いやあ、楽しい前スレでしたね。
でもこんなスレッドに
>>1乙する価値なんてあるのか?
せっかく
>>1が立ててくれたのに誰も乙しないなんて…。
俺、このスレの住民を守りたくなくなっちゃうよ。
新スレに着いたぞ。
でも
>>1乙って根本的な解決になりませんよね?
7 :
通常の名無しさんの3倍:2009/11/13(金) 19:44:37 ID:vDx4VWVf
sage忘れちゃった…
9 :
通常の名無しさんの3倍:2009/11/13(金) 19:59:43 ID:BZJMkQuD
無限のリヴァイアスとSEEDが競演したらユウキとキラが実の兄弟になる設定120%
>>1乙
三日ほど前にシンが議長をやたら毛嫌いするばかりで理解を示そうともしない
横暴なスーパーロボット軍団とラクシズに敗北して
憎しみのままに力を求めたら霊帝がやってきて世界を滅ぼすまで戦い続けて
”正義の味方”への復讐を果たして、家族やステラに永遠に会えなくなって悲しみのまま兄貴の中に溶けていく
ってな夢を見ました
これは何かの啓示かい?
>>1乙だよ、それは!
ディバイン SEED DESTINY おまけ――キャラクター辞典A女性主人公編
ステラ・ルーシェ
出典:機動戦士ガンダムSEEDDESTINY
種族:ナチュラル
所属勢力:DC
乗機:ランドエムリオン→アーマリオン→ヒュッケバイン→エルアインス→???
本編中盤において死亡した原作のヒロインその1(シンを主人公とするのなら)。地球連合で研究されていた身体強化による強化人間エクステンデッドの成功体。推定16歳。
SEEDシリーズの声優関係のジンクスとZガンダムにおけるフォウ・ムラサメポジション、ガンダムシリーズ伝統の強化人間ヒロインは助からない、と死亡フラグ乱立状態であったため、登場したての頃から死亡確定キャラとされていた。
原作と異なり本作ディバインSEEDDESTINY(以下DSDと省略)では、前作ビアンSEED開始前からファントムペインから離脱し、DCに所属している。
この事に関してDC首脳部では被害者である彼女らを利用する事を渋る者もいたが、本人たちの希望と意志を尊重する、という形に落ち着いている。
本編開始以前、ラドニアのラボで研究員共々反乱を起こした際に、これに横槍を入れたサハク家の特殊部隊に保護され、治療を受ける事となる。この後、スティング、アウルらと共にビアンの下に引き取られている。
ブロックワードや薬物投与、“ゆりかご”による調整などを受けずに生きて行ける健常な肉体を取り戻す事が出来たが、代わりにエクステンデッドとしての戦闘能力は減衰している。
パイロット技能からエクステンデッドが削除された状態といえば分かりやすいだろうか?
とはいえMSパイロットとしての能力は、約二年間の戦闘経験と学習能力の高さ、精神的に安定できる環境にあるため、地球圏最高水準に位置しており上から数えた方が早い。
擬似念動力に覚醒したシンと頻繁にコンビを組んでいた事、ディス・ヴァルシオンに搭乗し、イルイ、クォヴレーの影響を受け、微弱ながら念動力に目覚めているが、動物的な直感とさして変わらない。
パイロット適性は通常のMSのほか、バクゥやラゴウといった四足獣型に極めて高いものを発揮している。一時期、虎王機のパイロットか? と噂された事もある。
戦闘能力の方は原作並みかそれ以上ながら性格の方は変わらないどころか、甘やかしてくれる相手が複数いる為、甘えん坊っぷりが増しており、その様子はよく子犬と例えられる事が多い。
そのために軍人としての質は、よそさまにはとてもじゃないが見せられないほど低いが、無垢無邪気な言動故に、身内であるクライ・ウルブズのメンバーからは癒し系キャラとして重宝されている。
二次創作SSではよく、うぇ〜い、というのが口癖として返答、了承、疑問など多岐にわたって使われるが、本作においては『うぇぇい!!』など戦闘時での叫び声として用いられる。
精神年齢はデスピニスよりも低く、おそらく十歳にも届いていないと思われる。
とはいえ頭の回転が鈍いというわけではなく、MSの簡単な整備位なら自分で出来るし、軍事関係の知識はきちんと教え込まれている。たんに勉強していないだけの話。
現在はシンやアウルら以外にも、セツコ・エウレカ・デスピニスらと親交が深いようである。
戦闘になると様子が一変し極めて攻撃的かつ凶暴化するという一面を持っていたが、その性質は本作でも若干残しており、言動が攻撃的になる。
原作においてはシン・アスカとの関係は完全な恋愛関係とは言い難い要素を多々含んでいたが、こちらでは最初普通の少年少女として出会った事もあって、互いに普通の恋愛関係にある。
本作に置いていまのところ、ステラ自身は明確に自身の感情が恋というものであるとは理解していないが、シンの事を特別視しているのは事実である。
なおセツコへの反応からして自分以外の誰かをシンが好きになっても、自分もその相手の事が好きならさほど気にしないようである。この反応はセツコの事を実の姉のように慕っているからこそであろう。
スパロボZSPDでは死亡ルートが正史のようである。ちぇ。
ちなみにビアンを実の父のように慕っている様子は“うたわれるもの”のアルルゥを参考にしている。
次の機体は果たしてヒュッケ系ワンオフPTか、シンの後継機との合体を前提とした特機なのか、はたまたネタ兵器なのか。なお、シンとはBまで済ませている。
セツコ・オハラ
出典:スーパーロボット大戦Z・スーパーロボット大戦Zスペシャルファンディスク
種族:ナチュラル
所属勢力:DC
乗機:ボスボロット→ボン太くん(女性仕様機。後にボン子ちゃんとして新規に開発される)→バルゴラ三号機→???
スーパーロボット大戦Zの女性主人公であり、本作ヒロインそのA。DSDにおいては、スパロボZからの転移者ではなく、コズミック・イラ世界出身のナチュラルの女性である。アルコールが入ると若干絡む様になる。
甘いものが好きでスイーツの食べる歩きが趣味という設定は一緒。甘いものに関しては、胃袋がヨッシーと同じになる。コミックボンボンかなにかで解説されたヨッシーの胃袋はブラックホールだった。
原作では宇宙世紀生まれの人物で、U.C.87年の時点で19歳。一年戦争のコロニー落としによって両親を失い、さらにそのショックから記憶を失う。
DSDでは過去、テロの巻き添えによって父母を失って天外孤独の身となり、オーブにある孤児院で育った(マルキオ系列ではない)。
原作でも本作でも施設で育った後、適性があるとの事で状況に流される形で、DCと地球連邦軍に入隊。
丁寧な操縦技術を買われ、グローリー・スターのメンバーに選抜される。どれくらい丁寧かというと、ボン太くんでボトルシップを組みたてられる位、と本作では設定している。原作設定ではないので混同されませぬよう注意。
原作では赴任後、十日めにエゥーゴの部隊と交戦する事となり、これがセツコの初陣となる。
初の実戦でクワトロ・バジーナ、カミーユ・ビダンという有数のニュータイプと、ロベルト、アポリーの一年戦争を戦い抜いたベテランを相手にするはめになった不運な女性。
その全身絵が公開された時から、薄倖そう、幸が薄そうな所がいいと言われていたが、実際はさらにその上を行く内容で、様々な境遇のスパロボオリキャラの中でも有数の不幸を発揮する。
Z終盤、自らの悲劇的な運命を受け入れ諦めているかの様な言動、グローリー・スターである事を支えにしていると言うよりも、その事に縛られているといってもいい様子から、ユーザーに好かれているキャラとは言い難い。
その反面、原作においてシン・アスカとの絡み具合が一部のファンのドツボを串刺しにした為、一時期はシンとセツコ専用のスレが立っていた時期もある。ちなみに私もシンセツでちょこちょこ投下させていただいていた。
女性特有の情念の深い巧みな文章のファンサイトも存在しており、これは無理、絶対に勝てない、真似できない、と感嘆したのも良い思い出。
本作においては戦力としての質は極上だが、軍隊としての質は微妙で軍規もゆるめのクライ・ウルブズに配属となる。初っ端からシンのラッキースケベの被害に遭い、その後もたびたび接触が持たれている。
施設育ちで年下の子の面倒を見た経験から、ステラに懐かれる事やデスピニス、エウレカらと行動する事は苦ではなく、むしろ楽しんでいるもよう。
各隊員との関係は極めて良好なものの、パイロットの中では年長の部類に入る自分が、年下のステラやシンに比べて、技量で大きく劣ることに引け目を感じており、いささか卑屈な態度に繋がっている。
原作では激戦を潜り抜いた事とスフィアの力を借り、ゼウスでもエースとして十分な力を発揮したが、本作では素の実力のみである為、今のところ中の上くらい。
潜在能力はいかほどか判断材料が原作には少ないが、とりあえず頑張ればそのうちヤザンやガトーとガチンコ出来るくらいと設定。
原作でカツ・コバヤシにおかしい、と言われるほどシミュレーターに明け暮れ、実力をつけようとしていたが、本作ではまだそこまでの執念は発揮していない。なお、このことからセツコファンのカツへの評価は低い。
今後、はたして原作同様にスフィアの所持者となりあらゆるものを失い、身の破滅を待つ事になってしまうのか、それとも異なる道を歩むのか、いまだその分岐路にすら立っていない。
現在スフィアはデンゼルのバルゴラ一号機のガナリー・カーバーに宿っているが、これがZでセツコの運命を翻弄した悲しみの乙女なのかどうか、これもまた定かではない。
いまのところ、シンの事は凄い年下の男の子、弟みたいなもの? と見ている。
ロンド・ミナ・サハク
出典:機動戦士ガンダムSEED ASTRAY
種族:コーディネイター
所属勢力:DC
乗機:ミナシオーネ→ミナシオーネR
ASTRAYに登場する双子姉弟の姉で、オーブ五大氏族サハク家の首長コトー・サハクによって作られたオーブの為のコーディネイター。原作世界ではオーブの影の軍神と称され、畏怖されている。
いろいろな場所で単なる胸板であったり、貧乳であったり、原作でもロウ・ギュールに弟ギナと間違えられるなどいろいろあるが、本作においては美巨乳で長身の美女。造形の女神さっちんと、私的な好みの結果である。
原作に登場した当初は、世界の覇権を手にせんと暗躍していた女傑であるが、片割れであるギナの死と、それに関与したロウとの会話から思うところあって方針を転換している。
さらにその後、DESTINYASTRAYでは「天空の宣言」(詳細は賢明なる読者諸兄で調べられたし)を行っている。
この天空の宣言と同漫画内でキラがカガリを掻っ攫い、それを追うイグニスを止めた事でファンからの評価を著しく低いモノにした。VSASTARYの内容は非反映状態。
上記したステラ、セツコがシンに対するヒロインであるのに対して、ビアンに対するヒロイン。OG世界からヴァルシオンと共に転位してきたビアンを拾った張本人である。
その後、ビアンから齎されたOG地球とEOT技術を背景に、養父コトー・サハクと結託し、オーブにクーデターを巻き起こして同国の政権を強奪した。
自分の外見とスタイルをそのまま反映させたミナシオーネを愛機にするなど、ノリが良いかと思えば、ビアンが時折提案するネタ兵器には厳しい目を向ける所があり、ビアンの最大の理解者であり同時に天敵でもある。
推定180センチほどはある叢雲劾を片手で吊り上げるなど、最高峰の身体的コーディネイトを受けていると推察される。パイロットとしての資質も相当のものと推察されるも、本作ではビアン同様とても偉い立場にあるため、滅多に実戦には出ない。
そのため、経験値が不足しているので、戦闘能力は一般的な名有りのエースと大差がない程度に落ち着いている大差がない程度に落ち着いている。後方から指揮を取る事で最も能力を発揮するタイプにしてある。
最近やっている事と言えば、ビアンへのダメだしばかりになってきており、元からその立場上多くは無かった出番がいささか少なくなってきている。
ビアンが可愛がっているステラ達の事をビアン同様に可愛がっており、またシンに対しても次代のDCを支える逸材として格別に眼を掛けている。
主要キャラ編につづく。
おお、キャラ図鑑だ
・・・ミナ様の顔を思い浮かべようとしたら
遊撃宇宙戦艦ナデシコのカグヤ=オニキリマルが浮かんでました
疲れてるようなので目薬さして風呂入ってアストレイ読んで寝ます・・・
660氏に乙を捧ぐっす
新スレ早々おつです。
…けど、A?
誤字、というか消しミス。
>>戦闘能力は一般的な名有りのエースと大差がない程度に落ち着いている大差がない程度に落ち着いている
>>17 お恥ずかしいミスです。先修頃に、避難所の方に@男性主人公編を投下してあります。シン、ビアン、刹那の三名です。
また、この場を借りまして避難所の方で感想を下さいました816さんに感謝を、ご感想ありがとうございました。いまも菊地線感染中なのでキワモノな内容で頑張らせていただきます。
>>12 他を下げてまでシンを持ち上げるか
本当にシン厨は根性がねじ曲がってる奴が多いな
しかしゲストと全面戦争になったり、終わらない明日に逝っちゃったり、Kみたいなのもあるしねぇ
Wの前の宇宙じゃあいつらも・・・だし
長いループや数多い平行宇宙じゃ半端無い過ちを冒したりする正義の味方さんもいることだろう
最近じゃ甲児くんとそのオカンが・・・っていうかZEROの甲児くんは・・・
そういえばタツノコ系が参戦しなかったり参戦しなくなったりって何でなんだろ、モスピーダとか
……JとWのブレード人気でタツノコが欲を出してしまったとか?
>>20 でもそれとシンを過剰に持ち上げることとは関係有りませんよね?
たかが一人が見た夢の内容とまた別の一人の個人的見解に何いちゃモン付けてんのよ
文句が有るんなら自分は具体的にどう思うかを書きなよ
こんばんは、投下します。
ディバイン SEED DESTINY 第二十五話 とある天才の憂鬱
大西洋連邦MSWADのエースパイロット、グラハム・エーカーの駆るオーバーフラッグと、ディバイン・クルセイダーズのバラック・ジニン大尉の乗るアヘッドとの戦いは、おおよそ互角の展開を続けていた。
百年前、千年前と何ら変わらぬ青の色に染まる空に、漆黒と深紅の機械巨人が飽きることなく衝突を繰り返している。
互いに絡み合うかの様にして描かれる軌跡は、二重螺旋を描きビームとGN粒子の光の矢が虚空を貫き、螺旋の交点では光の刃同士の鍔迫り合いと受け太刀によって青みがかった白と紅の火花が散る。
「ぐ、フラッグでこのパワーとスピードは!」
ジニンの記憶の中にあるオーバーフラッグを確かに越えるこの性能、四年後の機体である筈のアヘッドに迫るものがある。
長距離航行用の追加ブースターとプロペラントタンクを切り離し、身軽にしたアヘッドの機動に、オーバーフラッグは易々とはいかぬが、影のように張り付き追従して刃を振るい、銃を撃ち、刃を振るう。
そして、よもやとは思うものの左利き用にチューンされたオーバーフラッグを前にしてジニンの心の片隅に引っ掛かるものがあった。
二十四世紀で世界を三分していた三大国が、ソレスタルビーイング壊滅のために選抜した各国のMSパイロットトップ十――都合三十人の中の一人に選ばれたユニオンのフラッグファイター。
基地での装備換装以外には、空中変形は不可能とされたフラッグで、その卓越した技術によって、見事人型から飛行形態への変形を実現させた空戦の貴公子。
「フラッグを熟知しきったこの操縦技術……まさか、ミスター・ブシドー、いや、グラハム・エーカーか!?」
地球連邦独立治安維持部隊アロウズにおいて、独自行動権ライセンスを与えられていた仮面の武人の名を、ジニンは思わず口にしていた。
黄色みがかったバイザーの奥でジニンがかすかな驚きと疑惑に表情を顰める一方で、オーバーフラッグを駆るグラハムは、ほぼ互角の戦いを演じるジニンのアヘッドを相手に、心中の覇気が高まるのを感じていた。
「よほどその機体に馴染んだパイロットと見抜いた! この私を相手のここまでの戦いぶり、まずは見事と言っておこう!!」
交差させていたビームサーベルを引き、拮抗していた力のバランスが崩れて体勢を崩すアヘッドの頭部を、オーバーフラッグの右足でサッカーボールを蹴る様に思い切り蹴りあげる。
フレームの耐久力の許容範囲か怪しい行為であったが、テストパイロット時代を含めフラッグという機体に惚れ抜き、その性能を一から十まで知るグラハムにそのような心配は欠片もなかった。
咄嗟に首を傾けたアヘッドの傍らの空気を抉り抜きながら、オーバーフラッグの足が空を蹴り、ぶお、と抉られた大気が深い紅色の装甲を叩く。
ジニンは前倒しに崩れたアヘッドの体勢を立て直すよりもそれを利用して機体を斜め下方に動かし、オーバーフラッグとの距離を開いた。後方警戒信号が鼓膜を叩くのとほぼ同時に、アヘッドをその場で旋回させて、左腕のGNシールドを機体前面に掲げる。
右半身をずらしてシールドに身を隠し、シールド表面に展開したオレンジ色のGN粒子が光の盾となってオーバーフラッグの連射したビームの粒子を残さず遮断する。
殺し切れぬ衝撃に機体が揺らされるが、ジニンは厳めしい視線を漆黒の空戦騎士から外す事は無かった。
ほかのオーバーフラッグの相手を一手に引き受けているティエリアとガンダムヴァーチェも、いい加減フォローを入れなければ厳しい状況だろう。
サキガケセブンソードとアヘッドスナイパーカスタムが攻撃を受けて、とても戦闘に使える状態ではない事も確認済みだ。この時点でロックオン達が機体に戻って参戦するという希望は潰えている。
なんとか状況を硬直させて味方の到着を待つ事だけが選択肢か、とジニンが思考の片隅で議論を繰り返していた時であった。
落着した地球連合の輸送機から二機の――ジニンにとってはあまりに因縁深い――ガンダムが姿を見せたのは。
*
輸送機の天井を斬り抜き、蹴り飛ばしたガンダムエクシアとガンダムデュナメスが、いま、背の円錐状のパーツから夕暮れの日差しと同じ色の光の粒子を噴出させながら、ふわ、と重力の鎖から解き放たれる。
かつて乗っていたガンダムデュナメスであるならば、背から燐粉のように風に散っている粒子は、透き通る様な緑色であるはずで、それとハロの収納スペースのない事が、ロックオンの不満点だった。
逆に言えば、それはその二か所以外にはこの機体に不満はない、ということだ。ヘルメットの奥にある唇を、舌でぺろりと舐めて湿らす。かすかに強張っている体が、ほどよく解れた。
「ハロ、動かないように気を付けろよ」
両足の間に挟んだハロに注意して、ロックオンは操縦桿を握る指を軽く開いて握り直す。幸いな事に操縦系統もロックオンの記憶の中のものと瓜二つであった。
「なんの因果かは知らないが、さあ、行こうぜハロ。ロックオン・ストラトスとガンダムデュナメスの、“二度目の”初陣だ」
携行式の大型ランチャー並みの大型精密射撃用スコープをコックピット上部から引き出してセットし、小さな接眼用モニターがせりだす。GN粒子の碧よりも濃い色合いの瞳の向こうに、ロックオンは敵機の姿を照準内に捉える。
デュナメスの額部分のV字型センサーが下方にスライドし、精密遠距離射撃用のセンサーが露わになる。長距離援護射撃用のGNスナイパーライフルを構え、デュナメスはパイロットと連動し、引き金に鋼鉄の指を添える。
まずは、ティエリアのガンダムヴァーチェを抑え込んでいる五機のオーバーフラッグを――
「デュナメス、目標を狙い撃つ!」
ロックオンとデュナメスの二本の指が二つの引き金を引き、GNスナイパーライフルから放たれた光線は、回避の暇を与えずに、照準を着けられたオーバーフラッグの翼を撃ち抜く。
初弾からの命中に、自分の中で良いリズムが出来上がっている事を意識し、ロックオンはその人工の右目に次なる獲物を映し出す。
さらに放たれたビームがもう一機のオーバーフラッグの脚部を撃ち抜いた時、GNフィールドを展開し、巧な連携攻撃を耐え忍んでいたティエリアは、ヴァーチェのモニターが映し出した機体に目を奪われた。
(ガンダムエクシアに、ガンダムデュナメス!? 馬鹿な、どうしてあの二機が? まさか、あの輸送機に載せられていたのか!!)
エクシアとデュナメスは、ティエリアのヴァーチェと同じくクリティックの率いるザ・データベースの所有する機動兵器である。と同時にクリティックの創造した人工存在イノベイターの専用機でもある。
そしてイノベイター専用機には擬似太陽炉ことGNドライヴ[T]と同等以上に、他勢力に対して秘匿せねばならない動力機関が搭載されている
プロトンドライヴである。異世界に存在した始原文明エスの技術によって製造された高出力動力機関で、現在はアリーのアルケーをはじめとしたザ・データベース機体にのみ搭載されているものだ。
DCに派遣されたティエリアの場合は、民間軍事企業からの出向という形にし、機体は社の機密であり同じく派遣された事にされているメカニックが整備しているから、DCの人間は一切指を触れていない。
しかし、エクシアとデュナメスはそうもゆくまい。敵軍の機動兵器を鹵獲したのだ。いちいちこちらに断りを入れずに運用し、プロトンドライヴの解析と研究を行うだろう。
ザ・データベースが独占している技術のひとつを、そう易々と渡す事は出来ない。ティエリアは最悪の場合、この場でエクシアとデュナメスを破壊する事さえ考えた。
デュナメスからの援護射撃で、ヴァーチェの周囲を取り囲んでいたオーバーフラッグが、被弾した味方のフォローや、回避行動に移った事でヴァーチェも反撃に映る余裕が生まれる。
自由になったGNバズーカの砲口を、エクシアとデュナメスに向けるべきか、判断に迷いを抱いたティエリアに、ロックオンから通信がつなげられた。
紫煙
「無事か、ティエリア?」
「ロックオン……。ヴァーチェも私も問題はない。だが、その機体はどうした」
「連合の新型らしいぜ。輸送機の中にあったものを使わせてもらっている。アヘッドを壊されちまったからな、おあいこさ」
ロックオンとの会話を進めながら、ティエリアは脳量子波を用いてDCの手に渡ってしまったエクシアとデュナメスの処遇に関して、イノベイターの首領であるリボンズ・アルマークとデュミナスに返答を求めていた。
ティエリアの瞳に金色の色彩が瞳から目全体へ放射される様にして輝きを放つ。人間が持つ脳量子波を受信・送信できるイノベイターの異能が、発揮されている時の特徴である。
脳量子波の通信に距離は意味を成さない。ティエリアの脳量子波は、地球からはるか遠く冥王星にいるリボンズと、ティエリアに取って神にも等しいデュナミスと思考を繋ぐ。
時間にして一秒にも満たぬ三者のやりとりは、ティエリアに少なくない驚きと不満を与えた様であった。
男というには細く嫋で、女というには固く強い印象を受ける冷たい美貌は、納得しきっていないと明らかに分かる表情を浮かべている。
しかし、リボンズとデュナミスの指示に逆らうつもりはないようで、ティエリアはすぐさまオーバーフラッグの迎撃に、再びヴァーチェを動かし始めた。
「エクシアとデュナメスをDCにくれてやるというのか、リボンズ・アルマーク!」
ティエリアの感情のささくれを代弁するかのようにして、ヴァーチェの胸部前に構えたGNバズーカに、圧縮された高濃度のGN粒子が充填されてゆく。
一撃の破壊力ではこの場にあるMSの中で最大の砲撃が、南洋の海と空を無慈悲な桃色の光で染め上げる。
*
ロックオンがティエリアの援護に動いていた時、刹那はエクシアの右腕にあるGNソードをライフルモードにセットし、隊長格と思しいオーバーフラッグへと挑みかかっていた。
熟連のパイロットであるジニンの駆るアヘッドを相手にあれほど戦って見せるパイロットとなれば、連合でも名だたるエース格が搭乗しているに違いないだろう。
GN粒子の集束率を下げ、やや拡散気味に連射したビームを、アヘッドと切り結んでいたオーバーフラッグは大きく後方に下がって回避する。
その動作はイオンプラズマジェットの推進力が大きすぎるせいか、まるで手足の糸が切れた操り人形のように見える。
オーバーフラッグはかわしただけでなく、左腕のビームライフルをエクシアに向けて連射し、楽しんでいた戦いに横槍を指された苛立ちを叩きつけてくる。
刹那はエクシアを右方向にそのままスライドするかのような滑らかな回避機動を取らせて、放たれたビームに虚空を貫かせる。
「大尉、そのフラッグはおれが相手をする」
「セイエイか、しかし貴様では」
「ロックオンがティエリアの援護に向かっている。大尉もティエリアを頼む。その間抑える位ならできる」
「……分かった。死ぬなよ」
「了解」
エクシアはGNソードの刀身を展開し、オーバーフラッグへと斬り掛かる。オレンジ色の粒子を奔流の如く放出しながら斬り掛かるエクシアの迫力に、グラハムはアヘッドへの追撃を中止する。
「私の戦いに横槍を入れるか。その意気やよし、しかし、私は私の戦いに水を差されるのをよしとはしない!」
見栄を切るかの様に左手のビームサーベルを一振りし、オーバーフラッグは大上段に振り下ろされたGNソードを受け止めた。
受け止めた青白いビームサーベルと、斬り込んだGNソードの刀身の接触面に激しいスパークが発生して、オーバーフラッグとエクシアのかんばせを煌々と照らす。
「流石に我が軍の最新鋭機、すさまじいパワーだ。が、しかし、機体の性能に頼るだけでは一流とはいえまい! ましてや盗んだ他人のモノでは!!」
四円
弩濤の迫力を持って叩きつけられたエクシアの一撃にオーバーフラッグの細腕は耐えられまいと見えたが、柳の木の様にしなやかな動きでGNソードをビームサーベルの光の刀身に沿って滑らせていなす。
GNソードの刀身が流されたのにつられて機体の重心が崩れるのを、刹那はコックピットの中で敏感に感じ取った。
刹那が少年兵としてゲリラのキャンプにいたころ、ナイフを使った体術の訓練で、同じようにして赤毛の男に敗北した記憶が刺激される。
右半身が泳ぎ無防備な姿を晒すエクシア目掛け、グラハムは裂帛の気合いと共にビームサーベルを振り下ろす。
無言の気合いひとつで樹木を揺らして木の葉を散らして見せるだろう。グラハムの心身に充溢した気迫は、それほどの強さであった。
エクシアの左手が動く。刹那は肩口にあるGNビームサーベルや、腰後部のGNビームダガーでは間に合わないと判断し、オーバーフラッグの左手首を握り込んで斬撃を押さえ込んだ。
「ほう、目はいいようだな」
「く、エクシアの性能を活かしきれれば」
下弦の月を描いてGNソードがオーバーフラッグの腰を狙って風を切る。GN粒子のコーティングによって切断力を強化された刃は、オーバーフラッグの装甲を容易く切り裂く。
むろん、当たればの話ではあるが。
左手と左手で結ばれている事を利用して、グラハムはエクシアに掴まれている左手首を支点に、後ろ向きに振り子の動きで機体をはね上げる。時計で表すと、六時を指していた針を、十二時に動かした時の動きだ。
そのアクロバティックな動きに思わず刹那の目が見開かれる。しかし腕を休めはしなかった。
戦場で動きを止めれば死が待っている事を、刹那は多くの戦友たちの死と死に晒された自分自身の体験によって、骨身に思い知らされていた。
「うおおおっ!」
振り切る前にGNソードの刀身を翻して、オーバーフラッグへと銀の切っ先を突きこむ。グラハムの瞳は迫りくるGNソードの鋭利な切っ先の先端を睨みつけていた。
思わず映像の切っ先に、そのまま瞳を貫かれるような錯覚を覚える迫力。脳から分泌されるアドレナリンの量が増し、我知らずグラハムの口元が吊り上がる。
どこかあどけなささえ残すこの青年にはおよそ似つかわしくない、闘争の本能に身を委ねた者の浮かべる笑みである。
これだ、毛の一本から指先まですべて燃やしつくす事の出来るこの高揚感。この刹那の一瞬に訪れるこの世ならぬ生と死の狭間でのみ、感じられる快楽にも似た死の混じる快楽――恐悦!
この私の胸を焦がし、体を内から焼く事が出来るか、ガンダム!
グラハムは本来大西洋連邦のモノであるはずの目の前の機体を、ガンダムと呼称した。
地球連合側で前大戦の活躍から、なかば伝説と化したストライクの事を、民間人であったというパイロットが、OSの頭文字を取ってガンダムと呼んでいたことは、軍部や傭兵稼業の者達の間で知られている。
グラハムもその事を知る者の一人で、GAT−Xナンバータイプの頭部を持つ機体を、ガンダムと好んで呼称している。ひとえに、そのガンダムという響きの持つ頑健さと気高さを気に入ったからだ。
彼自身もエールストライクやイージス、制式仕様のレイダーに乗った事があり、その戦闘能力を認めている。
それ故に、いま、自分の目の前で刃を振るい立ち塞がるガンダムの実力が、生半可なものであれば決して許す事が出来ないと、強く思っていた。
グラハムの腕と足がそれぞれ別の生き物のように動き、オーバーフラッグに新たな動きを与えた。
「ふん!」
「これも躱す!?」
グラハムは更にオーバーフラッグに身を捻らせてエクシアの刺突をかわして見せたのである。エクシアの描いた銀の軌跡は漆黒の装甲にかすりもしない。
「いつまでも手を繋いではいられまい、ガンダム!」
ダンスのパートナーは互いのテクニックが拮抗するからこそ、美を思わせる芸術となる。ならば釣り合わぬパートナーとのダンスは不格好な芸術への冒とくにしかならない。ならばこちらから手を離すのが良策。
グラハムは、自らの技量に追いつけぬパートナーを見下ろす孤高の天才ダンサーの瞳で、エクシアを見つめていた。
「ぐっ」
オーバーフラッグは身を捻った反動を利用して、エクシアの機体を大きく放り投げる。ぐんと揺れる視界の中で、刹那は眉根を顰めながらGN粒子とテスラ・ドライヴの特性を利用しすぐさま機体の体勢を立て直した。
4円
現在第一線で活躍しているMS同様、このエクシアにもまたテスラ・ドライヴは搭載されている。
左手にGNビームサーベルを握らせて光刃を煌めかせるも、すでにエクシアの目の前にはオーバーフラッグの華奢な姿が迫っていた。パイロットの判断と思い切りの良さは並ではない。
斬る為に振るう筈だったGNソードを眼前に横一文字に構えて振り下ろされたビームサーベルを受けた。さらに刹那の瞳に映るもう一本の、稲妻が変じた様な青白い光を放つビームサーベル!
グラハムはオーバーフラッグに二刀を抜かせていたのである。刹那がエクシアに二刀を握らせたのを見て同じ事をしたのか、あるいは、単に二人の思考が重なったのか。刹那にとっては後者であって欲しくない所だろう。
オーバーフラッグが圧し掛かる様にしてエクシアと二刃を交差させる態勢だ。本来、イノベイター専用機としてザ・データベースの技術の粋を凝らしたエクシアの方が、オーバーフラッグの性能を上回る。
しかし、まだ搭乗して一時間と経っていない刹那は、エクシアに対して強い親愛の情と慣れ親しんだ感覚を覚えてはいても、まだその性能を完全に引き出せてはおらず、グラハムを魅了するほどの力を発露しきれていない。
「くっ!」
『ふ、機体の動きが素直すぎる。まだ若いパイロットの様だな、ガンダム』
「な、接触通信!? フラッグのパイロットか」
『これは、私の勘通り年若いパイロットか。だからといって手加減はしないが』
「何のつもりで通信など繋げる!」
言葉で嬲るつもりか!? 一見冷めているようで、その実、心中には火のように熱い激情を持つ刹那は声を荒げていた。
グラハムはその反応に、年長者としての感覚ゆえか、微苦笑を口の端に浮かべる。彼にも感情に流されて声を荒げた少年の時期があったのだろうか。この青年にしては珍しい反応といえよう。
『知りたいか、ならば答えよう。ガンダムの名を冠する機体に乗りながら、稚拙な技術で操る事しかできぬ君に腹立たしさを覚えている!』
「おれが、ガンダムに、エクシアに相応しくないと言うつもりか!?」
『ならば問い返そう。君は、自分がガンダムに相応しいと思っているのか!』
「それ、は」
刹那がグラハムの言葉に動揺した一瞬、グラハムはコンマ秒単位の素早さでビームサーベルの動力をカットにし、刃を消失させる。
受け止められていた刃が無くなり、空になったビームサーベルの柄が、GNソードとGNビームサーベルを素通りする。
そして、GNソードとGNビームサーベルを通過すると同時に、再びビーム刃が顕現した。ABC済みの実体剣やシールドに受け止められた際に、ごく稀に使用される接近戦での高等技術である。
これを訓練でできる者も、実戦で行う事はまずあり得ない。瞬きひとつのあいだに、ビームサーベルの動力のオン・オフを判断する冷静さを保ち、判断を過てば逆にこちらが斬られる恐怖に打ち勝たねばならない。
恐怖が判断を鈍らせ狂わせるのは改めて語るまでもない。日常生活の中でいくらでも経験する事の一つだろう。恐怖に震える己に克つ事のできる人間は数少ない。
ましてやそれを戦場で行うとなれば尚更の事。そしてグラハム・エーカーは、恐怖に打ち克つ事の出来る人間だった。諦めが悪くてしつこくって、自己顕示欲には忠実な人物ではあるが。
オーバーフラッグのビームサーベル二本がエクシアの装甲を切り裂くその寸前、刹那の闘争本能と生存本能が指を動かしていた。
「ぐうぅっ!!」
ビームサーベルが振り下ろされきる前に、前進したエクシアの額がオーバーフラッグのオレンジのマスクを強かに打って砕く。下がるのではなく前に出る事で活路を開いたのだ。
エクシアがオーバーフラッグめがけて頭突きを敢行した為に、振り下ろしきれなかったオーバーフラッグの両腕は、肘の箇所がエクシアの両肩に激突して万歳の姿勢で大きく後方に弾かれる。
ぱらぱらと砕かれた顔面保護のマスクの破片が剥がれ落ち、歯を食い縛って機体を揺さぶる衝撃に耐えるグラハムは、機体を傷付けられた屈辱に喉の奥で苦鳴を噛み殺す。
「いまはまだ相応しくなくとも、おれは、ガンダムになる! ガンダムにっ!!」
刹那の心の底からの宣言と宣誓に応えるかの様に、エクシアの背部から放出されているGN粒子の量が瞬間的に増す。爆発にも等しい勢いでGN粒子を放出し、エクシアは弾いたオーバーフラッグめがけてGNソードの切っ先を向けて突進した。
まだ若いがそれゆえの勢いがある猛獣を連想させるエクシアの姿を前に、グラハムの胸中に黒い恐怖の一点と、それを塗り潰して有り余る赤い高揚感が津波のように溢れた。
窮鼠猫を噛む――いや、これは追い詰められた幼い獅子が、その牙を剥いたのだ。追い詰めた相手が鼠ではなく獅子であった事、それはグラハムにとって喜ばしい誤算であった。
「ならば、真正面から受けて立つのが、このグラハム・エーカー! なぜならば、この世に生まれ落ちてから、私が男児でなかった瞬間はただの一時もありはしないからだ!!」
右腕のビームサーベルを放り投げ、左手のビームサーベルを左八双に構えて、オーバーフラッグは亜音速で迫りくるエクシアへと真っ向から斬り掛かる。
相討ちを前提とした古代の剣術の試合が現代に蘇ったかの様な、あまりに無謀な両者の激突。第三者がいたならば無残に散る二つの命と機体の姿を幻視して息を飲むだろう。
しかし、グラハムと刹那が互いに放つ気迫のすさまじさに、開きかけた唇は固く凍り、伸ばそうとした指は石と変わって動かなくなるにちがいない。
「御首頂戴!!」
「おおおお!!」
時代がかったグラハムの叫びと共に振り下ろした一刀は、エクシアの右頸動脈を狙い、降り抜けば左脇腹まで一閃を描いてエクシアのボディを両断するだろう。
野獣も怯む刹那の咆哮の尾を引きながら突き出された一刀は、オーバーフラッグの胸部を何の抵抗もなく、水を貫くような感触でオーバーフラッグを串刺しにするだろう。
しかし刀身に巻き付く風を貫くGNソードは、その切っ先をオーバーフラッグの胸部から、左八双のビームサーベルへと向きを変える。
さらに刺突は斬撃へと変わる。慣性制御機能を最大に生かし、突き込みに合わせて乗せていた加速の方向をかえ、上段への切り上げへと変貌する。
オーバーフラッグの左一刀をGNソードが受け止めた。わざわざ刺突を斬撃へ変えたと言うのに、結果が平凡な太刀筋では何の意味がある?
エクシアの――刹那の意図が読めず、グラハムは眉根を寄せ、すぐさま目の前で起きている変化に気づき寄せた眉を大きく跳ねあげた。
わずかずつ、それでも確かに、GNソードの刀身がビームサーベルを切り裂いている。相討ち覚悟と思わせる吶喊行為それ自体がフェイクか!
「アンチビームコーティングした実体剣か!?」
実際にはABCではないが、刀身に纏うGN粒子が刃状に形作られたビームを遂に斬り裂きぬき、遮るものを排除したGNソードはオーバーフラッグの胸部に縦一文字の傷を浅くではあるが刻みこむ。
「私のフラッグに傷を!」
一瞬で脳天まで上り詰めた怒りを込めて、グラハムはオーバーフラッグの左拳で思い切りエクシアの顔面を殴りつけた。ヘビー級王者のストレートを貰ったストロー級のボクサーのように、エクシアは大きく後方へと弾かれる。
海面すれすれで体勢を立て直すエクシアを、オーバーフラッグが滞空したまま見下ろす。左手には再びミラージュコロイドによって刃を形成したビームサーベルが、だらりと下げられている。
無言のまま見下ろすものと見上げるものとに分かれた両者は、張り詰めた糸の上に立っているように、いつ破れるとも分からぬ緊張で周囲の大気を凝固させていた。
期せずして操縦桿を握る二人の手にさらに力が込められた時、敵機の接近を告げる警戒信号が、“エクシア”のコックピットに鳴り響く。
「連合の援軍、イナクト? ユーラシアの部隊か」
「ええい、今度はこちら側からの横槍か」
モニターに拡大された飛行群は、モスグリーンのカラーリングがなされた機体だ。フラッグとよく似たひょろりとしたスタイルだが、こちらの方がより曲線を帯びていて、どことなくお国柄の違いみたいなものが見て取れる。
全機が人型から戦闘機形態へと変形済みで、高速でこの戦闘空域へと接近してくる。接触まで一分とかかるまい。
分類上は友軍の登場ではあったが、大西洋連邦に属するグラハムにとっては、絶対に味方とは言い切れぬ陣営だ。
先の大戦でアークエンジェルがユーラシア連邦のアルテミス基地に寄港した際、同じ連合陣営ながらクルーが拘束されストライクを接収されそうになったように、潜在的には敵なのである。
対ザフト、DCとの戦争が終結すれば次なる敵は、同じ地球連合軍として戦ったユーラシア連邦と東アジア共和国なのだ。
支援
そのユーラシア軍が姿をあらわしたことを、諸手を上げて喜ぶ神経をグラハムはただの一本足りとて有してはいなかったし、二度目の横槍に腹腔に苛立ちを溜め込んでさえいた。
グラハムがイナクトに目をやっていた隙に、ジニンから撤退の指示を受けた刹那は、後ろ髪を引かれる者を感じながら、エクシアに背を向けさせていた。
「大尉、サキガケとロックオンのアヘッドが残っている。被弾はしているが、GNドライヴがまだ生きている」
「リモートコントロールでの自爆はすでに試みたが、失敗している。今からではどうしようもない。そのガンダム二機と引き換えという事になるか」
「……すまない」
「言うな。責任はおれにある」
滅多には耳にする事の出来ない刹那の謝罪の言葉であったが、それに驚く余裕はジニンにはなかった。
アヘッドに迫る性能を持ったこの世界のオーバーフラッグに、どういった運命の皮肉なのか、二十四世紀の世界で恒久平和実現の壁となって立ちはだかったソレスタルビーイングのガンダムの出現。
しかもそのガンダムが、どういうわけでかジニンの味方陣営の手に渡っているのである。特に刹那の乗っているエクシアなど、ジニン自らがアヘッドを操って両腕を斬りおとし、大破させた機体なのである。
エクシアとデュナメスが出現し、それに乗っているのが自軍のパイロットであると分かった瞬間、戦場にありながら、ジニンは思わずめまいを覚えたほどである。
軍人として鍛え上げた強固な精神力の壁に罅が入る音を、ジニンは鼓膜の奥から聞いた。かようにジニンの精神は敵と味方によって打ちのめされてはいたが、エクシアとデュナメスの出現で状況が好転したのは事実だ。
ジニン、ティエリア、ロックオンの三人による反撃は、彼らを包囲していたオーバーフラッグ五機に大きくダメージを与え、撃墜にまでは至らなかったものの追撃の出来ない状態にはしてある。
とはいえ、こちらも推進剤や弾薬、またパイロット自身の体力が疲弊しており、そこをイナクトの部隊に襲われてはひとたまりもない。
ジニンはアヘッドの手首内側やリアアーマーに内蔵してあるスモークと各種チャフをばら撒き、最後尾に位置して撤退を促す。
エクシアが相手をしていたオーバーフラッグは、同部隊のオーバーフラッグのフォローに回っているようで、追撃の姿勢を見せてはいない。
刃を交えたジニンの感想としては、感情の変動が激しいがそれに流されない鉄の理性を保持しているように思われた。
もう一度ユーラシアのイナクト部隊を見れば、空を行くイナクトの他に海面をホバー走行で疾駆する巨大な機影があった。頭頂高までで通常のMSの倍はある。巨大な山を大雑把に人型に整えた様な、異様なシルエットであった。
戦艦の砲塔なみの巨大なライフルを持ち、MS運搬用のトレーラーの上に巨大なMSの上半身を乗せたかの様で、胸部には二連装の砲塔が一門あり、ザフト系列と同じモノアイタイプの頭部だ。
「なんだ、あの機体は、MAなのか?」
ジニンの疑問に答える者は無かったが、山の様に巨大な機体の猛威をDCが知ることになるのは、わずか数日後の事である。
*
孤島の海辺にMS形態のイナクトが着陸し、ドラムフレーム状のコックピットが勢い良く開いて、赤茶色の髪を持った青年パイロットがヘルメットを小脇に抱えて顔を出した。
口を黙ってシリアスな表情を浮かべ、窓際に立っていたら、声を駆けてくる美女には困らないハンサムであったが、大人になりきれていない子供みたいな表情を浮かべていて、やんちゃなガキ大将のようだ。
「おいおいおい、ユーラシア連邦の“ザ・エース”、パトリック・コーラサワー様のご登場だってのに、DCの連中の影も形もねえじゃねえか! あるのは撃墜された大西洋連邦の輸送機と、あちこち壊れたオーバーフラッグばっかりかよ」
しえん
大西洋連邦籍の輸送機の周りはオーバーフラッグで固められ、こちらを煙たがっている様子が明らかに分かるが、コーラサワーは特に気にしなかった。
彼にとって重要なのは自分がスペシャルな活躍のできる舞台が整っているかどうか、その舞台で自分がどれだけ崇め称えられるスペシャルな活躍が出来るかであって、すでに幕の下りたこの場には興味がないからだ。
コーラサワーは自機のイナクトの後ろに止まっている巨大な機体に目をやってから、通信機に唾を飛ばす。自分のイナクトより目立つ機体が気に食わないという気持ちが、ちょっぴり心の中にあった。
「おうおう、てめえの機体が鈍いせいだぞ、シロップ!」
「誰が炭酸水に入れる甘いのだ。貴様こそ甘ったるい名前だろう、パトリック・コーラサワー。なにより上官への口の利き方には気を付けろ」
「んん〜な鈍亀に乗っている奴が偉そうにすんなっつの」
「……貴様には言葉を理解する知性が無いのか、品性が欠乏しているのか。いや、両方か」
こめかみに指を当てつつ、力の無い息を吐いたのはシロップことパプティマス・シロッコ大尉である。何の皮肉かコーラサワーと同じ部隊に配属され、似たような漫才を強要され、失望する気力さえ残っていないらしい。
自らを天才と認ずるこの男の天敵は、コーラサワーのように我が道をマイペースに貫くタイプなのかもしれない。天才の言葉も相手に伝わらなければ馬の耳に念仏だろう。
「見た目に囚われてこのジ・OUの本質を見極められぬとは、貴様の目も節穴だな」
「へん。いまはMSの時代なんだぜ。MAモドキのMSなんぞ流行らねえって」
とはいうものの、地球連合軍は全体的にMAへの回帰傾向が見られていて、MSよりもMAの開発に力が入れられているのが現状である。
MAを用いて敵戦線に楔を撃ちこみ、そこに多数のMSや航空機、戦闘車両などを投入して一気に敵戦線を崩壊させるのが、現在地球連合で構築されている基本戦術だ。
楔役には高性能なMSよりも頑健で大火力を持ったMAの方が適任なのは事実だ。そういった意味では、いまシロッコが搭乗しているジ・OUは通常のMS五機分に及ぶ火力を持ち、最新のMAに匹敵する火力を持つ。
巨体故に運動性には問題を抱えるものの、シロッコの技量が加われば敵対者にとっては、ハリネズミのように武装したうえに分厚い装甲を持ち、巨体ながら軽やかに動いて攻撃をかわす強敵となるだろう。
ともあれ、ジ・OUのスペックをいちいち口で説明するつもりなどシロッコには露ほどもなく、自己肯定にかけては天下一品のコーラサワーに対し、不愉快なものをみる瞳を向けるきりだ。
シロッコの興味はもっぱら墜落している大西洋連邦の輸送機へと向けられている。
内側から切り裂かれた天井や、その周囲に転がっている深紅色のMS――たしかDCのアヘッドだ――を見れば、機体が強奪されたのだと想像する事は簡単だった。
大西洋連邦がわざわざこのタイミングで戦場に運び込もうとした機体にも興味は惹かれたが、それよりも中破判定を受ける程度に破壊されたアヘッドの動力機関に、シロッコは注目していた。
地球連合軍の基地を次々と襲撃していたという謎のガンダム。シロッコもメッサーラで戦ったガンダムの背から噴き出ていた赤い粒子。
電波障害の他に慣性制御や重力制御をおこなうと思しい特性を持つそれらと、酷似したものがDCの新型機に搭載されている事は耳にしている。
テスラ・ドライヴにも同様の機能はあるが、フォトンの崩壊現象と思しい光の粒子を伴いはしない。いまだ地球連合が手にしていない技術が、DCが破棄せざるを得なかった機体から入手できるかもしれないのだ。
自分の中の技術者としての部分が、むくむくと鎌首をもたげるのを感じ、シロッコはナイフで切り裂いた様に薄い笑みを浮かべた。
「混迷の時代か。まさしく今のこの世界に相応しい言葉だ」
「なにぶつぶつ言ってんだぁ、モロッコ?」
「誰がジブラルタル海峡を挟んでヨーロッパと眼の鼻の先にありアトラス山脈の跨るイスラムアフリカの国だ!」
「おお、息継ぎなしでよく言えたな」
「……貴様は」
シロッコの苦労は、コーラサワーと共に居る限り尽きる事はなさそうだった。
つづく
シロッコはZスレの恐ろしいシロッコをイメージしていたはずなのにギャグ路線に。まあ、これも味のひとつという事でご容赦を。
ジ・OUはオリジナルではなく、『ジオンの再興』という漫画に出てくるネオ・ジオン所属のMSです。逆襲のシャアの開始前にアフリカで猛威をふるった機体との事。
誤字脱字・ご指摘・ご感想いただければ幸いです。ではでは、おやすみなさい。
乙でしたー
なんだこのコンビwwww
乙
>>34 ジニンが落としたのはエクシアの肩腕じゃね?
まあジニンが両腕落としたと認識してても不思議じゃないけど
>>38 ・・・・・・・・・・・・OTL。
片腕の間違いです。ご指摘ありがとうございます。まあ、その、マントがはためいていてよくわからなかったから、という解釈もありでしょうか。
それと支援くださった方、遅ればせながらお礼申し上げます。ありがとうございました。
乙っしたー
ジオンの再興、持ってたから改めて読んだが・・・
一機で連邦の戦線突破してんな、ジ・OU
しかも乗ってたのはただのベテラン兵ですた
総帥乙!
今回は00祭だな
現時点の刹那はハムどころかジニンやコーラより弱そう
これでアリーやリボンズと会ったら…
変革するまでは苦労しそうだ
乙〜
ハムINオバフラが00前期後期通して一番好きな自分には最高だったと言わせてもらおう!
乙っす
これでGNドライヴが二個回収されたか。一個はGNフラッグ用になるか?
>>41 変革は変革でも、このSSだとGN粒子じゃなくて菊地線で変革しそうw
>>44 それシャレになりません。でもさじ加減を間違えなければ凄く面白くなりそうです。
シンが刀使いだから刹那はナイフ使い、最低でも小太刀使いになればキャラが被らないな
小太刀はるろ剣かとらは3辺りとしてナイフ使いは…ニトロの人狼のやつか?
先生! 刹那は煎餅でも焼いて、鋼糸使い兼(ライルを見つけ出した操作能力から考えても)人探しになるのがいいと思います!
ほら、丁度一文字違うだけだし。
「気の毒に、出会ったな『私』に」
おれが私に、刹那が自分を呼ぶ言葉が変化した時、アリー・アル・サーシェスの前にいたのは、彼の知らない人間――いや、存在であった。
死さえも快楽を得る為のエッセンスと捉えぬこの赤毛の傭兵が、頭のてっぺんから足の爪先まで、真性の恐怖に襲われたのは、目の前に突如現れた刹那ではない刹那の為か。
アリーは、拳銃に添えた引き金を引いた。かつてない神速の早撃ちである。
殺った――そう確信するのと、視界がぐらりと揺らいだのは同時であった。自らを私と名乗った刹那によって切断されたアリーの首は、ぼとりと地面に落ち、ゴミの様に転がってからゆっくりと血を滲ませ始めた。
こうですか、わかりません!
とまあ、冗談はさておき、これかひとっぷろ浴びたら投下させていただきたく存じます。
では、投下します。
ディバイン SEED DESTINY 第二十六話 妖眼の戦鬼
サキガケとアヘッドスナイパーカスタムを失い、その代償としてガンダムエクシアとガンダムデュナメスを手に入れた刹那達を待っていたのは、交戦の跡がむざむざと残るタマハガネの姿であった。
グローリースターとジニン小隊が哨戒・偵察行動に出ていた間に、偶発的に遭遇した敵部隊を交戦したとの事だ。もっとも、交戦の形跡こそ残っているが、被弾の形跡はない。
タマハガネに残っていた戦力だけでも一個大隊を相手に互角以上に渡り合えるエース集団である事を考えれば当然のことかもしれない。
大雑把な数の数え方ではあるが、MSが3、4機で一個小隊、四個小隊で一個中隊(12〜16機)となり、四個中隊で一個大隊(48〜64機)、四個大隊で一個師団(192〜256機)となる。
必ずしも上記の法則に従うわけではないが、これが当代のMS部隊の編成目安となり、これに歩兵や戦車、航空戦力各種を組み合わせて運用されている。
刹那達が席を空けていた間に戦った連合の戦力は一個中隊ほどの様で、同数の敵部隊との戦闘では、まず負ける可能性のないクライ・ウルブズにとっては、さしたる負担を感じる事もなかったろう。
青い海面に漏れだした推進剤や潤滑油その他もろもろの液体が溢れている中に、着水したタマハガネの威容がある。周囲に漂う黒煙や、海面に浮き沈みを繰り返しているMSの残骸は、すべてが地球連合側の機体のなれの果てだ。
水平線の彼方が燃えるような夕暮れの色に染まる時刻、出撃した時とはずいぶんと異なる様相に変わったジニン小隊は、管制オペレーターの指示に従って艦後部のデッキに着地し、格納庫へと入る。
アヘッドとは異なる見慣れないガンダムタイプの機体の姿に、メカニック達が不可思議な顔をしたが、ダメージの痕がある機体の姿を見ればなによりパイロットの無事と機体の状態の方が気になる。
エクシアやデュナメス、ヴァーチェ、ジニンのアヘッドらの他に後部デッキにはステラのエルアインスとアルベロのビルトシュバイン、アウルのエムリオンRCの姿があった。
どの機体も見た目から分かるほどの損傷を負ってはおらず、修理されたというわけではないだろうから、パイロット達の方も無事なのだろう。
シールドとサブマシンガンをメンテナンスベッド脇のラックにかけ、ジニンは機体を直立式のメンテナンスベッドに固定させる。目を瞑っても行えるくらい馴染んだ機体の停止作業を終了し、ハッチを開いて外へと出た。
ラダーを使ってジニンが格納庫に降り立つと、機体に近づこうとしていたDCのメカニックを押し退けて、ティエリアの所属するPMCの整備士達が姿を見せてヴェーチェとエクシア、デュナメスらに群がる。
ティエリアとデスピニス、それに両者の機体と整備士などの専門スタッフをDCに出向させている企業はネルガルといい、近年急激に業績を伸ばしてきた軍需企業だ。
兵士の育成、兵器開発をはじめとした戦争関連の事業を一手に引き受け、DCのみならず地球連合各構成国とも取引がある。これはザ・データーベースが地球圏の争いに半公的に介入する為に創設したダミー会社だ。
社員のほとんどはザ・データベースの首魁クリティックが製造したディセイバーという人造人間達からなる。
このネルガルという社名には一応の由来が存在しており、こちらの世界に転移してくる前の世界で、ザ・データベースの前に立ちふさがった部隊の、旗艦的な役割を果たしたナデシコCを開発した会社の名前だ。
ナデシコシリーズをはじめ、エステバリスというMSより二回り近く小型の機動兵器を主力商品とした企業で、ネルガルの工業力と技術力はクリティックをはじめ地球を狙っていた各勢力にとって災厄となった。
クリティックが創設したネルガルは、ナデシコ級やエステバリス関連の技術をベースに、アルヴァトーレやアルケーガンダムから得られた技術を元にした製品を主力商品として販売している。
そのネルガルのロゴと社名の入ったツナギを着た整備士達の姿を、砂糖菓子に群がる蟻のようだ、と刹那はエクシアのコックピットでふと思う。彼らの前ではとても口には出来ない感想だ。
ティエリアにも時に感じることであるがネルガル出向の整備士達は、まるで良くできた人形のようだ。言葉をかければ返事はあるし、廊下で会えば挨拶もする。食事もすれば、笑みを浮かべもする。
けれども人間ならそれらの行為に当たり前に伴う筈のモノが、彼らにはなかった。あったとしても、それは普通の人間には感じ取れないほど希薄なものだったのだろう。それは、心。あるいは感情と言い換えてもいい。
いえそれはやはり煎餅屋さん本人のほうが良いでしょう。
これ以上菊池線を高くするといろいろな意味でメルトダウンするのでもうシン君だけで臨海寸前ですよ。
もっとも某装○悪○にはむしろマイナスにマイナスをかけてプラスにする感じで充満させる必要がありますが。
特に工藤の兄貴か某十六夜をぶち込むことで。
美味い、まずい、気分がいい、むしゃくしゃする、鬱陶しい、悲しい、憎たらしい、人間なら誰だって持ち合わせている筈の情動が彼らの精神構造からはごっそりと欠如しているのだ。
だから彼らの言葉も行動もなにもかもが、人間以外の何かが人間の真似をしている――そんな印象が強い。
男も女も例外なく工場で製造される規格品の様に端正な顔立ちの彼らの皮を剥いだ時、そこにあるのは果たして人間と同じ肉と骨と血と心臓だろうか?
ローストされた牛肉を、茹でられた温野菜を、香ばしく焼かれたパンを、魚のフライを口にする時、彼らは硬さも触感も量も異なるそれらの食べ物を、すべて同じリズムで咀嚼してはいないだろうか?
鏡を前にしているのかと錯覚する様な無感情な彼らの瞳を覆う瞼は、風がある時もない時も、煙にまかれた時も動く事はないのでは? あるいは、どんな時でも同じ間隔で瞬きを繰り返してはいないか?
そんな埒もないことを考えている事に気づき、刹那は軽く首を振って自分の愚かな妄想を振り払った。
そんな馬鹿な事があるものか。生体強化によって超人となった生体強化兵士、脳髄以外をすべて機械に代替したフル・サイボーグなどのSF的な存在が現実になったとはいえ、完璧な人造人間はまだ未来の産物の筈だ。
何世紀も昔の映画に、未来から殺し屋のロボットが送り込まれる話があったが、あくまで映画の中の話に過ぎない筈なのだ。
刹那はヘルメットを小脇に抱え、床に降り立つや否や、PMCの整備士達に取り囲まれ、ロックオンの方は、と首を巡らすと同じように囲まれていた。
というよりはエクシアとデュナメスから遠ざけようと無言の圧力を加えてきているというべきか。
自分の周囲を十重二十重と取り囲む美しいマネキン人形の姿を、刹那は連想した。もっとも近い者は、臨終の床にある病人と等しい静けさの息遣いもはっきりと聞き取れる距離だ。
その距離から感情を宿さぬ幾対もの瞳に見つめられている状況は、息をする事さえ忘れ、全身の産毛がそそけ立つ様なおぞましさを感じさせる。
幼い頃から銃弾の下を行き交い、硝煙と血と糞尿と臓物の臭いが立ち込める戦場に身を置いた刹那をして脊髄を凍らせる恐怖を抱かせた。
戦場の恐怖と、肉の質感を持ちながら心を伴わぬ人形に見つめられる恐怖は別種のものであった。かすかに自分が息を飲む音が聞こえた時、ティエリアが舌鋒鋭く刹那とロックオンに声を掛けて来る。
青年とも少年とも見える若い美貌には、かすかに怒りの赤が目に見えぬ刷毛で刷かれている。白磁の肌の内側からうっすらと赤色が浮かびあがっている様子は同性をしても息を飲ませる妖しさがあった。
「二人とも、エクシアとデュナメスから離れてもらおう」
「どうしてだ、ティエリア?」
ロックオンは肩を竦めて、ティエリアの静かな緊張と苛立ちを孕む声を宥める様に返事をした。
「その機体はネルガルが大西洋連邦に送る筈だった機体だ。偶発的な要因があって君達が乗る事になったとはいえ、その機体の権利はまだネルガルにある」
「おいおい、大西洋連邦の輸送機に載せられていた上にフラッグにしっかり護衛されていたじゃないか。もう引き渡した後だろ?
