいる最中だからちょっと待ちなさい。」
シンは以前に比べると物腰が柔らかくなり、刺々しさも感じさせなくなったが、こうやって誰かに突っかかる所や感情が表に出やすい所はぜんぜん
変わらない。
“表裏がない”という美点なのか、“子供”という欠点なのか、長い間彼を見てきたタリアも判断に迷った。
アビーがダブルエックスと通信をつなぐと、ブリッジにあるメインモニターに見知った顔が映し出された。
「久しぶりね、ガロード、ティファ。」
『あんたたちも無事だったんだな。』
「まぁ、何とかね。それで、今回のあなたたちの目的は? 何もなくてここに着たりしないでしょう?」
『俺たちはD.O.M.Eを目指してここへきた。』
「D.O.M.E?」
『新連邦と各面軍のお偉いさんたちも、それを目指しているんだ。』
「アーサー、私たちの基地調査結果に、そんな物の名前はあったかしら?」
「いえ、ありませんね。」
「となるとまだ調査できていないエリアか…。」
「艦長、D.O.M.Eと名乗る人物から電文です。」
アビーは受けた電文を印刷してタリアに手渡す。文面を確認すると、彼女は立ちあがった。
「アーサー、しばらくの間艦をあなたに預けます。整備班とルナマリアは現状のまま待機、私とシン、保安クルー6名はこれからD.O.M.Eに指定された
エリアに向かいます!」
第百三十話『あんたたちは間違っている!』(中編)
ガロードとティファが一番に指定エリアに到着した。
その場所はD.O.M.Eという名の通り、半球状の天井の部屋で、入り口が四か所ある以外、何もなかった。壁面を下から照らすライトのおかげで視界は確保できているものの、
遮蔽物のないこの部屋で銃撃戦にでもなったらどうしようかとガロードが内心心配していると、左、右、正面、後ろ、の四か所の入り口から革命軍、新連邦軍、フリーデン、
アークエンジェル、エターナル一行、そしてミネルバ一行が姿を見せた。
「ガロード!」
「シン!」
ダリア作戦から約2週間、それぞれの目的のために行動していた彼らはようやく再会することができた。喜び合二人を見つつ、ジャミルはタリアに歩み寄ると利き手を差し出した。
「フリーデン艦長のジャミル・ニートだ。部下が世話になった。」
「ミネルバ艦長タリア・グラディスです。私たちもシンがお世話になりました。あなた方のおかげで、彼は大分変わりましたし。」
「変わった?」
「以前の彼は、常に刃をさらす“切れすぎる剣”でした。切れすぎる剣と切れ味のよい剣は違います。」
「私は何もしていない。彼が変わったというのなら、それが彼の“力”となのだろう。もともと持っていた素質が開花しただけにすぎない。」
ジャミルの後ろにマリューとラクスが立つとタリアはそちらに視線を向ける。互いに敵としてこれまで何度も銃を向け合った仲の3人。内心いろいろ思うところはあったが、タリアは右手を差し出した。
マリューもラクスも、それぞれにその手をとった。
「彼らとはどこで?」
「北アメリカで共に戦った。知り合ったのはつい先日の話だ。」
「なるほど、宇宙にいては会えませんね。」
「ここは、私たちのいざこざを持ち込む場ではありませんので、どうか一つ。」
「わかっています。お互い、目的は同じですからね。」
タリアもマリューも表情は穏やかだ。その様子を見てラクスはほっと胸をなでおろした。
その一方で、罵声をぶつけ合う二人もいた。
「ブラッドマン、貴様たちオールドタイプの愚かな行動が人の歴史を狂わせたのだ!! なぜこんな、ファーストニュータイプを遺伝子レベルまで解体する必要があったのだ!?」
「これは、お前たちニュータイプ主義者たちの台頭を阻むためだ! スペースノイドがニュータイプだという貴様たちの愚かな考えを止めるために!!」
「ニュータイプは人類の革新! それはまごうことなき事実!!」
「黙れ!!!」
二人のやり取りを聞いていたジャミルは一喝する。彼は昔、力を持っていた。だからこそ、二人の話す言葉の意味を理解し、そして納得することができなかった。
「ニュータイプは神ではない! 主義主張を語る道具でもない!! ましてや、オールドタイプに利用されるべき存在でもない!!!」
ジャミルがここまで激怒する姿は、フリーデンの中で一番身近にいたサラですら見たことがなかった。
彼はニュータイプを求めて旅を続けてきた。ニュータイプと言う存在が一体何なのか。自分という存在に対する答えがこの二人の答えだというのならば、あまりに惨めで報われない。
自分では神のように万能ではないし、道具のように何も考えずに使われるだけの存在ではない。
「ニュータイプが何なのか、本人に聞いてみてはいかがですか?」
壁面に描かれた模様をじっくりと眺めながらデュランダルはぽつりといった。
当然、ザイデルもブラッドマンも黙っていない。
「復活できると言うのか? この状態から!?」
「ありえん! そんなことができるわけがない!!」
「この壁面の模様は遺伝子の塩基配列を表しています。これをもとにこの遺伝子を持つ細胞を培養すれば…。」
「…クローンか。しかしそれでは、まったく同じ遺伝子を持った全く違う人間を作り出すことになるぞ? ひとりの医師として、その行動は容認できんな。」
デュランダルの言葉を聞いたテクスは意味を理解し、嫌悪した。
皮膚の移植や臓器の移植で体の一部を複製することは戦前の医学界でも聞いたことがあるが、ひとりの人間を丸々全て複製したという話は聞いたことがない。技術的な問題ではなく、倫理の観点から
問題があるのは明らかだからだ。
「私の側近に一人、そのクローン体がいます。」
「…! レイ!?」
シンは思わずデュランダルの傍らにいたレイを見た。表情は変わらない。いつもの冷静で、物静かな彼の顔がそこにあった。
第百三十話『あんたたちは間違っている!』(後編)
「そいつがクローンだと言うのか!?」
「はい、彼はかつての私の友人のクローンです。」
おお、とザイデルとブラッドマンが感嘆の声を上げる一方で、シンは思わずこぶしを握りしめた。
今レイは、人間としてではなく“クローンの成功体”としてしか見られていない。彼の人格が完全に無視されている。
「デュランダル議長。」
「ラクス・クライン、今の私は議長ではないよ。」
デュランダルはラクスのほうを見ようともしない。二人の指導者が向ける崇拝のまなざしをその身に感じ、さも満足そうに微笑んでいた。
「あなたは何を求めているのですか?」
「何を求める? 私の求める物は世界の平和だ。」
「その為に、彼を踏み台にすると?」
「歴史の中では些細なことだ。後の世ではこの行動が必ず評価される。」
「…違う!」
シンはデュランダルの言葉を否定した。それを聞いたデュランダルが彼に向き直ると、シンは怒りのまなざしを向けた。
「議長も、ブラッドマンもザイデルも! あんたたちは間違っている!!」
デュランダルの傍らにいるレイもシンを見つめた。彼の沸点が低いところは以前から全く変わっていない。ただ、今回は自分のことで彼が怒りをあらわにしている。
レイにはそれが何だが不思議な感覚だった。
「レイはクローンだって話は本人から聞いた。けど、それが何だって言うんだ!? レイは冷静で、容赦なくて、まじめで、でもなんだかんだで周りを見て無言でフォローしてくれる。
俺にとって、レイは大事な仲間だ! それを、あんたたちは物を見るような眼で見て!!」
怒りの表情のままシンは一歩踏み出す。それに気圧されるようにザイデルとブラッドマンは後ずさりした。
「ニュータイプは力を持っているからオールドタイプの道具なのか!? 力を持っているから神として崇めるのか!? あんたたちは“力”や“能力”に目を奪われえて、その人たちの
心を見ていない! 力があるから何かをするんじゃない、“やりたい”と思うからやるんだ!!」
その最たる例がガロードとティファだろう。ガロードはオールドタイプ、つまり“力”を持たない人間だ。しかし、それでも彼は彼なりに必死で未来を変えるためにがんばってきた。
ティファも同様だ。力持っていたからこそあきらめていた未来。それを変えるために、彼女も彼女なりの努力をしてきた。二人はいろいろな力に翻弄され、それでも今こうしてここにいる。
しかし彼らのように理不尽を乗り越えた者は少ない。シンの脳裏には理不尽な思いをした人たちの顔が次々と浮かんだ。
父、母、妹、ユニウス7落下で被災した人々、インド洋で基地建設に協力させられていた市民、ガルナハンの人々、そしてステラ。
“こちら側”に来てから、コロニー落としで被災した地球の人々、カリス、ルチル、エスタルドの市民、サテリコンのメンバーたち、そして山奥で暮らし自分のせいで生活がめちゃくちゃに
なってしまったサクラ。数えだしたらキリがない。
「ゲームや本の中の架空の世界じゃないんだ!! 復活させればいいだの複製すればいいだの、そんなに簡単に命を語るな!!!」
失われた命はもう戻ることがない。それの重さをよく知っているからこそ、シンは彼らの言動が我慢ならなかった。
しかし、そんなシンにティファは静かに信じられないことを言った。
「いいえ、D.O.M.Eはまだ生きています。」
その場にいた全員が彼女のほうを向いたのだった。
おおっ、いよいよクライマックスだ!
