【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 11

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1通常の名無しさんの3倍
このスレは種系SSスレのうち、まとめサイトのカテゴリでIF物とされるスレの統合を目的としています。
種作品内でのIF作品を種別問わず投下してください。
種以外とのクロスオーバーは兄弟スレにお願いします。

過去スレ
IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 10
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1242221343/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 9
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1236622903/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 8
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1234086864/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 7
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1228025594/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 6
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1220011475/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 5
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1212578381/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 4
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1209267080/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 3
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1205047619/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 2
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1202222711/
【IF系】もし種・種死の○○が××だったら【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1196438301/

まとめサイト
http://arte.wikiwiki.jp/

兄弟スレ
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 8【統合】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1242394476/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 7【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1233666943/
2通常の名無しさんの3倍:2009/10/01(木) 16:31:49 ID:???
>>1
     \ |同|/       ___
     /ヽ>▽<ヽ      /:《 :\
    〔ヨ| ´∀`|〕     (=○===)
     ( づ◎と)     (づ◎と )
     と_)_)┳━┳ (_(_丿
3通常の名無しさんの3倍:2009/10/02(金) 05:37:36 ID:???
1乙ー
面白かった
続き期待してるよ
4通常の名無しさんの3倍:2009/10/03(土) 13:08:48 ID:???
なんだ作者の鳥割れたのか?
5通常の名無しさんの3倍:2009/10/03(土) 14:21:16 ID:???
ただの埋め立て作業だろ
6通常の名無しさんの3倍:2009/10/03(土) 15:26:44 ID:???
>>1

>>4-5
どうでもいい文章を書くときこそ、性格とか趣味が出るってか?
7こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/04(日) 01:51:29 ID:???

   第三章 ファーストコンタクトの果てに

       1  また国連総会

 また、なのである。
 地球の面々の『うざったい問題持ってきやがってプラントの小娘』という視線を浴びて
も動じず、発表を行うラクス・クライン議長であった。彼女の隠し玉、「宇宙クジラの
歌」を聞かせれば、みながへろへろのとろとろになってしまうのは目に見えている。フ
ァーストコンタクトはプラントですのよと念を押して、彼らからの挨拶です、と歌を流した。
 ゆったりとした体も心も包むような混声合唱。声の質は人間に近いがより澄んでいて
ハーモニーになるとまさに天の歌声だ。
 ラクスは「音痴」と言われた時卒倒しそうになったが、彼らより自分が歌が下手なのは
認めた。ラクス・クラインが生まれて初めて負けを認めた相手は、宇宙クジラであった。
 何度聞いても脳内快楽物質がぶわーーーーーーーーーっと出るような素晴らしい音楽だ。
プラントの学者は中毒性はないと言っていたが、売り出したら一日宇宙クジラの歌に耽溺
する廃人続出は間違いないだろう。
 予想通り、うるさいヒヒじじいの大西洋連邦大統領が呆けた顔で涙を流し、ユーラシア
代表は机の上に突っ伏して放心状態、東アジア代表に至っては、床に寝転がって羽クジラ
のぬいぐるみ――プラントデザイン・オーブ生産で地球圏に独占販売バカ売れ中である―
―をふぬふぬしている。
「彼らは地球圏、月への移民を申請していますの。もちろんわたくしたちと違って宇宙を
自由に飛ぶことのできる方たちですから、居住権と言うより、居空権とでも申しましょう
か、地球圏の一員として人類と同じ権利を持つ生物として受け入れるかの議決をしたいと
思います」
「こんな素晴らしい生物と一緒に暮らしていけるなんて、わたしたちはなんて幸せなんだ!」
 カガリが滂沱と涙を流しながら言う。
「やっぱりクジラはサイコーの生き物なんだぜ。緑豆が会いたいってうるさいんだ」
 と大洋州代表。緑豆はさっさとシャトルに乗って無許可で月の裏側へ向かっていました
とさ。
 どこの代表もうっとりと手を挙げた。
「では全会一致で、宇宙クジラの月への移民を認めます」
 これでわたくしの名前には、世界から戦争をなくした歌姫についで、宇宙生物とのフ
ァーストコンタクトを平和裏にまとめた名政治家という称号がつくわけですわね。
 ラクスは腹の中で高笑いした。
8こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/04(日) 01:51:51 ID:???

       2   シンとマユ

 あっさり移住が認められたので、マユはイシス基地まで遊びに来るようになった。彼女
はいつも自分たちはつながっているから大丈夫と言って、ふわふわモビルスーツデッキを
飛び回る。大きな個体だとモビルスーツの半分くらいにはなるので、シンがこのマユ――
本人は地球風の名前を付けるという習慣を面白がっている――と仲良くなったのは僥倖だ
った。
 そしていろんな人がモビルスーツデッキに来たので、イシス基地にはあと三人、SEEDも
ちが見つかった。三人とも基地の管理やメカニックなどで、外に出る実戦部隊ではない。
彼らはマユと話して、心を共有する気分をおぼえたものの、シンとマユのように宇宙をあ
ははうふふと一緒に飛ぶことはできないし、外にいる宇宙クジラと特別な友情を作ること
もできないのだった。赤服でフェイスで同じエースパイロットの美人と同棲してて、つい
でに宇宙クジラにまで懐かれちゃうってなにこいつ?的な見方をされるシンであったが、
根が他人に気を使えないタイプだから、何にも気付かず平和なものだった。
 まあ、宇宙クジラと仲良くなるにはSEED持ちでないと駄目なので、地球から月へのシャ
トルはいっぱいだ。ヘリオポリスのホテルは通常の10倍の値段でも二年先まで満室とい
う盛況ぶり。月は宇宙クジラ特需に沸いていた。全人類が自分にSEEDとやらがあれば、宇
宙クジラと腹を割った友達になれると聞いて沸きまくっているのだ。コペルニクスはプラ
ントと協力して、宇宙クジラ自治区に月上バスの巨大な停車場と展望台やレストランなど
を建設することを提案し、宇宙クジラは心地よく許可を受けて建設した。彼らにとって人
間は小さいし自分一人では空も飛べないし、とても弱弱しい生き物だ。
 しかし知的生命体として、自分たちのぬいぐるみを見たときは『おもしろいもんやけど、
地球には肖像権ゆうもんがあるんでっしゃろ。売値の7%ほしいわあ』と言ってきた。プ
ラント・オーブ連合は「これまでにないフォルムなので型起こしにお金がかかってしまっ
て、5%でいかがでしょうか」、『クジラゆうのににてるやろ。7%は譲れへんなあ。わ
てらと大西洋連邦のネズミ、どっちがあんたらに儲けさしとるよう考えてみい』。
 木星で地球のテレビを見ていた宇宙クジラは、純真無垢な宇宙生物ではなかった。
 まあ、シンにとってはマユは生意気盛りのおしゃまさんで、じっさい種族の中でもそう
いう立ち位置だった。
「そういえば、マユたちって何食べて生きてるんだい?」
 シンに体を触らせるまでになったマユだが、この質問にはちょっと黙った。
『わたしたちは人間とは全然違う生き物だから、あなたたちとは違うエネルギーサイクル
で生きてるの。なにをエネルギー源にしてるかは、まだシンにも言えない。人間は嘘をつ
いたり、人を貶めたりするでしょ。同じ人類同士で。わたしたちは種族で記憶や認識を共
有しているから、仲間に嘘をつくなんてできないけど。でもシンは、信用できるかなって
思ってる。でもまだ早いな』
「ああ、人間は愚かだからね。君たちも知ってるだろう、戦争」
『地球のテレビで見たわ』
「俺は家族を戦争で殺されて、軍人になって人を殺す側に回って、もう誰も殺さずに平和
でいたい。君たちが移民してきたことで、人間は戦争は愚かなことだと実感しつつあるん
だ。ほんとうに、ありがとう、大好きだよ、マユ」
『わたしも好きよ、シン』
 マユマユ状態になっていて、ルナマリアがヒスを起こしかけていることに、まだシンは
気付いていなかった。
9こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/04(日) 01:52:16 ID:???

       3   緑豆

 春雨じゃないよ、環境保護団体である。ブルーコスモスに長い間押されていたが、あち
らの勢力が戦争で小さくなって盛り返した、クジラマニアの人たちである。
「シェパード艦長、宇宙クジラの群れを発見しました。モニターに出します」
「おお、なんと素晴らしい、なんと美しい、自然の生み出した美の極みだ」
 乗組員は全員おいおいと泣いた。彼らが保護するべき美しき宇宙クジラたちが、月の裏
側を優雅に泳いでいる。シャトルを月軌道に乗せる。大洋州国連大使から道中に通信で聞
き出した話だと、彼らは人間とコミュニュケーションをとるのが好きだという。特にSEED
をいわれるものを持っている人間とは、テレパシー会話ができるとか。
 クジラを愛する緑豆の人間なら、全員がクジラとコミュニュケーションできるはずだと
いう確信がある。地球でもクジラやイルカは彼らが音楽を海に流すと喜んでくれる(彼ら
の思い込みです、勘弁して―な、ホントに)。
 宇宙クジラ居住区のパトロールをしているザフトに見つかる前にコンタクトを取らねば。
 シェパード艦長はマイクを握った。
「木星からいらした友人諸君、ようこそ地球へ。私たちは地球および宇宙の生き物と環境
を維持すべく活動している団体です。あなたたちとぜひ、友愛したい、親善したいのです。
地球の海にはあなたたちと似たクジラと言う生き物がいるのはご存じだと思います。我々
はクジラを食べる野蛮人と長年戦い、クジラを守ってきました。あなた方にもなにか危害
を加える不心得者がいれば、我々が許しません。LOVE & PEACEです」
 素晴らしいスピーチに館内は沸いた。宇宙クジラは彼らの誠意ある言葉に友情に満ちた
返答をくれるだろうと。
『こんちは、新しい人間やな』
 大西洋連合訛りの英語が館内に流れ、シャトルはどっと沸いた。
『えろう大層な挨拶してもうてなんやけど、あんたらのなかには種をもってるお人はおら
んさかい、あんまり親しくしようがないわ。まあ、見物やったら、邪魔にならん程度にな。
あと、地球のクジラとわてら、何の関係もないよって。収斂進化ゆうてな、まったく別種
の生き物が進化を続けて似た形になる。そういうもんや。そやから、人間がたんぱく質食
べるなら、牛でもクジラでも関係ないんよ。何らかのシンパシーをクジラに感じてると思
ってたんならすまんな』
 こう言って、宇宙クジラの群れは去って行った。
 あんなにあんなに恋焦がれて、シャトルの燃料が尽きるまで加速してやってきたのに、
事務的な返事に一瞬緑豆のクルーが凍った。しかしあっという間に復活した。
「困ったな。宇宙クジラたちは思ったよりシャイなんだね。じっくりと腰を据えてお互い
の心を開き会おうってことだろう、な」
「「「はい、艦長、そう思います。届け僕らの純粋な自然を愛する心」」」
 緑豆の標語を唱和するのであった。
『おい、そこの大洋州船籍のシャトル、ここは宇宙クジラ自治区だ。特別に許可を得た艦
以外は、展望台に回ってもらう』
 通信が入った。ザフト、シン・アスカであった。
「ザフトのモビルスーツか、まずい、撤退する。――ん?」
 シェパードはネオデスティニーの頭の上をひらひらと舞う小柄な宇宙クジラに気がついた。
(宇宙クジラが単独行動をとるとは、これはチャンスではないか)
 撤退しながらシェパードは宇宙服を着て宇宙クジラと戯れるのを夢見ていた。
「艦長、燃料がありません」
 最大加速できたので、このシャトルは月軌道から移動する燃料がもうないのだった。
10こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/04(日) 01:53:56 ID:???
前スレ埋め立てでへましました。
LOLはマンセーじゃなくてlaugh out loudly、2ちゃんでいうワロスくらい。
PMLは禿藁くらい。
11通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 02:10:01 ID:???
聞かれてもいないのにそういうの説明すると萎えるからやめといたほうがいいよ
よっぽど説明したくてウズウズしてたんだろうけど、だったら作中で説明しろ
12通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 03:25:50 ID:???
せっかく面白いの書いてる職人にからむなよ。
それともこの職人は俺が育てたがやりたいのか?
13通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 05:45:37 ID:???
とりあえず前スレ1000付近を見てこい
14通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 06:59:03 ID:???
見てきたが、何か?
15こんな未来があってもいい? ◇PnqS0Odl32:2009/10/04(日) 10:19:26 ID:???
続きが思いつかない・・・
16通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 10:21:57 ID:???
もしキラ、アスラン、シン、レイが女性だったら・・・?
17通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 10:23:11 ID:???
>>16
何回目くらいだそのネタ?
18通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 12:48:40 ID:???
もしキラがナルシストだったら
19通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 12:51:42 ID:???
やめてよね。君が僕にかなうわけないだろう

砂漠あたりのキラが最高だった
20通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 13:21:38 ID:???
>>18
既にナルシストじゃん
ベルト服とかスヘエディのピンク入った変な服とか
自分に酔いしれてないと着れないよ
21通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 13:23:57 ID:???
そういやメージュだかのクリスマス絵でもベルト入りまくったサンタ服着てたなw
22通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 13:28:57 ID:???
もしもキラのファッションセンスが最悪でそれ以外は完璧超人だったら
23通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 13:30:08 ID:???
キ裸「これこそが、ナチュラルとの和平を導く唯一のナチュラルファッション!」
24通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 13:32:11 ID:???
江頭キラ:50
25通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 14:24:29 ID:???
もしラクスが、笑う仮面の英雄のクルーゼみたいに、本人にはそんなつもりは無かったのに、
偶然がかさなったりした結果本編のように戦争に介入することになったんだったら。
26通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 15:43:58 ID:???
もしもレイが反抗期だったら
27通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 15:45:52 ID:???
ザフトを脱走して大西洋連邦あたりでピアニストを目指します
28通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 10:42:34 ID:???
コープランドが最強大統領だったら
29通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 22:16:24 ID:???
ブルーコスモスがフルボッコ。
ニートはニートのまま。
30通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 22:17:29 ID:???
もし脚本が小池一夫せンせいだったなら
31通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 22:46:13 ID:???
もしマスドライバーがあるのがマリネラだったら
32通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 22:47:31 ID:???
柳宗元が出てきて、魔乳やタリアをバシタにします
キラとフレイのあれが地上波放送できないほどになります
種割れじゃなくてエレクチオン
絶対出て売る麻薬0号

こりゃ、クロス総合だ罠
33通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 22:52:07 ID:???
マリューが貧乳だったら
34通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 23:28:11 ID:???
>>33
うん、それ歴史が大きく変わるな
35通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 23:47:28 ID:???
ムウが庇わずAA撃沈は確実
36通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 23:48:59 ID:???
お?種死はどうなる
37通常の名無しさんの3倍:2009/10/05(月) 23:58:00 ID:???
えーと
キラ、アスラン、カガリ、ラクス、虎は生存、AAクルーは死亡だな
ナタル、ムルタはカウンター無いから死なない?
でもクルーみんな逃げたし、ナタルは出血多量で死にそうだしムルタ一人で
ドミニオン操作できないからどっちみち死亡か?

んでムウが庇ってない→回収されてネオになってない→ネオ不在の新三馬鹿?
38通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:07:20 ID:???
実はアラスカから歴史が変わるので
サイクロプスに巻き込まれてキラあぼん
39通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:07:37 ID:???
代わりにムルタorナタルを回収してネオ化すればいい
正直アニメのネオはいてもいなくても同じだけど
40通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:10:43 ID:???
周りに敵がいないからナタルがネオで、ムルタがトップのままかな
41通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:12:50 ID:???
アラスカから変わるとどうなるかな
42通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:23:21 ID:???
おk、情報まとめるぞ

・マリューは貧乳
・アラスカからIF突入
・サイクロプスでキラ、ムウ、マリュー他死亡?
・ナタル生存、ネオ化?

・オーブのマスドライバーは自爆、その際AAが無いのでカガリはシャトルで脱出か
・オーブ戦でキラがいないのでシンの家族が死なない?それとも結局巻き込まれか
・ラクシズの戦力は実質アスランのみ?
43通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:29:25 ID:???
アラスカからでいいのか?
それこそストライクに乗り込むもマリューが貧乳のためやる気が出ない
手助けしないキラ→共に死亡もありえるぞw
44通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:32:40 ID:???
むしろ拾ってきたラクスの「プラントには巨乳の方がたくさんおりましてよ」発言で
アスランにホイホイ付いていくキラとか
45通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:34:03 ID:???
しかしそのプラントの歌姫であるラクスが貧ry
46通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:35:50 ID:???
そこで「種の時点でラクスとミーアが入れ替わっていたら」設定を発動!!
47通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:40:55 ID:???
プラントに行きます
いえ、ぜひ連れてってくださいw
48通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:52:06 ID:???
もし、コーディネイター化の基本仕様に、
・女性は必ず巨乳になる
があったら?
49通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:53:59 ID:???
貧乳がステータスになる
50通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 01:00:58 ID:???
>>46
ざんねん!じつはそれはセトナだった!
51通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 04:14:31 ID:???
>>48
ムウが即寝返ります
52通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 07:37:06 ID:???
まさか、乳の大きさでここまで話が変わるとは
53通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 08:32:10 ID:???
>>48
貧乳こそが美しいとい流行だった頃に作られた世代がプラント中で一番多くて、
人口の半分が今は巨乳ブームの地球を恨んでるとか、普通にありそうで困るw
54通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 10:19:46 ID:???
>>51
じゃ、ディアッカも即裏切らせるか
55通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 11:28:26 ID:???
>>37
盟主王はドミニオンのローエングリンでアークエンジェル撃つとき1人でドミニオンの全システム操作してるぞ
56通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 12:11:01 ID:???
つまり盟主一人でドミニオン無双か
まさに盟主王
57通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 18:43:36 ID:???
盟主王はエヴォリューダーだから仕方ない
58通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 18:46:18 ID:???
種の終戦でプラントが独立を勝ち取れず、実質的な強制労働所、流刑地扱いになっていたら

プラント住人は基本的に敗戦国民といか収容者扱い。
深刻な被災者は反乱分子になりうるとしてプラントに送られるシン。
せめて人らしく生きられるよう立ち上がる若きカリスマデュランダル。
暴動を鎮圧しに来た最新鋭艦を乗っ取って交渉のテーブルに着かせるべく逆襲を始める!

このぐらいやってもよかったんじゃないだろうか……
59通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 18:51:27 ID:???
ナタルとムルタをつなぎ合わせてCE版あしゅら男爵の出来上がり〜
60通常の名無しさんの3倍:2009/10/07(水) 00:06:59 ID:???
ドラえも〜ん
61こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/08(木) 17:43:52 ID:???