なら、それが連邦の敵対勢力に強奪されてもネルガルは文句を言えないだろう。むしろ、機体を守れなかった大西洋連邦に言えって」
「そういうわけにもゆかないのだ。正式に社の方から抗議させてもらう。それまでは機体に不用意に近づく事も控えてもらう」
「そうカッカしなさんな。それはどっちかっていうと、おれらより艦長とお偉方の決める事だろう?」
淡々としてこそいるものの抑えた声の下に、熱く煮えた感情を隠すティエリアの背後を、ロックオンが顎をしゃくって示すと、ちょうど自動扉の奥から話題に上がったエペソ・ジュデッカ・ゴッツォ大佐が姿を見せた。
封建社会時代の貴族を思わせる気品と落ち着き払った態度は、いつもと変わらない。ディセイバーとどこか通ずる人造の美貌には、つい数時間前まで戦闘の指揮を取っていた余韻は微塵もない。
やや強張った緊張感の漂う空気を敏感に悟ってか、エペソはやや足早にロックオンとティエリア達に近づき、周囲のDCの整備士達に手を振って道を開けさせると事情を聴き始める。
「バラック・ジニン、ロックオン・ストラトス、刹那・F・セイエイ、ティエリア・アーデ、任務ご苦労であった。いくつか質問をせねばならぬ事がある様だが、まずはこの状況はどういう事か?」
形ばかりの労いの言葉を送って、エペソはちらっと送った視線でティエリアとジニンに問いかけた。
*
『……というわけだ』
ティエリアらか事情を聴き終えたエペソは艦長室に戻り、オノゴロの軍本部につめていたビアンに報告していた。電子の画像の向こう側のビアンは、いつもと変わらず精悍で精気に溢れている。
後、二十年、三十年はヴァルシオンのパイロットを現役で続行しても大丈夫だろう。
アヘッド二機と擬似太陽炉二基の喪失と、代わりに入手したガンダム二機、またそのガンダムに対するティエリアとネルガルからの抗議。ティエリアの様子からして、相当調べられたくないものが隠してある様子である事。
それらの事情を聴き終えたビアンは背もたれに体重を預け、右頬杖を突いて思案に耽る様子を見せる。擬似太陽炉の大西洋連邦への流出は、さして重要視する事ではないだろう。
これからの戦闘で擬似太陽炉搭載機が鹵獲される事はあるだろうし、ネルガルを介して技術が流れる可能性とてあった。要は時間の問題だった懸案だ。すでに実機が鹵獲された以上は、有効な対策もほとんどない。
となるとネルガルからの抗議と要求が如何なるものになるか、が気になる所だ。可能ならばそのままエクシアとデュナメスの性能を試したい所ではある。
ネルガルが、ビアンら同様異世界から招かれた死人が大きく関与した組織である事は、すでに見当がついている。
その異世界の技術が用いられた機体に対する興味は、一科学者としても一軍の長としても大いに掻き立てられる所だし、DCとネルガルで運用している擬似太陽炉の比較も可能ならば行いたい。
「すくなくとも機体強奪時にティエリアに撃たれなかっただけましではあるか」
『これから撃たれるかもしれんぞ?』
「かもしれんな。返還を要求されるのが擬似太陽炉であるなら、これは応じても構わん。機体そのものを引き渡すのは出来るならば避けたいな。せっかく作り上げたアレがまたしばらく埃を被る事になる」
もし、ビアンがザ・データベース製の擬似太陽炉にプロトンドライヴが併設されている事を知っていたならば、この時の会話の内容も多少は違うものになっていた事だろう。
『……どう転ぶかは分からぬが、仮に擬似太陽炉やそれに関するプログラムもろもろで済んだとして、太陽炉を換装する暇があるのか?』
「MGの配置は済んでいる。カーペンタリアからザフトの援軍も来ているから戦力的に不安はないな」
タケミカズチ・タケミナカタ両空母を筆頭にキラーホエール級攻撃型潜水母艦、ストーク級空中戦闘母艦、旧来のイージス艦、駆逐艦を中心とした艦隊がすでに出撃している。
エルアインスを中心に、ガーリオン、リオンが機動兵器の中核を担い、擬似太陽炉とプラズマジェネレーターを搭載したアヘッドや量産型アーマリオンが部隊を構成しており、これに加えて特機がグルンガスト弐式、ヴァルシオン改の二種が加わる。
そこにカーペンタリア基地から、ミネルバ隊とボズゴロフ級潜水艦で構成された潜水艦隊がDCに合流している。カーペンタリアとDCの位置関係からすると、DCは地球連合に対する欠かせぬ盾となる。
そのDCに負けられてはカーペンタリア基地の命運は風前の灯にも等しくなる事を考えれば、今回の援軍は至極当然の成り行きであった。
ザフトとDCの総合戦力は、連合側が用意したのが通常戦力であるのなら、勝機は十分にある。
ただ、『なにをしてくるのか分からない非常識な軍』として認識されているDCに、決戦規模の戦力を投入する以上、連合側も隠し玉の一つ二つは用意しているだろうから、それがDC側にとっては不安要素であった。
画面越しにエペソと会話していたビアンが、新たなキャッチに気づき、エペソに一言断ってからそちらの内容に耳を傾けた。
卓上に表示された秘書のバストアップホログラフの話に、ビアンはかすかに眉を動かし、苦笑する様に唇を歪める。
「ネルガルからの抗議は、いまちょうど来た所だ。私の方で話を早く済ませれば戦列への参加は十分に間に合うだろう」
『随分と速い抗議だな』
「輸送機を襲い、エクシアとデュナメスが姿を見せた時点でティエリアが秘密裏に連絡を入れたのかもしれん」
『既存の技術で長距離通信が可能なのはレーザー通信位か。フォールド通信に類似した通信技術を実用化した組織か、あるいはテレパス的な異能か』
地球人類にしても、旧世紀でソビエト連邦がESPの本格的な研究を行っていた実例がある様に、現在の軍部でもESP関連の研究を行っている機関は確認されている。
先に例を挙げた生体強化兵士の研究にも応用されていたと言うし、東アジア共和国で存在が噂されている超常戦略特殊部隊も、ESPを強化・開発された兵士で構成されているという。
地球でもある程度実現されている技術なのだから、異世界からの来訪者達がより優れた技術を持ち、実用していないと言いきれるものではない。
対魔術に関してはすでにオーブ諸島全域に『調和の結界』を展開済みゆえ、ともかくとして対ESPとなるとこれは対応が難しい。
ゼ・バルマリィ帝国の霊力関係の技術があれば、まだ対応のしようもあろうが、シヴァー・ゴッツォが技術の大部分を保有していたもので、帝国一の忠臣と称されたエペソの手元にも十分なデータは無い。
いますぐに根本的な解決策を提示できぬ以上、二人の会話はかろうじて打てるありきたりな対応についてになる。
「ティエリアとデスピニス、それにネルガルからの出向者に情報が漏れぬよう徹底させるべきだろうな」
『艦内部に関しては余の方で通達しよう。では、ビアン、ネルガルとの交渉はそちらに任せるぞ』
「ああ」
短いビアンの返事を聞き終えるや、エペソはひとつ頷くだけで通信を切る。人造の将軍の呆気ないまでの反応は、約三年の付き合いで慣れたものだから、ビアンは何も言わない。
ビアンは一度目をつむって背もたれに大きく体重を預けたが、数秒ほどで再び目を開き、ネルガルの代表を名乗るリボンズ・アルマークとの交渉を行うべく、卓上の通信機に指を伸ばした。
*
タマハガネに戻った刹那・ロックオンが、オノゴロ島へと呼び出しを受けたのは、ネルガルのリボンズとビアンとの交渉が一応の決着を見て一時間後の事である。
洋上を航行中だったタマハガネから、輸送機にエクシア・デュナメスを積載して刹那らを乗せ、一路超音速輸送機はあっという間に彼らをオノゴロ島へと運ぶ。
刹那達もエクシア関連の事で決着がついたのだろうと見当は着いていたから、自分達が呼ばれ事に対して疑問符を浮かべる事は無かった。
ティエリアが同道していないのは、彼があくまでもネルガルの社員であり、DCとは別にネルガル社の方から連絡が行くからだろう。
DC領海外へと集結している地球連合艦隊迎撃のために慌ただしくなっているオノゴロ軍港を眼下に見下ろしつつ、刹那達は幸いにも途中で襲撃される事もなくオノゴロへと降り立つ事が出来た。
よほど急いでいるのか輸送機のタラップを降りた刹那達はなかば連行される様にして、オノゴロの地下に無数に存在する隠し倉庫の一つへと案内された。
二十代後半と思しい金髪の美女が案内役だ。アングロサクソン系の透ける様な白い肌と、やや厚ぼったい官能的な唇はロックオンの好みだった。仕立ての良いダークグレイのスーツの上に白衣を纏い、胸にはDC特殊兵器開発部門第五班主任とある。
DCの戦線を支える非常識な戦闘能力を持つ機動兵器群の開発を担当する、総帥直属の機関である。
ナチュラル・コーディネイターを問わず金に糸目をつけず、世界中からかき集めたあらゆる分野における秀才・天才・鬼才・変態・ド変態で構成されている。
ぱっと見た感じではあくまで常識的な人に見える美人主任の後に続き、刹那とロックオンはどこの悪の秘密結社だ、と疑いたくなるような重厚な合金製扉の奥へと足を進める。
いやまあ、実際世界征服を標榜している軍事政権であることは紛れもない事実であるし、運用している兵器の一部は、アニメに出てくるような代物であるのもまた事実で、刹那とロックオンの感想もあながち間違いではない。
足を踏み入れたものを迷いこませて餓死させるつもりなのではないかと、本気で疑う様な複雑な造りの道を進みつづけ、いまはいったい、地下何百メートルだとロックオンがうんざりし始めた所で、案内役の足が止まる。
「こちらで総帥がお待ちです」
ややハスキーな女の声を、今日初めて聞いた事にロックオンは今さら気付いたが、だからといって何かあるわけでもないと肩を竦めて、少しばかり嫌見を込めて返事をした。
「機体ごとおれたちを呼び戻したんだ。いい見せ物があるんだろう?」
「さあ、総帥のお考えは時に私達でも理解できない事もありますし……」
意味ありげに呟き、主任はうっすらと唇を吊り上げる。赤い口紅の端にある小さな黒子が妖艶な雰囲気を醸し出している。なかにあるものがロックオン達を驚かせるには十分なものと理解しているのだろう。
主任は扉横にあるスリットにカードキーを差し込み、ごうん、と音を立てて上下左右に開き始めた扉の奥へ進むよう二人を導く。
「刹那様、ロックオン様、それではお進みください。きっとお二人にとって良いものが待っていることでしょうから」
淫蕩な女悪魔に騙されて地獄に繋がる洞穴に導かれたような錯覚に、ロックオンはやれやれと首を振るう。大なり小なり反応を示すロックオンと比べて、刹那は無表情と無言を貫いたままである。
興味がないのか、それともただ表には出していないだけで、心中では思う所があるのか。ロックオンでもなかなか分からない。
主任の案内はここまでのようで、これからさきはロックオンと刹那の二人で進む事になった。無機質な金属製の壁に四方を覆われ、息が苦しくなる圧倒的な質量感が四方八方から圧し掛かってくる。
ロックオン達の真正面に分厚いガラスが一面に張られ、その奥にはさらに広大な空間が広がっているようだ。そのガラス面の方を向いてこちらに背を向けている偉丈夫の姿に二人は気付く。
肩幅が広くどっしりと根を張った大樹の様に伸ばされた背筋と存在感、目にも鮮やかな鮮血色のロングコートとくれば、これはDC総帥ビアン・ゾルダーク当人に他ならない。
刹那とロックオンの来訪はとっくに分かっていたのだろう。ビアンはゆっくりと背後を振り返るその顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
民間の協力者という立場とロックオンらのバックアップにいるマティアスとの関係から、刹那とロックオンは形式ばった挨拶や礼儀を取らなくてもよいと保証されている。
それでも一軍の長との会合である。ロックオンと刹那にも多少の緊張はある。
「二人ともよく来てくれた。忙しい所をすまんな」
「いや、アヘッドを失った失態もありますし」
「それで、おれ達のガンダムは?」
ここまで無言で通していた刹那がようやく口を開いたかと思えば、やはりというべきか、ガンダムエクシアの処遇についてだった。まっすぐにビアンを見つめる刹那の瞳は、強い意志の光を湛えている。
答えを得るまでは絶対に退かないと物語る刹那の瞳を、ビアンは好もしげに見つめ返した。それからもう一度ガラス張りの壁の方へと振り返り、二人にも同じようにするよう促す。
「ふたりともこちらへ」
ガラスの向こうは暗黒に閉ざされていて、こちらの部屋の照明によってかすかに照らし出されているきりだ。それだけの灯りで見ることのできるモノはほとんどない。
向こう側がかなり広大な空間らしい事は確かだが、はたしてそこに何があるというのか。
「お前達が手に入れたガンダム二機だが、ネルガルのリボンズ代表との交渉の結果、機体そのものは我々が運用する了承を得た」
「機体そのものは?」
「そうだ。二機に使用されている擬似太陽炉とOS他、プログラム各種は一切手を触れず、ネルガルの方へ返還する事が要求された」
「それだけですんだってわけじゃないだろうが、じゃあ、デュナメスとエクシアはこのままおれ達が使うって事か」
扱い慣れたかつての愛機が再び手に入った事に少なからず喜びを感じているのだろう。ロックオンの顔には薄く喜色が浮かび、刹那の顔にも似た色が浮かびあがっている。
実際には、ビアンが口にした以上の交換条件が出され、エクシアとデュナメスの入手には手痛い出血が伴っている。
機体の通常整備はともかく、奥の奥まで見る必要のあるフルメンテナンスには、ネルガルのスタッフがあたる。
ヴァーチェに専門のスタッフがいるように、エクシアとデュナメスに同様の専属スタッフが派遣される予定だ。
「そうなるが、動力機関は擬似太陽炉ではないものを使う」
「プラズマジェネレーターか?」
「いや、違う。刹那・F・セイエイ、不思議に思った事はないか? なぜアヘッドに使われているGNドライヴは“擬似”太陽炉と呼ばれるのか」
「擬似とつくからには、アヘッドに使われているものが模倣品と言う事だと見当はつく。それが使われているのは、オリジナルが実用にたえないものだったからではないのか?」
「ふふ、少し違うな。太陽炉のオリジナルは性能的には擬似太陽炉とはそう大差はないが、製造に際し長い時間がかかるのだ。製造に際し高重力環境でならなければならないという条件があってな」
ビアンの口ぶりから、ある可能性に気づいたロックオンが驚きと共にビアンの横顔を見つめる。ビアンは、ロックオンの反応が思った通りのものであったことに、してやったりとばかりに笑っている。
「我々が保有する重力操作技術を用いて擬似的に木星に等しい重力環境を作り出し、オリジナルと等しい機能を持つ太陽炉を製造するのには苦労した」
純正太陽炉を製造するまでの苦労を思い返してか、ビアンは感慨深げに呟く。すると向うの空間に落とされていた照明が点灯され、闇の帳の中に隠していた人造の小太陽の姿を露わにした。
一見すれば擬似太陽炉と何ら変わることのないゆるやかな円錐形の動力機関が、照明に照らされながら、刹那とロックオンの瞳にその姿を写す。
「これがオリジナルの太陽炉――イオリア・シュヘンベルグの遺産だ」
*
エクシアとデュナメスへオリジナル太陽炉の換装作業が行われている間に、地球連合艦隊とDC・ザフト艦隊の戦端は開かれていた。
本命のDC艦隊はタケミカズチ級空母とキラーホエール、各種艦艇からなる総数五十あまり、対して地球連合が海面に並べた艦隊の数は優に倍するものであった。
単純に真正面から受け止めて戦うには無理のある戦力差といえよう。
古典的な少数精鋭部隊であるクライ・ウルブズは母艦タマハガネの他に、ストーク級空中母艦二隻を伴い、本艦隊より離れ独自に行動し、連合艦隊の横腹を突く役割を与えられている。
無数の敵が構成する分厚い壁を打ち破って、敵司令中心部に大打撃を与えるのは、クライ・ウルブズの得意とする所だから、クライ・ウルブズの特性を最大限に生かす活用の仕方だろう。
クライ・ウルブズ抜きのDC本隊は、地球連合が幾重にも構築した艦隊とMS群との戦闘を開始し、空と海で命の奪い合いを繰り広げていた。
オーブ解放作戦時にDCが優位に戦えた理由の一つに、連合が伴わなかった水中用MSをDC側が多数用意していた事が挙げられる。
連合側は前回の反省を踏まえて、フォビドゥンの量産発展型であるフォビドゥンヴォーテクスを多数艦隊に配備していた。
TP装甲とゲシュマイディッヒ・パンツァーを搭載したこの機体は製造コストこそ嵩むものの、その戦闘能力は前大戦中DCの水中用MSの主力であったシーエムリオンでは対抗できないレベルにある。
DC側ももともと武装の貧弱なシーリオン・シーエムリオンには限界を感じており、ギナが連合との交渉で手に入れていたフォビドゥンブルーを研究・解析し、フォビドゥンホデリを完成させている。
機体性能それ自体はヴォーテクスと大きく変わる事はないが、ホデリにはヴォーテクスにはない強い武器があった。水中でも使用可能なビーム兵器である。
一年戦争時にジオン軍が使っていたハイゴッグも水中でビームカノンを使用出来た事から、この世界の技術進歩レベルを考えれば、十分に実用化されてもおかしくはない。ましてや開発したのがDCである。
さらにビームトライデント、水中用ビームライフル、水中用ビームキャノンと幾つも作られた武装は、新西暦世界で運用されたガンダニュウム合金製のガンダムタイプのデータを流用したものだ。
オペレーション・メテオで使用された五機のガンダムには接近戦に特化したものが三機あったが、その中から例をあげれば、ガンダムデスサイズは水中で名前の由来となったビームサイズを自在に振るっている。
このビーム兵器の技術を応用し、水中でもビーム兵器の破格の攻撃力を振るう事が出来るようになったのだ。これは水中戦でTP装甲に有効な武器を持たないフォビドゥンヴォーテクスに対して、大きなアドバンテージだ。
なお名前に冠せられた『ホデリ』とは日本神話に語られる所の海幸彦の事だ。かつて日本を宗主国と仰いだ歴史があるためか、オーブには端々で日本神話やおとぎ話の名前を用いる傾向がある。
フォビドゥンホデリとはあまり語呂の良いものではないが、フォビドゥンウラシマとか名付けられるよりはマシというものだろう。
さらにザフトのゾノ、グーンといった旧来の水中用MSに加えて、足を細長くした蛙を連想させる珍妙なデザインの新型機、アッシュも海面下の戦いに参加していた。
三勢力それぞれの保有する新しい海戦戦力が、エメラルドグリーンに輝く南洋の下で衝突するなか、空でも同様に新型機動兵器が熾烈な激突を繰り返していた。
地球連合側は、ウィンダムを中心にフラッグ、イナクトと言った新世代型MSを投入し、ザフトはバビというMAへの可変機構を持ったMSと、ザクシリーズで対抗する。
一方でDC側は地球連合軍をエルアインスの他に、旧世紀の戦闘機としか見えない外見の新型機動兵器を持って迎え撃っていた。
博物館にしか残っていないような戦闘機を前に侮った連合パイロット達は、しかし、いざ戦いが始まるや、戦闘機から人型、人型から人型と戦闘機の中間形態へと三段階に可変する戦闘機の機動性に翻弄されていた。
DCが空戦における切り札の一つとして開発した可変戦闘機バルキリー。新西暦世界で一年戦争の最中地球に落下した、外宇宙からの物体SDF−1に残されていたデータを基に開発された可変戦闘機である。
一見すると確かに戦闘機にしか見えないのだが、その実、中身は異世界技術満載の超高性能機である。
搭載された熱核バーストタービンエンジンは取り込んだ空気を利用し推進力を得るため大気圏内ではほぼ無限の航続距離を持ち、脆弱な装甲には余剰エネルギーを利用したエネルギー転換装甲やピンポイントバリアを持つ。
エペソが所属していたゼ・バルマリィ帝国が収集した地球製機動兵器のデータを十分に利用し、開発されたのはバルキリーシリーズの初代VF−1タイプではなく、VF−19エクスカリバーである。
VF−19の操縦には高い技量が要求され、扱える者が少なくなるという点がDC開発陣から問題視されたが、それでもVF−19の機体性能が惜しまれて、本格的な量産モデルとする為にある程度妥協が図られている。
じゃじゃ馬な飛行特性を安定させるために設計を改め、DCの保有していた異世界技術の導入(風の精霊との契約案もあった)も行われ、晴れて目出度く実戦配備となり、日の目を見る事となったのだ。
武装も内蔵したマイクロミサイルとビーム・実弾を交互に発射できるよう改造されたガトリングガンポッド、またバトロイド(人型)形態に限るが、使用できるピンポイントバリアパンチは十分な威力を持つ。
新西暦世界で、MS、機械獣、メカザウルス、ゼントラーディ、メルトランディ、宇宙怪獣、プロトデビルンなど相手を選ばずに戦った名機VF−19の血脈を引く機体は、初陣ながら見事な戦果を上げつつあった。
海空共に新型機動兵器の性能と、突出した力を持つ二種の特機の投入によって互角以上の戦いを堅持しているものの、艦隊司令部に状況を楽観視する者は一人もいなかった。
本土防衛の役割を担うこの一戦での敗北は、決して許されるものではないのだから。
そしてなにより、ここぞと言う時には常に戦果をあげて来たクライ・ウルブズから、芳しい報告がいまだに一つもない事が、彼らの胸中に不安の苗を植え付けていた。
「MM−01、02、03起動確認、いつでも発進できます」
「すぐに出撃させろ。海の底からの恐怖という奴を叩き込んでやれ!!」
クライ・ウルブズの戦果の未報告からくる不安を振り払うように、DC艦隊司令部はMMと称された切り札を早々に切った。
それらは、以前の戦いで連合に苦汁を飲ませた重力アンカーを撤去する為に、徹底的に探査された筈の海底から姿を露わした。敷設された重力アンカーは、真の切り札であるそれらを隠すための囮であったのだろう。
フォビドゥンヴォーテクス、アッシュ、ゾノなどが戦う海域へと、岩盤を崩しながら姿を露わしたそれらは、ゆっくりと尾を揺らしながら、全身に気泡を纏い泳ぎだす。
連合艦隊では、海中から次々と異様なペースで反応を消失させてゆくMS部隊に、まずMS管制オペレーターが驚きの声を上げ、その報告が艦隊司令部に行き渡った頃、海面に巨大な三つの水柱が立ち上がった。
それぞれが数百メートルにも届く巨大な水柱で、上空で数千万粒の滴と荒波に代わって艦艇を揺らし、白く濁った水柱を突き破った異形達は。太陽の光を鈍い銀色に変えて照らし返す。
その光景を見た時、まるで悪い冗談のようだと誰もが思った。全高が百メートル近い巨大な二足歩行と思しい恐竜が海中から姿を現すなど!
三体の内の二体は鉄板を荒々しく熔接してビス止めしたような外見で、百メートルに迫る巨躯を持ち、その古き良き怪獣映画の中の怪獣王を恐怖と共に思い起こさせるその姿は、目撃した連合諸兵の網膜に鮮烈に焼きつけられた。
三体目は他の二体よりもさらに機械的だが、全体的な印象は丸みを帯びており、見ようによっては生物的な印象が強まっている様にも映る。また機体のサイズもおおよそ六十メートルほどと小型化が図られている。
MM――モビルモンスターシリーズの一号機、二号機、三号機であり、01、02、03のいずれもヴァルシオンを始まりとするプロジェクトURの派生機となる。
開発には、前大戦時に改修したヴィガジの搭乗機ガルガウのデータが流用されており、インスペクターの技術と地球技術の初の本格的な融合機と言えるだろう。
また後年、陸の王者と称賛される非人間型機動兵器ゾイドの先駆けとなる兵器開発史のターニングポイントとなる機体でもあった。
怪獣じみた外見は、知性を持った敵対者に心理的な恐怖を与える、というコンセプトを踏襲しその効果を追求した結果とも、ビアン総帥の趣味が反映されているとも言われるが、真相は闇の中である。
実際にアンケートを取れば百人中九十九人は総帥の趣味、と答えるに違いない事が、事実を物語っているだろうけれども。
テスラ・ドライヴ他各種技術の慣性制御、重力制御を組み合わせても、有人で活用するにはパイロットにかかる負担が大きく、暴虐のその性能を完全に発揮するには、高い身体能力を有さなければならない。
コーディネイターも受けいれるDCとはいえ、そこまで高度なコーディネイトを受けた人材は少なく、現在鋼鉄の怪獣王達に乗っているのは、ミナ直属の配下であるソキウス三人だ。
海中で連合のMS部隊を、霜を踏み砕くように蹴散らしたメカゴジラS型、メカゴジラH型、メカゴジラ参式“機龍”は、数万の雷がまとめて落ちたかの様な咆哮で、四方を轟かせる。
研ぎ澄ました槍穂の様な牙が並ぶ口を開き、無機質な冷たい光を宿す目を、指先のミサイル弾頭を、膝、肘、胴をはじめとした全身に内蔵した無数の武装を、洋上の艦隊へと向ける。
この日、この時、メカゴジラ三体と遭遇し、その恐怖と脅威を骨身に刻みこまれながらも、運よく生き延びた者達が語るにいわく、まさしくあれこそは死そのもの、人間にはどうしようもない暴力の権化だという。
全身を濡らし滴る海水の滴は纏わり着く巨獣達の咆哮によって一瞬で蒸発し、ついで連合艦隊を吹き飛ばした爆風と爆熱によって、海面が一時半球形に抉れる。
メカゴジラが撃ったミサイルの弾頭に戦術核が混じっていたわけでもあるまいに、その破壊力たるや、見る者の思考と理性を一時奪うだけのインパクトを兼ね備えていた。
三体のメカゴジラによる全火器の一斉発射によって発生した全ての音を吹き飛ばす轟音と目を潰すほどの閃光が破壊と恐怖だけが役者の、絶望悲劇の始まりを告げたのである。
*
そして、珍しく単独ではない任務に従事するクライ・ウルブズは、苦しい戦いを強いられていた。連合艦隊に奇襲をかけるべく別行動を取っていた彼らを、同じように連合艦隊から抽出された精鋭部隊が迎え撃ったのである。
偶発的な遭遇でないのは、戦闘準備を入念に固めていた敵陣容と動揺した様子がまるでないことから、一目瞭然であった。何らかの手段によってこちらの情報が漏れたのであろう。
それでも待ち伏せていたのが“ただの精鋭部隊”であったなら、多少時間はかかっても蹴散らすだけの戦闘能力を彼らは備えていたが、クライ・ウルブズを待ち受けていたのは精鋭中の精鋭部隊だった。
ストーク級二隻から出撃したエルアインス十六機、ランドグリーズ・レイヴン八機の二個中隊、さらにクライ・ウルブズ搭載の機動兵器群は、待ち伏せを受けてから一向に戦闘に決着をつける事が出来ずにいた。
それは、DC屈指のエース、シン・アスカでさえ同じ事だった。
シンが搭乗しているのは背にX字型の大型可動バーニアを持ったクロスボーンシルエットに換装したクロスボーンインパルスである。
木星などの高重力下でも問題なく戦闘できるよう、背のX字のバーニアによって大推力を与えられ、武装も近〜遠距離まですべてに対応できるよう整えられている。
これは新西暦世界で勃発した封印戦争において活躍した宇宙海賊クロスボーン・バンガードが使ったF97クロスボーンガンダムX1、X2、X3の武装を併せ持った総合シルエットでもある。
X1のスクリューウェッブ、シザーアンカー、X2のバスターランチャー、X3のムラマサブラスター、さらにビームシールド、ザンバスター、ビームザンバー、ヒートダガーなどを装備し、あらゆる距離で戦う事の出来る万能機だ。
武装の取り回しが難しいものや、多くの武装を適切な距離で扱う為の高い判断能力と技量が要求されるが、パイロットと機体が噛み合えばこれまでのシルエットの中でも飛び抜けた力を発揮する。
シン・アスカならばそれらの条件を十二分に満たす事を考えれば、この組み合わせは正解例の一つだ。それでも、苦戦を強いられているのは、彼らの前に立ちふさがった敵の強大さゆえに他ならない。
クロスボーンインパルスの右腕にショットランサー、左腕にバスターランチャーを握らせ、ショットランサーのマシンガンで牽制、バスターランチャーで撃墜を狙うが、敵は鳥のように自在に動いて射線から逃れる。
「くそっ!」
三機まとめて落とすべく、イナクトをセンターマークに捉えてトリガーを引いたにもかかわらず、バスターランチャーから放出された高威力の黄色いビームは、先頭のイナクト一機を飲み込むに留まる。
僚友の仇を取るべく二機のイナクトは猛然とビームライフルを撃ちかけ、シンはクロスボーンインパルスの可動バーニアの生む大推力と超人レベルの反射神経で、すべての射線を躱しきる。
パイロットであるシンの身体能力は異常の一言だが、それに追従するインパルスの柔軟性と追従性も瞠目に値する。
インパルスの胸部の20mmCIWSは牽制にしかならないが、それでもショットランサーと合わせて炸裂弾の弾幕を張り、左右に分かれて息の合った射撃を加えてくるイナクトの捕捉を振り払うべく、大きく機体を動かす。
「乗っているのも並のパイロットじゃないぞ、前の戦いの時のレベルなら、とっくに落としているってのに!」
ほぼ直角の回避機動を上下左右に繰り返し、敵パイロットの目が徐々に追い切れなくなった所で、ショットランサーのランサー部位を射出する。
でたらめな回避機動の最中でも、シンの超直感と深紅の瞳は、イナクトのドラムフレームを透過して、パイロットの呼吸と殺意を明確に察知していた。
宇宙世紀の言い方で分別するならばオールドタイプながら、優れたニュータイプにも匹敵する思念察知感覚と第六感は、シンの強さを支える大きな理由の一つである。
射出された巨大な馬上槍を模したランサーは、イナクトが咄嗟にコックピットを庇ったディフェンスロッドを、紙の様に容易く貫いてイナクトの胴を半ばから二つに裂く。
千切れた胴が爆発を起こすのと同時に、マシンガンだけになったショットランサーを放り捨て、腰裏のアーマーに収納されているグリップを右手で思い切り引き抜く。
三機目のイナクトがさらに勢いを増して撃ち掛けてくるビーム全弾をすべて視認し、回避しながら、シンはスクリューウェッブを引き抜いた。
スクリューウェッブは鞭状の武器で、その先端部に高速で回転するドリルが装着されている武器だ。対ビーム装甲処理が施してあり、ビームサーベルで斬り払われても切断される事はない。
接近戦で武器のリーチの差で負けたのなら、さらにリーチを伸ばせばいいという単純明快な理屈で作られた武器で、刀剣の扱いに特化したシンには扱うのが難しいが、奇抜で新鮮味があり、シンは気に入っている。
ぎゅら、と回転に伴う耳障りな音がスクリューウェッブの先端から発生し、ビームサーベルならともかく、見慣れぬ武器に反応が遅れたイナクトの頭部を一撃で叩き潰し、そのまま胸部上方の周囲を抉り粉砕する。
シンは三機のイナクトを片づけた事に安堵する間もなく、センサーと自身の知覚能力を最大限に研ぎ澄まし、次の脅威を探り出す。
周囲で味方と交戦しているのは、フラッグ、イナクト、ティエレンといった新型に、量産型ガルムレイドだ。それらに乗っているパイロットの技量もかなりのもので、対クライ・ウルブズ用に編成した部隊に違いない。
機動空母四隻と護衛のスペングラー級、ダニロフ級護衛艦のみならず、アークエンジェル級二隻を含む二十五隻の艦隊からなっており、それだけクライ・ウルブズの戦力を評価したと言う事だ。
艦隊のみならず、編成されているMS部隊もおよそ考えうる最高クラスの部隊が揃えられている。
先ごろ刹那とロックオンが交戦した大西洋連邦のオーバーフラッグス、ユーラシア連邦のパトリック・コーラサワーとシロッコ・パプティマス、東アジア共和国のセルゲイ・スミルノフと指揮下の頂武。
これにくわえ、アーモリーワンで強奪されたカオス、ガイア、アビスに搭乗したオルガ、クロト、シャニ、ガルムレイドの専任パイロットのヒューゴ・メディオ、月下の狂犬モーガン・シュバリエ。
と名だたるパイロットと機体が名を連ねており、今回の戦闘で確実にクライ・ウルブズを壊滅させるための戦力が揃えられたと言っても過言ではない。
艦艇数だけでも三対二十五という状況下ながら、クライ・ウルブズと同行しているストーク級二隻は善戦してはいたが、それでも徐々に被弾が増えて動きが鈍り始めている。
警告音が鳴り響くよりも早く、前方と後方、下方からの殺気を知覚したシンは、機体を右に動かしバスターランチャーを下方へ、スクリューウェッブを放り投げて、右腰にマウントしてあるザンバスターを右手に握って上方へと向ける。
ザンバスターは護拳付きのビームガンとビームサーベルをドッキングした状態の事だ。
シンは直感と皮膚を貫いた氷の針のような殺気の発生源と向けて照準を向け、三方向の敵を瞳に映す事もなしに捕捉し、ザンバスターとバスターランチャーの引き金を同時に引き絞る。
天地を繋ぐ雷の様に放たれた二種のビームは、狙い過たず殺気の源を貫く。
通常のビームライフルを大幅に超える出力のザンバスターと、艦艇を一撃で沈めるバスターランチャーの直撃を受けたジェットウィンダムは、一瞬で黒煙の塊へと変わる。
シンはそのまま機体を流水の様に動かし、一瞬の停滞もなしに前方のジェットウィンダムへザンバスターの銃口を向ける。
ザンバスターの銃口とジェットウィンダムのビームライフルが光を放つのはほぼ同時であった。ザンバスターのビームはジェットウィンダムの腰部を貫き、内部の推進剤に引火して盛大に内部から爆発させる。
一方、ジェットウィンダムのビームは、クロスボーンインパルスが展開した左手のビームシールドを貫くこと叶わず、無数の粒子となって大気に散っている。
安堵の息を吐く余裕はない。再び右腰にザンバスターをマウントし、機体を急下降させて一度は放り捨てたスクリューウェッブを回収し、真下でエルアインスと撃ちあっていたノワールウィンダムの胸部を頭ごと叩き潰す。
直撃位置からしてパイロットもミンチに変わっている事だろう。三機のイナクトとの交戦からわずか二分に満たぬ時間で、見事七機ものMSを撃墜して見せたシンの腕の冴えはエースの名に恥じない。
単独で突出して獅子奮迅の活躍を見せていたシンの瞳は、すでに輝きの引いた暗い血の色をしている。全身に波紋を呼び起こす種子の破裂のイメージを、いつ脳裏に描いたのか、シンは明確には覚えていない。
元から目に見えない方向までも知覚できていたシンの視界が、霧が晴れた様に一層クリアなものに変わり、全身を細胞レベルで操縦できる一種の境地に没入していることの表れだ。
金色の輝きを帯びるスーパーモードとは異なるこの状態を、これまでシンは何度か経験していたが、武道家としての資質を高めたいまのシンは、これを意図的に起こす事が出来るレベルにあった。
しかし、瞳と同じ赤色の種子を破裂させたシンをして疲労を蓄積し、身体的な消耗を強いられるほど敵の技量は高い。これが並の部隊相手だったら、倍の戦果を上げている所なのだ。
スクリューウェッブを腰裏収納部に戻し、バスターランチャーを構え直したところで、視界の端にきらりと光るものが映る。
光の速さで迫るビームを回避せしめたのは、シンの脳内で構築された超人的神経回路の反応速度のおかげだ。
機体への直撃こそ回避したものの、バスターランチャーの砲身中央部に着弾し、過負荷に耐えかねたバスターランチャーは、クロスボーンインパルスが手放すのとほとんど同時に爆発を起こす。
貴重な砲撃用の武器を失った事の苛立ちよりも早く、シンは腰裏にマウントしていたムラマサブラスターを抜き放ち、右手一本の右八双に構えさせていた。
ムラマサブラスターは、十四基ものビームサーベルの基部を備えた強力な接近専用の武装であり、同時に刀身内部にビームガンを備えた遠近両距離に対応できるマルチウェポンである。
ムラマサブラスターの切っ先に仕込まれているビームガンで、バスターランチャーを撃ち抜いた敵機への牽制に、五射放つ。一発ごとの間隔が極めて短い見事な連射技術であるが、すべてが空を穿つ。
支援砲撃
「あんな鈍重そうな機体で、なんて動きをする!」
シンの視界の先に映ったのは、東アジア共和国で運用されているティエレンだ。地球連合では珍しいモノアイが、赤く輝きながらクロスボーンインパルスを捉えている。
シンは相対するティエレンが通常タイプとは異なる形状をしている事に気づいた。
ぱっと見た分には大きな違いはないが、オレンジのカラーリングや、右肩だけ金色に塗られていることから、エース専用のカスタム化された機体なのだろう。
シンの予想通り、新たに襲い来たこのティエレンは、超兵専用のチューンが加えられたティエレンタオツーである。
だが、シンの背筋に緊張の楔を打ち込んだのは、機体の外見の差異よりも、自分以外の全てを燃やしつくす様な激しさで、タオツーから放射される殺意と破壊衝動の強さと冷たさであった。
猛獣も及ばぬ凶悪な闘争本能と人間だからこその冷酷さを兼ね備え、戦いに対して一切躊躇いも迷いもないのが、ひしひしと伝わってくる。戦闘中毒者とも殺人機械とも異なるが、類稀な強敵に相違ない。
さらに酷似した気配を持った同型機が、その背後から姿を見せる。オレンジのカラーリングは同じだが、左肩を銀色に塗られた機体である。こちらは逆に抑え込んだ躊躇や迷いといった感情がわずかに感じ取れる。
正反対の性質を持ちながら、そのくせ根本的な部分、根っこの様なものは鏡で映したように同じものであるとシンには感じられた。
「なんだ、双子でも乗っているのか!?」
思わず放ったシンの言葉は、偶然にも真実を射ていたのである。
あっという間に友軍機を立て続けに撃墜したガンダムタイプに興味を惹かれ、獲物を嬲る残虐性を発露して襲い掛かったのは、東アジア共和国のハレルヤ・ハプティズムであった。
そしてハレルヤのサポートを行うべく若干遅れて動いた銀の肩を持つタオツーに乗るのは、アレルヤ・ハプティズム。その性格を除けばハレルヤと鏡で映したように同じ容姿を持った青年だ。
今回の地球連合艦隊精鋭部隊でも十指にはいるエース二人が、獰猛な金と銀の牙を剥き、シンに襲いかかろうとしていた。
「はっはあ! 動きが鈍ってるぜぇ!!」
「DCのワンオフ機か。ここで落とせればっ」
「来るなら、来い!!」
全十四基のビームサーベルを起動させ、アンチ・ビーム・コーティング済みシールドも、ラミネート装甲も問答無用で切り裂くムラマサブラスターを構え、シンは襲い来る二機のタオツーへ、疾風となって斬りかかった。
――つづく。
かなり駆け足で話を進めました。二、三話掛けてこの話を進める予定です。
ご感想、ご指摘、ご助言いただければ幸いです。お邪魔しました。
うん、メカキングギドラもモゲラもメカスペゴジも登場確定ですなこれは
プライマスとユニクロンがヘッドオンするのが何なのか今から楽しみにしております
乙でしたー
ゾイドってことはメカゴジ軍団vs全力全開デス様やるのかこれは
ゾイドも出るのかな?ならば是非、ルージとミィ様を!!ってやはり無理があるか。
>>63 あの無印の最後の巨大デスザウラーかwww
デススティンガーもたいがいだったけど。
バルキリーが出た瞬間にバトル級を両腕に装着した超マクロス級が浮かんだ俺は
やはり色々と毒されているのかもしれん
禁ゴジュとかギル様もだそーぜー
68 :
47:2009/11/24(火) 01:40:39 ID:???
GJ!っす!
しかし言いだしっぺとは言え
>>48でおでんの汁吹いたw
と思ったらゾイドだの昭和平成参式メカゴジラだのオリジナル太陽炉だのエクスカリバーだのの登場に吹く物がなくなったwww
お陰でクロスボーンシルエットのインパクトが……
まさかのゾイド……これはZナイトフラグですね! 分かります!
冗談はさておき、戦闘機械獣の真髄たるゾイドコアと精神リンク無しにどこまで性能が再現できるか気になります。
バトストの登場人物とか出てこないかな。
ところで質問なのですが、作中でエクスカリバーの形式番号がVF-19で設計を改めているとあります。
これはデザインがマクロス世界で言うYF-19の劣化型F型、同指揮官型S型と同じデザインと言うことですか?
それともイサムの乗ったYF-19性能デザインそのままの量産タイプ、VF-19Aと同じ物なのでしょうか?
69 :
通常の名無しさんの3倍:2009/11/24(火) 02:06:01 ID:xndnlO3X
そういえば
>>57のメカゴジラだけど
鉄板ビス止めは昭和一体だけでない?
丸みがあって合体するのが平成で、機龍は色々トンガってた記憶が
ええと、なんだ。とりま総帥GJ!
ちょっと現在の総帥CE世界の状況を整理しようか…
・ニトロな雰囲気(タオロー兄さんはいるみたいだ)
・菊池線
・魔装機神他、スパロボオリジナル
・マクロス(ヴァルキリー)
・メカゴジラ系(後にゾイド)
・ナデシコ系
・純正太陽炉(OO系)
…さらに少なくともデータだけでもスパロボお馴染みのスーパーロボット軍団並びにリアルロボット軍団…なんだこのカヲス。いいぞもっとやれ!
プロトンドライブ搭載に関して何やら記述があったことを考えると
スパロボオリジナル屈指のチートスーパーロボット戦艦に関する情報も手に入れているようで…
やべぇなんかオラワクワクしてきたぞ!
こんにちは、ご感想ご指摘ありがとうございます。いくつかご質問に返答をば。
エクスカリバーですが、第三次αでも出てきた青いエクスカリバー、VF−19Fに相当します。全く同じというわけではありませんが、そう認識していただければ問題ないです。
また、メカゴジラの外見の描写は、私の記憶違いによる物かと思います。なおS型のSは昭和のS、H型のHは平成のHです。
ところで、私はゾイドを無印のアニメで知った口なのですが、黎明期というか初期の頃のゾイドってどんなんなんでしょうか?
私見ですと、セイバータイガーとかコマンドウルフとかシールドライガー辺りかな? と思っているのですが、間違いでしょうか。ウィキでも見ましたが量が多すぎて把握できなかったです。
開発順序を気にせず好きなのを出せばいいような気もしますけれど。ちなみに好きなゾイドはバーサークフューラーとライガーゼロ、それに赤黒のホ−ンです。
>>71 トップクラスになると単独で大気圏離脱、突入よりが出来る上に
デスザウラーを倒せるゾイドを雑魚扱いする量産型がいたり、
そいつをジャンプして捕まえて引きずり下ろして二つに引き千切るゴジュラスがいたりしますよ
>>72 禁ゴジュはらめぇ〜!
冗談抜きでグランゾンやアストラナガンとタイマン張れるぞコイツは
本当に黎明期のゾイドは素体に鞍だけ付けたような物や
骨組みに武装付けたようなの物で、この世界じゃあんま役に立たないです
そもそもゾイドってサイボーグなので0から作ったって訳ではありませんし…
やるならバクゥベースの四足型としてセイバー(サーベル)タイガーやコマンドウルフ、
ガルガウベースの恐竜型としてゴジュラスあたりから始めるといいのでは?
ゴドスとかの小型機体がネックになりそうな気がしますけど
>>73 超重力砲の直撃受けてピンピンしてる上に重力偏向バリア持ちだからな…
>>75 反物質くらおうと光速で激突してもピンピンだからなあwキンゴジュは。
通常兵装のミサイルポッドのミサイル一発がそこらの水爆以上の破壊力だし。
>>71 >>74の人も書いていますが、元の開発史は無視しちゃった方が良いでしょうね
俺としてはバクゥやラゴゥをベースに四足獣型ゾイドを作るのが違和感少ないと思います
ただ、ぶっちゃけゴジュラスはメカゴジラとキャラ被る(ry
>>71 エクスカリバーはF型でしたか。
A型が好きなんですが、影薄いからなぁ……
シールド、セイバー、ウルフは所謂旧ゾイドでは中期に分類されるゾイドですね。
余り長いとスレチなので高速型ゾイドの開発(勢力を無視した)順だけで言えば、ヘルキャット、セイバー(サーベル)タイガー、ウルフ、シールドの順番だった筈です。
>>73 禁ゴジュは恒星間航行を可能とした時代の地球の超科学とゾイド星の技術との結晶にして究極の形だからなぁ。
リバセンだとこんな物残したらロクな事にならんと回収せずに自爆してるし。
やっぱり作りやがったか、オリジナルGNドライヴ
プロトンドライブやプラズマジェネレーター等のサブエンジンとの併用が難しい代わりに
どんな魔改造をしたのか楽しみだ
>>78 その結果禁ゴジュの超技術が帝国側にも伝わってやばい事になったけどな
ほんとヘリック二世のバカ野郎は碌な事をしない
ゾイドは機械生命体だからマシンセルやズフィルードクリスタルや錬金術なんかで作られるんだろうな
でも中身の意思はどうするんだろうか…やっぱ精霊だろうか
というか繁殖能力はどうなるんだろう
>>81 どうせなら宇宙の何処からか漂着してきた隕石の中にゾイドコアが眠ってた、としても面白そうだけど
>>83 旧バトストだと隕石衝突の勢いで、何百年かけて地球まで飛んで行ってZナイトと対決。
リバセンだと破壊しきれなくて揉め事の原因に。
結論:禁ゴジュは破壊出来ない。
>>84 金属イオンが大量に含まれた原初の海があれば勝手に育って、勝手に増えるからな。
コアがあればバース島か三原山辺りで繁殖してそうだなw
だが、眠っていたのはゾイドコアではなくゾンダーコアだった・・・・!
新開発!ビアン印のSDコア!
これを元に機動兵器を作ると自我を持つぞ!
>>87 ただしタンクコアと0コア、ゴッド/シャイニングコアにはご注意ください。
また、SDコアを使用した場合、低確率ですがデビルガンダムという山菜が発生しますので、ご注意ください。
ちと気になったんだけど元の種死では可変機との相性最高設定のあるシンは
総帥世界でインパルス以外の可変機乗った事有ったっけ?
エムリオン→ガームリオン飛鳥→グルンガスト飛鳥→飛鳥インパルス
可変機との相性=多機種適性保持?
>>90 アストレイ側での情報だけどインパルスが10数機建造されて各地のエースにのみ支給されてる
ただ戦場でのシルエット換装に瞬時に対応出来るのが誰も居なかった
そしてシンがテストパイロットに抜擢されたのもこのシルエット換装に瞬時に適応出来る異常性からって設定がある
インパルスの利点であり欠点だけどシルエットが変わる事で機体バランス、馬力や武装がガラッと変わる所為で
対応出来るパイロットが物凄く限られるって訳で、同様に全く違う性能に変わる可変機との相性が最高に良いって事になる
>>91 いや、そのりくつはおかしい
可変と換装は別だべ
操縦系統がガラッと変わる訳でねーんだから
あくまで変わるのは戦術だしな
>>92 どっかの2次創作の設定を勝手に自分の中で公式設定にしてるだけじゃねーの?
シンが好きなのは良いけど、自分の書いたSS作中なら兎も角、自分の都合の良い様に解釈した設定をさも公式の如く言うのはイクナイ。
まあ、このSSのシンは最早操縦適性とか、そんな次元はブッ千切った領域にいるから大した問題じゃないなw
ところで電池にして登山家の二人は、今後どの機体に乗り換えるのかな
順当に考えると、それぞれがキュリオスとアリオスか?
キュリオスは微改造してGNアーチャーの代わりに合体って手もあるな
つかそうじゃないとアリオスに劣るキュリオスに存在意義が…
つキュリオスガスト
設定上の性能はともかく、映像描写だけだとどこがキュリオスより改良されてんのかよく分からないんだよなあ>アリオス
鋏の使い勝手なんか明らかに悪くなってるし
・両腕内臓のビームマシンガン(一個でキュリオスのと同等)
・背部ウィングはGNフィールド発生可(キュリオス時代よりも実戦で使いやすい)
・スラスター数増加(例、脱獄作戦時参照)
と一応攻・防・機動力は強化されてはいる、されてはいるんだがな…
MS状態で鋏使えないから派手さが無いわ出番が他のと比べて
圧倒的に少ないわで印象に残らないのがアリオスクオリティ
避難所ー
アリオスはZのスイカバーをリスペクトしすぎ
お詫びと訂正を。
メカゴジラのパイロット他ミナの部下であるソキウスである、と書いていますがソキウスたちにはナチュラルを攻撃できないのでこれは誤りです。
パイロットはいまは不明という事にしておいてください。申し訳ありませんでした。
そういえばさー、昔コロコロで連載してたゾイド少年団だかで「どんなゾイドも作れるゾイドコア」で
1980年代後半の日本で1/1スケールゾイド作るって話あったよねー。
>>103 あら?確かソキウス達って前作の最初の方でナチュラルを攻撃するための理由付け完了させてませんでしたっけ?
ナチュラルを一番傷付けているのはナチュラルの指導層だー
じゃなかったっけ?
オリジナルGNドライブか。まあ確かに重力制御技術があるから作れないことは無いだろうけど。
それでもゲッター炉心まではさすがに作れないだろうしなぁ。
作れない……よな?
総帥世界ならゲッター線以外にペークシスプラグマなんかもですね…
あ、合体用ヒロインが一人足りない
スパロボDでストナーサンシャインの塵となった早乙女博士が転移してくればあるいは…
ってゲッターは虚無るから拙い、せめて光子力と超合金Z系列にしようぜ
富士山の麓かバードス島跡を掘ればジャパニウム鉱石あるだろうし
真マジンガーからあしゅらやヘルが来たり・・・
あしゅら来て何すんだよ
死ぬのが目的だった奴生き返らせるとかマジイミフ
ブロッケンは続投の噂あるからねぇ>真魔神我ー
11氏避難所に投下してたのね、今更気付いた
グレイターキンとタイマン張れてる時点でヴァイサーガは良機体なのだが、次回に登場するだろう機体とかと比べるとやっぱ地味だなあ…
普通にカッコいいと思うがな。
そういえば螺旋王とかブリタニア皇帝とか来ても
おかしくない世界だと今気付いた
マクロスのミシェルが来てロックオンとスナイパー同士でなんやかんやも有りだな。
もしくは荒熊さんとかもな。
(マクロスは基本劇中劇だと知らないような
>>117にロボヲタの資格はあるのか…?)
>>119 クロスネタで劇中劇だからとか持ち出すとかアホか。
ブリタニア皇帝が来るなら一緒に地球皇帝も是非に。是非に。
そいやGN粒子って刹那の例のように一定量・一定条件下で人を進化させるけど
SEED因子と何かしらの反応を表すのかな?
あれって確か進化を運命づけられた因子云々って設定あるし。例えば種が壊れずに花咲くとかさ
どこぞのジャッジメントの人のようになるわけか、種持ちが
11氏の次の話のタイトルは想像つくんだが、誰かカッコいいタイトルロゴを作ってくれないだろうか?
OG2でもOGsでもあれ見てテンションが上がったので。
お暇な方、どうかお願いします。
ジャッジメントですの!
↓
頭に花が咲いて初春る
こうですか、わかりません!
>>127 新ゲッターロボの竜馬が体験した未来の地獄絵図が見れる。
もうゲッター線の代わりに菊池線増幅装置付きの菊池炉積んだゲッターロボ飛鳥に
GアームライザーならぬGNアームライザーと合体させればいい気がしてきた。
ATX氏水面下で準備続けてたんだな
無事連載再開までにアク禁解けりゃいいが
こんばんは、投下します。できますれば、支援をお願いします。
ディバイン SEED DESTINY 第二十七話 失った記憶からの使者
オーブ諸島の地下に設けられた広大な秘匿地下格納庫に渡されたキャットウォークの上で、青いパイロットスーツに着替えた刹那・F・セイエイは、ライトアップされたガンダムエクシアを一途な瞳で見つめていた。
死の充満していたあの戦場で自分の運命を変えた存在ガンダム。そのガンダムの系譜に名を連ねるだろう機体が、いま、じぶんのものとなり、その威容を目の前にしている。
自分自身にしかわからない心の最も深い所で沸き立つ感情の渦を、刹那は唇を一文字に結びながら噛み締めていた。
「刹那」
刹那と同様のデザインだが、緑色のパイロットスーツを着こんだロックオンが、エクシアの隣に置かれたデュナメスに乗り込みながら、声をかける。
時間の都合上、デュナメスのコックピットにハロを収納させるためのスペースが無いため、今回はハロ抜きでデュナメスの操縦を行う。
返事はせず、顔を向けるだけの刹那に、ロックオンは搭乗を促した。わずか数時間で、エクシアとデュナメスの太陽炉交換作業とそれに伴うデータの書き換えは、超突貫で終了していた。
擬似太陽炉と純正太陽炉の規格それじたいは、まったく同じものだった事は不幸中の幸いといえた。
ロックオンにわずかに遅れて、刹那もまたエクシアのコックピットの中へと乗り込む。すでに太陽炉は稼働をはじめ、エクシアの全身に翡翠色の血流――GN粒子を行き渡らせ、鋼の肉体に力を与え始めている。
整備員たちやビアンらによって万全の状態に仕上げられている事は分かっていたが、それでも刹那は機体の状態のチェックを始める。
エクシアへの思い入れが溢れるほどある刹那でなくても、パイロットならば機体に搭乗したならまずする事ではある。
エクシアとデュナメス以外の機影は無く、がらんと広がり荒涼の風情が漂う格納庫を映していたモニターに、隣室に下がったビアンの顔が映し出される。
本来、戦端が開かれたと報告の入った現状で、ここに居ていい人物ではなかったが、ミナを先に司令本部へ行かせ、ぎりぎりまで太陽炉交換作業に従事していたのだ。
『エクシアとデュナメスには純正太陽炉以外に併設した補助動力は無い。が、その代り太陽炉には特別な仕掛けを施してある』
トランザムシステムの事か、とこのオリジナル太陽炉の基礎設計を成したのが、イオリア・シュヘンベルグであると聞かされたロックオンは、元の世界でもオリジナル太陽炉に秘匿されていたシステムを思い浮かべる。
DCの事だからプラズマ・ジェネレーター位は併設するかもとは考えていたのだが、ビアンの口振りから推察するに、それ以上のギミックが仕掛けられているに違いない。
まだ時間は短いが、DCの開発するオモシロ兵器(兵器にオモシロという形容詞が着く時点で何かが狂っている)の事については若干なりに理解してきたロックオンならではの感想であろう。
『グラビコン・システムの扱いに関しては、二人とも型どおりのレクチャーは受けているな? エクシアとデュナメスの太陽炉に仕込んだ重量制御ユニットはヴァルシオンのものを小型化したものだ。
メガ・グラビトンウェーブ、ブラックホールキャノン、Gインパクトキャノン、グラビトンブレードの使用が可能になっている。その代りどれもエネルギーを食う。多用はするな』
……ちょっとまて、ブラックホールて何だ? 確かに前大戦でDCの使った機体に人工ブラックホールを武器にしたものがあるとは、マティアスに聞いた事があるが、おれ達のガンダムに、だと?
予想の斜め上を行ったエクシアとデュナメスの武装に、ロックオンは問いただしたい思いを喉の奥で噛み殺した。ロックオンの心中の思いを知らず、ビアンの説明はもう少し続いた。
『グラビコン・システムで生じさせた重力を太陽炉の粒子生産用のエネルギーに変換し追加する事も出来る。普段はそれを蓄えておけ。今回はそうは言っていられぬが覚えておいて損は無い。
またGウォールの発生もそれぞれ可能だが、内側から武装を通す事はできん。あくまで防御一辺倒の装備だ。それと、エクシアとデュナメスには試験運用の終わった精霊兵装をそれぞれ装備させておいた』
精霊兵装とは文字通り精霊の力の宿った武器の事だ。四属性の精霊と機体そのものに契約を結んだ魔装機技術の応用で、契約の範囲を武装に留める事で一応の完成を見た代物である。
ヨーロッパに新婚旅行を兼ねて長期出張中のテューディが、向こうで完成させた品のデータを応用し、刹那とロックオンの二人に相性の良い精霊と契約を結んだ兵装を選んである。
なんでここでいきなり精霊とかファンタジーな単語が出てくるのか、流石にロックオンだけでなく刹那も訝しく思ったかもしれないが、疑問や文句の言葉は挟まず、二人は黙ってビアンの言葉を待つ。
なんかもう、口応えや質問をする事が馬鹿らしく感じられたのは小さいが確かな事実である。
『武装の詳細は二人とも道中で確認しておくように。お前達には現在待ち伏せを受けたクライ・ウルブズの救援に向かってもらう。最新のMSとMA、特機で固めた精鋭部隊に狙われたようでな、苦戦している』
「了解」
「あいよ。オリジナル太陽炉の実戦投入はぶっつけ本番だが、やるしかなさそうだな」
『戦場まではネオ・ドライヴで加速して向かえ。グランゾンの加速機能だが、グラビコン・システムを搭載したその二機なら使用は可能だ』
*
背にX字を描く巨大な可動バーニアを背負ったクロスボーンインパルスは、一組の機動兵器との死闘へと突入していた。
地球連合艦隊へ奇襲をかけるべく本隊と別行動を取ったものの、こちらの動きが読まれていたのか、待ち伏せをされ、強制的に戦闘へと突入してから既に二時間。
対クライ・ウルブズ壊滅用に地球連合から抽出された部隊は、その技量・機動兵器の質のどちらをとっても、かつてない高水準を持っていた。その中でも指折りのパイロットが乗る機体と、シン・アスカは殺気を交差させている。
右肩を跨ぐようにしてムラマサブラスターを構え、シンはビームライフルの銃口をぴたりとこちらに向けている、右肩が金色のハレルヤタオツーを最初の獲物と狙い定めて斬り掛かる。
木星などの高重力下での運用を想定に入れたクロスボーンインパルスの大推力は、七〇〇メートルあった両者の距離を、見る間に零へと近づけて行く。
「速ええが、まっすぐ突っ込めばいいってもんじゃねえ!」
肉食獣の笑みを貼り付け、ハレルヤは金と銀の妖美な瞳に、クロスボーンインパルスの姿を映し、右手の人さし指を添えたトリガーを引き絞る。
並みのパイロットであったら、目で追う事も出来ない敵機の速さに、迎撃よりも先に一瞬気を取られて致命的な遅れを生じもしようが、生まれも育ちも生き残る事と戦う事に根ざしたハレルヤにはあり得ぬ事であった。
脳量子波によって反射神経と神経の伝達速度を人体の限界値まで向上させられた肉体は、青と白と赤の入り混じる風と化したクロスボーンインパルスの姿を、鮮明に網膜に焼きつけている。
触れたもの全てを切り裂く魔性の刃風と化すクロスボーンインパルスの姿を、ハレルヤはその目に焼きつけながら、引き金を引く――近い、残り五〇〇メートル――引いた。
「逝っちまいなっ!」
必殺は確実。そう言い切れるタイミングで、ハレルヤはビームライフルを撃った。プラズマ・ジェネレーターのエネルギーを変換した光の矢は、容易く敵のコックピットを貫き、価値のない鉄屑に変える筈である。
それが、独楽のように旋回したクロスボーンインパルスによって躱され、確実だったはずの未来は異なるものへと変えられた。
ハレルヤやアレルヤ達超兵の戦闘能力を支えるのは、脳量子波の応用による超人の肉体のみに由来するものではない。他者の発する脳量子波を受信し、相手の行動を先読みできる事も強さの理由の一つに挙げられる。
脳量子波を知覚できるからといって必ずしも相手の行動を完全に先読みできるわけではないにしろ、超兵としての肉体のポテンシャルと組み合わせれば、それは絶大な戦闘能力へと結びつく。
この時も、ハレルヤは自身の能力を客観的に理解しているが故に、クロスボーンインパルスに攻撃をかわされた事に、若干ながら驚きを抱かずにはいられなかった。
続くビームライフルの追撃も、歪んだ螺旋の動きを見せるクロスボーンインパルスの残影を貫くばかりで、本体には一撃もかすりもしない。
すでに振り上げたムラマサブラスターの刀身が纏う莫大な量のビームが、眩しいまでの距離に近づいていた。瞬きを一つすれば、その間にタオツーが両断される。そんな距離。
十四基ものビームサーベルの発振基部を有し、粒子系サーベルとして規格外の切断力を有するムラマサブラスター。それをシン・アスカの技量とDCインパルスの性能で振るえば、尋常な装甲で断てぬものは何一つないと言っていい。
しゃら、と金属の擦れ合う音を一つ立ててハレルヤはタオツーの腰裏から引き抜いたカーボンブレイドでムラマサブラスターの袈裟斬りの一刀を受けた。
Eカーボンに超硬化処置とハレルヤの希望によってアンチビームコーティング処理を施したカーボンブレイドは、ビームサーベルを受け止める事が出来る。
平均的な出力のビームサーベルでなら、幾十度と切り結ぶことも可能だ。しかし、ハレルヤの目はカーボンブレイドの白い刀身に切り込む光の刃を映している。
ハレルヤが受けた刃を振るっているのは、シン・アスカであり、刃もまた規格外の超大出力ビームサーベルなのだ。
「ち――」
ぃ、と吐き捨てるよりも早く、ハレルヤはカーボンブレイドを手放し機体を後退させる。斬り裂くのではなく相手を叩き潰す分厚い刀身のカーボンブレイドを、容易くまっぷたつにするとは。
ムラマサブラスターの出力がカーボンブレイドにABC処理を施した技術陣の想定を超えていたのか、それを操るシン・アスカの技量が異常なのか。両方というべきであろう。
後退しざまハレルヤはビームライフルの銃口を、ムラマサブラスターを振り抜いたクロスボーンインパルスのコックピットに向けるが、その時には既にクロスボーンインパルスが機体を捻っている。
ムラマサブラスターを振り抜いた勢いをそのままに、身を屈めるようにして下段回転斬りへと移行している。コックピットに付けた狙いを修正していては、こちらが斬られかねない。
引き金を引くよりも機体に回避動作を取らせることを、ハレルヤの本能は選択した。天才ダンサーの華麗なバックステップの様に黄金の尾を引きながら、ハレルヤタオツーは後方へとブーストを駆けて後退させている。
分厚い胸の装甲に横一文字が刻まれ、ムラマサブラスターは再びハレルヤタオツーを切る機会を失した。ならば、また新たな機会を作ればよいだけの事。
シンはクロスボーンインパルスに振り抜く寸前で太刀を止めさせ、柄を矢のように引き絞り、ムラマサブラスターの刀身を顔面右横に引きつける。
弓につがえた矢の様に構えられたムラマサブラスターの切っ先は、まっすぐにハレルヤタオツーのコックピットへ向けられている。
機体ごとムラマサブラスターが雷光へと変わり、ハレルヤタオツーを貫くか、と思われた瞬間、ハレルヤのサポートに入ったアレルヤの牽制のビームがクロスボーンインパルスの周囲を貫く。
「ハレルヤッ!!」
普段は柔和な瞳を細く鋭いものに変えて、アレルヤはタオツーのビームライフルの照準の中央にクロスボーンインパルスを捉える。
が、同時に向こうもムラマサブラスター内部のビームガンの銃口を、こちらに向けている事に気づく。
引き金を引く――同時に機体に回避運動を取らせ、右殴りのGが体に襲い掛かってくる。体の中を流れる血流が血管ごと押し潰され、筋線維同士のつながりが千切れかけ、骨が軋む音を立てる。
完全なテスラ・ドライヴの搭載によってほぼ完璧な慣性制御が成され、Gの負担が極めて小さいシンに比べ、いまだ発展途上のテスラ・ドライヴのタオツーに乗るアレルヤにかかる負荷は大きい。
アレルヤの攻撃の意思とビームライフルの銃口の向き、引き金に添えられたタオツーの指の動作を子細に見ていたシンは、銃撃のタイミングを完全に見抜き、クロスボーンインパルスを動かしている。
右に動いたアレルヤタオツーの動きを鏡で映したように、クロスボーンインパルスもまた右へと動き、互いに逆時計回りの回避行動を取った両機の間を、無数のビームが行き交う。
上下左右、短時間のバーニア噴射やスラスター制御によって四肢を振り乱し、必殺の狙いをつけた銃撃を躱しあう。高速で動き回る両機のモニターにCGによって再現される周囲の風景は、水で溶いた絵の具の様に溶けている。
よほど訓練を積んだ人間でも、モニターに映し出される画像を正確には捉えきれず、襲い来るGに肉体的苦痛を与えられ、脳を冒す色彩の融け合った光景にめまいを覚えるだろう。
それでも卓越した技量と身体能力を持つアレルヤとシンは、モニターの中から消えては映る互いの機体の姿を追い続け、引き金を引き続ける。撃たれる前にかわし、撃つ前にかわされる。
これの繰り返しだ。当人達にとっては極限の緊張から一秒が一時間にも感じられる濃密な時が、いつ終わるともなく続く。
パイロットの体力と集中力が途切れるか、あるいは機体が負荷に耐えきれずオーバーヒートするのが先か。自らの動きのすさまじさ故に撃墜されるよりも自滅する方が先かもしれない。
その途中、この両機の戦いに加勢しようとした連合側のMSの数機が、あまりの速さに全く対応できず、撃ち交わされる無数のビームの一撃を受けて、次々と火球へと変わってしまう。
今回の戦いの為に選抜された腕利きでさえ、足を踏み入れられないほどの人類の企画を若干はみ出した領域の戦いであった。
「このパイロット、ぼくらと同じ超兵なのか!?」
「ばかやろう、ヤロウが脳量子波をコントロールしてねえのは落ちつきゃ分かるだろうが」
「ハレルヤ、大丈夫かい」
「てめえは自分の心配だけしてりゃいいんだよ。気ぃ抜いたら死ぬぞ!」
クロスボーンインパルスを相手に目の追い付かない超高機動射撃戦を展開中だから、さすがにアレルヤとハレルヤにも悠長に口を動かして言葉を交わす余裕はない。二人の間でだけ可能な脳量子波による会話であった。
アレルヤにハレルヤが加わり、襲い来るビームの数が単純に倍になり、シンは呼吸する事さえ忘れてクロスボーンインパルスに神がかった回避行動を取らせる事に集中した。
目まぐるしく瞳は動き回りコックピットに鳴り響く警戒音と、網膜に映し脳が認識した画像と、第六感に突き刺さる殺気の針をすべて同時に知覚し、生存の為の優先順位を決め、さらには反撃も行う。
全身の皮膚を剥いだように神経を鋭敏化させ、赤色の種子を弾かせた状態のシンの能力を駆使してかろうじて回避が可能な、超兵二人の完璧な連携攻撃の嵐。
コンマ一秒以下だろうと動きに遅滞が生じれば、瞬く間に火の玉に変えられてしまう。その瞬間に自分に襲い来るであろう死の恐怖と闘いながら、シンは機体の左手に左腰裏のグリップを握らせる。
――肩が銀色のティエレンが正面に、瞬き一つする間もなく視界の中を飛翔しながらビームを二射してきた。クロスボーンインパルスに左方向への側転をさせて躱すその背後に、今度は金色のティエレン。
こちらの回避砲口を完璧に見抜いた動き、ビームライフルの照準はX字の可動バーニアの中心を捉え、鋼の糸で結ばれているようにぴたりと銃口を向けて不動。背筋を貫く雷光の針! 相手が引き金を引く一瞬前、ここだ!!――
シンの心の中での叫びは、少年の体内を稲妻となって走り抜け、ハレルヤが引き金を引くよりもわずかに早く機体を急旋回、背後に居たハレルヤタオツーを正面に据える。
ハレルヤタオツーの握るビームライフルの銃口から零れるビーム。大気をその熱量とパイロットの殺意で灼熱させたそれを、ムラマサブラスターのビーム刃が受けて刹那の煌めきに変える。
と、同時に引き抜いたスクリューウェッブは、アレルヤタオツーの撃ったビームとABC処理済みのドリル先端部が衝突し、こちらもまたビームが無効化される。
「うおおお!!!」
指先一つに至るまで見えない力と恐怖で拘束しようとする戦場の重圧を、シンは刃のように鋭い叫びで吹き飛ばす。
細胞一つ一つが熱病を孕んだように熱い。シンの肉体は、まさしく血肉沸き立つという言葉通りの状態であった。戦場こそは真に生きる場所と知り抜いた戦士の血と肉と骨が形作る殻。
シンはスクリューウェッブを引き抜く際に左大腿部から射出していたヒートダガーを、後ろへ大きく反らした右足で掴み取る。
DCインパルスの足裏には作業などに使う為の機体固定用のクローが、つま先部分に二つ、踵部分に一つの、計三つある。νガンダムの足裏にもあるあの爪だ。
シンはその爪を利用してヒートダガーを右足裏に掴み取るや、大きく背に着くほどに反らした足を思い切り振り抜き、遠心力と加速が最も熱い抱擁を交わす地点でクローからヒートダガーを開放する。
赤く灼熱した短い刃を持ったヒートダガーは飛燕が消し炭に変わるしかない速度で、ハレルヤタオツーへと容赦なく襲いかかる。
狙いは腰部関節部。分厚い装甲を持つティエレンといえども、上半身と下半身を繋ぐ関節部を狙われれば無事では済まない。
−=≡ _ _ ∩
−=≡ ( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
−=≡ ⊂ ⊂彡
−=≡ ( ⌒)
−=≡ c し'
ヒートダガーの刀身はずぶりと熱したナイフをバターに突き刺すように、ハレルヤタオツーのオレンジ色の装甲へと突き刺さり、内部機器を熱と刃でぐずぐずに崩壊させる。
しかし、それはシンが狙った通りに腰の関節部を貫いたのではなかった。超兵ならではの人体の限界を超えた反射で、ハレルヤが咄嗟にタオツーの左腕でカバーしたのだ。
だが、それでも戦場の時計は針を刻むことを止めない。右足でヒートダガーを投じ、姿勢を崩したクロスボーンインパルスの姿に、機体を傷付けられたハレルヤも、必殺の一撃を凌がれたアレルヤも攻撃を続ける。
金銀妖眼の双子の撃ったビームが前後から襲い来るのを、シンは前方に投げ出した右足に機体を引き付ける様に動かす。恐ろしく段差のある階段を無理に上がろうとするような姿勢だ。
一見すると股関節が馬鹿になりそうな姿勢から、シンはクロスボーンインパルスを斜め上前方へと跳躍させる。四つの可動バーニアが下後方へと下がって一気に白い火炎を吐き、機体を一気に押し出す。
どちらかの撃ったビームが、クロスボーンインパルスの左爪先を掠めて融解させる。それに構わずクロスボーンインパルスは、右後方にムラマサブラスターの切っ先を流した姿勢でハレルヤタオツーへ!