投下GJです。
乙です
しかしひとつ違和感が
この時期のジャミルは「ガロード達」か「仲間」と言って「部下」とは言わないかと
乙
こちらのラクスはきれいらしいが、キラはどんなタイミングで登場するんだろう
それ次第でまた相当、場が混乱するんだろうな
そろそろ保守を・・・
そろそろ保守しとかないと危なくないか?って事で保守だー
>>108-109保守ドモです。
もうしばらくの間お付き合いください。
第百三十一話『デスティニープランには反対です』(前編)
「D.O.M.Eはまだ生きています。」
ティファの言葉に一同は驚きの表情を浮かべた。
D.O.M.E、この世に最初に生を受けた“ファーストニュータイプ”と呼ばれる存在。その力故に多くの人に影響を与え、今なお争いの火種となっている人物。
遺伝子レベルまで解体されても生きているということはにわかに信じられない話であった。
「D.O.M.E…。私の心を感じてください…。」
彼女は眼を閉じて静かな口調で語りかける。誰も彼女の行動を邪魔しようとする者はいなかった。皆知りたいのだ。D.O.M.Eとは何なのか、この先にいったい
何が待っているのかを。
不意に、天井が明るくなった。つい先ほどまで何もなかった天井の天頂、そこには壁面に取り付けられているライトとは比べ物にならないほどの明るさの球体があった。
『私はD.O.M.E…。かつてニュータイプと呼ばれた者…。』
その球体には口が付いているようには見えない。
だが確かに、その場にいた全員が彼の声を聞いた。
『ようやくbit MSの処理が終わったね、兄さん。』
「彼らはD.O.M.Eの使いなのだろうが、我々はニュータイプに対しての答えなど求めていない。」
『僕たちの望みは。』
「我々が正当に評価される世界だ。」
シャギアとオルバは声を出さずに笑った。
自分たちが求める世界を作るために、いやな奴に頭を下げ、能力のない人間の命令に従ってきた。その長い我慢の時が終わり、待ちに待った春が来る。
目標実現のためにつづけた努力、周到に策を練る知力、それを実行し成功させる行動力、どれが欠けてもここまで来ることはできなかっただろう。
そう考えると、彼らは“努力の人”とも呼ぶことができるだろう。目標の実現のために行動するものは数え切れないほど存在する。農業で自分の畑を持ちたい、
漁業で自分の船を持ちたい、自分の秀でた料理の技を存分に披露する自分のカフェを持ちたい。それぞれがそれぞれの目標のために努力し、それを成す。その点では
彼らはほかの人間と比べても特出した点はない。
ただ違うのは、彼らの目標が自分たちを認めなかった世界に対しての“復讐”であるということと、その為に世界を滅亡させようという常人には理解することの
できないきわめて特殊な考え方を持っていることだ。
月面へ工作部隊の隊員たちが着陸艇に乗って降下を開始する。順調にいけば一時間もたたないうちに自分たちは最高にして最強の力を手に入れるのだ。
シャギアとオルバは固まる胸の鼓動を感じつつ、今しばらくの間時が来るのを待った。
その傍らにはキラ・ヤマトの姿もあった。
『戦争か…。よくも飽きずに続ける物だ。』
D.O.M.Eは十五年前と同じように戦争を続ける人間に対して率直な感想を口にした。
D.O.M.Eが姿を見せたそのすぐ後、その場にいたすべての人たちが別のエリアにいた。“別の空間”と表現したほうが正しいかもしれない。なにしろそこは天井も壁もなく、
床すらもない。ただただ光の光点が通り過ぎていくトンネルのような空間だった。
一同がこの今まで見たことのない空間で右往左往していると、先ほど現れた光の球体がティファの両手の中に現れた。
常人には無い“力”を持っていた故にその人生が悲惨なものになった人間。彼は先の大戦において間接的な最大の加害者であり、直接的な最大の被害者だ。十五年間、
死ぬことすら許されずここに縛り付けられているのだから。
第百三十一話『デスティニープランには反対です』(中編)
『僕がまだ人間だったころ、人々は価値観を失っていた。そんな時代の中で、僕の力は新たな価値観となってしまった。』
彼はほかの人には無い特殊な“力”を持っていた。なぜ彼が力を持っていたか、それは誰にもわからない。だからこそD.O.M.Eは言う。“自分がいなくなると同時に
ニュータイプという言葉も消えるべきだった”と。
しかし欲望の強い人間はその次を、 “第二にD.O.M.E”、“第三のD.O.M.E”を求めたのだ。
自身の心の支えにするために、あるいは自分の未来を変える道具にするために。
「ニュータイプは未来を作らないのか?」
「ニュータイプは我々スペースノイドにとって、信じるべき未来! 今更それを否定しろと言われても、それは不可能だ!」
ブラッドマンもザイデルもニュータイプであるD.O.M.Eから出た言葉に困惑する。前大戦以前から信じていたものを否定されたのだ。
それは彼らのそれまでの人生を否定されたと言っても言い過ぎではない。
『ニュータイプは人類の革新ではない。すべては幻だ。』
「ならば、私にも答えをくれ。」
D.O.M.Eの言葉を聞いていたジャミルが震える声で呼びかけた。十五年前、少年だった自分が当時垣間見た未来。それがすべて幻だと言うならば、この十五年という
人生の半分が意味のないものになってしまう。
苦しみに苦しみぬいたこの半生が意味のない物だというのなら、ジャミルはやり切れない思いだった。
『そう、全てが幻だ。これからはニュータイプという言葉を捨て、新しい未来を作ってほしい。』
新しい未来。それはどんな未来だとジャミルは考えた。これまでニュータイプにこだわり続けて生きてきた。急にそんなことを言われても、イメージが浮かぶものではない。
唯一浮かんだ物は“白紙の地図”だった。
難しいことではないとD.O.M.Eは言う。その良い例がガロードだと。
『ガロード・ラン、君はティファの予知した未来をことごとく変えてきた。』
「俺はただ、ティファと一緒にいたかっただけで…。特別な力なんてないし。」
『その心の強さが新しい未来を創るために必要なものなんだ。それは戦後に生まれた世代が共通して持っている力なんだ。』
「…強い思いは、未来を変えるのか?」
それまで静かにD.O.M.Eの言葉を聞いていたシンが初めて口を開いた。ニュータイプという過去の言葉にとらわれてそれに固執する人間には未来は作れない。“何かをしたい”と
思う未来を見る人間には道が開ける。D.O.M.Eはそう言っているように感じた。
『そうだ。もちろん、すべてがそうだとは言わない。シン・アスカ、それは君が一番よく知っているはずだ。
守りたくても守れなかった物、助けたくても助けられなかった物、倒したくても倒せなかった物。インパルスで、ディスティニーで、彼が戦場を戦い抜いた中で取りこぼしてしまった
望みが脳裏をよぎった。
「取りこぼしたくなかったら、努力するしかないってことか…。」
『非情だが、全ての願いが叶う世界は存在しない。誰かが幸せになれば、誰かが不幸になる。』
戦場で自分が勝利すれば相手は敗北する。それと同じだとシンが納得する一方で、デュランダルは反論した。
「ではD.O.M.Eよ、世界から戦争をなくし、誰もが幸福に生きることができる世界は幻だというのか!?」
『…戦争をなくすことは可能だ。しかし、“君たちの世界”では、まずナチュラル、コーディネイターの確執がある。それを無くさない限り、前には進めない。』
「簡単に言ってくれるな。世界は歌のように優しくはない! 一体どうしたらいいのだ!!?」
「時間をかけるしか無いんじゃない?」
D.O.M.Eに対して語気を荒くするデュランダルの手をタリアはそっと握った。以前と変わらない柔らかく華奢な手の感触に、彼は思わず彼女を見た。
第百三十一話『デスティニープランには反対です』(後編)
「私たちだって、最初からわかりあえていたわけではないでしょう? 時間をかけて、ゆっくりと。人間ほど馬鹿な動物なんて、ほかに無いんだから。」
「人は相手を思うあまりいらぬ誤解をし、愛ゆえに憎む。他の動物には見られない特性ではあるな。」
タリアの言葉にテクスも同意する。他の者も同じようにうなずいた。
他の動物は夫婦、親子、ハーレム、グループなどの単位で活動をするが、人間の国のような規模で活動するものは皆無だ。理由は定かではないが、
それは相手が多ければ多いほど、一人一人の多くを理解することができなくなるためではないか。上辺しか理解しないから誤解をし、憎しみ合い、
戦いになる。
「戦争をなくすためには相手を深く理解しろと? 上辺だけで判断するなと言うのか?」
「議長だって、最高評議会議長としての側面以外にいろいろな自分をお持ちのはずです。」
シンはデュランダルに歩み寄った。表情は晴れやかで、瞳に迷いもない。
「俺は、デスティニープランには反対です。遺伝子で能力を判断することは、上辺だけで人を判断するのと同じだと思います。でも、議長の平和を
望む気持ちには賛成です。」
「シン…。」
「ナチュラルだって、コーディネイターだって、いつかはあそこの二人みたいに深くまでわかりあえますよ。」
シンはガロードとティファを親指で指さす。この二人とてすべてが順調だったわけではない。喧嘩もしたし、すれ違いもあった。
しかしそうやって時間をかけたことで、彼らはわかりあえた。
彼らはオールドタイプとニュータイプだ。だが、それ以前に二人ともただの人間なのだ。その気になればわかりあうことはたやすいのかもしれない。
「…シン、君の言っていることは理解できる。しかし、事はそううまくは運ばんぞ?」
「簡単にできることであれば、もう誰かがやっているはずです。難しいことであることは承知しています。でも誰かがやらなきゃ、何も変わりません。」
シンの切り返しにデュランダルは苦笑する。政治家の間ではまず見ることがないまっすぐな答え。それゆえに相手の心に届く速度も速いのだ。デュランダルには
返す言葉がなかった。
「D.O.M.E、あんたはそれを教えるために俺たちをここへ?」
『いや、こちら側へ君たちを呼んだのは僕ではない。』
「え? じ、じゃあどうやったら俺たちは戻れるんだ?」
『わからない。その時ではないのか、ピースがすべてそろっていないのか…?』
「ピース?」
シンは思わず周りを見渡した。ピースという言葉に引っかかったのだ。“あちら側”の出身で、今この場に居ない者。
「…フリーダム!!」
それは、一人しかいなかった。
GJ!
シン達をAWに呼んだのがドメ公じゃないとすると一体誰なのだろうか……。
ソフィアさんの出番も含めラストまで目が離せそうにないな〜。
書き込みできない!?
乙!
乙っす。
かのSSと違ってここではドメが関わってるのではないのか。
とりあえずドメさんは議長だけでなくラクシズ一派にもなんか言ってやってくれ
AWにきて多少ましになったのもいれば極端にヤバくなったのもいるからw
いやドメさんは右から来る電波を左に華麗に受け流しているんだ
キラは叩き直されて非情な戦闘マシンになったらしいとあるにはあるが
その実現在の内面がほとんど窺い知れないままだからな。
サテライトシステムを掌握して有頂天になりつつあるフロスト兄弟も
扱いやすくなったと油断して事実上ノーマークにしてるようだし
そこで善行か悪行かわからないが何かとんでもない事しでかしてくれそうな。
乙!保守するよ
こちらのキラはどんな選択をするのか
自分の手を汚す覚悟を身に着けているだけ同人アニメよりは期待できるが
斜め上に逝ってない事を祈る
作者さん大丈夫かな?
いやいつも一緒に読んでるお前ら全員もだが。
>>122 幸いというかなんといいますか、私のところは何の被害も出ておりません。
しかし、今回の地震の被害の大きさを考えると…
被災された方々にかける言葉が見つからないです。
読者の方だけでなく、被災された多くの方の生存を願っています。
第百三十二話『僕の望む世界には程遠い』(前編)
D.O.M.Eは自分のいるべき場所へと戻って行った。ニュータイプと呼ばれる者がいなくなった今、この場に残る必要はもうなかった。