       4   イシス基地

 シンはロープでシャトルを引っ張って、基地に曳航した。そこでパスポートチェックが
行われ、身元照合が終わったものから、基地の営倉に放り込まれた。とりあえずの拘置所
である。大洋州の大使が引き取りに来るまで、緑豆一行はここで過ごすことになった。
「宇宙クジラはSEEDを持つという人間だけでなく、モビルスーツにも懐くんですかね」
「馬鹿な。モビルスーツのパイロットがSEEDを持っているんだろう。我々のなかに種を持
つ者はいないと言われたが、地球からどんどん構成員を上げればSEED持ちは必ずいるはず。
なんとしても、宇宙クジラを保護するのは我々だ、ザフトではない」
 力強く言い放つシェパードだった。
「彼らは真空でしか生きられない生き物なのでしょうか? ぜひとも地球に招待したいで
すよね」
「宇宙クジラと地球のクジラのファーストコンタクトを我々が演出する。素晴らしい」
 おいおい、さっき、地球のクジラとは関係ありまへんと言われただろうが。
 こういう環境保護団体は他人の言葉は聞かない人間の集まりだ。自分の善意を押しつけ
るのが大好きな人たちで、緑豆でも戦争ばかりする人間は間引きしてクジラのえさにしよ
う、クジラマンセーな派閥までいるのだ。ただ、自らクジラに食われた人はまだいない。

「でさ、きょうのマユは昨日のプラントのテレビ見たらしくて、私のほうが美人よねとか
いってきて、かわいいったらないの」
 でれでれする同棲相手に、ルナマリアはむっときた。宇宙クジラと接するのは大事な仕
事だし、懐かれるのはいいことだが、妹の名前を付けて自分の世界に入っているシンは不
気味だ、困りもんだ。
 自室で夕食をとりながら、不愉快な気分になるルナマリアであった。
 ラザニアは彼女の好物であったが、チーズがくどくてもう食べる気にならない。
「わたし、おなかいっぱいだから」
 席を立った。
「ルナ、どうした? 普段は俺の三倍食べるのに」
 お気楽な顔のシンを見ていると、こみ上げるものが……。
 ルナマリアはバスルームに駆け込んだ。
 月のトイレはバキューム方式だ。ものが落ちてくればばきゅーーーーんと吸い込む。
 しかしシンの耳は普通じゃない音、吐瀉している音に気付いた。
「ルナ!」
 低重力化で喉を詰まらせれば、生命の危機である。
 はき終えたルナマリアを抱きしめて、洗面所で少しずつ水を含ませて、口を洗う。ここ
は訓練を受けた軍人で、ルナマリアも我慢した。本音は1G下でのように水をぶくぶくし
て口を洗いたいのだが。
 その始末に30分くらいかかった。シンはルナを抱いて、ソファにしっかり座らせた。辛
くてもここで横にすることはできない。
「大丈夫か? 医者に診てもらったほうがいいと思うけど」
 基本的に病気にかからない体質のコーディネーターである。吐くというのは、子供が食
べ過ぎた時や、老人が食べ過ぎた時くらいだ。青年期真っ盛りの女性が吐くといえば妊娠
があるが、月でそれはありえない。
「――うん、これから医務室に行くわ。一緒に来てくれる?」
「もちろん」
 シンはルナマリアの手を握った。
62こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/08(木) 17:44:09 ID:???

「おめでとうございます、妊娠3カ月です」
 医師にあっさりと告げられ、二人は飛び上がった。
「男の子だったら、名前はレイ、女の子だったらマユだぞ」
「それは遺伝子検査しないと」
「ごほん、あなたたち、プラントに行っていませんね。月での自然妊娠はおそらく人類史
上初めてですよ」
 医師が鼻息をふんふんと鳴らしながら言った。これで正常な分娩にこぎつければ、自分
の名前は医学誌に残る!と思ってのことだ。
「このところバスルームで生理のにおいがしなかったのはこれかあ」
「やだ、シン、ホントにデリカシーがないんだから」
 ルナマリアが真っ赤になる。
 この若いカップルは自分たちの身に何が起こったかわかってないと気が抜けた医師だっ
たが、威厳をもって彼らに告げた。
「ルナマリア・ホークはモビルスーツパイロットの任から外すようにしますから、体を大
事に」
「ええ! 仕事の制限までするんですか? 地球の基地じゃ、臨月まで乗ってるのに」
「ここは月です。あなたはレアケース、名前通り月の聖母かもしれないんですから」
「ちょっと待ってくれ。ルナと俺はすることはちゃんとしてるぞ」
 なんでパイロットって単細胞なんだろうと医師は途方に暮れた。
 部屋に返った二人は大喜びだった。
「メイリンに電話しちゃお」
 喜ぶルナマリアに電話代が高いからメールで済ませとは言えないシンだった。プラント
行って結婚指輪買ってこないと。こないだの資源衛星にプラチナが含まれてたから相場下
がってるから、そっちで節約しよう。
「あ、メイリン、あたし妊娠しちゃった。そんな予定聞いてない? 自然妊娠よ。月で初
めてのケースだって。テレビの取材とか来るかなってたのしみ。あんたもせっかく地球に
いるんだからさっさとアスランの子供産みなさいよ。緑の目の可愛い甥っ子か姪っ子がほ
しいわ」
『シン、お前って奴は―』
 横からアスランのどなり声がする。
「なんだよ、アスランの奴。オレ、あいつとはしゃべんないから」
 アスランと話すと、最後は毛髪の話題になるのだ。ふさふさで禿の遺伝子のないシンには時間の無駄の話だ。
 さてここで、アスランの頭髪の話をしておこう。
 人類の髪の毛の本数は人種によって差があり、7万本から14万本である。
 基本的に髪の毛が太い人種は本数が少なく、細い人種は本数が多い。
 アスランはコーディネーター二世であるから、両親から髪の本数の少ない体質、髪の毛
の細い体質を受け継いだ。さらに母親は女性であったので祖父母が禿遺伝子を除去するお
金をけちったので禿遺伝子がある。遺伝による三重苦がアスラン・ザラを苦しめているわ
けだ。わかったかな?
 閑話休題
 シンはルナマリアの妊娠についてラクスにメールを書いた。彼女はルナマリアとメイリ
ンのホーク姉妹はお気に入りだから、月で人間が妊娠できることが実証されたが、マスコ
ミには押さえておいてくれと。
 メールを送信してから、議長はキラをおもちゃにしているけど恋人関係でなし、ジュー
ル隊長なんかはちょっと優しくすれば奴隷のように尽くすだろうに興味なさそうだし、異
性にあんまり興味ないのかなと思った。
63こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/08(木) 17:44:29 ID:???

       5   ラクスとキラ

「まあ、シンからメールですわ」
 嬉しそうなラクスの声。自分はどうしてここにいるのだろうと自問するキラ。僕は軍人
になる気なんかなかったのに、エンジニアになりたかったのに、プラントの大学はレベル
が高くてザフトよりそっちに行きたいのに……。
 高らかにラクスが告げた。
「ルナマリアがおめでたですって。素敵ですわ」
「えっ? 彼らは月にずっといて」
「だから、1/6Gで妊娠したのです、あのカップルは。コーディネーターがまだ未知の宇宙
への適応を見つけたのかもしれません」
「じゃ、ガードしてあげなくちゃ」
「そうです。彼女には月で初めての人類を出産してもらいます。それがわたくしの可愛い
シンの子供と言うのが、嬉しくてたまりませんわ」
 キラは一度聞いてみたかったことを口に出した。
「君は子供がほしいと思わないの?」
「あら、わたくしはプラントと結婚してますもの」
 にっこり笑うラクス。
「だからカモフラージュ&エスコート役に僕が必要?」
「それにプラントを守る剣として」
 重々しく言い切られてしまった。
 あーモビルスーツ乗るのうざい、スーパーフリーダムってなんか気に入らないと思って
いるキラにとって、辛い言葉だった。
 だからちょっと演技してみる。
「僕らは仲間だろう、ラクス」
 と言って、ほろりと涙をこぼした。
「当り前ですわ、世界を平和に導くためのパートナーではありませんか」
 ラクスが細い手でキラの手を握り、きらきらした目は潤んでいる。
「君はほんとうに芸能人なんだね」
 キラはラクスを置いて部屋を出た。
 急に宇宙クジラに会いたくなった。
64SEED 戦後30年目の愛:2009/10/08(木) 23:09:31 ID:???
投稿開始
65SEED 戦後30年目の愛:2009/10/08(木) 23:11:23 ID:???
アスランはプラント最年少で外務委員になったイザーク・ジュールとともに地球連合との最後の交渉に今向かわんとしていた
外相のイザークがわざわざ出てきて連合の奴らと交渉するなんて余程プラントの情勢が逼迫してるか、戦争の準備が整わないので最後の悪足掻きと云った処だろうか……
会議に行ったは良いものの、彼の役回りはただその場にいて質問に時折答えるのみだった……
ザフトに戻った真意を繰り返し聞いて来たのが印象的だった元帥の軍服を着た老人と筋骨逞しい壮年の金髪の男。
連合の使者だという……その時はさっぱり判らなかったが後で壮年の男は大西洋連邦の国務長官で、名前はマイケル・ウイルソン
年寄りは聞きなれぬ名前で、後で判ったのだが若い頃、サザーランド中将の副官だったという
小一時間ほど経ったところ、アスランとその壮年の男は《重要な話》という理由で部屋の外に追い出された
やることが無いので雑談に応じることにした
「この戦いを一番望んでいないのは貴方方でしょうが、オーブのキラ・ヤマトもそれ以上に望んでいません」
「それは、君の口を通してキラがそう言いたいと受け取っていいのか?」
「それは貴方の自由です。しかしキラはそういう回りくどいやり方を嫌う人間です。これは外相としてではなく個人的な友人としての意見です」
思わず相手の顔をまじまじと見つめてしまった。表情は真剣そのものだ
「友人?アイツとどうゆう関係なんだ」
「士官学校の同期です。貴方ほどではないにしても多少は彼の性格は知ってるつもりですが……」
「あんたか、キラに変な事を吹き込んだのは」
「変なことと云っても、何の話ですかな」
「まあいい。話を変えよう」
「キラが士官学校に入ったのは自分の意志です」
寒い中、紫禁城の近くを歩きながら《マイク》は興味深い話をしてくれた

キラが士官学校に入ったのは昔愛した女が連合の高官の娘で、目の前で親子共々見殺しにしてしまったからだと
「僕はね、今でも……」
「今でも?」
「今でもあの時の無力さが悔しいんだ。それで一時期は我武者羅に力を追い求めてもした。逆に為るべく殺さない様にという変な真似をした
でも方法じゃないような気がしたんだ。技術でもないような気がして」
「だから士官学校に入ったのかい」
「なんていうか、その、うまく言えないんだけれども。僕の戦い方には真剣さというか、心というか、……軍人としての態度みたいなのが無かったような気がするんだ」
キラはそんなことを言っていたが私には助け船を出す勇気がなかった
彼は今でも奥さん以上にその娘さんの事を愛してるのかもしれない
66SEED 戦後30年目の愛:2009/10/08(木) 23:12:28 ID:???
彼に聞いたと断りながらマイクは続けた
「だから彼は自分の様な悲劇を若者達に遭わせたくないが為に、連合の軍隊で訓練を受けてプラントとの戦争を必死で避けようとしてるのが現実です」
「ならば中立を堅持し続ければいいではないか」
「あの中立も変な中立で戦争が始まって随分経ってから勝手に言い出しただけの話です。そのせいでオーブが散々な目に遭ったのを彼は後悔してるのでしょうな」
「連合がマスドライバーを強盗しなければな」
マイクは一瞬怪訝な顔をしたが、暫くすると大爆笑し始めた
「何が可笑しい!」
「我が国での一般市民の認識としては依然として戦争を始めたのはザフトです。
しかも開戦の2年前にその下地になる状況を作っておきながら放置し続けたのもザフトという考え方が圧倒的です。
8割以上の国民が今現在の状況として、たしかに連合国(国際連合)の首脳陣を殺して核キャンセラー(NJ)をばら撒いて戦争をおっ始めたのはシーゲル・クラインではあるが、
クラインを粛清してもなおも戦争を止めずにジェネシスで地球を消そうとしていたのはパトリック・ザラではあり、
現実派というのがこの程度の見識しかもって居なかったとはトンだお笑い草、だという考えの下にあるということです」
「!」
アスランの中にこの男に対する憎悪の念が湧いてきた
今、戦争を避けたいと言いながらそのすぐ後にザフトを意図も簡単に貶める。しかも誇張された情報で
この場で腰の拳銃で頭を打つのは簡単だが状況が悪い……あとでいたぶってやるか、いや暗殺させようか
「まあ世間一般のナチュラルはそういう考え方をするということを少々粗雑な方法で説明したつもりですが。失礼でしたな」
「今の事は忘れましょう。両方にとって無理解は無益です」
「そうしましょう」
《喰えない男だ》
「それと、今度はキラの共通の友人としてぜひ役職抜きでお会いしたいものですな」
「私もそう思いますよ」
「あと、貴方方の事はわが軍では問題があるので、出入りのジャンク屋に送らせることにしました」
「ザラ軍団長、ジャンク屋ではまずいでしょう。わが方の一部隊である日本軍と韓国軍はコルシカ条約はおろか、ユニウス条約に未加盟です
私の方から東アジア人民解放軍(共和国軍)に護衛を打診しておきましょう。そうすれば貴方方に失礼にはなりますまい」
「……判りました」
67SEED 戦後30年目の愛:2009/10/08(木) 23:13:52 ID:???
イザークとの帰り道、屋台の茶屋で話を始めた
「なあアスラン、あのマイク・ウイリソンとかいう奴、どうだった」
熱い紅茶を両手に持ちながらイザークがこっちに向かってくる
「どうした。お前らしくないぞ。ずいぶん弱気だな」
紅茶を取ると一気にすする
「あのサザーランドの副官だ、手強い。正々堂々と正面からやったらこれは戦争に勝てんし、馬鹿見るだけで……」
アスランは思わず紅茶を噴き出してしまった
「どうした!」
「おい、なんだ。このお茶にはオレンジの切り身が入ってるのか!しかもママレード、ジャムだぞ。酷くて飲めん」
イザークはまるで豆鉄砲を食らった鳩の様な顔をしている
「何だと!母上様から教わった入れ方だ。文句あるか!ロシアンティーだ」
「……、馬鹿話はそれくらいにしておいて、なにかあるのか」
「安心しろ、《保険》は用意してある。大西洋連邦さえいなくなればあとは老いぼれガルシアやシュバリエのクソ爺など怖くはない
あとは好きにやってくれていい」
覚悟したかのようにお茶を飲み干すと
「で、決着はついたのか、キラ・ヤマトのことは」
《ニコル、父上、ハイネ、ミーアー、メイリン……》
愛し、愛された者の名前が走馬灯のように駆け抜ける……
「……アイツは俺の……総てを……、いやなんでもない」
《シン、早く俺のところへ来い。アイツを倒すにはお前が必要だ》
「ハッキリしろ」
「最善の策を取る。安心しろ」
キラ・ヤマトを説得してザフト陣営に迎え入れる……
アスラン・ザラの一貫した《最善策》であった
68SEED 戦後30年目の愛:2009/10/08(木) 23:19:14 ID:???
続く

69通常の名無しさんの3倍:2009/10/08(木) 23:22:14 ID:???
ロシアンティーはジャムを入れるのではなくジャムを舐めながら飲むのが正式だと言うのに…

しかしアスラン、またそれかw
70通常の名無しさんの3倍:2009/10/09(金) 04:05:14 ID:???
15年位前には伊藤園の缶入りロシアンティーという逸品があったんだがな…
71通常の名無しさんの3倍:2009/10/09(金) 21:43:42 ID:???
やっぱり凸に話し合いは出来んな
72通常の名無しさんの3倍:2009/10/10(土) 08:14:39 ID:???
あう人会う人、心象を悪くしていかないときがすまないのかw
73通常の名無しさんの3倍:2009/10/10(土) 11:06:21 ID:???
こんな未来ー<キラ、ご愁傷様です
あと生活描写がいいなー

戦後30年ー<そういえばルナマリア殺害したのはアスランになってるだよな実際の黒幕は誰だか分からないが
どうするアスラン
74通常の名無しさんの3倍:2009/10/10(土) 13:46:17 ID:???
コーディネーターの男女比が三毛猫レベルだったら
75通常の名無しさんの3倍:2009/10/10(土) 14:44:45 ID:???
>>74
プラントが一夫多妻制じゃなきゃすぐにハーフだらけになるなw
名有りキャラの性別がそのままなら赤服連中は優良な種馬扱いで戦場に出られなくなりそう。
76通常の名無しさんの3倍:2009/10/10(土) 19:03:20 ID:???
アスランのハゲだが、種世界のコーディの能力継承理論(not遺伝の理論)では、
優性はハゲでなくフサの方なんだと思うから父親さえハゲ遺伝子を除去していれば……

だが……「両親とも」ハゲ遺伝子が残っていてはこの理屈でもハゲは回避できないw


ともかく乙
77通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 09:00:44 ID:???
たしか身長の優位性は小さい方が優位だと聞いた事がある
78通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 09:01:47 ID:???
のっぽとちびが子供作ったら、ちびが生まれやすいって意味で?
79通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 09:58:13 ID:???
>>77-78
コーディした部分は遺伝するから、片親がチビになるように遺伝子操作すればチビが優性、
ノッポになるように遺伝子操作すればノッポが優性なんだよ、種世界では。

と思っておきましょう。
現実の遺伝子の優性劣性とか関係ない設定なんだから。
両親が干渉する遺伝子操作したらどうなるのかとか考えない事w
80通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 20:09:47 ID:???
>>79
廃棄処分かサーカス行き
81通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 22:03:22 ID:???
両親に放棄されたコーディーがサーカス(エロゲメーカー)送りになってたら
82機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:01:53 ID:???
2350くらいから貼る
83通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 23:45:56 ID:???
>>82
期待してます
84機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:51:51 ID:???
 戦闘の灯は、大型輸送船の船橋からも見えていた。
 オーブ国防宇宙軍所属のネルソン級宇宙戦艦が爆散するのを、船長は信じられない物を見る思いで見守る。今まで自分達が感じさせられていた威圧感の大きさと、あっけなく宇宙に散っていく宇宙戦艦の姿のギャップを認めかねて。
 しかし、如何に信じがたい状況であっても、これは現実である。惜しむべきは、これが自分達の危機脱出の一助にはなりそうにないという事か。
「……各員、自分の仕事に戻れ! 問題は解決していないが、オーブ軍の糞共が死んだ分、状況は好転しつつあるぞ!」
 船長は、自分と同じく今の戦闘に見入っていたブリッジクルー達に向かって声を上げ、彼らの成さなければならない困難に再び立ち向かわせた。
 大型輸送船の状況は何も変わっていない。
 主推進器及び姿勢制御スラスター、操作不能。大型輸送船は、狙い澄ましたかのように……いや、明らかに狙って、ヘリオポリスとの衝突コースを突き進んでいる。
 そして、通信不能。救助を求める事はもちろん、衝突の危険を報せる事も出来ない。
 船員達は何とか状況を打開しようと、不調の原因とその打開策を探して必死に自らの出来る事をやり続けている。
 船長は、自らの立場故に状況を見守るしか出来ない事に歯がみした。しかし、それこそが他の誰にも出来ない、船長だけに出来る事でもある。
 せめてとばかりに、船長は頭を働かせる。何が起こっているのか……いや、今、何を成すべきなのか。思考に没頭しようとしたその時、船長の傍らでコンソールが鳴った。
85機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:52:38 ID:???
「何だ?」
 機関部からの通信。コンソールを操作して回線を開くと、重く苦々しい空気をまとわりつかせた機関長の声が応える。
『船長……原因を突き止めました。推進器制御系のOSが主原因です。こいつが、こっちの命令を拒絶してる。それから、予備制御系も緊急停止装置もやられています』
 バグなのか……あるいは何か仕込まれたか? 船長の中に疑念が渦巻く。だが、それを問い質すよりも先に聞くべき事があった。
「修理は可能なのか?」
 原因がわかっても、それを解決出来ないのでは意味がない。
 その事は機関長も理解していた。用意してきていた答を返す。
『今、機関士および整備士全員で、推進器をコンピューターの制御から切り離し、手動で操作を行う準備をしています。安全の保証は出来ませんが、上手く行けば進路を変える事が出来る筈……船長のご許可を頂きたい』
 推進器は、コンピューターが極めて厳密に制御している。それを手動操作で行う等、正気の沙汰ではない。
 制御不能に陥って推進器自体が暴走……過剰出力に耐えかねて最終的に爆発などという事も十分に考えられる。
 そこまで行かずとも、推力の微妙な調整など望めない状態だ。船が何処へ針路を変えて飛んでいくか予想もつかないし、最悪の場合には急な動きの変化に耐えかねて船体が崩壊してもおかしくはない。
 通常ならば、そんな試みに許可を出せるわけがない。しかし、今この船には、そんな手しか残されては居ないのだ。
「許可する。何をしてでも、この船の針路を変えてくれ」
『ありがとうございます。ただ、残念な事に時間がありません……間に合わせるべく、各員全力で奮闘中です。しかし……万が一、間に合わない場合……それに備えるよう、ヘリオポリスに連絡をとってください』
 時間……今、この船に最も足りない物だ。機関長の言葉は重く、抑え込んでも抑えきれない不安がにじみ出ている。
 その不安が現実になった時に備え、危機はヘリオポリスに報せねばならない。危険に備えてヘリオポリスを脱出するなど、対策を取る事もできるだろう。
 それに、この船へ救援の手を差し伸べてくれるかもしれない。救援を得られれば、この船が起こそうとしている惨事を防ぐ大きな助力となる。ならずとも、乗員だけでも救い出してくれれば……
「……わかった。何としてでも、ヘリオポリスに連絡を取ろう。そちらは、作業を続けてくれ」
『了解です。船長』
 機関長との通信は切れた。船長は息もつかず、すぐに通信員に向けて問いを投げた。
「通信機は回復しないか?」
「……ダメです。通信機は完全にいかれています」
 通信員は暗い顔で首を横に振る。そして、救いを求めるかの様に船長に言った。
「これは単純な不調などでは説明出来ませんよ。まるで、通信関連のシステムを根こそぎ壊されたみたいだ。もう……どうしたら……」
「泣き言を言ってる場合じゃないんだ! 何としてでも、外と連絡を取る。通信機が使えないなら何でも良い……何か通信手段を考えろ!」
 通信員を怒鳴りつけ、船長は自分が無理言っており、それを承知の上で無理を通さなければならない状況に歯がみする。
「何か……何か方法があるはずだ」
 悩み顔を上げる船長を、白く皎々と光る照明が見下ろしていた。
86機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:53:47 ID:???
 