人間の規格を超越したハレルヤの身体能力ならばこそ、振り下ろされるムラマサブラスターの切っ先が鮮明に認識でした。無数のビームを束ねて刃となした大刀の威力の恐ろしさも。
「やべえな」
ハレルヤは他人事のように呟き、自分のタオツーの左腕が呆気なく肩口から斬り飛ばされるのを見つめていた。
「はああ!!」
振り下ろしたムラマサブラスターの返す刃で、ハレルヤタオツーの股間から頭頂部までを斬り上げに行こうとしたところで、シンは横殴りの衝撃に襲われて、大きく機体ごと弾かれた。
咄嗟に感知した敵意に気づき、左腕外側に装着したビームシールドを展開し、半身を捻って防御の構えを取らせたが、腰溜めにビームサーベルを構えて突撃してきたティエレン高機動B型の勢いまでは殺せなかった。
ビームサーベルはビームシールドで防げなかったが、左肩の装甲が融解するのも構わず敢行されたショルダータックルに、クロスボーンインパルスはピンボールよろしく吹き飛ばされる。
三十メートルほど吹っ飛ばされたところで機体各所のスラスターを調整し、体勢を立て直したシンの目に、ハレルヤタオツーを背に庇う新たなティエレン高機動B型の姿が映る。
合計三十機のティエレンタイプの指揮官らしい動きを見せていた機体だ。MSパイロットの腕も相当なものと、遠くから見ただけでも分かる鋭敏な動きをしていた。
オレンジのタオツーのパイロットほどの動きの精妙さと異常なまでの動作の速さはないが、相手の動きの先を読む洞察力と視野の広さはシンの経験から見ても瞠目のレベルだ。
後方のアレルヤの動きを、後方確認用のモニターと第六感で警戒しつつ、シンはムラマサブラスターの切っ先を右下段に下ろした――いちいち青眼に構えては突撃など出来ない。
「ハレルヤ、まだ動けるな?」
「斬られたのが腕の一つだけだからよ」
東アジア共和国から本艦隊に派遣された部隊“頂武”指揮官セルゲイ・スミルノフ中佐が、泰然と落ち着き払った声でハレルヤに問いかけた。頑健なタオツーの造りならば、四肢の一つを失った程度なら、戦闘を続行できる。
機体バランスの偏重を調整する手間はあるが、ハレルヤの能力ならそれは許容範囲の内だろう。
「中佐、ハレルヤ!」
「来るかっ」
「はん」
クロスボーンインパルスの背を狙っていたアレルヤの声と同時に、再びムラマサブラスターを構えたクロスボーンインパルスが動く。状況は三対一。
しかし三者に油断は無く、一人きりのシンの心に焦燥はあってもそれは諦めとは程遠いものだった。
*
タマハガネ甲板上ではエキドナ・イーサッキの乗るラーズアングリフが、両手に構えたハルバート・ランチャーとガンレイピア、マトリクス・ミサイルによる、岩壁の厚みを持った弾幕を展開していた。
スペースノア級の船体各所にハリネズミの如く施された各砲塔、ミサイル発射管は休むことを忘れて常時稼働しており、エキドナもまた艦の上で動く砲台の役割を与えられていた。
対空砲火の網をかいくぐってタマハガネに取りつこうとするイナクトやフラッグ、ティエレンに牽制の火器を撃ちこみ、怯んだ所を周囲のエルアインスや艦の火器が捉えて一機ずつ火の玉に変えている。
空になったミサイルポッドをパージし、付近に固定していた補給コンテナから新たな火器を引っ張り出す。コンテナ内部のサブアームが新しいミサイルポッドをラーズアングリフに固定する。
甲板上に出す以上、このコンテナも分厚い特殊装甲を重ねて作った頑丈なもので、盾代わりにする事も出来る。いちいち艦内に戻って補給する手間を省くための処置の一つだ。
MS位なら中に収納できる巨大なもので、無数の火器と弾薬、完全自動の武装交換補助のオートマシンがある。
作業の終了までに要した時間は五秒。その間に、エキドナは熱を持って銃身が歪んだガンレイピアの代わりに、ピーコックスマッシャーと予備の弾倉を掴み取る。
ピーコックスマッシャーとは、ビームライフルに弓に似た形状のパーツを取りつけ、一度に複数の射線を確保した広域攻撃用の武器である。ただその分弾数は少なく、頻繁に弾倉を交換しなければならない。
本来はクロスボーンシルエットの強化パーツ“フルクロス”用の武装だが、フルクロスの増加装甲の補充が間に合わなかった事もあり、シンが持ち出さずに残しておいたものである。
エキドナは、他のメンバーが呼吸と脈拍を荒いものに変えて奮戦する中、滑らかな肌に汗の玉一つ結ぶ事もなく、淡々と作業を繰り返している。与えられた役割を果たすことだけに邁進しているのだろう。
艦の直衛にはタスクのジガンスクードが他に残っているばかりで、残りの隊員たちは敵機との乱戦状態に突入しており、エキドナのデータバンクをひっくりかえしてもそうは無い程の激戦を展開している。
「個々の兵士の力量は確かにすさまじいが、この物量ではな」
この戦闘に参加している地球連合軍諸部隊の錬度と士気は高く、彼らが並のパイロットであったなら、戦闘の様相はここまでクライ・ウルブズ苦戦のものとはならなかっただろう。
今回の戦闘に関して、シャドウミラーのヴィンデル・マウザー司令や創造主レモン・ブロウニングからは、クライ・ウルブズに不利益になる様に動け、といった指示は受けてはいない。
そのため、エキドナは目下、DC側の兵士として取るべき行動を選択し、こうしてラーズアングリフと自己の性能を最大限に引き出して、恐ろしく精度の高い移動砲台として機能していた。
「アンジュルグ、W17か」
エキドナがモニターの中でこちらに迫るある特機を拡大させる。地球連合艦隊にはガルムレイドタイプ以外にも、一機だけ特機らしき巨大な機動兵器の姿があった。
ざっと40メートル前後の巨体は、白雪の如く眩い白と清純なピンク色の甲冑の様で、腰からは風にたなびくスカート状の特殊な装甲が裾を広げ、背には宗教絵画のなかで天使が雄大に広げるのと同じ翼が羽ばたいている。
全身を甲冑で覆った天使か女騎士――ご丁寧に胸部には乳房らしきふくらみがある――というなんとも目立つ外見の特機アンジュルグ。
シャドウミラーのレモンないしはW17が搭乗する特機である。クライ・ウルブズとのデータか、あるいは地球連合の誰ぞやにせっつかれて、ヴィンデルかレモン辺りが派遣したのだろう。
アンジュルグは左腕のシールドからシャドウ・ランサーを連射し、迎撃に放たれた無数の空対空ミサイルを片っ端から撃ち落とし、エキドナのラーズアングリフを目指し翼を羽ばたかせてくる。
接触通信を求めているのだろう――とエキドナは判断し、わずかに照準をずらしてピーコックスマッシャーを撃ち、無数の光条を優雅にかわし、アンジュルグはシールド裏側からミラージュ・ソードを抜き放つ。
護拳付きの柄から放出されたエネルギーは刃を形作り、アンジュルグの巨体のパワーと背の翼が生むスピードを乗せて、ラーズアングリフへと斬り掛かる。
鎧を纏った有翼騎士か、はたまた天罰を降す為に光臨した裁きの天使か。幻惑の剣を振り下ろすアンジュルグの姿は猛々しくも美しい。
ラーズアングリフのコックピットのある頭部へと振り下ろされたミラージュ・ソードを、エキドナは慌てる素振り一つなく、ハルバート・ランチャーを手放しシザースナイフでこれを受けた。
鋏としての機能も持ち合せた特異な形状のナイフだ。ギミックの多いものは大概脆弱さを抱えるものだが、出力を手加減されたミラージュ・ソードならば十分受ける止める事くらいは可能だ。
「W16、通じているな?」
「ああ。わざわざ連絡を取った理由はなんだ?」
アンジュルグ同様に美しい女の声だった。エキドナとどこか印象の似通った声だ。一つの楽器のように澄んだ声なのに、それは人の口から発せられた者というには抑揚と感情に乏しい。機械の合成音声が世界一の美女の声で話したら、こんな響きになるのかもしれない。
アンジュルグのコックピットの中で、うすく若草色を帯びたプラチナブロンドを長く伸ばした女――W17がエキドナと同じように顔の筋一つ動かす事なくモニター越しに、互いを見つめている。
エキドナもW17、どちらも類稀な美貌を持ち姉妹とも言える間柄であると言うのに、雪の国の女王もかくやの冷たい表情を浮かべるのみ。
「アクセル隊長のことだ。お前と接触した筈だが、以後の連絡はどうなっている」
「何度か接触を試みたが、一時的な記憶喪失らしき症状を見せている」
「記憶喪失? 事実なら反応が無い事も納得は行くが、では不自然な接触は好ましくないな」
「そう言う事だ。転移した際の事故によるものだろう。それと艦内部での接触には限度がある。隊長の原隊復帰の時期がいつになるかは見込みがたたん」
「なるほど。しかし戦闘技能に問題は無いのだな?」
「ああ。ソウルゲインの操縦まで忘れてはいない」
「ならば、それを確かめさせてもらおう。フフ」
「なに?」
W17が珍しく、そして不気味な笑みを一つ零すや、ラーズアングリフをアンジュルグが蹴り飛ばし、翼を大きく打ってくるりと向きを変える。訝しげに眉を寄せたエキドナは、アンジュルグの向かう先に目を向ける。
そこには、テスラ・ドライヴの搭載で飛行能力を得たソウルゲインが、鷲掴みにしたウィンダムの頭部を握りつぶし、肘打でイナクトの胸に大穴を空けて、大暴れしている姿がある。
「隊長と戦う気か? W17と隊長の対戦成績は互角だったが、だからといって戦いを挑むなど無駄な事を」
*
「ちょいやっさ!」
珍妙な掛け声一つ、アクセルは肩からまっすぐ最短距離を走る直突の連打で、目の前に展開されている光の多角形のバリアを粉砕する。
ソウルゲインの巨体を前に立ち塞がっているのは、蜘蛛の様な下半身の上にダガータイプの上半身を乗せた変わった形のMAだ。前大戦までの地球連合軍の美的感覚からはちょっと想像できない形状をしている。
両腕にビームライフルを持ったこのゲルズゲーというMAは、陽電子砲を完璧に防ぎ、ビームや実弾に対してもそれなりの防御性を持つ、陽電子リフレクターという防御バリアの一種を持つ。
地球連合軍は、このゲルズゲーの他にも大型の四脚の蟹型のザムザザー、ドングリを横に倒して短足をつけた様な、ずんぐりむっくりとしたユークリッドというMAを開発し、実戦に投入している。
いずれも重装甲に陽電子リフレクターを装備し、外見の奇抜さからは想像できない機動性と高い火力を併せ持っていて、複雑な操縦を複座式にする事で解決し、MSを超える高い戦闘能力を発揮する。
MSクラスの火力ではアグニやオルトロスと言った高エネルギー長射程の火器で突破できない光の盾であったが、対ビームコーティングを施した武器には、バリアが遮断されて突破されてしまう弱点がある。
またABC処理のされていない物体も、力づくで突破する事は可能だ。アクセルはソウルゲインの巨躯が誇るパワーを生かし、むりやりにゲルズゲーの展開した陽電子リフレクターをぶち抜いたのだ。
敵機を近づかせない為にいくつかの火器を備えたゲルズゲーの火線をくぐりぬけ、懐魔にまで接近して見せたソウルゲインの動きの巧みさは、それを操るアクセルの体術の技量が極めて非凡なものである事を証明している。
MAの重装甲と言っても、MAやPTでは対処できない敵を打倒する為に作られた特機を前にしては、硝子一枚くらいの安心感しかない。
ソウルゲインが固く握りしめた拳の連打を受けたゲルズゲーは、一撃で頭がもげ、続く連打の前にあっという間に上半身が千切れて、無数の細かいパーツに撃ち砕かれてしまう。
アクセルは数少ない特機乗りとしてMSの相手は極力さけ、敵艦隊を守る陣を敷きながら、高い火力でストーク級やタマハガネを狙い撃つMA群の撃破に動いていた。
フィニッシュのアッパーでゲルズゲーの下半身を殴り飛ばした姿勢から、素早く両腕を構えなおし、アクセルはソウルゲインの数少ない射撃兵装の使用を選択する。
ぼう、と闇夜に鬼火が灯るかの如くソウルゲインの手首から先を、増幅されたアクセルの生体電流を源とするエネルギーが包み込む。それぞれ半円を描いた両手は前方に重ね合わせて突きだされる。
開いた五指の先には、獲物と狙い澄ました敵の姿が!
「青竜鱗、こいつがかわせるか!」
∩ _ _ ≡=−
ミ(゚∀゚ ) ≡=−おっぱい!おっぱい!
ミ⊃ ⊃ ≡=−
(⌒ __)っ ≡=−
し'´≡=−
アクセルの音声を認識したソウルゲインは、両手首に集中・増幅させたエネルギーを解放し、黒雲から迸る稲妻を何十本も束ねたのと等しい輝きの本流を放つ。
技の名前の由来なのか、光の本流は青い鱗を持った猛る竜のごとく解き放たれて、得るアインのツイン・ビームカノンを陽電子リフレクターで防いでいたザムザザーの横っ腹を直撃した。
一方向にしか展開できない陽電子リフレクターは使用の際に、必然的に操縦者達の意識を、攻撃を受ける方向に向けさせてしまう。その為、複数の相手を対処する時はこのように不意を突かれやすくなる。
青竜鱗の一撃はザムザザーの左前後の脚部を吹き飛ばし、脚部の中間部分の装甲に大穴を穿っていた。
これだけのダメージを受けては陽電子リフレクターの展開などできる筈もなく、エルアインスからの砲撃を受けて瞬く間に撃墜されてしまう。エルアインスとの共同撃破だ。
このザムザザーでソウルゲインが屠ったMAだけでも六体を越すが、連合艦隊の空母や輸送艦のハッチが開くとまた新たなMAの巨体が姿を覗かせている。
圧倒的な戦力の段階的投入による敵勢力の精神的・肉体的疲労を狙い、士気を下げさせる腹積もりなのだろうか。なかなか嫌らしい手段を選んでくれるものだ。
拾われるままにDCに身を預けたが、これはなかなか苦労する判断をしてしまったものだと、アクセルは自嘲気に唇を吊り上げた。
「っと、休む暇はなしか。モテる男の宿命ってね」
ソウルゲインの影を上空から覆う新たな影に気づき、アクセルはまっすぐ上を見上げる。そこには、エキドナのラーズアングリフとの接触を切上げたW17のアンジュルグの姿があった。
見目麗しき有翼天使は、ミラージュ・ソードの切っ先をソウルゲインへとまっすぐに突きつけながら、高速でチャージを仕掛けていた。
「速い、だが見切れないほどでは!」
一筋の矢となって迫るアンジュルグに気づき、ソウルゲインの腰をやや落とし、思い切り両肘を後方へ突っ張る。と同時にアクセルの操作に従って、両肘部分のブレードは、一瞬で長い刃を形成する。
「この切っ先、触れれば切れるぞ、舞朱雀!!」
大気とテスラ・ドライヴの推力を足場と加速に使い、ソウルゲインはアンジュルグのチャージを回避するどころか自ら飛びかかる。
猛禽の如く襲い来るアンジュルグの剣か、その首に牙を立てんとする獣の如きソウルゲインか。空中で交差する両者のどちらに勝利の女神はほほ笑むのか。
アンジュルグの速度を完全に見切ったソウルゲインが、アンジュルグの正面、左、右とほんのわずかな時間差をもって、分身でもしたかのように出現し、肘のブレードで斬り掛かる。
あらかじめ目を通していたソウルゲインの戦闘モーションをメモリーから照合し、W17はミラージュ・ソードと左腕の盾で左右の斬撃を受け止め、刃を流してソウルゲインのバランスを乱れさせる。
「っ!?」
万全のモーションではなくなったが、アクセルは構わず刃たる朱雀の翼を振るう。対するアンジュルグは、ミラージュ・ソードをわずかに引き込み、三撃目のブレードにカウンターを合わせる。
/巛 》ヽ,
ヾノ"~^ヽ,^
リ;´∀`)なんか俺がついてけない世界ぽいぜ……
( つ旦Ο
と_)__) 旦~~
きぃん、とどこまでも澄んだ音が一つ。繊細な硝子細工をその繊細さに相応しくい慎ましさで鳴らしたように、天まで抜ける高い音。
天に肘を突きあげる姿勢のソウルゲインと、大海に剣を突き刺す姿勢のアンジュルグとが、互いの脇をすれ違って背を向けあう。
海面に激突する寸前、バーニアの噴射風によって海面を大きく乱して、水飛沫を全身に浴びながら、アンジュルグはわずかに爪先を海面上に浮かし、天のソウルゲインを見上げる。
振り上げた肘を戻し、腰を落とした構えにもどし、ソウルゲインは眼下のアンジュルグを見下ろす。緩く開かれた五指の先からは、目に見えない闘志が糸のように噴き出し、アクセルの眼光は鋭さを増している。
アンジュルグの右の翼を斜めに縦断する切り傷が一つ。切り口の淵に指をやれば、皮膚は血の球を噴くだろう。ソウルゲインの左肩には、かすったミラージュ・ソードの剣の持つ熱量によってわずかに抉られた跡が。
「こりゃまた、強い敵が出てきたもんだ。乗ってるのが髭面のおっさんじゃない事を祈ろうかね」
「……流石は隊長」
エキドナに、アクセルとの不自然な接触は控えるべきかと言っておきながら、W17は称賛の言葉を投げかけていた。言葉ほどには感情が声に伴っていないのは相変わらずだ。
「ん? へえ、女がパイロットか。しかもこの声……二十歳前後のボインちゃんと見た」
「あまりおふざけになられませぬよう。レモン様のご機嫌が損なわれるかもしれません」
「レモン?」
「お忘れですか?」
「……いや、それだけは憶えている。誰のことかは分からんがな」
「そうですか」
すうっとアクセルの雰囲気が変わる。重く冷たく沈み、ソウルゲインの纏っていた闘気の質が別のものへと変わった。
手足の配置、呼吸、重心の移動、眼差し、その全てが闘争に向けられた、人間の形をした人間ではない戦闘マシーンのそれに。
「答えろ。貴様、おれの何を知っている? エキドナといい、貴様といい、おれを隊長と呼ぶのはなぜだ? おれの失った記憶の中に答えがあるという事だな?」
「答えは自分の力で手に入れてください。私は私に与えられた任務以外の事は何も知りません」
「いいだろう、生意気な口を利く女に言う事を聞かせるのも、たまには悪くない、これがな」
そこに居るのは、クライ・ウルブズの誰も知らぬアクセル・アルマーであった。
つづく
>>82さん、情報ありがとうございます。参考にさせていただきます。おっぱいは、支援と判断してよいのかしらん?
そういえばソウルゲインに風死装備させるの忘れてた。21時過ぎごろから外伝とうかします。
支援です>おっぱい
乙かれー
さーてこれからじっくり読もう
なんとか読み切った
チャンバラガンカタ
相変わらずすんげー密度の戦闘ですわ
>「ちょいやっさ!」
これでちゅるアクセルを想像したのは俺が某AAスレ群に汚染されてるからだろうかw
乙カレSUMMERでしたー
投下乙でしたー
…なんてもん積んでやがる、総帥…
まさか純正太陽炉が明後日の方向に強化されるとは…w
アクセルはやっぱりアクセルだなぁ…アホなのもいいけどかっこいいのもいいね!
そういやシャドウミラーは地球連合側だけど…ギリアムはどう動くんだろ。
外伝も楽しみにしていますね!
整備士
まだ某マイスターがスーパーイレーザー持ってきてないだけ抑えてあるのかもしれないw
極端な積み方で両肩両肘胴体股間とGNドライヴ6機を搭載しても
まだ脚に内臓させられるし、あれならw
では、時間なので外伝を投下しますが、ネタ全開のおふざけです。
右の頬を張られたら左の頬を差し出す位の寛容さでないと、読むにたえないのでご注意を! 若干スレ違い気味ダヨ。元ネタがどこまで分かるかな?
ゾイドが好きな人には特によろしくありません。
以上のことが了承できた方のみ、以下へお進みくださいまし。
ディバイン SEED DESTINY外伝 キツネ型ゾイドNG編
C.E.7×――過去の大戦でDCによって開発された事で兵器開発史に名を刻み、いまや陸戦の王者とされるゾイド。ゾイドコアと呼ばれる特有の機関を有し、自我を備えた金属生命体である。
軍関係のみならず民間でもパートナーとして、ときには愛玩動物の代わりとしても親しまれるようになった彼ら。
その全てが女の子ということもあり、一部の性癖の人間達から熱烈な愛情を注がれる彼ら――失礼、彼女らであったが、そんなゾイド達にも無かった事にされたいわば、黒歴史とでも言うべき存在がある。
実在する動物や昆虫、過去存在した恐竜、幻想の中の生物を模した幻獣型と無数の派生機が存在するゾイド達の中、開発されながらも闇に埋葬された機体と、逆に陽の光をいっぱいに浴びた一部の例をここに紹介しよう。
機種名:テンコ・クーゲン
キツネ型ゾイドの中でも名機と名高い機体である。ライオン型やトラ型にも匹敵する巨躯を持ち、特に純金と見紛う金色の装甲と御伽噺の中のお姫様の金髪の様に美しくボリューミィな尻尾が特徴。
数あるゾイドの中でもその見た目の華麗さでは随一と言われている。
耐久性は平凡ながら運動性、機動性、速力に優れ、学習能力と知能も極めて高く、ときには人間以上に柔軟な発想を持ち、独自の行動を取ってパイロットの危機を救った例は数多い。
しかしながら、性質がたぶんに気まぐれ屋であり、必ずしもパイロットの言う事を聞くとは限らない気難しい性格をしている。また計算高い一面を持つ反面、極めて喧嘩っ早く、感情の沸点はひどく低い。
感情の波の起伏が激しい分、情に厚く一度認めたパイロットや気に入った相手には損得勘定を抜きにして、親しく接する傾向があり、ときには自分を犠牲にする事も厭わない。
非常に食い意地が張っており、人間が摂取するのと同じものを飲食する事が出来る。特にケーキやアイスクリームなどの甘いお菓子といなり寿司を好む。
いなり寿司を食べている時は、まるで天下を取った様に機嫌が良くなるため、パイロット達は常に常備しているという逸話が存在する。
またテンコ・クーゲン型の特徴として、雄雌の性別をその日の気分次第で変化させること、人間型への変形機構を持つ事が挙げられる。人間型に変形した場合、キツネ形態の耳と尻尾は残る。
人間形態に変形する事で、通常のMSなどが使用する手持ち武器が使用できる事と細かい作業をより効率的に行える利点が挙げられる。
また武装も通常の科学に基づく兵器ではなく、呪術的な武装が用いられた呪術系ゾイドの名機としても知られる。
ある程度の飛行能力を有し、口から零れる狐火を主武装に幻術の行使や局所的に天候を操作し、雷を降らすなど高い呪術戦闘能力を誇る。
弟妹機としてテンコ・ギョクヨウが存在する。こちらは陽のあたり具合で銀に見える黒毛のキツネ型ゾイドである。ほとんどクーゲン型と同一の性能だが、こちらの方が気難しい性格をしており、個体数は少ない。
なお、兄弟仲は良好な模様で、この二機が同戦場に居るとお互いに発奮する事が確認されている。ギョクヨウ型がクーゲン型を庇う行動に出る事が多い様である。
機種名:オガミイットウ
アカギツネ型ゾイド。極めて平凡な性能を持つ量産型ゾイドである。クーゲン型より後に開発された機体であるが、名機と名高いクーゲン型に比べると、いい所も悪い所もない性能となった。
こちらにも呪術系の兵装の装備が試みられたがゾイドコアの違いによるものか、期待していたほどの威力は発揮されず、その分ペイロードが想定よりも余裕があったため、通常の武装が採用されている。
本機の特徴はその平凡すぎる性能ではなく、扱いやすいその性質である。若干流されやすいまでの受動的な性格で、強めに言葉を発すれば大概は言う事を聞く。
その為新人パイロットにも扱いやすい機体であり、訓練学校をはじめ実際の戦場でも多くの新人パイロットに愛用された。
またその従順性(気が弱いとも言う)から、熟錬のパイロットに長きに渡って搭乗された例は多く、この場合のオガミイットウ型の戦闘能力はクーゲン型にも匹敵するとされる。
扱いやすさにおいてはゾイド屈指とされる本機であるが、クーゲン型には頭が上がらないのか、同部隊にクーゲン型が居るとパイロットを無視してまでクーゲン型の言う事を聞く事が全機で確認されている。
この為、クーゲン型のパイロットの階級・命令権がオガミイットウ型のパイロットより下の場合、部隊の指揮に混乱をもたらす事が報告されている。
そのような事態にならぬよう部隊編成に気を配らなければならない事が、オガミイットウ型のほぼ唯一の欠点である。
他に例を見ない特徴としてゾイドコアの分裂(繁殖と見るか否かで学会はいまなお紛糾中である)の際に、必ず子狐型のダイゴロウと一組になる事が挙げられる。
ダイゴロウ型は大きく成長する事は無いものの、見た目と挙措の愛らしさから所属する部隊のマスコット的な存在となる事が多く、一般市民との交流イベントなどでは引っ張りだこになる事が多い。
研究の結果、オガミイットウはダイゴロウを自分の子供として認識しているようで、ダイゴロウ型が傍にいる場合、オガミイットウが奮起し、その性能が倍近くなることが立証されている。
こうなった時のオガミイットウ型の底力はすさまじいの一言で、五対一の戦力差を引っくり返した事もある。
しかしながら、ダイゴロウ型をあえて危険に晒す事でオガミイットウ型の性能向上を狙う事は、その特性が判明した直後から倫理的な問題点が挙げられ、この戦法を用いた例は極めて少ない。
ダイゴロウ型を犠牲にする様な戦い方を意図して行った場合、オガミイットウ型からはパイロットとしての資格なしと判断されるのみならず、全ゾイドに搭乗を拒否される。
これは全てのゾイドがゾイドコアの繁殖ないしは分裂を行うことから、自らの子を危険にさらす様な輩へ本能的に忌避感を抱く為ではないか、と言われているが真相は不明である。
ちなみにオガミイットウ型は父性が強く、雄雌自在に変化するクーゲン型と並び、全ゾイドが雌であるという結論に対し、疑問を抱かせるきっかけになったことは、今日では良く知られている。
機種名:クラマ
銀毛の麗しい見た目のキツネ型ゾイドであり、冷やかな瞳とその麗しさから、クーゲン型と並び、キツネ型で五指に入る美しいゾイドとして賞賛されている。
平均的に温厚な性質のキツネ型にしては異例な事に、氷のように冷たく残酷な性格の機体である。パイロットを含め他者を寄せ付けない冷酷さは、その基本性能の高さに裏付けられているものとされていた。
耐久力を除くすべての性能が極めて高いレベルで統一されており、余分な武装を排した素体の状態でも、重武装タイプのMSやゾイドを一蹴するほどの戦闘能力を誇る。
また本機には実験的に本格的な呪具を搭載したスペシャル仕様の機体が存在している。
キツネ型の中でも個体数の少ない本機であるが、ただでさえ滅多に搭乗できるパイロットが存在しないというのに、そのスペシャル仕様機が実験の最中、破棄寸前まで故障する事態に見舞われてしまう。
これは搭載された呪具と生命体としての本機の本能が拒否反応を起こしたことが原因と言われている。
幸い、一命(ゾイドの場合はこう表すべきであろう)を取りとめたスペシャルタイプのクラマは、この事件を境に劇的な変化を遂げることとなる。
美しい銀毛は赤毛に、冷酷であった性質は穏和で理知的なものに変わり、ある程度以上の実力と人格を備えたパイロットであるならば、搭乗を認める様になったのである。
機体性能それ自体はワンランクダウンし、キツネ型トップクラスの水準には劣ってしまったが、搭載された呪具がゾイドコアと融合した為、後に開発された機体を含めクラマ型で唯一呪具を自在に操る機体となる。
なお本機に搭載された呪具は『魔装機の母』と称えられるテューデ・ラスム・アンドー技術大佐が、ヨーロッパの闇に身を潜めていた黒魔術とラングラン式錬金術と精霊魔術を組み合わせて作り上げたものである。
その製造コストと複雑な工程、希少な材料が必要である為、この呪具は一つだけしか製造されなかった。
クラマに搭載された呪具はありとあらゆる植物を分析・操作・改造・繁殖し、独自の戦闘植物を生み出すと言うものである。
これがゾイドコアに融合したスペシャルタイプのクラマは、自身の体内で新種の植物を次々と生みだし、援護・直接戦闘を問わず八面六臂の活躍で多大な戦果を残している。
また金属生命体であるゾイドに対しても高い薬効を有する特殊な植物の生成も可能であり、最前線で傷ついたゾイドを次々と治癒する姿から、ゾイド乗りからは畏敬の眼差しを向けられていたとされる。
一時的にゾイドコアを活性化させる事で、短時間ながらかつての銀毛形態に戻る事が可能で、この状態でも植物操作能力の使用には支障なく、精度や生成速度が増し、戦闘能力が増大化する事が確認されている。
銀毛状態に戻る事でかつての冷酷な性格が一部戻り、パイロットの指示や操縦が不適切であると判断した場合、独自に行動し、味方の援護よりも敵機の撃破を優先した事が確認されている。
呪具と融合したスペシャル仕様のクラマ型は、赤毛状態では性能が劣っているにもかかわらず、他のクラマ型に対して上位の命令権を有しており、全クラマ型の頂点に位置する機体である。
長きに渡って兵器開発者の間でどのような理由によって、このような上下関係が構築されるのか、論議されているが万人を納得させる答えはいまだ見つかってはいない。
機種名:ハゴロモ
極めて特異なキツネ型ゾイドで一個体のみが偶発的に発生した幻の機体である。人間に対して極めて冷酷で敵対心を抱いており、搭乗を許された例はただ一例だけが確認されているのみ。
本機の特異性は撃墜された際に、他のゾイドコアないしはMSに憑依して依代をハゴロモ化させる霊的能力である。金属生命体として進化の道を歩んだゾイドの霊的な面が表面化した機体とも言われている。
転生と称されるこの能力は、ボディ・ジャックと後に命名される事になった。
ハゴロモは転生を重ねるごとに全ての性能を向上させ、主兵装である加重力衝撃テイルの本数を増やす機能を備える。
この加重力衝撃テイルの破壊力は、一本目の時でもPS装甲さえも一撃で粉砕する攻撃力を誇り、六度目ないしは七度目の転生時には機体本体を狙った攻撃を自動ではたき落とす機能を備えるに至る。
数が増えるごとに攻撃力も増していて、八本目の加重衝撃テイルが生えた際の攻撃力は、400メートルクラスの戦艦でさえ一撃で轟沈させるまでになった。
その性格上整備士が触れる事も嫌ったため、本機に通常の兵装が装備された事はこれまで一度もなく、戦場に置いては常に加重力衝撃テイルのみで数多の敵を粉砕してきた歴戦のゾイドである。
高性能ながら極めて扱いにくいその性質から、パイロットからも嫌われていた本機であるが、九度目の転生に際してその評価は一変する事となる。
ハゴロモがゾイドコアより人型コミュニケーションデバイスを生成し、みずからパイロットの選抜を行った事がその原因である。
なおゾイドコアからこのように人型コミュニケーションデバイスが生み出された例は他には存在していない。
この人型コミュニケーションデバイスは、ストレートの黒髪を長く伸ばしたほっそりとした京風美少女(推定十代半ば〜後半)であったと記録が残されている。
絶世の美貌を誇ったこのデバイスは、数多くのパイロットや整備士を魅了し、無数のファンクラブ、同好会、スレッドを打ち立てた事でも有名である。
ハゴロモの人気が絶頂を極めた要因は、人型デバイスが数多のパイロット達の中から唯一認めたパイロットに対して性交渉を求め、史上初のゾイドと人類の間にやや子を設けたことだろう。
ゾイドと人類で交配が可能という空前絶後の事態に、当時の世論と学会は大いに荒れ狂ったが、明確な知性と自我を持ったゾイドや、アンドロイド、一部の特機に対し人権ならぬロボット権を認める法律が発行された事で、事態は沈静化する。
その後ハゴロモの人型デバイスは経済特区日本の古都・京都は二条城で出産。生まれたハーフゾイドの子供の処遇は最高機密として秘され、性別・年齢・名前に至るまで一般に公開される予定は目下ない。
なお父親に当たるパイロットは昼と夜とで人格の変わる二重人格者であったと実しやかに噂されているが、真相は不明である。
機種名:ハクメン
最強のゾイドはどれか、最悪のゾイドはどれか、と質問した場合、DCが生み出したゾイドの中でも、まず第一に名前が挙げられる最強最悪のゾイドの一機である。
日本国に古来より伝わる金毛白面九尾の妖狐をモデルとした幻獣型兼キツネ型ゾイド。全ゾイドを見渡しても規格外の巨体を誇る本機であるが、当時の技術の粋を凝らして作られたその機体は、大部分が人工細胞によって構成されている。
一見装甲に見えるボディの外見も、すべては硬質化した生体細胞であり、ゾイドでありながらゾイドコアと主動力機関以外はすべて非金属で構成されている異端中の異端である。
ズフィルードクリスタルをベースに、マシンセル、細胞活性化ナノマシンを組み合わせて作られた細胞は極めて高い再生能力と、自己改造機能を備え、現存するあらゆる兵器に対して高い耐性を有する。
また本機が最強の一角として名を挙げられる要因は、主動力機関として搭載されたデ――検閲――ヴの特性によるものである。
負の無限力をエネルギー源とするこの機関は、かつての大戦で一時、地球側に与したクォ――検閲――ドンの乗機――検閲――ナガンに搭載されていたものをコピーしたもの。
ハクメンに搭載された■■■・レ■は、その性質を変質させ命あるものが発する恐怖を取り込み、自己の力へと変えて無限大に力を高める機能を得た。
その影響か、あるいはそもそもそのような気性であったものか、ハクメンは沖縄トラフに設けられていた極秘海底基地より脱走し、その暴威を振るう大事件へとつながる。
本機の武装は、直径三キロメートル程度の島なら一撃で壊滅させる極大・超高熱の火炎と、それぞれ異なる特性を持った九本の尾である。
有機物・非有機物を問わず万物を溶解させるナノマシン散布型アシッド・ミスト“シュムナ”や、クジラ型ゾイド“あやかし”、アカツキのヤタノカガミ装甲を強化・発展したエネルギー反射装甲を持つ“くらぎ”。
くらぎ同様にエネルギー反射能力を持ち、妖艶な美貌を持った女性型の“斗和子”、ハクメンが独自に生み出した異形の生態兵器“婢妖”“黒炎”を無制限に生み出す二本の尾。
他にも既存のあらゆる装甲・防御バリアを貫く無数の刃を連ねた槍の尾、超高速で吹き荒れる風と雷を伴う嵐の尾を持ち、単独で戦局を覆す絶大な力を誇る。
なお最後の九本目の尾の能力は不明で、終始加重力衝撃テイルとしてのみ使用された。
また機体の性能だけでも最強クラスの性能を誇るハクメンであるが、人間以上の知性を持ち、あらゆる知略謀略を巡らし、不和を抱かせて内紛を誘発する様な陰湿で残虐な計略を好む。
ハクメンが沖縄トラフ脱走に備え、日本区に駐留していた部隊が機能を十分に発揮できないよう手を回していた為、軍の対応は後手に回り、数多くの尊い人命が奪われる事となる。
日本を蹂躙し、数多の恐怖を食らったハクメンは機体を巨大化・高性能化させ、さらに強大な存在へと進化を続ける。
かろうじて間に合った軍の部隊も次々と返り討ちにあい、ようやく事態に対処できるだけの戦力が整うまでの間に、数百単位のMSやMA、ゾイドがハクメンによって撃墜されてしまう。
最終的にはハクメンの暴走に備え用意されていた再生機能を封じる特殊装備“獣の槍”を持つMSアオツキと、ペアとなるMMシリーズ最新機トラの二機の活躍により、かろうじてハクメンの撃破に成功する。
アオツキ、トラもハクメンとの最終決戦で相討ちとなり、このハクメンの暴走事件によって極東地域の戦力は半数にまで落ち込み、治安維持や軍の編成、戦死者の処遇などによって政治経済が混乱の坩堝と化した。
最終的な被害はいまだ明確な数字は出ていない。最低3000機の機動兵器、236隻の艦艇が喪失、人的被害に至っては最低でも5000万人以上の死傷者が発生した。
この際の混乱は数十年に渡って尾を引き、一時はゾイド開発の全面停止にまで陥った一大事であり、多くの人々の心に傷を残した陰惨な事件として記録されている。
DC非公式同好会『機動兵器萌え燃え化推進委員会』 擬人化部門 獣っ娘派学会 第十二代名誉会長 極東方面軍長官イイジャナイ・ダッテ・ジョウダンダモノ中将著『ゾイドの可能性』より抜粋。
おしまい。
数日前のゾイド講座の時に、うしおととらを呼んでいたのをきっかけに思いついたネタでございます。あとジャンプの妖怪任侠漫画の影響も若干あります。
白面の御方様とスーパーロボット軍団のガチンコみてえなあ、という願望も。
ではでは、こいつ馬鹿だw とでも思っていただけたなら幸い。お邪魔しました。
投下乙でした〜
しかし、キツネ型の元ネタがw
ハゴロモだけネタがわかんねぇwww
ジャンプ連載中のぬらりひょんの孫の敵でしょ
やべぇ、余裕で総て解る…いや、ドマイナーなの無かったおかげか
キツネ型のクーちゃんタマちゃん拝みさんは水霊を奉る家の次男には逆らえなかったとか言われてるんだろうか
あとキツネ型と言えば蘇妲己型とか玉藻型とかですね、、、そろそろ自重しろとか言われそうだな
すいません、テンコとオガミイットウがわからないのですが(オガミは子連れ狼ですよね、
それがなぜ?)だれか説明を。
後、こういうネタは好きです。
>>156 二つともラノベの「我が家のお稲荷さま。」から
>>156 小説のお稲荷様2巻か漫画版3巻のエピソードで子連れ狼に嵌ってた天孤に名付けられるエピが有るんよ
原作止まってるからその内漫画が追い付きそうだ……
ちなみに元ネタはそれぞれ我家のお稲荷様、幽々白書、ぬらりひょんの孫、うしおととら
このラインナップの中にシャオムゥ型がないのは何かの伏線だろうか……
本編で八面六臂の活躍見せるとか、あるいは本人本編登場か。
変態機動同士の果たし合いに巻き込まれる一般兵に同情を禁じ得ないw
つか支援のタイミングが絶妙すぎて別の意味で吹いたw
特に青竜鱗の直後のおっぱいw
最後のゾイドは某所で連載しているBETA相手に無双しているモデルの人?なら同じことができそうで吹いた。
ここのゾイドは猛禽型と大型4足肉食獣型2体とマンモス型のパイロットの怒りが頂点を越えると
変形合体して人を超え、獣を超え、神の戦士へと至るのか?
>>162 下手するとなるんじゃないかな?
なんせ総帥だ
総帥の事だから、神の戦士は神の戦士でも、
イー○ルのパイロットが最強の復讐者で、
マン○スのパイロットが足手まといの幼女な方になったりしてな……。
……なんか、想像して全く違和感が無いのに吹いた。
シン=復讐者
マユ=幼女
ステラ=お色気担当
セツコさん=天然クール
役で燃えている方の神の戦士……。
そう言えば、あの漫画、シャ○ロ戦の闘技場で敗北者の残骸にゴー○ョーグンとかトー○ギスとか混じってんだよなー。
165 :
通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 02:14:45 ID:80tREQVU
とりあえず総師がリクオ×羽衣狐派だということがわかった
>>164 風邪を引いて熱出したマユをシンが人肌で暖めるわけですね。わかります。
さて、アホセル&ミィがムゲフロEX登場な訳だが
なん…だと……?
アースでもソウルでもないアークゲインか・・・
隊長は生身で凄かったw
つまりはアクセルをKOS−MOSやアシェンと肩を並べて戦う事のできる超人にして構わないという事ですね? よくわかりました。
とりあえず、私のお話のアクセルとアルフィミィはOG関連の転移者ではないので気にしなくても良いので一安心ですわい。
ところで、とある科学○超電磁砲を視聴していて思った事に対して、意見をお伺いしたいのですが……電磁発剄を応用すればシンは撃てるのでしょうか、レールガン?
どんどん人間じゃなくなってくるなあ、なんでかしら。
いいぞぉ!!どんどんやってくれ
無茶も貫けば道理となるさ
レールガンは砲身があれば撃てると思うけども…
砲身無しなら弾の加速に合わせて併走すれば撃てると思う。
…プラズマで大火傷するけど。
電磁誘導がレールガンで
磁気反発がリニアガンだっけか
砲身なしだと照準がつけづらすぎるぜ。
アクセル隊長は生身で麒麟出せるのかよwww
問題は青龍だな・・・
生身でこんだけ強いならそらWシリーズをお人形さん扱いもするわ。
>>172 レールガンには磁力か電気がいるから電磁発剄のEMP(電磁パルス)では無理では?
ダディフェイスの九頭・左竜雷掌みたいなちゃんとした電気技か
ガンソードみたく電気体質、もしくは改造手術かしないと
つか生身で電磁抜刀(レールガン)やったら装甲悪鬼村正涙目やwww
>>172 全く伏字になっておりませんそこにシビれるあこがれるゥッ!!!
某スレに在住している故にアクセルが生身で麒麟が打てる事に全く違和感がなかった俺は勝ち組。
シンは……あれだ!
瀕死の重傷をおった所を並行世界の父よ、母よ、妹よな赤い仮面のシンか、深海開発用サイボーグな自分に超電子ダイナモでも体内に組み込んで貰って超電子人間にパワーアップすれば問題ないよ!
ええと、電磁発勁の応用で空間に電磁加速フィールドを構成してその中に指弾を撃ち込む、と
……総帥的には可能だろうけど近接格闘戦の技じゃないな、フィールド構成の手間から見て
つかそれやったら上のレベルにいるキラアスとかどんな技持ってる事になるんスかwwww
リニアガンなら簡単に撃てるって事か、とどのつまり
なんか指弾=ハンドリニアガンで腕全体を使った加速フィールドを使うのがアームリニアガン
体細胞1個を気で核爆発させてそれを火薬代わりに撃ち出すマグランチャーとか妙な電波がよぎったが
気にしないでおこう
みんなはC.Eをどんな魔界にしたいんだw
>>185 腕の中に空洞作って発射するってことなのか?
リニアガンは加速するための長い砲身がいるので。
そもももソウルゲインはGガンダムと似たような操縦システムだから隊長が生身で麒麟撃てても何も不思議はないな
>>186 それでもアニメよりは皆よっぽど”人間”してるのが恐ろしい
>>188 未熟時代とはいえGFのドモンとスパロボ補正でGF級の空手家、しかも明鏡止水習得したっぽい一矢の
パンチくらって無事だからな
>>187 いんや、腕をガイド代わりにして簡易加速レールフィールドを作る
腕の上に見えないアイアンフット用アームリニアガン乗っけてるような感じで
記事を拝見したが左上の写真、隊長生身で青龍だしてないか。
隊長、素で人外だったのか・・・・・・・・・・・・
特機乗りは皆人外じゃないか、何を今更
>>192 隊長外伝の時点で普通の人間から逸脱しちまってるからなー
アルフィミィによる復活だから…
等身大で使う超電磁技といったら、レールガンよりも超電磁空手が真っ先に思いついてしまう
マテ、それだと生身で特機を超える殲滅兵器になってしまう!
グルンガスト「居るじゃんそういう奴…おかげで俺なんかスクラップだよ!」
>>193 おいおいトウマはれっきとした一般ピープルだぞ
1000分の1秒世界を極めたり邪神を蹴り飛ばしたりしてるけどな!
シン君にはぜひとも生身で抜刀レールガンや指弾レールガンを身に着けて元ネタの人たちを涙目にしてほしい。
もう十分に人外ですが。
>>200 こういうのがシン厨の評判を悪くするって分からんのかね?
ようやく規制解けたー!
か○こんのも欲しかったな。狐ゾイドw
>>199 腕骨に電磁場沿わせるんじゃなくて、空間に練った気で強引に加速場の依り代を作るんよ
腕はその支えつうかマウントみたいなもの……
ここまで書いて指弾以外の方法でどうやって肘から上腕二頭筋のあたりで最初に撃ち出すのか
全く考えてなかった事に気がついた orz
トウマ・カノウと大雷鳳の存在が、OG世界なら鍛えれば最強になれる可能性があることを証明しています。
総帥の所のシンと戦ってもなんら違和感が無さそうだ。
……向こうの世界のバラン・ドバンは出ないのかなぁ。
>>176 何?生身だと照準ががつけづらい?
逆に考えるんだ。
ゼロ距離で叩き込めば照準をつける必要はないと。
使い勝手がさらに悪くなっているような気がしないでもないが。
昔の漫画であったな、そう言うの……。
波動拳系の技で腕から出すのと足から出すのがあって、
腕から出すのは速射が聞くけど軌道が読み易いから、敵の懐に入って拳毎叩きつけるって奴。
……重ね合わせると、
シンに打撃時の拳保護用と敵武器受け流し用のアームガードつけさせて、
電磁発剄の磁界で腕毎アームガードを加速、超近距離で高威力打撃を放つスーパーワンインチパン……何を考えているんだ俺、きっと疲れているんだな。
単純に考えるとさ、ビアン博士に電磁発剄使用する事を前提とした武装を準備させれば良いんじゃね?
手首に擲箭筒電磁加速仕様を仕込む、とかさ。
流石に、何らかの道具なしに飛礫を電磁加速するのは無理だと思う。
そんなん、師匠の方も使ってなかったと思うし……。
おいおいみんな落ち着けよ
シンが習得したかの流派的には外部装甲とかそういうのはNGじゃなかったか?
己の生身と剣で戦うが理想だろ
>>207 シンの師匠は、ちゃっかりサイボーグ体で技使っちまってる御人の方ですから・・・
まあ、このSSだと生身のままなのか、サイボーグになってるのかは分からないが
外部装甲ぽいものはオクレアウステの受け持ちっしょ
なんかロボっぽい>オクレアウステ
むげフロEXの戦闘シーンの動画見たらアクセル隊長が普通に手から青龍鱗のエネルギー波を出していたw
無限のフロンティアも、何が何やら……オープニングムービーもおっぱい、おっぱいでエロ要素がどんどん強くなっているし。
アルミたんもロリ系なのにエロいし。
だが待ってほしい
エロはみんな大好きなんじゃないだろうか?
何を今更・・・
ミィはマジエロい(;´Д`)
>>212 セクハラの合間に話を進めるゲームにいまさら何言ってんだよw
EDでどう考えてもベッドインしちゃってるゲームで何を言ってるかって事でもあるね
あの駄狐さんが出てるゲームなんだぜ?
駄狐さんからして「跳び箱プレイをとか冗談で言うような歩くセクハラだしな
>>219 頭大丈夫か?
病院行って二度と出て来なくていいぞ
何でこんなに叩かれてるんだw
と思ってリンク先で吹いた
まじで
>>219は病院行った方が良いわ
頭の
バカはほっといてNEOをプレイされた方はおられますか?
システム的には賛否がわかれているそうですが。
新ゲッターの改変ぶりが酷過ぎると評判のようですが、まあハードがハードですから仕方ないかと?
これがPSPやPS2なら問題なかったのに……。
普通に面白い
約40話で少なく感じるかもしれないけど1話のボリュームが凄まじい
ユニットも程よい数だし
更に出撃した機体を母艦に戻して別の機体を出撃させられる
無限交代みたいなシステムでどのユニットも使うことが出来るし
思い出補正かかってるがBGMの出来もいいぜ
無双できない代わりにどのユニットも使えるレベルだから
従来のスパロボとは違うかな
以上擁護意見でした
レールガン談義で色々とご意見をお寄せくださりありがとうございました。投下いたしますがアクセルが人間? な仕様になっております。ご注意を。
ディバイン SEED DESTINY 第二十八話 蒼拳×翼剣
ゆっくりと風が吸い込まれる。
深い渓谷に漂う一寸先も見通せぬ深い霧が、天に角突く山脈に開けられた小さな穴へと吸い込まれる時に発するような、それ位の小さくか細い音が風には伴っていた。
垂れがちな目を細め、その奥に見つめる者の心臓を凍らせる冷たく鋭い眼光を宿し、薄く唇を開いたアクセルが、肺腑に空気を取り込んだ音である。
ソウルゲインの循環システムによって、肺腑に吸い込んだ空気は外部の穢れを知らぬ清浄なものだ。その空気を心臓から送り出された血流と共に全身に循環させてゆく。
腹腔に溜め込んだ気力もまた全身を構成する数十兆以上の細胞の中核へと沁み込み、アクセル・アルマーの身体能力が根底から底上げされる。
肉体と意識が戦闘用のものへとスイッチを切り替えて、外見こそそのままに別の生物へと変容を行う。多重人格の意図的な交代にも似た戦闘特化の意識変化を、アクセルは一呼吸で終える。
打ち上げたばかりの名刀の様に澄んだ刃の鋭さのアクセルの瞳に、ソウルゲインの額へと突き込まれるミラージュ・ソードの光の切っ先が映る。
アクセルが息を吸い吐き終えるまでの間を、美しき戦闘人形W17が見逃すわけもなく、アンジュルグの翼の一打ちで全身に適度な緊張と濃密な闘志を漲らせたソウルゲインの懐へと飛び込んでいた。
シャドウミラーのアクセル・アルマーを知る者なら、その次の瞬間に何が起きたかもわからず打ち砕かれる自分をイメージし、二の足を踏む行為である。
ソウルゲインの腕のどちらが雷光と変わってアンジュルグを打ち砕くのか、それのみを注視するだろう。アクセルの間合いに飛びこむ事は、死へと繋がる階段に足を踏み出すのと等しい意味を持つ。
しかし、アクセルに挑むのはレモン・ブロウニングの生み出した最高の人造人間W17。その実力はアクセル・アルマーに決して劣るものではない。任務達成率に置いてはアクセルを上回るレベルにある。
じゅ、とソウルゲインの額部分に触れたミラージュ・ソードの切っ先が、青い装甲に触れてゆっくりと融解させながら突き刺さり、二度目の“じゅ”がなる前に、ソウルゲインの全身が旋風と化して回転する。
「ふん!」
アクセルの口から放たれた短い吐気は石礫のように硬く固められていた。それが、脱力し弛緩しきった肉体に、最高の瞬発力を生み出させる。ソウルゲインの拳に抉られた大気は局所的な嵐と呼んでも差し支えない勢いで荒れ狂う。
例え当たる事はなくても、避けた人間の髪を引き千切り、その頬肉を覆う皮膚を引き剥がす威力を持った裏拳の一撃を、W17は並の人間の目なら分身が映るほどの速さでアンジュルグを一歩、後ろに下げて躱す。
W17はアンジュルグを後方に下げざまにバックハンドを振り抜いた体勢にあるソウルゲインの右脇腹へと、あばら骨の間を狙うようにミラージュ・ソードの横薙ぎの一刀を送る。
生と死が充ち溢れていても変わらず降り注がれる陽光のカーテンを、薄く桃の色彩を帯びた剣閃の軌跡が切り裂く。
裏拳の回避とほとんどタイム・ラグの無い回避と反撃が一体となった動きであった。仕切り直してからわずか五秒と経たずに決着か――否。
ぎし、と鉄と鉄が触れ合う耳を割く音と共に、アンジュルグの右肘がソウルゲインの左掌底に受け止められた。
浴びただけで脳震盪を起こさせる拳風が空を切ったと悟り、アンジュルグの破壊の光に輝く剣の動きを見切ったアクセルが、右拳に遅れて左手に防御行動を取らせていたのである。
ソウルゲインが振り抜いた右拳は、猛禽の嘴の如く人差し指と中指を立て、残りの三本の指を握り込み刃の如く形を変える。握り拳から二本剣へと変わった右拳は、瞬時の停滞もなくアンジュルグのこめかみへと突き込まれる。
ひょう、とソウルゲインの二本指に貫かれて、風が悲しげに哭く。
増幅されたアクセルの生体エネルギーが凝集され、太陽よりも強く明滅しながら輝く青い光を纏った二本指は、それ自体が高出力のビームサーベルと同等かそれ以上の必殺の武器である。
ガッ、と音を立てて硬いものがより硬く鋭いものに貫かれる音が、重なる様にして二つ、青い空へと無情に響き渡る。
青い燐光を放つソウルゲインの二本指は、黄金の羽根飾りが両側頭部に着いたアンジュルグの頭部をカバーした別の物体を貫き、動きを止めている。
ソウルゲインがミラージュ・ソードの一撃を防いだように、今度はアンジュルグがそのソウルゲインの嘴と化した指を、左腕の盾で防いでいた。
指に込められた力がどれほどのものであったか、受けとめた盾に第二関節までがめり込み、小型ながら優秀な装甲性能を持ったアンジュルグの盾を貫くソウルゲインの一撃の殺傷力を物語る。
たがいの腕を防ぎ合った拮抗状態がソウルゲインとアンジュルグの間に生まれ、青い拳闘士と有翼の装甲騎士は一枚の絵画の如く静止する。
それははるか数世紀も昔の絵師が、麻薬と酒精と妄執に侵された脳の見せた一時の幻を筆で起こしたかのように、この世のものとは思えぬ一瞬の幻想であった。
砲火がいくつも朱色の球を結ぶ蒼穹を背景に、二体の巨大人型機動兵器は、時に忘れられたように拳と刃を交わして無言の殺意を豪奢な織物のように絡み合わせ、それが解けた瞬間、止まっていた時もまたときほぐれる。
静止していた周囲の空間に、精密に編みあげられた蜘蛛の巣の様な一人と一体の戦闘の意識が放射され、両者の口もまた戦闘の高揚に駆られてかわずかに緩んだ。
「やるな、“人形”!」
「隊長こそ」
極自然とW17を人形呼ばわりした事に気付かず、アクセルはアンジュルグの右肘を抑えた左手、盾に指を突き立てた右手を動かす。
人間の神経伝達速度の限界に挑むような速さで、ソウルゲインの四肢が蜃気楼にのまれたようにぶれた。
ソウルゲインの操縦システムはコックピット内の搭乗者のモーションをそのまま再現する。なれば、これまでの、そしてこれからのソウルゲインの動作はすべてアクセルの実力をダイレクトに反映させたものとなる。
であればアクセルもまた超人の領域に足を踏み込んだ男といえただろう。W17との戦いでソウルゲインが見せた戦いは、それほどまでに技術と野性とが融合した理想的な闘争者の姿のそれだったのだ。
ソウルゲインのコックピットにいまいちど吐息が一つ零れる。タンポポの綿を飛ばす程度の軽い吐息である。しかしアクセルがソウルゲインに再現させた動作は、それほど優しいものではなかった。
盾に突き立てた指を引き抜いて手首を逸らし、氷壁にピッケルを突き立てる様にして掌底を叩きつけ、アンジュルグの右肘を抑えた左手は万力の強さで掴みこみ、力のベクトルをあらぬ方向に逸らす。
手首のスナップを最大に生かした右掌底は盾ごしにアンジュルグの左側頭部を強かに叩き、アンジュルグの右肘を固く抑えたソウルゲインの左手はアンジュルグのバランスを崩壊させる。
ソウルゲインの両手が円を描くように動くと、それはアンジュルグの巨体をアクセルから見て逆時計回りに激しい勢いで回転させるという現象に繋がった。
アンジュルグにとっての天地が逆転した瞬間、ソウルゲインの右腕が繰り出す少林拳の一手『丹鳳朝陽』が、実に最終拳速二六〇m/Sの高速で襲いかかる。
人間の肉体はおろか機動兵器を相手にしてもソウルゲインの巨体が繰り出せば殺傷力過大、特機の装甲でさえベニヤ板かそこらの板きれ程度に過ぎない障害だ。さらに続く左手が放つは『左穿花手』。
体勢をこれ以上なく崩され、平衡感覚に多大な負荷を加えられたはずのW17は、しかし、その女神が舞い降りたと言われても疑うまでにしばしの時間を要する美貌に、何の変化も浮かべてはいなかった。
アンジュルグは頭を海に、爪先を天に向けた姿勢のまま翼を大きく羽ばたかせると、光の煌めきを粉雪の様に舞散らせながら後方へと飛翔し、アクセルの積み重ねた功夫が繰り出した二撃に虚空を貫かせる。
膨大な運動エネルギーが無為に終わったことに舌打ちを打つ暇は、アクセルには与えられなかった。さかしまの姿勢のままアンジュルグは左手をソウルゲインへとかざす。
「ターゲット・ロック、シャドウ・ランサー、ファイア」
ミラージュ・ソードをエネルギーに還元し、あいた右手を左手に添えるや、盾からシャドウ・ランサーとは名ばかりの眩い光を放つ短槍が、数え切れぬ数となって放たれる。
ソウルゲインに指を突き立てられ、強烈な右掌底を叩きつけられて尚機能障害を起こさなかったのは見事と褒めるべきか、流石はレモン・ブロウニングと言うべきか。
無数のシャドウ・ランサーの光の槍穂は、一ミリ秒とかからずに鍛え抜いた闘士の肉体の如きソウルゲインの機体へと突き刺さるだろう。
だがアクセルにはその一ミリ秒があれば、放たれたシャドウ・ランサーを迎え撃つ準備を整える事が出来た。
正面モニターに映し出されたシャドウ・ランサーの光槍の群れを瞬時に識別し、そのうちの一つへ向けて、アクセルはソウルゲインの右手を一振りした。
しぇん
調整された生体エネルギーは、一本の矢となって風を切り裂き、アクセルが狙い澄ましたシャドウ・ランサーのひとつへと衝突すると同時にその方向をあらぬ方へと転じさせる。
驚くべきは光の速さで迫るシャドウ・ランサーのひとつを精密な狙いで弾いた事ではなく、その後に広がった光景こそが真に瞠目すべき、アクセルが狙って起こした所業であった。
青竜鱗の応用で投擲したソウルゲインの光の矢に弾かれたシャドウ・ランサーの一本の光槍が、別の光槍に衝突してエネルギーを減衰させながらも弾き、また弾かれた光槍が別の光槍を弾き……。
弾かれたたった一本の光槍が、同じようにして自分の同類達を弾きあい、ついには射出されたシャドウ・ランサーの全ての光槍がお互いを全て弾きあい、W17が着けた正確無比な狙いはまるで意味を失ってしまった。
ばらばらと半ばから折れて細かい粒子となって消えゆくシャドウ・ランサーのど真ん中を、ソウルゲインが疾駆する。
搭載したテスラ・ドライヴの機能を最大限に発現させ、足場のない空中でもソウルゲインは爆発的な踏み込みに似た動きでアンジュルグへと迫る。
柔軟かつ剛性にも富んだ人工筋肉と関節部を有するソウルゲインの特異な機体構造は、アクセル・アルマーというこの上ない操縦者を得て、その腿力が生み出しうる瞬発力の限界値を叩きだす。
地を舐めるように大きく前傾した姿勢で、風を引き千切りながら空を蹴って走るソウルゲインの姿は、地上でもっとも優美な獣の一種――二本脚で雄大な大地を走る豹を思わせた。
完璧に制御された呼吸によって脱力と硬直を繰り返すアクセルの肉体と神経群、分泌量を増す脳内麻薬、心臓から送り出され全身を流れる血潮は熱く、しかし戦闘へと方向性を定めた思考は冷徹に。
アンジュルグが天地逆転の姿勢を正した時には、ソウルゲインの姿はその懐深くに足を踏み込んでいた。左右に開かれた手は、固くは握り込まれず、かすかに間隙を残して拳を形作っている。
「らああああああああああああっ!!!」
放たれるアクセルの怒号は裂帛の気合を伴い、ソウルゲインの総身より物理的圧力を持った衝撃波となって四方に荒れ狂い、眼下の海面が打たれた痛みにもだえ狂って荒波を起こす。
アンジュルグの表面装甲を震わすアクセルの無色の気迫は、さらにその奥へと侵入してコックピットのW17の麗しい美貌に衝撃を伝播していた。
髪も、唇も、鼻も、眉も、唇も、その瞳も何もかもが美を司る神が特別に選りすぐり、完璧な調和を持って配置した美貌に、W17は初めて感情らしい色を浮かべる。それは迫りくる脅威へとの敵意であった。
アンジュルグの剣の間合いに入り込んだソウルゲインに向けられたW17の瞳は、決して味方であるはずのアクセルに向けられるべき光を宿してはいなかった。
記憶喪失の事実確認とソウルゲインを操る技量が保持されているかどうか、その為に軽く手を合わせるだけだった筈の戦いは、いまや互いの全力を費やして、互いの存在を破壊する為の殲滅戦に変わりつつあった。
「破壊する」
「くらえい!!」
ソウルゲインの両手は双手から挂拳、蓋拳、劈拳、抛拳、横拳の六段式を絶え間なく形を変えながら一斉に放つ。中国外家拳でも達人の領域にある者のみがその身に修める絶技『阿修羅憤怒弾』。
功の足りぬ未熟者では、接近戦に特化した一般規格を上回る重武装サイボーグにでも身を費やさぬ限り、振るう事の出来ぬ奥義と換言してもいい。
放たれる六段式の拳全てが音速に迫る超高速で、一秒を百で分けた時間ほども休むことなく、人間の動体視力の限界を越えてアンジュルグへと襲いかかる。
無数の残像を伴侶の如く伴い、耳を劈く拳風の轟きを忠実な騎士の如く引き連れて、ソウルゲインは――アクセルは破壊の王と化してアンジュルグに殺意の奔流を叩きつける。
ソウルゲインの巨躯を構成し、生身の人間に遜色劣らぬその動きを支えている人工筋肉線維一本一本にまで充溢したアクセルの気迫は、ソウルゲインの全身から青い光となって噴出している。
果てまでも見渡せる澄んだ空と同じ青さの、光の巨人と化したソウルゲインの振るう殺戮の絶技。
雑兵豪傑英雄の区別なく葬り去るであろうアクセルの連続拳を受けるアンジュルグは、その右腕の先に再びミラージュ・ソードを顕現させ、人造物故の人間を越えた動体視力と反射神経で六段式の拳を迎え撃つ。
天と海の蒼穹を背後にミラージュ・ソードの輝く刃は百花を散らすかの様に乱れ舞う。ソウルゲインの拳に寄り添うように虚空に描かれる輝閃は、新たな輝閃によって次から次へと塗り潰されてゆく。
両機の間ではソウルゲインの体から零れる青い光とミラージュ・ソードが描く輝閃のタペストリーが描かれ、この世のものならぬ神話の世界の聖戦の再現のよう。
荒れ狂う嵐の回転率で岸壁を叩く波濤の如くアンジュルグへ叩きつけられる連続拳。青い流星雨さながらのその爆流の中で、空間を割くかの如く鋭い弧月が幾重にも煌めく。
メモリーに記録されたアクセルの戦闘データとソウルゲインのスペック、そして古今あらゆる武術の記録を照合し、ソウルゲインの連続攻撃を完璧に捉えて捌くアンジュルグの、受け太刀の光の軌跡であった。
掌打の間合いに踏み込まれながら、W17は確実に人間の領域を超えた反射神経と判断力、動体視力の限りを尽くしてアンジュルグの全身に迫るソウルゲインの両手を幻影の剣で弾いている。
大口径のレールガンかリニアカノンと同等かそれ以上の破壊力を秘めたソウルゲインの拳に、ミラージュ・ソードの刃が触れる度にわずかに力のベクトルが逸らされてあらぬ方へと拳が流れている。
ただの一度なら偶然の言葉で片付ける事もできただろう。しかし既に数十発を数えるソウルゲインの拳の全てを捉えて弾く現実を見れば、それはW17が意図して行っている行為だと否応にも分かる。
傍から見ればソウルゲインの猛攻をしのぐアンジュルグの神業にこそ目を奪われるだろうが、アンジュルグを操るW17はアクセルの戦闘能力の評価を上方へと修正していた。
本来ならばミラージュ・ソードの刀身に触れたソウルゲインの両手はとっくに斬り飛ばされて海面に落下し、海の藻屑へと長い時をかけて変わる運命に陥っているはずだった。
だがどうだ。ミラージュ・ソードの刀身を一度ならず十度ならず受けてなお、ソウルゲインの両手は健在で、一撃でアンジュルグの重装甲も穿つ破壊力を保持しているではないか。
その理由は、ミラージュ・ソードの刀身が触れる一瞬に合わせて、ソウルゲインの装甲に青い燐光がまるで爬虫類の鱗の如く浮かび上がり、刀身の持つ斬断力を大幅に削いでいる事にあった。
W17が人造物だからこそ許される異常な身体能力でソウルゲインの連続拳を凌いでいるのに対して、アクセルは鍛練の極致に至った人間なればこその“眼”と“第六感”で斬り飛ばされる筈の腕を守り抜いていた。
よもや百分の一秒以下の時間で、瞬時にミラージュ・ソードの触れるソウルゲインの装甲を見極め、さらにはそこに生体エネルギーを集中してエネルギーの装甲を被せるなど、W17をしても想定外の一言に尽きる。
「DCに拾われ、クライ・ウルブズの一員として戦った事で隊長の戦闘スキルが向上したということか。情報の更新を行わねばならんな」
淡々と呟きながらもW17が握る操縦桿、砂絵を書くのと同じ繊細で踏み込まれるフットペダルが動きを止める事は無い。
ソウルゲインの猛攻を凌いでいられる残り時間は少ない。ソウルゲインほど柔軟な関節と人工筋肉を機体に用いていないアンジュルグの機体が、これ以上の酷使には耐えられない。
このような機体に過剰な負担を強いる接近戦に追い込まれるなど、アンジュルグの運用の想定外だ。アンジュルグはミラージュ・ソードをはじめ格闘戦にも対応した武装はある。
とはいえ完璧に格闘戦に特化したソウルゲインの間合いで相手取るのは、愚策だ。ここまでアンジュルグが原形を保てているのは、ひとえにW17の能力に依る。
剣がある分、間合いのリーチはアンジュルグが勝るがすでに懐に踏み込まれ、掌打の距離にある。となればなんとかして掌打の距離から離れなければならないが。
「気が逸れているぞ?」
大地に深く複雑に根を張った森林を根こそぎ吹き飛ばす拳風の勢いとは反比例して、W17が通常よりもわずかに判断を下すのに遅れたのを、アクセルは見逃すわけもなく、指摘する声は冷たく凍えている。
ただし凍らせるのはアクセルの心ではない。聞いた者の心胆を凍らせるのだ。自分が永遠の氷の世界に置き去りにされた彷徨人だと気付くように。
心持たぬW17は心を凍らせて動きを鈍らせる様な事は無かったが、アクセルの脅威がさらに増した事は理解できた。故に、それ自体がひとつの芸術品の様な美眉を歪める。
「ぬん!!」
阿修羅憤怒弾から実戦空手の下段正拳突きがアンジュルグの左脇腹を、正面から打つ。瞬間、アンジュルグの機体は膝と額が激突する寸前まで折れ曲がりながら、後方へ六〇〇メートルほど吹き飛ぶ。
その途中、何度も海面に激突し巨大な水飛沫の花弁を一直線に咲かせてゆく。
ZAZAZA、と白い水柱を幾つも立ててからようやくに体勢を立て直したアンジュルグは、光の球を掌に生み出すと左手の光球は黄金の弓に、右手の光球は弓弦にかける矢へと変わる。
物質化させたエネルギーの矢を、W17はようやく落下し始めた水柱に遮られた方向へと向ける。キリリ、と透明な満月を描くように弓弦が引き絞られ、開放の時を今か今かと待つ。
ソウルゲインの一撃によってアンジュルグの左脇腹が握拳の形に窪まされてしまいダメージを負ったが、その拳打の衝撃を利用してソウルゲインから大きく距離を取る事に利用できた。
アクセル・アルマーとソウルゲインの能力が合わされば、この一撃さえも見切られるかもしれない。だが、距離を詰めんとするソウルゲインに何の手も打たずにいるのも愚かしい。
アンジュルグのセンサーがいくつもの水柱を透過してソウルゲインの存在を感知し、コックピットに投影する。
CGによって精密に再現された画像上のソウルゲインは突いた拳を引き戻し、両肘を引いた構えのまま腰を落とし、こちらに向かって飛びかかろうと膝を曲げたところ。
「イリュージョン・アロー!」
シャドウ・ランサーとは比較にならない高出力のエネルギーが、返しの刃を幾枚も備えた巨大な矢を生みだし、黄金の弓と桃色の光の弓弦、白いアンジュルグの繊指から自由を許されて、超音速で飛翔する。
質量を持った物質が高速で移動した事によって発生する衝撃波が一直線に突き進んで、白い水柱のど真ん中を射抜き、幾千万粒の水の宝石に変えてソウルゲインへ!