ニュータイプは幻だと彼は言った。最初の“彼”の力に魅入られた人々が作り出した幻、それがいつの間にか一人歩きを始めた結果、
多くの人々を傷つけることになってしまった。
人々は神などの“完全な存在”を信じる傾向がある。宗教などはその最たる例だ。
人がなぜそのような存在を求めるのか、理由はいろいろなものがあるが、その根底にあるものはすべて同じではないか。
つまり、自分の欠く物に対しての羨望。人間という不完全な存在であるがゆえに完全を求める気持ち。
シンはD.O.M.Eが去った後その場に立ち尽くしているブラッドマンとザイデルを見てそう思った。彼らは結局、自分の力が及ばず
実現することのできなかったことがらがあったのだ。
だから力がほしかった。その過程でニュータイプという存在を知り、それぞれに利用した。
人に頼ることは悪いことではないし、自分にできないことを他人ができるとしたら相手を尊敬し、憧れることは普通の反応だ。
しかし、彼らはそれにしがみついてしまった。自らを磨き、努力することをしなかった。
だから今頼るものをなくし、心の支えを失って立ち尽くしている。
もしディスティニープランが実行され、自分の能力が否定されたとき、自分も同じように呆然とするのではないか。
自分の能力だけですべてが決まる世界。シンはそれを否定した。それは自分で自分の道を開拓することを意味する。しかし不思議と不安は少ない。
失敗もするだろう。苦労もするだろう。しかしそれ以上にその中で得るものは多い。それでこそ、“本当の自分”を作ることになる。
良い刀剣は良く打たれている。そしてそれが刃紋となり、味となるのだ。
「なぁシン。ナチュラルだのコーディネイターだの、さっきの話はなんだったんだ?」
ガロードは物思いにふけっていたシンに質問する。ナチュラル、コーディネイター、ディスティニープラン。これらの言葉は
ガロード達には本来全く関係しない語群だ。知らないのも無理もない。
「ナチュラルは普通の人間、コーディネイターは遺伝子操作を受けた人間さ。」
「遺伝子操作?」
「遺伝子は生物の細胞の中にある設計図みたいなもので、俺やアスラン、ルナはその設計図を一部書き換えて生まれた存在なんだよ、簡単に言うと。」
「…え〜と、難しいことはよくわからないけどさ…。」
腕を組んで頭をひねるガロードの中ではいろいろな疑問が浮かぶ。それをすることでどんなメリット、デメリットがあるのか。それ具体的にどんな方法で
行うのか。そんな処置をいったいどこで受けたのか。
そんな多くの疑問を押しのけてガロードの口から出た質問は、シンにとって意外なものだった。
「結局、シンがシンであることに変わりないんだよな?」
「…ああ、ティファがティファであるように、ガロードがガロードであるように、俺は俺さ。」
ガロードはその言葉を聞いて安心したらしく、大きくうなずいた。
第百三十二話『僕の望む世界には程遠い』(中編)
「副長! 中央の大型アンテナに高エネルギー反応です!」
「艦長にはまだ通信繋がらないのか!?」
新連邦軍と革命軍は互いの大将がこの基地から出てくるまでは戦闘を一時中断することになっていた。しかしそれも、新連邦軍の一部の部隊が
起こした勝手な行動でいとも簡単に再開してしまった。
それからすでに15分、今度はこの基地のアンテナに高エネルギー反応、そこから導き出される事象は“サテライトシステムの起動”だった。
予想外の事態にアーサーは困惑気味だったが、現状優先すべきことは情報収集と艦の防衛と判断すると、間髪いれず機体コックピットで待機する
ルナマリアに通信をつないだ。
「サテライトシステムが起動した? 間違いないの?」
『はい、月面上空のポイント2011に向けてマイクロウェーブを照射しています。なお受信側の機体は新連邦軍のヴァサーゴ、アシュタロンのようです。』
タリアたちがミネルバに戻る途中、その情報は飛び込んできた。
サテライトシステムは本来GX系統の機体にしか搭載されていない。だがそのシステムのオリジナルデータを持っているのは新連邦軍だ。それをコピー、
改良して簡易版を作っても何ら不思議ではなかった。
「あいつら、性懲りもなく!」
シンは思わず舌打ちをした。ヴァサーゴとアシュタロン。パイロットのシャギアとオルバの性格の悪さは彼もよく知っている。放置すれば今度は何をするか
わかったものではない。
「艦長!」
「アーサー、私たちもすぐに艦に戻ります。それから、ディスティニーの発進準備を。シンは直接格納庫に向かわせるわ。」
『了解!』
「シン、聞いての通りよ。あなたに彼らを止められる?」
「止めてみせます!」
通路を走りながらシンは強く言った。彼らにはシンも苦い記憶をさせられた。ディスティニーで完敗し、機体をボロボロにされたことが脳裏によぎる。
だがそんな事を思い出している場合ではない。彼らの行いを止めるために、これ以上ニュータイプという言葉に振り回される被害者を出させないために、
自身のプライドのために、彼は走った。
それはまさに“光その物”だった。目の前でヴァサーゴとアシュタロンが合体し、大型兵装“サテライトランチャー”を展開する。エネルギーチャージ完了後に
放たれたそのエネルギーはフリーダムのハイマット・フルバーストとはまるで比較にならないほどだ。
銃口の先にあったブラッドマンとザイデルの乗ったそれぞれの旗艦は跡形もなく消し飛ぶ。ゾンダーエプタ島を破壊したその威力を目の前にし、キラは確信した。
この力を自由に使えるとしたら、力で世界を支配できると。
マイクロウェーブ送電施設が必要だとは言っても、これだけの威力の兵器をしかも連射できるというのだから、まさに反則技だ。
基地から出航した3隻の艦のうち一隻がかろうじて攻撃をよけきる。フリーデン、今まで唯一サテライトシステムを装備しているGX系列のMSを所有しているバルチャー。
そして彼にとっておそらく当面の敵になるであろう存在。
フリーデンからMSが発進する。機体識別を確認すると、やはりあのダブルエックスだった。
『貴様らぁぁっ!!』
右のサイドアーマーからビームソードを引き抜き、サテライトランチャーを構えるヴァサーゴとアシュタロンに切りかかる。キラはフリーダムを割り込ませてビームシールドで
それを受け止めた。
第百三十二話『僕の望む世界には程遠い』(後編)
『なぜ沈めた? 味方の艦まで!?』
『奴らはここにきてなおニュータイプを求めた。それが理由だ!』
やはり、とキラは内心あきれた。シャギア・フロストとオルバ・フロスト。彼らの行動原理の大本になる物はニュータイプに対する執着心だ。
ニュータイプよりも劣る“カテゴリーF”と呼ばれる彼らにとって、ニュータイプは憎むべき存在であり目の上のたんこぶなのだろう。
彼らはニュータイプのさらに先を目指そうとはせず、彼らを排斥することで頂点に立とうとしている。
このままじゃダメだ。
キラは決心した。この二人に任せていては、世界は変わらない。人を殺して英雄になる世界は変革すべきなのだ。
その為には、自分は悪魔になると。
「二人とも早く! ここは僕が!」
『頼む!』
『命を捨てて阻め!!』
ヴァサーゴとアシュタロンがいく。キラはその姿を確認すると、別のシステムを起動する準備を始めた。
『なぜ邪魔をするんだ!? あいつらを止めないと!!』
「…どの道彼らに未来はない。」
『な、なんだって?』
ガロードはキラの返答に表情を変えた。未来がない。D.O.M.Eの言っていたものとは違うその言葉に悪寒を感じた。
『どう言う意味だ!?』
「サテライトランチャーはもう撃てない。」
システムがコックピット右側のモニターで次々にシークエンスをクリアしていく。システム名Moon Light Butterfly、通称“M.L.B”。
これが、彼が裏であの手この手を使って作り上げた最強の“ジョーカー”だ。
「彼らの望む世界は、僕の望む世界には程遠い。だから壊す。」
フリーダムが胸部外装をパージする。黒基調で塗装された胸部パーツの中に、ガロードが何度も見たことのあるパーツがあった。
「彼らはどこからサテライトシステム用のマイクロウェーブ受信アンテナを持ってきたと思う?」
『ま、まさかそれは!?』
「そう、彼らはゾンダーエプタに保管されていたジャミル・ニートのGXを無断で持ち出したんだ。でもね!」
GXの胸部につけられている緑色のパーツ、フリーダムには本来備えつけられていないそれが確かにそこにあった。
「彼らの受信アンテナとすり替えたんだよ。彼らの使っている物は一回限りの粗悪品。そして、これがオリジナルだ!」
サテライトシステムを持つ機体がさらに一機増えた。ガロードの表情がゆがんだことは言うまでもなかった。
まずご無事でなにより
変態兄弟がラスボス乗っ取られた?!!
ちょっと待て
MOON⇒月
LIGHT⇒光
BUTTERFLY⇒蝶
どんだけなネームだよおい(汗
乙!!ご無事でよかった、にしても
げえええ!!!
かつて数々の考察で恐れられていたキラのサテキャ入手がついに!!
キラの性根がどんな風に叩き直されているか、それ次第だがやはり不安しか感じられん
>人を殺して英雄になる世界は変革すべきなのだ。
これだけ切り取るなら結構な事のように聞こえるが、元からそもそも歪な
キラ式「不殺の精神」が恐らくハートマン軍曹型教育で鍛え上げられてるとなると
どんだけ凶悪な善意となるのかガクプルだ…
それはさておきご無事で何よりでした。
フリーダム系列がDXと似ていることを逆手にとった設定キター!
んでも別に新連邦がサテライトシステム再生産できないわけではないのでは?
ゲテモノズの改造は新連邦公認でやっただろうし新造のDXもある以上
ソフト面はともかくハード面はGX再利用するまでもないと思う。
また世界を変革するとか意味不明の供述を始めているが、
キラなりにこっちの歴史を学んで、ある意味現状の世界を創ったと言える
ジャミル機のシステムを使おうと思い立ったというのは理解できる。
ところで…両軍の旗艦はト書き一行で消されてしまったが議長はどうなった?
順当に考えてブラちゃんのお船に乗ってたりしたら…いやまさか。
>>131それ言ったらレイも…
つか、新連邦軍てサテライトランチャーを作る技術があったのになんで量産しなかったんだろ?
戦略兵器が数並べばそれだけで革命軍には脅威なのに
15年前の悪夢という意味も含めて
パイロットの反乱や機体の奪取によるリスクの軽減ってとこじゃない? GXも三機しか作ってないし。
あとあの時点じゃ月面基地を制圧できるか不明だから使えるかわからなかったんだろう
>>132 中継衛星改修してBATENが建造済みってんならともかくとして
現状マイクロウェーブ給電施設がDOMEのある月面基地しかないんだから
サテライトランチャーを増産しまくってもあんまり意味がないからじゃないかな
逆返せば、この時点でBATENが連合の手で改修済みなら増産されてたかもね
まあ、BATENの元になるのは前大戦中に完全消滅されず中波だった中継衛星の中の一基なので
この作品内ではそもそも未来にBATEN建造に至る歴史の流れ自体が
未然に防がれてる可能性もあるけど
書き込んでるのに書き込みが反映されない・・・
申し訳ございません書き込みできました。
更新乙です
もしローレライの海編でキラがフリーデン側に入ってたらどうなってたんだろうな
シンの言動などから自分の行っていた事の矛盾を知ってどう考えるんだろうか
あの時点ではまだ認めようとしないんじゃない?
骨の髄まで痛い目にあわなきゃ間違いに気づかない典型がキラだもの
皆さんこんちわ 規制で更新できず申し訳ありません。
つうわけでネタ投下
第百三十三話『私が何も考えずに走る番だ』(前編)
「オルバよ、この一撃が変革の序曲となるのだ。」
『いよいよ始まるんだね。僕たちの時代が。』
「そうだ。」
『わくわくするよ。』
「わたしもだ。」
シャギアはサテライトランチャーの引き金を引くことに何のためらいもなかった。今まで散々世界に否定され続けてきた彼らが、
今度は自分たちを認めない世界を否定する側になる。
この一撃で、世界が変わる。二人はそれが嬉しかった。
ビビー! ビビー!