 ギルバート・デュランダルは、ヘリオポリス港湾部の管制室に設けられた指揮所のドアをくぐった。
 ZAFTヘリオポリス守備隊指令である男が、指令席からデュランダルの姿を見咎めて眉を顰める。
「こんな所まで、何の御用ですか?」
「オーブ艦が、たった一機のMAに襲撃を受け、全滅したと聞きまして……興味を抑えられなかったものですから」
 悪びれることなく笑顔で言うデュランダルに、守備隊司令は見せつける様に溜息をついてみせた。それから、宇宙空間を映し出す正面モニターに目を戻して言う。
「これより戦闘指揮を行います。邪魔はしないで下さい」
「戦闘ですか……戦艦一隻を一蹴した敵です。プラントに対して敵意を見せていないなら、今は手を引いた方がよろしいのでは?」
 デュランダルもモニターに目をやる。そこには、オーブ艦の残骸を背景に一機のMAが映し出されていた。昆虫の様に無機的なその姿に心の奥底を揺すられる様な感覚を覚えながら、デュランダルはその名を呟く。
「……ミステール1。ヘリオポリス所属のMA。噂に聞く、ザクレロと関係があるのかもしれません。危険な相手ですよ?」
 ゼルマンの言うザクレロならば相当に危険な相手だ。そして、ザクレロとは関係なくとも、ミステール1の戦力の大きさは変わりない。
 MA五機でMS一機分という乱暴な計算をすれば、MA二十機を擁していたオーブ国防宇宙軍所属の戦力はMS四機分に加えてネルソン級宇宙戦艦一隻となる。ミステール1はそれを一蹴して見せた。
 そして、自軍の戦力はMS六機。この違いは決して大きいものではない。
 しかし、守備隊司令は冷笑を浮かべて言った。
「ザクレロ……ああ、ゼルマン艦長の報告にあったMAですか? あれは大げさに過ぎます。たかがMAですよ」
「…………」
 デュランダルは守備隊司令の反応に、隠して苦笑を浮かべる。実に……ゼルマン艦長の言った通りの反応ではないかと。
 ただ、守備隊司令の答は、コーディネーターの矜持がだけが言わせた物ではなかった。
 プラント領の防空圏内で、“中立国”の軍艦が沈められたのだ。それを無視しては、オーブへの態度はもちろん、プラントによるヘリオポリスの実効支配すら疑われよう。
 仮に勝てないとしても、戦闘をしないわけにいかないのだ。こんな事で死ぬ軍人達には哀れを感じるが……
「見逃すという選択は、政治的にも無い……か」
 デュランダルは誰にも聞こえぬ様、口の中で呟く。
「全て杞憂に終わり、“たかがMA”が事実であれば良いのですが」
 正面のモニターの中、ミステール1を包囲しつつ接近する守備隊のMS六機のスラスター光が瞬くのが見えた。戦闘は、もうすぐにも始まろうとしている。
87機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:54:54 ID:???
 

 MMI-M8A3 76mm重突撃機銃を装備したジンが四機、M68 キャットゥス500mm無反動砲を装備したジンが二機、背にスラスターの炎を長くなびかせて宙を突き進む。
 その先頭を行くジンのコックピットの中で、MS隊隊長は僚機に指示を下した。
「敵MAの射程は長い! 十分に距離のある内から回避機動を行え!」
 指示を受けたジン各機は、姿勢制御バーニアを噴かす事に加えて、手足を振って重心移動を行い、針路を複雑に曲げながら前進していく。回避機動開始のタイミングは早いが、それ以外はいつもと変わらない。
 先のオーブ軍との戦闘で、ミステール1の武器はわかっている。警戒すべきは長射程のビーム砲。それだけ……それだけだ。敵は、大型ではあるもののMAに変わりない。
 MS隊隊長は、言い聞かせる様に言葉を紡ぐ。
「敵はMAだ……新型であろうと所詮は時代遅れの兵器だ。何も恐れる事はないぞ」
 何も恐れる事はない……いつも通りの戦場。だが、それならばこの、身の内から湧き出してくる様な不安感は何なのか? MS隊隊長は、全身にじっとりと浮き上がってくる汗に身を冷やされながら自問する。
 異変は、先のオーブ軍とミステール1の戦闘を見てからだ。
 一方的にオーブ軍を粉砕するミステール1。確かにその戦果は凄い。ZAFTでも、同じ戦果を上げられる者はそう居ないだろう。しかし、それだけの筈だ。
 如何に強力な敵だとしても、自分にそれを恐れる気持ちは無い。今まで幾度も戦場に立ち、艦砲と対空砲をかいくぐり、MAの群れを相手にしてきたのだ。
 それがどうだ? 今、自分は新兵の様に震えている。意識してそれを止めようにも、どうしても止まらない。
「何だ……何なんだいったい」
 震える手で操縦がぶれない様、操縦桿を強く握りしめる。
「あの敵は何だと言うんだ」
 MS隊隊長は、モニターの中のミステール1を睨み付けた。
 ミステール1は、宇宙の虚空の中より、自分達に迫ってくる。スラスター光を鬼火の様に後に曳きながら。赤い単眼を皎々と光らせて。
 氷の様な冷たさが、MS隊隊長の背を這い上がる。直後、ミステール1から放たれたビームが、一条の光となって何も無い宙を貫いた。
 外れ……やはり、回避機動を取るMSに対し長距離から命中させる事は難しい。
 しかし、この攻撃が呼び水となり、ジン各機もまた長距離での射撃戦を開始した。重機銃が猛り狂った様に銃弾を吐き出し、曳光弾が宙に線を描く。無反動砲からは炎の尾を曳きながら成形炸薬弾が走る。
 だが、早い。攻撃を仕掛けるタイミングとしては、ミステール1を半包囲してからでもかまわない……いや、数の有利をより生かす為、そうすべきだった。
 攻撃が早い事を注意しようとして、MS隊隊長は自らもトリガーを押していた事に気付く。
 何かが判断を狂わせている。そうと気付いたのは、MS隊隊長の経験故だろう。しかし、彼をもってしても、何が判断を狂わせたのかはわからなかった。
 いや……プライドの為に、無意識に認める事を避けたのか? 自らを狂わせているものが、紛れもない恐怖であるという事を。
 それは、ミステール1を侮ったが故でもあったろう。
 ミステール1は、隊長機と僚機のジンが張る重機銃による火線の直中に突っ込んできている。火線の隙を縫う様な機敏な回避の出来ない旧式MAならば有り得る動きだ。
 このままならば、遠からず火線に捉えられて落ちる。そう判断して然るべき。だからこそ、MS隊隊長は自分が感じている感情を無視してしまった。ミステール1を倒せる敵と判断して。
「所詮、ナチュラルが作った旧式兵器だ!」
 部下を叱咤しながら、MS隊隊長はトリガーを更に押し込んだ。
 隊長機のジンは重機銃を振り、ミステール1を絡め取る様に火線を寄せていく。僚機の重機銃の火線も同じくミステール1に迫る。無反動砲装備のジンは、ミステール1が火線に囚われて身動きが取れなくなる瞬間を狙っているだろう、射撃を止めていた。
 ミステール1の射撃が戦闘の始まりの号砲となってから僅かに十数秒。重機銃の弾倉から弾が尽きるより僅かに早く、その火線がミステール1を捉える。僅かに着弾のタイミングは前後したが、ジン四機がその火力を全てミステール1に叩きつけた。
 ミステール1の全身で壮絶に火花が散る。
 撃破を確信して、MS隊隊長の口元に笑みが乗った。だが、その笑みは直後に凍り付く。重機銃の弾丸を受け止めながら、何ら影響を受けず前進してくるミステール1の姿を目の当たりにして。
 そして、ミステール1が放ったビームが、無反動砲を撃つタイミングを計っていた二機を続けざまに撃ち抜いたのを見て。
88機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:55:57 ID:???
「ば……馬鹿な! 直撃だった筈だ!」
 傷らしい傷を受けた様子のないミステール1と、背後で爆光と化した僚機をモニターに映し、MS隊隊長は驚愕の声を上げた。
 信じたくはない。だが、現実だ。
 ミステール1は、最初から重機銃からはダメージを受けない物として無視していた。事実、ミステール1はあの弾幕の中で傷一つ受けていない。
 ならば、損傷を与える可能性が在るのは無反動砲のみ。しかし、重機銃の弾幕がミステール1の動きを阻害すると信じ、必中を期して動きを止めていた無反動砲装備のジンは、格好の的だったはずだ。
 ミステール1は的確に攻撃を行い、結果、MS隊は瞬時に二機を失った。それは同時に、ミステール1への攻撃手段が失われた事をも意味していた。
『た、隊長! 銃が……銃が効きません!』
『二機を……二機を一瞬で! あいつ、仲間を二人もぉ!?』
 混乱と……明らかな恐怖を見せながら、僚機から通信が入る。その声が、MS隊隊長の意識を現実へと引き戻した。
「うろたえるな! 回避機動を継続。狙い撃ちにされるぞ!」
 とっさに怒鳴りつける。その警告は間に合った様で、ミステール1の続けての射撃は、回避機動を取った僚機の傍らを通り過ぎるだけに終わった。
 MS隊隊長はモニターの中に僚機の無事を確認しつつ、無意識のうちに弾倉交換していた重機銃をミステール1に向け、撃つ。ジンの手の中で再び重機銃が暴れ、ミステール1の表面で弾丸が爆ぜる。
 無数の弾着に晒されながら、赤く光る単眼は無機質に見続ける。モニター越しに、今や無力な獲物となった哀れなコーディネーターを。
 ナチュラルに勝る知性と肉体。無敵の新兵器だったMS。そんな物は全て、この魔獣の前には意味がない。何もかも、全てをその顎で食い千切るだけだ。
 身体の奥底から、ドッと感情が溢れ出す。震えが止まらない。逃げたい……逃げたい。
 それは恐怖だと、MS隊隊長は今やはっきりと理解していた。もはや、恐怖している事を認めないプライドも慢心も消えている。
 だが、理解しているからこそ、かろうじてそれに呑まれる事は免れた。
「……各機、抜刀!」
 号令を下し、MS隊隊長は自機に重機銃を捨てさせ、MA-M3 重斬刀を抜かせた。
『じゅ……重斬刀で、あのMAを!?』
『無茶です隊長!』
 僚機から返るのは困惑の声。そして、そこにも恐怖の色が混じっている。それを察して、MS隊隊長は恐怖を払うべく声を荒げた。
「他に奴を倒す方法があるか!? 俺達の敗北はヘリオポリス失陥を意味するんだぞ!」
 MSは出撃したジン六機が全ての筈。これが失われれば、ヘリオポリスにMAに対抗できる戦力は無いという事になる。
『……了解!』
 一人が、意を決した様子で答を返した。
 背後には仲間がいる。その事実の認識が、恐怖を僅かでも晴らしたか。
 それは他のパイロット達にも伝播した。
『了解!』
『了解です!』
『抜刀! 突貫準備良し!』
 声を上げながら、僚機が次々に重斬刀を抜く。それを受け、MS隊隊長はフットペダルを踏み込み、自機を加速させた。
「これより、敵MAに格闘戦を仕掛ける! 俺に続け!」
 ジンが宙を駆ける。剣を掲げ、四機のジンはミステール1に立ち向かう。それは、まるで神話の時代の戦士の様に。
 しかし、英雄譚は伝えている。魔獣は、英雄ならざる者に死を賜うと。
 ミステール1はジンに向かって突き進みながら次々にビームを放った。回避機動を取るジンは、まるで舞う様に、あるいは跳ねる様に軌道を複雑に変え、ビームから逃れ続ける。
 しかし、全てをかわし続けられるわけはない。
 一機が左足に直撃をくらい、姿勢を崩した。
『うわぁ!? 止めろ! 止めてくれぇ!』
 通信機から溢れる悲鳴。左膝から先を失い宙を流れるジンを、続けざまに撃たれたビームが貫き、宙に散らせた。
『隊長、無理だ! 隊長ぉ!』
 仲間がまた討たれた事に動揺したジンが足を止め、逃れようとしたのかミステール1に背を向ける。そこを背から腹にかけてビームで撃ち抜かれ、そのジンも宇宙を飾る閃光となって散った。
89機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:57:18 ID:???
「怯むな! 進め!」
 MS隊隊長は、声を上げて恐怖に抗う。
 僚機が打ち倒されていく様は悪夢に等しい。そして彼は、悪夢の中からやってきたとしか思えないMAに接近戦を挑もうとしている。
 だが、その試みは達成されようとしていた。ミステール1との距離は、十分に縮まってきている。
 初撃を与えるべく先陣を切る隊長機に、その距離はもう僅かだ。
 が、その距離を詰めるより早く、ミステール1のビームが隊長機を襲った。MS隊隊長は、自機を大きく跳ねる様に移動させ、ビームを回避する。
 その分、隊長機の前進は遅れた。その間に、最後の僚機がミステール1へ肉薄する。
『死ね、化け物ぉ!』
 僚機の叫びが通信機越しに届いた。同時に、大上段に重斬刀を振り上げ、ミステール1に斬りかかる僚機の姿を見る。
 そして直後――僚機は胴を横一文字に両断されていた。
「――っ!?」
 MS隊隊長は、死した仲間の名を叫ぶ。
 ミステール1のマニピュレーターの先端。魔獣の鋭い爪の如きヒートサイズが、ジンを容易く切り裂いた。綺麗に分かたれたジンは、爆発する事もなく二つに分かれて宙を漂おうとしている。
 ミステール1は、一度振り抜いたヒートサイズを戻しがてら、もう一度ジンに斬りつける。その一撃を受け、ジンは胴より上の部分を肩口から斜めに両断された。
 意味などは無い。確実に死んでいた機体とパイロットへ、力を見せつけるかの様に、なぶるかの様にもう一撃を加えたのだ。
 三つに分かたれたジンは推進剤に引火したとおぼしき爆発を起こし、炎と煙とでミステール1を包み込む。
 MS一機分の推進剤の爆発だ。相応の威力があっただろう。それは、死んだ仲間からの最後の一撃となった筈。
 だが、MS隊隊長は確信していた。その炎の向こうから、ミステール1が変わらぬ姿を現すだろう事を。
「……」
 最早、勝ち目はない。そう直感する。
 しかし、それでも……逃げる事は許されない。生きている仲間の為……そして、死んでいった仲間の為。自分は戦わなければならない。
 だが、そんな決意も、炎の向こうから姿を現すミステール1の姿が目に入るや、たちまち萎え果てていく。
 炎を身にまとい、赤く単眼を光らせる虚空の蜘蛛。その鋭い爪、光る吐息。それは、自らに確実な死をもたらす魔獣なのだと……
 恐怖よ静まれと何かに願う。古い時代ならば、それを祈りと言い換えたかも知れない。しかし、神を持たない者の祈りに応える者はなく、願いは無為に霧散して消え、安息は永久に訪れない。
 恐怖に身を冒され、ともすれば震えに止まりそうになる身体を、ただ兵士としての冷徹な思考……止まれば死ぬだけだという現実的判断だけを頼りに必死で動かしながら、MS隊隊長はミステール1の間合いに踏み込んで行く。
「せめて……せめて一太刀与えねば、死ねん!」
 一太刀で良い。多くは望まない。ただ、この魔獣に一太刀を。
 ジンは重斬刀を高く掲げた。それに対し、ミステール1はヒートサイズを振るう。
「俺と仲間達の一太刀を受けろぉぉぉぉっ!」
 MS隊隊長のジンが全霊を込めて振り下ろす重斬刀と、ミステール1が振り抜いたヒートサイズの軌跡が交差する。
 ヒートサイズを受け止めた――そう思った直後、重斬刀はあっさりと折れ飛んだ。そしてヒートサイズはそのまま、ジンのコックピットハッチを浅く切り裂く。
 MS隊隊長の眼前を白熱する刃が通過し、開いた破口から宙にたたずむミステール1が姿を見せた。
 赤い単眼が、MS隊隊長に無機的な視線を投げかける。死にかけの獲物をただ観察する無慈悲な目……
「……ばけ……もの……め」
 恐怖がついに心を押し潰す。全身が恐怖に震える中、やっとそれだけを言葉にしたMS隊隊長に、ミステール1は興味を失ったかの様にヒートサイズを再び振るう。
 ヒートサイズの灼熱の刃は、何の躊躇も無しにコックピットの中に突き込まれ、MS隊隊長の身体を貫くと同時に瞬時に焼失させた……
90機動戦士ザクレロSEED:2009/10/11(日) 23:58:43 ID:???
 