ひとたび放たれれば狙った敵対者の心臓を射るまで飛び続ける呪いが掛けられてでもいる様に、イリュージョン・アローの光矢は青い拳闘士の胸部を抉るべく巻いた風を更に貫いて迫る。
「狙いが正確すぎるのは貴様らの欠点だ」
またアクセルの口から零れるW17の事を知悉しているが故の言葉に、アクセル自身は気付かない。
玄武剛弾を射出する寸前の状態と同じように、両肘から先の部分を高速で回転させ、アクセルはソウルゲインの動力源の存在する心臓部を狙ったイリュージョン・アローを受ける。
高速回転するソウルゲインの腕部に運動エネルギーのベクトルを逸らされたイリュージョン・アローはあらぬ方向へと飛び去ってゆく。
海面激突すれすれまで叩き落したアンジュルグを追い、ソウルゲインもまたその爪先が海面に触れるほど低空を駆ける。
イリュージョン・アローの第一矢を躱されたものの、W17は毛先程の動揺を浮かべる事もなく、新たな矢を生み出しては光の弓弦につがい、狙いを定め、射かけ続ける。
五指の間に四本の指を挟みこみ、大道芸かなにかのようにイリュージョン・アローの矢は生み出されてから射出まで実に一本一秒の速度で放たれてゆく。
最初の一本を弾いたのと同じように、回避しきれない矢を高速回転させた腕と肘のブレードで弾き、氷上の妖精と賞賛されたアイススケーターのように、ソウルゲインは滑らかな動きでアンジュルグへと迫る。
イリュージョン・アローを射かけられ、回避と防御によって若干速度を落としているとはいえ、それ以上に動きを鈍らせているアンジュルグ相手ならば、ソウルゲインがもう一度距離を詰めるのはそう難しい話ではない。
びょう、と風を劈く音を奏でながら飛翔したイリュージョン・アローが、ソウルゲインの両手が合掌する様に動くや、その両手の間に挟み取られる。
その姿を見た瞬間、小指と薬指の間に挟んでおいた十三本目のイリュージョン・アローを射終えて、新たな矢束を生み弓弦にあてがうまでのわずかな時間を狙われた事を、W17は悟った。
見よ、ソウルゲインの両掌によって挟み止められたイリュージョン・アローがそっくりそのままアンジュルグへと送り返されたではないか。
右手を天にかざして新たなエネルギーによって矢を物質化させる姿勢にあったアンジュルグは、送り返された矢を回避する行動に移行するのがわずかに遅れ、その左肩に深々と矢が突き刺さる。
左肩装甲内部のフレーム部分にまで深く突き刺さったイリュージョン・アローは、すぐさまエネルギーに還元され、光の粒子へと変わって消失するが、貫かれた損傷はそのままだ。
左肩を後方へ押された姿勢に崩れたアンジュルグに、W17はすぐさま弓を消失させて再びミラージュ・ソードの護拳付きの柄を握らせ、光刃を形作らせる。
ディスプレイに浮かび上がった左肩損傷とそれに伴う機体機動の不具合を一瞥して視認した事が、W17の失策へと繋がる。視線を再びソウルゲインに戻すまでの一瞬の間に、アクセルは動いていたのだ。
イリュージョン・アローの軌道をさかしまに描いて、高速で回転するソウルゲインの右腕部がアンジュルグの胸部へと飛んできていたのだ。彼我の距離は百メートル、コンマ一秒あればゼロになる距離である。
玄武剛弾が巻き起こす風に押され、アンジュルグはふわりと綿毛の様に軽い動きで左に避けて回避し、W17はミラージュ・ソードの切っ先をソウルゲインに向けようとして、前方に機影が無い事に気づく。
「上か?」
いや、熱紋・赤外線など各種センサーはアンジュルグの上方にソウルゲインの存在を認識していない。その居場所をセンサーが告げるよりも早く、W17は、波紋を浮かべる海面に気づいた。
テスラ・ドライヴの機能を利用して跳躍して発生した波紋ではあるまい。あの波の立ち方は――
「――下、海に潜ったか!」
「目端の利く事だな?」
母体を食い破って産れる魔物の子の如く、アンジュルグの足元の海面がぐうっと盛り上がるや、それを突き破ってソウルゲインが姿を露わにする。
玄武剛弾の一撃を受けたアンジュルグの姿勢が崩れてW17の視界が認識する瞬間を狙って、海に潜る事で姿を晦まして接近を果たしたのだ。
蒼く濡れた海水を滴らせながら跳躍するソウルゲインは右腕を欠き、左肘のブレードを展開させてアンジュルグへと迫った。天に羽ばたく神の使徒を狙う地獄の悪魔のように。
「斬り裂けい!」
アクセルの言葉をソウルゲインは忠実に実行し、美しい有翼の女騎士の股間から頭頂部までを一切の抵抗なしに、二つに斬り裂いた。が、左右に斬り分けられたアンジュルグはすぐさま、朝陽に散る霧の如く霧散する。
「分身かっ」
さしものアクセルもわずかに驚きの形相へと変わるその背後から、寝所で男女が交わす睦事のように小さな囁き声が聞こえてくる。
甘い夜の夢の中でこの世ならぬ快楽と引き換えにして男を枯らし、女を溺れさせる淫魔の囁きも、これほど美しくはないだろう。
アクセルは、戦闘中にもかかわらず妖しく鼓膜を揺らす声にぞくりと背筋を震わすものを感じていた。勃起さえしていたかもしれない。
「幻を見切れなかったようですね、隊長」
「人形、貴様」
「……幻影の印、ミラージュ・サイン」
夏の涼風が鳴らした風鈴に似て静かな声であった。と、同時にソウルゲインの周囲に損傷も全く同じ三体のアンジュルグが出現し、白い翼を雄々しく広げて、ミラージュ・ソードを手にソウルゲインへと斬り掛かる。
「ちぃいっ!!」
異なる三種の太刀がわずかずつ時間をずらしてソウルゲインへと斬り掛かり、背中へ送られた一太刀は、ソウルゲインが身を捻った事により浅くうなじの辺りに斬痕を残す。
左頸部から首を刎ねに行ったミラージュ・ソードはアクセルが反射で振り上げた左肘のブレードがかろうじて間に合い、白銀の刃と光の刃が接触して激しい火花を周囲へと散らす。
右腕を肩ごと斬り落しに来たミラージュ・ソードは振り上げたソウルゲインの右足の爪先が、蹴り飛ばし、かろうじて致命傷となる一撃を全て防ぐ。
しかし三連斬撃を防いだ直後にすべてのアンジュルグが一瞬姿を消し、再びソウルゲインの三方を囲んで現れる。
まるで空間に見えない扉があり、アンジュルグがその扉を出入りして斬り掛かってきているかの様に、神出鬼没な動きにアクセルの瞳も険しく細められて、宿す光の胡乱さを増す。
「おれは幻を見切れなかったが、貴様は現実を見落としたな」
「なにを」
言っている、と言い終える前にW17はいまだ戻ってこないソウルゲインの右腕部に気づく。先ほど躱した玄武剛弾の一撃に使用された右腕が戻ってくるのが遅すぎる! 同時に鳴り響く後方警戒信号。
ソウルゲインを囲んだアンジュルグの背を打つべく流星となって襲い来るソウルゲインの右腕だ。高速で回転しアンジュルグの重装甲でも無視できない威力を秘めた拳は、正確にアンジュルグ本体を狙っている。
「でえぇええいい!!!」
玄武剛弾で飛ばしたままだった右腕部とソウルゲイン本体が、アンジュルグを前後で挟みうちにし、最大展開された肘ブレードがアクセルの気迫と共にアンジュルグへと襲いかかる。
ソウルゲインの主な動力は電力であるが、それ以外にもパイロットの生体エネルギーを用いている。天井知らずに高まるアクセルの気迫を機体全体に漲らせるソウルゲインは、その全身に青白い雷光を纏う。
雷刃と化した肘のブレードならばアンジュルグの首くらいは簡単に跳ね飛ばす事が出来るだろう。
この一太刀を受ける位ならば、玄武剛弾の直撃を受けるほうはダメージが少ないが、かといってその一撃を受ければアクセルが付け込むには十分な隙が出来るのは間違いない。
「ですが、同時に捌けない攻撃ではありませんよ?」
ミラージュ・ソードを構えた右手はソウルゲインを、かろうじてシャドウ・ランサーの射出機構が生きているシールドは背後から迫りくるソウルゲインの右腕部へ。
後方を確認せずとも、ソウルゲインの右腕を撃ち落とす確実な自信があればこその行動だ。左手を後方へ振り向けた姿勢のまま、アンジュルグはミラージュ・ソードをまっすぐ構えた刺突の姿勢でソウルゲインへと飛翔。
対するソウルゲインは左肘から延びるブレードに帯電した雷光と流し込まれた生体エネルギーがブレードに収まりきらず、陽光を弾き返す激しさで輝いている。
ソウルゲインとアンジュルグ、二つの巨体が亜音速に達する高速で突進しあう。もとからミラージュ・サインの間合いに居た両者だ。二つの刃が振り抜かれるのにわずかな時間も要らない。
目を潰すほどの激しい一瞬の光と変わる二機。影さえ追いつけぬのではと疑う速度で両者が交差する。
振り抜かれる刃は二つ、背後より迫る拳は一つ。拳を撃ち落とすべく放たれた光の矢もまた一つ。視認なしで放たれたシャドウ・ランサーは狙い通りに玄武剛弾を撃ち落としている。
互いの脇をすれ違ったソウルゲインとアンジュルグの機体が、同時に背後を振り返り、再び相対し――直後、びしり、と装甲に亀裂の走る音と共に両者の胸を斜めに横断する斬痕が刻まれる。
巨大な二機の特機が高速で移動し抉り抜かれた大気が周囲に荒れ狂い、両者の激突地点を中心に四方へ広がった衝撃が空間と海を震わせた。
外部装甲を越えて内部機器にまで到達した刃のダメージによって、万全の動きは到底できない。それでもある程度の戦闘行動は行えるのは、流石は特機と言った所か。
同じようなダメージでも、自己修復機能のあるソウルゲインの方が有利ではあるが、この戦場には両者以外の存在がいる以上、ダメージを軽視する事は出来ない。
神話の中の戦いにも対峙する両者以外の第三者の介入で決着がついた例は存在する。ソウルゲインとアンジュルグ以外の機体の横やりが、どちらかを撃墜しないとも限らないのだから。
「ぐっ、踏み込ませすぎたか」
「損傷が激しいな、すこし引き際を見誤ったか。……流石は隊長」
戦闘続行が困難なダメージに、最初の意図を越えて激しい戦闘を繰り広げたW17も頭に登った血が下りたのか(この表現はあまり適切ではないかもしれない)、W17は全体の戦況を確認する冷静さを取り戻していた。
ソウルゲインが抜けた事でMAの抑えが減り、MA群の大火力を前にしてDCの各艦が回避と防御に専念せざるを得なくなり、動きを鈍らせている。
特にストーク級の被弾が重なっていて、タマハガネの直衛についていたジガンスクードが盾代わりになって大部分の攻撃を引き受けている。
タマハガネ自体も砲撃よりもEフィールドの展開を優先して、背後にストーク級二隻を庇う位置に動いていた。
今回初めて確認されたDCの新型を含めタマハガネの機動部隊はそら恐ろしくなるほどの戦闘能力を見せているが、戦況の優劣を示す天秤は地球連合側に傾いていると言えよう。
とくにグラハム・エーカー率いる大西洋連合の部隊と巨大なMSジ・OUを駆るパプティマス・シロッコ、ザフトから強奪したカオス・アビス・ガイアを持ちこんだファントムペインの活躍が勇ましい。
エキドナとの状況確認、アクセル・アルマー戦闘部隊隊長の状態の確認を終えた以上、これ以上の交戦の必要はなく、アンジュルグがこれ以上被弾しないよう適当に距離を取って戦うだけでいいだろう。
「隊長、ヴィンデル様もレモン様も隊長のご帰還をお待ちです。一刻も早く記憶を取り戻されますよう」
「……逃がすか!」
ばさりと翼を大きく打ち、ソウルゲインに背を向けるアンジュルグを、ソウルゲインが追う様子を見せたが、そこにエキドナからの通信がアクセルにつながり、踏み出した足が二の足を踏む。
『敵機動部隊の攻撃に対処が間に合わなくなりつつあります。ソウルゲインは急ぎ戦列に戻ってください』
「あの女と同じような声でよくも言う」
声の響きに苛立ちを隠さずアクセルは悪態を吐く。八つ当たりに近いとは自分でも分かっていたが、これまでの言動と対面した時に受けた印象から、エキドナにも不審な点があるとアクセルは踏んでいた。
懐の内に導火線を隠した爆弾を一つ抱えていたという事か。あるいは、記憶を失っていなかったなら、自分もまたDCにとって厄介な爆弾となっていたのかもしれない。
――見方を変えればいつでも手がかりは手の届くところにあるという事か。よかろう、今回は見逃してやるぞ、人形。
一度目を瞑って自身の心に整理をつけたアクセルは、ヴィンデルとレモンという、おそらくは人名から、脳裏に一瞬だけあるイメージを浮かべていた。
「ピンクと緑の…………ワカメ、か?」
なんだそりゃ、とW17との激闘で強張った体から緊張が抜けて行くのを、アクセルは感じながら、MAの群れへとソウルゲインを走らせていた。
実際エキドナの言う通りに、多大な犠牲にも怯まぬ地球連合艦隊の猛攻に晒されてDCの機動兵器部隊は、敗色をわずかずつ帯びてきていたのだから。
――つづく。
まずは、しぇん、ありがとうございました。5000字くらいで終わらそうと思っていた話が倍以上になったので、今回は丸々アクセルのターンです。
しかし、某スレを読んでいたせいかアクセルが生身で麒麟打てても特に違和感が無いように感じられます。アルフィミィと融合だかなんだかしているから、と理由付けはされそうですけれども。
ではではお邪魔しました。ご感想ご意見ご助言ご指摘いただければ幸いです。お邪魔しました。
. ∩____∩゜.:+
ワク. | ノ ヽ+.:
:.ワク/ ● ● | クマ
ミ '' ( _●_)''ミ クマ
. / ._ |_/__ノヽ
-(___.)─(__)__.)─
乙でしたー
やっぱりワカメなんだな、これがw
やはりまわりが人外(シンとかメックウェア装備のステラたちとか)とかしているからアクセルもそうならざるおえないでしょうな……とにかくGJ!!
でもほんとよく総帥この超ペースで書き続けられるのには尊敬します。
下手したらガンダムクロスSSスレで一番の文章量を書いておられるのでは?
>>224 なるほどもうちょっと煮詰めれば戦闘シーン2Dでもいけそうなシステムですね。
やはり3Dならリアル等身にして欲しかった……それなら結構面白い戦闘シーンになったのに……。
GJっす!
アクセル……自分の嫁になんて言い方だ!
まぁ、公式でツンデレだからしょうがないなw
総帥乙です
原作だと主人公にあっさりあしらわれた噛ませ犬の技だったのに、隊長が使うと強くて格好良く見える不思議!
GJっす〜
もう十分人間やめてるよこのアホセルwww
久々に隊長らしいアクセルを見た気がする。
でも今回はソウルゲインに接近されまくりで生き延びたラミアこそ恐ろしいと言うべきだろうか。
ウルトラマンだ、俺がウルトラマンだ!
ウルトラマンのどれかの声が宮野さんだっけ?
ウルトラマンゼロって言うセブンの息子
アイスラッガーが二本生えてる奴だ
色的にウルトラ兄弟としては異色だよな....
スパロボ的に言えば、刹那=ZEST ZERO、ってことか
ユの字がガンダムなハートを刹那から奪うんですね
それともエクシア(ダブルオー)が撃墜されると光の巨人が出てくるのかな
ついにウルトラマンがこのスレから3人も・・・。
超神ゼストとウルトラマンゼロ、それにウルトラマンダイナもですね!!
>>243 異色というかセブンの設定に大いなる矛盾が…
・ゼロが他のウルトラ族の女性との子供…アンヌは現地妻にすぎなかったのか
・ゼロがアンヌとの子供…数十歳でウルトラの星の切り札になるとかどんだけチートよ?
ってことになるそうだ。
>>247 メビウス は 十年 に 一人 の 逸材 です
このスレでバンプレイオスやDiSRXはでてくるのかな?
DiSRXは既に11氏のSSのプロローグで出てきてるな
バンプレイオスはATX氏が復帰すれば普通に来そう
総帥はこの二体を余裕でブッ千切るほどの名状しがたい何かを繰り出してきそう
二体SRXが存在するような物だから一方がバンプレイオスになって
もう一方がDiSRXになってもおかしくない
あとカードをかざすとロボットが出現したり
コインを入れるとガシャポンのカプセルが出て来て
中からロボットが現れても驚かない
ファンタジー勢力の参戦も時間の問題かな?
総帥なら…総帥ならばソリッドアーマーをベースに魔術技術と超AIを組み込んだ
新型強化外骨格「剱冑(つるぎ)」を作れるはずだ…
>>252 A.そもそもソリッドアーマーのデータないので無理
>>252 超展性チタンは作ればいいとして……
前大戦終盤、ディス・レヴで霊魂が成仏した所為で戦争を憎む数千の英霊がいないから強化外骨格が作れません。
……えっ!? その強化外骨格じゃないって?
>>252 ライダー達のデータ有れば魔導天使メタトロンやサンダルフォンもどきは創れるかもしれん
メタトロンやサンダルフォンと聞いてグリリバが参戦希望しているあれを思い出した。
257 :
通常の名無しさんの3倍:2009/12/11(金) 01:59:22 ID:bJ3OONKO
ロリコン探偵か……そういえばSAN値ガリガリ削られそうな敵が出てくるしな。
マルキオに某混沌が憑いてるってクルーゼが警告してたなそういや
ならば魔を断つ剣も現れるかもしれぬそしてそれつながりで剱冑の出番も…
真改さんなら出れるし能力的にも安全だ
プラーナコンバーター+ズフィルードクリスタル+DML=修羅神
……無理か?
>>259 つか修羅連中はC3版だとフォルカ以外全員来る可能性あるからなあ
でもテッカッマンやゾイドが参戦したくらいだから我々の斜め上を行く作品が参戦してもおかしくない。
個人的にはR-TYPEとか参戦したら脳汁がでます。
特にR戦闘機はロボットではないけれど、あのスペックならスパロボでやっていけるのと思うのですがちょっと性能を高く思いすぎているのでしょうか……。
そういや、wikiのほう更新ないね
誰かデータ持ってればいいんだけど
実際のスペックは関係ないと思われ、というかスペック云々言い出したらフルメタとか悲惨な事になる。
だからいい加減リベル・レギスの参戦はまだですかねぇ…?
総帥はマ改造できないと出して来ないでしょ
……ナコト写本に強烈な記述が増えるフラグだけど
そこで次元の壁をぶち抜く怒離流の力、
破壊ロボと××××の理不尽的介入でですね……
変に総帥と化学変化が起こったりするだろそれ
たとえば、総帥がヴァルシオーネに乗ったりだな……
むしろヴァルシオンの装甲パージしたら中から美少女ロボが出るみたいな
総帥と西博士はぜひと科学反応を起こして欲しいですな。
それとなぜエルザルートを作らないのだ!?
>>267 八房OGにフルアーマーヴァルシオーネがですね……
総帥の事だから
ヴァーチェ→ナドレ見たらまず何かしら行動するはず
こんばんは、十分後くらいから投下しますので、ご支援をお願い致します。
剱冑、リベル・レギス、西博士、いずれも出そうと思えば出せますね。西博士と増田照雄に関していえば、本作終了後に書こうかどうしようか悩んでいる版権アリバージョンなら出せますね。
エルザ型ヴァルシオーネとかヴァルシオンの中身がヴァルシオーネとかも全然問題ありませんね、いやエルザはだめか。
では投下します。
ディバイン SEED DESTINY 第二十九話 激戦果てなく
ユニウスセブン落下事件後に地球連合のプラントへの武力侵攻をきっかけに、再びDCに対して地球連合が、各構成国から抽出した艦隊がDC領海に侵攻し、それを迎え撃つDCと戦端を開いて既に数時間。
DC本隊から離れて、地球連合軍太平洋艦隊第三任務群へ奇襲をかけるべく高速艦三隻で帆を進めていたDC特殊任務部隊クライ・ウルブズが、待ち伏せを受けて開いた死闘の幕はまだまだ閉じる様子を見せてはいない。
スペースノア級タマハガネに庇われるストーク級空中母艦カイゼルオーン、ジャピトスは被弾が重なって傍目にも明らかに船速を鈍らせ、船体を保護しているEフィールドの出力の低下も見られた。
それぞれのストーク級から出撃したランドグリーズ・レイブンとエルアインスは、精鋭が乗っている事もあって、数で勝る地球連合の諸兵の猛攻を前にかろうじて戦況を維持している。
それでも一機、また一機と撃墜されるたびに個々にかかる負担は増していて、絶望的な状況に追い込まれ慣れているクライ・ウルブズ以外のDC兵の中には、徐々に苦悶や諦めの色を浮かべている者も少なくない。
そんな中で、やはり勇猛無双の活躍を見せているのは、MSパイロットとして最古参最精鋭クラスのメンバーがそろうクライ・ウルブズの、発足初期から籍を置いていた古参組である。
あいも変わらずエムリオン・リターンズカスタムを愛機としているアウル・ニーダは、ぱっちりと大きな瞳に激烈な戦闘の炎を轟と燃やして一秒も休む暇の無い戦いの渦中にあった。
機体のM1パーツの腕と、リオンパーツの腕に握らせた計四丁のオクスタンライフルの弾幕を展開して母艦へと向かわんとする敵機に向け、ハリネズミよろしく火砲の針を広げている。
今回初めて戦線に投入されたDCの新航空戦力VF−19F、S、A型にも搭載されているハイ・マニューバ・マイクロ・ミサイル(HMMM)を装備し、ライフルと合わせて猛烈な火線を単機で描いてみせている。
通常の戦闘機やDCのAM、MSに搭載されていた従来のミサイルに比べて、HMMMは小型ながら、新型の炸薬を詰め込んで威力を確保し、搭載された自律AIが敵機に向けて自ら機動を変えて襲い掛かる。
またロックオンの仕方も従来の兵器群とは別種の方法を取っている。先年、テューディ・ラスム・アンドーの発案によって完成したプラーナ探知型を戦線に投入したのである。
魔装機系の技術を有するDCならではの探知方式で、従来探知する生命反応の他にプラーナを探知するこのミサイルに対するジャマーは、現在存在しておらず、特に対艦使用に置いて効力を発揮する。
なにしろプラーナ探知であるからして、艦の中でも生命反応の多い個所を狙って襲い来るのだから、直撃を受けた時の人的被害は必然的に大きなものとなる。文字通り必殺――必ず殺すミサイルなのだ。
もちろん、撃ち落とされた場合や装甲に阻まれて致命傷を与えるに至らない場合などはそうとは限らないのは事実である。
「だあああ、もう、多いっつーの!!」
ヘルメットのバイザーに直接投射される各種のデータを瞬時に判別し、四肢にその情報を通達して機体の操縦に反映させ、アウルは脳味噌が沸騰する錯覚に襲われるほど目まぐるしく動き続けていた。
それでもアウルの働きに見合うだけ敵機が海へと叩き落とされていればまた救いもあったが、敵もさるもので新型MSやMAにベテランクラスのパイロットが揃いたやすくは空から落ちてはくれない。
蒼く濡れる空に白線を描くHMMMが飢えた狼の群れの如く、同時に複数のイナクトやウィンダムに襲い掛かるが、あるものは対空機銃やビームライフルで迎撃し、あるいは友軍機が迫るミサイルを叩き落として窮地を救っている。
砲戦機かと疑いたくなる火力の冴を見せるエムリオンRCを手強いと見た敵機の攻撃が集中するも、アウルは攻撃の手を休めぬままに機体を動かしてかろうじて直撃を避けて行く。
単なるエムリオンの改修機であったらここまでの活躍を見せられなかっただろうが、再びアウルと巡り合ったこのエムリオンRCは、DCが太鼓判を捺す改修機――いわゆる魔改造機の類である。
この魔改造の『魔』の一文字が肝要だ。
これまでDCが開発した魔改造機――たとえば太陽炉にグラビコン・システムを組みこまれたエクシアと比べるとエムリオンRCの魔改造の度合いはさほどでもないが、性能の向上ぶりは洒落にならない。
M1部分は実際にはM2とでも形容するのが正しい位に高性能化しており、その外見こそ大きく変わらぬが中身は全くの別物だ。
リオンパーツにも最新のテスラ・ドライブや機動兵器技術を導入し、ガーリオンタイプに装備されていたブレイクフィールド、Eフィールドの発生装置、熱核タービンバーストエンジンが採用されている。
エルアインスやアヘッド、VF−19にかわり再びDCの主力量産機の座に返り咲こうという開発者の野心が秘められているだけに、量産を視野に入れた機体ながら高性能の装備を低コストで保有しているのだ。
まあ、アウルに回された機体は制式採用前の予算度外視スペシャル仕様機ではあるけれども。
開発者の野心に相応しく実体・ビーム両方に高い防御性能を持ち、もともと空戦を主戦場としていたエムリオンとあって、その動きは軽快にして精妙、一度攻撃に転ずれば火の如き侵略の勢いを見せる。
それでも『点』というよりもほぼ『面』を構成する敵部隊の巧妙な射線軸の牢の中へと徐々に追い込まれているエムリオンRCは、先程から被弾寸前の危うい回避行動を取らされていた。
「こんの、鬱陶しいんだよ、お前ら!!」
そう叫ぶアウルの声音には少なからず焦りの響きが混じっていた。
敵機のインターセプトを担っていたアウルであったが、シンのクロスボーンインパルスの思いもよらぬ苦戦に気づき、なんとか援護に行けぬかと苦心していたのである。
シンが、これまでのシルエットの中でも総合的な戦闘能力では一、二のクロスボーンインパルスを操ってなお勝利を掴めぬとは、シンの実力をよく知るアウルには驚愕に値した。
仔細に観察する余裕など欠片もないが、クロスボーンインパルスは右腕を失い、他にも機体の装甲表面に数発のビームが当たった跡が見える。
左手のビームシールドでコックピットをカバーしながら、足裏のクローでスクリューウェッブを掴み、胸部の20mmCIWSと合わせて三対一の状況で互角に渡り合っている。
DC側以外の、というかクライ・ウルブズ以外の人間からすれば主要武装を失った状態で、ハレルヤ・アレルヤ・セルゲイを一度に相手取っているシンの方こそが異常な存在と見えるに違いない。
シンはムラマサブラスターを握る右腕をハレルヤのタオツーに斬り落とされた代償に、ハレルヤタオツーの右肩関節の隙間にヒートダガーを突き刺した。
数千度に熱せられた刃は、間接の隙間からタオツーの骨格たるフレームにまで到達し、高熱による融解の特徴的な波紋を残し切断した。
ハレルヤタオツーに止めを刺すべく引き抜いたヒートダガーをコックピットへと向けた時には、セルゲイのティエレン高機動B型の牽制の射撃が入ったが、神懸かった反応速度によってビームシールドで受け止めて見せた。
ビームシールドを押し込む着弾の衝撃を活かして機体を捻り、クロスボーンインパルスは周囲を取り囲むセルゲイ、アレルヤを牽制する為にスクリューウェッブによる旋風を巻き起こした。
スクリューウェッブを振り回す脚部の動作がそのまま三機のティエレンからの攻撃をかわす動作に連結し、攻撃と防御を同時に繰り出して右腕の欠損を補っているのだ。またビームシールドも防御のみに使われるだけではない。
一部方向のみにビームを出力してサーベル代わりにし、またビームシールドをまるでブーメランか手裏剣のように飛ばして不意を突き、不意を突かれたアレルヤタオツーの右膝から下を切断して見せた。
パイロットであるシンに極限の疲労と緊張を強いし、クロスボーンインパルスもまた徐々に傷つきつつあったが、それでも彼らは着実に超兵二人と頂武の隊長にダメージを与えている。
しかし、この三人を抑えても尚、シンの動きが束縛される事はクライ・ウルブズにとってマイナスの面がはるかに大きい。
ティエレン部隊のトップ二人と指揮官機を抑えているのは十分な仕事といえたが、頂武はセルゲイの副官であるミン中尉が指揮を引き継ぎ、マリー、ソーマの二人が残っていて猛攻を繰り広げている。
少数に対する多数の優位性の表れと言える。少数の部隊の場合には、一人が欠ければ生じる不具合を、数でカバーする事によって部隊の機能を維持する事が出来るのだ。
DC側はエルアインス各機とグローリー・スターの面々が頂武の二十以上のティエレンを相手に奮戦しているが、この戦いの旗色も決して良いものではない。
敵パイロットはいずれもトビー、デンゼルに準ずるか同等近いレベルの実力者であり、強化されたバルゴラや性能でティエレン、イナクト、フラッグを上回るエルアインスといえども苦戦は必定。
さらにはトビーとデンゼルは新兵であるセツコのカバーにも気を割きながら戦わなければならないのだから、負担は一段と大きい。
左方向から大きく弧を描いて迫ってきたイナクトの射撃によって、リオンパーツ左腕部を吹き飛ばされ、大きくバランスを崩す機内で、アウルは瞬間的に脳髄から一気に全身へと行き渡る激昂に意識を任せた。
残る三つの腕に握るライフルの照準をこちらに当てて来たイナクトへと集中させて、三点集中の射線に捉われたイナクトを、かろうじて人型に見える屑鉄に変える。
HMMMの残弾はざっと二十発、オクスタンの実弾はとっくにゼロ、となるとビームが主体になる。MSはともかくとしてMA相手に効果的な武器は残っていない。
「ブレイクフィールド使うにゃ、ジェネレーターの温度が高すぎるか!!」
先ほどからのビームの連発とEフィールドの展開によって、すでに機体のジェネレーターの温度は高温になっている。機体のエネルギー残量はともかくとして、ブレイクフィールドの使用によってさらに熱を増す事態は避けたい。
できれば艦に戻ってリオンパーツ、ライフルの交換に大部分を撃ち尽くしたミサイルの補充をしたい。ぜいたくを言えばシャワーを浴びて汗を流して、カラカラの喉も潤したい。
だがそれは――
「全部、お前ら倒してからだぜ!!!」
*
待ち伏せされ部隊を囲まれた状況で戦端を開いた事によって、戦闘は最初から不利であったが、それでも連合部隊に相応の被害を強要したのは、流石はDC最強の部隊といえた。
攻める事に特化したクライ・ウルブズは守勢に回ると攻めの時ほどの戦闘能力を発揮できぬが、今回の戦闘に際して配備されたある一機のMSの存在が、この不得手な守勢の戦いをカバーしていた。
グラハム・エーカー大尉率いる大西洋連邦空軍第8独立航空戦術飛行隊――通称オーバーフラッグスは、タマハガネら三隻を背後から攻める位置にあったが、ある一機のMSを前に進撃を止められていた。
連合艦隊の中でもトップクラスのパイロットが揃うオーバーフラッグスを相手に、太陽より眩く輝く黄金の機体が、獅子奮迅の戦いぶりを見せている。
ツインアイと額にV字のアンテナを備えた外見的特徴から、ガンダムタイプと思しきその機体は、竜の頭部を模した両肩の赤いアーマーとフライトウイング除けば機体のほぼすべてが黄金の輝きに包まれている。
左手には中央に十字の意匠を凝らされた赤い竜頭の盾を持ち、右手にはレイピアに近い形状の実体剣ダブルソードを握っている。
巨竜が大空へと羽ばたくかの様に赤い翼を広げ、オーバーフラッグ各機の隙間を縫うように飛翔し、眼の眩む輝きを宝石箱がひっくり返されたように散らして戦う様は思わず目を奪われる美しさであった。
後にもっとも美しいMSと称賛されるDCの新型MSスペリオルドラゴンだ。
アカツキに使用されていた特殊装甲ヤタノカガミを惜しみなく使用し、対ビーム兵器に対してはほとんど無敵に近い防御性能を誇る。
件の装甲は着弾したビームを発射した相手に反射する特性故に、極めて高コストであった事が問題視され、スペリオルドラゴンへの実装には疑問の声が上がっていたが、それでもなお実装が決定した。
すでに二年半前の大戦時にヤタノカガミの開発自体は終了していた事もあり、スペリオルドラゴンに装備されているヤタノカガミも相当の強化・改修が施された新型のヤタノカガミ装甲に変えられている。
現在ヨーロッパで奮戦中のブローウェル・カスタムのビーム吸収機能を持たせると同時に、弱点であった実体弾に対する防御性能も向上が図られており、準特機並の堅牢さを誇る。
実にM1、二十機分という高コストが問題視されたアカツキを、逆にとことん高性能化してコスト以上の戦闘能力を持たせればよし、と普通の感覚とは真逆の方向に開き直って開発されたのである。
ここら辺の開発経緯が実にDCらしいエピソードであると言えよう。
背の翼二枚と剣の鋭さを待ちながら長く伸びた尾それぞれにテスラ・ドライブを内蔵して、重装甲化した事で増した重量によって低下した運動性を補強している。
ビーム吸収・反射能力を完全に発揮する為に搭載されたコンピューターも最高の演算能力を持つものが搭載されている。
武装に関しても刃先が単分子の厚みしか持たず、グルンガスト弐式の計都・瞬獄剣に匹敵する切断能力を有するダブルソードに、ビームアローになるシールド、ヒートソードにもなるテイルスタビライザー。
また着弾したビームのエネルギーを蓄え、ヤタノカガミ装甲のどこからでも発射できる特殊機能が追加されており、防御一辺倒の機体で終わってはいない。
スティング・オークレーの駆るスペリオルドラゴンは、緒戦であえて無数のビームライフルの直撃を受けて、すでに七機近いMSのビームライフルとそれを握る腕を吹き飛ばした。
その後もスペリオルドラゴンの特性を把握する前に攻撃を仕掛けた敵機に手痛い一撃を送り返し、ビームが効かないという特性に二の足を踏む敵に近接戦を挑んで撃墜する働きを見せている。
現在機動兵器の主武装がビームに移行し、ミサイルやリニアガン、レールガンなどの実体弾系統の武装が少なくなったこともあり、ことスペリオルドラゴンは防御に関して言えば特機を含めて最高峰の性能を持っている。
盾を左手の甲に装着して、両手にダブルソードを握って二刀流にしたスペリオルドラゴンは、三基のテスラ・ドライブの推力を最大限に引き出してオーバーフラッグの手足を斬り飛ばし、足を斬り飛ばし、戦闘能力を奪う。
撃墜寸前の、救助すればまだ助かる状態の敵機を増やして味方の救出に敵戦力を割かせて少しでも相対する敵を減らす為の、小賢しいと言われれば否定できない戦法だ。
しかしグラハムが直接に指揮を取り、ダリル・ダッジ、ハワード・メイスンらフラッグファイターの二人とコンビネーションで攻め始めると、この三機に集中する事を強制される。
カタログスペックではDCインパルスを上回るほどの高性能機であるスペリオルドラゴンを持ってしても、フラッグファイター達の連携が生む戦闘能力は侮れないものだ。
「こいつら、トップガンの集まりかっ」
ヘルメットの奥の顔を歪めて、スティングは全天周囲モニターに映し出され、周囲を目まぐるしく秩序だった連携行動で飛び回り、襲い来るオーバーフラッグ達を睨み殺さんばかりの視線で睨みつける。
戦闘機形態とMS形態への変形機構を織り交ぜたグラハムらの小隊攻撃は、スティングの目をしても見事と唸らざるを得ない。DCの中でもあれほどの錬度を持った小隊がどれほどいることか。
「なろおぉ!」
スペリオルドラゴンを中心に渦を描く様にして取り囲むオーバーフラッグめがけて、黄金の装甲のそこかしこから、これまで吸収し蓄えておいたビームを射出する。
三機のオーバーフラッグに広範囲の攻撃範囲を持つ『ファン』。
さらに左利き使用になっている指揮官機らしい最も腕の立つオーバーフラッグへは、ビームサーベルの刃をそのまま射出した形状を持つ『ムービサーベ』と、弾丸状のビームを放つ『ムービルフィラー』を連射する。
銃器どころかそもそも砲口や銃口らしきものが一切ない『装甲それ自体から』射出される射撃兵装は、たとえ初見でなかろうとも対応する事は難しい。
正面は勿論、両側面、背面、上下とスペリオルドラゴンの黄金装甲のどこからででも放たれる以上、たとえ背後を取ってもビームライフルの銃口を向けられているのと等しいのだから。
グラハム機は、さすがは空戦の貴公子の二つ名は伊達ではなく、射出方向とタイミングが全く読めないムービサーベとムービルフィラーを、旋回時に掛かる高Gに耐えて回避して見せる。
オーバーフラッグに装備されているディフェンスロッドは、敵機の銃口から弾道予測を行って防御するシステムを採用しており、このスペリオルドラゴンの『装甲表面からの射撃』に対しては無力だった。
そのために防御不可の回避行動を取らざるを得ず、避けきれない射撃をディフェンスロッドで防ぐ選択肢は排除されてしまう。
髪をオールバックにし、普段は薄い色の入ったサングラスを着用しているハワードと、浅黒い肌にドレッドヘアが特徴のダリルは、グラハムには一歩劣るものの優秀なフラッグファイターだ。
彼らに向けて放たれたのが広範囲攻撃故に密度の薄いファンであった事もあって、翼や手足の先をかすめる事はあっても直撃を避けて、戦闘行動を取るのに支障が出るほどのダメージは防いでみせる。
グラハムらが回避行動を取った隙を突いて、数秒ほどの時間を最大限に生かし、スティングは後方の艦へ向かうオーバーフラッグをはじめとしたMS部隊へ『メガバズ』や『ソーラ』を撃ちまくる。
どちらもファン以上の広域攻撃範囲と威力を秘めるが、その分エネルギー消費が激しい。これまでに蓄えた敵機からのビームと、スペリオルドラゴンのプラズマ・ジェネレーターの生むエネルギーが大幅に食われる。
それでもかまわずトリガーを引きっぱなしにした甲斐はあり、モニターの向こうに映る華奢なラインのオーバーフラッグ達は太陽が生じた様に眩い輝きに飲み込まれて爆散する。
「同胞が落とされたのは口惜しいが、その隙は見逃さん!!」
「……!?」
大威力火器を連射した隙を見せるスペリオルドラゴンに、左方向からの衝撃が襲いかかった。
炎へと変じてもおかしくない気合いを迸らせながら、ビームサーベルを構えたグラハムのオーバーフラッグの大上段からの片手一刀を、ダブルソードが受け止める。
サーベル状に形成された粒子をダブルソードの単分子ブレードが切り裂き、半ばから先を消失させたコンマ一秒未満の刹那に、オーバーフラッグの右真空飛膝蹴りがスペリオルドラゴンの顎を強烈にかち上げる。
一見すれば容易く手折れる花の様に華奢のフレームのオーバーフラッグに、かような格闘戦を行わせる大胆さ、卓越した操縦技術。スティングの脳裏にジニンと刹那から忠告を受けたフラッグファイターの名前が明滅する。
「グラハム・エーカー、だったか。だけどな、いちいち驚きゃしないぜ、こちとらエースが出張ってくるくらい、とっくに覚悟してんだよ!!」
大きく上体を泳がされた勢いを利用し、スティングはスペリオルドラゴンに後方バック回転を敢行させると、腰の辺りに付け根があるヒートソード兼用のテイルスタビライザー『フレイムソード』を鞭の如くしならせる。
赤く灼熱した竜の尾は、グラハムが駆るオーバーフラッグの右肘から先を鮮やかに斬り飛ばし、くるくると宙を舞った右腕は数秒を数えてから爆発する。
「く、これではプロフェッサー・エイフマンに面目が立たん」
「いい加減、沈みな、てめえら!!」
ある世界の十二柱の神に名を連ねるスペリオルドラゴンを駆るスティングの心は、機体の壮麗さに相応しくなく、アウルと同じ焦燥に突き動かされていた。
*
幾度目になるのか連合艦隊に向けてストーク級二隻とタマハガネ級の砲撃が、怒涛の勢いで降り注ぎ、艦隊前面に固定されていたMA群の展開する陽電子リフレクターの壁によって遮られる。
合計六機のザムザザーが機体を傾かせて陽電子リフレクターを展開し、機体の動きを硬直させる。着弾の衝撃によってじりじりとザムザザーは後方に押し込まれるが、機体のスラスター推力を全開にして耐え忍ぶ。
旗艦である機動空母エンタープライズU世の前方数キロメートルで、敵艦からの攻撃を防ぐ異形の機動兵器の姿を、連合の将兵たちは頼もしく見ているに違いない。
その上空から緑に輝く波しぶきに似た軌跡を描きながら、MSとしてはやや大型のシルエットを持った機体と、巨大なサーフボードに乗った人型が見えない波に乗る様にしてザムザザーへと襲いかかる。
イカロスユニットを装備し、より優れた空戦能力を手にしたガーリオン・カスタムは右手のオクスタンライフルを左手で抑え込んで照準のブレを抑え込みながら飛翔する。
風を切り、サーフボードの中に内蔵された小型テスラ・ドライブが噴出する推進の光を粉雪の様にまき散らし、純白の巨人が動きを止めているザムザザーへと手に携えた銃口を向ける。
ザムザザーのパイロット達が発せられる警告音に気づくも、敵艦隊からの砲撃を受け止めている今の状況では、動きようもない。リフレクターの展開を止めて迎撃を選べば、後方の艦隊に砲撃が降り注いでしまう。
加えて、迫り来る敵は彼らに選択する時間を許さない高速で襲い掛かってきていた。
サーフボードに乗ったそれは、不幸にも今回の熾烈な戦闘が初陣となったエウレカとレントン・サーストンの乗るLFO一号機・ニルヴァーシュであった。
艦の砲撃をことごとく防ぐザムザザーを撃破すべく、運動性に富むニルヴァーシュとその動きに追従できるレオナ・ガーシュタインのイカロスユニット装備のガーリオン・カスタムが動いたのだ。
固定の射撃兵装が無いニルヴァーシュはオクスタンサブマシンガン(OSMG)を手に、既存の兵器を凌駕する運動性を活かし、動きを止めたザムザザーへと容赦なく襲いかかる。
レオナもまたEモードにセレクターを合わせて一射一射を正確にザムザザーに叩きこんで行く。
味方の砲撃に挟まれかねない状況ながら、ニルヴァーシュのメインパイロットを務めるエウレカは白磁の面頬に、毛筋ほどの感情の色を浮かべる事もなく、センターマークに敵機を捉えて機械的にトリガーを引き絞る。
アクセルがいまのエウレカを見たら、まるでエキドナかW17のようだと口にしたかもしれない。精巧な機械人形が機械仕掛けの兵器を操っている――いまのエウレカはまさにその表現こそが相応しい。
となりのレントンが軽減されたとはいえ襲い来るGにうめき声を漏らしているのを無視して、エウレカはザムザザーの機体を舐めるようにニルヴァーシュをぎりぎりまで接近させる。
ボードが海面に接触し、本当に波乗りをするほどの低空から、ザムザザーの柔らかい腹の部分へと向けて、OSMGの銃口から桜色の光の弾丸が毎分900発の連射速度で吐き出されて、次々と装甲へ吸い込まれてゆく。
MSをはるかに上回る巨躯に相応しくザムザザーの装甲は重厚なものであったが、攻撃を想定していなかった機体の腹部に集中したビームの弾丸に、次々と装甲を破られて精密な内部危機にもダメージが重なる。
真っ白な装甲に赤いラインの走るニルヴァーシュは、波しぶきを受けて機体を濡らしながら、三秒とかからずにザムザザーの背後を一舐めし、六機すべてのザムザザーの腹から爆炎と黒煙が噴き出す。
流石に大型MA、小型機であるニルヴァーシュの攻撃だけでは撃墜にまでは至らなかったが、陽電子リフレクターの発生機器に不具合が生じる程度のダメージは十分に与えられた。
それまで堅固に展開されていた光の盾がひとつ、またひとつと消え始めて、ニルヴァーシュの奇襲に合わせて放たれたDC艦隊の第二撃がつぎつぎとザムザザーの巨躯を飲み込んで行く。
タマハガネの連装衝撃砲、副砲、ストーク級のボールド・ビームキャノンにプラーナ探知型を含めサイズ、探知形式種々様々なミサイル群がそれまでのうっ憤を晴らすべく、ザムザザーを跡形も残さずに爆砕する。
急降下から急上昇へと転じたニルヴァーシュの中で、うぎぎぎぎ、と苦しい呻きを漏らしながら潰れた饅頭みたいな顔になっているレントンに、エウレカが機械的に告げる。
次にどのような行動を取るか告げる事で、レントンに襲い来るGへの覚悟をさせる余裕を与えているのだろう。エウレカなりの配慮と見るべきか。
「レントン、艦隊に仕掛けるよ。対空砲火を抜けるから、舌を噛まないように気をつけて」
「……っ」
うん、とも、はい、とも返事が出来ずレントンはなんとか頷いて見せた。LFOの変則的で複雑な機動に揺さぶられながら、弱音を吐く事を堪えている辺り、なかなか根性があると褒めるべきだろう。
艦隊本隊の盾となっていたザムザザーの一斉撃破によって、連合艦隊に旗艦撃沈の危機が一挙に高まり、猛烈な攻勢をかけていたMS部隊のいくらかが艦の護衛に戻る動きを見せる。
艦の護衛に残っていたウィンダムやイナクト、イージス艦をはじめとした護衛艦からの十字砲火の雨の中をくぐり、ニルヴァーシュは世界最高峰のプロサーファーでもかくやの機動で低空から艦隊へ攻撃を仕掛ける。
機体背部に突き出たコックピットに設置されているクラスターミサイル三基を一斉に射出し、檻と鎖から解き放たれたミサイル群は標的たる生命の数が最も多い空母を中心に、自在に機動を変えながら飛翔する。
ニュートロンジャマーのジャミング効果があるとはいえ、密集した艦艇が張り巡らす対空砲火は、さながら弾丸の壁となってミサイルを撃墜してゆく。ぱぱぱぱ、と音を立てて艦艇の上空にオレンジの火の玉が生まれる。
オレンジの炎が空を照らすその下を、ニルヴァーシュが颯爽と走り抜け、腰裏にマウントしていた携行型のリニアミサイルランチャーを左手に握り、OSMGと合わせて連合の艦隊目掛けて発射する。
白煙をたなびかせて発射された小型ミサイルは瞬く間に音速をこえ、次々と駆逐艦や巡洋艦の横腹に弾頭を叩きつけて行く。接近を許し、海面ぎりぎりの低空を飛翔するミサイル群への迎撃は間に合わない。
一切停滞する事無く海面の上を飛翔するニルヴァーシュの中で、エウレカは砲塔やミサイルランチャーに引火し、内部から壮大な誘爆を引き起こす艦艇を一瞥して、再度攻撃を仕掛けるべくニルヴァーシュを旋回させた。
変則的なニルヴァーシュの動き、レオナは多少苦労しつつもなんとか息を合わせるべく機体を忙しく動かしつづける。
エウレカが艦隊への攻撃を行っている時は、前線から舞い戻って来たMSの相手をし、初陣とは思えない戦いぶりのニルヴァーシュをフォローする。
エウレカの連合艦隊を映すその瞳は紫真珠をはめ込んだ様に美しいが、どこか冷たい。そのことにエウレカ本人だけでなく、となりで必死に補助に勤めようと嘔吐を堪えるレントンも気付かない。
ただ、ニルヴァーシュに搭載されたAI1を元とした擬似人格AIだけが、じっと見つめていた。
*
タマハガネの艦橋はひっきりなしに振動に襲われて揺らされていた。展開したEフィールドに衝突する砲撃や、船体の重装甲を穿つビーム、船内に生じた火災など、対処するべき事態は絶え間なく襲ってくる。
ハイブリッドヒューマンとして生を受け、戦う事、支配する事にその生の大部分を捧げて来たエペソは、このような苦境にも能面じみた端麗な顔に焦りの色を浮かべる事は無かった。
だが乾く間もなく舌を動かして指示を飛ばすなか、思考の隅で戦況を示す天秤が徐々に望ましくない方へと傾いている事を理解してもいた。
友軍艦の護衛に回したタスクのジガンスクードは、連合のザムザザーの何倍もの活躍を見せて、よく守っていたが、度重なる被弾に両手に携えた分厚いシールドにも徐々に疲弊が重なっている。
いまも、数機のイナクトが放ったミサイルを受けたシールドから、微細な破片が零れ落ちているではないか。
反撃に放ったギガ・ワイドブラスターでジェットウィンダムとティエレンを一機ずつ撃墜して見せたのは大したものであったが、それも焼け石に水程度の効果しか上げない。
DC屈指の勇将は、ニルヴァーシュとエウレカの開けた敵艦隊防御網の穴めがけて、残っているタマハガネの火器の集中砲火を命じる。
連合の機動兵器の損害はすでに二割強に達し、全滅判定が下される三割喪失までそう時間はかからないだろう。
だが連合側は文字通り全滅しても構わないと覚悟しているかの様な勢いで攻め立てて来ている。
クライ・ウルブズのみならずDC全体を見渡しても最強のパイロットへと成長したシン・アスカとインパルスが拘束されている事、各隊員を拘束するほどの手練が複数投入された事が、いまの不利な状況を作り出している。
また待ち伏せを受けたと理解した時に、ならば先手を取ると各艦に一斉射撃を命じた時に、確実に被弾コースを進んでいた砲撃を新型MAに防がれたのも手痛い誤算だった。
緒戦の砲撃が通っていれば、いますこし敵の指揮系統にも乱れが生じ、その隙を突いて乱戦に持ち込んで、敵旗艦のいる艦隊中心部に特攻をしかける策も使えたが、こうもこちらの動きを拘束されてはそれも使えない。
アームレストを握る左手に、我知らず万力を込めながら、エペソは次々とオペレーター達から告げられる聴覚情報と、ディスプレイに映される視覚情報をコーディネイターの顔が青くなる速度で処理してゆく。
「艦長、下方に敵大型MS、イナクト各一!! 接近されました」
大型MSとは、今回の戦闘で初めて確認されたパプティマス・シロッコの駆るジ・OUの事である。
鈍重極まりない外見でありながら、パイロットであるシロッコの卓越した技量、ニュータイプ能力によって要塞じみたその外見を裏切る動きを見せて、襲い来るエルアインスを返り討ちにしている。
「船体下部の対空機関砲、ミサイルランチャー全照準を敵大型MSに合わせ。同時に取り舵!」
Eフィールドの展開よりも迫る敵の撃破を優先する選択肢を選んだのは、エペソらしい判断であった。スペースノア級の船体全体に巡らされた対空機関砲(ビームに換装されている)の雨が一気に降り注いだ。
海面深くまで見通せる澄んだ海を荒し、蛇行しながらタマハガネの真下に潜り込んだジ・OU目掛けて、スコールよろしく降り注ぐ対空砲火を、シロッコは嘲りの笑みを口元に張り付けて見上げていた。
並のパイロットであったらどこに躱す隙間があるのかと絶望する砲火の雨を縫う様にして回避し、シロッコは通常のMSの胴体ほどもある大型重機関銃と、ジ・OUの背にある対空ミサイルのトリガーを引く。
パシュン、という音と共に空へと広がったミサイルは対空砲にいくつかを撃ち落とされながらも、4発ほどがタマハガネの連装衝撃砲二門に正確に命中して破壊する。
全高三十メートルを優に超すMSとしては規格外の巨体に似合いの巨大な重機関銃は、DokDokDokと殴りつけられるような音と共に黄金の薬莢をばら撒きつつ、タマハガネの船体装甲に虫食い穴を穿つ。
船体真下という迎撃の難しい位置を取られて苦境に追い込まれたタマハガネを救うべく、エルアインスとアルベロのビルトシュバインが動いた。
エルアインスがツイン・ビームカノンとGレールガンをジ・OUへと向けるが、エルアインスを背に負ったジ・OUはあらかじめそこに攻撃が来ると分かっていたかの様な反応で、エルアインスの砲撃を回避する。
さらには機体を百八十度旋回させるや、機体胸部にある連装砲塔が火を噴いてエルアインスの胸部を吹き飛ばした。
貴重な戦力がまた一つ減らされた事に、濃いひげに覆われた口元をかすかに歪めて、アルベロはビルトシュバインの右手に携えたグラビトン・ランチャーの引き金を絞る。
MSに使用するにしては殺傷力過剰な重力の砲撃を、ふたたびジ・OUはそのまま機体をスライドさせて回避し、ビルトシュバインめがけて重機関銃の弾丸を見舞ってくる。
Dokokokokoko、と独特の発射音にわずかに遅れてビルトシュバインの周囲の海面に水柱がいくつも立ちあがった。
アルベロとて一年戦争、グリプス戦役、ネオ・ジオン抗争、さらに言えば恐竜帝国、ドクター・ヘルの機械獣軍団、ミケーネ帝国の侵略を経験した生え抜きの軍人である。
特殊部隊を率いて地球圏に巻き起こった戦争の嵐をくぐり抜けたその経験から、オールドタイプとしてはトップレベルの戦闘能力を有している。
こちらの世界に来てからもさんざん戦い抜いてきた男の戦闘能力は、ニュータイプを相手にしてもおさおさ引けを取るものではない。
アルベロはジ・OUの動作から即座にこちらに向けられた照準を見抜き、回避行動へと移って着弾をゼロに抑え込む。
超音速で放たれた200mmの大口径銃弾は、砕いた海水のしぶきをビルトシュバインに叩きつけるだけに終わる。
アルベロは、重機関銃プラス胸部砲塔の弾幕を、サークルザンバーをシールド代わりにしつつランダムな回避運動と共にかいくぐって、恐怖の欠片もなくジ・OUへと突貫を敢行する。
アルベロはグリプス戦役でパイロットの能力と合わせて最強のMSのひとつに数えられるジ・Oのスペックを脳内の記憶野から引き出して、推測されるジ・OUの性能を思い描く。
ジ・Oは宙間戦闘を主眼に置いた高機動・高追従性を持った機体だ。武装もほとんど最低限のものを備えたシンプルな品ぞろえだった筈。
開発者であるシロッコが強力なNTであった事から、Zガンダム同様にバイオセンサーを搭載していたというが、いま目の前のジ・Oに酷似した山の様な巨体の敵も同様であるか否か。
複雑な関節によって脚部を構成していたことから重力下での走破性能は劣悪とされたジ・Oに、ホバー走行による高機動性を与えて重力下での運用に耐え得るように改修を施した機体と言った所が妥当だろうか。
実際アルベロの読みはおおむね的を射ている。
本来、ジ・OUは宇宙世紀0088年に、ネオ・ジオン総帥ハマーン・カーンの戦死後、地球に取り残されたネオ・ジオンの兵が使用したネオ・ジオン所属の機体である。
ジ・OUはジ・O−Tの開発に関わっていた元ジオン技術陣が、重武装を施した要塞攻略用のMSとしてプランを練った事に誕生の端を発する。
重装甲、重火力により単機で敵領内に侵攻し、ホバー走行によって迅速な作戦行動が可能なスーパーMSであり、アフリカ戦線などに投入され、その性能を遺憾なく発揮して当時地上最強のMSと畏怖されたほどの機体だ。
なかにはフレデリック・ブラウンという一年戦争からのベテランが駆り、ガンダムMk−UやZで構成された連邦の戦線を突破し、最後はZZを前に善戦するも破れるが、目覚ましい戦果を残した機体もある。
OTであるアルベロには、ジ・OUのパイロットがNTであるかOTであるか判別は着かぬが、空を抑えられたこの戦場での動きを見るに、トップクラスの凄腕が操っている事は確信していた。
アウルのエムリオンRC同様、外見だけはそのままに内部は最新技術による大改修を施したビルトシュバインは、背のウィングバーニアから爆発の光芒に等しい輝きを放ち、ジ・OUの頭上へと跳躍する。
振り上げた重機関銃の照準が間に合わぬと瞬時に判断し、シロッコは別のトリガーを引いた。ビルトシュバインが振り下ろした翡翠に輝く円盤の刃を、ジ・OUの右腰アーマーに隠されていた隠し腕が受け止めた。
「やはりあったか!」
ジ・Oにも装備されていた隠し腕はビームサーベルを備えていたが、ジ・OUの隠し腕も同様で、重金属粒子を束ねたビームサーベルはサークルザンバーの円刃を、鋼鉄の堅牢さで受け止める。
「良い動きをするが、それでは私の首は取れんよ」
サークルザンバーを受け止められると同時に、ビルトシュバインの右腕はジ・OUの左手に抑え込まれて、グラビトン・ランチャーは動きを封じこまれる。
もっとも長銃身の武器だから、ここまで接近しては取りまわしづらいだけだ。アルベロは視界の下方でジ・OUの左腰アーマーが動くのを認め、すぐさま即座にビルトシュバインの右足で蹴り、隠し腕が展開されるのを防ぐ。
さらにアルベロは左隠し腕を蹴った反動を利用してビルトシュバインにジ・OUの巨体の上で跳躍させる。その直後、ジ・OUの胸部の連装主砲がPow、と軽快な音を立てて砲弾を海面に叩き込む。
ビルトシュバインの跳躍は、左隠し腕の展開と連動するかのように動いたジ・OUの胸部砲の動きに気づいたアルベロが、反射レベルで機体に回避行動を取らせた結果であった。
サークルザンバーと隠し腕の衝突から三秒と立たない間に、ここまでの連続攻撃を繰り出したシロッコも、その全てを防ぎきったアルベロも、並のパイロットなど歯牙にもかけないレベルにいる。
通常の部隊なら化け物扱い、精鋭部隊でもエースの名をほしいままにしておかしくない半化け物なのだ。
ジ・OUの左腕にビルトシュバインの右腕を掴まれたまま、アルベロはサークルザンバーをジ・OUの首を斬り飛ばすべく右頸部目掛けて叩きつける様にして振り下ろす。
シロッコは人工的に強化された人間さえも上回る反応速度で自らの体を操縦し、体を通して機体を操縦する。
ビルトシュバインの右腕を抑え込んでいたジ・OUの指が離されて、ビルトシュバインが彼方へと放り飛ばされる形になる。
ZAN、と海面をビルトシュバインの足が叩き、脚部のスラスターを噴かして体勢を整える所に、ジ・OUとは別の機影が襲いかかった。タマハガネに接近していたイナクトである。
指揮官機らしく通常ブーメランのように左右に伸びる角に加えて、頭上へ向けて伸びる角型のアンテナを備えている。
シロッコ同様にタマハガネの対空砲火を回避しきったようで、ライトグリーンに塗装された曲線で描かれる機体には、傷一つついてはいない。それだけでも非凡ならざるパイロットが搭乗している事は明らかである。
イナクトを駆るのはユーラシア連邦にこの問題児ありと謳われた――
「撃墜スコアは頂きだぁあーーー!!!!」
模擬戦不敗、二千回のスクランブルをこなしたエース、パトリック・コーラサワーその人である。
人格はともかくとして腕前だけなら、上層部も文句なしにエースと認めるコーラサワーは、イナクトのビームライフルの銃口をビルトシュバインへ向ける。敵機の捕捉からロックオンに至るまでが恐ろしく速い。
コーラサワーに応じる様にしてアルベロもまたグラビトン・ランチャーの照準を上空から迫りくるイナクトへ。
二人の指のどちらが引き金を引くのが早いか、勝利の女神が悪戯っぽく微笑んだその時、彼方から射出されたビームが、イナクトの胸部を一撃で貫く。
「な、なんじゃそりゃあ〜〜〜〜〜〜!!??」
咄嗟にビームの射出方向のカメラがとらえた映像を拡大したアルベロが目にしたのは、まだ小さな点としか見えない機影と、砕いたエメラルドを風に流した様に美しい緑色のGN粒子の輝きであった。
――つづく
今回ここまで、支援ありがとうございました。う〜ん、戦闘が終わりませんな。
あと120,130話くらいまで続きそうだからあと二年か三年か。ちゃんと続けられるかちと不安です。
ではでは、ご感想ご指摘ご助言ご忠告ご提案その他もろもろお待ちしております。お邪魔しました。
> あと120,130話くらいまで続きそうだからあと二年か三年か。
(´゚ω゚)「……」
(゚ω゚)
(´゚ω゚)
(´゚ω゚):;*.':;ブッ
目のハンデさえなきゃアリーすら倒してたかも知れない兄貴の本領発揮の時ですね判ります。
なんか総帥のコーラは1回撃墜された程度で戦場離脱しそうに無いのが良い。
次も普通に戦ってそうで
ザンスカールのゾロアットだかみたく
コックピット排出したら
別のコックピット無しのイナクトと合体するのか
コーラが落ちることを想定して予備機がスタンバってるんだろうな
総帥wwwwwwwwww
カイゼルとジャピトスが出てくるとかwwwwwwwwwwww
混沌の王国かそれとも愛しき邪悪ですかwwwwwwwwwwwwwww
どこまでもついていきましょう。
>>262 過去ログ保存してたからうpロダにうpできるけど、その場合、指摘されてた誤字、多重投稿は修正した版を上げたほうがいいのだろうか。
それともwikiに上がってから修正されるのを待つほうがいい?
おつでしたー。
ブラウン軍曹で吹いた。なんと懐かしい。
あと、スペリオルドラゴンでなんでか鎧闘神00とか思い浮かんだのですが、まぁ既に誰か考えていそうなネタ。
総帥さん、あなたはやはり○○さんですか!?