ヴァサーゴのコックピット内にエラー音が響く。敵MSの接近を告げる警告音ではない。機体の異常を知らせる警告音だ。
シャギアは興奮に水を差され嫌な顔をしつつも手元の操作パネルを操作して異常箇所を確認する。異常個所は背面マイクロ
ウェーブ受信アンテナ。内容は、機能停止。
それを見たシャギアの顔が引きつったことは言うまでもない。シャギアの異変を感じたオルバは心配そうに兄を呼んだ。
『兄さん?』
「オルバ! 緊急回避!!」
『え? で、でもチャージが』
「受信アンテナが故障した! 今マイクロウェーブをうけたら我々はただでは済まん!!」
レーザー回線はすでにヴァサーゴの背面アンテナに到達している。マイクロウェーブ照射までの時間はあと4.03秒、照射開始後
到達までにかかる時間は0.12秒。
照射開始とほぼ同時に到達する。
「早く!!」
『り、了解!』
オルバが操縦桿を右に倒して機体を右へ動かしたその時、マイクロウェーブは到達した。左肩、頭部などの機体の左上部のほとんどを
吹き飛ばし、さらに戦闘の続く宙域を一刀両断するようにその射線上のMS、戦艦などをことごとく破壊していった。かろうじて爆発を逃れた
ヴァサーゴとアシュタロンの中で、二人はかろうじて意識を保っていた。
「…オルバよ…?」
『…兄さん…?』
しかしそれも、互いの生死を確認し終えるとぷっつりと途絶えたのだった。
フリーダムと交戦中だったダブルエックスからもその様子ははっきりと見えた。機体が爆砕していないことから考えて、生きている可能性は高い。
助けに行かなければと思う一方で、フリーダムを放置することができないという思いもあった。
「おまえはなぜこんなことをする!?」
『世界を変える必要があるんだ。百億人を殺して英雄になるなんて、おかしいよ!』
「ジャミルは、自分をそんな風に考えちゃいない! ジャミルは自分のことをずっと」
『新連邦内部には、まだ彼の信者がいる!!』
ガロードはキラの言葉に言いかけた言葉を止めた。彼の叫びは続く。
『彼らはいまだ、15年前の戦争を続けている。ニュータイプがいれば革命軍に勝てると、そう考えている人たちもいるんだ!!』
ガロードは頭から冷水をかけられた気分だった。
第百三十三話『私が何も考えずに走る番だ』(中編)
ブラッドマンはニュータイプを利用しようとしていた。彼も一種のニュータイプ主義者と言える。そして、新連邦内部には彼と同じような
考え方をしている者がいるというのだ。それは第2、第3のブラッドマンを作る温床になりかねない。すなわち、第2、第3のジャミルを探し出し、
道具として使うことにつながる。
『そして、その第2のジャミル・ニートの席に僕は今座っている。僕は英雄として、世界を変える義務がある! この、人殺しが称賛される世界を変える義務が!!』
「アンタ…。」
『だから僕は英雄になる。けど、その銃口はまず彼らに向ける! 邪魔するなら、容赦しない!!』
フリーダムはドラグーンを展開してダブルエックスに差し向ける。ダブルエックスはライフルとシールドを先ほどの戦闘で破壊されている。
防御することも、撃ち落とすこともできない状態で、ガロードは必死に操縦桿を操り回避し続けた。
『ダブルエックスがフリーダムと交戦中だ。急いで救援に行ってやれ!』
「了解!」
『それから、ディスティニーはもうあまり無理がきかんからな!』
「フリーダム相手に、無理するなっていうほうが無理ですよ!」
マッドとの通信を切ると、シンはディスティニーを月面上空へと向ける。ダブルエックスとの通信をつなぐとガロードとキラの会話が聞こえてきた。
『お前のやり方で、ほんとに平和になるのかよ!?』
『人々の心にある英雄像を変えれば、世界は変わる!』
二本のビームソードでダブルエックスはフリーダムの斬撃を受け止める。ガロードのこえに覇気はなく、キラの声には逆に怒気をおびえていた。
「何やってんだガロード!」
『シン!?』
『くっ!!』
鍔迫り合いをする二機の間にクラウ・ソラスを振りおろして両機を引き離す。ダブルエックスがディスティニー側に来る一方、フリーダムはさらに上空へと逃れた。
「あいつ!」
『待てシン! あいつは新連邦でジャミルの代役をさせられそうになっているんだ!』
「代役?」
『新連邦内部にはまだジャミルを英雄視しているやつらがいる。そいつらがあいつを第二のジャミルにしようとしているらしい。だから自分は英雄になって世界を変えるって…。』
シンはそれを聞いて、それまでのフリーダムの行動の数々が頭に浮かんだ。戦場での介入行動は幾度となくやっていた。その中で一貫していることは“戦いを止めるために戦う”と
いうことだった。
世界を変えるために戦っていることに変わりはない。だが彼のやり方ではより多くの人が死ぬことになる。
確かに彼は通常のコーディネイターとは違う。スーパーコーディネイターとして生を受けた彼なればジャミルの代わりに“英雄”となることができるかもしれない。
しかし“力”を持つ特別な存在を使って世界を支配する。それは、新連邦の道具として使うやり方とも革命軍の神と等しい存在として使うやり方ともほとんど差がなかった。
『あいつは、サテライトシステムを使ってでも世界を変える気なんだよ!』
「なんで、なんであいつはそんな風に考えるんだよ!? 誰も英雄なんて求めてないのに!!」
彼の望みが世界の変革だというのなら、彼はその先にいったいどんな未来を見ているのだろう。戦乱の世界なのか、平和な世界なのか。
平和を求めるというのなら、もっとほかにも方法があるはずだ。もっと簡単で、被害の少ない方法が。
『彼の最終目標は戦争のない世界だ。英雄として称賛される者がどんな行いをしているかを民に知らしめる気なんだろう。』
『へ?』
「ジャミルさん?」
フリーデンから次々に機体が発進してくる。エアマスター、レオパルド、ベルティゴ、Gファルコン、ジェニス、そしてGX。フリーデンの全ての戦力が集結した。
第百三十三話『私が何も考えずに走る番だ』(後編)
『ガロード、私はこの戦いが終わったら連邦軍に戻ろうと思う。』
『えぇ?』
『新連邦内部にまだ私を信じる者がいるならば、彼らを導くことで世界を平和にすることにつながるはずだ。それに、我々はD.O.M.Eに託された。』
それまでずっとつけていたサングラスは今はなく、左目を縦に大きく切った傷が見える。それは彼の“心の傷”であり、自分の過去を象徴するものだ。
今までは隠して、自分で見ようとしなかった。しかしこれからは、それも含めて自分でいようと思ったからこそ、サングラスを外したのだ。表情に迷いはなかった。
『すでに新しい時代は始まっている。過去よりも未来を、それを見るべきだということを、私は行動で見せたい。』
『ジャミル…。』
『今度は、私が何も考えずに走る番だ。』
ガロードもシンも大きく頷いた。今回の戦争は、過去に縛られた老人たちによっておきた戦争だ。彼らが退場した今、この戦争は無意味と言っていい。
ただ一人、戦争を望む者を止めれば、戦争は終わる。
「みんな、俺はあいつを止めたい。協力してくれ!」
ジャミルが連邦に戻る決意を固めたことで、シンは決意した。この世界は新しい未来へと進んでいる。もう自分たちはこの世界に居るべきではない。
戻るためにはもう一つピースが必要だった。
『シン、俺たち仲間だろう?』
「…ああ。」
全員がフリーダム野飛び去った方向へ期待を向ける。新たに“ニュータイプ”という言葉に縛られたものを止めるために。
一方そのころ、ルナマリア、アスランなどCE側のクルーも行動を起こしていた。目的はサテライトシステムを止めること。その為に制御室を制圧、
さらにエネルギー供給を断つことだ。
「キラの奴、なんであんな無茶なことを…!?」
「あいつは一人だったからな。誰も助けてくれなくて、どうにもできなかったんだろう…。」
「弱いんですね。フリーダムのパイロットって。」
「弱いんじゃない。優しすぎるんだ。」
アスラン、カガリ、ルナマリアは制圧用の銃火器を装備の上通路を進む。目的の制御室は目の前だ。
「ドアを爆破後、私が中を制圧しますので、援護お願いします。」
「危険だ! 俺が」
「アスランは退役済みでしょ? ここは現役に任せて。」
ルナマリアは振り向かずに云った。相棒のシンが身を危険にさらしているのだ。自分だって。そういう思いの中、彼女は突入準備を整え始めたのだった。
乙
覚悟を決めたキラがちょっと格好いい
>「あいつは一人だったからな。誰も助けてくれなくて、どうにもできなかったんだろう…。」
確かに。
シンもアスランもフリーデン組と過ごしたりAAやミネルバと合流できたからいいけど
キラはAWに来て以来心を許せる相手が誰もいないままだったんだよな。
それでいてなお「戦いをやめさせる」という信念を維持してきた事だけは
立派と言えるかもしれない…もっとも手段が歪みまくってる以上認める訳にはいかんが。
しかし兄弟はもうこれでリタイア、よくて最終回ラストカット状態なのかな。
投下乙そしてGJ
優しさを切り捨て切れなかった故に斜め上の答えにしがみついたんだな
GJっす
>>144 まあキラの場合自業自得な面もあるけどな
フロスト兄弟から再三警告を受けたくせに不殺続行した挙句壊れたわけだし。
兄弟や新連邦についていけないってんなら脱走すればいい。ようは種時代と同じだ。
命令に従う気もなく、最悪身一つで脱走する勇気もない、仲間を作ろうとも考えない。
その果てがこのザマだ。
キラはやめてよねの時から嫌いだったが
いざこうなってみれば不憫なもんだ
自分がただのちっぽけな人間に過ぎない、手を汚さねば何も成し遂げられない
ということをようやく理解したのだろう
敵側補正と言えばそれまでだけど…
ここまで行っちゃったキラをどうやって止めるかは見物だ
この前録画見たらウッソがXに乗って新国家の樹立を宣言していた
東北地方はいまだ余震が続いているようで…
早くおさまってくれるといいのですが…
第百三十四話『あんたは俺が、いや“俺達”が止めるんだ!』(前編)
月周辺の宙域ではいまだ戦闘が続いていた。両軍の総大将が亡くなってもなお続くそれをキラはじっと見守っていた。
僕は、どうしてこんなところに居るんだろう?
ふとそんな疑問が浮かぶ。フォートセバーンから今の今まで、彼は実質一人だった。ケルベロスの檻でも、フロスト兄弟の下についても、
誰一人として彼の協力者となる者はいなかった。皆、能力のある有能な“道具”としてしか見ていなかった。
それは社会の仕組み上仕方のないことなのかもしれない。利益のため、会社のため、その中で求められる者は最終的には指示されたことを
完璧にこなす“力”だ。求められるだけの能力を持たず、結果を出すことができなければ切り捨てられる。
ニュータイプもコーディネイターも“力”を持っている。だからそれを利用する者、自分の無力さに絶望する者、力のある彼らをねたむ者が
あらわれる。
先天的に高い力を持っている彼にとって、そういった者たちからの辛辣な言葉は心を何度もえぐった。
できるくせになぜやらない?
私はどう頑張っても、なんの結果を残すことができない
お前には、できない者の気持ちはわからない
どれもこれも自分勝手な言い分だ。こういう言葉を言う者たちは、大概の場合自分達は高みの見物で消して手を汚さず、出来上がった成果のみを
自分たちのものとする。信頼ではなく利用、協力ではなく搾取。それが、キラがこれまで見てきた“世界”だった。
これのどこが正しいのだろう? 自分がこんなに苦労しているのになぜ彼らは手を貸さないのだろう? 先の大戦で多くの犠牲を出した原因は本当に
現場で行動していた人間にあるのだろうか? 指示を出した旧連邦軍の高官や革命軍の指導者に非がないと言い切れるのだろうか?
戦争が悲惨な結果に終わっても、彼らは何も変わらなかった。つらい現実を見た者が傷つき倒れても、彼らはその屍を踏んでなお自分の欲のままに
行動する。
人が裏側に持っている黒い感情を目の当たりにしたキラは、もう誰も信じることができなくなっていた。
だからこそかもしれない。フリーデンのクルーのように本当の意味で“信頼”しあえる仲間を持つ彼が輝いて見えるのは。自分とは違う世界で
生きている彼が、キラにはまぶしかった。
敵機の接近を告げる警報がコックピット内に響く。データはフリーデンのMSであることを表示していた。
15年前に実際に引き金を引いたジャミル・ニートも、ダブルエックスのパイロットであるガロード・ランもサテライトシステムの恐ろしさはよく知っている。
必ず止めに来ると思った。
だがもう遅い。マイクロウェーブを受信すれば、背中の翼、ドラグーン接続部のミラージュコロイド放出口から有り余るエネルギーを放出させ、
蝶のように4枚の翼を広げる。死を内包する巨大な光の翼を。
この勝負は僕の勝ちだ。そう確信したうえで、キラはシステムM.L.Bの始動スイッチをONにした。
第百三十四話『あんたは俺が、いや“俺達”が止めるんだ!』(中編)
工作員たちは突然の爆発に思わずドアの方に顔を向けた。内側からロックして開くはずのない扉がいきなり爆発したのだ。
全員が一斉に入り口に顔を向けると、赤いパイロットスーツを着た何者かが煙の中から突進して来る。体のラインから女性で
あることは推察できたが、そこでそんなことを考えた男の思考は止まった。彼女の体重の乗った左拳が彼の肝臓を的確に
とらえたことによって。
赤いパイロットスーツの女の進撃は続く。咄嗟に持っていたライフルを向ける工作員の懐にあっという間に接近すると、
今度は全身のバネを使って下から鳩尾をつく。体をくの字に折った工作員に目もくれず、残る工作員たちの射線から体を
振り子のように左右に動かして狙いを定めさせないまま一気に近づくと右、左とそれぞれ一撃で彼らを気絶させた。
「…ふう。状況終了!」
「……ボクシング?」
「あんな動き、士官学校じゃやらないぞ……?」
ルナマリアの漫画みたいな信じられない動きに一同が唖然とする一方、当のルナマリアは通信機器を操作して別動隊に連絡を入れた。
「こちら制御室制圧班、制御室の制圧に成功しました。」
『こちらメカニック班、こっちも終わった。照射回路を接続し直さない限りマイクロウェーブの照射はできん。これで、
サテライトシステムは封殺できたな。』
「了解。あとはシンね。」
マッドたちメカニック班も無事仕事を終えた。あとはシンがフリーダムを止めるだけだ。
「頼んだわよ……シン。」
制御室の窓の向こう、そのかなたに彼はいる。徐々に戦闘の光が小さくなっていく宇宙を見ながらルナマリアは祈った。
案の定、システムは起動しなかった。予感はあった。相手は単独ではない。もしかしたらシステムその物を止められるかもしれない。