「MS隊、全機被撃墜。潰滅です」
 オペレーターの半ば呆然とした声が指揮所の中に虚しく響いた。
 誰もが信じられないという様な面持ちで、戦闘を映していたメインモニターを見つめている。それは、守備隊司令やデュランダルも同じ事。
 直接、戦ったわけではない彼らに、ミステール1と対峙する事での恐怖は伝わっていなかった。故に、MSの敗北は有り得ない事と映る。MAに対し、圧倒的優位である筈のMSが何故……と。
「不甲斐ない連中だ! 自滅じゃないか!」
 守備隊司令が、苦々しく吐き捨てる様に言う。
 パイロット達の悲鳴混じりの通信は、こちらでも捉えていた。敵を過度に恐れたあまり、自滅したと思われても仕方なくはある。
 ただ、そんな答が出されたとしても、敗北した事への混乱は残っていた。誰も、MS隊が潰滅するとは思っていなかったのだ。しかしそれでも、最初から危惧を抱いていたデュランダルは立ち直りが早かった。
「……降伏の準備をします」
「な、何だと!?」
 いきなり言い放ったデュランダルに、守備隊司令及び指揮所スタッフ達の視線が集まる。
 デュランダルは、僅かばかり皮肉げに微笑んで答を返した。
「……MS隊を駆逐された今、このヘリオポリスには敵MAに対抗出来る戦力は無い。つまり、一時的にせよ、ヘリオポリスは彼らに占領された。違いますか?」
「必要ならば兵に銃を持たせ、白兵戦をもってしても戦ってみせる!」
 守備隊司令が怒声で返す。それを聞き、他のスタッフ達はざわついた。
 指揮所のスタッフ達は、デュランダルと守備隊司令を見比べながら、不安げな表情を浮かべている。戦うのは嫌だが、降伏も嫌という所か。
 守備隊司令の言う事は、ZAFT軍人としては間違っていない。命を捨てて最後まで敵に抵抗するというのは実に英雄的だ。
 しかし、それが明らかに無駄な抵抗だとわかっており、さらには事態を悪化させるだけとわかっている状態で、英雄的行為に耽溺する気はデュランダルにはなかった。
「落ち着いて下さい。敵は、港湾部の外からミサイルを撃ち込むだけで、この指揮所を永久に葬り去る事が出来るのですよ?」
 艦船の事故に備え、宇宙港が比較的事故に強い作りをしているのが災いする。港湾部の中を少々破壊しても、ヘリオポリスにはダメージはいかない。
 白兵戦などに乗る必要など欠片もなく、外部から港湾部に攻撃を仕掛ければ、そこに潜んでいる守備隊に大打撃を与える事が出来るのだ。
 そうなれば、ヘリオポリスの基地機能が完全に失われる事となる。
「そして、仮に白兵戦になるにしても、このヘリオポリスで戦闘に耐えるZAFT兵はどれくらい居るのです?」
 白兵戦を主とするいわゆる歩兵は、ZAFTでは元々少ない。少ない人口で強力な軍を維持する為に、兵種がMS関連に偏っているからだ。
 このヘリオポリスに歩兵は一個分隊。十名弱だろうか。
 後は、少数のMPなどを除けば事務員や整備兵ばかりで、戦えそうな兵種はいない。戦闘訓練も一応は受けているので全く役立たずとは言えないが、戦闘員として頼りに出来る物ではないだろう。
 その上、それらの人員の数も決して多くはない。元より、暫定的に占領地に置かれた守備隊でしかない上、多くの人員を連合MS護送作戦に割かれ、必要最低限の人員しか居ないのだ。
 基地機能が失われた港湾部で、後方担当がほとんどの少ない兵を動員して白兵戦など狂気の沙汰に違いない。
「それでもだ! 軍人として、全滅したとしても降伏は無い!」
 デュランダルの言う事など最初からわかっていたのだろう。守備隊司令は、強硬に降伏を拒絶する。
 デュランダルは内心、うんざりする気分を抑えながら、溜息をついた。
 まあそうだろう。降伏となれば守備隊司令の責任が追及される事は避けられない。今後の出世も何も無くなってしまう大失態だ。ここから逆転を狙うなら、白兵戦でも何でもやって徹底抗戦し、敵を撃退するより他無い。
 それに、軍事組織として未熟であるZAFTでは、降伏についてまともな教育が行われていない。降伏した敵兵士を虐殺する様な真似が横行するという事は、逆に自分達が降伏した時にそう言う扱いをされる危惧を抱くという事でもある。
 軍人として、守備隊司令が徹底抗戦をとなえるのはわからないでもない。
 しかし、政治家としてはここで守備隊に全滅されては困る。
91機動戦士ザクレロSEED:2009/10/12(月) 00:00:06 ID:???
「降伏したとしても一時の事ですよ。彼らはそう長く、ここに踏みとどまる事は出来ません。恐らく、すぐにここを去るでしょう」
 デュランダルは、安心を引き出そうと殊更気楽そうに言って見せた。
 遅かれ早かれ、ヘリオポリスにはZAFTの艦隊が戻ってくる。また、オーブがここぞとばかりにヘリオポリス奪還をはかり、戦力を向けてくる可能性もあるだろう。
 ヘリオポリスに残る限り、戦闘が繰り返される事が確実と言える。そうなれば、恐らくは補給が続くまい。
 彼らが玉砕するまで戦うかと言う所だが、それも無いだろう。脱出に必要な船は、オーブ軍が持って来てくれた。籠城して敗北を待つより、旅立って生き残る道を探す筈だ。
 そうなれば、後には空のヘリオポリスが残される。
「ヘリオポリスの領有を続ける為、守備隊の全滅は避けなければなりません」
 この辺境へ連合が手を出してくる事は現在の戦況では考えがたいので、ヘリオポリスを巡る仮想敵は必然的にオーブとなる。
 守備隊が全滅していれば、オーブはヘリオポリス奪還の為に喜々として救助に来るだろう。守備隊の生存者を手厚くZAFTに送り返し、ヘリオポリスの守備を固め、自分達がテロリストからヘリオポリスを取り返したのだと高らかに宣言する筈だ。
 しかし、守備隊が残っていれば、オーブは手を出す事は出来ない。守備隊を排除しようとすれば、それはプラントへの敵対行為となるからだ。
 つまり、プラントがヘリオポリスの支配者でいられるかは、守備隊の存亡にかかっている。
「何故、そんな事が言える? 敵の動向を今の段階で決めつけるのは早計に過ぎる。今は、敵の動きを窺う為にも、戦闘態勢を維持すべきだ」
 守備隊司令は、デュランダルの読みに沿った意見に対し、嘲笑を浮かべて言い返した。楽観主義で臆病者の政治家と、デュランダルを嘲っているのは確実だろう。
 これを説得するのは難しい。そう判断するやデュランダルは強権を用いる事に決め、少し語気を強めて言った。
「ヘリオポリスの政務官として、これ以上の戦闘継続を認めるわけにはいきません。降伏しますので、司令は守備隊に降伏の準備をさせてください。良いですね?」
 戦時下と言えど、発言力は軍よりも政の方が大きい。だが、権力を笠に着たやり方は、反発を招く。
 デュランダルは、守備隊司令の顔が怒りに歪むのを見た。が、守備隊司令はすぐにその怒りを噛み殺し、デュランダルから視線を外して言う。
「了解しました」
 そう返事はしたが、具体的に何かの指示を下すという事はない。服従した様子を見せているが、本心ではそうでない事は明らかだ。
 余計な厄介事を抱え込んだらしいと察しながら、デュランダルはその場に背を向けて指揮所の外に出る。自動ドアをくぐってから、デュランダルは大きく溜息をついた。
 どうも、相手が抵抗出来ないと踏んだ時に強硬手段に頼ってしまうのは欠点らしい。
 多少の反省をしてからデュランダルはこの事を考えるのを止めた。今は、プラント本国への連絡など、やらなければならない事がある。
 それに、これだけの事をしでかした相手と、早い内に話をしてみたかった。恐らく、何らかのコンタクトは取ってくるだろう。
 それを不謹慎だとわきまえつつも、僅かばかり楽しみに思いながら、デュランダルは自らの執務室へと向かった。
92機動戦士ザクレロSEED:2009/10/12(月) 00:01:33 ID:???
 

 ヘリオポリス。TV局のスタジオでは、一人の少女がカメラの前に立っていた。
 黒のドレスに首輪、手枷足枷をつけた姿……エルである。彼女の脇には、スーツ姿で、顔を無貌のゴムマスクで隠したユウナ・ロマ・セイランが立つ。
 今、エルはカメラを通して、ヘリオポリスの市民達に呼びかけていた。
「ヘリオポリス行政官だった私の父は、戦闘が始まる前に降伏し、市民の皆さんの安全を守る事を考えておりました。しかし父は、アスハ派の手によって抹殺されました。
 殺された理由は、今日、皆さんが逮捕される筈だった理由と同じです。
 オーブの理念に反するから……確かに、降伏する事は『侵略を許さず』という理念に反します。しかし父は、降伏しなければ……そしてZAFTに戦いを挑めば、どうなってしまうかを知っていました。
 父がその時に存命していたのなら、あのカガリ・ユラ・アスハの煽動から始まった陰惨な戦いに、ヘリオポリス市民の皆さんが巻き込まれる事は許さなかったでしょう」
 エルは、カメラのレンズ前に設置されているプロンプターに映し出される文を読んでいるだけであったが、真実であるだけにエルの心を痛め、それが言葉に重みを持たせている。
 あの日、返ってこなかった父。逃亡の途中に倒れた母。二人とも、オーブ軍が殺した。二人だけではなく、エルに関係のあった人、無かった人、数多くの人が殺された。トールの恋人、本物のミリアリアも……
 怒りと、それよりも強い悲しみがエルの声を震わせる。しゃがみ込んで泣き出せたら、どれほど楽だろう。それでも、エルは言葉を紡ぐ事は止めない。ユウナに、これをする事がトールの為になると言われているから。
「私は、父の意志を継ぎ、ヘリオポリス市民の皆さんを守る事を誓いました。
 その為、父が残した力を使います。今、宇宙で戦ったMAミステール1。あれこそが父がヘリオポリス市民の皆さんの為に残した力です。皆さんを守る力です」
 ミステール1の存在は、ヘリオポリス市民の心を掴んでいる。
 ZAFT襲撃の時より、ヘリオポリス市民を守ってくれる存在はなかった。実際にはオーブ軍の中にもヘリオポリス市民の為に命を散らせた者もいるが、それ以外の者の為、オーブ軍はヘリオポリス市民の敵という印象を持たれている。
 ともあれ、自身を守る存在を持たなかったヘリオポリス市民にとって、守護者として現れたミステール1は、縋るべき神にも見えた事だろう。
 そして、ヘリオポリス市民達の置かれた境遇と同じく、父母をオーブの理念に殺された少女が、その神を与えてくれるという物語性。
 ならば、少女は巫女か? 巫女は神託を下す。遙かな昔、神の預言を受け取り、箱船を建造した男の様に。迫害される民を率いて逃亡に旅し、海を割る奇跡を見せた聖者の様に。
93機動戦士ザクレロSEED:2009/10/12(月) 00:02:54 ID:???
「オーブで、私達がどんな扱いを受けるかは、皆さん知っていると思います。
 その不当な暴力の手が今日、私達に迫り、それをミステール1が打ち砕きました。でも、守り続けるだけでは、何も解決はしません。諸悪の根元は、遙か遠い地で安穏としながら、私達を滅ぼそうとしているのですから。
 私達は旅立たなければなりません。生きる為に。戦う為に。そして、再びこのヘリオポリスへと還る為に……」
 エルは、最後の台詞を言い淀んだ。
 言いたくはない。これを言ってしまえばトールは……いや、全ての人々が戦火の中に生きていく事となる。
 誰にも戦って欲しくはない。穏やかに日々を過ごして欲しい。しかし……
「……もう他に道はないんだよ。望む、望まないにかかわらず、オーブはヘリオポリス市民を殺しに来る。自らの理念の正義を掲げる為に」
 エルの迷いを悟ったユウナが、エルの背を突いて先を促しつつ、そっと囁いた。
 エルをこの舞台に上げる為、ユウナは今までに何度も同じような台詞を投げかけている。そして、エルを動かす為の魔法の言葉も見つけていた。
「それに、戦火がなければ、トール君は生きられないよ?」
 エルの顔が悲しげに歪んだ。その隣で、ユウナは蛇の様な狡猾な笑みを浮かべる。
 トールの為……その為に。エルを最後に動かすのは、トールへの思いだった。
 愛おしいものだとユウナは心の疼きを抑えるのに難渋する。首輪に隠された細いうなじに目がいってしまうのを止められない。ああ、今すぐにでもその細い首を握りしめる事が出来たなら!
 だが、エルはまだ利用価値があるし、何より衝動に駆られてしまうにはもったいなさすぎる。もっと……もっと、エルは魅力的になる筈だ。いつか、ユウナが耐えられなくなる程に。
 ユウナがそんな厚い妄執に身を焦がしている間にエルは、意を決してカメラを見据えた。
 そして、ただ一人の為に、全てのヘリオポリス市民を戦火に誘う言葉を口にする。
「私達は、ヘリオポリスの名の下に、オーブを討つのです」
94機動戦士ザクレロSEED:2009/10/12(月) 00:04:20 ID:???
 

 星空の中、トール・ケーニヒは一人だった。
 ミステール1のコックピットの中、モニターには周辺に敵性の反応はない事が記されている。
 “敵”も“少女”もいない。
 敵を倒した炎の中に現れる少女は、シミュレーションではその姿を垣間見るだけだったのに、今日は戦いの最中にずっとトールの側にいてくれた。姿が無くとも、その存在を感じられる所まで来ていたのに……もう、何処にも居ない。
「感じない。君を感じなくなった」
 トールは虚ろな視線を巡らして少女の痕跡を探す。
 ああ、ずっと一緒にいなければならないのに。ずっとずっと一緒に居なければならないのに。またその姿を見失ってしまった。
「敵……敵はいないかなぁ」
 呟いてモニターの中に敵を探す。敵がいれば、敵を炎に変えれば、また少女に会う事が出来るのに。
 敵はいない。誰もいない。
「寂しいな」
 焦点を結ばぬ瞳でトールは宙を見上げ、そのまま動きを止めた。まるで、繰り糸を放された人形の様に。
 トールの心は冷えていく。戦いの最中にあった熱を失って。
 爆炎の中に見る幻の少女が与えてくれる、狂気という名の熱を。
 では、戦いの中で与えられた熱が失われてなお、トールの中に残るものは何なのか。
 呟きは、コックピットの中に寂しく響く。
「ミリィ……今日は起こしに来てくれるかなぁ」
95機動戦士ザクレロSEED:2009/10/12(月) 00:05:30 ID:???
 機動戦士ザクレロSEED‥‥以上。

 ダンバイン書いてたり、夏に負けてたり、書き仕事したりしてたらすっかりご無沙汰に。
96通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 00:12:55 ID:???


まあマターリ書いていただければとおもいます

今回は狂気が薄いw
ザフトって降伏とか条約の認識がこんなだろうから
(これはこのSSに限った話じゃないしw)、
デュランダルはこの先、苦労していくことだろうな
97通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 00:35:24 ID:???


投稿する速度は人それぞれだと思う。気になされるな
98通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 00:43:24 ID:???
まってましたー
油断したのでやられたのは仕方ないけど、ザフトMS隊の人たちからしたら
ミステールは、スピルバーグ監督の「激突」でのタンクローリーみたいな
不気味で恐ろしい存在だったんだな・・・と気の毒になったw

やっぱり戦闘は面白いねー
99SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:29:25 ID:???
投稿開始
100SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:31:41 ID:???
翌日、司令部への出頭要請があった。
なんでも前任司令官との引き継ぎらしい
イザークに聞いたのだが、名前はレオンズ・グレイブスで、《ウォーサーフ》という二つ名の老成した傭兵……
以前にも司令官職を務めたということで再雇用されたナチュラルだという
こういう形式ばった行事に飽き飽きしていたアスランにとっては嫌な業務だった
豪奢な数々の料理を朝方まで喰うという支那式の持成し方はオーブの駐在武官時代に散々慣らされたのだが今一つ好きになれない
アイザックが起こしに来る前にサッサと一般兵の制服に赤い愛用のサングラスをして基地に出掛けた
一月ほど前に意気揚々とザフト軍に復帰したのはいいが、いきなり戦闘MS軍団という新設組織の長を任され、15万人近い部隊の面倒を見るしかなくなってしまった
いくら合同部隊とは言っても言葉の通じない東アジア(支那)人とロシア人の部隊だ。
変な坊主にメイリンの死の真相を教えら、黒人女の護衛がついた。仲間からも信用されていないようでスパイみたいな男が張り付いている……
そんな憂鬱な気持ちになりながら基地を回っていると兵士たちの声が聞こえる。英語で話してる……プラントの連中のようだ
親近感を持って近寄って行くと如何やら自分の話のようだ……目立たぬように近づいていって話を聞いてみることにした
101SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:33:21 ID:???
「おい、なんでも今度来る《オヤジ》は、あのアスラン・ザラじゃねえって話だってな、ヒエロニムス」
缶コーヒーを持った白いツナギ服の男が答える
「そうらしいですね。でも彼はオーブに行ったって話じゃ?」
「知らねえけどよ、なんだか上の連中が決めた話じゃ、フェイスで、軍団長だってよ」
男は煙草の煙を吐き出しながら
「男のケツを追っ駆け回してりゃ、フェイスになれるのかね」
「ヒエロニムス、君は次の軍団長候補だってなったらどうする」
「え?」
「まず男のケツを追っ駆け回すことから始めなきゃな。」
一同に笑いがおこった
「……ダメだな。上の連中は完全に逝かれていますな」
一人の男が不意に立ち上って、髪を押し上げ額を見せ付ける様な仕草をし始めた
「アスカ、おまえは本当に何が欲しいんだ、ってな」
数人の物が冷笑を浮かべて見ている
立ち上がった男はなおも続けた
「お前は議長の計画が、何故、最終的に未来を抹殺し、最終的に自分も殺すことになぜ気がつかないんだ!シン・アスカ!だから俺はお前を、ザフト
を倒す!」
「ヒュー、最高」
その場は爆笑の渦に包まれた。腹を抱えて転がる者も居る
その兵士達の行為は、さすがにアスランの《臨界点》を超えてしまった
「貴様達!名誉ある自由条約黄道同盟の名を汚すつもりか!この痴れ者共が!」
虎刈りの大男が振り向いて来て、声を返した
「なんだオッサン、アンタには関係ねぇ―だろう。なにかい、あのホモの事尊敬してるのかい?」
「オヤジさん、不味いですよ。止めましょうや。マジキチっぽいし」
白いツナギ服の男が必死に静止する
「手前ら、気合を入れる。ハアアアアアア!」
サングラスを外して胸ポケットに入れると同時に相手の顔面に正拳突きを食らわせた
向かってくる大男の足に蹴りを入れ、突き倒すと鳩尾に張り手を入れ、周りの連中に頭突きを入れた
「なんぞ!此奴は」
そういって略帽を被った兵士がナイフを出した
(折り畳みナイフか、あんな物)
ナイフを持って突っ込んできたが逆にナイフの刃を圧し折ってやると片手で持ち上げて放り投げてやった
周りが騒がしいことに気付くと東アジア軍の憲兵隊が来て、野次馬を排除し始めていた……
(不味いな。こりゃ)
三十六計逃げるに如かずということで、その場から足早に立ち去ろうとしたがどういう風の吹きまわしか……
アイザックが数名の警備の物と風花を連れて駆けつけて来た。
「あいつが仕掛けて来た。俺は……」
そう虎刈りの男が叫ぶ
「本当ですか、アスラン・ザラ」
今にも泣きそうな顔でアイザックが聞いて来る
「ちょっと待ってくれ、良いから黙っていてくれ。子供じゃないんだから、出来るだろ」
数名の物が担架で運ばれていく姿を見ていると銃を担った兵士に声をかけられた
「後ほど、査問で伺いましょう、アスラン・ザラ軍団長」
サングラスを取り出して掛け直すと
「構わん。やってくれ」
102SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:35:09 ID:???
査問は、30分ほどで終わった。軽食を食べながら聞いて来ると云うだけの内容でゴリゴリ質問攻めされることもなかった
後で知らされ、何より驚いたのは、査問の最中に警備隊に電話がかかってきて捜査終了という命令が来たというのだ
不安になった。フェイスとは評議会を飛び越えた権限ではあるが、一定期間は軍法会議も免除されるとは……
そうこうしている内に、引き継ぎ式に呼ばれていることを思い出して引き継ぎに行った
流石に汚れた服では不味いということで、地上軍の緑服に着替えていった
部屋に入ってみると、兵士達が直立不動の姿で待っている。思った以上に教育は行き届いているように見える。悪い方向に……
「全体、倣え。立銃」
ラッパが鳴り響き、司令官と思しき男が寄ってくる
裾の長い緑服の男は無帽で、片眼鏡をかけている
「司令官引き継ぎお願いします。新司令官殿」
分厚い書類を渡して来て、最後のページに署名する様に言ってきた
英語で署名すると
「確かに引き継ぎました。前任司令官殿」
「全軍、敬礼!」
サーベルを持った儀仗兵が
「捧銃!」
(地球の軍隊とは形式が若干違うようだが、これは追々俺の方で修正すればいいか)
駐在武官勤務経験が無ければ気がつかなかったろう……そんなことを考えていたら声をかけられた
「お話があります、別室で宜しければ」
「差し支えなど有りましょうか、こちらでドウゾ」
眼鏡を上にあげながら訪ねて来た
「まず地球連合の先鋒を務める大西洋連邦第7艦隊は非常に脅威です。が、方策があると言いますのでその事を尋ねるのは最早愚問でしょう。
オーブの連中は良くご存じでしょうから敢て聞きますまい。日本軍ですが、旧式装備ですが連度は非常に高く士気も高く侮れません
半端な気持ちで取りかかると火傷しますぞ。」
「ほう。失敗為さったお方の仰れることですかな?」
「何、我等を愚弄する気か!もう一度言ってみろ、ザラ!」
若い黒服が喰って掛って来た
「まあ良い。遣らせて見ようではないか。その言葉、結果で示せるであろうな」
「そう怒らんで下さい、ギンズブルグ隊長、おお、ガルナハン以来だね」
そう言って握手を求めて来た白髪の初老の男は、後で判ったのだがマハムール基地司令官のヨアヒム・ラドルだった
103SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:37:02 ID:???
お久しぶりです、司令」
「今は副司令官だ。アスラン・ザラ君。ミネルバでの活躍は伺ってます、そう、奥様と義兄弟の話は聞いていますよ」
「どうも」サングラスを取って正面を見つめた
「なんで中東の専門家の貴方がここに?」
「東トルキスタン(新疆ウイグル)の政務官(大使)としてきたのですが、彼に引き抜かれたのですよ」
そう言って片眼鏡の男を指差した
「まあそれなら納得です。が、しかしこの人材の欠乏振りは何ですか!
ざっと見た限りでは兵隊たちの教育もなってませんな!」
「な!」「はあ?」「ナント!」
「グフやザクに色を塗ることしかやっていないようで、阿弥陀如来像の如く金色に染めた物もありましたが悪趣味ですな」
「なんだと貴様!」長髪の男が野次を飛ばしてきた
「煩い!人が話してるんだ、馬鹿者!
話を戻しましょう。ということは、つまり貴方の目は何ですか、グレイブス司令官殿、その目はビー玉でも入れてらっしゃるんですか
この様を見る限りでは!」
彼は運が悪いことにグレイブスの義眼に気がつかなかった。見る見る顔が赤くなって行くのを見て不安になった
(人間的にも粗末な人のようだな)
「ということですから、私に一任されてる気持ちもわかりますが、それでご自分の失策を押し付けるのは如何かと思いますが……」
吹っ切れたような顔でこっちを向くと
「判りました。この老々の身に任務は重すぎたようですな。私が退職するにあたって一つ希望を聞いて頂けませんか」
「差し支えなければどうぞ」
「私の関わった業務に関する資料や道具を持ち出したいのです。傭兵です。
業績が無ければ食っていけませんし、恩給も有りませんので老後の小遣い稼ぎとして回顧録でも自費出版して食いつなぐしかないのですが」
「構いません。ただし全部印刷やプリントアウトしたものだけです。良いですかな」
「ありがとうございます。ザラ軍団長、いや東アジア方面軍最高司令官殿」皮肉たっぷりに言ったのが判る
そういってグレイブスはその場から居なくなる姿を横目に
「ラドル副司令、現在の状況報告からお願いします」
「諸君!仕事だ。」
「戦闘準備、かかるぞ!」「実戦配備用意!」「全体解散!」
104SEED 戦後30年目の愛:2009/10/12(月) 03:39:58 ID:???
続く

105通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 05:04:31 ID:???