いえ、だって菊地といいスペクトラルといいこの作風は……。
たしかにこんな力作を書いておられたら他の作品はかけませんわな。
↑特定は紳士のスべきことだろうか?
>>294 はは、まあノーコメントということでご容赦を。
>>291 愛しき邪悪からはじめてそのほかもだいたいやりましたよ〜、砂とかブレイドも。
このネタがわかったあなたも私も冥界の住人ですね、うふふふふ。
では、ご感想くださった皆様に改めて感謝を。ありがとうございます。いただいた感想は活力の源でございます。
>>1回撃墜された程度で戦場離脱しそうに無い
まるでオメガ1…ゲフン、ゲフン
なんでもない続けてくれ
そろそろビアンコレクションの正体が知りたいぜ
ナイトガンダム物語ナツカシスwwwwwww
>>298 今が旬のエルドランシリーズか、もしくは勇者シリーズのロボを作ってくれていると妄想するぜ
>>300 勇者、エルドラ……なるほど、つまり、オーヴ本土進攻の危機に際し、
既に退役した元軍人のじーさま達が避難民達を先導してシェルターに移動……しようとしたのが、
何がどうなったのかビアンの秘密格納庫に進入。
敵軍が迫る中、意を決したじーさま達は見つかったロボットに乗り込み。
ネロ 「正義に産まれ、正義に生きて早六十年」
ホセ 「俺たちが真の軍人かどうか、今わかる」
バリヨ 「俺たちの武器は」
全員 「勇気! 正義! 闘志!」
カルロス「お楽しみは」
全員 「これからだ」
ネロ 「エルドラファイト! GO!」
全員 「アミーゴォ!」
なわけですね。
ビアンコレクション……ネタ兵器を実用段階、それもトップレベルのものとして開発できるビアン博士。
流石に、コンバトラーやゲッターに代表される「超エネルギー」を使った特機までは作れないと信じたい。
>>302 残念ながら超電磁兄弟は核動力だ
ネオゲッターとかなら総帥達で作れそうだな
前も言われてたけど、ミナが発見した瞬間にブチ切れ、なおかつ使いどころに困ると言ってるわけだから、相当なネタ兵器なんだろうな
普通の特機タイプだったら、別に問題は無いわけだし
>>303 正確には核分裂動力によって超電磁エネルギーを発生させてるから
動力そのものはより安全で効率的な核融合とかプラズマジェネレーターとかで代替可能だけど
超電磁エネルギー発生装置が作れるかどうかは別の話
ボルテスでもこの発生装置が重要と言う話は出てた
補給装置の付いてないボロットとか
ミサイルとか弾薬沢山詰んでるけど被弾したら一発でアウトなマシンとか
変形合体できるけどやったらぶっこわれるメカとか
凄い動力一杯詰んだけどおもすぎて動けないメカとか
凄い性能のロボ出来たけど誰も扱えないとか
>>303 逆に作れそうな特機は…
・ガンバスター(縮退炉はブラックホールエンジンの応用でなんとか?)
・ネオゲッター(プラズマ炉も簡単)
・ダンクーガ(Gガンの精神増幅装置で応用?)
・ジェイデッカー系列とマイトガイン系列のAI搭載ロボ(AI1技術を発展させれば。ガガガはGストーンがない)
んーむこのくらいしか思い浮かばん。マジンガーもいけるかもしれんがジャパニウム鉱石から
光子力エネルギーを得る数式をビアンが発見するかがネック
とりあえずMSと合体する戦闘機と戦車みたいのはあるんじゃないかな
ただ合体するにはフォームアップ!って音声認識が必要とか
ネタ兵器……そうか、特機サイズの可変機能付き緊急車両並びに工事用特殊車両か。
>>309 ブレイブサーガ2のソーディオンと対になってる奴思い出した
ヴァーチャロンも出たからR-TYPEは参戦しないんだろうか?
結構、バイドは敵としても雰囲気にあうと思うのだが、
アイレムと協力してロボ系のオリジナルメカ(フォースと波動砲を装備した)をだせば結構いけるとおもうのですが。
ソレぐらいのコラボがあってもいいと思うのですが。
凄いロボ完成したけどコックピットハッチ付け忘れて入れなかったとか
凄いロボ完成したけどコックピットにコンソール付け忘れて起動できないとか
全身がビームでできた機体マダー?
>>307 そういやサルファだとイゴール長官オーブで死んでたよな。
>>316 イゴールはスパロボナイズされた状態ならOKだが、まかり間違って原作版が来てしまうと大変な事になるな
ぶっちゃけ、あっちのイゴールはカガリレベルのヤバさだ
>>318 というかアニメの方のダンクーガは皆ヤバイ。
何よりも主題歌がヤバい
>>319 えっそうなんですか?ずいぶん、昔の作品だからなよく憶えていないんですよ。
でも80年代だから北斗の拳もやってた時代だからありえますな。
>>321 ダンクーガの脚本のレベルはおそらく最低レベルといっても過言じゃない。。
ダンクーガ・エルガイム・クロノスの大逆襲は、スパロボから原作に入ると泣きを見るということからスパロボ三大ガッカリと言われている
思うに、種死もそれに入るのだろうか
スパロボであれだけ感動的に書かれてたイゴール将軍の死亡シーンは、原作だとただの犬死にだからな。
>>323 スパロボでのロム兄さんの捏造っぷりは異常
ゴッドハンドスマッシュが実は二回ぐらいしか使ってない即興技の一つに過ぎなかったり、運命両断剣が実は生身で使っただけとか、スパロボからは考えられない
エルガイムがガッカリな理由がイマイチ分からん。
スパロボとは方向性が違うって意味でガッカリなら分かるが。
エルガイムは中盤の中だるみが酷くて全部見るのが苦痛に感じるという人は多い
実際、富野には「半分はZガンダムの為の捨て駒」とか言われちゃってるし、一般的な評価も今ひとつ
>>323 種死の捏造っぷりだって凄まじいし、四天王って呼んでも良いと思う
>>330 つい最近見た俺でも酷いと思う
ま、打ち切りだから当然なんだが
新ゲッターチームもひどい捏造ですが、あれはそうせざるを得ないし。
というかオリジナルのまんまだといたいけな子どもたちに凄まじいトラウマと悪影響をあたえるしwwww。
個人的にはZ指定にして「そのまんま」の新ゲッターチームを出して欲しいものです。
>>331 まあ飛影は、スパロボでは飛影2回行動大暴れ!で泥棒以外頭に入んないんからギャップによるダメージは少ないと思う。
ダンクーガとマシンロボは当時人気だったけどな
マシンロボは見方を変えりゃ面白いかも
ダンクーガは打ち切りですよ。
まあ、キャラ人気はあった、声優さん達がライブするぐらい。
だが、それ以外が壊滅的に駄目だった。特に脚本。
>>332 そこまでするなら出さなくていいよ
お前前々から言ってることおかしくない?
>>336 というかあのNEOのラインナップに何故加えたかということだろう。
ダンクーガは実は忍が一番常識人だから困る
アーマーパージしたら中から際どい部分にしか装甲付けてない
ステラそっくりのダイステラが・・・
という電波を受信した
真魂合体でもするのか
ヴァルシオーネタイプで神魂合体だと合体シーンがグロイ事になりそうだな
むしろセレブレイダーで私を握ってとか?
斬艦刀有るからセレブレイダーは難しいな
R-ガンタイプなら出番造れそうだけど
オーバーボディ形式でヴァルシオーネタイプのガワになるというのはどうだろうか?
>>342 それじゃあ日本国内で悪名高い(海外じゃ大受け)TFのプリテンダーじゃねえかよww
投下します。
ディバイン SEED DESTINY 第三十話 傾く天秤
スペースノア級一番艦タマハガネを守る様にして、その船首の前方に圧縮したGN粒子を展開し、盾となっている機影が一つある。
大雑把に形を整えたブロックを組み合わせてかろうじて人型に整えた様なそのフォルムは、ネルガル工業の開発した対艦・要塞攻撃用MSガンダムヴァーチェだ。
タマハガネに群がろうとする量産型ガルムレイドが放つ血の色の光線――ブラッデ・レイを、機体を保護するGNフィールドで防ぎきるや、すぐさまティエリアはフィールドを解除してGNバズーカを構えた。
GNフィールドを展開しつつGNバズーカに粒子をチャージするのは、どうしても時間がかかるが、ティエリアはこれを擬似太陽炉内部に秘匿してあるプロトン・ドライヴを稼働させる事で補った。
特機級機動兵器の動力源に匹敵するプロトン・ドライヴのエネルギーは、堤を破った濁流の如くヴァーチェの内部を流れめぐり、内側から装甲を弾き飛ばしかねない勢いだ。
たちまちのうちに高圧縮GN粒子とプロトン・ドライヴの混合エネルギーが、GNバズーカの砲身内で荒れ狂う無数の竜となって解放の時を今か今かと待ち望む。
同時にヴァーチェの背のGNドライヴの露出部分から放出されるオレンジのGN粒子の量が、通常よりも密度を濃くし、きらめきを強いモノに変えていた。
本来秘匿すべきプロトン・ドライヴを看破される可能性がわずかなりともある状況ながら、ティエリアが限定解放に踏み切ったのにはもちろんそれなりの理由がある。
ザ・データベースの首魁であるクリティックは、まだ地球圏に武力介入を行う段階ではないと判断しているようで、各勢力に潜り込ませたイノベイターとネルガルを介して地球圏の騒乱を煽っている。
地球圏三大勢力の一角であるDCの切り札クライ・ウルブズを壊滅させるのに、今回の戦闘は絶好の機会であったが、ティエリアにクライ・ウルブズ離反の指示が下されることは無かった。
地球連合の精鋭を大量に動員した地球連合艦隊と衝突させ、DCと地球連合の人材と戦力を磨り潰すつもりなのだろう。
今後もある程度、地球圏の騒乱のバランスを保つためには、今回の戦いでクライ・ウルブズにも連合艦隊にも完全に壊滅してもらっては、まだ困る段階ということか。
ティエリアも同胞たるイノベイターと、ティスやラリアー以外とは全力での戦闘を許可されている。
そう判断が下された以上、ティエリアにはその判断に従う以外の選択肢は無い。心の内に忸怩たる思いが、うっすらと積もりつつあってもだ。
ティエリアは納得のいかない思い故にか、腹腔に鉛を飲んだ様な気持ちのまま、先日のエクシア・デュナメス強奪戦の時と同様に自分自身とヴァーチェの力を最大限に発揮して戦っている。
だがそれでもヴァーチェに秘匿されたもう一つのガンダムと、その機体が持つある特殊能力と同等の秘匿性を持つプロトン・ドライヴの使用にまで追い込まれたのは、ティエリアの誤算であった。
ヴァーチェと自分の能力、それに信頼しているわけではないが――その実力に関しては認めているクライ・ウルブズの戦闘能力であれば、この大軍を相手にしても……そう考えていたのだ。
それが、こうまで苦境に追い込まれている。母艦はいくつもの被弾に晒されて船体の各所から火を噴き、味方のMSは一機また一機と櫛の歯が抜ける様にして撃墜されているではないか。
冷徹な仮面を被っているように見えて、その実、熱しやすい所のあるティエリアは、自身の予想がひどく甘いものであった事と、リボンズが言う所の下等種であるニンゲンに追い込まれている現実に苛立ちを禁じ得ない。
だから、ティエリアはその苛立ちをティエリアらしくない咆哮と共に吐き出した。
「躱せるものではあるまい。GNバズーカ、プロトン・バーストモード!!」
通常のGNバズーカのバースト・モードでも一撃で戦艦や空母を沈める破壊力を有する。それに(GN粒子のチャージが不十分でも)プロトン・ドライヴのエネルギーが加われば、その数値は一挙に跳ねあがる。
砲身を展開したGNバズーカから直径が五〇メートルにも届く極めて大きな光が、降り注ぐ太陽の光が蝋燭の明かりの如く見える輝きで放たれる。
その反動を抑え込むためにヴァーチェは空中でその巨躯を静止しなければならないが、プロトン・ドライヴのエネルギーを動員した砲撃中は、機体周囲に余剰エネルギーが放出され一種の防御圏が形成される。
並の出力のビームライフルのみならずリニアライフルやミサイルなどの実弾の類もシャットし、近づけばヴァーチェを取り巻く莫大なエネルギーに機体を灼かれる凶悪な牙を潜めた防御圏である。
MSクラスの装甲ではPS装甲やTP、VPS装甲装備機、あるいは特機級の重装甲でもなければ接近する事さえ叶わない。
ヴァーチェの放った途方もない威力の砲撃は、レオナとエウレカの活躍で防衛線に穴のあいた連合艦隊と、その前方を固めていたMS群を丸ごと飲み込む。
あたかも満たされる事を知らぬ飢えに襲われた獣が、暗黒の胃の腑へと連合艦隊を飲み込んだ様だ。
MSにとって骨格に相当するフレームや、心臓であるエンジン、脳にあたるコクピットを噛み砕く音一つなく、大気を灼熱させ、装甲を融解させ、果てに生じた爆発の音が連続する。
プロトン・バーストモードの砲撃は、ビームの範囲のみならずその周囲二〇〇メートルに至るまで莫大なエネルギーの余波を放ち、海面を蒸発させ、大気を焦がし、機体を消滅させてゆく。
DCの代名詞的な特機であるヴァルシオンの武装クロスマッシャーの最大出力と同等か、あるいはそれ以上の破壊力だ。クロスマッシャーは機動空母を一撃で沈める威力を秘めるが、プロトン・バーストも肩を並べるだろう。
チャージしていたGN粒子のほとんどを用い、プロトン・ドライヴから供給されるエネルギーの多くを消費した一撃は、八機のMSと二機のガルムレイド、三隻の駆逐艦を戦場から文字通りに消滅させる結果を残した。
砲身の冷却を急ぐティエリアは、撃たれた味方の仇を討つべく一気呵成に攻め立ててくるジェットウィンダムに向け、両肩の四門のGNキャノンの砲身を向ける。
左右の肩側部に位置していたGNキャノンがスライドし、肩の真上に動くと旋回して砲身を向ける。ティエリアは広く角度を取って集束率を低く設定し、GNキャノンの射線を拡散した状態にする。
さあっと水を撒くように放たれるGNキャノンは、ジェットウィンダムを貫く事もなく、幾筋化は無為に空へと消えて行くか掲げられたシールドに防がれ、あるいは軽やかに回避され、敵機に明確なダメージを与える事が出来ずに終わる。
ばらけた射線を取ったために並のビームライフル程度に威力が落ちてしまい、MSを撃墜するには威力が足りず戦果を残す事が出来なかったのである。
三機のジェットウィンダムが浴びせ掛けてくるビームライフルがヴァーチェの左肩、腹部に着弾し、機体を衝撃と熱量が襲う。揺れるコクピットの中で険しく眉根を寄せながらも、ティエリアは瞼を閉じる事無く迫る敵を睨み据え続けた。
複数の装甲内にGN粒子を循環させて強度を持たせるのが、太陽炉駆動機の特徴だが、とりわけヴァーチェは外見通りの重装甲機だ。元から装甲それ自体の硬度と厚みが違う。
今回はそれが幸いして立て続けの着弾にも、ヴァーチェは表面装甲を約二十パーセント劣化させるだけで済んだ。
操縦桿を強く握りしめて衝撃に耐えるティエリアが、ヴァーチェを取り囲む三機のジェットウィンダムを親の敵の如く睨み据えたまま、珊瑚細工かと見紛う唇を開いて叫ぶ。
「デスピニス!」
「は、はい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
大型MSほどのサイズながら標準的な特機を凌駕するパワーと装甲を有するデスピニスのエレオスが、打撃用の杖を振り上げた姿勢でヴァーチェの周囲のジェットウィンダムへと襲いかかる。
コクピットの中で、いつもの民族衣装風のロングスカート姿のデスピニスは、ティエリアにかあるいはこれから自分が攻撃するパイロットにか、悲しげに謝罪の言葉を呟いている。
おもわず目を見張る異形な外見のエレオスが自らに襲い掛かってくる光景は、ジェットウィンダムのパイロット達の思考を一瞬だけではあるが麻痺させた。
もしデスピニスの謝罪の言葉が聞こえていたなら、彼らは幼い少女の声に更なる困惑に襲われて、思考が正常な判断力を取り戻す前にエレオスに叩き落とされていただろう。
ぶん、と猛獣の唸り声に似た音と共に振り下ろされた杖がジェットウィンダムの頭部を直撃し、頭部は首まで埋没して紫電を散らすや、すぐさま爆発へと変わる。パイロットは痛みを感じる暇もなかっただろう。
この味方の犠牲によって残る二機が正気にかえって、奇怪な外見のエレオスめがけてビームライフルの照準を向ける。エレオスは杖を回転させて即席の盾にしながら、後方に下がって距離を取る。
イナクトやフラッグの防御装置であるディフェンスロッドと同じように回転するエレオスの杖は、放たれたビームを見事に散らして光の粒へと変えてみせる。
見た目からは全くその性能の推察もできないエレオスであるが、創造主たるデュミナスが宇宙の各所で手に入れた技術によって作り出されたその機体性能は、決して馬鹿に出来たものではない。
場合によっては、超電磁マシーンやガンダムファイターとも互角に渡り合う事が出来るだけの性能があるのだから。
エレオスに注意を惹かれたジェットウィンダム二機は、再びGNバズーカを構えたヴァーチェに気づいて回避行動に移るが――気付いた視野の広さと回避行動へ移るまでの速さは見事だった――光が放たれる方が早かった。
放たれれば当然光の速さであるGNバズーカの砲撃の方が早い。ABCシールドを掲げる暇もなく、二機のジェットウィンダムは光の奔流の中へと飲み込まれる。
容赦も慈悲もない光の中で、ジェットウィンダムは糸の切れた人形のように手足をあらぬ方へと折り曲げ、数秒とかからず原形を失った。
ゆっくりと息を吐くティエリアの目に、モニターに映し出されたデスピニスの顔が映る。いつもどこか儚げで、その小さな体に薄い影を背負っている雰囲気は戦場であっても変わらない。
あと十年も経てば道行く誰もが足を止めずにはいられない美貌が花を咲かせることを予感させる顔立ちには、薄衣の様な薄倖の雰囲気が不思議と似合う。
もっともティエリアは、普通の人間だったら、なんとか笑顔にしてあげられないかと気を揉むデスピニスに対してこれといった感傷を抱く様な事は無かった。
気遣うどころかデスピニスはイノベイターでこそないものの自分同様にデュミナスに生み出された存在、すなわち優越種であるから、そのような弱気な態度を取るべきではないと内心では思っている。
そのデスピニスは、やや伏し目がちにティエリアの身を案ずる言葉を口にした。相手を思いやる真心の籠った言葉は、聞いた者が自分を心から案じてくれるものがいる事を気付かせてくれる。
デスピニスを実の妹のように可愛がっているシンやセツコがいたら思わず微笑み返すか、頭の一つも撫でようとしただろう。心を許した相手への愛情表現が直接的なステラなら、躊躇せずに抱きしめるに違いない。
「ティエリアさん、無事ですか?」
「ヴァーチェに問題はない。君はどうだ」
「私も大丈夫です。エレオスも」
「なら構わない。それよりも手を休める暇は無いぞ。敵はまだまだ多い」
「はい。でも、もうずいぶん倒しているのに、まだ撤退しないなんて」
「確かにな。連合艦隊のMS、すでに三割以上を撃墜している。損傷した機体を含めれば全体の損害はもっと多い。普通ならとっくに撤退していて然るべきだ」
通常、三割の損害が出れば全滅の判定が下され、軍の部隊としての機能を維持できないものと言われる。この観点から見れば地球連合艦隊の損害は、常識的な軍隊からすれば許容範囲を超えている。
艦隊を構成する連合兵各員はもちろん常識をわきまえ、分別のある軍人ではあったが、この艦隊の組織と運用を命じたとある人物が非常識であったため、このような本土決戦じみた戦いの様相を呈する事になっている。
そんな事は露知らぬデスピニスは――姉妹的存在であるティスは知っていたしその人物を嫌っていたが――小さな小首を可愛らしく傾げて、疑問を口にする。
子供のいない夫婦が見たら、自分達にもこんな娘が欲しいな、と心から思う様ななんとも愛らしい仕草である。
「背水の陣、でしょうか?」
「そこまでではないだろうが、それなりに覚悟はあるという事だろう。なら向かってくる敵をすべて倒せばいい。いけるな、デスピニス?」
「は、はい」
GN粒子のチャージはいまだしだがプロトン・ドライヴの稼働率には何ら問題はない。
ティエリアはタマハガネの艦前方の空域で、迫りくる敵機の迎撃及び後方の艦隊へと長距離砲撃を続行する。
赤熱仕掛ける感情とは別に、戦闘に対するティエリアの思考はあくまで冷静――冷徹と言っていい。
同タイプのイノベイターであるリジェネもそうなのだが、ティエリアは割と感情をにじませた態度を取る人間臭い所があるが、いまは感情の激発が許される事態でないと理性で押し留めているのだ。
ティエリアの繰るヴァーチェは、パイロットの冷徹な思考を反映し、GNフィールドによる強固な防御壁を展開しながら、一方的な砲撃を加えて着実に戦果を重ねていった。
ティエリア、デスピニス、スティング、アウル、グローリー・スターの活躍によって空からの敵の多くを防げてはいるものの、海上を行く敵には迎撃の網の目をくぐり抜けられてしまっている。
ティエリアがプロトン・バーストを使用した時には、すでにシロッコのジ・OUがタマハガネの船体下部に潜り込んで痛打を浴びせていた。
かろうじてアルベロが抑えに回っているが、先程からタマハガネに取り付く敵機の数が徐々に増えてきている。
こちらもMAを相当数落とし、当初二十五隻あった地球連合艦隊の艦影も、いまは二十隻を下回っている。
単純に戦闘開始から海の藻屑へと変えたMSや艦艇の数で言えば、クライ・ウルブズの方がはるかに上回るが、蓄積したダメージが表出すれば即座に瓦解する危険を秘めているのはクライ・ウルズの方だ。
多少はクライ・ウルブズの空気に染まっていたのか、ティエリアはこれ以上クライ・ウルブズの隊員を傷つけさせまいと、心のどこかで焦っている自分に気づいてはいなかった。
眉間のしわを深いモノにしたままのティエリアにデスピニスから声が掛けられた。
「ティエリアさん、すごい速さで近づいてくる反応が」
「エクシアとデュナメスか、だが、この速度は? それに、あの光……」
エレオスのレーダーがとらえた反応は、紛れもなくネオ・ドライヴの超加速で戦域へと迫るエクシアとデュナメスであった。
そしてデュナメスの超長距離狙撃が、コーラサワーの乗るイナクトを撃墜した瞬間、ティエリアはエクシアとデュナメスの姿を見つけたのである。
はるか彼方に瞬く翡翠色のGN粒子の煌めきを。擬似太陽炉にはあり得ぬその輝きを。
*
重力制御能力の応用による超加速ネオ・ドライヴによる負担は、慣性制御機能を有するGNドライヴとテスラ・ドライヴによって大きく軽減されていた。
そのために、ネオ・ドライヴの超加速の渦中にあってなお刹那とロックオンの肉体に掛かった負荷は、実に軽微なものであった。
本来大西洋連邦へと引き渡される筈であったエクシアとデュナメスの今の装備は、セブンソードやフルシールドを持たないノーマル状態だ。
時間があればサキガケやアヘッドSCの装備を流用する事も出来たろうが、今回ばかりは擬似太陽炉からオリジナル太陽炉への換装作業のみで時間が追われてしまい、輸送機から強奪したままの状態に留まっている。
戦域への接近と到着に合わせてネオ・ドライヴを停止し、通常の戦闘速度に切り替えてさらに接近したところで、ロックオンはガンダムデュナメスを大きく減速させる。
目に見えて分かるわけではないが、ロックオンは全身が、髪の毛の一本一本に至るまで戦場の張り詰めた緊張の中に浸るのを感じる。撃って撃たれて、殺して殺されてを繰り返す世界に戻ってきたのだ。
短いが深く息を吸い込み、集中力を針の先のように細く細く、鋭く変える。集中力の針で貫いた相手を撃ち、無価値な存在に変える仕事を始めなくては。
刹那のエクシアがGN粒子で光の尾を曳きながら前進し続けるのに対し、デュナメスは額に隠されているスコープを露出し、GNスナイパーライフルを構えて狙撃形態への移行を終えた。
ネルガル製(ザ・データベース)のデュナメスにはハロを収納する為のスペースが無かったように、オリジナルデュナメスのコクピットにあったガンカメラが存在せず、ヘルメットのバイザーに小型のスコープが接続する形式だった。
その勝手の違いに、いま自分が乗っている機体がかつて搭乗したオリジナルデュナメスではないことを、改めてロックオンは理解したが、かといって狙撃の精度に支障をきたす様な事は無かった。
ロックオンは利き目である右目の向こうに、ビルトシュバインへと襲いかかる指揮官機仕様のイナクトを捉える。不可視の蜘蛛の巣に絡め取られたも同然のイナクトへ、ロックオンは引き金を引く。
アヘッドスナイパーカスタムはロックオンの望みを完璧に応えてくれた機体であったが、はたしてこのデュナメスはどうなのか。ロックオンはどこか試す様な気持ちが自分の中にある事を自覚していた。
青空を切り裂く圧縮GN粒子の光の槍が、見事、グリーンカラーのイナクトを撃ち抜いてみせる。
大気や散布されたアンチビーム爆雷の影響を受けつつも、MSを撃墜するだけの威力を維持したビームによって、イナクトは黒煙を噴き出しながら海面へと落下し、そこを横合いから現われた友軍のイナクトに拾われた。
ロックオンは息つく暇もなく次の敵機を照準内に捉えて、羽毛を扱う繊細さで、しかし大胆に引き金を引く。
独特の風切り音をたてながら放たれるビームは、さらにウィンダムやフラッグ、ティエレンの翼や機体本体の一部を撃ち抜いて戦闘能力を奪い、脅威を減らす事に成功する。
戦闘機動を取っている機動兵器が無数に飛び交う状況で、精密と称する以外ない狙撃の精度を維持するロックオンの技量は一流のものだ。
ハロによる補助制御が無い分、デュナメスの回避行動に不安が残るため、ロックオンは常よりも広く狙撃の距離を取っていたが、その狙いの正確さに問題が無い事は、次々と撃ち落とされてゆくMSの姿が証明している。
通常時はアンテナに隠されている狙撃用スコープの精度も、ロックオンの意図どおりに動いて応えるデュナメスも、どちらも満足のゆくものだ。
ロックオンは、七つ、と心中で数えてからエクシアを駆る相棒へと通信を繋ぐ。こちらの世界に来てからと、前の世界での付き合いから、刹那とのコンビネーションは阿吽の呼吸だ。
「刹那、狙撃は任せろ。構わず突っ込め!」
「分かった。背中は預ける」
淡々とはしているがロックオンへの信頼をかすかに滲ませて、刹那はエクシアの右腕に装着されたGNソードをライフルモードにセットし、ミンが指揮を執る頂武のティエレン部隊へと狙いを定める。
DCの新たな敵影に気付いたティエレン部隊が、三機一個小隊の編成を組んでビームライフルの交差射撃を撃ってくる。
エクシアはGNドライヴ+テスラ・ドライヴがもたらす圧倒的な運動性を活かし、重力や慣性の鎖に囚われぬ動きでかわし、ライフルの数射でティエレンを小隊単位で散らす。
戦闘開始当初三十機を数えた頂武のティエレンも、今はその数を二十三機にまで減らしている。セルゲイ・アレルヤ・ハレルヤがシンに拘束されているために、本来の連携や戦闘能力を発揮できていないせいだろう。
エクシアの介入まで追い込まれていたエルアインス二機も、ロックオンの狙撃によるサポートによって態勢を立て直し、ティエレン部隊から距離を取ってレクタングルランチャーやブーステッドライフルを構え直す。
刹那はGNソードをソードモードに切り替え、もっとも近い距離にあるティエレン三機へと斬り掛かる。エクシアが直接敵機を落とせずとも、こちらに気を取られた敵機を友軍が落とすチャンスは生まれる。
そう割り切り刹那は猫科の動物を思わせる目を細めてティエレンを見つめた。GNソードの刀身にGN粒子によるコーティングがなされ、その切れ味はティエレンの重装甲をものともしないものへと変わる。
モニターの向こうでぐんぐんと近くなるティエレンが、こちらに照準を合わせてビームライフルを撃つタイミングに合わせ、刹那はフットペダルを一気に踏み込んだ。
錯覚かもしれないが、刹那には敵機のパイロットの呼吸や心臓の鼓動が聞こえ、殺気が感じられたように思えた。
シンならば錯覚ではなく明確に知覚する所だが、経験値で劣る刹那にはまだ微弱に感じられるのみである。長く戦場に身を浸すか凄絶な体験をした者が体得する一種の危機回避能力の発露だ。
爆発的にエクシアの背から溢れるGN粒子が渦潮の如く放出され、ティエレンのビームはエクシアの残像を虚しく貫き、刹那は装甲に触れたビームの微細な粒子が立てる灼熱の音を聞く。
「はああ!!」
刹那の喉から迸る気合一閃!
銀の軌跡を描いたGNソードがティエレンの左胸部からそのまままっすぐ縦一文字に振り下ろされて、水を斬るかの様にして左足の爪先から刃が抜ける。
厚い装甲にも何の抵抗もなく降り抜かれたGNソードは、飛燕と化してひるがえり、エクシアが独楽のよう旋回するのに合わせて、陽光を反射して眩く輝きながら、右方向に居たティエレンの腰を薙ぐ。
ギン、とわずかに金属同士の触れる音が大気に響く間に、残る三機目のティエレンにエルアインス二機の射線が集中して火の玉に変える。
連合艦隊のパイロット達も精鋭であったが、DC側のパイロット達も精鋭だ。自ら窮地にあっても、敵に生まれた隙を見逃す様な真似はしない。
瞬く間に一個小隊を屠ったエクシアに周囲に展開していたティエレン部隊が、仇討ちとばかりに銃口を向けるが、ロックオンの絶妙な狙撃が割って入り、ティエレン各機の動きを鈍らせる。
狙撃者がいるという事は、単にその事実だけでも戦場にある敵にとって大きな重圧となる。こちらの手が届かぬ位置から一方的に命を狙われる事のプレッシャーたるや想像を絶するものだ。
しかも明らかに接近戦特化型の敵機が誤射などあり得ないと確信しているに違いない勢いで、斬り掛かってくるために、どうしてもフォーメーションを崩されてしまう。
敵機を自分の距離に捉えたロックオンと刹那の戦闘能力は、これ以上なく噛み合う機体との相性と、絶対の信頼と共に背を預けられる味方の存在によって、二倍にも三倍にもなり精鋭部隊を圧倒してゆく。
カーボンブレイドやビームサーベルを振り上げて、懐に飛び込んできたエクシアを切り裂かんとするティエレンの胸を突き、半身を切り裂き、エクシアは獣の俊敏さと人間の技術を組み合わせてティエレンを海面にばら撒く。
エクシアとデュナメスの参戦と活躍によって、ごく短時間でタマハガネほかカイゼルオーン、ジャピトスに群がっていたティエレンの数は激減したと言っていい。
右手に白銀に輝くGNソードを、左手には光の刃を形成するGNビームサーベルを握り、圧倒的な切断力を持つ二刀流となったエクシアを操る刹那は、モニターに映し出される大熱量に気づく。
連合艦隊の二隻のアークエンジェル級である。その快速を活かして大きく左右に分かれて弧を描き、タマハガネやカイゼルオーンを挟み込むつもりなのであろう。
前大戦中の各アークエンジェル級の運用データから、新しく建造されたAA級は対空火器の更なる充実とラミネート装甲の改良などが行われており、さしずめ移動要塞と評すべき戦闘能力を持つ。
被弾によって外殻装甲の劣化が著しく、Eフィールドの出力も低下しつつあるタマハガネでは、真っ向から撃ちあうのは何としても避けたい相手である。宣完クラスでは最強のローエングリンを持つAA級は脅威だ。
AA級に自由に動かれるとこれは戦況が一気に傾きかねないと刹那が危惧するのと同時に、いつもよりわずかに厳めしく引き締められたエペソの麗貌も映し出される。
『遅くはあったがご苦労。刹那・F・セイエイ』
「艦長……アークエンジェルが動いている。指示は?」
指示をしなくても自分の判断で動く、と刹那は含みを持たせた。
余計な詮索をせずに必要な事だけを口にする刹那にエペソは、ふむ、と形の良い顎に細長い指を添えて悠長にも感心している。
銀河中でメルトランディやゼントラーディ、宇宙怪獣他未開の文明を相手に戦っていたのは伊達ではないようで、大概の危機的状況には動揺のどの字も覚えないようだ。
艦橋に居るクルーにしてみれば頼もしいことこの上ないが、時折状況が理解できていないのでは――つまり頭が足りないのでは? という具合に不安になる事もある。
『アークエンジェル級の機動性を活かして左右から挟み込むつもりのようだ。灰色のアークエンジェルは貴公に任せる。何としても落とせ』
「了解。しかしタマハガネだけで大丈夫か?」
『傷を負おうともむざむざ負ける様な無様な真似はせぬ。貴公は貴公の役目を果たせ』
不敵なまでの自信ばかりは変わらぬエペソの発言に頷き返し、刹那はエペソとの通信を終えた。
刹那とエクシアが首を巡らせて睨み据えたのは、灰色のアークエンジェル級九番艦ガルガリエルだ。ガルガリエルとは座天使の位階にある天使を管理する二つの存在の片方ガルガリンの語源となった天使の名である。
九十六人の部下を持ち、対となるオファニエルが月を担当し、車輪を意味するのに対してガルガリエルは太陽を担当し、天球の意味を持つ。
ミカエルがガヴリエルと言った最高位の天使の仕事の補佐を行う、いわば中間管理職的な地位にあった天使だ。連合軍上層部から見た場合、ただしく中間管理職にある艦隊の艦船としてはなかなか適したネーミングだろう。
波風を立たせて右の弧月を描くガルガリエルに向かうエクシアを、ガルガリエルに続くイージス艦と、先程まで交戦していたティエレンの一部が銃口と砲口を向ける。
背後から迫りくるティエレンはデュナメスの狙撃に任せて、刹那は放たれた対空溜弾やミサイル、単装砲、バリアントが構築する対空砲火の雨の中へと機体を飛びこませた。
特に空戦能力を有するMSの台頭を考慮し、対空砲座であるイーゲルシュテルンを過剰なまでに装備したAA級の張り巡らすオレンジの火線は、その眩さで網膜に穴が空きそうな位に激しい。
その中へと躊躇の欠片も見せずに飛び込む行為は、度胸がある、という言葉で一括りにするにはあまりに大胆で、無謀ともとられかねぬ突撃だ。いや見る者の十人に九人は無謀だと叫ぶだろう。
海面に明確に機体の姿が映る位低く高度を落とし、着弾した砲弾が立てる水柱をかいくぐる中、刹那は事前にビアンに説明された精霊兵装というあまりにもファンタジーな兵器の使用を決意する。
知らされた通りの性能であったならば、精霊兵装は極めて強大な効果を発揮する兵器だ。物理法則に乗っ取らない類の兵装である為、蓄積された実用データが全くなく、また実績もない為に信頼性がこれっぽっちもない事が欠点だ。
見る見るうちに護衛艦群とガルガリエルとの距離が縮まる中、刹那は発動キーとなる文言を叫びながら、エクシアを回転しながら跳躍させた。
登録された刹那の音声と固有のプラーナ反応を確認し、魔術専用補助AIが精霊兵装発動プログラムを起動させる。
GNソードの刀身表面に青い魔術文字が数万単位で浮かび上がり、冷厳な光に輝く。欧州、南米、暗黒大陸と呼ばれていた頃の原始アフリカ魔術、南洋諸島の土着の呪術、中華の歴史が秘める仙道術などなど。
血と闇と呪詛と年月が育んだ魔を行く道の技術の限りを尽くして統制され、力を束ねられた精霊の力が、不可視の奔流となってGNソードから溢れだす。
検査の結果判明した刹那と最も相性の良い四大精霊は『水』。魔装機神の搭乗者となれるほどではないが、頭一つ飛び抜けた相性の良さから精霊兵装の属性もまた『水』となり、起こす現象もそれに由来したものとなる。
GNソードの刃から噴き出る冷気に白く染められた霧が堰を破った様に溢れだし、霧に触れた海水が瞬く間に凍ってゆく。水の魔装機神ガッデスの持つ広域攻撃兵装ケルヴィンブリザードに類似した兵装なのであろう。
事実、ヨーロッパで建造されたガッデスに装備されるはずだったテューディ版ケルヴィンブリザードの試作型に相当する武装なのである。
「アイスグラウンド!」
GNソードから吹き荒れる冷気の風はたちまちの内に海面を凍らせてゆき、数百メートルの範囲で凍りついた氷の中にガルガリエルと護衛艦も飲み込まれてゆく。
飛行中であったガルガリエルにも氷柱もぐんぐんと伸びて行き、特徴的な馬蹄状の船首部分に突き刺さり、主翼や船艇の表面を凍らせて氷の中に閉じ込める。
飛行しているガルガリエルでさえ氷山に船体下部を突っ込ませた様な状態になっているのだから、海上を行く護衛艦などひとたまりもない。
船体の至る所が氷に覆われ尽して、繊細な電子機器が致命的なダメージを負う。艦橋までもが氷山の中に閉じ込められ、完璧に動きを封じられている。
ケルヴィンブリザードは絶対零度の冷気によって分子の結合を崩壊させてほぼすべての物質を灰塵と化すが、エクシアのアイスグラウンドはそこまでの攻撃性は持たず効果範囲内の敵機を凍結させて動きを封じるものだ。
だがMSの過剰火力によって容易く艦船が沈む昨今の戦争において、足を止められる事は致命傷に容易く繋がる。
ガルガリエルの護衛に着いていたMSの半数ほどもアイスグラウンドの氷銀世界に飲み込まれ、腰から先だけを氷柱の外に出している者や、全身を飲み込まれている者、左半身を飲み込まれている者と様々だ。
身動きが取れる取れない以前に突然赤道付近の海域に氷銀世界が生じた自体二、アイスグラウンドに囚われた者達は理解が追い付かずに咄嗟に思考が停止する。
魔術に類する類の兵器はいまだDCしか運用していないから(直に目にしているものはDC内部でも少数だ)、他国の軍人に魔術的な攻撃に対する耐性や知識などあろうはずもないから、当然だろう。
アークエンジェル級のラミネート装甲のビームに対する耐性は、従来のバッテリー機に対しては効果絶大、プラズマ・ジェネレーター搭載機のビームに対してもそれなりに有効だ。
GNソードのライフルモードは標準のビームライフル並の威力はあるが、ラミネート装甲相手では多少時間が必要だろう。
艦橋やエンジン部分、主砲を狙い撃ちにすれば轟沈も可能だが、早急に敵戦力を駆逐する必要があると判断した刹那は、精霊兵装に続いてオリジナル太陽炉に増設された新機能の使用に踏み切る。
ヴァルシオンのものを小型高性能化したグラビコン・システム『盤古旛』とGNドライヴによって、ガンダムの形をしたヴァルシオンと言ってもよいほどの重力制御能力を得たエクシアの周囲に、重力異常が生じ始める。
増大化し通常とは異なる方向に生じた重力によって、GNソードの刀身は陽炎の鞘に包まれ、可視光線が歪んでゆらゆらとたなびいているかのように映り出す。
エクシアはGNソードを突き出した右腕に左腕を添えて、多大な負荷のかかる右腕をがっちりと支えた。
「すべてを斬り“潰す”」
短い語句に秘められる必殺の意思。デュナメスに与えられたブラックホールキャノンに対し、エクシアが得た重力兵器は――
「グラビトンブレード!!
全長一キロメートルにおよぶ刃状の重力場グラビトンブレード!
最大展開した斬艦刀・星薙ぎの太刀には及ばぬものの、グランゾンのグラビトロンカノンを上回る三〇〇〇Gの加重力は、GNソードの刀身を基部として漆黒の刃に形を変えて、ガルガリエルの馬蹄部分をまとめて貫く。
動きを止められたと――どのような手段によってかは不可解だが――驚きながらもその事実を認めていたガルガリエルの艦長は、乗艦の船首部分を斜めに貫く黒光に驚愕し、ついでそれが一気に振り下ろされた事に叫んだ。
「さ、サーベルだとお!?」
瞬間的に加えられた三千倍の重力によって瞬く間に圧壊したラミネート装甲は、斜めに振り下ろされたグラビトンブレードに抵抗する事叶わず、あえなく斜めに切断されてゆく。
「うおおおおおお!!」
グラビトンブレードの刃はガルガリエルの船体を斜めに両断するのみに留まらず、さらにその下で氷の世界に閉じ込められている護衛艦群にも襲い掛かり、超重力の刃は次々と新たな犠牲者を生みだして行く。
GNソードから伸びるグラビトンブレードの刃は黒い災いとなって氷に囚われる艦艇群の鋼の装甲を紙の様に容易く貫き、氷山ごと斬るのと押し潰すのを同時に行う。
ついに最後の艦を斬り潰し、グラビトンブレードの刃が漆黒の雪の様な粒子に変わって消えた時、砕け散る氷と共にアークエンジェル級九番艦ガルガリエルは、行動を共にした護衛艦と海の底へと沈み始めていた。
自らの得た力の強大さに、刹那は呆然と仕掛けるが、いまだ自分は戦場にあるのだと気を引き締め、再びGNソードを構え直して残る敵MS部隊をモニターに映した。
「エクシア、残る目標を駆逐する」
既存のMSにはありえぬ超高速度で接近してきたDCの機体によって、急激に数を減らし、ただでさえ常識の範囲では目も当てられない損害が加速度的に増して行く状況に、艦隊の指揮官は思わず天を仰いだ。
黒く染められた地球連合の軍服と、顔の上半分を覆う金属の仮面とそこから零れる波撃った金色の髪――ファントムペインに属するネオ・ロアノーク大佐だ。
艦隊旗艦の艦橋に設えられたオブザーバー用のシートに腰かけた姿勢のまま、予想を上回る損害に対して数秒間、現実から目を逸らしたが、溜息一つを吐いて気を取り直し、顔色が優れない空母のスタッフの顔を見渡す。
(無理もないか。構成国の各地から引っ張ってきた精鋭で揃えた部隊がこの様だ。今後の軍全体の作戦にどんな支障が起きるか分かったものじゃない。盟主殿のご意向に逆らえないとはいえ、これはひどい)
ロアノーク艦隊の指揮官としての立場上、ネオは表情にこそ出さなかったが(仮面を被っているのでもともと分かりにくいけれども)心中ではさっさと基地に帰って、安酒でも煽って眠りたい気分だった。
引き連れている将兵たちを無事に帰してやりたいという思いだって、人並みにはある。確かにDCの息の根を止めるのに、クライ・ウルブズの撃破欠かせぬ要因であるが、それにしたって被害が大きすぎる。
虎の子のアークエンジェル級の内ガルガリエルは、増援の機体によって轟沈させられ、残る一隻も手負いのタマハガネの猛烈な火砲と神がかった回避機動を相手にして、さんざんに撃たれている。
小型のMSらしき白い機体とタマハガネ前方空域に陣取っている砲戦機であるデカブツガンダムの所為で、艦艇の損失も馬鹿にならない。駆逐艦、空母、イージス艦と艦種を問わずに大小のダメージを負っている。
ネオが乗艦している機動空母は幸いにしていまだ無傷ではあったが、至近弾が増え始めいつ被弾するか分かったものではなかった。
ネオを糸で操るロード・ジブリールは、なにがなんでもクライ・ウルブズを斃せと息巻いて告げてきたが、その命令に従うのもそろそろ限度ではあるまいか? ネオは退際を捜しつつある自分に気が付いていた。
そして、その退際を見定める切っ掛けとなる事態は、さほど時を置かずしてネオにもたらされた。ただし、それは吉報とは到底言えず凶報に類するものではあったが。
「レーダーに感! ガルカシュ後方二五に熱源反応――これは、ザフトのミネルバ級です!」。
「青森湾でさんざん追っかけて来た新型艦か。オトモダチの危機に颯爽と登場ってわけか。ミネルバ単独で動くとは考えにくい。
ソナー手、海の下にもザフトの潜水艦が居る筈だ。見逃すなよ。シャニのアビスにも警戒するよう通達しておけ」
DCに奪われたネルガルの新型二機とザフトの精鋭ミネルバの登場と、被害はともかくとして勝ちの目が見えていた今回の戦いの状況がひっくり返りつつあることを、ネオは明敏に悟っていた。
(どこで勝利の女神の機嫌を損ねる様な真似をしちまったのか。ともかくこのままだと天秤が向こうに傾くな)
――つづく
今回短いですがここまでです。三十話ならとっくに今回の戦闘が終っているはずなのに、トホホ。
ご感想ご指摘ご助言いただければ幸いです。ではでは。
総帥乙です、しかしなんというトンデモ・・・
>青森湾
ホンモノの青森湾なのか、アーモリーワンなのかどっちだろう
ここだとどっちでもいけそうだから判別でけんww
とにかく乙っしたー
>>353 テレ東のサッカー漫画が元ネタでございます。以前のキャラクター図鑑で使うかもと言っていた奴ですね。
やりすぎか、と自分でも判断しかねた代物でございます。
>>354 >青森湾
・・・・・・これはですね、マヌケにもアーモリーワンで機体を強奪されたザフトに対する蔑称ということで考えていたのですが、青森の人に怒られるかしら? と思ってアーモリーワンにもどすかどうか考えていたら忘れてそのままにしていた部分ですね。私のミスです。
とりあえずアーモリーワンのことでございます。
私は、止められないと暴走する人です。自覚はありますが、どうにも止まらない人なの流石にやりすぎだと思われたら、どうか止めてください。
最近自分がやりたい放題過ぎると不安なのです。よろしくお願いします。そしてご感想ありがとうございました。
総帥乙
しかし、トランザムしてもやる事地味だったエクシアがこんなトンデモになるなんて誰に
予想できたかって話ですよねー
その勢いでデュナメスが重力砲での精密射撃なんてした日には敵が可哀相過ぎる
総帥、機体を魔改造しすぎですwwww。もはや総帥は完全にリミッター外れています。
でもそこにシビれる、あこがれるwwww!!
まだ序盤なのにこれではシン・ステラ・セツコトリオの後継機は想像を超えたトンデモなものになりそうです。
>私は、止められないと暴走する人です。自覚はありますが、どうにも止まらない人なの
>流石にやりすぎだと思われたら、どうか止めてください。
えー
折角暴走してオモロイのに止めなアカンの?(´・ω・`)
どこぞの黎明期のラノベみたいに作者の友人まんまのキャラ連中が暴走して本編乗っ取って
肝心のレギュラー陣を勝手に食ってしまって話がgdgdになるとかでなければいいと思うけど?
総帥乙ー
なんてこった…青森湾なんて地元じゃないか…
エクシアつえぇw
刹那もシン同様剣に生きるのかしら。
というかまだネオ他3バカもいるんだよね…なんという決戦…
次回も楽しみにしてます
乙ー
刹那の「潰す」は先週公開の映画からの声優ネタ?
暴走に関しては、掘り返すのもなんですけど夏みたいな他作品を踏み台とかやらん限り大丈夫かと
361 :
通常の名無しさんの3倍:2009/12/21(月) 01:41:29 ID:vCNpeyN7
ヴァルシア、強っ!
もうスパロボはいいっしょ
>>「さ、サーベルだとお!?」
四年早いよwww
誤字×「グラビトンブレード!!
○「グラビトンブレード!!」
×ネオを糸で操るロード・ジブリール
○ネオを裏から糸で操るロード・ジブリール
まだ他にもありそうデス。あと353でサッカー漫画と書いていますがサッカーアニメですね。
あとは大雑把にお返事を。
エクシアのトンデモかについてご感想いただいておりますが、私はチートをそれ以上のチートで叩き潰す作風ですので、これくらいの性能でないと今後やっていけない、それ以上の敵がわんさかでるためです。
次回で言及しますがMSで使用するには消耗が激しいので、多用できる武器ではありません。単純な威力ならWガンダムのバスターライフルやサテライトキャノンの方がはるかに凶悪ですし。
>>刹那もシン同様剣に生きるのかしら
う〜ん、刹那はどちらかというとガンダムに生きてガンダムに死ぬキャラかなと思います。ベクトルは違いますが情熱に掛けてはシンより上かも?
>>刹那の「潰す」は先週公開の映画からの声優ネタ?
いえ、そちらは未見です。重力を刃状に束ねた武器でして、斬ると押し潰すを同時に行う武器ですので[斬り潰す]と表現しました。
>>もうスパロボはいいっしょ
スーパーロボットみたいなリアルロボットはもういらないという事でしょうか? 特機並み打撃力をもったシンパルスとかありましたし、MSと特機の境目が曖昧になっているかもしれませんね。
なにはともあれ、ご感想ありがとうございます。私のお願いに関しましてもご返答いただきましてありがとうございます。きっちり最終回を迎えられるよう努力いたしますので、今後もよろしくお願い致します。
ところで総帥
スパロボオリジナルの敵勢力はまだ増やすんですか?
あと物語は種死編の二部で完結するんですか?
>>365 結構前から私の処理能力の限界を超えてつつあるので伏線はった勢力以外は出ないはずです。たぶん。
顔見世していない皆さんご存知のラスボス軍団と敵幹部連中と味方もちょこちょこでます。そんでざくざく死にます。最終的には目指せαナンバーズと良い勝負! な戦力になるはずです。
新しいスパロボが出るたびに話が長くなっていますが、スパロボ学園とNEOとSC2には手を出していないのでそこら辺は出ません。Wil持ってないですしSCはどうも苦手なもので。
種運命編で一応の終りを迎える予定でございます。その後の世界を外伝とかそういった形で投下させていただきたいとは思っています。現在は二十年後、外宇宙に進出した人類のとある船団の話は考えています。
C.E.世界出身に設定を変えたハーケン、神夜、錫華姫とアシェン、カルディアにゼノサーガ完結後のKOS−MOS、ラゼンガン付きロージェノム、宇宙を漂っていた増田照雄とエセルドレーダ、本編終了後のバスターマシン7号ことノノを主人公陣営にしたお話。
おおざっぱなあらすじはフロンティア船団に所属するブロウニングファミリーが調査に出た先で空間転移に巻き込まれて、マブラヴ世界だの種世界だのに転移して大暴れするプロット。スレ違いだなと気付いたので一旦停止しています。
C.E.世界出身の神夜や鈴華姫って相当変な人のような気がするんですが……
つかあーいうのがウジャウジャいる隠れ里みたいなのがあるんか、この世界の日本はw
だって異名とかじゃないガチの魔術師とか普通にいる世界だし、このCEはw
元のC.E.にとってこの世界は戦国BASARAみたいなもんだと思うwww
> マブラヴ世界だの種世界だのに転移して大暴れするプロット
Toward Star Worldsと時空管理局もよろしゅうー
ミストさんによるこの地球の評価が見たいぜ!
>>370 管理局は総帥のトラウマほじくり返すからやめれ
>>367 幻想郷でもあるんじゃないだろうか
アーカムシティはあるっぽいし
きっと火星にはネオヴェネチアが・・・
理想郷にスパロボα3の勢力がBETAと戦うクロスがありましたが……ビアン総帥が一人転移しただけでも随分違う事になりそうだな。
どうだろね
あの作品はケイサル戦での損害と政治的縛りがαナンバーズを拘束することで
パワーバランス取ってる世界だから。
ビアンならこの期に及んでまだ主導権争いしてるあの世界を支配して人類の力を
対BETA戦に傾注させることを厭わないだろうから。
αナンバーズがその独走をよしとするかどうか。
αシリーズではなかった対ビアン戦があの世界で起こりかねん。
蚊帳の外のBETA涙目w
最近はよく思うのだがαナンバーズのやり方も本当の意味で「正しい」のかは微妙だと思う。
時と場合に拠っては総帥のやり方のほうが良い効果を生む場合もあるだろうし。
極端な例だけど、もしαナンバーズの敵対勢力のトップが銀英伝のラインハルト閣下
のような極めてマトモな存在だったらαナンバーズは市民からの支持を失い完全に孤立すると思うし、実質ケイサルをしのぐ最強最悪の敵になると思う。
実際に連邦政府などの連中よりもはるかに良い政治をするだろうし。
最良の独裁者、か。
だが問題は、最良の独裁者は最良の施政をするかもしれないが
人間は変化し、死ぬものだ。たった一人により掛かる危うさは明白に明らか。
連邦の統治体制は腐敗しているかもしれないし、自由惑星同盟も同じくだろうが
だが、全体がより長く生き続けられるかもしれない。
>>378 悪貨(愚民)は良貨(名君)を駆逐するって言いますしね。
結局、完全な平和を求める方が間違いということか……完璧な人間なぞ存在しえないと同じで。
そういう政治におけるシステムの矛盾や、長所、短所は戦争物では避けて通れない
問題。無論、それだけを描き続けるのはガンダムだけでなく、TVアニメとしては
失格なわけだが種の場合、出てくる政治家がどいつもこいつも・・・。
切り札が失われ、本土を守る最終要塞が陥落寸前の種最終話の状況から、独立戦争としてはほぼ勝利と言っても良いほどの休戦条約まで持ち込んだアイリーン・カナーバとその取り巻きの外交能力はガチ。
……いや、マジで。 相手が条約締結前に南アメリカとユーラシアで内輪揉めしてたとは言え、どうやったらあそこまで出来るんだ?
理想なのは市民が自ら立ち上がって平和を求めるってことなんだろうなぁ
種死では議長の発言鵜呑みにしてロゴス関係者のリンチ行われてたけど
それもどうよと思うし
>>380 作家(脚本家)は自分より頭の良い人物は書けないもんだ
嫌味でも皮肉でもなく、マジで
総帥が考えてらっしゃる20年後な外伝も楽しみだ…
>宇宙を漂っていた増田照雄とエセルドレーダ
アレ?
総帥、何かとんでもないバランスブレイカーの名前があるのは気の所為かい?
>>384 旧神まで一緒なら兎も角、二人セットなら直前直後と大して変わらん戦力だぜ
いや、どいつもばっちりバランスブレイカーなんだがな、これが
>>384 何心配ない
普通の思考なら「主人公勢が強過ぎるな……制限をかけて弱体化させよう」となるところを、
総帥の思考だと「主人公勢が強過ぎるなら、敵をもっと次元の違う化物にしちゃえばいいじゃない」だからw
テリオンとエセル……アルがいるかは微妙だが、アーカムの片隅に貧乏探偵は居そうな気がする。
はっ、まさか覇道鋼造はループしたビアン総帥?! ならあのチートっぷりも納得だ。
>>386 「主人公勢が強過ぎる……きゃっほーっ!」
という思考のもいるよな、誰とは言わんがw
完璧親父「ちょっと旧神ネタに困っている人がいてもクトゥルー話なら慣れてます!
任せてください!!」
あんたはそのクトゥルー神話のラスボスだろうがwww
ってそういや世界を繋げた結界に封印してるアザトースを少しとはいえこの世に
引っ張りだしてんだよな>>南極のやつ
あれは似ているからそう言われてるだけで、明確にアザトースだと明言されたわけではないと思うよ
主人公の名前がラドクリフなのもただの偶然ですよね!!www
完璧親父ってケイサルの兄貴以上なんだって?
うかつにクトゥルーとのつながりを明言するとデモベみたいにクトゥルーヲタに叩かれる
親父と兄貴と銃神が揃ったら比喩じゃなくて宇宙の法則が乱れるな、マジで・・・
コキムラ「乱れたらいけないので宇宙壊しますね」
この宇宙も破壊されてしまった!おのれディケイド!
シンや刹那がリボンズを追って次元を越えて各ガンダム世界やスパロボ世界を巡る
なんて夢を見た
ディケイドって歴史的につながってる初代からZXまでを別々の世界として描いてたんだっけ?
それだとUC作品も一作品ずつ別にできるな
>>393 そもそも完璧親父は時の流れの中に存在する滅びの概念そのものなので
ケイサルやユキムラやダークブレインみたいに
「倒しました、めでたしめでたし☆」で終わらせられるもんではない。
Dでも門から出て来れなくしたから「今回はやられずに済んだ」ってだけ。
スパロボ史上で唯一、味方が倒せなかった敵。
いつどこの星に現れるか分からない天災みたいなもん。
>>398 セイラさんとイチャつくアムロ、ジュドーに助言しないカミーユ、巨神と出会うジョドーetcですね分かります。
ミネバなんて世界毎に男が違うんだぜ
確認されているだけでも、タクナ、ジョドー、バナージの三人もいやがる
逆シャア世界も劇場版とハイストリーマー版とベルチル版とエヴォルヴ版があるんだなw
つ 岡崎ファースト
(アトリームじゃあこんな戦いは起きなかった……本当に地球には守る価値があるのか……?)
霧はイラネw
いやぁ、楽しいスレでしたね……
ちとマジレスしてみるが実際問題Kの味方オリ共の情緒不安定さにこじつけをつけるとすると
やっぱりル・コボルの欠片が原因かな? ライターのせいと言えばそれまでだが…
>>407 いや、エルリックさんorレムの発言だと欠片の有無は本人や周囲への影響は関係しないと言ってた気がする
欠片を活性化させるために対象文明への揺さぶりをかけることをするみたいにも言ってた気がするが
ミストの『暴徒鎮圧には慣れてる』といういささか矛盾を感じる発言も
そうしたイディクスの活動によって世情不安が煽られて頻発した事例だったのかもしれない
まぁKのクライマックスを見ればプラネットクライシスの予兆だけでもパニック起きるには十分だろうけれど
今更だけどKは種・種死なんぞ出さずに真ゲッターとGガン出しとけばよかったと思う。
インベーダーVSフェストム!!
侵蝕と同化の戦い!! どちらが勝とうとも人類に未来は無い!!
……ついでに言うと偉大な勇者のいないために合体攻撃のできないマジンガーはお荷物にしかならない……。
アトリームにもSSスレはありましたよ…地球のSSスレとは比較にならないほどの巨大なスレがね…
そういえば驚いたんだけど某ゲッターダークネスのゲッターて「アンチ」ゲッター線という「ゲッター線を破壊する」エネルギーが動力源だったことに吹いた。
絶対にありえないだろうけどダークネスとTV版ゲッターが同時参戦したら偉いことなりそう……。
>>409 最後はインベーダーとフェストゥム双方の特性を併せ持った凶悪な新種
インフェトゥム誕生で次回に続く、と
あれ?なんかどっかで聞いたような名前になってしまった
>>409 ファフナーか、あれは種と同じキャラなのに脚本が違うとああいう風に出来るという好例だったな
>>413 ファフナーのおかげで平井株がやや回復しかけたところに
オリ○シスでまたあのザマだよ(メインヒロインのビジュアルから不安と拒否反応は大きかったが、それ以上に主人公が・・・)
ラインバレルは平井イメージからかけ離れた印象を受けるのだが・・・
>>414 ラインバレルは原作あるからね。
平井版城崎はエロかったが
ファフナーといえば劇場版をやると聞いたな
これはもうスパロボで劇場版大戦やるべきだ
マクロスF、アクエリオン、エウレカ、00、エヴァ、ファフナー、グレンラガン、ヤマト
劇場版カミーユ「シン以外にもシンジとレントンとアポロと一騎とシモンはまかせろー!古代君は無理だー!」
>>415 大変よくできました、です
敵側ノドス(男衆)も個性的だったね
>>417 エスカフローネとパトレイバー、劇ナデをディスるなんて……
ガンダム
08小隊
0083
ゼータ
逆シャア
F91
エンドレスワルツ
∀
マジンガーZ
グレートマジンガー
グレンタイザー
ゲッターロボG
割といつものメンツじゃないか?
「ごく最近の映画化作品」大戦って事じゃないの?
>409
R−TYPEもついでに混ぜたらどうだ。
新作だと掘削機に一瞬で殲滅させられたり
制御できるはずが制御できずに暴走したり
マップの半分が敵で埋まっているけど。
(くそっ……なんだってこんな流れになるんだよ……こんなんじゃ俺、地球を守りたくなくなっちまう……)
スクコマってスクールコマンダーの略だと思ってた自分が(ry
なんでスパロボで学園物やるんだろうと……
学園物やったじゃないか
>>426 そういえば学園ものはどうでした個人的に地雷臭い気がするのですが……。
スパロボ学園はストフリ、バイオゾイドがめちゃくちゃ強かった。
内容としては2000円ぐらいが妥当なゲームだった。
個人的には最近K、学園、ネオと地雷続きの気がする。
今度の最新作はPS2はありえるのだろうか、もう携帯と次世代に流れはシフトしているし……。
PSPでもマップを3Dにこだわらなければいけるような気がするし……。
地雷(笑)
ウインキー時代に比べたらどれもまだマシだっつーの
432 :
431:2009/12/27(日) 12:16:59 ID:???