今回はその予感が当たっただけのことだ。
冷めた気持ちで計器に目を向ける。弾薬、エネルギーは十分にある。接近する敵影は8、大した数ではない。
ドラグーンを解き放ってキラは先制した。あちら側はまだ射程に入っていない。戦力を削ぐタイミングには今しかなかった。数の優位は
あちら側にある。戦略としてもベストな判断だったはずだった。
しかしドラグーンは者の数秒で全滅する。先頭の1機がものすごい勢いでドラグーン群を突破、それを後方から狙おうとしたところを、
逆に後続に狙い撃たれたのだ。
所詮はコンピュータ制御、彼らの相手をすることは役不足だったのだろう。
先頭の1機がモニターに映し出される。途中からの急激な加速。できる機体は1機しかいない。
キラはキッとディスティニーをにらみつけた。
「フリーダム!!」
スパイラル・ブーストで一気にドラグーンを突破したディスティニーは大剣クラウ・ソラスを両手で構えると、フリーダムめがけて突進した。
シンの予想が正しければ、奴が最後の“ピース”だ。ここでやるべきことは撃墜ではなく送電施設に連れ帰ること。
家族の死やステラの死に関係する敵を倒したいと思う気持ちは今も変わらない。何度も戦って憎しみも持っている。でも憎いから倒すでは前に進めない。
未来をよくするためにはこれまでと違うことをすべきなのだ。
大剣とフリーダムの双剣がぶつかり合い火花を散らす。押し切ることは簡単だが、シンはそうしなかった。音声だけの通信を割り込ませると彼は叫んだ。
「議長はプランを撤回する!」
『……。』
「ジャミルさんは新連邦に戻って、中から連邦を変える!」
『……。』
「答えろ! あんたの望みはなんだ!? あんたが未来に望む物はなんなんだ!!?」
キラは答えない。その代わりにフリーダムが推力を挙げてディスティニーを押し返した。
勢いそのままにフリーダムは接近戦を続ける。ディスティニーは防戦一方だ。
第百三十四話『あんたは俺が、いや“俺達”が止めるんだ!』(後編)
『…僕の望む未来は手に入ることはない…。』
「何?」
『…僕の望む未来は手に入らない! 人が、みんなが誰かのために手を差し伸べる気持ちを持たないと、僕の望む平和な世界は手に入らないんだ!!』
キラの口調は重い。それまで自分の胸の中に隠していたものを少しずつ出していく。誰も彼の話を聞こうとしなかった。求められていた者は彼の
“力”のみ。彼はこちらに来て、新連邦に入って以降初めて自分の思いを叫んだ。
『誰も僕の話を聞かなかった。誰も僕のやり方に賛同しなかった。誰も、僕の気持ちをくんで協力してくれる人たちはいなかった! 自分達の考えを
通すだけ通して、他者にそれを強制する。実害がないからいい、自分の周りが大変で無いからいいって! みんながみんな、自分の思いを優先して
違う方向を向いて行動したら何もできはしないんだ!』
「…あんたは、あんたはそれであきらめたのかよ?」
フリーダムの斬撃をクラウ・ソラスで受け止めながら、シンはキラの言葉を聞いて思わず叫んだ。
『え?』
「それであんたは、そいつらを納得させて協力させることをあきらめたのかよ!? 自分の思い通りにならないから壊すのか? そうやって力で抑えつけて、
周りを巻き込むのかよ!?」
『……!』
「あんたが相手に寄り添うことだってできたはずだ。一歩引いて、相手が先に何を見ているのか、自分とどう違うのかを見定めることだってできただろう!?」
誰だって自分の思いを抱えている。それを完全に一致させることは一部の例外を除いて不可能に近い。世界が利害関係によって動いていることは紛れもない事実だ。
だがそんな中であっても、皆がそれぞれ求める結果のために協力し合う。そんなことがなぜできるのか。
答えは簡単だ。いきつく結果は同じなのだ。違うのはそれまでの過程。同じ結果を求めるなら、協力した方が労力も少なくて済む。
「俺はあんたと同じように平和な世界を望んでいる。でもあんたの今の行動はその真逆のことだ! 自分の考えを通すだけ通す人間も確かにいる。でもだからって、
こんな方法で関係の無い人間まで巻き込むのかよ!? あんたのやり方は」
『黙れ!』
「あんたが嫌がっているやつらと同じだ!!」
カドリゥスがディスティニーの目の前で火を放つ。間一髪で回避させると、シンはディスティニーに改めてクラウ・ソラスを構えさせた。
「俺は、あんたの平和への思いは否定しない。でもこのままだとあんたは取り返しのつかない間違いを起こす!」
これから言うセリフに似た言葉を前にフリーダムに対して言った。しかしその時とは彼の胸中は違った。
「あんたは俺が、いや“俺達”が止めるんだ! 今日、ここで!!」
覚悟ある言葉、以前とは違う思いがシンの表情にはあった。
乙!
いよいよクライマックス!!
自分から相手に寄り添う
種本編のラクシズはこれができないやつばかり
フリーデンの面々とは真逆だ
あ、忘れてた
乙!!
保守
皆さんレスありがとうございます。
さて、それではいよいよ本編ラスト、投下!!
…ホント、長かったなぁ…
第百三十五話『自分の想いを実現するのは、自分だ!!』(前編)
キラはレーダーを見て敵の数、距離を確認した。ディスティニー、ダブルエックス、GX、エアマスター、レオパルド、ベルティゴ、
ジェニス、Gファルコン。8対1、ドラグーンのある状態であればかなり楽に戦えたであろうが、今更そんなことを言っても仕方がなかった。
「ダブルエックスはサーベルのみ、ディスティニーは大剣! あとは援護か!」
前衛2に後衛6。かなり変則的な編成であったが、確かに彼らは強かった。
チームであるが故に他の欠点を補う。キラは今の自分に無いものを持っている彼らがうらやましく、許せなかった。
射撃を回避しつつキラは思う。ディスティニーのパイロットと自分、一体どこにこんなにも違いがあるのだろう? 彼はいい仲間を持った。
そのこと自体は納得することができる。ではなぜ自分にはそんな心許せる人達ができなかったのか?
キラはあのパイロットがどんな人間なのかよくは知らない。それを知ることができれば、自分も同じような仲間を持つことができるのだろうか?
何度も言葉を交わした中で相手の性格を想像する。彼は感情的で、嘘のつけない人間。口よりも先に手が出てしまう人間。自分が
納得できないことにはNOと言える人間。自分で決めた事は最後まで貫く人間。
彼は折れないのだ。よく打たれた鋼のように。
「どうして君は、そこまで自分を貫くことができる!?」
『俺は強くない! けど周りにみんながいる以上、協力してくれる仲間がいる以上、簡単にあきらめるわけにはいかないんだ!』
仲間がいるから強くなれる。いや、彼の場合は仲間のために強く“あろう”とする。それが結果的に彼を強くしているのだ。
彼は真正面から彼らに向かいあいぶつかり合っている。その中で互いに認め合い、信頼を生んでいるのだ。“自分はこういう人間である”と
いうことを彼らにわかってもらっている。
自分はどうだろうと振り返ると、とても彼のように真正面からぶつかり合ったとはいえなかった。機体の機密保持のためとって他者をかかわらせず、
自分の考えを持っても言っても無駄だと決めつけて表に出さず、世界のために自分が犠牲になるつもりで一人行動を起こした。
周りの人間を傷つけないために行った行動の結果が、これなのだ。
後方からの援護射撃が激しさを増す。エアマスターのビームが、レオパルドのシリンダーがフリーダムのルナ・チタニウム製の装甲を何度も打った。
『くらいやがれ!』
『たまには、仲間のために熱くならないとね!』
フリーダムが攻撃に転じようとすればそれを狙い澄ましたかのように攻撃が来る。多勢に無勢、はたから見たら対等な戦いではなかったかもしれない。
だがキラが強く感じたことはそんなことではなかった。
自分に無くてディスティニーにある物、それは“信頼”なのだ。他者を信じ協力を得た彼と、他者を信じず切り捨てた自分。技術や経験ならおそらく
負けることはない。しかしこの一点、ただその一点のおかげで、自分は追い込まれていた。
「君は…!」
『俺は、シン・アスカだ!!』
キラは強く唇をかんだ。
第百三十五話『自分の想いを実現するのは、自分だ!!』(中編)
自分の今すべきことは、こいつを連れ帰ること。シンは自分にそう言い聞かせながら戦っていた。
フリーデンの皆は自分のために力を貸してくれている。ルナマリアも、ヴィーノもヨウランも、ミネルバの皆も、戻ってきたレイや
議長だって自分を応援してくれているはずだ。
自分ひとりのことであれば投げ出すこともできる。しかし、もう自分ひとりのことではない。世界の平和だ、未来のためだと言っては
来たが、最終的に行きつくのは誰もが同じだ。“自分の周りの人たちを助けたい、守りたい”という想い。それが、シンの偽りのない気持ちだった。
誰かに言われたからではない。自分で考え、自分で決めたことだからこそ、最後までやりぬく責任と義務があった。
自分は強くない。それは“こちら側”に来てよくわかった。明確な意見や考えを持たず、ただ悩みを持ったまま議長の命令にしたがっていた。
しかしそれではいけないのだ。
悩んでいい。困っていい。オールドタイプもニュータイプも、ナチュラルもコーディネイターも、ただの人間でしかないのだ。
人間は万能ではない。ならばできること、できないことはあって当然なのだ。
シンはガロードのように何も考えずに走れなかった。ジャミルのように冷静でいられなかった。ウイッツのように一つの事のために全力投球も
なかったし、ロアビィのようにムードメーカーとしてみんなを喜ばせることもできなかった。
彼は今の自分を求め、今の自分に無い物を求めて、すでにその先の未来を見ている。ここで止まってなどいられない。そんな思いでシンは操縦桿を操った。
「俺はあんたを連れて帰る、元の場所へ! そして、今までとは違う新しい未来をつかむ!!」
大上段から勢いよく振り下ろされたクラウ・ソラスはそれまで何度もその刃を受け止めてきたフリーダムの双剣ごと相手の右腕を切断する。
度重なる攻撃と防御で刀身が金属疲労を起こしたのか、はたまた施されていたビームコーティングがはがれてしまったのかはわからない。
シンにとって重要なことは“攻撃が当たった”ことと、“致命的なダメージを与えたこと”だった。
切り離された右腕が爆砕する衝撃でフリーダムがバランスを崩す。その隙をシンは見逃さない。
「もらったあぁぁぁっ!」
ディスティニーは翼のスラスター出力を一気に最大にすると、がら空きになった右側からフリーダムに組みつく。そしてそのまま月面基地方向へ
一直線に加速を始めた。
『シン!』
ガロードの声が聞こえる。その中には驚き、悲しみ、さびしさなど多くの感情があった。
「ガロード、ティファと幸せになれよ!」
通信は音声だけでかわす。モニタ表示のボタンは加速中で操縦桿から手を離すことができず押せない。
それに、シンはこんな時どんな顔をしていいかわからなかった。おそらくもう二度と会うことのない相手との別れなど、家族との離別の時以来だ。
何度体験しても慣れるものではなかった。
『俺は、俺たちは仲間としてお前の幸せを願ってる! それだけは忘れないでくれ!!』
「……ああ!!」
幸せを願っている。そんな言葉は一度も言われたことがなかった。ルナとの会話でもレイとの会話でも感じたことのなかった心のぬくもりが、確かに彼の胸にあった。
第百三十五話『自分の想いを実現するのは、自分だ!!』(後編)
その一方で、キラは彼らの会話を聞いて大きくため息をついた。
「僕は、結局何もできなかった…。」
『何度も言わせるな!』
キラは返事が返ってきたことにはっと周りを見回す。通信機のスイッチはOFFになっている。機体同士が接触している声が
聞こえた事に気づくまで、少しの時間を要した。
『あんたは一度失敗した! けどその中であんたは学んだんだ、自分の弱さを!』
「自分の、弱さ…?」
今の自分は弱い。それは本当に痛感した。一人では間違いを犯し、暴走する。
いや、暴走ではない。“人殺しが英雄になる世界は間違っている”という考えは正しいと断言できる。
その証拠は、今の自分自身だ。多くに人の命を奪った自分は、“英雄”ではない。
「人殺しは英雄じゃない。その考えは変わらない!」
『なら、あんなたが見せてみろよ。あんたが思う“英雄”の姿を!』
「!」
『自分の想いを実現するのは、自分だ!!』
月面基地に到着する寸前、彼らが光に包まれる。ガロードがきいたシンの最後の言葉がそれだった。
気がつくと、ディスティニーは月面に片膝をついていた。計器類に異常もなく、あれだけ無茶な戦闘をやった後とは
思えないほど良い状態だった。それだけではない。“あちら側”で増設されていたスパイラル・ブースト用の出力レバーも、
モニタに新設されていたノーチラス・シールド、イグニッションシステムの稼働状態を示すカーソルも無くなっている。
機体のメインカメラから送られてくる映像を見てもわかる。そこには月面マイクロウェーブ送電施設などなかった。ただただ広い
月面が広がり、上には青い地球と幾万もの星がきらめくばかりである。
「戻ってきたんだな…。こっちに。」
シンは確信する。時刻は彼があちら側に行ってから数秒しかたっていない。おそらく、行って、戻ってきた時間は同じなのだろう。
だが、シンが体験した多くの思い出は鮮明に思い出すことができた。
D.O.M.Eはかかわっていないと言った今回の事象、一体何が原因なのかは結局定かではない。シンだけが体験したのか、それともあちら側に
居た全ての人間がそれを体験したのか、わからないことだらけだった。
そんな中にあって、シンは妙にすっきりとした気分だった。何か吹っ切れたような、暗いトンネルを抜けてようやく青空を見たような、そんな気分だ。
「やれるさ、俺たちなら。そうだよな、ガロード!」
世界はいまだ混沌としている。これから先、一体何がどのように変化していくかもわからない。
しかし彼はすでに知っている。何も考えずに、ただひたすら目標を目指して走る大切さを。自分を認め、さらにその先を目指す事の重要性を。
山積する問題をかたづけることは容易ではない。だがシンは、それすらもやれる気がしていた。
深紅の翼が月面から舞いあがり彼方へと去ってゆく。ディスティニーの立っていた足元に残された物は、小さないくつものクレーターと、
”D.O.M,E.”と刻印されたプレートだけであった。
次回 それぞれの未来を目指す若者たちは新たな道を歩みだす。
そこに広がるのは光か闇か、変化し続ける世界で若者たちはたくましく生きていた。
エピローグ”A.W0017”、”C.E75” 乞うご期待!!