この凸指揮出来んな
そも後ろから撃たれるか
106こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/12(月) 11:30:26 ID:???

   第四章 人類の未来、宇宙クジラの未来

       1   シンとマユ

「ガールフレンドのルナマリアが子供を産むんだ」
 うきうきとシンが告げる。
『人間は一回に一人か二人の子供を産むのよね』
「君たちは?」
 シンは聞いてみた。でもマユは答えてくれないだろうが。
『一度に二人。宇宙は厳しいから、私くらいまで大きくなるのも大変なの』
 すごい秘密を聞いてしまった。
「マユ、俺は君から聞いた君たちの種族のことは上に報告しなきゃいけないんだけど、い
いのか、そんな大事なこと」
『シンにならいいって。プラントの人たちは友好的だから』
「信じてくれてありがとう」
 シンがこれまで得た知識と言うと、宇宙クジラには雌雄の性別がある。寿命は数千年ら
しい。宇宙を旅して木星と月以外にも移民している。そして子供は二人。成人するのは難
しいらようだ。
「ついでにもう一つ聞いていい? 君たちがここにきてもう半年たつけど、食料は?」
 マユは押し黙った。
『――これは秘密。ヘリウム3』
「ええっ!」
 種を通じてマユから送られた情報に腰を抜かした。いやたしかに月の表面には普通に存
在する物質だし、木星には大量に存在する物質だから、考えられることだったが、生物が
核融合エネルギーで生きているとは人類の常識外だ。シンたち人類はコーディネーターに
しろナチュラルにしろ、実用的な核融合を成功できずにいるのだ。
 しかしこのことが知られたら、プラントと地球がなんとか宇宙クジラの個体を確保した
がること請け合いだ。人間は宇宙クジラを生体解剖してでも、核融合の秘密を暴きだすだ
ろう。
「マユたちは俺が守るから」
 こう言ったものの、全人類を敵に回してモビルスーツ一機で何とかなるとは思えなかっ
た。口はつぐむが、いつか誰かが、月のヘリウム3の分布に偏りができていることに気づ
くだろう。そうなれば……。
 宇宙クジラたちは、そのことを知られる前に木星に帰ったほうがいいのではないかとシ
ンは思った。
107こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/12(月) 11:30:55 ID:???

       2   キラの苦悩

 基地に戻ったらキラのスーパーフリーダムがあって、びっくりしたシンである。
「なにか、議長から緊急の命令でも」
 ラクスなら、さっきのシンとマユの会話を傍受するくらいできそうじゃないか。
「いや、違うよ。命令は受けてない。僕の勝手な行動だ」
「命令違反? あんたが??」
「そうだよ。宇宙クジラにあってくる」
 深刻そうな声を出して出ていくキラを、シンは見守った。
(議長と何かあったんだな、あいつなりに苦労してるのかね)
 キラとアスランは撃墜したはずなのに生きているので、シンはついシビアに見る癖がつ
いていた。

 宇宙クジラの群れが自分を受け入れてくれる。
 SEEDとやらを持って生まれてきて本当によかった。でも、同じSEEDを持っていてもラク
スとは分かり合えないのに……。
『それが人間ちゅうもんやろ。わてらはその人間をおもろいおもて、木星から来てみたん
ですわ』
「はあ……」
 キラはため息まじりに答えた。
「僕は悩んでるんだ。平和になったんだから、僕がラクスの剣でいる意味って何だろう?
僕には僕の人生があるから、自分の本道に帰ってもいい時期じゃないかって。友達が結婚
したり、後輩に子供ができたり、みんな人生に変化を迎えてるのに、僕だけって」
『Change We Can ゆーわけでんな』
「まあ、そう」
 ああ、わかりあえるんだ、彼らとは――キラは誰にも話したことのない悩みを彼らに打
ち明けていた。同じSEEDを持つものでも、ちかごろラクスと分かり合えない、彼女に共感
できないのが辛い。戦いの中でできた縁だから、平和の中でどう落ち着いていいのかわか
らない。プラントに相談相手はいないし・・・・・・ぐちぐちとした心を、宇宙クジラはわかっ
てくれた。
『人間は大変やなあ、でもそれがドラマっちゅうやつでっしゃろ。わてらは分かり合える
さかい、感情をぶつけ合うとかありえへんねん。人間のそこが面白うて、あんたやシンと
知り合えただけでも、ここまできた甲斐がありますわ』
「君たちにとっては、そうなんだね」
 わかりあえるようでわかりあえない異文化交流に、ちょっとキラは甘えすぎたかと思った。
『元気付けに歌歌うによって、聞いていき』
 宇宙クジラの群れが集まって歌い始めた。
 優しく甘い歌声で、子守唄だとキラは思った。気持ちよくなってすーっと眠りに入った。
108こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/12(月) 11:31:24 ID:???

 気がついたらシンにきつい声で言われた。
「あんた何年もビルスーツパイロットやってんですか!」
「あ・・・え?」
 さっき宇宙クジラの子守唄を聞いていて、そうだ、すやすやと眠ってしまったのだ。
「スーパーフリーダムの緊急システムが正常に作動したから、酸素欠乏症にもならず元気
でいられるんですよ、開発者とメカニックに感謝するように」
 見渡すとイシス基地の医務室のようだった。そうか、自分は眠りに誘われて酸素切れを
起こしたのか。シンが切れるのも当たり前だ。
「宇宙クジラの歌が聞こえて、急に眠くなったんで、SEEDの接続を切って調べたら、あん
たのモビルスーツが倒れてて、緊急信号が入って助けにいったんですから」
「ごめん、君は彼らと接続を切ることができるの?」
「はい、一番親しくしてますからね。彼らにもプライバシーは必要でしょう」
 人を眠らせる歌が歌えるなら、人を狂わせる歌や殺してしまう歌も歌えるのではないか
とは思ったが、この血の気の多い後輩には言えなかった。
「ごめん、そのかわりディナーおごるから。地球産の肉でも魚でも」
「なら、いいです」
 食べ物で買収できる子でよかったと思うキラだった。
「あ、ルナマリア同伴でいいんですよね」
「もちろん」
 彼女が大食いなのをキラも知っていた。

 ディナーの席に現れたルナマリアは、近頃では珍しいスカート姿でキラの目を楽しませ
てくれた。なんか女の子って、こういうとこ気がつくんだなあと思う。ラクスは議長にな
ってから長い服しか着なくなったし、キラの環境にはミニスカの美女というのは欠けてい
る素材なのだ。キラは喜んでレストランの個室に案内した。
 でも前菜から豪華料理を二人分注文するので、キラは懐が心配になったが、妊娠中ゆえ
飲酒しないからワイン代が浮いた。プラントは社会主義に近い社会だから、キラが高い地
位についていてもそんなに給料がいいわけではない。赤服のモビルスーツパイロットのこ
の二人のほうが、危険手当や時間外手当なんかがついて給料は上かもしれない。ただ税金
も高いが、彼らの子供は完全な24時間保育を受けることができる。
「シンは、一番宇宙クジラのことを知ってるけど、何か思うことある?」
「うーん、彼らが地球に来た目的ってやっぱり謎ですよ。面白そうだからってことだけど、
それだけで争いが耐えない地球圏に来るものかとは思いますね」
「やっぱりそう思うよね」
「SEEDを持つ人間がいるってのは、テレビの電波からでもわかったらしいんで、来てみた
かったのはわかるんだけど、木星にどれくらいの数が住んでるかとかは教えてもらえない
し。ただ、彼らが移民してるのは月だけじゃないって」
 シンがイセエビを頬張りながらいった。この二人は月の重力になれてるから、キラの二
倍の速度で、高価な料理を食べている。自分は月育ちなのにすっかり1Gになれちゃった
んだと少し寂しく思う。コペルニクスでの子供時代は、何も考えないでいられる幸せなも
のだった。
109こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/12(月) 11:31:40 ID:???
「それで、キラさん、ラクス様となにかあったんですか? 自殺未遂だなんて」
 ルナマリアに遠慮はない。なんといっても、いま月で一番重要な人物だからだ。しかし
シンはどんな説明をしたんだ、恋人に。
「ちょっとねこけただけだよ、シンは口が悪いから」
 思いっきり足を踏みつけてやったが、しょせん1/6g、シンは涼しい顔だ。
「ラクスとはいい友達だよ、世界を平和に保つための同士だし――」
「でもキラさんはそれに不満があって、プラントを出てきた、でしょ?」
「――降参だよ、ルナマリア」
 やっぱり僕の伴侶にホーク家の三人目の娘がほしいと思った、キラだった。
「でも、キラは議長の恋人になる気はないんだろ?」
「当たり前だ、ラクスの恋人なんて、考えただけで寒気がする」
「なら、アスランみたいに脱走しちゃえばいいのに。どーせ追いかけるのはシンだから、
コクピット直撃でも死なずにすみますよ」
「ルナ、お前、俺のトラウマを!」
シンが真っ赤になって怒った。何の都合か知らないが、シンにぶっさされてキラもアス
ランも一時は死んだものと思われていたのだ。
「でも、脱走するにしてもどこへ……」
 オーブしか考え付かないキラは、スーパーコーディネーターにしては、発想が貧困だ。
そもそも想像力が豊かになる遺伝子は発見されていないので、ナチュラルのままだ。
「ああ、いま大洋州の緑豆ってクジラマニアの団体を保護してるから、彼らを強制送還す
るという役割で地球にいっちゃえば?」
 シンが我に戻って明るく言った。
「クジラマニアねえ……」
 でも地球に逃げ出すのも手かなと、思い始めたキラであった。
110通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 12:38:04 ID:???
なんと!
ザクレロさんが来てるじゃないか!!
ということで乙!!!
111通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 13:13:15 ID:???
ザクレロさんGJ!!。

今回の狂気はユウナの変態的性欲ぐらいでしたが、英雄的ではあっても
英雄にはなれなかったザフトの皆さんや、映像として想像すると、ラスト
5分の一番のハイライトであろうエル嬢の演説とかがいい感じでした。

あとは、現在ヘリオポリスに向けて神風特攻中の輸送艦ですが、
「本艦が、ヘリオポリスに激突するまで○○分○○秒!!」
とか、ちょっと言って欲しかったですが。
どれくらいで、ぶつかるのか分かりませんし。


「こんな未来〜」のキラ
>やっぱり僕の伴侶にホーク家の三人目の娘がほしいと思った、キラだった。
いい具合に人生に煮詰まっていますねw。

こういう苦労人のキラは大好きです。
112通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 15:50:16 ID:???
クジラの人もGJ。
奇妙に和やかな空気だけど、妙な危うさを同時に感じるのはキラとラクスの関係のせいか?
どう転がっていくか期待してます。
113通常の名無しさんの3倍:2009/10/13(火) 06:13:04 ID:???
なんという投下のか雨あられ。
御三方ともにGJです。
114こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/14(水) 21:40:01 ID:???

       3 キラ、大地に立つ

 一年間の休職願いは、簡単に受理された。
 しかし給料は半額、ザフトの基地や施設は使用できないというものだ。
 地球までクジラマニアの緑豆を送ってきて、そのまま、緑豆と一緒に私服でカーペンタ
リア基地を出た。
「あなたはザフトの高官であるのに、私たちと行動を共にされるという。素晴らしい心掛
けです。宇宙クジラに歌を歌ったもらったそうですが、どんな気分でしたか? 私たちは
SEEDを持たないので音波に翻訳した歌しか聴くことができません」
「えっ、あの……」
 いつのまに、この連中と一緒にされてしまったのだろうか? コーディネーター排斥思
想はないし、SEEDを持っているキラは宇宙クジラと直接交信したわけだから――結果、酸
素欠乏症になりかかったとはいえ、興味をもたれるのだろう。
「ともに海に出て、美しいクジラを野蛮な東アジア人から守ろう」
 えーと、宇宙クジラは地球のクジラと形が収斂進化で似てるだけで、なんの縁もゆかり
もないって言ってたけど、この人たちは心底クジララブなんだ。形が同じだけで、地球の
クジラも宇宙クジラも愛せるなんて、心の広い人たちなんだと思ったが、キラの血筋は東
アジアの捕鯨地域がルーツである。宇宙育ちのキラはクジラを食べたことはなかったが、
異民族の文化を大切にするのは宇宙生活の基本だったので、この連中とどう付き合ったも
のか考えてしまった。
 とりあえず町まで一緒に行って、一回地球のクジラを見に行くことになった。
「東アジアの野蛮人が、人類の仲間であるクジラを殺して食べるのは許せない」
 と主張するシェパードたちに、僕はおなかが減ったらクジラでも食べるだろうな、そう
いえばザフトのサバイバルマニュアルには、陸に打ち上げられて死んでいるイルカ・クジ
ラは寄生虫がいることが多いので、よく火を通して食べましょうと書いてあったっけ。入
隊してからアカデミーの教科書を読破したのだ、キラは。まあ、それだけ暇だったという
ことでもあるが。
 流されるままに南氷洋に出撃して、調査捕鯨をする東アジアの調査船に接近しては瓶入
りの薬品を投げ入れていた。その薬品がかかると甲板が燃え上がり、運悪く直撃をくらっ
た船員が激しく床を転がりまくる。
「hehehe、クジラに悪さをする報いだぜ、FUCKIN'YELLO」
 とみんなで腹を抱えて笑うのだった。
 キラはこの人たちとは一緒にいられないと思い、港で別れた。人類よりクジラが好きな
のはおかしい。キラは全人類、ナチュラルもコーディネーターも好きだし、動物と比べた
ことはない。宇宙クジラは異星の知的生命体だから、地球の生き物とは全く違う。彼らが
地球の生命及び生態系に危害を及ぼさないから、仲良くできるだけだ。
 ナチュラルとコーディネーターの大戦争が二度もあって、木星から知的生命体まで来て
いる現代に、人種差別や生物差別(クジラだけを可愛がって、牛を平気で食べるのは差別
だろうと思った)をしている人間がいて、一定の支持を受けているというのを結局キラは
理解できなかった。 
115こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/14(水) 21:40:21 ID:???

       4 さまよえるキラ

 インドからアフリカを経てジブラルタルを避けて、東地中海周りでヨーロッパに入った。
旧世紀は宗教戦争が絶えなかったというパレスチナの地も、今は平和なもので、エルサレ
ムの教会やモスクは歴史的建造物として保存されているが、お金がないためペンペン草が
生えていた。
 パルテノン神殿はブレイク・ザ・ワールドでユニウス7の破片が直撃してこなごなだっ
たし、船でナポリに渡ったら、一日に五回は財布をすられそうになった。
 自分のぼーっとした外見が悪いのかと思ったが、整形手術する気もない。とりあえず運
動神経がよかったことに感謝して北上した。
 永遠の都ローマも、瓦礫の山だった。あのときマルキオ導師のところにいて、何の役に
も立てなかった。シンやアスランは破砕活動に一生懸命だったのに。
 廃墟にたたずんで、足元をちょろちょろと蜥蜴が走っていくのを見る。オーブでの生活
で慣れたが、月育ちのキラは基本的に動物も昆虫も嫌いだ。等しく嫌いなのであって、ク
ジラだけ差別して大好きという人たちと仲良くなれるわけがなかった。
 そのあとイタリアを北上したころには季節が変わっていて、冬をアルプスで過ごした。
現地の人の天候を読む目の素晴らしさに感動し、ここにいつこうかと思ったが、春になる
と次のところへ行きたい気分が強くなり、宿のちょっと年増だがよく世話を焼いてくれた
女性と別れて、フランスに入った。
 マルセイユの安宿で、毎日港を眺めに行く。
 そうするうちに気に入りの食堂ができた。魚のクスクスがとてもおいしい。市場で毎日
魚を仕入れるから、かかっている魚の種類はいつも違う。そして、店の娘がすごくかわい
い。長い黒髪と褐色の肌に灰色の瞳が神秘的だ。口をあけると前歯が欠けているのが見え
て、それすらもチャーミングに思えた。キラはある一定以上に女性に興味を持つことはま
れであったが、彼女はそのハードルを一気に飛び越えてキラの心に入ってきた。
 キラは恋をしたのである。
 昼夜と店に通い詰めたが、彼女はくるくると狭い店のなかを動き回っていて、声をかけ
てもほとんど会話にならない。
 そうして一週間たった夜、船乗りたちが陽気に騒いでいたが仲に不心得者がいて、彼女
のお尻を撫でた。立ち上がったのはキラだけでなかった。他にも彼女の崇拝者はいたとい
うわけだ。だが船乗りは巨漢で強くて、文句を付ける男たちを簡単にのして行った。
 キラは体術には自信がない。そういう訓練を受けてこなかった。ザフトに入って白兵戦
訓練と言うのを受けて、コーディネーター兵士としては一人前の技量を得たが。
 行ける、と判断して男の下半身にタックル。倒して、首の頸動脈を絞めて落とした。
 早業だったので周囲はあっけにとられている。キラにしても、こんなに簡単にいくとは
思ってなかった。アスランとシンの体術はすごいそうだが、彼らなら片腕一本で十分なの
だろうか? 生まれて初めて感じる生の肉体でのコーディネーターとナチュラルの差だった。
「はあ、大丈夫?」
 とびきりの笑顔で彼女に声をかけた。
「ありがとう、強いんだ」
「軍隊で習った通りやってみただけ」
 これで店がわいた。二年前の戦争で兵士だった者もいるのだ。
「今日はおごり。もう一本ワイン飲む?」
「――君と一緒なら」
 キラのスミレ色の瞳に宿る情熱に、彼女は頬を赤らめ、体を翻してワインを取りに厨房
へ向かった。
116こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/14(水) 21:40:50 ID:???