「まだマシ」じゃねえや
「遥かにマシ」だ
NEO批判ってまずやってもいないんだろーな
NEOはよくできてるんだが、Wiiとポリゴンとあの参戦ラインナップで色眼鏡かかっちゃうんだろうな。
>>431 ウインキー時代を否定する奴って
UCを否定する種厨みたい
ウインキーをUC、種をそれ以降に例えて
ウインキーを神格化とかウインキー厨はどうしようも無いな
キャラ崩壊やリアル偏重のバランスなんて今のに比べたら極悪レベルだ
>>434 SDでポリゴンはやはり厳しいでしょうね……やるならリアルサイズでないとだめかも知れません。
まだ2Dの方が作るのは大変だけどいい戦闘シーンが作れている気がするのはきのせいでしょうか。
>>437 それは偏見だと思うぞ
やって見ればわかると思うけど、NEOではそれなりに良かった
今後の発展次第では十分に行けるよ
>>436 神格化とかどこに書いてるんだよ
頭わいてんのかこいつw
ポリゴンでスパロボ作りたいなら、フロムに依頼すれば良いんじゃね?バンプレストは
その結果がACEだ。悪くはないんだけどなあれ
いっそコナミと手を組んでZOEベースでACEっぽいの作ってくれんかなぁ…
関係を修復できればANUBISやドロレス、グレラガの参戦に希望がでるんだが
コナミとバンプレの問題と言うより
コナミが完全に業界で孤立してるからな
自業自得だが
>>436 リアル偏重のバランス(笑)
4次のマジンガーやダンクーガとかピンポイントで
特定のユニットが弱いことはあったけど
基本スーパーロボットの火力が無いと押し切れないんだけどねww
4次のダイターンやゲッターとか神ユニットなんですがww
F完に至っては「必中」持ちのスーパー系以外は敵のボスクラスには
攻撃がかすりもしないからな
NTをLV99くらいにすりゃ当たるけどw
ネオグランゾンを地下駐車場に呼び出してガンタンクでボコるんですね、わかります
MS乗り唯一の必中持ちがキースだったな
Gディフェンサーに乗せて結構役に立った
F(含F完)のバランスが偏ってるなんて
「アムロごとき〜」だの「一年戦争」
だののプレイ動画を見てたら全然(無論ピンポイントでキツイ部分はあるが)
難しそうに見えないんだが……
昔のスパロボが難しいと言われると違和感があるな確かに
ウィンキー時代の難易度がヤバいとかネットで言われてるの見て、プレイして全く苦労した記憶が無いので首を傾げざるを得なかった
同時代のゲームに比べればスパロボは昔からヌルゲー
ゲーマー自慢はうぜえよ
こっちは好きなロボットアニメが出てるからスパロボやってるんで
ヌルゲーマーで大いに結構
>>449 ただコンプリートボックスは改造上昇度が低くて辛かった。
リアル偏重バランスとかゲームバランスを根拠に
ウィンキー叩こうとしていたのに
それが間違いだとばれた途端
「ゲームバランスなんかどうでもいい」(笑)
>>452 435=450
まったく的はすれどころか正反対なんだがなw
ウインキー時代のシナリオの糞っぷりはスルーなんですね皆さん
>>453みたいに的外れな同一人物認定もあるし
F完でウイングゼロにのったカトルに全滅させられたのはいい思い出です。
F完のゼロカスは最強過ぎ。
ついでにこっちみんな感もハンパじゃない
>>457 確かにスパロボであのこれでもかってカメラ目線はインパクト強いわぁw
459 :
通常の名無しさんの3倍:2009/12/29(火) 16:38:37 ID:dQT/qtrC
F完のゼロカスはそれ以外のW勢があまりにも使えないからなおさら強く感じたな
ゲストぐらいならザコも一機で全滅できるし
でもルート分岐で片方しか仲間にできなかったのは残念だった
64のウイングゼロも強いぞ
金がかかりすぎて泣けるけど、それに見合う強さをもつ
>>454 だから、認定じゃなくて本人なんだよw
規制のせいで亀レスになったよ
>>461 つまり435=450=453=461と言う事ですね、わかります
>>454 そもそも第2次(初代は別枠)〜第4次ぐらいまでは
ゲーム業界そのものが未成熟でゲームにも壮大なシナリオが求められてなかったろーが。
「1stガンダムってネモにも劣る性能だよねpgr」って言ってるようなものだぞ。
新は擁護不能。なんで素人社長に脚本させたのか理解できん。
F(完)はバグまみれで当初予定されてなかった分割販売だとか
阪田が病死して代理に新人投与とかウィンキーの企業体質の問題であって
阪田の脚本そのものは悪くない。
(尤もウィンキーの企業体質は擁護できないし、切られても仕方ないとは思う)
むしろ原作再現五月蝿くなった今よりも
救える人の数はウィンキー時代のが多かったと思うわ。
シナリオ薄味だが、その辺は今よりも好きだね。
好きなだけのユニットキャラ使う難易度はかなり厳しいが
いい加減スレ違いだろ
単なる作品議論がしたいんだったらロボゲ板に行け
こんばんは。今年最後の投下ゆきます。
ディバイン SEED DESTINY 第三十一話 苦境と苦難の終わり
地球連合軍第二次オーブ解放作戦第三任務群所属ロアノーク艦隊と、ディバイン・クルセイダーズ親衛隊ラストバタリオン所属特殊任務部隊クライ・ウルブズの戦闘開始から、海と空は黒煙と鋼の雨に包まれている。
ビームに、ミサイルに、銃弾に、砲弾に、刃によって撃墜されたMS達は幾百数千の破片となって四方に散失し、爆炎と共に溢れる煙は死の嘆きと共に海と空の青を黒と灰に汚し抜く。
流れる筈の血が火群に飲まれて蒸発し、砕ける筈の骨はひしゃげたフレームによって押し潰され、戦うもの達の眼に己らが殺す相手の血肉を映す事は無い。唯一、殺された者が自分の死に行く体をかろうじて目にするのみである。
聖十字を御旗に掲げる軍勢と地球上の勢力から抽出された英傑たちの血戦に、月の女神の名を戴く船が、水面下の戦友と共に砲を撃ち鳴らして参じたのは、血戦の流血に両雄が疲弊しきった時だった。
ミネルバのグレイカラーの流線形の船体は、新たな乱入者である事を示すように傷一つなく陽光と爆発の光を浴びて燦然と輝き、女神の柔肌を傷付けた不埒者がまだいない事を誇っている。
主砲トリスタン、副砲イゾルデ、ミサイル発射管を忙しく動かして、遅れた参戦をクライ・ウルブズに詫びる様に、あるいは傷ついた獲物を残さず平らげようとするように、恐ろしく大胆に戦場深くへと切り込む。
そのミネルバ艦橋では艦長タリア・グラディスと副長アーサー・トラインがモニターの片隅に映るタマハガネのかつてないほど傷ついた姿に、同じく艦を預かるものとして痛ましげな眼を向けていた。
タマハガネはよくも飛べるものと思わずにはいられないほど傷ついているというのに、相対するアークエンジェル級に対して残った火砲をありったけ撃ちこみ、最後の一線を保持している。
悪鬼羅刹が取り憑いたかの如きタマハガネの奮戦ぶりに気圧されて、タリアの傍らに立つアーサーはごくりと生唾を飲み込んだ。
人は良いがどこかとぼけた所のあるこの副長は、駆けつける間に心からタマハガネの危機を案じる言葉をいくどか口にしている。
ザフトにとってDCは、表向きは前大戦時から濃密な軍事同盟にある友好勢力であるし、前大戦中にいくどか窮地を救われ戦場を共にしているから、アーサーの性格なら心配位はする。
しかし、すこし考えれば分かる事だが、軍事力による世界統一を標榜するDCは厳密に言えば敵ではないが味方でもない微妙な関係にある勢力だ。潜在的な敵対勢力なのである。
アーサーはそこまで考えを回していないのだろう。タリアはいざという時以外はまるで頼りにならない副長に、複雑な視線を向けた。
弁解するわけではないが、いざという時は本当に頼りになるのは確かで、そこは評価している。
ミネルバの艦橋の空気など知らぬタマハガネのクルーは闘将エペソの気迫が乗り移ったのか、死の淵に立ち背後には無限の奈落が広がっている状況だというのに、まるでそんな恐怖を感じていないような戦いぶりである。
「すごいですね、タマハガネ。あんな状況でアークエンジェル級と互角以上に渡り合っていますよ」
「見習いたいものね。ウチのクルーにもあれだけの気概が欲しいわ。メイリン、機動部隊を急がせて。後背を突いたのだからそれなりに結果を残さないとDCに恨まれるわよ」
カーペンタリアから大洋州連合軍機動艦隊と共に出港したミネルバは、今回の戦闘にボズゴロフ級潜水艦三隻を伴い、クライ・ウルブズの窮地に駆けつけている。
すでにボズゴロフ級ゴルデン、ガレーナ、カムリアの三隻からはアッシュとバビ、ザクウォーリアからなる全二十七機のMSが出撃し、ズタボロにされたDC部隊のカバーに入り、地球連合MS隊に銃火を浴びせはじめた。
*
海面下に出撃しているDCMSが存在しなかったために、地味な働きに終始していたシャニ・アンドラスは、ようやく自分が好きなだけ暴れられる時間が来たのだと、飢えた蛇のように舌なめずりをする。
じゅる、と水音がヘルメットの中で響いた。薄緑の髪の奥の、アレルヤとハレルヤと同じ金銀妖眼の瞳には、おもちゃの銃を与えられた子供のように無邪気で危険な光が宿っている。
自分に与えられたアビスガンダムは、以前乗っていたフォビドゥンガンダムの様に自在に空は飛べないし、ビームを曲げる事も出来ないが、機体の性能それ自体はやはり最新鋭機とあって悪くない、とシャニは思っている。
一方的な狩りほど楽しいものは無い。シャニは目の前に展開する蛙モドキのザフトMSを見つめていた時は、そう思っていた。
それがいまは――
「ちい、なんだよ、おまえぇ」
「やらせませんよ!」
苛立ちを露わにするシャニとアビスと相対しているのは、アビスと酷似したシルエットを持ち、全身をネイビーブルーのカラーに染めたアビスインパルスガンダムである。
カーペンタリア基地に寄港していたミネルバに補充されたザフト製シルエットと予備のインパルス二号機が、今回投入されてシャニの前に立ち塞がったのだ。
そして、水中下でもっとも戦闘能力を発揮するアビスシルエット装備のインパルスを駆るのは、元ザフト元ノバラノソノ所属のニコル・アマルフィだ。
前大戦から一年半以上が経過しても、ニコルの中性的で美少年とも美少女とも見える優しげな顔立ちは変わっていない。
アクア・ケントルムが、ストレスによる胃痛と頭痛と肌荒れと苦しい戦いを続けながら収集したザフトインパルスの稼働データが実を結び、ニコルのインパルスは搭乗を辞退したい駄目な子ではなかった。
シルエットと合わせて四基も搭載していたプラズマ・ジェネレーターの数を一つにして、出力の安定と制御に重きを置き、パイロットにかかる負担を軽減する判断を、ようやく技術陣が認めたおかげである。
最大出力は単純に言えば四分の一になってしまったわけだが、外したプラズマ・ジェネレーターの代わりに予備バッテリーを搭載しており、非常時には機体のパワーに回す事も出来る。
アビスシルエットを装備したインパルスは、完全な局地戦用機であるアビスには、若干劣るもののパイロットの操縦技術の優劣には大きな差が無く、わずかな気の緩みが敗北につながる接戦となるのは必定であった。
海中ではアビスの主武装であるビーム関連は使用できず、VPS装甲搭載機である両機は、手持ちのビームランスでの接近戦でしか相手を打倒する有効な手立てがない。
魚雷や連装砲でも当てればダメージはあるが、射撃武装で決着をつけようと思えばどうしても長期戦となるだろう。
漁夫の利を得るタイミングで姿を見せたミネルバとしては、敵を残さず殲滅して尽力した事を示したい。地球連合としては戦況が一気に悪化する兆候が見えはじめ、即座にでも撤退したいのが本音である。
ネオから新たに姿を見せるだろうザフト潜水艦部隊の迎撃を命じられたシャニも、万全の状態で死闘に身を投じたニコルも、共に相手との決着を急ぐ理由があった。
友軍機が魚雷を一斉に発射して海中が白く泡立って濁る中を、必然的にアビスとアビスインパルスは互いの機体にビームランスの切っ先を向けて、馬上の騎士の如く突貫する。
地球連合もザフトも水中で使用可能なビーム兵器を開発してはいない為、せっかくのビームランスも、実体刃部分にわずかにビームを纏っているきりで思い切り突き込みでもしない限り、有効な武器足り得ない。
ニコルとシャニが決着を急ぐ心であるというのに、戦闘フィールドと機体の特性がそれを許してはくれない。なんとも皮肉的な兄弟機の初対面であった。
*
カーペンタリア基地で補充されたインパルス一式は一組だけではなかった。もう一組、ディアッカ・エルスマン用にも配備されていたのである。
ニコルと同じ元ノバラノソノ組であるディアッカは、その経歴から軍上層部の信用は篤いとはいえないが、能力は認められるところでありデュランダル議長の計らいもあって最新鋭機に腰かける事となった。
ザクから乗り換える時には、アクアの心労を傍らで見ていたからどうすればインパルスに乗らないで済むか、とニコルと真剣に話し合ったディアッカであったが、実際に乗ってみると欠陥点が解消されているではないか。
いつも何か粉薬や錠剤を飲んでいたアクアの苦労が報われたのだな、とインパルスがまともな機体であると分かった時、ディアッカはアクアとニコルの三人で泣いて抱きあったものだ。
ディアッカはブラストインパルスに搭乗し、母艦ミネルバからやや先行した位置でケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲と、デリュージー超高初速レール砲による火砲支援を始めていた。
ブラストインパルスは海面上をホバー走行しながら、ロックオン・ストラトスのデュナメスにも匹敵する精度の砲撃を繰り出している。
前大戦前半では砲戦用機であるバスターガンダムで前面に出るような真似をしていたディアッカも、流石に今は成長していて自分の役割と言うものに徹している。
青い海を白く切り裂いて動くブラストインパルスから、極太のビームや視認できないほどの超高速の実体弾が射出され、浮足立つ所を見せはじめた地球連合のジェットウィンダムを捉えている。
攻めても攻めても膝を折らずに激しい抵抗を見せるクライ・ウルブズ相手に、地球連合の精鋭達も多大な疲労を滲ませており、気力体力が充実しているザフト兵を相手にするには酷な状態だ。
「ジャンケンで後出ししたみたいでちょっと気が引けるけどさ、手加減は出来ないんだよな。悪いけど、落とすぜ?」
ケルベロスの二条のビームを使って一か所にまとまる様回避させた敵機の集団へ、ブラストシルエットの四連装ミサイルランチャーを連続発射して叩きこむ。
次々と白い尾を引いてミサイルの群れが敵機へと群がり、撃ち落とす為のビームライフルや、バルカンがおよそ半数を撃ち落とし、回避行動を取った者にはレール砲の弾頭が次々と命中してゆく。
「そらそら、まだミサイルはあるぜ!」
ミサイルの発射音、レールガンの風切り音、ケルベロスの怒号が絶え間ない戦場楽曲を奏で、空中に醜い戦の花を咲かせて歪な花輪をつくってゆく。
空中からの攻撃よりも海中からの攻撃の方が警戒に値するが、アッシュ部隊とニコルが上手く敵と渡り合っているようで、海面に浮上してくる敵の反応は今の所は無い。
ディアッカは拡大された望遠画像を次々と新たに視認して、ザフトMSパイロットの中でもトップレベルの射撃センスを最大限に発揮し、故国の威信をかけて開発された機体に武勲を与えていった。
この戦果だけでもザフト技術開発陣とディアッカは、デュランダルから称賛の言葉を掛けられてもおかしくは無かったが、それにはまずこの場を生き残る事が不可欠であった。
より具体的には、海面ぎりぎりを疾駆し水柱を築きながらミネルバ船体真下に迫りくるガイアガンダムを撃退する事だ。
四足獣への可変機構を有する漆黒のガンダムを駆るのは、ブーステッドマンの一人オルガ・サブナックである。どこか貴族的な気品の端正な顔立ちの青年であるが、他の例にもれずその性格は好戦的で凶悪だ。
元々陸戦特化の機体であるガイアはさほど空戦能力を期待できるものではなく、空の戦闘にはあまり参加せずにいたが、オルガもいい加減暴れたかった。
高度を取らずに低空で戦闘に加わっているミネルバはそういう意味では、オルガにとって願ってもない獲物であった。その甲板上で次々と味方を落としているブラストインパルスもまた。
オルガ個人としては以前乗っていたカラミティの様な砲戦機のほうが好みだ。というのも圧倒的な火力でただ一方的に敵を撃ち落とす事が出来る。だからといっていまのガイアが不満と言うわけでもない。
技術の進歩によって各勢力の主力量産機の有する射撃武装は、おおむね一撃で敵機を沈める事の出来る出力を持っているし、ガイアには通常のビームライフルに加えてビームキャノンが二門追加されている。
平均的なMSよりは火力は上なのだ。
「は、プラントからわざわざおれらの尻を追っかけていたストーカーどもかよ」
「ガイアにカオス、アビスと全員揃ってお出迎えね? 歓迎してくれよな!」
迫りくるガイアに気づいたディアッカが、即座にデリュージーとケルベロスの砲口を、眼下のガイアへと向ける。乱雑に砲の向きを変えた様に見えて、実に正確にその照準はガイアを捉えている。
ザフトのMSクラスでは最大火力のケルベロスが海面を貫いて、ガイアの眼前に滝の様な海水の壁を築きあげる。剛体の質量を持つ海水の壁をまっすぐにガイアは突っ切り、ミネルバの船首へとビームを放つ。
ラミネート装甲の船首はガイアのビームライフルの直撃にも十分に耐えたが、流石にこれまで無傷で済ませて来た船を、これ以上傷モノにされたくはない。
ディアッカは、不規則な回避機動を描きながら迫るガイアへ、さらに連続してトリガーを引いた。
ミネルバの対空火器と主砲・副砲は強力だ。ブラストインパルスが火砲の標的を変えても、十分に味方の援護と自身の防御位は果たせるだろう。
「いい加減、おまえらとの縁も切らせてもらうぜ。アークエンジェルを追っかけていた時の二の舞はごめんなんでな」
「わざわざ殺されに来たかよ!」
*
そしてミネルバに配備された最初のザフトインパルスは、カオスガンダムの機動兵装ポッドを背負ったカオスシルエットを装備して、クロト・ブエルの駆るカオスガンダムとはやくも死闘を繰り広げていた。
前大戦で着用していたダイレクト・フィーリング・コントロールスーツから一転、通常のパイロットスーツに豊満な若い肢体を包んだアクアは、サーベラスで扱い慣れた遠隔操作武装を駆使し、カオスと対等に戦っていた。
機動兵装ポッドを武器として使用している間、カオスとカオスインパルスは大幅に推力を失い、機動性などに難が生じるものの単機で複数の射線と火砲を保持できる武装はやはり強力だ。
前大戦に登場したドラグーンシステムは、単基あたりの火力は到底MSを撃墜できるようなものではなかったが、セカンドステージ以降のMSに装備されたドラグーンや機動兵ポッドは十分な火力を持つ。
アクアほど機動兵装ポッドの扱いに長けていないクロトは、レイダーを操縦するのと同じ要領でカオスのMA形態とMS形態を使い分けて、緩急を自在に使い分けた機動でアクアを翻弄する。
「ちい、邪魔くさいんだよ、コイツ」
「ここで会ったが百年目よ。カオスは返さなくてもいいけど、落とさせてもらうわ」
まるで少女の様に高く透き通った声で宣言し、アクアはMA形態へと変形したカオスが交差しざまに振ってきた右のビームクローをかわし、左のビームクローをABCシールドで受け流す。
ABCの耐久限界を突破したクローにシールドを抉られるが、損害はそれだけだ。アクアはその場でカオスインパルスに左わきの下から銃身を覗かせ、カオスの背にビームを撃ちかける。
後方警戒信号と後方モニターに映るカオスインパルスの射撃動作に気づいたクロトは、反射レベルの速度で操縦桿を傾かせ、後ろから迫りくるビームの矢を扱くあっさりとかわして見せる。
「はっ! ハードレベルのゲームの方がヤバいね」
「動きだけははやいわね」
機体を上昇させて白い雲の中へと突入するカオスを追って、カオスインパルスも機動兵装ポッドを背に戻して、推力を最大値にして白い尾を引く。
カオスの背後に着く、とアクアが決めた瞬間、複数の熱源反応がカオスインパルスの周囲を囲みこんでいた。クロトが雲に突入して機体の姿を隠したと同時に、ミサイルを放っていたのだ。
美しい唇を歪めて舌打ち一つ、アクアはカオスインパルスの首を巡らせCIWSの弾幕を張り、迫りくるミサイルを撃ち落とす。モニターの向こうに広がる爆煙を、すぐさまコンピューターが排除した画面に映し直した。
その画面の中に、雲の切れ間にカオスの機動兵装ポッドから噴出するスラスターの光の残滓がわずかに見えた。
アカデミーをトップの成績で卒業したアクアの優秀な頭脳と高密度の戦闘を多数経験した事によって構築された戦士としての判断力が、カオスの未来予測位置を割り出し、そこへカオスインパルスの火器を集中させた。
「当たれっ!」
機動兵装ポッド内のビーム、ミサイル、ビームライフル、カリドゥス改複位相ビーム砲とガイアガンダムよりよほど充実した火力の集中砲火である。まともに当たれば駆逐艦ていどなら一分と持たずに沈む。
白雲を集中した火器が貫いたと同時にアクアは狙いが外れた事を悟った。ほぼ同時にカオスからビーム突撃砲とファイヤーフライ誘導ミサイルが放たれていたからだ。
機体が似たものだから相手の打つ手も大体分かるが、これではイタチごっこだ。アクアはそう罵りたい気分を――下品だと思いつつ――堪えて、操縦桿を手繰らなければならなかった。
アーモリーワンでもその後のデブリ地帯でも逃がしてしまった敵との決着を、いい加減付けなければと焦りながら。
*
ミネルバに配備されたMSはインパルス三機の他にも同じく三機あった。ただしその三機のパイロット達は正確にはザフトの兵ではなく、民間からの出向者達である。
イナクトやフラッグ同様に可変機構を備えた赤いMAが、背後から迫りくるイナクトを引き離し、MSへの変形によってくるりと背後を振り返ってビームライフルを浴びせかけた。
遠心力によって振り回される視界と肉体を完璧に制御しきり、命中させるのが極めて難しい状況で、見事命中させる。パイロットの肉体面も技量も並大抵のコーディネイターの範疇を越えている。
獲物と狙い定められたイナクトは、空戦使用特化の為薄い装甲の胴体に大穴をあけられて、すぐさま爆発を起こした。
赤いザフトMS――セカンドステージの一機、セイバーガンダムのパイロット、長い赤髪のブリング・スタビティは周囲で熾烈な戦いを繰り広げる友軍敵軍に感情を向ける事は無かった。
戦闘タイプのイノベイターと言う事もあるがもとからして彼は自分の感情を表に出さない性格だ。
セイバーの傍らにややくすんだ同じ色のプロトセイバーガンダムが寄り添った。パイロットは外見上の違いといえば、耳前の髪の長さが短い事くらいのデヴァイン・ノヴァが務めている。
一卵性の双子といえば誰もが納得するパイロット達の外見に相応しく、乗っている機体も外見は全く同じだ。
ブリングと同じ遺伝子データをもとにして生み出された戦闘型イノベイターであるデヴァインにとって、疲弊しきった敵を相手に戦う事は、年を経た獅子が子兎を狩る程度の労苦で事足りる。
デュランダルの要請によってミネルバに援軍として送られてきた彼らも、今回の戦いにザフト陣営として参加し、地球連合艦隊の精鋭部隊との戦いに尽力する事となっていた。
背中合わせのまま機体を不規則な速度で回転させ、楕円軌道を描く様にして戦場を飛びながらセンターマークに捉えた敵に、ビームライフルやスーパーフォルティスを浴びせかける。
万全の状態であったら、ブリングやデヴァインを多少はてこずらせたであろう地球連合のパイロット達は、不死身の化け物のように奮闘し続けたDCとの戦闘ですっかり疲労の泥に塗れている。
鴨撃ちかと思うほど呆気なく被弾してゆく姿に、二人の戦闘用イノベイター達の心に、わずかながら憐憫の情さえわき起こる。
戦闘用ながら無益な争いを嫌うブリングなど、さっさと銃を引けば見逃すものをとつい思ったほどである。
イノベイターは脳量子波を解する事でダイレクトの思考を交差させる事が出来るが、同じ塩基配列から作られたブリングとデヴァインは、距離や時間差を無視して脳量子波通信を行う事が出来る。
言葉を用いずに会話した二人は、すぐちかくの空域で戦っている同胞に目を向けた。ザフト製のセイバー・プロトセイバーとは明らかに異なるシルエットのそれは、DC所属と言われた方が、よほど納得がゆく。
初見の者が受ける印象は中世世界の中から飛び出してきた青い鎧の騎士だろう。ただ人間であれば腕を四本も持ってはいないだろうし、有機的に羽ばたく天使の翼もない。
それぞれの腕に剣や槍を持ち、それらを縦横無尽に振るって量産型ガルムレイドの一機をばらばらに解体していた。ガルムレイドに比べればはるかに小さいサイズながら、戦闘能力では同等以上といえよう。
あの気弱な少年ラリアーが搭乗するデュミナス製の戦機人形ヒュポクリシスである。実体剣の切れ味は、特機の重装甲をものともしないものでそれは驚愕に値すると言っていい。
イノベイターではないラリアーとは思考での会話はできず、直接言葉で意思をかわさなければならないが、ブリングとデヴァインはその手間を厭うような事はしなかった。
彼らは同族であるイノベイターのみならず同じ陣営に属する仲間に対しては、気づかいや身の無事を案ずることを惜しまない。戦闘用に作られたとはやや思い難い性分である。
最初にラリアーに声をかけたのはブリングだ。周囲の敵機を排除し終えているのはすでに確認済みだ。多少話をしても問題は無い。
「ラリアー、戦闘続行に問題はないか」
「ブリングさん」
ブリングとデヴァインは戦闘時、当然のことだがヘルメットを被っているので髪の毛の長さによる判別がさっぱりできないが、ラリアーは判別が出来るらしく答える声に迷いは無かった。
ま、モニターに映ったディスプレイにパイロットの名前が映し出されているし、機体で判別もできるのだから間違う訳もない。
「はい、問題ありません。このまま戦い続けられます」
「なら構わない」
「あの、ティスは今回は連合艦隊にはいないはずですよね?」
「ああ、私もデヴァインもティスは確認していない。君のその調子では、デスピニスの心配もしなければならないな」
「デスピニスの事はやっぱり心配です。ティエリアさんの方はどうですか?」
「彼もイノベイターだ。脳量子波は検知されているから死んではいない。私とデヴァインがバックアップに回る。君は戦いに集中したまえ」
「はい!」
できればデスピニスと一言二言かわしたかったが、陣営が異なるし戦闘中に無理をして接触する必要もないかもしれない、とラリアーは思い直し、ヒュポクリシスの握る四本剣の操作に専念する。
戦いを覚悟すればラリアーは強い。ブリングとデヴァインはこれで彼に戦いを任せても大丈夫だと、頷き合う。
デスピニスはティエリアのヴァーチェと共に戦っている様子は確認できている。あの二人のコンビはデスピニスがティエリアの意見に押し流されてばかりだが、なかなか強い力を発揮する組み合わせだ。
赤髪の二人はヒュポクリシスで量産型ガルムレイドとの戦いを再演し始めたラリアーを援護すべく、二機のセイバーを巧みに動かして援護に入ろうとする敵側のMSを次々と撃墜し邪魔をしてゆく。
その最中、デヴァインの瞳が黄金の色彩を帯びてティエリアとデュミナスを介した脳量子波の通信を結ぶ。DCにくれてやった二機のガンダムの変化に、デヴァインもまた気付いたのだ。
(ティエリア・アーデ)
(! デヴァイン・ノヴァか。ブリング・スタビティとラリアーも来ている様だな)
(いまはザフト陣営だ。ところで、エクシアとデュナメスだが、アレはどういう事だ?)
アレ、とは無論エクシアとデュナメスが背中から放出している翡翠色のGN粒子の事に違いない。イノベイターとDCが運用する擬似太陽炉は、これまでその全てが赤い粒子を発生させるものだったはずではないか。
(私にも分からない。つい先程あの二機が戦場に到着したばかりなのだ。おそらくはヤラファスかオノゴロで太陽炉を換装したのだろう。DCオリジナルか改良を施されたものだ。重力制御機能に特化している)
(お前が見ているのなら、リボンズも既に目にしているだろう。ならば遠くないうちに対応策も練られるな)
(そうなるだろう。我々は、いまは目の前の敵を叩く事に集中すればいい)
(了解した。では健闘を祈る)
結局エクシアとデュナメスに関しては分からないという事が分かっただけだった。デヴァインはティエリアとの脳量子波通信を遮断し、完全に意識を戦闘に集中させる。
ロアノーク艦隊は、展開した戦力を再集結させて、撤退に動く前兆を見せ始めている。常識的な戦闘であったならもっと早くにそうすべきだったろうに、とデヴァインはやや呆れながら思った。
*
「メディオ、まだ戦えるか!?」
「問題ありません、大尉は!」
「エンプティ寸前と言った所だ。サーベルとライフル位しか残っておらん」
怒鳴り散らす様に言葉を交わすのは、ユーラシア連邦所属モーガン・シュバリエとオリジナルガルムレイド専属パイロットのヒューゴ・メディオの二人である。
月下の狂犬の異名を取る連合有数のエースと連合最初期の特機のパイロットである二人は、同じ陣営として前大戦で轡を並べて戦った事もありぴたりと合った息で、激烈なこの戦場を戦っていた。
ヒューゴの乗機は改良が施されたガルムレイドであるが、モーガンの機体はジェットストライカーのリミッターを解除し推進力を増加したジェットウィンダムである。
パーソナルマークがペイントされている以外は、カラーリングもノーマルのままで外見から通常機との違いを判別する事は出来ない。
長時間の戦いに推進剤の残量は少なく、年齢的な問題からさしものモーガンも疲労の牙に深く肉を抉られている。
ヒューゴの方はまだまだ若い盛りと言う事もあって息切れをしている様子もない。ただ量産型ガルムレイド部隊が集中砲火を浴びて数を減らす中で、生き残った数少ない特機として奮闘しており、機体の負荷が大きい。
機体に戻ったらメカニックが涙を流すに違いない。下手をすればしばらく整備庫に籠って大人しくしている他なくなるだろう。
膝のサンダースピンエッジは刃にひびが入って切れ味を失っているし、バーニングブレイカーを一回使用するだけのエネルギーも残ってはいない。
ターミナスエナジーは永久機関の一種であるから、放っておいてもある程度は回復が見込めるが、この乱戦では消耗の方が圧倒的に大きい。
新たに姿を見せたザフトのバビやザクウォーリアはモーガンとヒューゴの疲弊に反してまだまだ元気いっぱいで、士気も高く出番が来るのを待っていたに違いないとヒューゴは心中で罵った。
口には出さないがモーガンもヒューゴもとっくに撤退の指示を出すべきだ、と何度か考えていた。
前大戦時からクライ・ウルブズの底力を知っている二人だけに、追い込んだ所からの異常な粘り強さに、こちらの被害が収まる所を知らない数字になる事を危惧していたのだ。
そしてその危惧は現実のものとなって、当初三桁を越えていた友軍の数はいまや半数を割っているではないか。対クライ・ウルブズ用に惜しみなく投入された新型MAも一機残らず落とされかねない勢いだ。
人も、機体も、金も、なにもかも失われ過ぎている。それに比べて得られた対価はあまりにもわずかだ。
クライ・ウルブズ以外のDC部隊こそ被害は甚大だが、壊滅させなければならないクライ・ウルブズの機体がいまだ一機も落ちていないではないか。
セルゲイ・スミルノフが三機がかりで落としにかかっているガンダムタイプこそ大破寸前まで追い込んでいるが、そこから先に追い込む事が出来ず逆に手痛い反撃によって徐々に撃墜の危機さえ生じている。
軍上層部が――余計な口出しをする盟主殿が――連中の力を見誤ったという事だろうが、モーガンやヒューゴは現場に出て実体験しているから分かるが、数字と記録映像でしか知らない連中には無理のない事だ。
彼らの立場になって考えればこれほどの大規模戦力を与えられて、目標としているのがわずか三隻程度の小規模部隊にすぎないのだ。人類の戦争の歴史と軍事的教訓、法則からすれば、損害等ないに等しい状態で勝利を迎える筈なのだ。
近年、これまでの人類の戦争の歴史に反する事態が頻発しているが、ことにDCが関わるとそのようなあり得ない戦闘の結果が生じている。
場合によっては放置する事がクライ・ウルブズを相手に被害を最小限にとどめる術なのかもしれない。
愚にもつかぬ事を、とモーガンが自分自身の考えに苛立ちを感じていた時、漆黒の砲撃が空を貫いてロアノーク艦隊の機動空母の一隻を直撃した。
歪む空間と重力の悲鳴と共に機動空母の甲板を穿ったのは、決着を急ぐために超長距離狙撃を敢行したデュナメスが放ったGインパクトキャノンである。
より高出力高威力広範囲を誇るブラックホールキャノンを使わなかったのは、残存GN粒子の消耗などを考慮したためだろう。
地球の発する引力その他もろもろの影響を最小限にとどめる為に、射撃範囲を絞り貫通力を重視した一撃は、機動空母の甲板から船底までを押し潰し、船体に戦闘続行と航行不可能なダメージを刻みこむ。
かろうじて被害の少なかった機動空母にも、ついに大きなダメージを負った艦が出た事になる。護衛艦やアークエンジェルがさんざんに攻撃を浴びせられて沈み、残存艦は十、十一隻そこらだろう。
無事軍港に帰港できたとしても、二度と使い物にならない艦と機動兵器、パイロット達の数は増えるに決まっている。失ったものと得たものがこれほど釣り合わない戦いも、ずいぶんと珍しい。
ファング・ナックルで斬り掛かってきたスラッシュザクウォーリアの上半身を噛み砕き、ブラッディ・レイで三機編隊を組んでビームを浴びせかけて来たバビを牽制する中、ヒューゴは、旗艦から射出された信号弾に気づく。
空中で三色の輝きを放つ信号弾が意味するものは撤退だ。あまりに苦しい戦いに疲れ怯えていたロアノーク艦隊の面々は、すぐさま機体を翻して背を見せ始めている。
「……撤退信号? いまさらか!!」
口の中で苦虫を百万匹も噛みつぶしたようなモーガンの怒声であった。確かに退くべきとは思うが、ここで死んだ連中は一体何だったのかと。ここまで被害を出しておいてと、そう思うのは仕方のない事だ。
「大尉、おれが背中を守る。はやく行ってくれ!」
「DCは追ってこないだろうが、ザフトはしつこく来るぞ」
「まるでハイエナだな」
ハイエナの行為は生きる為にする事だ。そう考えればザフトの行為がそれ以上に卑怯なものに感じられるのは、苦境に追い込まれたヒューゴの感性が皮肉の色を帯びていたからかもしれない。
*
モーガンの言ったとおり、DCの部隊は撤退の動きを見せるロアノーク艦隊を追う余力を欠片も残していなかったが、余力ばかりのザフト艦隊は足の遅い損傷艦や機体を追いまわして毒牙にかけている。
殿を無傷だったシロッコのジ・OUと、撃墜された所を回収してくれたイナクトを強引に奪ったコーラサワー、頂武・オーバーフラッグス残存部隊が務めて退くロアノーク艦隊を、エペソは疲労をにじませた瞳で見つめた。
豪胆でなる人造の武将も流石に疲れの色を隠す気力も残ってはいないらしい。
クライ・ウルブズ壊滅寸前まで戦い抜きながら、ロアノーク艦隊が退いたのは苦境に陥ったところでのザフトの援軍も大きいが、やはり本隊同士の戦いでDCが地球連合艦隊を退けた事が要因なのだろう。
フォールド通信で報告されたDC本隊と地球連合艦隊の戦闘決着の知らせは、ロアノーク艦隊の撤退とほぼ時を同じくして届いていたのである。
重力アンカーを看破された際の切り札として用意されていたメカゴジラ三体と、初めて実戦投入されたバルキリーの力による所が大きい。いずれにせよ本命艦隊も別動艦隊もあまりにダメージが大きすぎる。
いずれ損害がまとめて報告されるだろうが、エペソの私見ではタマハガネは一ヶ月か二ヶ月はドック入りを必要とするだろう。機動兵器部隊のダメージも大きい。
かろうじて着艦事故などは起こしていないが、ステラのエルアインスやアウルのエムリオンRCは使いものにならなくなるほど損傷しているし、ジガンスクードは装甲の八割近くを新装しなければならない。
もっともダメージを負ったシンのインパルスは幸いにしてコアスプレンダーは無事だったから、チェストとレッグを交換すればすぐさま実戦に再度出撃できる状態にある。
ただ、パイロットの方の消耗が激しすぎて、二日か三日は休養を取らせないと戦闘のコンディションを維持できないだろう。
キャリフォルニアベースから出港した地球連合の増援艦隊が合流し、艦隊の再編成と指揮系統の再構築を考えると数日は余裕があると見えるが、こちらがそれまでの間に体勢を立て直せるかどうか。
「難しい所だな。ビアンとミナが増援を寄越すと言ってくれれば助かるがな」
もっと言えば本土で改造中のネオ・ヴァルシオンUかミナシオーネRごと本人たちが来ればいい、とエペソは偽りでも何でもなく思った。
ビアンの思考形態はエペソにはいまいち理解しかねる所がちょこちょこあるのだが、こと兵器開発に関しては――趣味に走り過ぎる悪癖があるが――絶大の信頼を置ける。
開発と完成に至るまでの過程と動機に大きな問題を孕むビアン印の兵器であるが、結果に相当する性能に関して言えば、軍事関係者なら誰もが目玉をひんむくものを持っているのだ。
思案に耽るエペソの耳にどおん、と大きな音が届いた。主推進機関である八基のロケットエンジンの内のいくつかが、爆発を起こしたらしい。
徐々に高度を下げて行く外の光景を見ながら、エペソは淡々と呟いた。
「ままならぬものだな」
――つづく
おまけの黒歴史@
キャラクター名:シン・アスカ(最終決戦仕様)
今年の何時頃だったか、とりあえず自重せずに考えた本作におけるシンの最終形態。最終決戦かその後の顛末を描いた外伝用の頭のおかしい状態。
十六夜念法、戴天流剣法はとうぜん免許皆伝の他、京都神鳴流をマスター。また念の応用で乙女座の黄金聖闘士の技の一部を体得。
中盤辺りで適当に死にかけた所から復活した事でアラヤシキに目覚める。ヨガの修業によって分子浸透、思念飛行、空間跳躍、思考共有を会得。
また中東辺りで屍食教典儀を偶然取得し本能的に肉体を魔術によって強化し、斬撃・体術はこの時点で音速突破は当たり前。終盤にて並行世界の無意識との接触による潜在能力の開花で宇宙規模の霊的知覚能力とサイコドライバー並の超能力に目覚める。
光速で動く相手に対して狙ってカウンターが決められるようになる。ガチでガンバスターのスーパーイナズマキックを切り払えるレベルに。また限定的なアカレコへのアクセス権を所有(魔界医師くらい)。
風呂入ってから改めて見てみたら、
@ 英雄時代の英雄の種族とも生身でガチンコ出来るレベルにするのはいくらなんでもやり過ぎの限度を超えている。
A ただでさえオリキャラ化しているのに、これ以上シン・アスカの皮を被った別モノにするのはいかがなものか?
という理由でボツに。流石にここまでバケモノにはしません。
機体名:09ガンダム
最初期プロットにおける刹那・F・セイエイの最終搭乗機体。オリジナル太陽炉を九基搭載し、GN粒子生産量を九乗化させた機体。GNドライヴにはブラックホール・エンジンも組み込まれているため、重力操作能力も理論上は九乗化した値になる。
重力制御能力はネオ・グランゾンと同等以上。縮退砲の連続使用と刀剣状に収束した縮退剣を装備。惑星破壊? 朝飯前だっつーの……な攻撃力を誇る。
両肩、両肘、両膝、腰裏×2、背中で合計九つのGNドライヴを搭載する。純粋種のイノベイターとして覚醒した刹那の為に調整された機体。
カルケリア・パルス・ティルゲムを応用した脳量子波増幅装置を搭載し、常時トランザム・バースト状態に匹敵する超感覚を刹那に与える。
剥き出しのGNドライヴは常に放出されている超高純度超高密度のGN粒子でコーティングされており、複層GNフィールドによって守られている状態。リーブラの主砲を完全に防ぎきったアルヴァトーレのGNフィールドの倍くらいの防御能力。
惑星を両断するリアルイデオンソードのライザーソード、惑星を覆い尽くす超広域GNフィールド、放出したGN粒子を自在に操作する遠隔操作能力、星系内程度の距離なら自在に転移する超長距離量子化移動。
性能の倍数化を自在に設定できるトランザム(3倍なら180秒、180倍なら1秒といった具合に反比例する)など思いついた事をすべて盛り込んだ厨二病機体。
名称はGNドライヴの搭載数と起動成功率0・000000009%から。シミュレーションで大失敗を繰り返したために、まずは小さなことからコツコツと、という理由でDCでは00ガンダムが開発される事になった。
という黒歴史の機体。書くだけ書いてから
@ やりすぎたなあ
A 00ライザーでも十分に強いからいいかな
B ここまでオリジナル色が強いのを出すのはなんか嫌だな
という理由でボツに。
以上、年末という事で忘れたい思い出を吐露しますた。笑い話にでもなれば幸い。
ではでは、皆様良いお年をお過ごしになられますようお祈りしております。
オマケのトンデモ具合がパネェっすよ総帥!!w
何後もあれ乙でした、来年もよいお年を〜
なにこのFUGwww
しかし今回シンがかけらも出番がないなぁ…
おまけが一昔前のローマ字主人公のスペックすぎるww
これは酷すぎるwww
メカゴジラ吹きました!!
いったい、この総帥はどれだけ引き出しを持っているのか!!
ただよほど超絶な性能を持った機体でないと総帥のロマンが通じないのが悲しいよな……。
リミット解除するとそこまで暴走するんかwwwwww
09ガンダムと最初に見た時、ふっとAIラナ・ニールセン搭載の赤と黒ツートンカラーの機体と思った
……十分チートな機体のはずなのに、総帥は更にその成層圏クラスで斜め上だったとは。
乙です!……しかし、描写の本筋はクライウルブスとはいえ、メカゴジラ3機とはマジパネェ……
しかし、迂闊で残念がしっかりスナイパーしてるのは一種珍しい光景だなぁ
二次創作SSでもさっくり落とされてるか遺作と一緒に前に出て落とされてるかとかだし……
そしてボズゴロフ級wwww既に科学者どころか人名ですらないwwww
頼りになるのかならないのかとっても微妙なチョイスが流石ですなwwwwwww
仮にも特機乗りなのにジェットウィンダムに乗ったモーガン並の扱いのヒャーゴさんに泣いた
アクアさん、ようやく報われたなぁ……。
> リーブラの主砲を完全に防ぎきったアルヴァトーレのGNフィールドの倍くらいの防御能力
総帥そのスパロボどこで売ってんですか教えてくらさい
オマケが明らかにおかしいwwwwwwwww
一体何と戦うんだこれでwwwwwwwwwwww
何気にコーラが味方の機体奪ってるのに吹いた
つーか味方にすら「こんなの乗りたくねえよ!!!」扱いの旧ザフトインパルスにクソワロタ
あれ?イナクトとかってコクピット二つなかったっけ?
蹴落とされた味方さんに合掌
>>48 アレは本気で目を疑ったわ。大使があそこまで格好良い出番もらうなんて誰に予想できたか。
あれ、総帥世界でアルヴァトーレとか出たら洒落にならない気がしてきたぞ
>>485 多分、兵隊の一体一体がウルトラマンべリアルくらいの強さ
幹部クラスに至っては「ケイサルエフェスは我らの中で一番の小物」とかいうレベル
>>489 ル=コボル「ケイサル=エフェスがやられたようだな」
ダークブレイン「奴は我々の中でも一番の小物」
シュテルン「ちょっと病気しないだけのコーディネイターにやられるとはラスボスの面汚しよ」
シン「喰らえぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!」
『ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
シン「やった・・・人外ラスボス軍団を倒したぞ・・・これでペルフェクティオのいるア○トースの庭が解き放たれる・・・!!」
こうですか、わかりません
>>488 あれはGジェネムービー補正だからなあ。
>490
ケイサルの方が格上じゃ?
>>491 Gジェネムービー補正をそのまま適用すると、運命なんてパルマでツインサテキャを弾く化物になっちまうからな
何故だろう。
ザフパルスはまともに乗れる代物になっただけのはずなのに、
とてつも無い進歩をしたように感じてしまうのは。
>ディアッカはアクアとニコルの三人で泣いて抱きあったものだ。
おかしいですね……、涙が止まりませんよ……。
あけましてこんばんわ。昨年は格別のご贔屓を頂き、ありがとうございました。早速ですが新年投下一番乗りをいただきます。
ディバイン SEED DESTINY 第三十二話 小休止
ボズゴロフ級ガレーナ、ゴルデン、カムリア三隻から出撃した二十七機のMSとミネルバ所属の六機の、合計三十三機の機動兵器部隊は北方へ針路を取るロアノーク艦隊へ猛攻を仕掛け始めていた。
艦艇数とMSの数で言えばロアノーク艦隊の方が上回る数字であったが、いかんせん激戦の直後であり、編隊を大きく崩されて残った部隊が本来の戦闘能力を発揮する事は出来ずにいた。
無傷で残っているMSの数の方が損傷機よりもはるかに少なく、ゲルズゲー、ザムザザーといったMAの数は片手の指ほどしか残っていないし、ガルムレイド部隊はヒューゴの機体の他には二機のみである。
水中から攻め立ててくるザフトのアッシュ、空から逃すまいと襲い来る鋼鉄の猛禽の如きバビ、ザクウォーリアを相手に展開される迎撃の砲火は精彩を欠き、射線もまばらである。
MAの盾を突破された事でタマハガネとストーク級空中母艦カイゼルオーン、ジャピトスの艦砲、ヴァーチェやデュナメス、バルゴラ一号機の長距離砲撃が艦艇を襲った事で、ろくな防御行動が取れない。
ザフト出現のタイミングは、ロアノーク艦隊にとって呪いの声を上げたくなるほど厄介なタイミングであった。
そのような状況下、周囲の、疲弊して機体の挙動や制御に乱れが生じるロアノーク艦隊のMSとは別に、緒戦と変わらぬ見事な動きで退く味方を守るわずかな機体の姿がある。
ひとつはユーラシア連邦の次期主力量産機として開発されたMSイナクト。一般仕様のイナクトを駆るのは赤毛の青年パトリック・コーラサワー少尉だ。
クライ・ウルブズ機動兵器部隊隊長アルベロ・エストのビルトシュバインに一撃を見舞わんとした所を、デュナメスの長距離狙撃で落とされたのだが、そこから見事復活を果たして殿を務めている。大したバイタリティといえよう。
幸いデュナメスの一撃はイナクト胴体の上を貫いたので、ドラムフレームの中にあるコクピットは無事だったためコーラサワーに怪我は無い。
緊急脱出機構によって外部に開いたコクピットから這い出した所を、別のイナクトに拾われたコーラサワーは、艦に帰還せずにそのまま救出してくれたイナクトのコクピットに潜り込んでシートを奪った。
普通のパイロットよりもスペシャルな自分が戦線に復帰する方が部隊の為になるし、たまたま不意を突いて幸運にもおれ様を撃墜したと勘違いしている奴に、痛い目を見せてやらなければ、と判断したためである。
コーラサワーにヘルメット越しにげしげしと蹴られた哀れなイナクトのパイロットは、コクピットの後ろの方で窮屈そうに体を縮こまらせている。
「こ、コーラサワー少尉、貴様、はやくシートを明け渡さんか! 人の機体を勝手に……」
「おなじ少尉だろうが、おれに命令すんな!!」
自由人コーラサワーは、仮にイナクトのパイロットの方が階級が上であってもまるで問題にはしなかっただろう。
「おれの方が貴様よりも先任だ!」
「先任だろうが最先任だろうが、おれが乗った方が強いから問題はねえ!!」
ぎゅん、と横殴りに襲い掛かった旋回のGによって、本来のイナクトのパイロットはコクピットの横壁に叩きつけられて、言葉を遮られた。
コーラサワーの発言は色々と軍隊的には問題のあるものだが、唯一、コーラサワーの技量の方が勝るという点だけは事実である。
コーラサワーに操縦桿を握られたイナクトは、搭載されているTC−OSがコーラサワーに適したものではないにもかかわらず、軽技のように軽快な動きを見せて撃ち掛けてきたバビの射撃を躱す。
回避機動はそのままに周囲の敵機の動きを広い視野の中に納めて、コーラサワーはイナクトのビームライフルの銃口を動かす。
MA形態に変形しているバビの旋回半径を一瞬で見切り、脳内で本能的に時期との相対位置と未来位置の予測を叩きだす。後はその結果に合わせて銃口の位置を変えてトリガーを引くだけだ。
きっかり二度コーラサワーが引き金を引くと、ほとんど間を置かずして胴体を貫かれたバビ二機が爆発炎上し、オレンジの炎を伴う黒い爆発の花びらに変わる。確かに言うだけの実力がコーラサワーにはあった。
「やいトロッコ! てめえもさっさと働け」
「誰が炭鉱の滑車か」
コーラサワーの声に律儀に応じるのはジ・OUのパプティマス・シロッコ大尉である。通常のMSの数倍はあろうかという巨体のMSを駆りながら、恐るべき事に機体には損傷一つない。
一般に人間は天才と凡才に分けられる。だが天才の中にも二種類の人間がいる。非凡な天才と平凡な天才だ。平凡な天才は、なまじ自分が優秀であるからこそ非凡な天才に対して越えられぬ壁を感じるだろう。
天才と凡才の間にある見えない壁よりも、天才同士の間に聳える壁の方がはるかに高いのだ。そしてパプティマス・シロッコが属するのは後者――非凡な天才であった。
パイロットとしての力量はもちろんニュータイプとしての鋭敏な感性と他者の思念に押し潰されぬ確たる傲慢なまでの自我、独自の発想に基づく機動兵器の開発を行うだけの知識と発想力と多分野に特化した稀有な人材である。
総合的な能力で言えばビアン・ゾルダークに匹敵するか、あるいは上回るポテンシャルを持った男と言えるかもしれない。
もっともその天才も、独特過ぎる世界に生きるコーラサワーと相対すると、どうにも勝手が違うようだ。
コーラサワーの茶化す言葉に言い返しながら、シロッコの薄紫の瞳は勢いをかって攻め立ててくるザフトのカトンボどもを嘲りと共に見つめ、コーラサワーに対する苛立ちを乗せて思い切り引き金を引いた。
ジ・OUの構える大型重機関銃から、MSの装甲を数射でボロクズに変える大口径銃弾が連続して放たれて、ファイヤーフライ誘導ミサイルを目に映る端から叩き落とし、編隊を組むブレイズザクウォーリアを鉄屑に変える。
「遺伝子を弄った程度の存在が、私の手を煩わせるなど、身の程を知れ!」
ホバー走行で後進するジ・OUの周囲に巨大な黄金の薬莢がばら撒かれ、重機関銃としてはありえない精度で空中のMSを捉えて行く。
コーラサワーのイナクトのどこか洒脱さを感じさせる動きと、比較的被害の少なかった機体がなんとか防御線を構築して、ザフトの追撃をシャットダウンしている。
特に脅威なのはミネルバのインパルス三機とセイバー二機、それにラリアーの乗っているヒュポクリシスだ。
インパルス三機はガイア・カオス・アビスが相手をして抑え込み、残りの三機はここでロアノーク艦隊を完全に壊滅させてはならないという意図があるから、味方に怪しまれぬ程度に攻撃の手を控えている。
クライ・ウルブズが追い込まれてから異常な粘り強さと猛烈どころではない反撃の牙を剥いた事で、ロアノーク艦隊の機動兵器が大きな損傷を負ったように、今度は深追いをしたザフトに被害が増え始めている。
もちろん疲弊に塗れ傷に覆われた連合側のMSや損傷艦も次々と落伍し、海面に叩きつけられて無残に砕け散っているのだが、ザフトMSの被害の数値はあっという間に大きなものになっていった。
*
クライ・ウルブズを主軸とするDCの部隊は、旗艦の役割を担っていたタマハガネが推進機関に損傷を負って、足を止めていることもあり後を追う様子は欠片もない。
要救助者と損傷した機体の収容、各艦が沈没しないように状態を維持するので精一杯なのだ。船首モジュールに多大な損害を負ったタマハガネでは、後部艦橋に所属機動兵器が着艦を始めている。
比較的損傷が少ないのがビルトシュバイン、ガーリオン・カスタム、バルゴラ一、二、三号機。
機体の四肢の一部の損失や内部電装機器などに無視できない負荷を受けているのが、ステラのエルアインス。
ほぼ損傷が無いのがGNフィールド持ちのヴァーチェとそのヴァーチェとペアを組んでいたデスピニスのエレオス、ニルヴァーシュ、ガンダムエクシア、ガンダムデュナメスの五機。
大破に近い損害を受けてしばらくは戦闘に参加できないレベルの機体は、ジガンスクード、エムリオンRC、インパルスの三機である。
コアスプレンダー以外のパーツを交換すれば、さほど修理と整備に時間のかからないインパルスはともかくとして、エムリオンRCは廃棄決定、ジガンスクードは稼働可能に持って行くまで数日は必要だろう。
カイゼルオーンとジャピトスに搭載されていた機動兵器部隊も、残存機はランドグリーズ・レイヴンが四、エルアインスが二、と合わせて六機だけだ。
当初両機種合わせて二十四機を数えていたというのに、四分の一までに減らされている。残った六機とて、戦場に再投入できる良好な状態にあるのは一機か二機あるかないかと言った所。
幸いクライ・ウルブズの機動兵器部隊は、長くても数日以内に再戦が確実視されている第二次オーブ解放作戦地球連合艦隊に八割強の機体が参戦出来る見通しが経っている。
とはいえISA戦術思想の要である母艦が使い物にならなくなっているから、クライ・ウルブズの機動兵器部隊はしばらくよその艦に間借りする事になる。
特機級の大型機体が今は無いとは言え、スペリオルドラゴン然り、ニルヴァーシュ然り、インパルス然り、運用に特殊な設備なり何なりが必要となる機体ばかりだ。通常の空母や輸送艦では効率的な運用は望めない。
エペソが被弾を艦首モジュールに集中するよう差配を振るった事で、タマハガネ本体に及んだ損傷は小さいとはいえ、タマハガネの再運用可能な状態を待つわけにも行かず、悪条件なりの運用で目を瞑るほかないだろう。
そしてタマハガネの後部艦橋では、刹那とロックオンが警戒に当たる中、スペリオルドラゴンとステラのエルアインスに抱えられたクロスボーンインパルスが、ゆっくりと床に下ろされようとしていた。
クロスボーンインパルスだったものと言うべきかもしれない。武装のほとんどは喪失し、ビームシールドを備えていた左腕とスクリューウェッブを振るっていた左足だけが無事で、右腕と右足を失っている。
胸部や腰アーマーにも擦過傷や焦跡が留まっており、どれだけの苦闘を繰り広げたのかその姿から十分に推し量れるものだろう。
これがハレルヤとアレルヤ、そしてセルゲイのティエレンタオツーと死闘を繰り広げながら、戦闘不能にまで追いやった代償であった。
痛ましい姿のままうつ伏せに安置されたクロスボーンインパルスの周囲には、念の為にコクピットを切り開くナノチェーンソーやレーザーバーナーを持った整備班と、医療班が待機している。
これだけ機体に損傷を負っている以上は、パイロットもなにか怪我を負っている可能性が高い。場合によっては、機体は帰還、パイロットは死亡などという事態とてありえる。
先に帰艦していたアウルやスティング、セツコやデスピニスと言ったシンと親交の深い者達が、それぞれの顔に心配そうな表情を浮かべてコクピットを外部から開く作業を見守っている。
クロスボーンインパルスの対面にビークル形態に変形してコンパクトになったニルヴァーシュが鎮座し、コクピットから降りたエウレカとレントンも心配そうに――若干様子は違うが視線を向けている。
今回の激戦が初陣であったというのに、エウレカの方はまるで堪えた様子はなく、ニルヴァーシュの変則機動に上下左右前後斜め方向に引っ掻き回されたレントンは、反対に青白いばかりの顔色である。
一応ニルヴァーシュを祖とするLFOは、ヘッドギアだけ着ければ私服でも操縦可能な簡単な仕様なのだが、従来の兵器とは異なる変則的な機動を行う機体なので、耐G使用のスーツの着用がお薦めだ。
MSと比べて小型の機体である事と、テスラ・ドライヴの機能をボードと変則機動に割り振っているので、パイロットに掛かる負荷を他の機体ほどに減殺できていないのだ。
ヘッドギアだけ着けていたエウレカに対し、きちんとパイロットスーツを着用していたレントンは、戦闘中に吐くものが胃液しかなくなるまで嘔吐していたが、ヘルメットの吸引機が作動し顔を汚さずに済んでいた。
それでも口周りが胃液と鼻水で汚れているし、いまも魂が口からはみ出しているような状態だ。クロスボーンインパルスの方を向いたのも、特に意識しての動作ではなくエウレカがそちらに視線を送ったのにつられただけだ。
自分達も相当疲弊しているだろうに、ステラ達はシンの安否を確認するまでその場を梃子でも動かないと決めている様子。
メカニックの一人が外部操作でインパルスのコクピットを開き、中を覗き込んでうなだれているシンの姿を見つける。
力無くぐったりとしている姿から、前大戦時にスレードゲルミルとの二度目の決闘で血塗れになって倒れた時のことを思い起こし、メカニックは慌ててコクピットの中へと体を入れた。
自分より一回り年下の少年の身を心配する純粋な気持ちと、DC有数のエースに死なれては困るというドライな感情が半分ずつ。
インパルスはうつ伏せに置かれた姿勢だから、シンの体を固定しているベルトを外せば、後は落ちてくる体を受け止めるだけでいい。年齢から言えば標準的な体格のシンの体は、メカニックの腕にはさしたる負荷を与えない。
赤いパイロットスーツの中の体にどれだけの負荷がかかったのか、シンの体はすっかり脱力していて、どうやら気絶しているらしかった。
医療班が自分たちの出番か、と動く姿勢を見せ、ステラやアウル達がおい、と慌てる中、シンの口から大きな音が零れて格納庫の中に響く。
ぐおおおお、と猛獣か何かの唸り声のようなそんな音である。
「……シン、寝てる?」
と、痛々しいまでの沈黙が満ちる中、ステラが小首を傾げながらぽつりと言う。そこでまた、ぐうぐう、とシンの寝息が響いた。
超兵二人と最高峰のベテランを相手に戦い抜いた事で蓄積した疲労と、極限まで削った神経が摩耗し、戦闘が終わったという事実によって張り詰めていた緊張の糸がぶつりと切れて、肉体がすぐさま疲労を癒しにかかったのだろう。
メカニックに抱えられた姿勢のまま、シンは深い深い眠りの海の底に沈み、周囲の視線と雰囲気に気づく事もなく眠り続けた。
気まずい沈黙はそのまましばらく続いたが、結局は無事だったことから、安堵した雰囲気に変わるのに、そう時間はかからなかった。
*
クライ・ウルブズとロアノーク艦隊、そして両陣営の本命の艦隊同士の戦闘の第一ラウンドが終り、DC側は旗艦タケミカズチを中心に、オノゴロから派遣されたドック艦に損傷艦を収容して陣営の立て直しを図った。
四方に海ばかりが広がっている中に、工場をそのまま巨大な水晶の塊の上に乗せただけの様に見えるドック艦セプタが数隻あり、何隻もの船を収容して忙しなく自動修復機構とメカニックが動き回っている。
海中からの奇襲に成功し、圧倒的な戦果を残したメカゴジラ三体もドック艦の手の中に包まれて、戦闘で一気に放出した弾薬の補給を受けている。
最低でも60メートルもの二足歩行型恐竜の形をしているメカゴジラは、そのまま直立した姿勢を取っている。
威力は強大だが、さすがに前例のない兵器であるために整備性などはあまり良い機体とはいえないのが欠点で、通常の特機に倍する時間を要している。
波しぶきを受け陽光に煌めくその姿は、味方にすれば頼もしいことこの上ない守護獣であり、敵からすれば目にする事さえ呪わしい破壊神に他ならない。
メカゴジラ同様に友軍からは万軍にも匹敵する信頼を寄せられているクライ・ウルブズが、合流地点に姿を見せた時、その姿を見た者はまず誰もが悲嘆の吐息を漏らした。
前大戦でこの世の常識を覆す異常な戦いの様相を見せた最終決戦も無事に戦い抜いたクライ・ウルブズが、いまは航行するのもやっとという痛ましい姿が帰還してくるとは。
二隻の僚艦どちらともそれ以上の被弾を受けており、この三隻はもう戦線に復帰するのは無理なのではないか、と目にした者全員の脳裏に悲観的な考えが浮かんだほどだ。
やがてドック艦の中でもひときわ巨大な、まるで紫水晶の塊のような巨船セプタンに傷ついた体を預けたタマハガネ、カイゼルオーン、ジャピトスの船員たちはようやくに緊張に固まった体と精神をほぐし、安堵の息を吐く事が出来た。
被った損害は許容範囲を超えているが、与えた被害はそれ以上の筈である。二、三日は地球連合も動く余裕はあるまい。よほどの強硬策を強引に推し進める様な輩がいなければ、少しだけ休む事が出来るだろう。
また、窮地に駆けつけたミネルバほかザフト艦隊も同道している。大洋州連合を含むカーペンタリアのザフト艦隊も、この場所で合流する予定だったからだ。
巨大ドック艦セプタンとDC艦隊旗艦空母タケミカズチ他、大洋州連合艦隊の空母ヘレジタッドやザフトのミネルバ、ボズゴロフ級各艦が合流を果たして、壮観な眺めがそこに出来上がった。
ロアノーク艦隊との戦闘で被った被害の報告を行うべく、エペソはアルベロを伴ってセプタンの作戦室へと向かう事になった。本隊との合流からわずか三時間後の事である。
セプタンの大本がなんであるか知っているエペソとしては、アレがこのような使われ方をしている事に皮肉めいた考えを抱いたものだが、陣営によっては使い方も異なるものであろうと考え直す。
おそらく他にもズフィルード・クリスタルを分割し外部からデータを送り続ける事で、一定の方向性に形状を変化させた艦が、産声を上げつつある筈だ。このセプタンの姉妹艦も今後数を増やす事だろう。
セプタンは内装外装一切をズフィルード・クリスタルで構成されていて、その上に地球系技術の施設を設け、DCの技術で制御できるように造り変えた船であり、全長は一キロメートルを越す。
ドック船とはいうものの装甲材をそのまま弾丸として射出するクリスタル・マスメルや狭域に放射する改良型オメガ・ウェーブのほか、レーザー機銃やミサイル発射管も増設されていて下手な戦艦など歯牙にもかけない戦闘力を誇る。
内部にズフィルード・クリスタルの自己修復機能と自己進化機能を応用した生産施設と工廠を備えて、ラビアンローズ級五隻分に相当する工業力も持っている。
地球の七割以上を覆う海洋戦闘においては戦略拠点と呼べる代物であった。
セプタンやセプタの大本となった『最後の審判者』やゼ・バルマリィ系技術の数々をどうしてDCに与える気になったのか、エペソは随分前から考えていたが、いまだに明確な答えは見つからずにいた。
生前の世界でαナンバーズとの戦いの果てに至った、地球人の行く末を見てみたいという考えのせいだろうか? それだけだろうか、それではまだ足りない様な気がする。
だが自問に対し自答に至る前に、エペソは目的の場所へとたどり着いていた。タケミカズチに乗船し司令を務めているトダカや主だった艦の艦長クラスが顔を揃えていた。
総帥から対等の扱いを受ける緑の髪の武人に対し、これまでの壮絶なまでの戦果を知るDCの面々は畏怖の混じった眼差しを向ける。
セプタン内部の作戦室は、広大な船体に相応しく大規模な大学の講堂のようだ。四方の壁全てがモニターに変わる仕様の室内の壁際に立っていたトダカが、エペソの入室を確認してひとつ頷き、会議の始まりを告げる。
艦隊を退いた地球連合軍が、キャリフォルニアベースから出港した後続の艦隊と合流を果たすべく北東に針路を取って船足を急がせている事は確認されていて、クライ・ウルブズと一戦交えたロアノーク艦隊はかろうじて合流を果たしている。
再度戦闘を試みるにしても再び交戦海域に到達するのは、一週間前後あとの事であろうと推測が立てられている。
負傷者や損傷艦の受け渡しと損失した戦力の補充、ズタズタになった指揮系統の再構築を考慮の内に入れれば、一週間という時間はむしろ早過ぎるくらいかもしれない。
もっとも、絶対的な数量において劣勢以外の何物でもないDCも、被った被害の再補充に要する時間を考えると可能な限り不利な状況での戦闘は避けたいのが本音だ。
大洋州連合とザフトの増援と合わせた戦力ならば、まず数の上でも互角に戦えようが地球連合の船が一隻沈む事と、DCの船が一隻沈む事の意味は大きく違うのである。
一通り現状の確認と報告を終えたトダカが、やや硬質の視線をエペソへと向ける。予定であったら不意を突いたクライ・ウルブズの突入によって、連合艦隊に大損害を与える筈だったのだ。
それが相手の待ち伏せによって無効となり、想定が崩れる事となった。しかもロアノーク艦隊の戦力を抽出しながらも、連合艦隊はDC艦隊に倍する以上の戦力を整えて来た。
前大戦から経過した時間は、DCだけでなく地球連合にとっても失った戦力と生産力を補うのに大きな意味を果たした時間だったということだ。いかんせん消耗戦となるとDCには厳しい目しかない。
第二次世界大戦の頃からアメリカという国の工業力は化け物なのだ。カサブランカ級護衛空母を約一年間で五十隻も建造している。正規空母より小型とはいえ、一週間に一隻建造したペースになる。
技術的にはさらに進歩した現在、AFCで人材を多く失いはしたが、赤道連合の併合や統一なったアフリカと南米と同盟関係を結んだとはいえ、DCでは到底望むべくもない工業力だ。
「タマハガネだが巡航速度も出せぬ。機動兵器部隊も全ての戦力を動かす事はできん。
使えるのはバルゴラ三機、インパルス、スペリオルドラゴン、ガンダムエクシア、ガンダムデュナメス、ガンダムヴァーチェ、ビルトシュバイン、エレオス、ガーリオン・カスタムだ。
予備機を当てて補充し、別の艦に乗せて運用するほかあるまい。幸いにしていかに地球連合といえども本土に侵攻する戦力を割く余力はない。南米と赤道連合の牽制が利いているであろうからな」
そう断言するのはエペソである。今回の地球連合艦隊の主力は、地球連合の盟主たる大西洋連邦からなっている。
ユーラシア連邦は前大戦時でのアラスカ戦で失った膨大な数の兵力がいまだ十分に補充できず、カタロンや親DC派の各国にザフトのジブラルタル基地と戦火を交える相手が多いことからさして戦力を回す事ができなかった。
東アジア共和国はDC側に着いた赤道連合とDCの極東方面軍との睨みあい、さらに旧日本国、朝鮮半島、ウィルキア王国とDCの間で不穏な動きがあると察知し、むやみに軍を動かすことを嫌っている。
オペレーション・フューリーを主導しながらなにも結果を残せなかった事の失点を取り戻そうとしていた大西洋連邦としては、面子回復と盟主としての地位確保のために自軍が戦果を上げる必要があり作戦を強行したのだ。
すでに第二次オーブ解放作戦を失敗と見做すのに十分な損害を与えた筈であるが、おそらく大西洋連邦は、再度の攻撃を命じる筈で、それをDCは迎え撃たなければならない。
本来、DCとしてはプラントが積極的自衛権の行使という名目のもと、地球圏各地に送り込んだザフトの降下部隊と連携し、ユーラシア連邦、東アジア共和国に政治的な揺さぶりを駆けて、地球連合の瓦解を誘う予定だった。
地球連合からして最も大きな眼の上のタンコブであるDCの軍事力壊滅を目指して、地球上の戦力を動かす事は想定の範囲内だったので、迎え撃つための戦力を迅速に用意できた。
とはいえこれだけの被害を被ったのは予想外であったが。その後も列席者各員から意見が交わされる。
必然的に熱を帯びる議論ではあったが、異世界人であるうえに異星人でもあるエペソは極めて冷静な表情で、熱くなりがちな元オーブ国防軍現DCの軍人たちを観察している。
「とにかく、策敵網を広く密度も濃くしいて地球連合の動きを即座に感知できるようにする事だ。幸い衛星軌道上はアメノミハシラが制している。月の艦隊はザフトを警戒し動きが鈍いからな」
大西洋連邦に海洋戦力を釘付けにされ、ユーラシア大陸方面に関する作戦行動が遅れに遅れている事が、DC軍上層部では問題視されている事を、この場にいる全員が知悉していた。
一刻も早い決着を望まれる一方で、下手をすればDCの地球戦力の主力が喪失しかねない戦闘に対する危惧もまた、彼らの胸の内で根を広げていた。
*
セプタン内部に設けられたPXでは、つい三十分前からひっきりなしにメニューの注文が相次いでいた。PXでは消費税などが免除されるので一般のスーパーマーケットやレストランよりも価格が安い。
注文主はたっぷりと睡眠を摂取し、疲労困憊状態から無事復活したシン・アスカである。激戦で失った体力を取り戻すべく、空っぽになった胃に栄養の塊をぶちこんでいるのだ。
クロスボーンインパルスの損傷から重傷を負っている可能性も考えられたが、それはすべて杞憂だったようで、シンの体には小さな痣が少しできていた位で、骨折はおろか打撲の跡すらなかった。
ほとんど傷を負わずに済んだのは、最近すっかりと人間の規格をはみ出してきた肉体のお陰だろう。
建国の歴史から日本食と熱帯諸島の食文化の入り混じったオーブ系のメニューを、シンはとにかく片っ端から食べ続けている。
空になった皿が次々と積み重ねられ、がしゃがしゃと勢い良い音を立ててシンのさほど大きいわけではない口の中に料理が消えて行く。
隣にステラ、向い側にレントンやエウレカ、セツコ、スティングらがいるが、そちらには目もくれずに栗鼠(リス)よろしく頬を一杯に膨らませて口を動かしている。
「そんなにがっつかなくても飯は逃げねえぞ」
「おへのふひとふぁってばろ」
「ああもう、喋んなくていいから、さっさと食え」
と、頬杖を突いた姿勢のスティング。一心不乱に食べ続けるシンに呆れた顔を隠せずにいる。おそらく既にシンの胃袋には5、6キロ相当の食料が消えている筈だが、一向に膨れる様子も満足する様子もない。
シンはラーメンを味噌汁代わりに飲みほして、かっこんでいた中華丼を、喉ぼとけをぼこりと膨らませながら嚥下する。今に限ればシンにとってラーメンは飲み物らしい。
スティングとそのほかの面々があきれ顔をする中、ステラだけはにこにこと嬉しそうにシンの横顔を見つめている。なにはともあれシンの元気な姿を見られれば嬉しいのだ。
シンには話しかけても無駄と悟ったアウルが、いまだぐったりと顔色を青くしているレントンの方に目を向けた。こっちはこっちで泥の様に眠った後も疲れが取れずにいる。
初陣としては現在もっとも苦しい激戦区に身を投じ、シンの初陣の時をはるかに上回る戦果を挙げている(ほとんどエウレカの功績だが)。
だがレントンの体の方はまだまだ発展途上の青少年のモノに過ぎず、ニルヴァーシュで長時間の戦闘に耐えるのには、造りが足りないので時間が経っても回復しきれていないようだ。
エウレカが気を遣って、ジュースなら飲める? 大丈夫? と声をかけてはいるが、レントンはかろうじて頷いているきりで、あーだの、うーだの、言葉にならない声を返すのが精一杯である。
デカンタになみなみと注がれていた紅茶を一気に二リットル近く飲み下して、ようやくシンは一息を吐いたらしく、ふう、と満足げな声を出す。
身体陳謝の活性化と満腹神経などの操作を行っているから、短期間での多量の食物摂取も一切の無駄なく効率的にエネルギーに変えられる体だ。あともう一眠りすれば完璧なコンディションになるだろう。
余は満足じゃ、とでも言いたげな様子でシンは自分の腹をさすり、ギ、と背もたれに体重を預けている。この姿を見ると、とても地球圏最強の一角に名を連ねるスーパーエースであるとは信じられない。
食後のコーヒーに口をつけ始めたシンは、ここでようやく机に額を当てているレントンと、心なし元気のないセツコの様子に気づく。
「レントンにセツコさん、元気ないですね。ちょっと疲れちゃいましたか」
「……」
「ちょっとっていうか、みんなすごいね。あれだけ戦ったのに、あんまり疲れている様に見えないし」
答える気力が無いのがレントン、手の中のクリームソーダのストローをいじりながら返事をしたのがセツコだ。から、とグラスの中の氷が音を立てる。
とけかかったバニラアイスと緑のメロンソーダがとろりと混ざって、甘く美味しそうな具合になっている。ストロベリークリームソーダとマンゴーフロートに続く三杯目である。
クロスボーンインパルスを半気絶状態で着艦させた時の様子はどこへやら、今のシンはケロっとしていて、あの時の心配は何だったのだろうと、シンとステラ以外の全員がなんとも釈然としない気持ちになる。
レントンほどではないにしろ、まだ新兵の域にあったセツコには、精鋭しかいないロアノーク艦隊との戦闘は荷が重く、機体とパイロットに目立った傷なしに戦い終える事で来たのは奇跡に近い。
チーフと中尉には感謝してもしきれない、と危うい所を何度もカバーしてくれた二人に対して、セツコはあらためてお礼をしようと決めていた。
「ロックオンとティエリア」
唐突な台詞はステラである。PXの入口にちょうど名前を挙げた二人の姿が見えたのを目撃したらしい。義眼のスナイパーと中性的な少年の二人もシン達の集団に気づき、足の向きを変えた。
ロックオンが片手を上げ、よう、と挨拶をしがてら近くの椅子をひっぱってそれに腰かけた。ティエリアもロックオンと同じようにしてその隣に座る。
二人は売店の方で買い物を終えていたようで、ロックオンの手には缶コーヒーが、ティエリアの手にはミネラルウォーターの500ml入りのボトルが握られている。
「おーっす、二人ともお疲れさん。特にロックオン、助かったぜ、いいタイミングで来てくれたからさ」
だらしなく体を伸ばし、フルーツジュースをちゅーちゅー啜っていたアウルが、とても兵隊とは思えない砕け切った調子で声をかける。
木安いという年長者に対する敬意が欠片もないようなものいいではあったが、刹那とロックオンが間に合った事で戦況の天秤が傾くのを防ぐ事が出来たのは事実であるので、アウルが感謝しているのは本当の事だ。
「いいさ、気にすんなよ。こんどおれがピンチになったら助けてくれればそれでチャラさ」
「なんだよ、ロハじゃねえの?」
「借りは借り、貸しは貸し、てな。ま、とにかく全員無事だったのは幸いだな。クルーの方にもけが人は出ても死人は出なかったんだろう?」
「被弾が艦首モジュールに集中してっかんね。あそこだけ取り換えりゃ比較的早く修理も終わるだろうけど。でも艦橋のクルーにも怪我人が出たってよ。代わりの用意も必要だし、結構大変なんじゃん」
「そりゃ、あれだけ追い込まれたからな」
擬似太陽炉搭載機を投入した三大国との戦いを思い出したのか、ロックオンの声はいささか暗い。
「そういえばロックオンさん、デュナメスとエクシアのGN粒子の色が違いましたけど、どうかしたんですか?」
ティエリアにもさんざん聞かれた質問をしてきたのはセツコだった。呼び捨てでいいと以前言っておいたのだが、遠慮しがちな性格とあってか敬称付けはしばらく続きそうだ。
「太陽炉を特別なのに取り換えたんでね。お陰で電力供給なしでも稼働するようになったし、おまけでグラビコン・システムがあるからな。いろいろと出来る事が増えたのさ。アヘッドの時よりも活躍するからよ」
「あまり調子に乗らない方がいい。それにエクシアとデュナメスは譲渡したとはいえ当社の機体だ。あまり傷モノにはして欲しくないな」
「分かっているって。そう釘を刺すなよ、ティエリア。それよりステラとアウルはどうするんだ。エルアインスとエムリオンはもう使い物にならないだろう?」
「あー、まあ適当になんか回してもらうよ。おれ的にはバルキリーとか興味あっけどね」
「ステラは何でもいい」
「おいおい自分の命を預けるんだぜ。もう少し真剣に考えた方がいいんじゃないか?」
「どんな機体に乗っても活躍して見せるって意気込みがあんだよ。それに睡眠学習受けてっから、バルキリーだろうがグルンガスト弐式だろうが機種転換訓練は必要ないしね。
ま、もともとコクピットを共通規格で作るようになってるし、なに回されても壱日以内で乗りこなして見せるって。な、ステラ」
「うん。なんでも平気」
「それそれは、頼もしい事だけどな」
かしゅ、とプルタブを開き、ロックオンは缶コーヒーに口をつける。おそらくはアウルとステラの言う通りなのだろうが、どうにも普段の様子が普通の少年少女とさして変わらぬから頼りにしにくい。
「そういうや刹那はどうしたん? 大抵ロックオンかデスピニスと一緒だろ?」
「ああ、刹那ならエクシアの所に居るぜ。サキガケ用のセブンソードの受領と装備に立ちあっているからな。それに、あいつはガンダム馬鹿だからなあ」
「ガンダム馬鹿か。らしいといえばらしいけど」
ガンダム馬鹿という言葉に、シンは以前に刹那にインパルスはガンダムだ、などと声を掛けられた事を思い出し、なんとなく刹那らしいと納得できた。
刹那はなにか自分達の知らない事情で、ガンダムタイプのMSに深い思い入れがあるらしい。
それはまるで事情を知らないシン達からすると共感を得にくいものだが、刹那という人間の核を担う重要な因子である。その事をシン達が理解する日が来るのはまだしばらく先の事。
半分ほど溶けたバニラアイスをひと掬いして口に運んでから、セツコが口を開いた。アウル達の新しい機体の事も気になるが、今度の戦闘の事がそれ以上に気になっている。
力量的に見劣りする自分が次の戦闘で足手まといにならないか、という懸念もありさらに大規模になるだろう次の戦闘に、大きな重圧を感じているのだ。
「ところで、次は私達はどういう扱いになるのかしら? タマハガネが使えないから別の艦が回されるか、別々に違う部隊に配属になるのかな」
「母艦が使い物にならなくなったのは初めてだが、まあおれらはまとめて使う方が戦力になるからな。そこの所は総帥も上層部も分かっているから、ばらばらに扱われる事は無いだろうぜ」
腕組みをしながらセツコに答えたスティングに、シンも続く言葉を出した。
「たぶんこのままセプタかセプタンを戦闘に持って行くと思いますよ。色々と装備が特殊な機体がおれ達には多いし、弾薬の補給はともかく修理にはセプタ並みの設備か改修を施した空母じゃないと効率悪いですから」
「そうかな。みんなと一緒なら心強いけれど」
「セツコさん、弱気な事を言っていますけど普通のパイロットじゃ相手にならないくらい強いんですから、もっと自信を持っていいと思いますよ」
「シン君に言われると、なんだかそうは思えない」
「ええ! おれ、目は節穴じゃないですよ」
「そういう意味じゃないけど」
子供っぽく拗ねた調子のシンに、セツコはどういったものかなと少し困った様子を見せた。腕を褒められた事は嬉しいし、実際その位の実力は自分にあるのだろうとは思う。ただ自信を持てるかと言うと、少し難しい。
シンは、普通のパイロットでは相手にならないような実力者が、まるで相手にならない規格外のパイロットだ。そのシンを前にして自分の腕に覚えがあるというような意識はとてもではないが持てない。
シンほどの実力者に腕を認めてもらう事は普通、自信につながるものだが、互いの力量が隔絶し過ぎている事と、セツコの自虐の色をかすかに帯びた性格だと、素直には受け止められないものらしい。
*
さて、艦隊司令部との会合を終えたエペソは、セプタンとセプタ各艦と共に運び込まれたオノゴロからの補給物資の目録に目を通していた。
アルベロやジニンら機動兵器部隊の隊長格と、機体を喪失したアウルらの乗機の選抜を行う為である。厳めしい顔つきの三人でセプタン内部に複数用意されている部屋の一つに籠って、相談中である。
室内にある中央の大きな机に投影されていた各補充機体のリストとカタログスペック、外見のホログラフを見ていた三人の目と思考が、そこでぴたりと止まった。
オノゴロから送られてきた準特機(?)五機のリストである。並み大抵の奇抜さにならすっかり慣れたアルベロとエペソはともかく、二人ほどには覚悟完了していないジニンなど頭痛を覚えてこめかみを押さえている。
「ビアンの趣味、であろうな」
なにか、こう苦々しさを諦めという名の型に嵌め込んで、侮蔑という名の風で吐き出した様な呟きであった。要約すれば、ダメだコイツ、になる。ダメさが一回り足手逆に凄いとさえ思える。
「いや、流石にビアンでもこれは、技術屋の誰かのアイディアを間違えて開発してしまったのではないか?」
「どうだかな。しかし、これは。これを実戦に投入するとはな。カタログスペックは、まあ、大したものだ」
「……戦力にはなるのか」
戦力になることを歓迎しているというよりは、『なってしまうのか』という逆の方向の思いが込められた重たいアルベロの一言だ。コレを運用する組織の一員である事がたまらなく恥ずかしい。
後年、これを知った人々はDCをどのように評価する事だろうか。少なくとも笑い物になる事は間違いない。
言葉を発する余裕のないジニンを置いて会話を進めるアルベロとエペソであったが、二人の間に、確たる共通の考えが生まれていた。
この機体は絶対に自分達の部隊では使わない――だ。およそ戦力になるなら選り好みをしない二人にさえ使用を躊躇させたのは、かつてミナの判断によって封印されていたビアン印の五つの機体である。
それは、かような名前を与えられていた。
ケロロ、タママ、ギロロ、クルル、ドロロ、と。それは地上・水中船を主眼に置かれた準特機扱いの二頭身のカエル型機動兵器であった。とりあえず量産の予定は一切ない。
――つづく
今日はここまで。ご感想ご指摘ご助言お待ちしております。ではでは今年が皆様にとって良い一年になりますように。
地球侵略部隊wwwwwwwwwwwwwww
カテジナさんとか来てないだろうなwww
乙です、今年もよろしくお願いします
乙。
これは隊長機に乗りたくないw
確かアニメだとロボット出てくるんだっけ>ケロロ?