乙!
乙!!
ここに限らず、理由はわからないが悲しいことに多くの職人さんたちが筆を折ってしまった中で
ついに完結を迎えようとするGX氏に心から拍手を!!
しかし、同時にさびしくなるなあ
まだだ!まだ終わらんよ!!
エピローグがある!!
デスティニーとストフリだけでなく同時にCE関係者とメカの類も
全てAWから去った事になるのかな。
次回が二年後を描いたエピローグという事だけど、そんなチョッピリではなく
それぞれ人間的に成長したと思う種死組による二年間の過程も
逐一拝読したくなってきてるんですが…
革命軍には結局あまり種勢からまなかったな。
別にいいけど。
革命軍と種死キャラのからみは確かに書けませんてませんね。当時はソフィアのことでいっぱいいっぱいだったんで…
期待に答えられず申し訳ないです。
が、もうここまで来ていまさら書くなんてこともできません。書けるのはこれだけです!
エピローグ AW0017(前編)
月での戦闘が終わり、新連邦とコロニーとの戦争が終結して2年が過ぎた。
ガロードとティファが出会い、戦争が終わったAW0015。それから2年が過ぎた事を機に、二人はそれぞれの生活を送る
旧フリーデンクルーの皆のもとを旅していた。
ウイッツとトニヤはめでたく結婚、花嫁はトラクターに乗って黄金色に輝く麦畑を縦断した。さらに、トニヤのおなかの
中には何と双子の赤ちゃんがいるのだ。良いことが続く彼らの顔は本当に輝いていた。
それまでウイッツ達と一緒に生活していたロアビィは、彼らの結婚式を見届けると村を離れて行った。本人いわく、
”邪魔しちゃわるい“ということらしいが、目の前で幸せをかみしめる彼らを見て自分も幸せをつかむために行動を起こしたのかもしれない。
その後彼からは何の連絡もないが、きっとどこかで美人を口説いているに違いない。
トニヤの親友であるエニルは村に残り、喫茶店兼バーを開店。ウイッツ一家から仕入れる小麦を使ったパンやケーキ、テクス仕込みのコーヒー、
そしてその美貌とスタイルのよさで固定客を増やしている。むろん、彼女目当ての客が少なからずいることは言うまでもない。
キッド、ロココ、ナインなどのメカマン軍団とパーラ、シンゴは新たにジャンクやフリーデンVを起業。”身の回りの家電、車、おもちゃなど何から
何まで修理します”をうたい文句に仕事をしている。ただキッドは“MSの大改造やりてー!“とたまに叫んでいる。
そして、連日テレビで顔を見るのはジャミルだ。連邦に復隊し、今はコロニーとの関係回復の任に就いている。仕事の都合上、地球と宇宙を行ったり来たりの
生活が続いているようだ。主義主張の違う2国間の話はなかなか進まないようだが、かつて剣を交えたランスローとフリーデン時代からの片腕であるサラの手を
借りて平和な世界の実現のためにがむしゃらに働いていた。地球とコロニーを行き来できるようになることも、そう遠い未来の話ではないだろう。
そして今日、ガロード達はエスタルドに到着した。新連邦の樹立宣言後に隣国のガスタール、ノーザンベルとともに阪神連邦を掲げ戦ったが敢え無く敗戦。国家主席である
ウイリスと大臣のグラントだけは今も当時のシンについているが、そこに行きつくまで多くの犠牲があったことはガロードもよく知っていた。
「ひゃー、2年でこんなに変わるんだ…。」
「前と全然違う…。」
ガロードの言葉にティファも同意する。新連邦に参加したことで大陸横断鉄道の建設がおこなわれ、今では交通の要所となったエスタルド。小国としての姿しか知らない2人には
別世界だった。林立するビル、行き交う人々、それらに2人は圧倒された。
「とりあえず、遅い昼飯にする?」
「うん。」
二人は手をつなぐと、飲食店を探して歩き始めた。
「ティファ、ここにしようか。」
「ええ。」
二人は駅から歩いて5分ほどのところにあった小さなカフェへと入った。淡い色の色調で統一された穏やかな雰囲気の店内。昼食時を過ぎているためか、ほかに客はいなかった。
カウンターで洗い物をする30代後半と思われる金髪の男は年相応の渋みのある笑顔で2人を迎えた。
「Welcome to Silver Bell!! 開店3周年記念期間中でね、安くしとくよ。」
「サンキュー、2人分の軽めな食事を頼むよ。」
「OK! ロック! 料理頼む!」
「……たまには自分でやれよ。」
ロックと呼ばれた同じく金髪の20歳前後の男は右手に持っていた半分ほど残ったホットドックを口の中に押し込むと、慣れた手つきで食パンを切り、バターを塗り始める。
その間に別の黒い髪の少女が片手でお盆に2人分のコーヒーを乗せカウンターに座る2人の元へ持ってきた。
エピローグ AW0017(中編)
「テリーさん。コーヒーはサービスでいいんですよね?」
「OK! なんてったって、開店3周年だからな。」
「……ってことは、新連邦に入る前から?」
コーヒーに砂糖とミルクを入れながらガロードは店主テリーに聞く。白いTシャツから延びる両腕はかなり引き締まっており、
腕っ節の強さも感じられる。だが彼の気さくな笑顔からはそんな恐ろしさはみじんも感じられなかった。
「ああ。当時は大変だったが、歌姫のおかげで今は繁盛しているよ。」
「歌姫?」
「“片翼の歌姫”、彼女がそうさ。」
テリーはガロード達にコーヒーを出した少女を視線でさした。背中の中ほどまである長い黒髪、大きくぱっちりとした髪と
同じ黒い瞳。年齢はガロード達とさして変わらないだろう。店のスタッフの中では一番若かった。
そして、“片翼”と呼ばれる通り彼女の左腕はひじから下が存在しなかった。
その姿を見たガロードとティファは痛々しさに顔をそむける。それを見た少女はなんでもないことのようににっこりと笑った。
「私サクラと言います。腕の事は気を使わなくていいですよ。子供のころからずっとこうですから。」
普通の人にはあって当然の物が彼女には無い。しかし彼女にとってそれが普通であり、当たり前のことだった。初めてみる人が
このような反応をすることにも彼女は慣れていた。
「そっか…。」
「強いんですね。」
「強く、なったんですよ。友達のおかげで。…でも、その友達はきっと今でも私の世界を壊したことを悔やんでいると思います。」
「友達?」
「はい。私の世界を変えた、私にとって初めての友人。“運命”の人です。」
レタスにトマト、ハムが挟まれたサンドイッチが2人の下に運ばれてくる。サクラは運んできたロックに目配せをすると、店の窓際に
置いてあったマイクスタンドの前に立った。
ガロードがその場所がステージであることを認識するまで時間はかからなかった。いつの間にかロックはエレクトーンの前に座り、
鍵盤に指をセットしている。
「2人のために歌います。“銀色Horizon”」
彼女の言葉の一拍後にロックは前奏を奏で始めた。
同じ夜空の下 別々な場所
今 君のため なにができるか
考えてるの
どんなに想っても 想い足りない
心の中で 私を呼んで
すぐに飛んでゆくから
銀色Horizon 大地の果て
君に会えるなら 恐くはない
たとえ世界が 闇に包まれても
いつかたどりつくよ I’m with you…
2人のための歌。この歌が一体どの2人の為の歌なのかはわからない。ガロードとティファはただ静かに彼女の歌を聞いた。
エピローグ AW0017(後編)
歌い終えた彼女を皆は拍手で迎える。カウンターで彼女の歌を聞いていたテリーは歌い終えた彼女にピンク色の桜のマークの
入ったマグカップを差し出した。
「最近のお前の歌は、特に気持ちが入っているよな。」
「ようやく気持ちの整理がついたんですよ。彼が私の世界を壊した。2年前はそのことでいろいろいっぱいいっぱいでしたから。」
サクラはつらさを隠しながら笑う。2年前、ちょうどエスタルドと新連邦の戦いの最中だ。ガロードも当時の事を思い出し表情が
暗くなった。
「2年前……か。あの時は俺もいろいろあったもんな。」
「ガロードが一番、変わった時期。」
ティファも当時を思い出す。ガロードの目が徐々に世界に向いていった時期だ。あの頃はティファもさびしい思いをした。
「若者はいいねぇ。…まぁ、大人である俺から言えることは1つだけ。」
皿をふきんで拭きながらテリーはまじめな口調で言う。その言葉は彼なりの生き方、幸せになるための鉄則だった。
「思ってるだけじゃ何も変わらない。手に入れたいもの、未来があるなら、とにかく行動する、ってことだ。」
「…同感。」
ガロードもティファも頷く。その一方でそういったテリーは首をひねった。
「あれ? ここははいと返事をもらって大人として若者を諭すところだったはず…?」
「テリーが思っているよりも2人が大人なんだよ。」
「むしろテリーさんが子供なんじゃないですか?」
「なるほど。……っておいΣ(゜ロ゜)!」
ロックとサクラの言葉にテリーは思わずツッコむ。彼らのやり取りが日常なのかそれとも営業用の物なのかはわからなかったが、
ガロードとティファは思わず笑った。
「クソー、ロックが生意気なのはともかく、サクラも最近口が悪くなった!」
「人は変ります。前はありがとうもさよならも言えなかった私でも、今なら助けてくれてありがとうって面と向かって言えますよ。」
「会えるといいですね。その“運命”の人と。」
「…ありがとう。いつか彼に、この感謝の言葉を言える日が来ればいいな。」
「来るさきっと。来なけりゃこっちから追いかけりゃいい。」
「そうね。」
サクラは気遣うティファとガロードに素直に感謝の言葉を述べた。友人を思う彼女の気持ちが届く日が来るかどうかはわからないが、
彼女の感謝の気持ちは本物だった。
時間の流れは止まらない。人はその流れの中で多くの物を得て、また失っていく。だがその中で心に残る“何か”がある。
それは1人1人違うもので、同じものは存在しない。
戦後17年。愛情を、信頼を、感謝を。人は皆それぞれにそれぞれの想いを抱え生きている。
まだ見ぬ、新たな未来に向かって。
GJ!
"向こうの世界"でシン達はどうしてるんだろうな
まずはAW後日編乙です!
…けど、「OK!」と口走るテリーって…まさかねw
っつー事ぁ、ロックの得意メニューはクラブハウスサンドですねwww
仮に“あの“テリーとロックとしても、
あいつらならこの世界でも元気でやっていきそうだから怖い
そういえばDXやDOME、そしてフロスト兄弟やソフィアさんはどうなったんだろう……?
原作Xみたいにサテライトの討ち合いは起こらなかったわけだから、その辺の決着も違った物になったと思えるし。
完結に今気づきました
長期連載お疲れさまでした!本当に乙です!
銀色Horizonが脳内再生されました!