 こんなことでキラは彼女の部屋に転がり込み、同棲生活が始まった。
 昼間は港へ行ったり、店で用心棒もどきをしたりしながら、夜はたっぷりと二人で愛し
あう。地球に降りてきてからたくさんの、いろんな肌と体臭の女性と関係をもったが、引
きしまった褐色の肌から汗や料理のにおいとともにかすかにジャスミンの香りがするよう
な気がした。むっちりと盛り上がった胸は大きめの乳首とともに、キラの好物だった。ち
ゅっちゅと吸いまくる。へそにピアスがさしてあって、これがヒップボーンのジーンズを
はいたときに最高にかっこいい。まっすぐな長い脚は太ももは肉好きよく、ふくらはぎは
ほっそりとしている。体中の無駄毛をそっているので、あそこはよく見えたし触りやすか
った。キラとの体の相性はとても良くて、近所からうるさいといわれるほど、毎日はげんだ。
 そうして一カ月ほどたった。キラとしてはもうこのまま、マルセイユの安食堂に婿入り
してもいいかななんて思い始めていた。コーディネーターだということは最初に告白した
し、親がオーブにいること、戦争で学業を中断する羽目になって、世界旅行をしているこ
となどは話していた。とにかく地球の人間とこちらが衝突せずになかよくなるには、最初
にコーディネーターであることを話してしまうことだった。まだコーディネーター嫌いの
ナチュラルはかなりいる。キラは自分が傷つくことには憶病な青年だったから、そういう
処世術を覚えるのは早かった。
 安食堂の用心棒兼ヒモとして下町に定着し、少しは料理の下ごしらえも手伝うようにな
った。母さんはコペルニクスで大した食材がないのに、いろいろ作ってくれたなあと思い、
一家にてんぷらを振る舞ったりもした。新鮮なエビや魚のてんぷらは塩と辛口の白ワイン
でいくらでも食べられた。
 結局僕がしたかったのは恋、ほしかったのは恋人なんだと、キラは理解した。
 プラントではラクスの恋人だと思われているから、女性からはアウトオブ眼中、恋愛の
相手にならない。あそこにはラクスから恋人を奪い取ってやろうという野心家もいないの
だ。シンが言っていたが、ラクスの声には宇宙クジラの歌声に似た部分があるという。つ
い受け入れて心を開いてしまう声だと。SEEDをもっているから、ラクスにそういう能力が
あるのだろうか? 実際彼女はローティーンのころから武装クライン派を組織し、プラン
トの歌姫として圧倒的な支持を得た。宇宙クジラから、音痴と言われたが、彼らは他の人
間の歌手については言及していない。
 宇宙クジラはその気になればあの歌声で、人類を支配できるのではないか? シンは彼
らは基本的に他種族には興味がないと言ったが、捨てきれないキラの疑問だ。
 でも彼女とその一家と、マルセイユの下町で、魚とサフランとローズマリーの匂いにま
みれて生きていくのは素敵だ。無味無臭のプラントの女帝さまの脇に侍る人形でいるより。
 ラクスはキラを「わたくしの剣」といったが、飾り人形の間違いじゃないか。
 さすがにザフトにはいられなくてオーブに移ったアスランは、カガリの護衛も儀式のと
きはするが、普段は一モビルスーツ隊の隊長で訓練に精を出している。それでも「俺はカ
ガリの剣だ」と言っていた。確かにそのためのナイトジャスティスだ。核動力のあの機体
にアスランが乗れば、通常のモビルスーツ30機分くらいは働く。そしてメイリンと幸せな
家庭を築いて幸せそうだ。
 キラも平凡な幸せがほしかった。ラクス様の騎士でいることに、意味を見いだせない。
それはイザーク・ジュールなどの希望者だけに限定してほしいのだが、ラクスはキラを手
元に置くことを好んだ。イザークにブーツの中にガラス片を入れられたことがあるくらい
だ。ラクスはデレツンだが、そのまえにデレる相手を選ぶのだろうか? アスランに言わ
せると猫かぶりだし、シンに言わせれば甘えがいのある姉だという。
 自分はラクスに友情なりの特別の感情を、持っているのか?
 キラの思索の課題であった。
117こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/14(水) 21:41:30 ID:???


 でも肉欲と彼女の笑顔の素晴らしさに勝るものはなくて、キラは幸せに暮らしていた。
厨房の手伝いをする時間も多くなったし、魚の下ごしらえも上手くなった。アリオリソー
スも作れるようになったし、自分のお金で市場で買ってきた花を店に飾ったら、思ったよ
り好評だった。コロニーだと園芸植物は簡単にクローン栽培されるのだが、このあたりは
地植えの花が主流だ。
「あら、うちの店の花があたしだけじゃなくなっちゃうじゃない、キラ」
 と言いながら彼女はひまわりとダリアに上機嫌だ。
 少々もらうようになった給金は花代に充てようと、キラは決めた。
 そうして港町の下町の名物カップルになって、店も繁盛してキラと彼女は幸せだった。
結婚という形式に縛られる時代ではないので、キラは彼女の家に居住登録をした。親も認
める正式な同棲、事実婚だった。

       5  月の聖母かもしれない

「おなか大きくなったね」
 シンがマタニティドレスの上からおなかを撫でさする。
 彼は協力的な恋人で、妊娠線予防のマッサージとか、おなかが大きくなって足のつめが
切りにくくなったルナマリアの爪切りとか、献身的にしてくれた。
 戦争で家族を失ったシンにできる、数年ぶりの血族がこのおなかにいるからだとルナマ
リアは思う。シンはオーブで家族を失った。プラントにきて軍人になってからも初恋の少
女はキラに殺され、親友のレイもネオジェネシスでデュランダル議長とともに死んだ。彼
の悲劇の後ろには、すべてラクス・クラインがいる。シンはそれを知ってなお、ザフトの
軍人としての役目を全うしようとしている。
 好きになったのがこういう男の人でよかったとルナマリアは思い、シンの黒髪を撫でた。
医者は子供の遺伝子検査をしたがったが、100%安全ではないからと二人は断った。月
で受胎し、生まれるだけで十分特別な子供になって、育成歴を記録されるのだから、おな
かの中くらいカップルの神秘を大事にしたい。
 ただなんとなく、二人の間では黒髪に青い目の男の子というイメージが共有されていた。
「でもなんで私、妊娠できたのかしら。経過も順調だし」
「それが不思議だけど、なにか宇宙クジラが知ってるような気がする。マユとかほかの連
中、すごくルナの体を気にしてるんだ」
「あなたにはSEEDがあるけど、私にはないわよ」
 きょとんとルナマリアが言う。
「たぶん赤ちゃんはSEEDを持ってるんだよ。もしかしたら、もう宇宙クジラとおしゃべり
してるかも」
 シンの話をルナマリアはジョークとはとらなかった。
「純粋な月生まれで、宇宙クジラと仲がいい父親――この子はコーディネーターでもナチ
ュラルでもない新人類になるのかもね」
「新人類が戦争をしない種族であれば、それほど嬉しいことはないな」
 しみじみとシンがつぶやいた。
118通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 00:26:56 ID:???
キラが、あの真正のニートがまともな人生を送るなんて。

ザクレロさんを読んだ後に、続けて読むと、どんな「どんでん返し」があるのか
ドキドキですよ。
119通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 01:17:54 ID:???
それなりに立ち直ってささやかな幸せを掴みかけてたところへ
問答無用の襲撃というか粛清でまた根こそぎ奪われて復讐鬼に…は
シンのアフター二次のお約束パターンだが、ひょっとして今回は
キラが同じ目に遭うのだろうか……?ガクプル
120通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 01:50:24 ID:???
くじらの人のキラを羨ましく思った香具師は手ぇ上げれ





ノシ
121通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 01:59:36 ID:???
いや、これはお人形から人間に立ち返ったみたいでむしろ好感がわく。地に足が着いたというか。
それでもなんだか全体にうっすら漂う不穏な予感が怖くてしょうがない。
122通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 08:53:37 ID:???
キラが……社会復帰?してるだと!?

まあ良いことなのではないだろうか。乙
123こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/16(金) 03:49:30 ID:???

       6 幸せの破綻 

 キラは彼女との生活が楽しくて、義理の両親との仕事も楽しくて、時期を過ごしていた。
ザフトからの一年の休職期間をいつしか終えてしまい、身分上は脱走兵になってしまった
のである。プラントにいた時、地球に駐留すると現地のナチュラルとカップルになるもの
が多くて、できれば純粋のコーディネーターのみをプラント人としたい政府とのあいだに
軽いいさかいがある言う話は聞いていた。その時キラ自身はラクスの人形だったので、特
に気にも留めなかった。自分がコーディネーター一世でナチュラルの義両親が育てるのに
苦労したという逸話から、コーディネーターとナチュラルは交雑しないほうが幸せではな
いかと思っていたせいもある。ただいまでは、彼女との間に子供がほしい、いつ避妊をや
めようと言い出そうか悩んでいた。
 キラが親父さんと一緒に市場に行って、新鮮な魚や野菜、ハーブを仕入れてきたとき、
店の前にザフトの軍人が数名立っていて、肌が総毛立った。
「ザフト……?」
「あ、僕が話します」
 一番上は白服のイザーク・ジュールらしい。彼がラクスの玉座をなめるのをやめて地球
に降りてくるなんて、大事件だ。
「お前にザフトの誇りがあるなら、大人しく錠を受けろ」
 イザークの冷たい青い眼には同情も共感もなく、キラを虫けらのように見据えていた。
 別にザフトに誇りは持ってないけど、地位には責任が伴うもので、除隊届を出し忘れて
いた自分が馬鹿なだけだと、キラは両手を出して、電子手錠につながれた。
「キラ!!」
 彼女が叫ぶ。
「あんたら、何の権限があってうちの婿を」
 主人に向けられる銃口。
「やめろ! プラントに帰ればいいんだろ」
「そのニンニクくさい服を脱いでからな」
 銃口は幸せに暮らしていた食堂の一家から、婿を奪い去った。婿は帰ってくるつもりだ
ったが、捕まえに来た男の顔色からして、もう一生プラントから出られない、ラクスの奴
隷として生きるしかないのだと思わせた。
124こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/16(金) 03:49:54 ID:???

   第五章 コーディネーターの矜持とは?

       1  誕生

 ルナマリアは安産で男の子を産んだ。それは二人の予想通り黒いくせ毛と青い目の赤ん
坊で、レイと名付けられた。コーディネーターの赤ちゃんはほとんどが美形だが、その中
でも際立って美しいとイシス基地中の話題になったほどだ。
「すっきりしたあ」
 こう言ってルナマリアは仕事に復帰した。とにかく月で初めての妊婦ということで、医
者たちに過保護にされていて、すっかり体がなまってしまったのだ。
「レイが生まれた時の宇宙クジラたちの歌、ルナにも聞こえたんだろ」
「ええ、脳で聞くとああいう感じなんだって、びっくりしちゃった。無痛分娩だったけど、
あの歌声があれば陣痛なんて痛くないだろうって思ったもの」
「やっぱり、おなかの中にいた時から彼らと一緒に歌ってたのかな、レイは」
 シンはピアノが上手だった親友を思い出した。彼は正しくて、でも悲しい生まれつきだ
った。おこがましいが、彼の分も小さいレイを幸せにしてやりたいと思うのだ。
 レイは月面で妊娠出産された唯一の子供だから、普通の育児室に預けるのでなく、専用
の医師と看護師がついた。シンたちはそこまで特別扱いされたくないのだが、基地司令の
命令だし、プラント本土からも産婦人科医や遺伝学者がレイのデータを見たりじっさいに
寝ている赤ん坊を見たりしにくる。うちの子は見世物じゃない!と一回叫んでしまったシ
ンだった。
 遺伝子的にはなんの問題もないコーディネーター三世で、両親から優秀な遺伝子を多く
受け継いでいますということだ。
 ルナマリアの妊娠後、月での妊娠を試みた女性は何人もいたが、みな失敗していた。ま
ず受精卵ができないのだ。顕微鏡受精させても細胞分裂が始まらない。
 医学者たちはレイが生まれたのは奇跡だという。1G下で育った胎児と同じように1/6Gの
胎内で成長し同じように生まれた。人類は月に適応したのか、それとも何かの突然変異な
のか? シン一家の遺伝子はプラントの生物関係の学者なら必携のものになっていった。
 マユたちも会いたがって、宇宙クジラの小さい個体がいくたりかがモビルスーツデッキ
でシンとルナマリアに抱かれたレイに対面した。その時もクジラたちは歌を歌い、基地の
中があまあまとろとろな雰囲気になったしまったほどだった。
「首が座るようになったら、宇宙服着せて大きな宇宙クジラたちに会わせに行かないとな」
「そうね、この子、受胎の瞬間から彼らに愛されてるのよね、わたしには理解できないけど」
「俺もよくわかんないけどな」
「SEEDってやつでしょ。そういえばラクス様経由で、マルキオ導師って人に会うことにな
ってたっけ、シンは」
「堅苦しいのは嫌いだけど、議長の頼みだからな。SEEDを研究している人らしい。俺があ
ってから、ルナとレイに会わせていいか決めるよ」
「わかったわ」
 二人は抱き合って、熱いキスを交わした。
125こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/16(金) 03:50:38 ID:???

       2   友情と独占の間には

「おかえりなさい、キラ」
 プラントに連行されてザフトの軍服を着せられたキラを、ラクスは笑顔で迎えた。
「休職期間を無断で破るなんて、いけない人ですこと。今度は不問にいたしますけれど、
次からはたとえあなたであっても軍紀違反は認めませんわよ」
 あでやかなピンクの髪、地中海の海より青い瞳、陶磁器のように白くて傷のない頬、差
し出された手にもささくれ一つなかった。
「君とって僕は、いくらくらいなの、ラクス?」
 自分の手の傷は地球からの旅で癒えてしまったが、あの食堂では魚のえらや棘で手を引
っ掻くのは日常茶飯事だった。キラも料理の手伝いと接客をこなす彼女も、労働者の手を
していた。ラクスの手は自分の食事すら作ったことのない手だ。マルキオ導師の島に逃れ
ていたときでも、彼女は子供たちの相手はしたが家事はしなかった。キラも何もしないで
母親任せだったけれど。
「いくら、なんかで人をはかれるとお思いですか?」
「――そうやって、君は僕に質問を返す。僕はそれが嫌で地球に行ったって、わからないの?」
「あなたが悩まれて決めたことは尊重しますわ。でもわたくしの意思も認めていただきた
いのです」
 ラクスが頭を上げた。プラント議長、宇宙の女帝の顔だ。
「シンとルナマリアの間に無事に男の子が生まれましたわ。月で初めての妊娠出産です。
まだ一件だけのケースですが、わたくしたちコーディネーターはより宇宙に適応しようと
しているのではないかと思うのです」
「それは、本当におめでたいことだね。僕も地球で二世を誓い合う女性と巡り合ったよ」
「レイは本当にかわいくて美しい子供で、非常に優れた遺伝子を持っているようですわ」
 ついとせまられて、キラは引いた。
「わたくしも子供がほしいと思いましたの。子供の父となる遺伝子提供者は、キラ、あな
たしかおりませんわ」
「君にとって僕は自分を飾る人形にすぎないだろう。君は人形の子供を産もうというのか
い? それは生命に対する冒涜だ」
 キラは心底腹が立って叫んだ。
 しかしラクスは全く動じなかった。
「わたくしの子供ですけど、わたくしが産むわけじゃありませんもの」
 え? キラは一瞬思考停止した。代理母を使うというのか? ラクスは若くて健康な体
を持っているのに?
 すいと細くてきれいな指が伸びてコンピュータを操作した。
 プロジェクターが動いて浮かび上がった立体映像。ガラス製のタンク、中に小さな何か
が入っている……。
「じ、人工子宮?」
「さすがですわね。あなたの生まれ故郷でもある、人工子宮ですもの」
 キラは反論しようとするが、声が震え、膝も震えた。
「だって――人工子宮の研究は禁止されて、メンデルも、閉鎖されて」
「でも実験データは残ってましたわ。これはデュランダル前議長がその資料をもとに設計
した人工子宮ですの」
「では、デュランダル議長はデスティニープランで遺伝子的に職業を定めた人間を、人工
子宮で製造しようとしていたというのか!?」
126こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/16(金) 03:51:01 ID:???
 シンはデュランダル前議長に可愛がられていたからか、いまだに彼ははプラントの未来
を考えて行動したと信じている。
 そういう盲信はできないが、キラにしても野望だけの人ではなかったと、最期の時に立
ち会って思っている。
「さあ、亡くなった方の思いまでわかりませんわ。ただ個人的なファイルはご自分の生命
反応が消えると同時に消去されるようにしかけていた方が、研究成果は残された。わたく
しが知っているのはそれだけ」
 涼しい顔でラクスが言った。
「――あの、胎児は……」
 キラは床に突っ伏した。
「わたくしの卵子とあなたの精子から生まれた子供ですわ、もちろん」
 初めて会った時のようにかわいらしく青い目を瞬いて、ラクスが告げた。
「あなたの菫色の瞳とわたくしの桃色の髪を受けついだ女の子ですの。シンの息子のレイ
との間に子供を作ってもらうためには、女の子でなくてはね」
 この言葉に、キラは吐き始めた。げーげーと胃液で口が溶けるんじゃないかと思うほどに。
「き……きみは……げっ――寝たこともない男の……げぼっ――子供を、製造……してい
るのか?」
 キラは吐瀉物にまみれながら呻いた。
「あなたも体外受精、人工子宮で生まれたのでしょう、キラ。何を悩むことがあるのです。
デュランダル博士はとても優秀でしたわ、政治家としては問題がありましたけれども」
「ぼ、僕は、君との間に子供なんて、ほしくないって……どうしてわからない」
「わたくしが責任を持って育てます。名字もクラインを名乗らせますわ」
 あなたの価値は遺伝子だけなのですと言外に告げられたような気がして、キラは頭がぐ
るぐるした。マルセイユの下町で、彼女のおなかが大きくなっていくのを見守って――彼
女は服がかっこよく着こなせないと文句を言うだろう――生まれた子供は男の子でも女の
子でも愛情をいっぱいに注いで育てる。男の子ならストリートサッカーをするだろうし、
女の子なら母親や祖母からレース編みや刺繍を習うだろう。つい先日までそれがキラの現
実だったのに、ラクスが提示したのは悪夢だった。
 ラクスはスーパーコーディネーターと呼ばれる自分の遺伝子がほしい、そして月で子供
を作ったシンとルナマリアの遺伝子がほしい。彼女はこれまでの人生、ほしいと思ったも
のは必ず手に入れてきた。父親を始めどれだけの血を流しても、ラクス・クラインの願い
はかなえられねばならないものなのだ。
「わたくしは決めたことはやり遂げますの。コーディネーターの未来がSEEDとともにある
のなら、そのためにSEEDを持つ男女同士の子供を、人工子宮で何百人でも何千人でも育て
て見せますわ」
 そう、ラクスは高らかに宣言した。
127通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 06:44:33 ID:???
破綻が来るのは薄々わかってはいた、が…

ここまでキラを哀れだと思ったのは初めてかもしれん。
128通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 06:54:59 ID:???
人工子宮と見ると、自動的にヤーニュというルビを連想する俺アーヴ
129通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 07:03:56 ID:???
IFスレで連載される作品には、必ず狂人が出てくるな
130通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 10:49:49 ID:???
ホント、ラクスは人間の姿をした地獄だぜ〜フゥーハハハー
131通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 11:25:10 ID:???
 たまに思うんだ、スレ名を種ホラー劇場に変えても問題ないんじゃないかって、
とにかくGJ!
132通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 11:36:31 ID:???
何とか脱走して地球に逃げ帰ってみても、マルセイユが更地になっているか、
UCにおけるシドニー湾のように地形そのものが改変(……)されて、
住民の存在も全て記録から抹消とかされてそうだな。
133通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 11:49:31 ID:???
キラの嫁の人なんかD.O.M.E.の刑だろうな…
134通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 12:31:06 ID:???
そもそも精子どっから採って来ry
おや、ピザなんて頼んでないぞ
135通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 12:52:11 ID:???
>>131
ユウナの「手料理」、宦官アスラン、生首宅急便……
今度はクローントルーパー……