ならスパロボに参戦してもおかしくはない……のか?
こいつはミナも頭を抱えずにはいられないwwwwwwwwwww
トチ狂ってオトモダチにでもなりにきたでありますかwwwwwwwwww
「おかしいですよビアンさん」
ケロロ小隊も吹いたが、しかしセプタてwこと防衛の一点なら間違いなく最強の戦艦だろwしかも周りにはインパルスカスタム、ニルヴァーシュ、ヒュッケバインエクシア、デュナメス、スペリオルドラゴン、メカゴジラ×3etcが布陣しているわけだし……
負ける気がしないw
問題はセプタの航行速度か?
ケロロは流石に予想外……その上、セプタだと?
チート性能で錬度の高い艦載機何とか退けて敵母艦にダメージを与えたと思ったら、パージされた外郭部の中から出てきた一回り小さな船がありえない変形で巨大ロボットになって敵さん涙目な状況しか想像できん>セプタ
ケロロ→バランス型(射撃寄り)
ギロロ→火力重視
クルル→偵察・支援
ドロロ→近接戦闘
タママ→バランス型(格闘寄り)
こんな所かな?
まてwwwwww!!正気ですかい総帥!!でもそこにシビれる憧れるwwwwww!!
ロボットなら無問題、どんどんやれ。それにステラたんなら喜んで愛機にするでしょう。
あれが最後のネタ兵器とは思えない。いつか第二、第三の――どころじゃなかった。
総帥の脳って、どこか別の世界に繋がっているんじゃないかと邪推したくなるほどネタに溢れてるんですね……
>>514 >総帥の脳って、どこか別の世界に繋がっているんじゃないかと
別の世界につながる能=脳にクロスゲートパラダイムシステムがナノマシン状になって埋め込まれてる。
……つまり総帥=イングラムだったんだよ!
まあ待て、第二魔法とか境界を操る程度からの入れ知恵かもしれんぞ
情報どころか人間が異世界から現れる世界だからなぁ。マブラヴみたいに因果流出とか起きているのかもしれない。
>>514 もっと解りやすい理由があるだろう。
「アニメに出てきたので造ってみた」
コレが一番しっくり来ると思うが。
乙です!
誰も気付かない(言わない)ので言わせて貰うが……
>>さらに旧日本国、朝鮮半島、ウィルキア王国とDCの間で不穏な動きがあると察知
鋼鉄の咆哮の超兵器群と究極超兵器すら凌駕するウィルキア近衛艦隊最強の水上艦、もしくは超兵器ハンター第零遊撃部隊参戦フラグが!
四国は味方側だから……ハワイ辺りがヴォルケンに真っ二つにされるのか!?
でも最近はスパロボの制作チームが暴走しているから下手したらケロロ参戦しないかスゲー不安です。
……まさか5体合体グレートケロンで参戦しないですよね。
>>519 超波動砲と超重力砲とレールガンβに核VLSを積んだ双胴戦艦やら
ハウニブーWを満載した巨大航空戦艦が出撃するとかマジ震えてきやがった…怖いです;;
総帥・・・貴方は本当のアホですw(賛辞)
そういやズフィルードクリスタルは原作ゼオライマー同様
設定上ではパイロット込みの修復もこなすはずだったな
セプタ系のクルーの生存率は高そうだ
下手すると知らない間に複製が生まれたりしそうだが
ここのシンならあの機体を使いこなしてくれそうだな…
SUMデスティニーを!!
>>523 総帥版のシンなら、それで金翅鳥王剣(インメルマン・ターン)もかませるよ多分
う〜む、やはりケロロはとっぴ過ぎたようで。最初はWのアンソロジーにあった、機械獣が着れる大きさの巨大ボン太くんとかピクドロン、メカギルギルガンとか想定していました。
そして鋼鉄の咆哮ネタがわかる人がいて嬉しい限り。私は巨大戦艦が無数の大砲をぶっ放し豪快に戦うのが好きで、さらにその巨大戦艦を力も大きさも劣る船で破壊することにカタルシスを覚える私には大変楽しゅうございました。
80ノットを誇る巨大戦艦だのレーザー戦艦だの双胴戦艦だの巨大列車砲と戦う時のなんと楽しかったこと。あとあら、葉巻には笑った。ノリといいドリルといい最高。
でも最近ふと思うのは、文章力が落ちたのをネタで誤魔化しているのではないか、スパロボ未参戦のゲームやらキャラやらを出していいものか、と悩んでもいます。出しまくってはいますが。
あと少し寂しいので11さんは勿論、お休みされている職人さんや新しい職人差が来ないものかしら? とも思います。
なにはともあれご感想頂けて嬉しい限り。今後もよろしくおねがいします。ご質問あればまたお答えさせていただこうと思います。では。
>スパロボ未参戦のゲームやらキャラやらを出していいものか、と悩んでもいます
これはルール的に全く問題無いんで悩む必要無いと思いますよ
・種・種死・00を話の主軸に据える
・主役はあくまでロボット
この二点さえ守れば後は基本何やっても構わないと思う
もっとも最近は他ならぬ本家スパロボの参戦基準がかなりナンデモアリになってきてますけれど
ボトムズは以前はともかく今は版権がほぼバンダイの手中に収まってるのに中々でないね
今や「小さ過ぎて」とか「世界観が」なんて理由にならないのに
東方さんとか衝撃さんとか人間(?)も出ているしな。
まあその二人は例外としても人間サイズの強化服である
テッカマンブレードとオーガンが参戦済みだしな
そのうちミクロマンも参戦しないかな〜
WMの機銃でもそこそこ攻撃力あった以上、ATの武器もちゃんと効果ありそうだな
つーか、ATは局地制圧戦兵器だから攻撃範囲抑えてるだけで、攻撃・防御共に地味に強力だでよ。
元々ボトムズ世界は、
恒星間ミサイルでの惑星破壊戦→(迎撃衛星の進歩)→宇宙船間による惑星破壊戦→(可住/資源惑星の減少)→地上戦兵器による局地制圧戦
の過程を経てあの時代に至っているわけで……。
ATの武器って、アーママグナムとか、人間が打てて戦車を破壊できるような拳銃が普通に流通している世界で、あのサイズの重火器なんだぜ?
物語内でのATが異様に脆く感じられるのは、動力に使われるポリマーリンゲル液が強燃性で、火器攻撃が装甲突き破ってMCに到達すると爆発を起こすから。
連投すまないが、だからATを忠実に表現すると、
攻撃力、装甲値、回避力の全てが高い強力なユニット。
……ただし、HPは200で攻撃武器は全て弾数制の実弾or格闘武器、特殊能力は一切無し。
533 :
槍:2010/01/06(水) 18:02:41 ID:???
>>532 馬鹿!分からん!!
要するに
ガーランド?
待て待て、コレも付け加えさせろ
転倒すると即死
総帥以外の職人さんが音沙汰無いのは確かに寂しい
11氏は今でも更新はたまにしてくれるし、ATX氏もそろそろ復帰してくれそうだけど、鉄SEEDの人とかシンパチ氏はマジに行方不明だからなあ
>>533 ウィンキー時代のオーラバトラーが近そう。
ビルバインとか、マジンガーが装甲500だか600だかの時代に装甲750もあった。
ただしHPは2000(マジンガーが3500ぐらい)
>>531 最低野郎として言わせて貰う。
待て待て、懲罰部隊の機甲猟兵が装備するパイルバンカー付き対AT狙撃ライフルなら兎も角、アーマーマグナムじゃ標準型ATのスコタコの正面装甲も抜けないから。
キリコの必殺技、死んだ振りからのコックピット銃撃も、アーマーマグナムが正面装甲抜けないからパイロットか装甲の隙間、カメラを狙う苦肉の策だ。
そもそもATはあくまで装甲騎兵。 歩兵の延長線上の機体だよ?
タイマンで正面から戦車や戦闘ヘリとやり合ったらほぼ100%敗北するような最底辺(ボトムズ)の使い捨て扱いの代物だぜ。
何億機と生産する為に性能機能装甲は最小限、生命維持装置すら存在せずパイロットスーツに依存している機体、
しかも作中スクラップからまともに動く機体がでっち上げられる軽トラどころか原付並みの扱いの機体の装甲が厚いわけないだろ!
実は、ATの前身のMTの時点で、当時のMBTを性能で圧倒したというボトムズ世界の歴史があったりするんだな、これが……。
設定上、MTは、恒星間航行文明が、それも、物語の話みたいに疲弊しきる前の段階で作ったMBTを普通に撃破し、その武装に当たり所がよければ耐える性能を持っていて、ATの武器、装甲はMT時代よりも発展していたりする。
アーママグナムについては、『戦車』を破壊できるような銃と書いた。
『現実世界の戦車』をと書いたほうがよかったかいな?
>>538 >ATの武器、装甲はMT時代よりも発展していたりする
それは初期の「ウルフシリーズ」の話じゃね
スコタコは装甲などの安全機能がオミットされたからペットネームが「ドッグ」に格下げされた
全部が修理費10で済みそうとかネタ的に最高じゃね?
下手するとネゴシエイタースキル無しでも無料だったりして・・・
スパロボ的世界観だとそれはないと思うよ。
スコープドックが簡単に修理可能なのは、
それこそ自動車並みに大量戦産されたからだし……。
スパロボ世界観内での運用なら、バララント(スコープドック作った星間連合国家の敵国)でスコープドック運用するくらいには金と手間が掛かるんじゃないかね?
エルガイムと同じで基本的に別の星系の話だからな
アストラギウス銀河が地球ある銀河と別とは限らんが
単に太陽系が辺境だから接点ないだけで
そこら辺はどうすり合わせるかだろうね。
ボトムズは、ギルガメス、バララント共に百年戦争で可住惑星&資源惑星が極端に減ってる状態だから、
未知のエネルギー資源が豊富にある未確認の可住惑星なんか発見されたら双方大挙して押し寄せてきかねないしさ。
ゲッター線のバースト現象辺りを物語の全市に組み込んで、その関係で発見されたとかにすればやりやすいだろうけどね。
ゼントラーディとメルトランディみたいな感じで、巨大な宇宙艦隊が二つが突然押し寄せたかと思ったら、
地球近縁で艦隊決戦を慣行、大分減りはしたけれど、多くの艦艇と惑星突入艇が地球に降下……くらいの流れにしておけばやりやすいだろうし。
プレイヤー側の組織がギルガメス側と結んで、敵側がバララントと結んで、見たいな感じでさ。
先んじたバララントがどさまぎに幾つかの弱小国家を制圧したとかそういう状況にしておけば、クメン編みたいな局地戦は再現できそうだしねー。
ただ、異能者関連の話をしたければ、地球外に話を持ち出さざるを得ないのがちょっとやりづらいかな?
ゆ「クエント星を太陽系に移動させたのも私だ」
しゅ「グランゾンの力をもってすればキリコとフィアナの乗った廃戦艦を
地球圏に引き寄せることなど造作もありません」
>>537 「(コックピットに)当たらなければどうという事はない」
厳密にいえばコックピットに乗ってる本人にだったりして。
どこのSUMだよ。
どこそにコクピット直撃で片腕失ったとは言え生還した前作主人公ががいるな。
しかもそのまま大気圏突入して。
“前作主人公が“ の間違いだな。
ちなみにガンダムシリーズです。
>>548 元海賊でパン屋の人しか思い浮かばないよ
そうです、その通り。
海賊か……第二次αに登場したことだし、スパロボ参戦作品としてここのスレに現れたりはしないだろうか。
海賊かこれも非合法てき組織だけど、ソルタルビーイングもそうですな。
果たしてソルタルはスパロボにおいてどういう意味合いを持つだろうか?
スパロボ軍団に投げかける波紋も大きいとは思うけど。
異星人だの地底人だの異世界人が大挙襲来してる世界じゃあなあ。
そういえば総帥SEED、異星人や異世界人が現れてますけど地下戦力って出てきましたっけ?
しいて言うならククルか
一瞬、子安声のカレー好き宇宙人を思い出した。
名前が似ているから。
>>554 クルル…じゃなくてククルが出てるな
そういえば彼女はまだカガリのところにいるんだっけ
オウカもウォーダンも居なくなってしまった以上、最早彼女が彼処に拘る理由は無い気がするが
>>557 それってATX氏のほうじゃなかったっけ?
征服王っぽいブライ大帝ね
ヤルッツェブラッキン!!
hiannajo-
hinanjyo-
見て来たよw
相変わらず総帥の守備範囲の広さには驚かされる
しかしあのネタ見ると、ウェイブってガチにサイコドライバークラスだよな…
アトリームにもネバーランド大陸はありましたよ……
地球とは比較にならない天魔クラスの魔法が飛び交う大陸がね……
( 0w0)ノ ウェーイ
>>547 イージスの自爆をコックピット剥きだしの状態で喰らおうがジェネシスの直撃を受けようが対艦刀をモロにぶっ刺されようが
ピンピンしてたキラさんのこともたまには(ry
リミット解除した総帥がキラさん書くとどうなるんだろうかと思ってみたり。
つセーフティシャッター
正確にはエマージェンシーシャッターって言ってるんだけどね。
>547
パン屋さんの人か。
あれ、実は右側にずれてるらしいぞ
お久しぶりに投下いたします。
ディバイン SEED DESTINY 第三十三話 戦前の少年達
ディバイン・クルセイダーズおよびザフト、大洋州連合艦隊が合流した大規模艦隊の中でも、一際異彩を放つ巨大ドック船セプタンの甲板で潮風を浴びながら、手すりにもたれかかった姿勢で瞳を閉じている人影がある。
一時の事とは言え地球の空全てが太陽の慈光を失ったとは信じられぬ青空の下、船体が波を掻きわける音と遠く空を飛ぶ鳥の声ばかりが流れて行く世界の中で、その人影は一体の彫像のように長く姿勢を変えずにいた。
毛先を切り揃えた藍色の髪が潮風に揺れ、はらはらと白磁の肌に触れる様子と、かすかに上下する胸の動きを見れば、その人影が決して彫像などではなく血の通う生きた人間なのだとわかる。
薄桃色のカーディガンを羽織り、孤独な影を鋼の甲板に落としながら思索に耽る書生のような人影は、ティエリア・アーデその人である。
ズフィルード・クリスタルによって船体の大部分が構成されるセプタンの紫色の光を映し、船首に裂かれて白く変わる波しぶきのいくらかは妖しい紫の色を帯びている。
その夢現の中に見た幻かと錯覚に陥る幻想的な波の色の変化に目をやるでもなく、ティエリアは先程からDCの人間との接触を断ち、脳量子波を用いてザフト艦ミネルバや冥王星に居る同胞達と意見交換を行っていた。
ミネルバに配属されたデヴァインとブリングは、共に民間軍事企業ネルガルの社員という立場にあるから、私的な通信を行ってもさほど咎めだてられる可能性は低い。
だが盗聴の可能性を考慮し、また地球からはるか遠方の冥王星に居る同胞とも意見を交わすには、脳量子波によるタイムラグのない通信が最も望ましい。
ティエリアやデヴァインらの懸念事項は、彼らネルガル――と名乗っている異世界勢力ザ・データベース――の独占技術であった筈の擬似太陽炉とは異なる“オリジナル”太陽炉の処遇である。
オリジナルの太陽炉はDC側の技術であるからネルガルの立場としては、圧力をかけるなどできはしないが、戦場の事故を装うなり整備の最中に不慮の事故を装って破壊する事は不可能ではない。
オリジナル太陽炉搭載機のパイロットである刹那やロックオンに聞いた限りでは、GN粒子の制御能力などに大差はないが、擬似太陽炉とは異なり永久機関であることなどの違いはある。
現在、永久機関という代物はサイバスターなどに搭載されている魔術的要素を含んだフルカネルリ式永久機関を除けば、純粋な科学力で作られたものはオリジナル太陽炉のみだ。
そもそも永久機関と言う存在の開発に成功した事は、人類の技術史において途方もない偉業と称賛するに値するのではないだろうか。
もし永久機関の生み出すエネルギーを人間の生命維持に応用する事が出来たなら、それは尽きる事のない永遠の生命を現実のものにし、無限の時を生きることを可能とする存在を誕生させることになるだろう。
人類のあらゆる王朝・国家の権力者たちが海の果てに、いずこにあるとも知れぬ理想郷に、幻想の中に求めた永遠の生命を現実のものとする可能性を秘めた夢の機関ではないだろうか。
異世界のペンタゴナ・ワールドと呼ばれる星系を支配したポセイダルなる人物は、物理エネルギーと生命エネルギーを変換するシステムを開発し、不老を体現したがこれと同じ事がいつかは可能となるだろう。
あくまで太陽炉やフルカネルリ式の生み出すエネルギーを人間の生命維持に転換する事が出来たなら、という仮定の話ではあるが。
ともかくオリジナル太陽炉の生成する色合いの異なるGN粒子や組み込まれているグラビコン・システム、またどのような経緯でDCがその技術を有したのかを知る為に、オリジナル太陽炉は重要な鍵となるだろう。
デュミナス、クリティック、リボンズとザ・データベースの三巨頭も加えての脳量子波での通信は、ティエリアが目を瞑り外界からの刺激を遮断して集中を始めてから、およそ三十分ばかり続いた。
クリティック、リボンズ共に純正の太陽炉に少なくない興味を示し、機会を見て二つの太陽炉を手にする事を考えた様であった。
デュミナスは彼らの組織の根幹に位置する重要な存在ではあるが、自らの意思を表現する事は滅多にない。あくまでクリティックの生み出した生体コンピューターという役割だからだ。
ティエリアらには告げなかっただけで、この時、クリティックはオリジナル太陽炉をDCにもたらした人間を推察し、擬似太陽炉にはない独自の機能が隠匿されている可能性を高く見積もっていた。
ザ・データベースが運用している擬似太陽炉は、転移してきたアルケーガンダムやアルヴァトーレのものを始祖としているが、機体に残されていたデータから、純正太陽炉特有の機能の情報もあった。
トランザムとツインドライヴ、この二つのシステムを果たしてDCが実用に至るまで完成させているかは不明だが(実際にはツインドライヴどころかナインドライヴの開発が行われていたりした)、クリティックの知識欲を刺激するには十分だ。
ティエリアからの報告を受け、クリティックはメモリーの中からかつて記録したイオリアについてのデータを再生していた。
木星探査に訪れていたジョージ・グレンの船に転移したイオリア・シュヘンベルグ。彼もまたこのコズミック・イラとは異なる次元宇宙から死後こちらに来た人間である。ただし彼の転移時期はビアンやエペソよりも数十年も前のこと。
それはジョージ・グレンが世界中にコーディネイターを生み出す為の遺伝子操作技術などを公表し、木星への船路に着いた時期に前後する。
クリティックが冥王星に構えたプラントごとC.E.の世界に転移し、事態の把握とプラントの再稼働を行っていた時期と、ジョージ・グレンの木星への旅立ちは時期を同じくするものだ。
当時、クリティックは地球圏を離れたジョージ・グレンの船の動向を監視すると共に、星系図や星の位置から、現在自分がいる場所が忘れられた太陽系の星、冥王星である事を悟る。
同時に、マスターシステムごと破壊された筈の自分が、どうして無事に存在しているのかなどの疑問はあったが、あるいは時空転移を行うボゾンジャンプに似た現象によって過去か未来の地球圏に来た、と目算を付けた。
無論、広大な宇宙の事、まったく同じ環境の星に空間転移した可能性もないではなかったが、クリティックは木星行きの船の他にも地球圏へ偵察の部隊を派遣し、その歴史や技術水準を調査していた。
結果としてクリティックが一度目の身の破滅を迎える事になった地球世界と酷似しながら、決定的に異なる世界である事が判明する。ラダムの侵略や地下勢力こそ存在しないがなぜか、プラントやコーディネイターは存在していたのである。
ゲッターやマジンガー、ガオガイガーなどといったスーパーロボットのほか、アームスレイブやガンダムなども存在していない世界。しかしジョージ・グレンなどをはじめまったく同じ歴史の流れも存在していた。
ひどくアンバランスな、ちぐはぐに繋ぎあわされた世界――それがクリティックの下した評価である。ただしこれは生前居た世界と比較した場合の事である。
むしろミケーネ帝国、イバリューダー、ラダム、ゾンダー、ソール11遊星主、木連、ウィスパード……と数多の要素を内包していた元の世界の地球の方が異常な環境にあったというべきだ。
ジョージ・グレンの木星探査にまで遡ればほとんど差異のない世界であったが、クリティックは仔細に調査する中で、木星探査船の内部に妙な動きがある事に気づく。
一切の痕跡を残さないハッキングと、完璧な偽装技術をほどこした偵察機によって、木星探査船に出発前には存在していなかったクルーが一名増えた事をクリティックは突きとめる事に成功する。
そのクルーこそがコールドスリープの最中、アレハンドロ・コーナーによって射殺されたイオリア・シュヘンベルグその人であった。
元居た世界と転移してきたこの世界との違いを監視し記録することを決めていたクリティックは、徐々に木星探査船の行動が予定のものと異なる事に気づき監視を強化する事に至った。
イオリアとジョージ・グレンとの間でどのような取引や議論がなされたのかまでは預かり知らぬ事であったが、この時期に既にGNドライヴの開発が木星探査船の工廠にて始められていた可能性があった。
木星探査船の異変に気付いたクリティックは、当時その変化を重要視し少しずつ、慎重に、目に見えぬ病の様に木星探査船の介入と干渉を計画して実行に移していった。
知の記録者として数千年以上の時を活動し、知識の独占欲に目覚めたクリティックにとって、未知の事象や記録、技術は価値あるものと認めたならば何を置いても収集せずにはいられない。
かくて自身同様にこの世界にとってイレギュラーであるイオリアの動向とその影響力は、冥王星プラントの再建と並行してクリティックの監視対象となったのである。
そしてついに木星に到達して羽クジラの化石の発掘や探査を始めたジョージ・グレンらに対し、クリティックはイオリアの拉致という直接的な行動に出た。
自分以外の転移者というサンプルの確保を目的としたこの行動は、地球への帰路に就こうとしていた探査船に対し実行される。
探査船の破壊とクルーの未帰還によって今後異なる歴史を歩むであろうコズミック・イラの世界と、異世界からの転移者の確保という目的は、しかし果たされる事は無かった。
船を襲う何者かの狙いが自分であると悟ったイオリアが、自分自身を犠牲にする事によって、クリティックは目的を果たす機会を失ったのである。
無事ジョージ・グレンと本来の調査船団のクルー達は地球の帰路へ突く事に成功したが、イオリアの身柄を確保する事に失敗したクリティックは、以後の行動にさらに慎重さを期する事になる。
木星探査においてクリティックが直接的な行動を取った事で、地球圏外の知的生命体の存在にジョージ・グレンを始め地球人も気付いた筈だ。その影響によって今後地球圏の歴史も異なるモノになるだろう。
自分の行動によって異なる歴史が築かれ技術が生み出され知識が増えて行くと確信し、クリティックは暗い愉悦を覚えた。
しかしクリティックの予想に反してジョージ・グレンが地球に帰還した後も、記録と異なる様な歴史的事変は起きず、ついにはプラントプラント理事国家との戦争というほぼ記録の戦争と変わらぬ歴史の流れが続いた。
これは少なからずクリティックを落胆させたが、その間にもクリティック以外の転移者達を複数確認した事で、クリティックの関心は自分を含めた転移者達の存在によって変化してゆく地球圏の記録に惹かれる。
ノイ・ヴェルター達によって阻まれた、記録収集の終わった地球文明の破壊――その最終段階まで含めた記録活動を、今度こそこの世界で完遂させて見せるとクリティックは自身の未来行動を決めていた。
その為にも地球圏各勢力に潜り込ませた発展型ディセイバーであるティエリアらの行動には、慎重を期さねばならない。
冥王星プラントの深部の、マザーコンピューター代わりであるデュナミスが収められた部屋の室内で、クリティックはひどく無機質な表情を変える事もなくティエリア達に新たな指令を送った。
*
クリティックとリボンズからの新たな指令を受け終えたティエリアは、醒めぬ呪いの眠りから目覚めた姫君の様に細く長い睫毛を震わせながら、ゆっくりと閉ざしていた瞼を開き、眉間を揉みほぐす。
クライ・ウルブズに所属してからの日々で、人間に対する優越感や見下す意識はティエリアの中で小さなものへと変わっていたが、それでもクリティックは地球人類に対して慎重すぎる位に行動が消極的に思える。
そこまで地球人類を評価する必要性を、ティエリアはいまひとつ理解できずにいるのだ。たしかに先日戦った地球連合の精鋭部隊は強敵だったが、冥王星の戦力を投入すれば地球軍を壊滅させるのは難しい事ではない。
逆にリボンズや他のイノベイターは積極的に地球圏の軍事行動に介入し、勢力争いを自分達の掌の上で好きなように踊らせようと画策している。
ザ・データベースの指導者層の二人の思想の違いが。クリティックとイノベイターの間に確執を生むのではないだろうか。そのことがかすかにティエリアには危険な予兆のように感じられていた。
何を馬鹿な事を――ティエリアは首を横に振って、自身の考えを否定する。そもそもリボンズとてクリティックに生み出された被造物ではないか。
ティエリアには珍しく、やや疲れた様な溜息を吐いたところで、少しだけためらいを含んだ可憐な声が掛けられた。
「あの、ティエリアさん」
デュミナスに生み出された先行型イノベイター(という事になっている)の三人の内の一人、デスピニスである。愛らしい容姿の青髪の少女で、クライ・ウルブズでもすっかりマスコット的なポジションに居る。
気弱でいつも誰かに責められているように不安げな顔をしている少女だが、同胞でありともに長い時間を過ごしているティエリアに対しては、信頼が強く表に出る。
ティエリアは、脳量子波によって思考を交わす事が出来ずいちいち言葉にしなければ相互に意思疎通を行えない事に、煩わしさを覚えたがそれ以上にデスピニスに対する仲間意識の方が強く、きちんと答えた。
「デュミナスに確認はした。ティスとラリアーの事だな?」
「は、はい。二人とも元気ですか? ラリアーはミネルバに居るから戦場でお話は出来るかもしれないですけど、ティスはいまどこにいるか聞いていなかったから」
「ラリアーはデヴァインらと行動を共にしているし、彼自身の戦闘能力も高いから危険な目に遭う様な事はないだろう。ここに居る君と同じだ」
「ありがとうございます。それで、ティスは?」
「…………ティスは、どうやら連合の後続の艦隊にいるようだな」
「え?」
「ヒリングとリヴァイヴと行動を共にしている。リボンズの命令だ。もともとエクシアとデュナメスはヒリング達が搭乗するはずの機体だ。それをDCから取り戻すための措置だろう」
「……」
「そうすることでエクシアとデュナメスが持つあの太陽炉を手に入れる事が出来るし、DCの戦力を削ぐ事にも繋がる。デュミナスとリボンズが承認した事だ。ティスはそのサポートという事だろう」
「では、ティスとは敵同士になるのでしょうか?」
「表面的な立場に限ればの話だ。本当に私達が敵対するわけではない」
「はい」
とデスピニスは答えるが、やや沈んだ様子である事は一目で分かる、ティエリアがここでもう少し何か、デスピニスの心情を慮った言葉をかければこのような事にはならなかったろうが、そこまでの心の機微を求めるのは酷かもしれない。
それでもデスピニスとティエリアの関係は、少しではあるが柔らかなものになってきているのは事実であった。今日のティエリアの応答は、もう少し頑張りましょう、と言った所か。
*
DCが戦力を再結集し陣容を整えている頃、地球連合艦隊でもキャリフォルニアベースやハワイから出発した後続の艦隊と合流し、メカゴジラ三体とバルキリーによって壊滅させられた指揮系統の再編成に追われている。
とくにロアノーク艦隊の被害は目も当てられないほどで、艦隊を構成していた三大国の精鋭部隊のすべてが部隊として機能できない大打撃を受けてしまっている。
東アジア共和国の精鋭部隊“頂武”や大西洋連邦のフラッグファイター達で構成されるオーバーフラッグス、そしてユーラシア連邦のイナクト部隊と量産型ガルムレイドからなる特機部隊。
いずれもが作戦参加当初と比べて半数以下にまで数を減らし、ネオ・ロアノーク大佐直属のカオス・ガイア・アビスの三機こそ無事だが、第八十一独立機動群ファントムペインから抽出された戦力も同様の被害を受けている。
参加した戦力のほとんどが後方の基地に戻されて、修理を受けねばならない状態にある。艦隊の指揮を任されていたネオは、ファントムペインのスポンサーであるロード・ジブリール卿直々のお叱りを受けたばかりであった。
音声通信を切断し、SOUNDONLYの表記がデスク上のモニターから消えるのを確認し、ネオは肺に溜めた空気をゆっくりと絞り出す。
ジブリールの叱責はかつてないほどしつこく粘着質なもので、艦隊の損失を補う為にどれほどの労力を払わねばならないのか、ネオがどれだけ自分を失望させ落胆させたかを延々と言い続けてきた。
ヨーロッパのどこぞの貴族の系譜に連なるジブリール卿は、ユーモアのみが欠如した語彙の豊かな一大英雄譚のごとく喋り続けたのである。
体の中に張り巡らされている神経の中にかなり図太いものがあるネオといえども、流石に三時間に及ぶジブリールの叱責は答えたようで、どっと疲れた様子を見せている。
何か口にする気力も枯れ果てたか、ネオは安いインスタンコーヒーのカップを口に運び、ちびりと一口すする。どこか焦げくさい苦みが口の中に広がり、胸中の苦々しい感情と混ざり合って、ネオの眉間を歪めさせる。
プライベートな空間に戻れば外して机の上に置いている仮面が、どこか自分に同情しているように見えたのはネオの気の所為だったろうか。
とりあえず自分に対する処置は指揮権の剥奪は確実だろう。かといってこのまま安全な後方に戻されるとも考えにくい。死んでも構わない程度の扱いで前線に放り出される目が大きい。
次の作戦は一MSパイロットとしての参加になる、とネオは踏んでいた。とはいえ一応大佐という階級は残ったから、数個小隊か中隊規模の部隊長位の事はやらされるだろう。
正直に言えばもうDCとの戦闘に駆り出されるのは勘弁してほしい、というのがこの時のネオの偽らざる本音であった。
常識的に考えれば圧倒的な勝利を迎えられる筈の戦力を用意しても、結果を見れば惨敗に等しい。特に部隊の運用を間違ったわけでもないし、戦術的にも間違っていないのに、負けてしまうのである。
そんな理不尽な相手と誰が好んで戦いたがるものか。それでも戦わざるを得ない以上、指揮官よりパイロットの方がまだ気は楽だ。命令に逆らえないのは、まったく職業軍人の悲しい所である。
カップの中身が空になった事に気づき、四杯目を淹れようと立ち上がった。そこでピピ、と電子音が鳴り響き、入室を求められる。コーヒーのおかわりは諦め、ネオは疲れた様子で仮面を被る。
ぱちりとストッパーを止める音がし、ゆるやかなウェーブのブロンドがいつも通り仮面の下に収まる。埋め込み式のTVフォンを見れば“頂武”の指揮官であるセルゲイ・スミルノフ中佐が映し出されている。
おそらく喪失した戦力と現状の部隊の状態からして、次の戦闘には参加できない旨を伝えに来たのだろう。現場の指揮官としても、また軍上層部からしても当たり前の判断だろう。
今回の第二次オーブ解放作戦を主導し、戦力の中核をなしているのは大西洋連邦だ。同じ地球連合軍とはいえ、別国家の立案実行した作戦で必要以上に自国の戦力を失う事を嫌ったに違いない。
大西洋連邦軍だって、かりに本土決戦だとしても到底許容できない範囲の戦力の喪失を受けて、軍上層部や大統領だって二の足を踏んでいるのだから、いわんや東アジアやユーラシアがどう判断するかは言うまでもない。
「せめて連合内部が一枚岩だったら、もう少し楽な戦争が出来たろうに」
心底疲れ果てた溜息を吐きだして、ネオはセルゲイを部屋の中へと招き入れた。本国に帰還できるセルゲイの事を、心底羨みながら。
*
ネオが色々と頭を悩ませている頃、合流した後続の艦隊旗艦の艦橋で、周囲に広がる壮観な眺めを愉快気に見回す二つの瞳があった。
豊かな見識と優れた発想力を併せ持ちつつも、人間的な道徳観や倫理からはかけ放たれた精神構造の持ち主だけが宿す光を、瞳の奥に蠢かせている瞳である。
関われば人生を蝕まれ、人間としての尊厳を踏みにじられる事は間違いない。ただ一度でも目を合わせればその事が、心の底まで理解できる瞳であった。
額と鼻梁にかけて銀色のプレートをビスで乱暴に止めた異様な風体の老人が、その瞳の持ち主だ。骨に申し訳程度に筋肉をつけてから、皺まみれの皮でなんとか覆った醜い姿をしている。
外見以上に内面から滲み出る精神の腐った臭いが、この老人に近づく事を拒絶させるだろう。前大戦時に、デビルジェネシスによって戦死したと思われていたアードラー・コッホである。
かつて前ブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルに精神調整と洗脳処理を施し、地球連合軍を影で操った奸物だ。どのようにしてかデビルジェネシスのγ線の放射から逃れて、いまも地球連合軍で言い様に采配を振るっている様だ。
DC総帥ビアン・ゾルダークと同じ世界からこちらの世界に来た死者であり、またDC副総帥の地位にあったこの老人は、自身の才能と頭脳のみをひたすらに妄信し世界の覇権を手にするという野望に取りつかれている。
元の世界でも、ビアンの死後、その野心を暴走させてDC残存勢力を掌握して異星人が襲来している最中であるというのに、地球の覇権を得る事に固執して死亡している。
しかし、一度の死だけではこの老人の精神を包み込む曇りをぬぐい去ることはできなかったようで、ビアン・ゾルダークに対する劣等感と憎悪を糧に、アードラーは再びこの世界のDCを壊滅させるべく行動していた。
地球連合の後続艦隊にはアードラーが完成させたゲイム・システムを搭載した無人のヴァルシオン改が部隊を成し、アードラーの思い描いた無敵の機動兵器部隊が現実のものとなっている。
既存のいかなるパイロットをも凌駕するゲイム・システムを搭載したヴァルシオン改の戦闘能力は、DCのヴァルシオン改やグルンガスト弐式を上回るものだろう。
大量の通常戦力に加えてアードラーのゲイム・システム搭載機の混成部隊は、ザフト・大洋州連合と合流したDCでさえ脅威の二文字を遣う他ない。
ただそれだけの戦力を用意する事は如何に地球連合といえども容易な事ではないのも確かな事。この戦いにDCが勝利すれば、地球連合――とくに大西洋連邦は、数カ月は立ち直れない軍事的敗北となる。
今後の地球圏の情勢を占う極めて重要な戦いとなる事は間違いなかった。自分の中で確定事項となっている勝利の光景に酔っているアードラーの瞳が、不意に別の艦の甲板に降り立つ三つの機体に焦点を合わせた。
漆黒のアンチビームコーティング塗料に機体を染めたオーバーフラッグ二機と、頭部の比率が妙に大きい奇妙な意匠の特機らしい機体の組み合わせである。アードラーはひどく詰まらなさそうに、フン、と吐き捨てる。
その三機は近頃急速に軍との癒着を深めて、発言力を高めているネルガル工業から派遣されたパイロット達が乗っているものだ。アードラーの手からなる完璧な(実際は杜撰)侵攻作戦において、彼らは余計な異物だ。
DCを壊滅させた作戦の功績に、自分達もわずかなりと関わりたいとでも考えているのだろう。あさましい事だ、とアードラーは自分自身の俗物根性を棚に上げて侮蔑する。
己の才能とその産物である作品にしか信じないこの哀れで愚かで醜い老人に相応しい感情であった。
アードラーの侮蔑の視線には気付かず、空母の甲板に着地した三機の機動兵器のパイロット達は、デスピニスが気にしていたティスと新たな二人のイノベイター、ヒリング・ケアとリヴァイヴ・リバイバルの両名だ。
「あ〜、やっと着いたあ。もう暇で死ぬかと思った」
「ふ、君には忍耐が足りないな」
いかにも子供らしい愚痴を零したのはティスだ。十歳かそこらの外見年齢とそう変わらない精神年齢なのだろう。
ネルガル製のパイロットスーツに身を包んだリヴァイヴは、そんなティスの発言に苦笑交じりの感想を零す。リヴァイヴは薄菫色の髪を持った端正な顔立ちの少年だ。
屈強な精兵達の多い一般のMSパイロットとはまるで違う細身の体つきだが、イノベイターという出自ゆえにその身体能力は極めて高い。
同様に大口径ビームキャノンを構えた特注のオーバーフラッグに乗っているヒリングも、一般的な人間を凌駕する身体能力と操縦技術を有している。
生み出される時に中性として男でも女でもない生命として創造されたイノベイターである彼らは、基となった塩基配列によって個体差が出るがそれを元に対外的に性別を使い分けている。
リヴァイヴは少女と言うよりは少年と言った風貌から男性として身分を設定しているし、ヒリングはその透き通るように高い声色と細い体のラインから女性という事にしてある。
この事に関してはヒリング自身も乗り気で、自ら胸に詰め物をすることを提案した位だ。
「ティス、あんたはここであたし達がDCを壊滅させるのを待ってなよ。ようやく戦闘用イノベイターであるあたし達の出番なんだからさ、余計な邪魔なしで楽しみたいのよね」
「ヒリングの言い分もわかるけどね。あたいもそろそろ暴れたいんだ。趣味の悪い口紅塗ったおっさんに言いようにこき使われるし、言う事聞かない子分どもは押し付けられたし。そろそろ体動かさないとね!」
「はいはい。でもエクシアとデュナメスはあたし達のものだよ? せっかくリボンズが用意してくれたあたし達の機体だってのにさ。それを横から掻っ攫ってくれたDCの連中には思い知らせてあげないとね」
「人のものをとったらどうなるか?」
「そう言う事」
満点の答案を見せた生徒に対する教師のように、ヒリングはティスに返事を返した。ヒリングの返事の中に、好戦的な響きが含まれていることを察し、リヴァイヴはひっそりと忍び笑いを零す。
ヒリングが内心で戦闘を欲していることを察し、呆れた様な反応を見せてはいるが、戦いを楽しみにしているのはリヴァイヴも同様であった。
これまでは退屈という名前の椅子に腰かけ、優越感の自負という名の望遠鏡で地球圏の騒乱を眺めているだけだった自分達が、ようやく表だって地球圏の愚かな人類達に干渉できるのだから。
いつまでたっても争う事を止めず過去から学習する事をしない地球人類に、優越種たる自分達が正しい道を示し導く第一歩を踏み出し始めるのだ。ただ、それは、破滅と言う名の結末を迎える道であった。
クリティックが語りイノベイター達に実践させようとしている地球人類の正しい道とは、最終的には滅びる事なのだから。
巨大ドック船セプタンからドック船セプタへと移乗して、セプタの設備と船内に慣れるべくあちこちを歩き回っていたクライ・ウルブズの各員たちは、メディカルチェックを受けていた。
せんだってのロアノーク艦隊との激戦によって、各員に多大な心的ストレスが掛かった事は確かで、不調を訴える者がクルーの中にわずかだがいた事もある。
セプタの船医は、恰幅の良い体格に温和な人格のにじむ人好きのする人だ。年の頃は五十代なかばほどの男性だった。
シンや刹那、アクセル達はそれぞれの身体データと簡単なコメントが添えられた診断表を手に、PXの飲食コーナーに集まってそれぞれのデータを見回している。今は女性陣が診断中だ。
ハイスクールの健康診断の延長上のような簡易なものだったが、各自健康診断の結果を手に、なにやら言いあっている様子は本当にハイスクールの学生そのままだ。
シンと刹那は揃って身長の項目を見つめて沈黙を維持している。二人とももう十センチ位は欲しい所なのだろう。成長期の栄養不足でやせ過ぎの刹那はともかく、シンはあまり身長が伸びていないのが悩みのようだ。
日系の血を引いているシンは、同年代の少年達の平均値よりやや低めなのだが、刹那は経歴が経歴だから、今後はきちんと成長して体つきも逞しいものになって行く事だろう。
ただアウルやスティングらは成長期の栄養不足といった問題以前に外科手術や投薬、暗示を施されているために、今後どのように成長するか全く予想がつかない。
その為にアウルとスティングらはあまりこの事を話題にしようとはしていないようで、シンもその事情を分かっているからあえて触れようとはしていない。
またロックオンは右目と視神経を機械化している事もあり、専門の医師に診てもらっており、またティエリアとデスピニスはネルガルの人間と言う事でDCの人間による診察を拒否している。
アルベロやジニン達がいまさらこんな事で話をする訳もなく、必然的に健康診断の結果を口の端に乗せているのは、刹那とシン、タスクやアクセル位の面子になる。
しげしげと診断表の数字とにらめっこをしているシンと刹那の背後から、タスクが二人の肩を抱きしめて、身長や体重、その他握力や背筋力といった項目にざっとを目を通して残酷な一言を放つ。
「シン、お前は去年と比べて一センチしか背が伸びてないなぁ」
「……」
ぐさ、とシンの胸に見えない言葉の矢が深々と突き刺さる。体を構成する筋肉を柔軟性と硬度を兼ね備えたものに変化させてきたせいなのか、微妙に成長が遅いのは密かにシンの悩みとなっていた。
意識を集中させれば拳銃弾位の直撃ならなんとか弾頭部が食い込む程度に抑えられるが、それよりも身長の方が欲しいなあ、とシンは思っているし、流石にちょっと自分が人間じゃなくなってきていると感じているのだ。
シンがそう言った普通じゃない悩みを抱えている事をタスクも分かっていたが、からかう為に口にしたのだろう。むぐぐぐ、とシンは唸るきりで何も言い返せない。一センチしか背が伸びていないのは確かな事実で変えようがない。
刹那の方は刹那の方で相変わらずの無表情のままであるが、なんとなくシンは自分と同じような心中であろうと察していた。こう言う事を考えていると、自分達がまだ普通の人間と変わらない感覚があると安堵できる。
タスクにつられて横合いから顔を突き出したアクセルが、シンの診断表の身長体重以外の項目に目を通して、ヒュウ、と口笛を一つ。人間の肉体の限界値かそれ以上の数値ばかりがずらりと並んでいる。
「いやいや、こりゃどえらい数字が並んでんな。オリンピックにでたら、ほとんどの競技の記録を塗り替えられるだろう、これ?」
「アクセルさんも握力二百キロいっているんでしょ、人の事言えないですよ。リンゴどころかメロンも握り潰せるんじゃないですか?」
「ゴリラと握手しても勝つ自信ならあるがね。でも総合的にはお前さんの方がよっぽどおっそろしい数字だろ。それもなんだ、お前さんのやってる武術の成果かい?」
「まあそうなるかな。でもパワードスーツとかメックウェアを着られたらあっという間に覆される数字に過ぎませんよ。メカニックの方が生物よりも発達の余地がありますからね」
「なんかお前さんの場合生命の神秘とかで理不尽な力を発揮しそうだけどな」
「アクセルさんはなんか面白いコメントとか書いてもらえました?」
「なんでそうなるんだよ。ああ、でもなんか電気体質らしいな。ソウルゲインはパイロットの生体電流を利用しているらしいから、おれがパイロットを務めている理由の一つなんじゃないかね」
「電気体質って……電気ウナギとみたいに?」
頭の中では垂れ目に赤毛のアクセル電気ウナギを思い描いているタスクである。ひと口に電気体質と言ってもいまいち理解しづらいが、静電気が人より多いとかそんな所だろうか?
アクセルと空気の乾燥した冬場に握手するのは避けた方がよさそうだ。
「ん〜〜、ピ〜カ〜〜! と叫んでも十万ボルトは出ねえな。ソウルゲインの方にもなんかパイロットの生体電流を引き出すなり増幅させる機能があるんじゃないか、とおれも考えちゃいるが、ま、詳しくは後のお楽しみだ」
へえ、とアクセルの話を聞いていたシンがいい事思いついた、と顔に大きく書いて口を開いた。
「それ、ソウルゲインの必殺技にできるんじゃないですか?」
「どんなふうに?」
「たとえば、音速で拳を振るった後の真空に、増幅した生体電流を流しこんで、パンチと雷の同時攻撃をするとか」
「ライトニング・ボルト! てか。燃え上がれ、おれの小宇宙ってのは一回は言っていた見たい男の子のセリフだがね」
「あとはライトニング・プラズマとかもやればできるんじゃないですか?」
「なにはともあれ音速をこえたパンチを打つ事から始めにゃどうしようもないさ。ま、頑張ってフォトン・バースト打てるようになるかね?」
「はは、本当にできるようになったら見せて下さい。本当にできたら、おれはそうだなあ、エクスカリバーあたりを覚えて見せますよ」
「お前さんにはそれが似合いか。あとはグレートホーンとかもいけるんじゃないか?」
二人の馬鹿話はもうしばらく続いたが、タスクは話に混ざりながら、この二人なら本当に習得しそうだな、と心の片隅で冷や汗をかいたそうな。本当に二人が冗談を現実にするかどうかは、まだまだ分からない話である。
――つづく
こんばんは。ちょっと短めの投下でした。タイトルがかないい加減なのは全然思いつかなかったからです。考えるのって難しいですね。
ご感想ご助言ご指摘ご忠告いただければ感謝感謝です。ではではおやすみなさい。
P.S.
皆さんおすすめのウィルキア王国最強の水上艦はどないな船でしょうか? 反物質砲レベルは行き過ぎにしてもレーザーとかはありでしょう。にゃんこビームとかカニ光線はちょっとネタすぎますね。
ご提案いただければ幸いです。あと船の名前も。では、おやすみなさい。
電気体質と言えば童帝
ガドヴェドさんあたりどっかにいそうな感じ
そしてこのネオ誰だっけ
乙でしたーんがくっく
乙です!……アードラーしぶといのぅwこの分だとアギラも生きてそうで怖い。
完璧なシステムを積んだ量産型のスーパーロボット部隊ってなんというかませ臭さだろうwww
ヴォルケンは流石に波動砲的意味で不味いでしょうからグロースシュトラールあたりは如何でしょうか。
あとはやっぱり機動兵器ハウニヴーWとレールガン(バリアント)を満載した巨大航空戦艦を……
自作艦なら絶対特殊弾頭VLSは積むんですが不味いですかそうですか
おつーっす!
・・・
>>561 結局誰も突っ込んでくださらなかったわね
アードラーとアギラが生きてるのは予想はしてましたが
え?マジで浴びた上で生きてると?
もう生身でないのはほぼ確定ですかな・・・ババァの若返りの時点で何かしてるんじゃないかと思ってましたが
そしてアクセル・・・あんたは本当に記憶喪失かw
どっかのカリスマみたいに平行世界の電波でも貰ってるのか
乙っす〜
ここのソウルゲインは強化されないかわりに「オレがソウルゲインだ!」とか
「レモォォォォン!!!」とかで覚醒やらオーバーフロウしそうだなw
カニ光線付きサメor波動ガン付きアヒル
乙です!
イオリアもこっちに来てたのか、しかもジョージ・グレンに会ってたとか……もしかしてキャプテンGG登場フラグ? そして最後は聖闘士ネタですかw
人型兵器が超重力兵器ぶっ放す世界なんですから、自重しないで総帥の考えた最強艦で良いんじゃないんでしょうか?
鋼鉄世界は年代的には実は第二次大戦くらいなんですし。
個人的にはドリル戦艦を見たエルザムが妙な嫉妬心抱くとか面白そうですけどw
>>579 大丈夫、大丈夫ガンナー2のヴォルケンは四国を真っ二つにする程度の性能なんだし。 PC版なんか時空に歪みを発生させて並行世界へのゲート作っちゃうんだぜ?
下位の超兵器(旋風とか始祖鳥とか)だと総帥世界だと一瞬で沈められそうだから困るw
こんにちは。ご意見やご感想の数々ありがとうございます。
避難所の方でも拝見させていただきましたが、生物兵器が人気ですね汗。
ウィルキアの舟に関しては皆さんの自作の最強艦でも構わないのですが、遠慮されていらっしゃるようで。自作艦でも別に私は構わないですよ。
ただアヒルとかはさすがの私でも躊躇せざるを得ませんが。ハウニブーに関しては問題ないなと判断しております。
>>583 大丈夫です。この世界でも”超兵器”と呼称されるだけの性能に強化しますから。旋風あたりだと時速800ノットも出せればオッケーですかね?
ただアークエンジェルとかの具体的な航行速度は知らないので、800ノットという速度が快速なのか鈍足なのかよくわかりませんが。オーラバトルシップだと時速500km前後でしたっけ。
どなたか具体的な数字のわかる方はいらっしゃらないでしょうか?
総帥wwwwww800ノットだと音速突破してしまうでござるよwwwwwwwww
アレで自作の最強艦になると、もれなく特殊弾頭が付くのでござるが……
自分だと、ドリル戦艦に56cm主砲満載か、主砲がレールガンに載せかえられてますな。
勿論特殊弾頭VLSを持ってるだけ積んで。副砲にはクリプトンレーザー搭載で雑魚艦をなぎ払うのです。
あとは対空パルスとバルカンと機関砲を積めるだけ。確か最後に作った時の艦名はグラットンだったよーな……
ところで総帥、戦艦ネウガードはまだですか
全然話がわからねぇorz
でも戦艦といえばロストユニバースのソードブレイカー(ヴォルフィード)がいいな〜
プラズマブラストは当時燃える武器だった。今は林原ボイスのメイド服AI娘に萌えてるけどw
>>586につられてロードオブナイトメアがアップし始めました
鋼鉄の咆哮っていう戦艦無双なゲームのネタだな。戦艦大和とかの時代の話のはずなのに
核弾頭ミサイルや各種レーザー砲、UFOや重力砲波動砲が乱れ飛ぶ世界だ。…販売もコーエーだったな
艦名のほうは、アイディアファックトリーというゲームメーカーの一連のシリーズに登場する国名のはず
そして俺はプラズマブラストも理解できるが、ゴルンノヴァの極太収束ビームやリープレールガンが大好きだ。
>586
自分の中じゃメイド服じゃなくて巫女服の方なんだ…
でも、確かにアレは燃えた。
ところで携行型のビームサーベルはまだだろうか?
総帥の世界にクレイジー・ダイアンがいたら・・・想像できないorz
規制解除されたー!
>>584 総帥CE基準で超兵器……ザクグフゲルグググ
ウィルキアの艦はメカゴジラから東映繋がりでドリル戦艦 轟天なんてどうでしょう?