まだだっ!まだCE75の方のエピローグがあるッ!
でも楽しみだけど投下されたらホントに完結だし複雑な気分だ…
ついに完結か…何年かかったんだろう
足掛け五年、お疲れ様です!
祝福したいが、もうすぐ読めなくなることを思うと寂しいなあ
ようやくです。ようやくここまで来ました。
今まで読み続けてくださった読者の皆様方、これが最後の最後です!!
エピローグ C.E.75『俺の願いであり、決意です』(前編)
デュランダル議長が発表したディスティニープランが撤回されてから2年が過ぎた。
すでに解体されたレクイエムをめぐるロゴスとの攻防が終わった後、「遺伝子で人の適性を判断し、世界を平和にする」と言う名目で
発案されたディスティニープラン。議長がなぜそれを撤回したのか、
メサイアに召集された際にシンは直接理由を聞かされた。
「私は逃げていたのかもしれない。自分の理想とする世界にならないこの世界から。自らの努力できる範囲にまだやるべきことがあるにも
かかわらず、一向に進まないその変化に心が折れてしまっていた。」
議長は心の底から平和を望んでいた。だがそれ以上に自分の意思で争いを求め、利益を優先する者たちがいるのだ。議長1人が必死に
努力しても、ほかの10人が足を引っ張れば理想の実現も不可能と言っていい。
「ミネルバの活躍で、戦争を望む人間の多くを世界から取り除くことができた。君たちの活躍には本当に感謝している。…まぁ本当ならば、
戦争を望む者たちに“改心”してもらわなければならないのだろうが。」
自嘲しながら語る議長の姿がシンには痛々しく見えた。自分で打ち出した政策を取り下げた後だ。恥ずかしさと浅はかさに穴があったら
入りたかったかもしれない。この手の行動は政治家として三流、四流であることを世間に知らしめる結果になるからだ。
彼とて、この行動は本意でなかったに違いない。
そして、その代案として発表された政策は世界中の国々から注目され、大きな議論を呼ぶものとなった。
地球圏統一国家創造計画、通称『世界樹(ユグドラシル)計画』である。
「ようやく地球とプラントのすべての国が調印か…。」
新聞の一面に大きく掲載された世界樹計画の記事を読みながらシンはコーヒーの入ったマグカップを口に運んだ。いまだ復興の続く
ベルリンは街中をトラックなどの大型車が往来している。まだ朝の10時を回ったばかりだが重機を使った作業はすでに始まっており、
町の中心部でもかなり大きな音が響いていた。
「アスハとアスラン…、ここからが本番なんだよな。」
調印式に出席した各国の代表の中にはアスランとカガリの名前もあった。カガリはこの2年間オーブの代表としての仕事を続けている。
セイラン家の行った“ロゴス寄り“の政治判断のおかげで国土の一部が再び焼かれたオーブ。しかし今はその焦土と化した土地の復興も進み、
元の立派な都市の姿に戻りつつあった。
そして、彼女以上にこの計画に参加することが問題視されたのはアスランだった。
ザラ家の名を知らない者は今の地球、プラントにはほとんどいないだろう。CE70、ガンマ線レーザー砲“ジェネシス”を用いて地球を
滅ぼそうとした人物。アスラン・ザラという名前を聞いて、父パトリックの名前と結ぶつけないことの方が難しい。
そんな彼だが、今はプラント最高評議会に籍を置いている。就任する際の言葉は当時の新聞でも大きく取り上げられた。
『私の父は間違いを犯しました。だから私は本来ここにいるべき人間ではないかもしれません。しかし、私は悩みました。本当にそれでいいのか。
世界はいまだ混乱の中にあります。私の友人は、どんな小さな幸せも取りこぼさず守るために今も戦場を駆けています。別の友人は自分の理想とする
“英雄の必要ない社会”のために戦っています。彼らのような行動力は私にはありません。ですが私にもできることがあるはずだと、やるべきことが
あるはずだと思いました。彼らが戦場で平和の実現のために戦うというのなら、私は別の場所で平和のために戦う。それが、私の考えた
“世界を平和にする最善策”です。』
これを見たシンは思わず苦笑した。言葉の中に出てきた“友人”が丸わかりだったからだ。
どんな小さな幸せも取りこぼさず守ることを実践しているのは間違いなく自分だ。そして、“英雄の必要ない社会”を作るために動いているのはおそらく
フリーダムのパイロット、キラ・ヤマトだろう。“あちら側”であれだけ英雄にこだわっていたのだから、ほぼ間違いない。
どういう心境の変化があったかはわからない。しかし彼が彼なりに考えた結果が、“英雄の必要ない社会”だったのだろう。とりえずシンから彼に言うことはなかった。
エピローグ C.E.75『俺の願いであり、決意です』(中編)
ちなみにシンは今、この平和への流れを止めないために働いている。所属はG.O.S“Guardian Of Seed”。今回の“世界樹計画”の
守り手として編成された各国のトップガン達の部隊である。むろんミネルバもアークエンジェルも同じ所属になっている。ただ、
この2隻が艦を並べて作戦行動をとったことは一度もなかった。
またこの2年間ラクス・クラインの姿を見た者はいない。アークエンジェルと行動を共にしたエターナルも消息を絶ったままだ。彼女が
どこで何をしているのか。それを知る者はだれもいなかった。おそらく彼女もどこかで自らの理想のために戦っているのだろう。
今はただ、それぞれがそれぞれのフィールドで世界を変えるために動いていた。
シンは新聞を折りたたみ鞄にしまうとカフェを出てベルリンの街中を歩いた。がれきの撤去が終わり更地になった個所がいくつもあり、
本当の意味での復興はこれからも続いていくことだろう。
街頭でリアカーで花を売っていた女性からいくつかの花と花の種を買うと、ディスティニーを隠している郊外の森へと足を向ける。
非番を使ってベルリンまで来たのはそれなりの理由があった。
あの当時はそこまで頭が回らなかった。“あの少女”は1人であの湖にいる。せめて墓標ぐらい作ってやらねば。その思いが今回彼を動かしたのだった。
「よぉ。」
ディスティニーの下にはすでに待ち人が到着していた。アークエンジェル所属ムウ・ラ・フラガ一佐。だがシンにとっては“ネオ・ロアノーク”。
“彼女”を死地へと送りだした張本人だ。
「街で朝食と、花を買ってきました。アンタは?」
「俺はこれだ。」
左手の袋の中にあったものは大小さまざまな貝殻だった。彼女が海が好きだったことからの発想だろう。
「準備OKですね。」
「ああ、行こう。」
ディスティニーと黄色のムラサメは目的地へと出発した。移動時間はおよそ15分、MSで行けば文字通りひとっ飛びだ。
『アウルのクレタ沖とスティングのヘブンズベースにはもう行った。あとはステラのところだけだ。』
「そうですか。部下思いなんですね。」
『…隊長だった俺が、あいつらを死なせたようなものだ。それに、あいつらは身寄りのない子供だった。だったら、誰かがあいつらの事を覚えていなきゃ、
悲しすぎるだろ。』
「……同感です。」
通信機越しに言葉を交わす。かつては敵同士だった者達がこうやって肩を並べて飛ぶ。これも平和な光景の1つなのだろう。
だがシンのネオに対する心境はあまり変化していなかった。人柄は悪くない。しかしステラが死んだ原因の一端は間違いなく彼にある。
普通に話すことはできるが、本音の部分では許していない。シンとネオはそういう関係だった。
エピローグ C.E.75『俺の願いであり、決意です』(後編)
あの湖はあの時とはずいぶん違う姿をしていた。周りの山々は緑に覆われ、木々の間を鳥が行き交う。長かった冬が終わり春が来たことで、
木が、山が、鳥たちが、自然の全てが喜んでいた。
「……なるほど、ここならステラも静かに眠れる。」
湖に花と貝殻を手向け、2人で手を合わせるとネオはつぶやく。彼女はずっと暗く寒い闇の中にいた。そこから解放したのは自分ではなく
目の前のこの男なのだろう。そう思いながらシンに視線を向けると、シンはいくつかの小袋を開き、湖のほとりに中身をばらまいた。
「それは?」
「花の種です。墓標変わりですよ、ステラの。」
3つ、4つと袋を開けてはただただ地面の上にばらまいていく。なぜきちんと土に埋めないのかネオが疑問に思っていると、シンは強く言った。
「これは俺の決意です。」
「決意?」
「今日、世界樹計画は次の段階に移りました。俺思うんですよ。議長が“世界樹”なんて名前を使ったのは、世界を平和にすることを種から
大樹を育てることになぞらえたんじゃないかって。」
平和を壊すことの簡単さも、平和を維持し広げていくことの大変さもシンは知っている。
以前彼が見ず知らずの男に言った“いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす”。これは彼の持論で、おそらく今後も変わることはない。
「“いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす”、だったら俺がするべきことは、せっかく咲いた花が吹き飛ばされるようなことがないように
守り続けていくことだと思うんです。」
「種から育て、花を咲かせる、か。その指標となるのが、これか。」
「はい。ここがずっと花畑でいられるようにすることが、俺の願いであり、決意です。」
“あちら側”の人たちの事を思い出す。彼らは取りこぼしていなかった。彼らにできたのだ。自分にだってできるはず。いや、やってみせる。
「未来を決めるのは自分です。やってみせますよ、がむしゃらに、まっすぐに!」
シンの脳裏に1人の少女の姿が浮かぶ。彼女が笑っているか、泣いているかはわからない。しかし、彼女が笑顔でいられる世界を作るためにシンは決意を
新たにしたのだった。
世界樹計画の真の目的はそれまで対立していたナチュラルとコーディネイターの関係改善であり、100年と言う長期でゆっくりと世代を越えて進行して
いくよう編成された計画である。
100年後、創始者たちは計画の結末がどのようになるか見ることはない。
ただ今は、より良い未来のために行動するだけだ。
C.E.75 新たな種子が小さな芽を出したのだった。
完結GJ!!
最初から最後まで楽しめました!
完結おめでとうございます
でもラクスの行方が知れないっていうの、こちらの綺麗なラクスじゃなきゃ不安になってしまう
大丈夫ですよね?
完結 お疲れ様でした!
初めて読んだのが07年。今年の年明けに再燃して、連載が続いていたことに驚く。
数々のクロスSS読んだが、シンとネオが共にステラの墓参りをするのは初めてだったので、感慨深い。
GX1/144氏に多謝です。
今度こそ完結ですか……
本当にお疲れ様です
そしてありがとうございました!