こりゃ、お化け屋敷だな
136通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 12:57:09 ID:???
キラ……なに黙ってる泣いていいんだよ
137通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 13:01:55 ID:???
クジラの人投下GJ。
シン一家もクジラに着々と取り込まれてるようで和やかなのに空恐ろしさを感じるな。
おまけに強靱には遺伝子まで入手されて、一体どうなるのか考えてもまともな未来が見えないよ。怖ェー怖ェー。
138通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 14:11:11 ID:???
>>135
種死二次で生首というと、
Wスレでのマユの虎首サッカーボール(+魔乳ハンバーグ&キラ腕ちょんぱ)か
クルーゼスレのネオへの最終的ペナルティ辺りが思い浮かぶが、
宅急便とはどこの話のだったかな?
139通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 19:00:36 ID:???
宅急便は30年の首の塩漬けのことだと思う
140通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 19:46:11 ID:???
>>128
愛情さえあれば、人工子宮であろうと、なんだろうと問題ないだろうけど、
キラとラクスの間に、かけらの愛も感じないからなぁ。
不妊は深刻な問題ですし、現実世界でも自然出産と差別しなければ、人工子宮
は実用化されてもいいと思いますし。

まだ、ザクレロさんのユウナ&カガリの方が「愛」がありそうな気がする。
141通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 20:21:21 ID:???
確か夫妻の種死後のインタで、キラとラクスに恋愛感情はなくて、同士ですとかいうのがなかったっけ。
けど女帝ラクスはやっぱこわい。
142通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 20:26:12 ID:???
>>140
ザクレロのユウナは、カガリもエルも手料理の人も情熱的に愛してるだろう
その表現方法が人と違うだけで
143通常の名無しさんの3倍:2009/10/17(土) 01:33:15 ID:???
命からがらプラントから脱走して地球に舞い戻ったキラ。
彼女の身を案じてマルセイユに駆けつけドアを開くと…
『お・か・え・り・な・さ・い』
…彼女はいた…ただし…
『だ・い・す・き・よ・キ・ラ』
…後頭部を切り欠かれて機械と置き換えられた姿で…
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA………!!
慟哭するキラの背後に既になぜか居るラクスと虎
「あらどうしたのです?キラのお気に入りだと伺ったので
 ふさわしくコーディネートしてさしあげたのですよ?」
『だ・い・す・き・よ・キ・ラ・だ・い・す・き』
顔を上げたキラももはや…
「い”ら”な”い”よ” こ”ん”な”オ”モ”チ”ャ”」
声にも表情にも出せないが内心で冷汗が止まらない虎
「おっそろしい女やで、わずかに残ってた人間らしい心を完全に潰しよった」
144通常の名無しさんの3倍:2009/10/17(土) 03:16:11 ID:???
それなんてターちゃん
145通常の名無しさんの3倍:2009/10/17(土) 12:43:16 ID:???
ターちゃんは誰だ、シンかw?
動物パワーならぬクジラパワーでキラを……あれ?
146通常の名無しさんの3倍:2009/10/17(土) 20:16:49 ID:???
もし種・種死の世界が真・女神転生の世界観だったら

とりあえず、種キャラをメガテンのメシア・プロジェクトに例えると
メシア……キラ
メシアのサポート……アスラン
アンチメシア……クルーゼ、レイ
セイレーン……ラクス、ミーア

ついでにおまけの主人公
主人公……メシア・プロジェクトにより、人工的に造り出された最初のメシア(救世主)
しかしオリジナルに近すぎた為、制御がきかず廃棄処分されそうな所を
とある資産家のメイドに拾われ、資産家頭首の娘として過ごしている
なぜか出会った悪魔と会話できる能力を持っており、悪魔召喚剣「デビルクアンダー」を入手してからは
その能力で仲魔にすることができるようになる
147通常の名無しさんの3倍:2009/10/18(日) 03:30:51 ID:???
イタい。
148通常の名無しさんの3倍:2009/10/18(日) 07:19:52 ID:???
ラクシズが善といいながら裏では悪の設定か。
アニメと変わらないなw
149こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/20(火) 19:27:42 ID:???

   3 一家は幸せ

「ただいまあ」
 シフトが明けたシンが帰ってきた。ルナマリアがシフトに入るまで2時間あるから、一
緒に昼食が取れる。
「おかえり、お昼ごはんの準備できてるから」
 厨房から漂ういい匂いにつられてシンが言う。
「授乳中はたくさん食べるっていっても、たくさん用意してるなあ」
「その分レイはたくさん栄養をとってすくすく育つわ」
 シンはベビーベッドに寝ている息子の顔を見に行った。
 黒い髪はシンに似て、青い眼はルナマリア譲りだが、非常に端正な面差しに亡くなった
親友の面影を見る。
「あ、大事なこと。昇進した。白服だって」
「すごいじゃない、でも転勤もあり?」
「いや、イシス基地所属。ただ基地のモビルスーツ隊の隊長からザフト宇宙軍のモビル
スーツ隊隊長になった」
「――すっごい偉い人じゃないの」
 ルナマリアが目を見開いた。この基地のモビルスーツ隊の規模なら、隊長のシンは白服
でもおかしくない。ただ若いし、フェイスの特権もあるしで、赤服で妥当だと本人も周囲
も思っていた。
 シンが指を伸ばすと、レイが紅葉のような手でその指をつかむ。
「でも戦争になりそうもないから、実質は今と変わらないと思うけど」
 二回の大戦で地球もプラントも疲弊したし、今は宇宙クジラが月に植民してきている。
彼らに人間同士が争いあう『戦争』を見せたいと思う人類はいない。人類同士共生できな
いで、どうして進化の経路も全く違う知的生物と共生できる? SEEDを持たない者も、宇
宙クジラに戦争を見せるなんて恥ずかしいことはできないと思っていた。
「白服になるとお給料もちょっとは上がるし、部屋も広い部屋に引っ越せるわね。レイを
いい環境で育ててあげたいし、さいこー」
「うん、だから白服昇進は議長の心配りかなと思ってるんだけど、平和とはいえ宇宙軍モ
ビルスーツ隊の隊長が俺でいいのかねえ、一応隊長代理の人事もあったから、実質的には
彼女任せになりそう」
 確かにレイをあやすシンはまだピンクのほっぺたをしていて、髭もない、そういう紅顔
の美少年遺伝子なのだ。そして二十歳で白服はザフトのなかでも異様に早い出世だ。
 シンはデュランダル前議長に可愛がられたスーパーエースだから、前体制の人間を冷遇
しませんわというポーズのためなのか、でもじっさいにラクス様はシンを可愛いと思って
らっしゃるように見受けられるし、姉弟みたいにじゃれてるし――悩むのは苦手なルナマ
リアは、基地の厨房から届けてもらった食事をとりわけ始めた。当たり前だが三分の二は
彼女の分だ。母乳でレイを育てているので、ルナマリアは仕事前には乳を搾り、冷凍して
おく。それを時間が来るとシンかベビーシッタ―が解凍して飲ませることになっている。
1/6Gではミルクの飲ませ方は難しいし、吐き戻しによる窒息の恐れも大きいので、最初は
医師の指導のもと、次は看護士がついていたが、いまは定時回診だけになった。もう少し
大きくなれば、保育所に預けられる。そのころにはツーベッドルームの広い部屋に引っ越
し出来てるだろうし、ご飯は優先して地球の食材のものが食べられるし、キャリアアップ
はシンに任せてもう一人子供産もうかしらと考え、ルナマリアは子牛のひれステーキを咀嚼した。子牛だの鹿だの、高タンパク低脂肪の肉と魚、野菜をたくさん取る食卓だ。シン
が言うには基地司令よりいいもん食べてるんだぞということで、味わって食べたいが、食
欲が勝る。うん、やっぱり二人目いこっと勝手に決めるルナマリアだった。
150こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/20(火) 19:28:08 ID:???

   4 嵐の予感?

「そうそう、シンの隊長代理って誰?」
「あ、シホ・ハーネンフース、彼女は黒服に昇格」
「あのジュール隊長命の女ね」
 赤服のエースの女性パイロット同士、思うところがある。
「そう、でもジュール隊長って議長しか見てないし、基本的にあの人、議長以外の人間は
木偶だと思ってそうだ」
 ここで微妙ながらシホに助け船を出してしまうのが、女の性。
「でも議長にはキラさんがいるし、プラントと結婚してるとおっしゃってるし、ジュール
隊長の願いって無駄だと思うのよね」
 もりもりと子牛を食べながら言う。
「それはわかるけど、ほら、純情を姫に一生捧げる男のロマンってのもあるだろ」
 シンはけして好意を持っていないイザーク・ジュールを擁護していた。これが男の性?
「ラクス様は見かけは柔らかくても、中身は鋼鉄よ。プラントのためならどんな汚いこと
でもなさるでしょう」
「ま……俺もそう思うよ」
 シンはきれいなラクスを花園で遊ばせておきたかったが、彼女は雄々しく政治の舞台で
戦う雌ライオンだ。ルナマリアがモビルスーツに乗れば自分の部下でトップパイロットと
して扱うのと同様、私室の中でもシンは政治や人種のことは話さない。ラクスには楽しい
ことだけ話して、甘いお菓子を食べて、頬にキスをしてもらう。
 以前連合の強化人間のことで公私の区別を付けられず痛い目に会ったシンは、味方です
らその区別には厳しくなった。とはいえ、周囲からは議長にひいきされて、月で子供を作
ったから特別扱いされてという声もある。その声を聞き取れるだけ、シンは大人になった。
なんといっても、レイとルナマリアを守るのは彼の責務なのだ。
 シンもステーキをほおばり、さらにジャガイモとアスパラガスを飲み込んだ。
「な…なにがあっても、俺がレイとルナを守るから」
「ちゃんと食べてからおっしゃいな。大人でも月では窒息しやすいんだから。でも、ありがと、頼りにしてるわ、ダーリン」
 テーブル越しにルナマリアはちゅっとキスをした。
「じゃ、プラントに行くの?」
「うん、明日、辞令受け取りに行ってくる」
「あ、そうすると白服のフェイスってキラさんとシンの二人になるんだ」
 ルナマリアが感心したように言った。
151こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/20(火) 19:28:38 ID:???

   5 女帝の誇り

「シン・アスカに、自由条約黄道同盟の議長として、宇宙軍モビルスーツ隊隊長の職を授
けます」
 凛としたラクスの声。シンは騎士のようにひざまずいて、美しいその手に接吻した。こ
の古風な儀式はラクス・クラインが政権を握ってからとりいれられたものだが、ロマンテ
ィックだとの支持を得ている。シンは初めて袖をとおした白服にフェイスの徽章を付け、
少々上気した桃色の頬が白服を輝かせていた。
 ただこういう場面だと、議長はすぐ横にキラさんを置きたがるのにどうしたんだろうと
シンは思った。一年間の休職を経て地球から帰還したとは聞いていたが。
 ラクスの下座から、イザーク・ジュールの青い瞳が強烈にシンを打つ。彼はラクスの信
奉者だから、白服のフェイスが増えたのが気に食わないのだ。それくらいプラント人なら
幼稚園生でもわかる。いざというとき、イザークに命令を下せる存在が一人増えたという
のは、議長の足跡なら舐めて歩くといわれる男には不愉快だろう。
 午餐会はシンが主賓でラクス・クライン議長とテーブルに二人並んだ。プラントの新し
くできた農業コロニーでとれた野菜がメインの食卓だったが、ラクスはしきりとレイや宇
宙クジラ、そしてルナマリアの様子を聞きたがり、シンの答えに鈴を鳴らすような声でこ
う答えるのだった。
「本当に素敵な暮らしですわ、シン」
 シンにしてもこの議長の声が宇宙クジラに似ていると前から思っていたが、耳の近くで
同じ言葉を何度も発されて確信した。彼女のSEEDは、他人の精神に影響を及ぼす声を出す
と。
 意識してSEEDを閉じた。このあたりは宇宙クジラとの接触が一番長く、一番親しい男ゆ
えだ。別に今のラクス議長体制に不満はないが、もし不満分子が出た時彼女はこの声で説
得するのだろうと思うと、それがプラントのためだと思いつつ背中に冷や汗をかいたシン
だった。
「わたくしのお庭でお茶をいかがですか?」
「ありがたく頂戴いたします」
「まあ、シンったら、いつもそんなにかしこまって。わたくしなんかあなたにとっては簡
単に息の根を止めてしまえる、かよわい人間ですのよ」
「自分は軍人です。しかし民間人は手に掛けません」
 頬を赤くして言いきるシンに、ラクスは腕を預けた。若くて輝かしい騎士だ。
 議長官邸の庭で、食後のハーブティーを飲む。ハーブは土壌がやせていても育つから、
プラントで自給自足できる。コーヒーや紅茶は高価な地球産か代用品だった。
 幸いにして、若く美しいラクス議長とハーブティーにガラスの食器の組み合わせは、安
い割に優雅に見えた。金彩ごってりの陶器のコーヒーカップより、華奢ですぐに割れそう
なガラスの小さなティーカップのほうが価値があるように思わせる。ラクスの外交の一環
だった。
 シンはこのガラスのティーセットを見ると、オーブに住んでいた子供時代を思い出すの
だ。休みの日に浜辺で家族四人でバーベキューをした後、庭で育てた生のハーブティーを
楽しんだ。マユはミント少なめでローズヒップ多めが好きだった。
 ラクスが淹れてくれたのはミントとカモミール、レモングラスのブレンドだった。とて
も気持ちが安らぐ。
152こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/20(火) 19:30:46 ID:???
「生のハーブティーはいいですね、月のより香りが強い」
「地球のはもっと香りも薬効も強いのでしょう?」
「特に地植えですと、地球の恵みを一身にもらいます。ミントなんかあっという間に庭中
にはびこりますよ」
 シンは昔のことを思い出してしゃべった。プラントに来てかなりたつが、地球生まれで
よかったと思うことは多い。レイもいずれ地球に住まわせてやりたいが、あの子の場合、
宇宙クジラとの紐帯が強そうだから、宇宙で好きにさせたほうがいいのかとも思う。シンは
このガラスのティーセットを見ると、オーブに住んでいた子供時代を思い出すの
だ。休みの日に浜辺で家族四人でバーベキューをした後、庭で育てた生のハーブティーを
楽しんだ。マユはミント少なめでローズヒップ多めが好きだった。
 ラクスが淹れてくれたのはミントとカモミール、レモングラスのブレンドだった。とて
も気持ちが安らぐ。
 そして本土に来てからずっと気にかかっていたことを聞いた。
「キラさん、どうしたんです? 地球から帰ってきたと聞いたのに、姿を見ない」
 あのキラのことだから、自分と役割を交代して君がラクスのそばにいてくれとか言われ
ると思っていたのに、姿さえ見えなかった。白服のフェイスというのは、ザフトに二人し
かいない高官なのだ。先任としてシンが辞令を受け取るのを見届ける役目もあったはずだ。
「キラは少し体の調子を崩していて、でもあなたには会いたいと言ってましたから、もうすぐまいりますわ」
「そうですか。地球で何か病気にでも?」
153こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/20(火) 19:30:51 ID:???
 コーディネーターは免疫系が強化されているが、地球では新しい細菌やウィルスが生ま
れている。
「病気? そういえるかもしれませんね。体が弱ってしまって」
「そうなんだ」
 キラを好きだったことは一度もないが、挨拶くらいはしておこうという躾はされている。
戦争のあと、ラクス議長の玉座のそばに控えているだけの役割だったのも、気の毒だった。
戦後、たくさんの者が退役してプラントの工業や学術を支えているし、モビルスーツ乗り
だけが人生ではないと、シンにしても思うことはあるのだ。
 マユの言っていた宇宙クジラの食糧――ヘリウム3。シンは学生時代常温核融合の研究
をしていたのだ。だから彼らの生理を知りたくてたまらないが、これを誰かに漏らしたら、
各国による宇宙クジラ捕獲および解剖が行われるだろう。人間はその程度には野蛮な生き
物だとシンも知っていた。親友のレイは、クローンの実験体として人工子宮から生まれた
のだ。だからその分、小さなレイ――ルナマリアのおなかから出てきた――は幸せにして
やらなければ。ただまだ許可が下りないので、プラントに連れてきて祖父母に会わせるこ
とは叶っていなかった。
 待っていると、介護人に付き添われたキラ・ヤマトが姿を現した。私服で、げっそりと
やせてしまって、目に光がない。ラクスのそばでいつもつまらなそうにしていた青年が一
年とちょっとでこんなにやつれるとは。
「あんた、地球で何があったんですか!?」
「地球か……何もかも懐かしい」
「差別されたとかじゃないんでしょうね」
 いずれ家族でオーブを訪れてメイリンとも会う予定だ(まあ、アスランとも会ってやっ
てもいい)。宇宙クジラの来訪以来、地球での人種差別はナンセンスなことと思われるよ
うになり、いまやブルーコスモスは脱会者続出で本部ビルを売りに出しているという。
「地球の人は、優しかった。僕は彼らが大好きだ」
 その言葉にウソはなさそうだ。元々軍人には向いていないとシンはキラを見ていた。人
を殺す覚悟が足りないのだ。とはいえ、平和な時代にこんな精神的、肉体的ダメージを地
球で受けるとは。
「ええ、キラはすべての生物を愛していますものね」
 一瞬、キラの体から殺意がほとばしった。シンは自分の感覚が狂ったのかと思った。そ
れはほんの一瞬で、もう「大人しいキラ」に戻っていた。
「キラは疲れたようですわ」
 介護人に連れられて、キラは議長公邸の私室部分に戻って行った。
「ご覧になったでしょう。もともと軍人には向いてなかったキラが、地球で過酷な目に遭
って……。私があなたを昇進させたのも、折に触れてキラの代わりをしていただくためで
すわ。月とプラントを往復する回数が増えますが、よしなに」
「了解しました、議長」
 シンは単純な武人だった。自分の家族と宇宙クジラのことに手いっぱいで、ラクスの野
望など知る由もなかった。
「頼りにしてますわ、シン」
 ラクスはシンの手をとって、頬に軽く家族のキスをした
154通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 02:35:09 ID:???
支援
155通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 02:37:34 ID:???
GJ
しかしなんだ…シンの幸せの外側のルナティックでドーンでケイオスでカオスなラクスの雰囲気は…
あとキラは無事なんだろうか?
156通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 17:57:24 ID:???
シンの幸せが怖い、怖すぎるwww
157通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 19:35:08 ID:???
どん底に突き落とされるのがわかっていて、
その前段階としての幸せ描写ってのは何とももどかしく空恐ろしい…
158通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 19:42:03 ID:???
GJ
やべぇなんかこえぇぇ
159通常の名無しさんの3倍:2009/10/23(金) 06:55:49 ID:???
こんなにキラに幸せになって欲しいと思ったことがあっただろうか・・・(´;ω;`)
160通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 19:05:06 ID:???
保守!
161通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 20:15:05 ID:???
もしもムウがノリス大佐みたいな性格だったら
162通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 21:26:13 ID:???
もしもマリューがギニアスみたいな性格だったら
163通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 22:14:49 ID:???
AAがガンダムヘッド付き無敵戦艦に…
164通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 22:24:50 ID:???
>>161
想像できねぇっww
165通常の名無しさんの3倍:2009/10/25(日) 23:52:52 ID:???
「乳など、脂肪が生んだ腫瘍に過ぎんッッッ」
166通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 00:03:53 ID:???
実はこのシンはラクスが作ったカーボンヒューマンで
その内ボロを纏った髭面のシンがやってきて、銃声が二つ鳴るところまで妄想余裕でした
167通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 00:08:52 ID:???
>>165
マリューが言うと凄い嫌味www
168通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 01:20:24 ID:???
え、てっきり赤い三倍の人の魂の叫びかと
169通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 09:53:18 ID:???
イージスの変形機構にアルミューレ・リュミエールとザフト水中MSの要素を加えたらクロボンの”手”のCE版作れないかな?
アレも正義と自由の名前がついてるから大型にしてミーテイアの代わりにくっつけたら意外と活躍できそうなんだけど。
170通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 19:12:14 ID:???
巨大な拳に変形するイージスか・・・
171通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 19:23:50 ID:???
ビッグ・ヅラ・○○○か……
172通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 19:46:17 ID:???
輝く○○○の名の下に!
173こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/28(水) 05:08:46 ID:???