そういえば、鋼鉄で思い出しましたが、筑波大尉やドライアス、ホーンガイストの声優をされていた郷里大輔氏が亡くなられたそうですね……
スパロボで強敵として立ちはだかって貰いたかった……
最恐戦艦と言うとヴァンドレッドのニル・ヴァーナを思い出す
1stだと武装一切無いけど2ndでのイベント後の屈折追尾レーザー鬼畜過ぎ
>>592 バートの成長は涙なくして見られない・・・
スーパーヴァンドレッド登場で「僕も合体しちゃうのかなぁ・・・」とか言ってたけど
初期構想だとマジで六身合体になる可能性があったそうで・・・
>>592 あの味方だけ綺麗に避けていく敵味方識別型マップ兵器か
実際にスパロボに出れば猛威を振るうだろうな
総帥CE基準で超兵器か……
ここの総帥だと1/144ぼるけんくらっつぁーならぬ144/1ぼるけんりったーが実現できそうで怖いw
>>591 東宝特撮兵器ならまずはスーパーXシリーズ及びガルーダとモゲラだろ
スーパーXUは並のビームなら反射するしXVなら艦砲でもきっと無傷だ
あとは…ガンヘッドが欲しいなぁ
平成ゴジラで何が一番チートか、って間違いなく「耐熱合金NT-1」だと思うんだ。
アレの頑丈さはメカゴジラやモゲラ、改良型のNT-1Sを使ったXVを見ても明らかだし。
だが待って欲しい。
まずは大量のリニアガンタンクをメーサー車に更新するのが先ではないのか。
599 :
通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 15:16:49 ID:UM3j9e4/
いやいや、忘れそうになるギナシオンとミナシオーネの強化改修もせねば!
そういやギナシオンと連合製ヴァルシオン改ってどっちが優秀なんだろ?
でもヴァルシオン改(連合)を量産するより量産型盟主王アズライガー(ジブファイガー?)にしたほうが、
相手の戦意を低下させることができる気がする。
あとリニアガンタンクは武装追加でOKかな
総帥のシンの最終機体は何になんだろ?
可能性の一番高いスーパー系か?
斬艦刀を振り回すリアル系か?
予想外の魔装機神系か?
大穴の勇者(笑)系か?
完結にはまだまだ遠いけども後継機が気になる!
600 :
通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 15:27:00 ID:UM3j9e4/
そうだ!
ジニンのおっちゃんにも新型を〜!
sageろよ
ジブファイガーwwwwwww
シンの最終機はデスティニー総帥風仕立てでもう決まってるぞ
それをデスティニーと呼んでイイシロモノかどうかは怪しいけどw
>>602 名前が同じでもグレンラガンと天元突破グレンラガンくらいの
差がありそうだw
>>598 メーサーは怪獣のような生物には有効だが機械には効果がないんじゃないの?
まあ指向性サイクロプスみたいなもんだからCE世界なら通用するかもしれんが
少なくともガンダムXには効果がない
このさい、ジブリールが乗る超兵器戦艦ジブアークなんてのもアリかも
超巨大航空戦艦ジブアーク接近!
搭載兵装はにゃんこビームで良い、アーマードコアから破壊天使砲を借りてきても良いかも知れない(魔界天使
DCや来訪者たちから流出された様々なデータによって、ブルーコスモス自身が超兵器を作る可能性はかなり高い。
問題は男なのに口紅、それも紫色を塗るようなセンスの持ち主が「まとも」な物を作らせるとは思えない事、そして総帥来訪世界である事の二点か。
某魔界天使の格好をしてMS相手に無双するジブリールが見えたんだが気のせいだよな?
某魔界天使、というよりもハプシエル(まかでみ)の方がジブリールに似合っている気がする。
ジブが乗るのはフェニックスガンダムだろ中の人的に考えて
対視覚型超巨大人型戦艦、ジブリール・ザ・グレートと申したか
ハゲ粒子砲の代わりに口紅粒子砲になりそうだけど。
>>612 投げキッス?
エルデの悪夢再来か・・・
>>608 >>男なのに口紅、それも紫色
貴様、散様をディスったな!
まああの人男とか女とかを超越してるけど…
>>606-612 中の人的に考えてヴォルケン級二番艦ルフト“シュピーゲル”ングで戦うんですね! 分かります!
でもあの人ならG伽藍作ってそう
総帥のジブリはアムドって叫ぶと鎧に変形する武器持って
超人のシンと互角に渡り合う事ぐらいできそうだ
格闘戦ではパロスペシャルですよね、わかります
不死鳥の聖闘士でもある
要するに鍛えられたコーディネーターよりも強い
フェニックスガンダムに乗って鳳翼天翔と書いてジブフェニックスと読む必殺技を……
さすがに厨すぎるか
ジブリ=シュバルツ=ウォーズマン=フェニックス一輝=ジョージ・グレン=ヒュンケル=剣桃太郎=バーソロミュー・くま
もう下手にMSやデストロイぶつけるより、シン&アクセルと白兵戦やった方が勝機ありそうだなw
オレにとってジブの中の人はゲルマン忍者や不死鳥の聖闘士よりも
後に総理大臣になる男塾一号生総代
つ ゲイル先輩
ここ見てると、そのうち誰かが目からビーム出すんじゃないかと思えてくる。
絶対そのうち変形し始めるに違いない。
生身で
ヨガを極めればたやすいこと >生身で変形
OGのヨガ使い、ラーダさんは総帥の世界に居ましたっけ?
もし居たなら……救出した人質を子コックピットに入れようにも隙間が無い、故に――とか出来そうですが。
あやしいOGワールドでのヒュッケmk-U初登場時の惨状を思い出した
助けてせんせー
どうしてこうなった!
つか、後の色の自己主張が激しすぎるように見える
>633
ヴァルシオンの色にしようと思ってうろ覚えだったからぐぐったんだ。
色彩感覚0でごめん
避難所に投下きているよ。
ほしゅいる?
避難所したらばじゃないんだな
どこなんだ?
>>638 ありがとう、読んで来た
外伝も増えててワロタ
こんばんは。実に二週間ぶりの投下を致します。なおバレンタインとは全く関係ありません。
ディバイン SEED DESTINY 第三十五話 国防に生き国滅に死した男
第二次オーブ侵攻艦隊――指揮官である大西洋連邦軍第八十八独立機動群ファントムペイン司令、三輪防人中将から名を取られて、通称は三輪艦隊――の位置を把握したDCトダカ艦隊の動きは早かった。
まず最新鋭機動兵器VF−19F、Sエクスカリバー合計三十六機、さらに特務部隊レイブンズ用に調整されたA型エクスカリバー十四機、高速戦闘用装備を施したリオン、ガーリオンタイプからなる全百三十八機の航空部隊が編成された。
爆撃機と攻撃機、偵察機、ステルス機とあらゆる種類の戦闘機として機能することを基本コンセプトとしたAMや、エクスカリバーの突破力と多機能性を活かして敵母艦を叩く策を選択したためだ。
策とも呼べぬ古今からありきたりの母艦狙いの方法だが、それを実行する戦力の性能が極めて突出していることを考えれば、平凡で王道的な方法であるからこそ効力を発揮する。
大気圏外ぎりぎりの高高度から一気に降下し艦隊を爆撃する先行隊に続くのは、メカゴジラ三機種とエルアインス、アヘッド、ガーリオンで構成された通常部隊とグルンガスト弐式、ヴァルシオン改からなる特機部隊である。
アヘッドは、擬似太陽炉の生産コストがプラズマ・ジェネレーターに比して若干高い事から、投入されたアヘッドの七割はプラズマ・ジェネレーター搭載機である。
基本的な出力などに大きな差はないが太陽炉特有の慣性制御のある分、擬似太陽炉搭載機の方が運動性や特異な機動をとる事が出来る。
ただし機体の運用全てに渡ってGN粒子を用いなければならない為に、戦闘可能時間はプラズマ・ジェネレーター搭載機の方が長く、どちらの方が有用な機体かというと要は使い方次第となる。
DCの次世代量産機であるマルチロールPTエルアインスはまだ全体の四割ほどしか行き渡っておらず、DCの主要機動兵器戦力のほとんどはガーリオンとリオンで構成される。
それらの戦力に、物資の補充を終えてそのまま合流したセプタ三隻と後続艦隊と合わせて力押しに出たわけだ。
また、オモシロ兵器もといトンデモ兵器もとい特殊兵器満載のクライ・ウルブズは、今度こそ奇襲を成功させるべく再びの別行動を取っている。
嵌る所に嵌れば十倍くらいまでの通常編成の戦力差ならなんとかできる化け物集団であるから、つい先日のように対抗戦力を用意されなければおおよそ問題は無い。
*
トダカ艦隊とは別行動を再びとる事になったクライ・ウルブズ母艦として一時的に使用する事になったセプタ艦のガンルームで、レントン・サーストンは限りなく緊張に身を震わせていた。
初陣がよりにもよってかつてのωナンバーズにも匹敵する質と、それを上回る量で構成された地球連合最精鋭部隊が相手だっただけに、心と身体の負担はこの少年の人生史上最大のものであったのは間違いない。
レントン自身、サブとはいえニルヴァーシュのパイロットに選ばれた事を不思議に思っていたが、正直なところほんの少し前までは軍の最新鋭機体のパイロットに選ばれた事で調子に乗って、どこかへと放り投げていた考えだった。
しかし、いまになってその事実に対する不信と恐怖が心の中で巨大な暗雲となって広がっている。
どうして自分などがサブパイロットに選ばれたのか。どうして自分などが戦場に出ているのか。どうして自分は軍人などになってしまったのか。
ニルヴァーシュのシートに座りながら、何もできずにエウレカに全てを任せてただ嘔吐を堪えていただけという負い目、情けなさ、また何もできずにいるだけではないかという恐怖。
戦場に身を置いた事への後悔、都合のよい甘い考えだったと思い知らされた現実、調子に乗っていた自分を皆がどんな目で見ていたのか、どれほど滑稽であったろうかと思えば、誰とも顔を合わせられぬほど恥ずかしく情けない。
いや、いや、いや、そのような考えも全ては戦場に出ることを躊躇う自分の弱虫な気持ちを、誤魔化す為の方便では? そんな風に考えると、とても自分が卑怯で、とても自分がちっぽけで、とても自分を許せない。
考えれば考えるほどに自分を追い込み続けているレントンは、ガンルームの壁に備え付けの椅子に腰かけて、俯いた姿勢のまま大きく体を震わせ続けていた。
少年らしい闊達さと未来への可能性を秘めた大きい瞳を潤ませ始めるのも、時間の問題だったろう。
一度思い込むととことん突っ走る分、この少年、逆方向に思いこんで落ち込み始めるとどん底まで自分で自分を落とし込む困った傾向があるらしい。良くも悪くも性根がまっすぐであるという事だろう。
長所よりも短所として機能しているその性格を慮ってか、後頭部で腕を組んで眼を閉じていたロックオンが不意に立ち上がって、レントンの隣に腰掛けた。ほかに人の影はない。
先ほどからレントンの様子を窺っていたのだが、そろそろ声をかける頃合だろうと判断したようだ。どす、と音を立てて自分の隣に座ったロックオンに、レントンの体が一度だけびくりと震える。
今のレントンの心境は自分以外の誰もが、自分のことを嗤っているのではないかという疑心暗鬼に囚われている。そんなことはないと慰めてほしい気持ちと、詰られて叱責されることを恐れる気持ちとが同じ分量だけ心の中にある。
「ずいぶん落ち込んでいるじゃねえか。お前の周りだけ暗くなっているみたいだぜ、レントン」
「すみません」
蚊の鳴くような声で返事をするレントンを、こりゃ重症だとロックオンは思う。いやべつに声をかける前から見ているだけで相当凹んでいることは察しが着いたが、この落ち込みようは生半可ではない。
顔色は水死体がかろうじて息を吹き返した、といっても通用するくらいに青白いものだし、八の字に曲げられた眉は心苦しそうに震え、頬や額を伝う汗はそのてかり具合からして脂汗や冷や汗の類だろう。
幼稚園児が見ても、絶対に普通ではないレントンの様子である。アルベロやジニン、デンゼルといったベテランの上官勢が、新兵であるレントンのケアを多少成り行って然るべきだ。
なおエペソにそのような心情的な配慮は最初から期待していない。エペソが前大戦時から戦争の当事者であると同時に自分は傍観者である、というスタンスを崩していない為だ。
ロアノーク艦隊との戦いから間を置かずの連戦になったことや母艦タマハガネからセプタへの移乗作業、機体の補充、部隊の編成や指揮系統の再構築などと忙しさに追われたこと。
またレントンと同じ立場のはずのエウレカが至って平静であったことやクライ・ウルブズの新兵たちというのが自力で立ち直るなり、初陣後もまったく取り乱さなかった例ばかりであったことからアルベロ達の対処は遅れたようだ。
これは多少止むを得ない緊急の事情があったとはいえ、アルベロたちの失点というほかないだろう。
ロックオンと立場や年齢が近いトビーはトビーで、自小隊の新兵セツコのフォローとサポートに手を取られているし、自然的にロックオン辺りにレントンのフォローを行う役が回ってくる。
戦場を経験した数ならシンやアウル、スティング、刹那などはレントンと比較にならない猛者なのだが、彼らはその経歴や人格、年齢の問題から落ち込んでいるレントンを発奮させるなり激励するのには向いていない。
こういうのがおれの役目さ、とロックオンは心の中で苦笑する。兄貴風を吹かすのは、昔から得意だったし、別にいやな役目だとも思わないしな――心中でそのように独語し、ロックオンは口を動かし始める。
「自分がカッコ悪くて仕方がないって顔をしているな」
「……そりゃ、自分がどんだけ情けなかったくらいは分かってます」
「そういう風に自分で自分の事を責めるってのは、他人に言われるよりは傷つかないからするもんだ」
「っ!」
ロックオンの言葉に、レントンは膝の上で握っていた拳に力を込める。どれだけ力が込められているのか、指の付け根は白く盛り上がり震える。
まだ、完璧に折れちゃいない。レントンのその様子を横目に見ていたロックオンは、ふとこのままレントンを励ますべきかどうか迷う。
この場で戦う事を諦めさせれば、遠からずレントンは前線から身を引くだろう。そうすれば、少なくともこの部隊に在籍したまま戦うよりも安全だろう。
エウレカはこのまま部隊に残るだろうから、二人は引き離される事となるがレントンの身の安全を考えれば、このまま部隊を離れるべきだ。
しかし同時にレントンのエウレカへの入れ込み具合も、短い付き合いではっきりとロックオンにも分かっている。このまま別れれば、エウレカは分からないがレントンにとっては一生自分を許せなくなるかもしれない。
命を優先すべきか、心を優先すべきか。いや、何を偉そうに考えている、ロックオン・ストラトス。年長者ぶって、上から物を言う資格が自分にあるなんて思いあがっているんじゃないのか?
せいぜい出来るのは、レントンの背中を少しだけ押す事か、あるいは踏ん切りをつけるきっかけを与える事くらいだろう。それだけでも十分に上出来だ。
「レントン、別にお前がカッコ悪かろうとカッコよかろうと、この部隊の連中は気にしない。良くも悪くもな。だからよ、他人の評価なんて気にしないでがむしゃらにやれよ」
「がむしゃらに、っスか?」
「そうだ。お前の年頃は色々と悩んじまうもんだが、後になってみればどうってことないって事だった、笑っちまう事ばっかりだ。エウレカに格好いい所見せたいって気持ちはおれも良く分かる。
けどそううまくはいかないってよくわかっただろ? だったら今度は逆にとことん格好悪い所見せちまえよ。一度どん底まで落ちれば、後はそこから這い上がるだけだからな。そっちの方が気が楽なもんだぜ?」
真面目とも冗談ともつかぬロックオンの口調と言葉に、レントンはどう判断するべきか戸惑っている様な顔をした。ただ、ロックオンの言う事を真摯に聞こうとしているのは確かだ。
「そうは言いますけど、だって、戦場なんですよ。下手したら、おれだけじゃなくてエウレカだって死んじゃうかもしれないのに、そんながむしゃらにやってみろって、無責任に言われても!」
「お前ががむしゃらにやれるようにサポートはする。お前が全力を出せる様に責任を持ってな。だから、お前は自分の事にだけ責任を持ってがむしゃらにやれ。この部隊の連中はみんなお前よりか強い。
おまけにお人好しが多いからな、お前が上手くやったら祝ってくれるような連中だ。だから他人の事なんざ気にしないで、自分のやりたいようにやれ。ここで踏ん張って戦うのもいい。戦わずに艦を降りてもいい。それがお前の選択ならな」
「みんなを置いて逃げろってんですか!」
「怖い顔するなよ。お前は逃げるって感じるだろうが、戦う事を止めるのも一つの勇気だ。銃を向けられて銃を手に取らずにいられる人間ってのは少ない。一方的に撃たれる恐怖に耐えなきゃならないからな」
「……」
「悪いな、かえって頭の中をこんがらがせちまったか。まあ、おれの言いたい事はだ、自分のする事に責任を持て、ただしおれの出来る範囲でお前の助けにはなるって話さ」
「結局、腹括って自分で決めろって事なんすね」
「恨めしげに見ても何も出て来ねえぞ。おれはお前より十年かそこら長く生きちゃいるが、何でも解決できるような事言えるほど人間が出来ちゃいないんだ。残念な事にな」
言葉では謝るロックオンだが顔は軽く笑っており、あくまでレントンの気分を落ち着かせる為か、気を紛らわせる程度のつもりで話していたのだと分かる。
両手で頭を抱えて俯いた姿勢から顔を上げてロックオンの表情を確認し、はあ〜〜っと深い諦め交じりの溜息を零す。重すぎてそのままごとんと音を立てて床に落ちそうな溜息である。
そのまましばらく沈黙を維持し続けたレントンだが、とりあえずロックオンとの会話である程度の整理ができたか、区切りをつけたのか、口を開いてぽつりと零す。
「少し気分は落ち着きましたんで、前には進めそうっス」
「おお、そいつはなによりだ、青少年。格好悪かろうがなんだろうが、全力でやれ」
ぱんぱん、とレントンが軽く痛みを覚える位に肩を叩いてロックオンは立ち上がり、ガンルームを後にする。あまり上手くはやれなかったが、ま、よしとしておこう。ロックオンはわりかし細かい所を気にしない性格らしかった。
*
推定された三輪艦隊との会敵時刻に備えて各パイロットが自機に搭乗し待機するよう告げられるよりもはやく、クライ・ウルブズの若きエース、シン・アスカはインパルスのコックピットに居た。
浅く緩く息を吐き、丹田で練り込んだ気を血流に乗せて全身に巡らせ、五感を研ぎ澄まし、六感の働きを活発なモノにする。
自己の意識を拡張し、他の生命のみならずMSや戦艦を含む無機物にさえもシン・アスカの意識を浸透させ同調を深くしてゆく。
インパルスの手足はシンの手足となり、カメラ・アイはシンの瞳となり、プラズマ・リアクターは心臓と化す――決して錯覚ではないその感覚を深めるほど、シンと機体間でのタイム・ラグはなくなり、人機一体の境地へと至る。
調子が良ければOSの補助なしの完全なマニュアル操作で、インパルスの指で生卵の殻を割ることだってできるし、皿の上の豆を別の皿に移す作業も成功させた事がある。
機体の重心移動を自分の肉体と同等に感知し、ミリ単位での操作も可能としている。流石に皮膚感覚まで再現するのはまだ無理だが、そのうちできる様になるだろう。
肉体と機体の同調作業以外にも、シンには精神とシステムとの同調にも時間を割かなければならなかった。
精神力と気を物理エネルギーに変換するエネルギー・マルチプライヤーシステム、万人が持つ念動力の素養を強制的に引き出し増幅するカルケリア・パルス・ティルゲム、この二つとの同調作業はシンにとって死活問題である。
シンが血道を上げる修行の果てに開花させた念能力と、武道家としての理想に近づきつつある精神に依存する両システムは、シンの絶大な戦闘能力を支える一因であり、同時にシンの精神次第で著しく戦闘能力が弱体化する原因だ。
戦場に身を置いて三年年近くが経ち、その間欠かさなかった修行の成果もあって、シンは感情と思考を切り離す術や、怒りを真に爆発させる時まで抑える事を学んではいたが、生来の情動の激しさばかりはどうしようもない。
擬似念動力ともいえるシンの“念”の力は、前大戦時にカルケリア・パルス・ティルゲムの第三段階リミッター“アンティノラ”の領域に達していたが、そこからはどうにも伸び悩んでいる。
念能力の瞬発的な最大値の上昇よりも、制御能力の向上に努めていたという事もあるが、第四段階ジュデッカともなれば準サイコドライバー級の念動力に覚醒しなければ到達し得ない。
純粋な念動力者でない分シンにとってその壁は相当に厚く、突破するのはまだまだ難しいと自分でも分かっている。
ウォーダン・ユミルとの二度目の戦闘の時の感覚を完全につかめば、あるいは、と思うが、ただ、あの時はビアンが殺されたと思い込んだ怒りと憎悪に突き動かされた危険な状態だった。
いってしまえば爆発寸前の核爆弾みたいなものだったから、あの時を再現してはならないと固く心に誓っている。
増幅された負の感情は、シンの精神的潜在能力を爆発的に開花させるが、それは同時に目に映るもの全てを破壊する殺戮者の誕生につながる危険性を秘めているのだ。
「っと、いけね。ちょっと焦っちゃったか」
ピピ、と小さくシステム同調エラーを告げる電子音に気づいて、瞑目していたシンが目を開き、リスタートの作業を進める。出撃の命令が下る三十分前には戦闘可能状態に持っていかなければなるまい。
最高のテンションに達すれば自然にエネルギー・マルチプライヤーが、機体をスーパーモードに移行させ、耐久力・順応性・運動性とあらゆる性能が一段強化される。
DCインパルスは装備するシルエット次第でではあるが、シンの戦闘技術によって特機とも真正面から戦える打撃力を備えるが、スーパーモードともなれば足を止めた殴り合いさえ可能となる。
シンの肉体のリハビリは済んで、すでに絶好調といえるコンディションではあるが、意図してスーパーモードを起動させられるのはほんの一、二分ほどが限度で、かろうじて星薙ぎの太刀に必要とされる時間を確保できるのみだ。
おそらく念法と戴天流の功夫を積み重ねていけば遠からず、自在にスーパーモードを発動できるだろう、とシンは確信していたが、今はまだそこまで到達していないのが事実。
シンは改めて息を吸い、自身の肉体を構成する数十兆個の細胞と機体を構成する無数の部品とを同調させる作業に戻る。
先日のロアノーク艦隊での戦いでは、敵艦隊のエースらしき三機に拘束されて味方の援護に回る事が出来ず、大きな被害を出してしまった。
たった一機で戦場の勝利を左右するほどの存在、それがシン・アスカであることは自他ともに認めるところである。
シンからすればたった三機に拘束された事を不甲斐なく思っているが、シンと戦ったセルゲイやアレルヤたちからすれば、自分達三人を相手にたった一機で互角に渡り合ったシンの方こそとんでもないと言うだろう。
*
偵察部隊の報告によって互いの存在を感知していた三輪艦隊とトダカ艦隊は、それぞれの空母とMS運用艦からMSを発進させ、両艦隊の中間地点の空域で戦端を開く事となった。
三輪艦隊の司令を務める三輪防人は、経歴不明の限りなく怪しい人間であったが前大戦時からブルーコスモスの熱烈な信奉者として、ムルタ・アズラエルに気に入られ、アズラエルの死後も新たな盟主ロード・ジブリールによく仕えた人物である。
己の信ずる道をひたすらに邁進し、大概の障害は民間人軍人問わず地位や権力を駆使し、暴力を振るう事も厭わぬ性分であるが、仮にも艦隊司令を任されるだけの能力はあり、将官と佐官が欠乏している地球連合には貴重な人材でもある。
三輪司令は艦隊旗艦であるクラップ級巡洋艦“ヒノモト”の司令用シートに腰掛け、アームレストを一定のリズムでタバしながら、DC・大洋州連合・ザフト混合部隊とジェットウィンダム部隊の交戦開始の報告を受けていた。
三輪は苛烈な性分で部下に対してさほど気配りをする人物ではない為、直属の部下からもさほど信頼されてはいなかったが、一年戦争、Dr.ヘルや恐竜帝国、妖魔帝国との戦い、ゼ・バルマリィ帝国との戦いや、封印戦争を戦い抜いた猛将である。
MSは言うに及ばず機械獣、メカザウルス、ゾンダー、ゼントラーディ、使徒などとも交戦経験を持ち、大概の事では動じない耐性を有しており、また果敢に攻勢に打って出る思い切りの良さを持つ。
かような経験を持つこの人物は、もちろんコズミック・イラ生来の人間ではない。DCのエペソ大佐同様に新西暦世界に置いて、アズラエルの配下についてプラント殲滅に勇訳猛進した軍人だ。
三輪が生まれ、戦い、そして死んだ世界で地球を襲った敵の種類は実に豊富で、何が出てくるか分からないDCのバリエーションを上回る経験の持ち主だけに、意外に対DC戦では有用な人物と言えない事もない。
「コッホ博士、ヴァルシオン改部隊の出撃はまだか?」
三輪が親の仇でも見るみたいに険しい瞳を向けたのは、彼の隣にオブザーバーシートに腰かけた妖怪じみた老人、アードラー・コッホ博士だ。
ブルーコスモス前盟主ムルタ・アズラエルに引き続き、新盟主ロード・ジブリールにも巧に取り入り、大西洋連合軍内でかくたる地位を確保している。
アードラーは倫理を無視した狂気的な頭脳の持ち主であるが、かつてDCの副総帥を任されただけはあり政治的な物の見方や、行うべきアクションというものを理解しているのだろう。
艦隊の指揮系統の外に設けられたヴァルシオン改部隊は、アードラーの許可がなければ戦闘に参加させる事が出来ない。自身の指揮を受け付けないイレギュラーの存在を忌わしく思うのは、三輪でなくとも当然であったろう。
けひ、とひどく耳障りな笑い声を一つ零し、アードラーは邪悪極まりない魔法使いの様に、三輪を下から睨め上げる。
「DCのやり口からして例の特殊任務部隊が牙を研いで折るじゃろうからな。そいつらを迎え撃つために残しておるのよ。わしのゲイム・システム部隊が後の守りについておる。
千の援軍があるのと同義と思ってくれてよいぞ。艦隊の通常戦力はいっぺんに全部出して構わんのではないかな、三輪司令」
「ふん、敵性兵器などを喜々として使いおって。ヴァルシオンなどといういかがわしい兵器は貴様の好きにせい。そのかわり艦隊の指揮にいっぺんたりとも口を出すな。子泣き爺めが」
「ひひひ」
このくそじじいが、という悪態を三輪はかろうじて喉の奥に飲み込み直した。本国に残ったアギラ・セトメがいたら、三輪の悪態は堪え切れずに倍の数となって外に飛び出ていただろう。
艦隊司令とオブザーバーの不毛極まりない口撃の応酬が行われる間にも、会敵した両軍の部隊の戦闘は着実に被害を出しあっている。
ジェットウィンダムの性能は三国混合艦隊の運用する機動兵器に比べ、やや劣る性能ではあったが、十分に優秀といえる機体であり、先の大戦により学んだ運用方法と連携技術を活かして戦っている。
ただし交戦している三国艦隊には予想通りクライ・ウルブズの機動兵器の姿はなく、メカゴジラタイプ三機やケロンタイプ五機の機影もいまはまだなかった。
海中を潜行して三輪艦隊の真下から襲いかかるのか、それとも両艦隊の距離が遠く開戦序盤とあって様子を見ているのかは分からないが、姿を露わしたならば、アードラーもヴァルシオン改の投入を決断するだろう。
メカゴジラタイプとケロンタイプ両方共に、そうでなくば到底抑えきれるものではない突破力と殲滅力を兼ね備えた恐ろしくもまた愉快な機動兵器であるからだ。
*
先行するジェットウィンダムの中に、マゼンタカラーに塗装された機体がある。通常設けられているジェットストライカーのリミッターを解除し、爆発的な加速力を有する特殊な機体である。
搭乗者はファントムペイン所属ロアノーク艦隊元司令ネオ・ロアノーク大佐だ。大佐という階級を有しながら、先のクライ・ウルブズとの戦闘で成果を挙げられず、先行部隊の指揮権すら与えられぬままに前線に出ている。
一応指揮下にはオルガのガイア、クロトのカオス、シャニのアビスがいるがそれきりだ。ネオ自身、功績を挙げられず文句を言う資格がない事は痛感しているため、黙って操縦桿を操りながら、三国軍と戦う事に集中している。
ブーステッドライフルの大口径弾頭を羽毛のようにふわりと軽やかな動作で躱して、ネオは区切られたモニターの中に映るガーリオンを照準内に捉える。
ブーステッドライフルは威力が大きい分反動が大きく、わずかにではあるがガーリオンの動きは鈍くなり、そこを逃さずネオはビームライフルのトリガーを引く。
感覚的に百発百中の射撃であったから、ネオはすぐさま別の標的を捉えるべく仮面の奥の瞳を、モニターに表示される各種のデータに巡らせる。
粉塵と爆炎混じりの爆発へとガーリオンが変わった時には、ネオはデータに照合しない新機種を捉えていた。
胴体に埋もれるようにして曲線的な頭部を持つ変わった印象を受ける機体であった。DC系列ともザフト系列とも異なるデザインは、残る最後の選択肢である大洋州連合の機体かとネオに思わせた。
ネオの感じた印象は正しく、四機編隊を組んでネオのジェットウィンダムに光弾を撃ち掛けて来たのは、量産に漕ぎ着けられた大洋州の主力機動兵器ガンアーク。
タック機は純白、マリナ機は薄紅色であったが、量産型は青い塗装が施されている。先行量産されたタック達の機体のデータをフィードバックし、十分な信頼性と安定した性能を併せ持った優秀な機体である。
擬似的な戦闘機形態をとり、その高機動性を活かした乱戦に持ち込み、数の有利と連携を持ってネオを撃破する目論見のようだ。
「目に優しい青だ。おれも好きだぜ、その色。だが、すべて落とさせてもらう」
アークライフルとホーミングミサイルの雨の中を、ネオは曲芸めいた動きで飛び回り、ジェットストライカーの翼に供えられた小型ミサイルの雨をばら撒いて牽制を行いながら、四機のガンアークの動きを同時に全てとらえつづける。
四機のうちのどれか一機だけでも動きを見逃せば、次の瞬間にはネオ自身の命を脅かす危機になり得る。
生来の高度な空間認識能力に加えて、後天的に強化されたネオの能力は容易くそれを可能とし、ジェットウィンダムに対して右側に弧を描いて通り抜けるガンアークの一機にビームライフルを射かける。
正確な狙いをつけていない編隊を乱す為の乱射だ。当たれば儲けものと思って撃ったライフルだが、幸運にも一発がガンアークの左主翼を撃ち抜いてバランスを崩させた。
逸ってその機体を撃墜しにかかれば、それぞれ別方向に回避した他の三機に集中砲火を浴びせ掛けられてこちらが海の藻屑に変えられるだろう。
さて、どの機体から落とすか、とネオがほんのわずか思案したところで後方から放たれた強大なエネルギーが、上方に回避機動を取ったガンアークを飲み込んで、高熱に耐えかねたガンアークの装甲が一息に爆発を起こす。
「クロトか、いいサポートしてくれるじゃないか」
ガンアークを落としたのは、クロトの駆るカオスが放った一撃だ。特にクロト達に指示を出してはいなかったが、カイ・キタムラの鉄拳教育の名残から、機会あれば援護射撃くらいはしてくれる。
思ったよりは使えるかね? と口元に微笑を浮かべ、ネオは味方の撃墜に動揺を見せるガンアークへとビームサーベルを抜き放って、一気に距離を詰める。その最中、もう一機のガンアークへもライフルで牽制を行っている。
ガンアークのパイロットは、リミッターを解除されたジェットストライカーの推進力を見誤った様で、小回りの利く人型へと変形を行い、アークライフルをサーベルモードに切り替えて、ネオのジェットウィンダムと斬り結ぶ。
ミラージュコロイド技術によって形作られるビームサーベルとは、アークライフルのサーベルは原理が異なる様で、鍔競る事も可能だ。
バチ、と鼓膜を割き網膜を焼くような電光が二つの光刃の衝突点で発生した、とネオとガンアークのパイロットが認識した瞬間に、両者の力量の差が如実に表れた。
サーベルを合わせた瞬間に、ネオは機体がパワー負けしている事を悟り、すぐさま刃を退き、ガンアークはサーベルを押しつける力をいなされて、大きくバランスを崩して前屈みの姿勢となる。
それを見逃さぬネオではなかった。ジェットウィンダムの左手に握るビームサーベルは、一切の迷いなくガンアークの胴を薙ぎ払い、高熱によって切断面を赤熱させながら、その背へと抜ける。
振り抜いた刃と共にガンアークの後方へと飛翔したジェットウィンダムの背後で、上下に両断された鋼鉄の巨人が、新たな死の爆発花となってこの世から搭乗者もろとも消えた。
「機体はいいが、あんたらみたいな普通の人間相手に傷一つでもつけられたら、おれの生みの親と兄弟に馬鹿にされちまうんでね。悪いがここでやられるわけにはいかないのさ」
身体能力の他に、彼の肉体を健常人と同じものと誤診させる役にも立っているマシンセルが、ネオの意志と興奮状態に応じて活動を活発化させた。
*
ネオを含む三輪艦隊先行部隊が、三国艦隊の先行部隊との戦闘を徐々に激しいものに変える中、戦闘地域を避けながら青い海が暗黒に変わる深さを航行する巨大な影がいくつもあった。
地上水中両用の機体であるメカゴジラ三機種、そして準特機として実戦に初投入されたケロンタイプ五機種、そしてクライ・ウルブズ各機を搭載したドック艦の域を超えたドック艦セプタが、その影の正体であった。
彼らが向かう先は、三輪艦隊本隊。
天空からその矢の先を向ける航空戦隊に加えて、海の底より襲い来る怪獣部隊。
それを迎え撃つのは、狂気の老科学者が生み出した完全なる無人機動兵器部隊。
勝利の天秤が傾く先は未だ知れずとも、その戦いが恐るべき死闘となる事は間違いなかった。
つづく
こんばんは。かなり短くなりましたが、こんかいここまで。いやしかし、チャンバラが書きたい。刀を握ったまま切り落とされてぶらりと垂れる片腕とか、零れ落ちそうになる腸を押さえながらの血塗れの斬りあいとかMS戦でいいから。
ふう、ご感想ご指摘ご助言お待ちしております。そろそろマイトガインとダイノガイストのガチンコを書くかと考えておりますので、次回まで間が空くかもしれません、ご容赦くださいませ。それではおやすみなさい。
乙でござる乙でござるー
三輪長官来たよ三輪長官ゲロゲーロ
総帥のチャンバラへの渇望から何故ドワォと感じてしまったのだろうワシ
あっちもお待ちしておりますー存分にチャンチャンバラバラやってくださいませー
>>647 ドワォか……もう三輪長官も来ちゃったから、「極道兵器」岩鬼正造が来てもいいでしょう、色んな壁をぶっ壊してくれと思う。
とにかく乙でした。
αシリーズ三輪ですか。
最早スレのタイトルが変わっておかしくないレベルになってますなぁ。まぁ、いつのまにか00ってついたりしてますが。
そういや、ATX氏のはαナンバーズ丸ごと来てたっけ。
前大戦からメンデルに引き篭もってた人も動きだしてるようで。…割と忘れられてたんじゃないだろうか。
ようやく軌道修正した大枠筋が考え終わったので再開します
一部どうしても変えられない部分もあり「どこかで聞いたような話だな」と思われるかもしれませんが
その辺は勘弁してくださいw
とりあえず、以前投稿してブツ切れになってしまったインターミッションの改定完成版を
前半は以前投下した分の手直し、後半が投下しそこなっていた分です
Middle Intermisson−1
前段 妖魔帝国の興亡
「それ」はいつどこで生まれたのか。
「それ」自身にもわからない。
「それ」に自我が目覚めた時は、すでに「それ」は古代の南太平洋の海洋民に神として崇められていた。
海から突き出た巨大な岩。
そこが「それ」の宿っていた場所。
彼らは信じていた。
いつの日にか「それ」は蘇り、彼らを苦しめる南の大陸の帝国を滅ぼしてくれると。
その帝国の名は「ムー」と言った。
帝国は西や東の大陸とは隔絶した文明を誇り。
ましてや周辺の島々など歯牙にもかけない存在であった。
帝国に抗う術を持たぬ島々の人々を、帝国は奴隷として狩り出し帝国内で過酷な重労働を強いた。
彼らの怨嗟は「それ」に集められた。
しかし、いかに血涙のこもった怨嗟でも、無機物に意思を与えるに至るには程遠い。
「それ」に自我が芽生えるまでに至ったのにはまた別の力が介在していた。
島の人々は「それ」をバラオと呼んだ。
彼らの言葉で「破壊するもの」と言う意味だった。
しかし、そのバラオに捧げられる呪文は、彼ら自身も意味不明のものだった。
ただ何百、いや何千年も前から、この大洋の島々に人々が住み始めたころから「子々孫々に伝えなくては
いけないが、決して大きな声で唱えてはならない」という必伝にして禁忌の言葉として伝承されていた。
その禁忌を、彼らは帝国への怨嗟のために破った。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
意味も知らず、ただただ怨嗟と遺恨の念を込めて、彼らはバラオの前でその呪文を唱えた。
その度に深遠の底から絶大なる力の微かな残滓がバラオへと注ぎ込まれている事など知る由もなく。
そう、それは絶大なる封印されし力の、ほんの僅かな一部分に過ぎなかった。
ある日、帝国に連れ去られた恋人が無残にも殺された事を知った一人の娘がバラオと呼ばれる岩の上で自
らの喉を突き命を絶った。
その悲嘆と絶望の溶け込んだ血を吸った「バラオ」はついに目覚めた。
岩の中から一回り小さな岩が出現したかと思うと、その岩が見る見るうちに巨大な人型の像となり。
そしてその目が光ったかと思うと、巨大な足を踏み出し始めた。
周囲の海底岩たちにも命を与え、バラオの軍団が大陸へ向けて進軍した。
人々は狂喜した。
しかし、バラオは彼らの怨嗟をエネルギーとしただけで、彼らを救う気などまったくなかった。
バラオの軍団の進軍は大津波と大暴風を巻き起こし、彼らは憎っくきムー帝国よりも先に滅ぼされてしま
った。
高度な文明を誇ったムー帝国も、命なき岩塊から無限に増殖する軍団と、強大な魔力を誇るバラオの前に
国王ラ・ムーをはじめとした王族を多数殺戮されてあっさりと滅亡した。
バラオの軍勢の強大さもさることながら、帝国の守護神である「ライディーン」がいかなる高貴の血の者
にも、いかなる武勲の勇者にもまったく反応しなかったという予想外の事態もあった。
そしてムー大陸を足ががりに世界を征服したバラオは百年近く地球の支配者として君臨した。
後世、失われた史書に「悪魔世紀」と呼ばれた時代の到来だった。
だがムー帝国の生き残りの反乱により、帝国に大いなる文明を与えていたムートロンの力でバラオは海の
底に封じられた。
その代償として、ムー大陸は沈んだ。
バラオの封印には大陸を沈没させるだけのエネルギーが必要だったのだ。
それから一万年近い時が流れた。
ムー大陸ごと封印されていたバラオはようやくその機能の一端を回復していた。
地上には人類の科学文明が満ち溢れ、さしものバラオもいきなり復活して地上の支配権を奪還できるとは
とても思えなかった。
そこでバラオは尖兵を送り出す。
思うところあって帝国の生き残りを全ては殺さず洗脳して共に眠りにつかせていたが、その一人を目覚め
させた。
それはラ・ムーの血を引く戦士であった。
彼に自らの息子であるという偽りの記憶を与え尖兵の頭として地上に送り出した。
あくまで様子見の尖兵でありね多くは期待していなかったが、思いの外あっさりと尖兵は打ち滅ぼされた
。
そして尖兵の頭の戦士を打ち破ったものはライディーン。
忌まわしきムートロンの力で動く神秘の神体。
一万年前の戦いで、ムーの守護神であったライディーンがバラオのムー侵攻を阻止しなかったのは、当時
のムーが周辺を弾圧する専制帝国と化していたからだった。
神体に搭乗すべく選ばれた戦士がどんなに力と気合を込めても、ライディーンは動きもしなかった。
繁栄に驕ったムー帝国は意思ある力ムートロンに見捨てられたのだ。
しかし全世界を征服したバラオ封印の時には、誰も乗ってもいないのにムートロンを放出して封印を手助
けした。
此度のバラオの復活は全世界の危機の最中であり、ライディーンはラ・ムーの末裔ひびき洸を自らに招き
入れてまで復活した。
のみならず、全世界から地球の危機を救うべく集まった勇者達と共にバラオの尖兵を粉砕した。
力が蘇りきらない今、あの勇者の軍団には勝てない。
バラオは逼塞し、本格的復活を待っていた。
そんな時だった。
ライディーンがわずかな戦力と共にバラオの潜む海域にやって来たのは。
高度な文明を誇ったムー帝国も、命なき岩塊から無限に増殖する軍団と、強大な魔力を誇るバラオの
前に 国王ラ・ムーをはじめとした王族を多数殺戮されてあっさりと滅亡した。
バラオの軍勢の強大さもさることながら、帝国の守護神である「ライディーン」がいかなる高貴の血の
者にも、いかなる武勲の勇者にもまったく反応しなかったという予想外の事態もあった。
そしてムー大陸を足ががりに世界を征服したバラオは百年近く地球の支配者として君臨した。
後世、失われた史書に「悪魔世紀」と呼ばれた時代の到来だった。
だがムー帝国の生き残りの反乱により、帝国に大いなる文明を与えていたムートロンの力でバラオは
海底に封じられた。
その代償として、ムー大陸は沈んだ。
バラオの封印には大陸を沈没させるだけのエネルギーが必要だったのだ。
それから一万年近い時が流れた。
ムー大陸ごと封印されていたバラオはようやくその機能の一端を回復していた。
地上には人類の科学文明が満ち溢れ、さしものバラオもいきなり復活して地上の支配権を奪還できる
とはとても思えなかった。
そこでバラオは尖兵を送り出す。
思うところあってムー帝国の生き残りを全ては殺さずに、洗脳して共に眠りにつかせていたバラオだが、
その一人を目覚め させた。
それはラ・ムーの血を引く戦士であった。
彼に自らの息子であるという偽りの記憶を与え尖兵の頭として地上に送り出した。
あくまで様子見の尖兵であり多くは期待していなかったが、思いの外あっさりと尖兵は打ち滅ぼされた。
そして尖兵の頭の戦士を打ち破ったものはライディーン。
忌まわしきムートロンの力で動く神秘の神体。
一万年前の戦いで、ムーの守護神であったはずのライディーンがバラオのムー侵攻を阻止しなかった
のは、当時 のムーが周辺を弾圧する専制帝国と化していたからだった。
神体に搭乗すべく選ばれた戦士がどんなに力と気合を込めても、ライディーンは動きもしなかった。
繁栄に驕ったムー帝国は意思ある力ムートロンに見捨てられたのだ。
しかし全世界を征服したバラオの封印の時には、誰も乗ってもいないのにムートロンを放出して封印を
手助 けした。
此度のバラオの復活は全世界の危機の最中であり、ライディーンはラ・ムーの末裔ひびき洸を自らに
招き 入れてまで復活した。
のみならず、全世界から地球の危機を救うべく集まった勇者達と共にバラオの尖兵を粉砕した。
力が蘇りきらない今、あの勇者の軍団には勝てない。
バラオは逼塞し、本格的復活を待っていた。
そんな時だった。
ライディーンがわずかな戦力と共にバラオの潜む海域にやって来たのは。
敵はライディーンと、たった三機の支援戦闘機、そして数体の人型機動兵器のみ。
これなら勝てる。
そう踏んで急遽復活したバラオとその眷属はライディーンに襲いかかった。
そこに現れたのが、洸の母であり、かつてバラオ封印の中心として動いた後に冷凍睡眠で一万年の
時を超えた最後のムー王女レムリアだった。
レムリアが命と引き換えに開放した純度の高いムートロンにより、ライディーンはバラオと同じサイズ
にまで巨大化した。
それでもバラオの人とは異なりながらどこか人にも似た心は愉悦に踊っていた。
すでに遠い西の大陸の、高き山々の底に封印されていた眷属たちを蘇らせいていたのだ。
それも今自分の周りを固めている、間に合わせにその辺の岩石に命を与えた代物ではなく。
悪魔世紀の支配を助けた強力な眷族達が。
その眷属たちが到着すれば、ライディーンを粉砕し、そのムートロンエネルギーを奪える。
そうすればあの勇者の軍団とも戦えると。
しかし。
いつまで待っても眷属たちは来なかった。
時間稼ぎのつもりで余裕で戦っていたバラオだが、無限のムートロンによるパワーアップと、母の死に
激昂する洸の気迫に次第に押されていった。
そればかりか。
ただの岩だった自分をここまで強力な存在にした人々の怨嗟。
一万年経っても尽きせぬその負の精神エネルギーの集合体が、どこかに吸い上げられていった。
ライディーンの放つゴッドボイスに砕かれた時、すでにバラオはバラオではなかった。
「それ」はただの砕かれた岩に過ぎなかった。
バラオの呼んだはずの眷族はどこに消えたのか。
バラオをバラオたらしめていた、負のエネルギーはどこに吸い上げられたのか。
それは誰にもわからなかった。
少なくともこの世界では。
しかし別の世界である出来事が起きていた。
やっぱ三輪長官いるとスパロボの空気が出る気がする。
第4次での初登場時の結構いい男だった三輪長官が懐かしくもあるが
後段 妖魔帝国の残滓
「なんだあれ?」
思わず漏らした声はシンの偽らざる心境を表していた。
それはあまりにも奇妙な飛行物体だった。
この「異世界」に連れて来られ早三ヶ月、機械獣や戦闘獣、奴隷獣やマグマ獣、あるいはメカ獣士と
いった奇怪な形状の機動兵器や、サイボーグ恐竜であるメカザウルスなどを見慣れてきたシンの目に
も尋常なものには見えない。
もっとも、それは恐怖や戦慄を誘うような形状ではない。
むしろ場違いにユーモラスと言ってもいい物だった。
蛸の胴体に烏賊の触腕をつけたような形態で、不気味といえば不気味だがどこか滑稽な姿。
それが十機あまり飛んでいる。
「あれは……ドローメか?」
「知ってるんですかミリエラさん?」
奇妙な物体の名を特定した僚機パイロットのミリエラ・カタンに聞き返すシン。
「ああ、あたしたちの世界で『イーヴィル・エンパイア(妖魔帝国)』って呼ばれてた地下勢力の使ってた
雑魚メカだよ」
「雑魚?」
日頃から戦いの厳しさを自分に叩き込むべく厳しくシゴいている(時に趣味ではないかと疑うこともあるが)
若き女傑にしては、あまりにも敵を甘く見た発言だ。
その意外な言葉にシンは聞き返す。
「ああ、雑魚だね、あれ自体は大した性能じゃないよ」
「フラニーさんまで」
ミリエラの相方、フラニーことフランチェスカ・オハラも同意する。
一見シンと同年代かと思うほど童顔だが、彼女も歴戦の勇士だ。
彼女達の知る限りドローメの性能は低かった。
「あれ自体は、ね」
この場にいるもう一人の人物が呟く。
それはシン、ミリエラ、フラニーの三人を統べる小隊長にも共通する認識。
機動兵器どころか通常の対空火器や既存の航空機でも充分に撃退できる程度で、雑魚以外に形容の
しようはない。
いや、そればかりではない。
前哨たるドローメを露払いに現れる主兵器「化石獣」の性能も他の地下勢力の機動兵器と比べれば一枚
も二枚も落ちる。
攻撃力・防御力はそこそこだが特殊能力がなく、ニュータイプ戦士や百戦錬磨のパイロットの操る機動兵器
にはいいように翻弄され、一騎当千の特機には鎧袖一触にされる。。
手強かったのは空中戦艦というより空中要塞とも言うべき母艦ガンテの堅牢さくらいだった。
それでいて物量もそれほど豊富というわけではなく、バルマー戦役では味方が分散されて手薄になった時に
襲われた場合のみ脅威となる相手だった。
だが小隊長の内心には不安がよぎる。
それをもたらした物は戦力の弱体さにも関わらず謎に包まれた「妖魔帝国」の得体の知れなさだった。
多少の超常現象を含みつつも基本的には純然たる科学の産物であるその他の敵と違い、妖魔帝国の
ドローメや化石獣は撃墜・撃破した残骸を調査してもどういう原理で動いているのかさっぱりわからない。
それでもドローメは詳細不能ながら動力炉のような物を持つが、化石獣に至っては破壊されるとただの
岩石や土塊しか残らない。
そしてまた、その他の地下勢力や敵対的異星人は目的がはっきりしている。
人の世を憎み支配しようとしている天才の悪意の顕現である機械獣。
戦闘獣はミケーネ帝国が、メカザウルスは恐竜人類(ダイノソイド)が地上の支配権を奪還するために
送りこんでいたもの。
宇宙からの侵略者の尖兵であるマグマ獣やメカ獣士も同様だ。
しかし、妖魔帝国はその点でも得体が知れない。
一万年以上昔にこの地上を支配していたという伝承から考えるならば、ミケーネや恐竜人同様に地上
の支配権を奪還しようとしているのだろうが、敵対関係にあるとはいえある程度意思の疎通の出来る敵と
は異なるので断言は出来ない。
バルマー戦役時に妖魔帝国軍を指揮していた大幹部シャーキンは人間に近いメンタリティを持っていた
が彼は元々人間であり、傀儡に過ぎなかった。
単にあのドローメや化石獣が自分たち同様に「この世界」に呼び込まれただけならば何も問題はない。
油断さえしなければ簡単に撃破できる。
だが、もしも「妖魔帝国」そのものがこの世界と何か関係があったとしたら?
何しろ「この世界」には錬金術や魔術が存在しているのだ。
この世界、ラ・ギアスには。
異世界ラ・ギアスを旅する航空戦艦エレオノールに属する見習い機動兵器パイロット、シン・アスカには
お目付け役が多い。
さまざまな合縁奇縁からエレオノールに乗ることになったパイロットたちに、現在のシンとマユの兄妹の
後見人であるシュウ・シラカワが手当たり次第にシンへの指南を依頼しているからだ。
ある意味では英才教育を施されていると言っていい。
「シン、あれ全部落とすのにどのくらいかかる?」
「え?二分くらいですかね」
「一分でやってみな」
ドローメに遭遇したのは前進哨戒を行っていたシンを含む四人の小隊。
シンに指示を出したのは小隊長のコニー・フランシスだった。
バルマー戦役時に活躍した伝説の戦乙女「シュラク隊」の一員であり、漆黒の黒髪と白磁のような白い肌
が特徴の女性。
ソバカスの多さを本人はひそかに気にしている彼女もシンの教導を依頼されているメンバーの一人。
「一分ですか?」
「出来るよね、あたし達が仕込んでやってるんだから、出来なかったら…」
コニーのやや細い目がヘルメットとモニター越しに光った。
いくら機体が近接し、またラ・ギアスの特性としてミノフスキー粒子の影響が少ないとはいえ、そこまで
映像通信の解像度が高いわけではないのだが、シンにははっきりとそれが感じられ、背筋に悪寒が走る。
「は、はいっ」
慌てて機体を浮遊するドローメ編隊へと向ける。
背中からミノフスキードライヴの光る粒子を発しながら。
LM314V12「セカンドV」
それがラ・ギアスに無人で漂着し、シンに今与えられている機体だった。
他の三人の乗るLM312V06「Vヘキサ」同様にLM312V04「ヴィクトリー」の派生型だが、
頭部やバックパックの変更に過ぎないヘキサとは違い、コアブロックの主機を後継機であるLM312V2
1「V2」と同じ物に換装してミノフスキー・ドライヴ飛行が可能となっている。
元々はV2より先に企画された機体だが、コアファイターの主機を換装することは技術的に困難であり、
最初から新設計のコアファイターを使用するV2が先に完成した。
それでも高価とはいえ量産の効くヴィクトリーを改修するプランはV2完成後も続行、遂に完成をみたの
がセカンドVだった。
言わば遅すぎた機体であり、完成時にはリガ・ミリティアは既に一反地球連邦組織としてセカンドVを量
産する力など無くしていた。
機体強度や主機とのマッチングからV2のような無限に近い加速は不可能だが、主機の余剰エネルギーで
推進剤を使わず飛行できるメリットは多大だった。
シンにとっては二機目に乗るMSであり、機動兵器としては五機目の愛機となる。
短期間で速いペースの乗り換えもシュウと、教導役たちが決めたことだ。
この機体に乗っていた経験が「元の世界」に戻った後に必要となる貴重な経験となるのだが、今のシンに
それを知る由はない。
徐々に出力を上げる必要のある推進噴射と異なり、いきなり加速出来るミノフスキードライヴ特有の機動
を生かして文字通り瞬く間に近接し、ドローメが吐き出す低速の火炎弾を難なく交わして右手のビームサー
ベルで切り裂きつつ、遠方のドローメにはもう片方の手のビームライフルで打ち貫く。
12機のドローメを全機撃墜するのに要した時間は50秒弱だった。
いくら相手が弱体とはいえ、機動兵器に乗り始めてわずか四ヶ月の少年とは思えない。
「まあまあだね」
驚嘆の念を隠しつつそう講評するコニー。
内心ではシンの上達に舌を巻いているが、シンは良くも悪くも調子に乗りやすいタイプと見てべた褒めは
避ける。
それに。
こと機動兵器の操縦技術と年齢・操縦暦が反比例するという点においては、シン以上の存在をコニーは知
っていた。
かつて共に戦った、シンよりもさらに若い、いや幼い少年。
彼と比べれば、シンの異常な能力も「まあまあ」の範疇になるのは事実であった。
その彼は今何処でどうしているのか、そしてまたシュラク隊の残り仲間達はどこにいるのか、思いを馳せ
るコニー。
だがシンにもその少年を上回る点がある。
ミノフスキードライヴでいきなり高速機動しても意識を失わないG耐性だ。
そう、理論上は瞬時加速できるミノフスキードライヴだが、実際にそれをやればコックピット
やパイロットスーツに施された耐G防護の限界を簡単に越えて失神してしまう。
場合によっては身体に機能障害も生じる。
結果として通常なら噴射推進の何割か増しの速度を稼げれば御の字なのだが。
シンは「何割」ではなく「何倍」の単位で加速しているのだ。
「コニー隊長!」
オプションの高性能索敵レーダーを搭載しているフラニー機から通信が入る。
「来たかい」
恐れていた物が宙域に現れた。
「妖魔帝国」の堅牢なる空中要塞ガンテ。
しかし、それは地上で確認された物と装いを大きく変えていた。
左右非対称の歪な形は緩やかな楕円形に整理され、竜の首のような部分が、生物的な物
から機械的フォルムに変わっている。
いうなれば「メカガンテ」とも言うべきものに。
それがニつ、無数のドローメと十数体の飛行可能な化石獣と共にこちらへと向かってくる。
メカガンテの内奥に宿る二つの意思。
それは本来ならば創造主バラオによって別個に仮初の人格を与えられ、主の危機に馳せ
参じるはずだった眷属であり、 何故か人を模した存在を作り出すのを好むバラオによって
彼らは兄弟として生まれるはずだった
今それらにはまがい物の感情すらない。
ただただ創造主より与えられた本質である破壊衝動と、自らを呼ぶ声に引きずられるまま
に地底世界の大空を飛んでいた。
この世界には彼らの創造主バラオと同じ根源を持つ存在があるのだ。
それも「大いなる存在」から漏れ出した残滓に過ぎないバラオとは違い、太古に封印し切れ
なかった分身とも言うべき存在が。
総帥乙!
そしてATX氏キター!
新兵の壁に打ち当たるレントンと、超人へと至るための修練に余念ないシンの対比が
そして、まさかの三輪長官w
シロッコと違ってとうとう本物の版権キャラが来たかあ
ATX氏の方は、スパロボでライディーンと比べて冷遇されつづけてきた妖魔帝国がクローズアップされたことにwktk
妖魔帝国は妖魔帝国(笑)だからなあ。
まともに後半の敵と戦ってバラオと決着つけたのコンパクトとそのリメイクのインパクトだけだからなあ。
ライディーンは人類補完計画に出張ったり対宇宙怪獣ロボだったり歌いなさいライディーンだったりと大活躍なのに。
DC側にも軍政を司る軍事官僚として第四次版=原作1クール版の三輪長官も来てたら同キャラ対戦カオスw
あの人も最初のうちは「大の虫を生かすためには小の虫は殺せ」とかごく当然の事を言ってただけなのに
回が進むにつれてA版やαシリーズ版のように狂ってきたからなぁw
>時に趣味ではないかと疑うこともあるが
シュラク隊スレを思い出すw
三輪はアレでも相当に優秀な人材だからな
ニルファとかミケーネの大規模侵攻にαナンバーズが来るまでジェガン部隊で持ちこたえさせる能力
主役級のリアルロボットやスーパーロボットがチートじみているのはさて置き、ジェガンは制式化され量産されている優秀なMSです。
しかし地下勢力に対抗するには火力不足は否めず……指揮官の能力が重要、ならばやはり三輪は優秀だったのでしょう。思想はさて置き。
……量産型グレート、なんてものもありますしスーパーロボットの量産は不可能じゃないはず。やはり開発資金やパイロットがネック?
>>666 あとは動力なんかもネックの一つになるんじゃないかな?
量産型ゲッターロボとか怖くて動かしたくないよね
ネオゲッターなら動力炉的にも大丈夫だろう。
……あとの問題はパイロットだな。
ゲッターのパイロットは頭のねじが何本か抜けていないと勤まらないらしい。
逆にゲッターの持ち味である合体変形の機構を閉鎖、ブラックゲッターの様にいずれかの形態に固定して量産化すれば多少は操り易くなるかもしれない。
それならマジンガー辺りを量産した方がいいんじゃないか
ゲッター線より危なくないし
> 頭のねじが何本か抜けていないと
ここだけ見ると物理的にネジが抜けているバ○ボンのパパでもつとまり……
なんかいけそうで怖いんだけどw
>>670 ジャパニウム鉱石は希少鉱物だからそれを装甲と動力源に使うマジンガーは結構値張りそうだ
最強の量産特機はやっぱシズラー黒系の量産型バスターマシーンと思うがこれもお値段が…
やっぱボスボロット最強か
量産されるボスボロット。
群れなし行軍するボスボロット。
せっせと補給装置を使うボスボロット。
地対空装備が無く空爆され蹂躙されるボスボロット。
>673
しかし蹂躙されてもコクピットは無事なボスボロット。
そして修理費10ですぐに戻ってくるボスボロット。
ゲッタートマホークの予備とかミサイルマシンガンとか
スーパーロボ用の武器を流用すれば十分戦えるだろう
機体強度を考慮して選ばないとヤバそうだな。
>>659 亀ですがGJ! クトゥルフ系の邪神でも出てくるかと思ったらまさかの巨烈兄弟登場に
嬉しさひとしおです。
>>673 後方支援や作業用には最高じゃないかボスボロット
ボロットに対人火器と火炎放射機を設置して歩兵相手のガンボートとして使うという手も……
と言うか総帥世界のオーブで作業機械として量産されてなかったか?<ボスボロット
作業用・特機の講習用ですな
ムー帝国が実は圧制者だったってどこかで聞いたことあるネタなんだが
漫画版か何かかな?
MGジンクスを弄ってて思ったんだが、総帥世界でのジンクスってどんな扱いになるんだろう?
強化版であるアヘッドはもう既に出てるから、連合の擬似太陽炉MSと言う扱いで出るのかな?
本来のボスボロットの材料は不燃ごみ。おお、総帥世界のオーブ国内におけるリサイクル率が物凄い事になっている!
ジンクスについては、ルイスみたいに復讐に走った誰かの専用機として中身が魔改造された状態で登場するのでは?
色々登場している総帥世界。
そのうち特撮からも(総帥が趣味によって)引用された兵器が流通しだす気がします。ヒーロー作戦、なんてのもありますし。
>>682 元ネタは富の、もとい海のトリトン(アニメ版)
ムー帝国・・・宇宙より齎されたテクノロジーによって増長し
神に挑まんとして滅ぼされた古の国
・・・だって博多弁の人魚さんが言ってた
『オメガブレス!!』
834 名前:ATX ◆ATxnCGuvrM[sage] 投稿日:2010/02/20(土) 17:54:38 ID:OprFc5XY
またアク禁だよorz
本スレ
>>20さん
>ナチュラルとは思えん顔立ちと能力と別家庭を隠し持つあの人が!!
ネタバレ禁止よ! でもよく気づいたわね
 ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄
,.'´  ̄ ´ミ 〃 ヾヽ
i" ノ_,リ._ハ \\ //〈(((ハ ))ミii
ノルパ -゚ノ、 | |ガガ| | リ´ヮ`リく!!
とio[i[|i) | | ッ| | (《卯《イつ)
Ei/k 人 人 んヽ|Lヽ((
/ ) < >_< > ( |ヽ.)
_/レ' // V`Д´V\\ し |_
(_フ彡 ⊂
>>20⊃ ミく_ )
え……?
 ̄ ̄V ̄ ̄
〃 ヾヽ ,.'´  ̄ ´ミ
〈(((ハ ))ミii i" ノ_,リ._ハ
♪〜リ´ヮ`リく!! ノルパ -゚ノ、
⊂《卯《イつ) Uo|]!]U
ん⊥Lヽ(( EiEk
しヽ.) .し'ノ
835 名前:ATX ◆ATxnCGuvrM[sage] 投稿日:2010/02/20(土) 18:17:03 ID:OprFc5XY
明日になってもアク禁が解かれなかったらこちらに続きを張るので
どなたか本スレにその旨告知とついでに上のレスのコピペをよろしく
[改行]
だそうです
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総帥が避難所になんか投下したぞー(^o^)/
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//K_/ レ「凶]ル'ム斗匕\\__|
/ < r‐‐┐Y__EF"〔爿 \/  ̄||
∠ ,イ>、_万チ¨ rチ\ } \ :||
__∠/ll√ 」///ママェェ ∨ ,小 } \ :!!
厂廴ムr‐‐' // |[]|||゚ママハハ∨ j ハ\ `l|
r<]斗ャ" // ,/||||] ∨ムム゙⌒ヽ.ハーヽ.
∠И´ ∧_」[f ゚ レ'マ>"| >"∨ 人j }
. ∠И. / ∧f斥ミt/ ¨ ∨ ム>r'
∠И. 〈「 〉 r疋彡ム 〉, ヘYアメ、
. ∠И ∨ r' _ rf"^刈! ∨ ヘK ヽ
∠И ∨「| ル' リ [ ∨〉〉、ム
/ 「¨イ // Z∨"∧ヘ.ム
∧ \/ン/〈 刄∨ ∧ヘハ
〈 \|zz__/〉 ゙〈∨ ̄`Vk‐、
/¨∨「二r‐、/ Yミ _ミヘ ヘ.
//´√'ゞ=彡' 〉 ト.ミ∨∧-{¨´
rfて`/ニ_√゙Y__/ └トミ∨∧ ム
 ̄ ̄ ̄ |ム ̄`ソム
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弋ム__,/
_ , _ -/
_,. - ∠_二_´ _/
_, -=‐_7_ ∠ーァヽ´〉/
レ' '´_,r',二 -ァ / /l‐' l
└∠/, ‐ 7 / //lー'´ l
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/ _∠ -/-/ / _l ヽヘ__, ハ
ーチ―_,く / /_-ニ-┬┬' l_ノ
└ ´ ーァ´└-二 _ _ ̄ _______
__rァ=二L∠ =┬'‐j´ -`チ―――― ´  ̄ ̄ ` _ー_ 、
∠  ̄-' ̄ {<-_--- ―‐'7, ニニ/ , -----―_‐'二二 -‐ ′
` ーァ ┬- _`77ヽ>ー―-_‐!, -‐V\ ----7´|==‐ ´
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! l l l /、/ /.〉〉 -〉 \_ _l_! ヽ l ̄/ / j l_
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ノ_レ/ハ /! 〈/_ イ/` '´ /ヽi V /_〈/, 二二ニ` ー 、
/ / く_ j l! |/ハ_/!! / | l / ,-/ ! ̄! ̄\ \`ヽ\
!∧ ! /、ハ{、_ -!! /z -‐ 7! l!〈,/ / !>、\ \ \>'
!トiヘ、 X/ \三〉、 / _ = 'イヘヽ!./ ∧ \ ー 、 \ \
{スlヘ\レ〈 /´ /_ = ´´/{イ/ `|/ /` l \ \_\-\
ヽ´丶l 〉‐ ´ _´! ,.イ| l └ーイl_ /\ \ \ \ \
_ |/\!_ ,_-'三/ l/ l ト l _, | \ ヽ \ \ \
l > 、! 〈 |.ハT  ̄ | ヽ_ 〉― ヤ \ \、 \
l /ー ´/`! l ヽl /ヽ-vァー ´ |, イ´ 丶、ヽ\ヽ、
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Vヘ / `ヽ、 ヽl //ヽ! /
/ / lイ |. イ
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! _, / l l /
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!__. ヽ.イ l l l l
/ l / / トl‐ ´|
/ l / / l ! !
L - 7L!イ |_l_ 、ヽ
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 ̄ } ! V
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