当然だけどガロードたちとシンたちは
もう会えないんだなあと思うとちょっと寂しいですね
だけど、またいつかどこかでGX1/144氏の作品が読めることを期待してますwww
完結お疲れ様でした
登場人物みんなが成長して、それぞれに前を向いて歩き出した感じがすごくいいなあ
186 :
通常の名無しさんの3倍:2011/05/21(土) 00:22:04.57 ID:5vyDdajf
完結おめでとうございます
あのずっと気になっていたのですがシンの搭乗機はデ'ィ'スティニーガンダムではなくデスティニーガンダムではないでしょうか
sage忘れましたすみません
188 :
通常の名無しさんの3倍:2011/05/21(土) 00:28:00.53 ID:J+W1hfW+
このレスを見た人は必ずいいことか、
悪い事が起きます。
なぜならば、これを五個所に置くと
自分の願っていた事が必ず実現
出来ます。
これを見るだけで信じない人は、
貴方の好きな人に振られてしまったり、
必ず上手く行きません。
これは私が相澤由美先生(運命師)
の講習のとき教えてもらったのです。
必ず当たります。だって私もこれを
五個所に置いたら三日後に好きな人に
告白されたりしたからです
あとがき
投下完了して2週間もたってあとがきを書くなよと思うかと思いますが、私個人初めての長編なので、一応。
スターダストメモリーと種死のクロスSSの全盛期に書き始めて書き終えるまでにかかった年月は5年1カ月と9日、文字数547973字、
実に400字詰め原稿用紙1370枚分の作品になってしましました…。
ここまでいくとは当時の私も思っていませんでしたし、ここまできた私も信じられません。
改めて最初から最後まで読んでみると、
>>186氏の言う通りデスティニーの名前を間違えていることは言わずもがな、何を書いたか
よくイメージできない個所や誤字脱字が多々…。
改訂版とか言って書き出したら『ココはいらない』『ココはこう書いた方が良い』と七割、八割と内容の変更をしそうなのであえて
そんなことはしません。くさいセリフですが、これが私の切り開いてきた道なので。
当初クライマックスはジャッジメントフリーダムにマイクロウェーブを受信させてフリーデン側を蹂躙、その中で動作不能に陥った
ディスティニー(本編の名前がこれだったのでここはこれを通します)が月面に墜落、墜落した先で新型ディスティニー(インパルスに
ディスティニーの翼付けてフレーム強化した物、もちろん中のシステムは全てフリーデンで改造した仕様を再現)に乗り換えて再出撃。
ミネルバの面々が仕上げた機体、キッド達が仕上げたクラウ・ソラス、そしてシンと共に闘うフリーデンの仲間の流れで『あんたは俺が、
いや“俺達”が止めるんだ! 今日、ここで!!』につなぐつもりでした。
なぜそれを書かなかったのか理由はいろいろありますが、まずシンを乗り換えさせることが嫌になりました。最後の最後で乗り換えるってのも、
正直機体に愛着がなさすぎるんじゃないかと。だったらボロボロでも良いから最後まで戦いぬいてみろって感じで最後まで戦いぬけさせました。
ここは賛否両論あると思いますが、私はこれでよかったと思っています。
オリジナルキャラのサクラやダイキ、ソフィアは本来いらない子なのですが、なんだか私なりのカラーを出したかったのでキャラ設定を作って
登場させました。
ガンダムは戦争を扱った作品のため“人の死”からは離れられません。サテライトキャノンの引き金を引いたジャミルは心に深い傷を負い、
15年間立ち直れませんでした。
でもサテライトシステムを作ったのは彼ではなく別にいる。もしその人物が生きていたとしたら、この世界がどう見えたのか。それにプラスして
どういう顛末でサテライトシステムと言う兵器ができたのかを私なりの発想と解釈で書いたものが本編です。
自作とはいえ、ダイキを死なせることにはかなり抵抗がありましたが、100億の人間よりも1人の子供を選んだ親父ですから、結局はあんな結果になってしまいました。
というか、“100億人の命”なんてイメージするにはあまりにも大きすぎる物よりも、“自分の子供の命”と言うきわめて限定的ですぐそばにある物を
守ろうとすることは、私は当然なのではないかなと思います。それが自身の子供ならなおさら。
まぁここまで手塩にかけたオリジナル編ですが、私個人としてはローレライの海編に次いで好きな話です
(ローレライの海編のラストはマジで神が降りてた。今でもあれを超える話を書くことは難しい)。
初期は3日に1回とまぁ今では信じられないほどの速度で書いていましたね(X運命の投下速度に触発されたのもありますが)。
中盤以降はあまり間を開けすぎると書く気が失せるので、2週間に1回、できるだけ決まった日に投下することを目標にしてきましたが、
結局それも何度守れたかわかりません。
それでも無事エピローグまでたどりつくことができたのは、やはりレスをくれる皆さんの言葉のおかげです。
本当に、最後まで付き合っていただきありがとうございました。
又機会があったら、どこかでお会いしましょう(^ ^)ノシ
改めてお疲れ様!!
完結、お見事
素晴らしきかな
完結おめでとうございます
んで今後このスレは新たな職人さんを待つのか
それまでの間はGX氏の作品は完結したんだし、
そろそろ全部を読んでいろいろ思ったこと(良かった点、悪かった点)の
話題をしてもいいと思うのだが…。
コロニー風邪ひくわ、バルチャーに追っかけまわされるわ、
ベルティゴにボコボコにされるわ…。彼の場合拾ってくれた相手が良かった。
これが新連邦に拾われたら… カトックの下につくのか。
なにげにルナの戦歴パネェ・・・。
このルナだったら誤射マリアの汚名返上できそうだわ。
AWって大気中にいろんなもん撒かれてるしCEより風邪ひきやすそうだな。
何気に病弱そうなティファも他の世界なら並の人間くらいの健康かもしれん。
>>198 悪くはない。が、やはり伝説は灰狼の長が俺的に好き
GX氏のSSについては俺は賛否両論かな。人間模様はいいとしても
戦闘シーンがいまいちイメージしづらかった。
書けないから大口叩くべきではないと思うけど、ちと気になったので。
>>199 どの辺り?
確かにSEED系MSはかなりこの作品のオリジナルウェポンを
使用しているから原典作品のイメージを重ねることが難しいとは
思うけど。
ちなみに自分は種運命の戦闘シーン記憶は薄い方だがわりと
イメージ補完は出来たぞ。
>>200 第九話ぐらいか? あのフォートセバーン辺のラスト辺り
クラウ・ソラスの初登場とその後のパトゥーリアとの戦闘とか(初期だから仕方ないと言えばそれまでだが)。
クラウ・ソラスについては後にどなたか絵描いてUPされていたが、
本編読む限りはビームの刃を出すときに変形するっぽい。
種死で出たSインパやSストの対艦刀とは違うようだが、その形が今読んでもどんなやねんってなったな。
運命に関しては武装もクラウ・ソラス、ブリューナク、
アトミックランチャーと出てきたが結局最後まで使ったのはクラウ・ソラスのみ。
ストフリは機体の大改修やってもはや原形とどめてないような感じもあった(実体剣×2、サーベル×2、カッター×2等々)
あれこれ変えるなとは言わないけど、できればその変えた武装をフルに使った戦いを読みたかった。
そういう意味ではドートレス・ネオ(試作型)vsジャスティスは良かったけど。
個々の細かい部分は少々の粗は仕方ないと思う。
逆に大局的な粗は少なすぎて少々物足りなかったくらいだ・・・CEからの
流入した物量的に妥当なストーリー展開だとは思うけど。
あらが少ないってことはいいことじゃないの?
内容がこじんまりとしていることは確かに認めるが、
大風呂敷広げて収拾がつかなくなるよりはいいと思うけど。
>>202的にはもっと話を大きくしてほしかったってこと?
たまには書き込んどかないとやばいんじゃないか?
もう完結したしこのまま落ちるに任せればいんじゃね?
ログ倉庫だってあるんだし
新たな職人さんを待ちながら雑談に使うのもありかと…
え? 俺にかけって? 無理無理
職人カモォォン
え? オレ? ムリムリ
あれ、これ何処にまとめてんの?
シンとルナマリアの中の人が結婚したらしいね
このSSはシンルナで、良いんだよな?
なんかこのまま落ちるのってさみしいな
だったらどうやったらXと種系がどう絡んだらいいか考えるスレにしないか?
GX氏とは違う切り口でいろいろやりたいことを挙げていったらそのうち職人もつくかもしれんし
他人任せな感は否めないけど
それいいんじゃないか?
オレは賛成だ
じゃさ、まず一つ質問いいかな?
Xの映像の外の設定ってどんなのがあるんだ?
ほら、他のアナザーにしろ種にしろUCにしろ外伝的な設定があるじゃん?
そういう公式に準ずる「実は裏側でこんな事が……!」的なのって、絡むにあたって色々とネタにできるけど
Xって放映されてたのが昔だし、俺種からガンダムから入ったしでXの映像は全部みたけど他は詳しくないんだ
そういうXの放映当時とかにやってた「映像以外の媒体での展開」ってどこに記載されてたのか? とか
どんな事が記載されたのか? とか誰か知らないかな?
つ WIKI
いやマジでマジで、WIKIは結構映像に出てきてないガンダムやら機体やらの宝庫なのよ
特にXはガンダムの中ではマイナーだけど、ガンダム自体はマイナーじゃないので、結構機体情報を網羅してもらってて
それに伴ってX自体の機体情報も詳しく載ってる
特にWIKIでは外伝「アンダーザムーンライト」の機体は詳細まで含めてほぼ完備してる、ガンダムベルフェゴールとか、ディクセンとか
あとガンダムXのアンダーザムーンライト仕様なんて素のガンダムXのページに項設けてもらってるしね
ほかボンボンでの作例(Xバリエーション)やHJの作例(ストライクエアマスターの元ネタ)も
詳細はなくても機体名は上げてもらえてたりするのでWIKIマジ万能
外伝は上の人も言ってる、最近ダムAでやってた漫画『機動新世紀ガンダムX〜UNDER THE MOONLIGHT〜』がある
あとはボンボンでやってた漫画『機動新世紀ガンダムX外伝 ニュータイプ戦士ジャミル・ニート』があって
こっちはガンダムXの最初のボンボンコミックに収録されてる
あとはHJの作例と、ボンボンの作例がすこし、それとGジェネから逆輸入されたガンダムベルフェゴールかな
ベルフェゴールはUNDER THE MOONLIGHTでGXと並んで主役級の活躍してるからそれでいいと思うよ
保守ほしゅ
Wが最近小説化されているんだから、合わせてXも小説化してくれればなぁ…
と思ったが、正直ガロードとティファがあの後また戦いに巻き込まれるような
話は見たくないなとふと思ってしまった。
219 :
通常の名無しさんの3倍:2011/10/24(月) 22:26:40.07 ID:yf6u6TlM
林譲治氏あたりで第七次宇宙戦争はどうか
だがしかしぶっちゃけた話、俺らが読みたいのってガロードやティファが
現役で活躍している話なんじゃないか?
X厨呼ばわりされるの覚悟で言うが、俺は俺が見たガンダムシリーズの中では
Xが一番好きだ。
けどそれはガロードとかティファとか、Xのキャラが活躍しているからであって、
ほかのところのキャラが活躍している話は正直どうなんだろうと思う。
別にGX氏やX運命氏や他の作者さんたちの作ったものが嫌いというわけではないが
Xを語るならガロードとがが出なきゃやっぱ駄目だろ
UNDER THE MOONLIGHTは認めない、まで読んだ
俺はアレはあれで好きだな! ディクセンMXの厨房さ加減とかNシステムとかな
>>221 認めないわけじゃない。
ただやっぱ一番読みたいのはガロードとかの話だなってこと
認めないなんて言ったらほかのガンダム全否定と変わらんし
age
保守
保守
保守
X運命氏のHP、何かトラブルか?
228 :
通常の名無しさんの3倍:2012/05/20(日) 01:30:15.45 ID:IDknNSFs
復活したみたいよ
保守っと。
やっぱり新作が来ないかぁ。
ただでさえガンダムXのSSって少ないですし。
ここは役目を終えた…それで良いじゃないか
過疎
>>229 ここのところ見かけたガンダムXの長編SSっていえば
ストライクウィッチーズとのクロスやゾイドとのクロスくらいだったよなぁ
前者は前者で読み手を選ぶでしょうし、後者は後者でこのままいくとMSの登場はなさそうな感じでしたしね
このスレ立って今年で3年目になるのか…よく落ちないなw
エニルの人が亡くなられた…
もうあの色っぽい声が新規で聞けない…
235 :
種&XクロスSS某作者:2013/04/05(金) 18:40:10.90 ID:ApjCMh2F
プロバイダーが規制によく引っ掛かる。
おまけに自分のトリップ忘れてしまった…。3年以上もブランク開けばそうなるものだが
だが、自分で止めてしまった時計の針は動かさなければな…動かしたいんだが…
新しいトリで始めても良い物なのか?それとも統合スレの方に投下した方がいいのか?
>>235 動かしてみればいいと思う。
最初から投稿しなおしてみるというのもありっちゃありでしょうし。
今までは総集編にしてしまうのも手では?
前にも同じような事言ってた人がいたような…
前にも同じような事言ってた人がいたような…
X運命ことクロスデスティニーのサイトが消えてしまっている…?
ちょうど一年前の
>>227-228でも報告があったようだが今回はどうなのか…
>>240 復活しとったよ
契約延長に関する一時的なもんじゃね?
展開が気に入らん種厨・アフィ厨が突撃したとは考えにくいが、
ないとも言い切れん
さすがに何年も前に完結したSSのサイトに今更突撃する奴もいないだろ
向こうの掲示板でさえ誰も書き込まなくなってだいぶ経つのに
X運命さんもう完結しないんかな・・・
>>244 SSは完結しているからゲームの事かな?
あれ二作出たけどその後止まったよね
ほ
AGE
AGE
AGE
ほ
ほ
を染めるガロード?
うなじでも見たか
AGE
AGE
256 :
通常の名無しさんの3倍:
AGE