   第六章 脇役の人々

       1   イザーク・ジュール

 なにやら二次創作ならず一次でも人気の高い彼であるが、ラクス嬢信者、彼女のためな
ら一秒前までの同僚をぶっ殺すのも正義という人格である。
 はっきり言って人格障害だが、プラント的にいえば、母親からの遺伝である。
 彼の母親は自分のプラチナブロンド、青い目、神秘的な切れ長の目と細い鼻、酷薄な印
象を与える薄い唇という美貌に非常なこだわりがあった。
 はっきり言ってしまえば、自分の改造された容姿にナルシシズム全開の女だったわけだ、
エザリア・ジュールは。それは彼女が若いころから知られていて、「彼女が相手にするの
は、彼女の容姿を崇拝する男であってそれ以外に興味はない」と。
 なので子供は当然精子バンクから大金と引き換えに提供を受けて産んだ。エザリアの美
貌を受け継いだ息子――娘では数年で女としてのライバルになってしまう。といっても彼
女の理想の遺伝子を継いだ受精卵誕生までに、いくつかの受精卵を実験場送りにしたのだ
が。
 まあそういう生まれのイザークは、自分がラクスの婚約者に選ばれなかったことが今で
も不満だし、キラやシンとラクスが仲良くすることにも不満だった。
 そして宇宙クジラの来訪で、一つの事実が明らかになった。
 ラクスも、キラもシンも持っているSEEDとやらが、自分にはない。
 エリートであることが自慢というより生きがいである青年にとって、ストライクに敗れ
た時以来のショックだった。
 なので自分の崇拝者であるシホ・ハーネンフース――名字にちょっとうんちくを垂れた
ら懐いてきた雌犬――から、彼女の上官になったシン・アスカの行状を聞き出そうという
わけだ。とはいえまだ、ともに宇宙軍モビルスーツ隊の司令部があるアプリリウス1バン
チのザフト軍本部の執務室に入ったくらいなのだが。
 仕事の細かい内訳はメールでということで、シンは月、シホはプラントに居場所を定め
た程度だ。そういうゆるーーーーい仕事で成り立っているのがザフトおよびプラントで、
よく地球に負けずに生き延びてきたなと感心するほど適当である。それが、プラント人の
コーディネーターはナチュラルより優秀説に結び付くからやっかいだが、イザークはコー
ディネーター至上主義者だった。
「では、シン・アスカはラクス議長の横に立つわけではないのだな」
 何度目かの念を押す。
「はい。あくまでモビルスーツ隊の隊長であり、それ以上でも以下でもないというのが彼
の弁です」
174こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/28(水) 05:08:54 ID:???
 年下で子持ちの美少の上司、喪女のシホにとっても好みの存在ではなかった。
「ラクス嬢はなぜあんなにキラとシンをご寵愛になるのだ。二人ともどこの馬の骨ともし
れない、プラント生まれでもないくせに」
「SEEDとやらがお好みなのでしょう。そろそろ議長とキラ・ヤマトの最初の子供が人工子
宮から出てくるころでは」
「黙れ、あんなもの、ラクス嬢の子供と認めるものか!」
 子供を作るにはキラの種が必要である。最初はプラント国籍をとるときに、男子なら精
子、女子なら卵子を政府に提供する義務があるので、それを使った。そのあとは、朝晩イ
ザークが手で絞るお役目をいいつかっているのだ。他人のちんぽをしごいて射精させるよ
うな趣味は、まったくイザークにはなかったが、ラクスの命令ならうんこでも食べるだろ
う彼のこと、しこしこも上達してきたこの頃だ。でもしこしこついでにキラを虐待しちゃ
ったりするので、シンが目の当たりにしたような状態になるわけだ。ラクスはキラを心配
する自分に酔う性質だから、すべて黙認して、かわいそうなヒロインを演じている。
 第三者から見れば変態的な三角関係なのだが、三人が誰もそういう意識を持っていない
ので、部下や使用人だけがひそひそと噂するだけだった。
「でもラクス様はご自分のお子として、クラインの名字を授けてレイ・アスカと娶せる気
でいらっしゃいます」
「ううむ」
 早急に自分も息子を作って、クライン家の令嬢に近づけさせねば。卵子バンクに問い合
わせて入るのだが、彼が気にいる遺伝子の持ち主がなかなかいない。容姿はもちろんイ
ザークに瓜二つで、飛びぬけた知能と身体能力を持つ息子でなければ。クローン技術が許
可されていれば飛びつくのにと思う。
 ただエザリアは地球の金持ちのナチュラルの親の資産を使ってイザークを産んだが、そ
の資産もいまはない。祖父母の死亡後、相続税を払ったらたいして残らなかったのだ。プ
ラントはゆりかごからコンポストで土になるまで面倒を見てくれる社会だが、その分税率
は高い。密輸とか裏の商売をしなければ、イザークの貯金では彼の夢の息子もクローンも
作れないのだ。
 一方でシホ・ハーネンフースが「喪女」であると書いたことに、疑問をもたれた方も多
かろう。彼女は美人で赤服のエリートだし、さぞかしもてるだろうと。
 彼女が美人なのはナチュラル基準であって、コーディネーター基準では普通に美人とい
うか、目立たないが多数派に分類される。たとえばラクス・クラインは子供のころプラン
トの歌姫と言われたが、それは歌がうまくて最高評議会議長の娘であるからであって、彼
女が美少女であるからではなかった。いまでも最高評議会議長だからプラントの女帝と言
われるのであって、顔は付け足しに過ぎない。あの豊かすぎるピンクの髪はコーディネー
ターならではともてはやされもするが。プラントのスーパーモデルなどは、ナチュラルの
基準ではけして美女の範疇に入らない個性派ぞろいだ。端正な美貌というものは、平凡な
容貌を言い換えただけにすぎない、それがコーディネーターの世界だった。
 ジュール隊長命のシホでは、興味を持つ男がいなくて、喪女扱いされても仕方ないのが
おわかりいただけただろうか?
175こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/28(水) 05:10:10 ID:???

   2 アスラン・ザラ

 プラントでもエリートでイケメンと言われていた男の今の悩みは、頭髪と上司のカガリだった。
頭髪は遺伝子判定で禿遺伝子があると宣告されたし、カガリの面倒を二人で見る
ことになると思っていたキサカ一佐は戦後准将に昇進して、さっさと艦隊勤務になって太
平洋の海の男になった。
 カガリだって悪い子じゃない。馬鹿で空気が読めないだけだ。護衛という名前のおもり
役は思ったより大変だ。メイリンが支えてくれて、やっとバランスが取れているくらい。
そして彼女には禿遺伝子がない。自分たちの子供は頭髪に悩まないで済むと思うと、少し
は幸せになるアスランであった。そう、昨日メイリンがはにかみながら告げたのだ、みご
もったと。頭髪の豊かな息子か娘を想像する。息子の場合、はっきり言って悔しい。息子
が成人してふさふさでハンサムと言われているころ、自分は頭をすっぱり諦めねばならな
い。かつらに頼るのは嫌なので、プロペシアを一日も欠かさず摂取しているが。
 まあ、禿の話は置いておいて、昨日の夜はメイリンとケーキと紅茶で乾杯した。これか
らメイリンの授乳期間が終わるまで、家では禁酒だ。地球のワインの味がわかってきたと
ころで少し残念だが、もともと酒好きではない。メイリンは料理に合わせてハーブティー
やジンジャエールを用意すると言っていた。
 そんなことを考えて百面相しているうちに、オーブの政庁についた。一見南国らしい開
放的な建物だが、セキュリティはきっちりしている。
 昔は民衆が好きに入り込んでウズミに直訴していたそうだが、もうそういう時代ではな
い。カガリ・ユラ・アスハは地球で一番重要な人物だ。
 アスランはカガリの執務室に入って、その認識を保つのに彼の精神力のすべてを使った。
「……カガリ、出したものは片づけろとあれほど言ったのに」
 そう、カガリは片づけられない女だった。アスハの屋敷で乳母が甘やかしたのが原因だ
とアスランは思う。
 元首執務室には机の上に乱雑に載せられた書類と国璽!、まあ。いつものことだから整
える。それ以上の食べ散らかした飲食物に手を触れる気にはならなかった。黴菌のついた
手で家に帰っても、メイリンを抱きしめられないじゃないか。
「カガリ、仕事だ」
 新しくデザインした首長服を脱いで、ブラとパンツでスナックをかじっている女が、地
球一の権力者だなんて、誰が信じるだろう。
「アスランか、そこのアボガドディップとってくれ」
176こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/28(水) 05:10:18 ID:???
「自分でしなさい。うちのメイリンが妊娠した。オレは外で他人の食べ物に触る気はない」
 珍しくアスランが本気で言い切ったので、カガリが顔を向けた。唇のあたりにチリソー
スとヨーグルトソースの跡がある。
 育ちはいいのになんでこんなにジャンクフード好きなんだろうと、アスランは思う。彼
が育った月でもプラントでも、地球産の食物は高価で、水耕栽培の野菜と合成タンパク、
奮発して鶏肉を食べていたというのに、この姫様は自家用農場で有機無農薬野菜と地鳥、
黒豚、ミルクバター用の乳牛、貴重なオーブ牛と呼ばれる黒毛の肉牛などを贅沢放題に食
べて育ったのだが。
 その食料はナチュラルにしては強靭な体力と、野放図な脳みそとなっている。
 本当に精子卵子の段階でキラと双子なのだろうか? メイリンとキラが崖から落ちかけ
ていれば迷わずキラを助けるアスランにとって、いくら遺伝子改造があったとしても、キ
ラとカガリが双子だなんて、許せないことだった。
「メイリンが妊娠か、それはめでたい。出産日は祝日にしてもいいぞ」
「馬鹿なこと言ってないで」
「いや、馬鹿なことではない。プラントからメールが来てな。来月の10日にラクスが子
供を産むそうだ」
 立ち上がったカガリはアボガドディップをたっぷりつけてコーンチップをほおばった。
「ラクスが? 子供を産む?」
 キラからは休職して地球に降りるというメールのあと、何通かメールが来ただけだ。
アスランの情報網によるとプラントでラクスとの暮らしを再開したようだが――それ以上の
情報はキラ命のアスランにも入ってこなかった。
「……キラの、子供なのか」
「他には考えられんな」
 なんでこの女が高価なレースのついたラ・ペルラの下着を付けているのだろう。がんば
ってメイリンに買ってやっているものより高価な品だが、スーパーの特売品に見える。
「でもどうしてこちらに情報をくれなかったんだろう、ラクスは」
「早くに発表して流産でもしたらまずいと思ってのことだろ」
 自分は子供を産む気がないくせに、妙に実際的なカガリだった。
177こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/10/28(水) 05:10:47 ID:???

   3 マルキオ導師

「とうとう月に来ました」
「はい、導師様」
 ラクスたちの宇宙クジラとの出会いに同席した後地球に帰ったものの、月で宇宙クジラ
と一番親しい青年に子供が生まれたので、またひいこらいいながら宇宙にやってきたので
ある。目が見えない分、他の感覚が鋭敏なので、1/6Gにはすぐに慣れた。
 まず展望台で宇宙クジラたちと話して、うっとりする。ここでは彼らが発する電波を人
間向きの音波に置き換えて流すので、運がいいと太陽に向かって歌う宇宙クジラの群れと
遭遇できたりするのだ。
 マルキオが訪れた時は、小さな個体が明るい歌を歌い、大きな個体はゆっくりと泳いで
いる時間だった。
 これがSEEDの力かと思うと、見えない目から涙がこぼれる。
 この展望台では毎日数名がSEEDに目覚めて、宇宙クジラとともに暮らせる人類の幸せを
祈るようになるのだ。
 マルキオ導師は、そういう目覚めた人類を導き、精神的に一次元高いところへ人類を連
れていくのが自分の仕事だと感じた。宇宙クジラと接触した人は、戦争反対、なんであれ
血を流すことなく平和を守るために、どれだけかかっても言葉で話し合おうという思想に
変わっていった。
 マルキオが精神的に見守っていると、宇宙クジラたちが興奮し始めた。SEEDはなくても
修行でこの程度の変化はわかる。
 弟子に言わせると、イシス基地から二台のモビルスーツがやってきたんだそうである。
一台はネオデスティニー、もう一台はインパルス。シン・アスカとルナマリア・ホークの
機体である。彼らが月で自然繁殖したこと、シンはSEEDを持っていて人類で一番宇宙クジ
ラと親しいことは人類の常識であった。
 二台が宇宙クジラの群れに入っていくと、ものすごい勢いで宇宙クジラがインパルスに
殺到した。ルナマリア・ホーク・アスカはSEEDを持っていないということだが、もしかし
て赤ん坊を連れているのだろうか。宇宙クジラと父親の交流があって、月で受精し生まれ
たという子供、レイ・アスカ。彼はSEEDを持ち、赤子の段階で異種間交流を行うというの
か。ただマルキオ導師は彼が特別であることも知っていた。彼以外に月で妊娠、出産され
た命はまだないのだ。
「あ、あそこに御子がいらっしゃるのか」
 マルキオは見えぬ眼から涙を流した。
 コクピットが開いて、ルナマリアに抱かれたレイがあらわになる。本当に小さな人間の
赤ん坊、彼を愛する宇宙クジラたちは一家に感嘆の歌を浴びせかけるのだった。
178通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 08:03:06 ID:???
乙で良いのかな?

イザークはラクスの犬すぎるw
(奴の親の行動に関しては……特に娘でなく息子という辺りに怖さがあるぜ)
アスランはバカガリの世話係で可哀想だが、子供ができても禿げる心配がないとか、幸せな奴だろう。
179通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 10:39:56 ID:???
ただの閑話休題的な内容なのになんでこんなに底冷えするんだ・・・
180通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 12:52:28 ID:???
子供は幼年期の終わりみたいになるんだろうか。
正直あの展開は親としてはキツすぎるよな。
181通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 19:36:05 ID:???
やめて人類滅亡やめて
182通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 20:52:03 ID:???
木星近辺(ギガンティス
すさまじい力を持った赤ん坊
MS
これはもうその時イデが発動するかも分からんね
183通常の名無しさんの3倍:2009/10/28(水) 23:23:28 ID:???
キラキラ病はいまだ健在か…
メイリンとキラのどちらを助けるかのところはキラ>メイリン+子どもと考えていいんだよな?
イザークのとこの下りといい、プラント出身者のイカレ率が異常すぎる…
184通常の名無しさんの3倍:2009/10/29(木) 10:55:41 ID:???
プラント出身でラクスと交流が深かった人が、あれなんでは。
ホーク姉妹はいまんとこまともだ。
185通常の名無しさんの3倍:2009/11/01(日) 03:58:53 ID:???
こんな未来氏GJ!
なんか静かで怖いがおもしろい!
186こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/11/02(月) 12:11:14 ID:???
2ちゃんに書き込んでしまうと、自分の著作権を放棄したことになるので、
さすがにそれは困るということで、連載は中止させていただきます。
187こんな未来があってもいい? ◆PnqS0Odl32 :2009/11/02(月) 12:28:18 ID:???
あ、ちょっと錯乱してました。まとめサイトに入れる際に、他人様の行為が、
好意ではないと感じることが多々あり、ここは自分にあっていないと思ったわけです。
また、2ちゃんの書き込みが著作権放棄したことに当たるのかは、調べてみます。
ただ簡単に著作権放棄できれば、嵐や犯罪予告でつかまる人はいないので、作品の
著作権は(一時版権者の暗黙の了解の下)に自分にあると思います。

ということで、さようなら。
188通常の名無しさんの3倍:2009/11/02(月) 12:39:34 ID:???
別に著作権放棄したところで犯罪として成立しますよ
189通常の名無しさんの3倍:2009/11/02(月) 13:56:20 ID:???
>>186-188
いきなり何だ?
190通常の名無しさんの3倍:2009/11/02(月) 17:51:15 ID:???
心の折れた職人のやめるもん宣言だろ。
191通常の名無しさんの3倍:2009/11/02(月) 21:08:32 ID:???
>>186-187
詰所に書き込んでたのは貴方だったのか

読み手の好意ってのは、裏目に出ることもあるからなあ……
192通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 11:33:27 ID:???
>簡単に著作権放棄できれば、嵐や犯罪予告でつかまる人はいない

いや、それは何の論理関係が成り立つんだ?
とりあえず書く前に6法読め
193通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 11:53:49 ID:???
流れがよくわかんねっぽ。
なんでいきなり著作権とか明後日方向に暴発しそーなシロモン持ち出したんだっぽ?
194通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 12:16:15 ID:???
>>193
とりあえず原因は詰め所での流れのようだ、簡単にまとめてみた

@詰め所では職人さんたちに編集する場合は原文のまま乗せるべきだという意見があった
 (対して確かに不満には思うけど、自分で直せるし、善意にそこまで文句を言うのも何じゃねと言う意見もあって、そこは全員がそう感じていたわけではなかったようだ)
A不満であるならガンクロに改ざん禁止と書けばいいだろと言う話で落ち着く
Bそれでも改ざんされたことに対して不満が出る
Cその時の流れが『・・・』を『・・』にすることに怒っていたので、そこまで厳しくしなくてもと言う話になる
 また、その際に2ちゃん書き込みには著作権を放棄しているだろと言う指摘がなされる
Dだったら2ちゃんに書き込まないと言う流れになり、昼に断筆宣言がこのスレに、その日の夕刻にはまとめサイトから完全撤退
E指摘した奴が、6法を読んで確認、投稿画面には知的財産権と著作権法の一部権利を譲渡と書いてあり、放棄ではなかった事を謝罪
Fチョイと性急ではという意見とやはり一言も聞かずに文章変えるのは駄目だと思うという意見が書き込まれている←いまここ

こんな感じだ。もちろん要約だから詳細に事態を知りたければ詰め所に行けばいい
195通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 14:14:26 ID:???
・・・・・・じゃねーよ、ちゃんと3点リーダー(……)使えよ
って作品批判する読者もいるんだからこだわる作者もいる罠。
196通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 14:55:34 ID:???
なんか語るスレによると上の経緯にある『・・・』とクジラの人は別人らしい
つまりCの愚痴→そこまで過敏に並んでも→プロでもない人に文章を赤入れされたくない→著作権(ry
と言う流れだそうだ
197通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 15:04:58 ID:???
まぁ、本人が載せてるのは手を出すべきでないな。
198通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 15:14:29 ID:???
「まとめの際に誤字脱字修正や改行で読みやすくしてくれてありがとう」
と言われる職人氏もまたいたりするから難しいね。
199通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 15:52:41 ID:???
なんか語るスレと詰め所で話が進んで肝心ここを置いてけぼりな気がする
200通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:13:33 ID:???
でもこのスレで職人が、まとめ文章いじらないでくださいとか書いたら、
普通の読者はスレ違いとか、職人の癖に自己主張するなって話にならないか?
201通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:13:56 ID:???
そもそも詰め所ってどこよ?
倉庫の連絡用BBSじゃないよね?
202通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:17:27 ID:???
>>201
この板にあるよ
203通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:21:14 ID:???
>>200
俺は内容によるな、前スレみたくトリ付きで会話に参加したら、ちょいとうっとうしいかな
だってトリ消して話せばいいんだし。けど大事なことなら言ってもいいと思う
当然そう思わない奴もいるだろうけど、それを多数か少数か判断するのは職人さんだろ
204通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:43:06 ID:???
>>203
トリをNGしたら解決だよ!!!!!
205通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 16:48:50 ID:???
>>204
それ作品も読めなくねw
206通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 17:05:47 ID:???
>>205
もちろん
だからすべて解決するじゃないか
207通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 19:40:08 ID:???
トリ付きで話すのは作者として話したいからじゃないの?
荒巻義雄みたいに後書きが長い作家もいるんだしそれも個性じゃね?
208通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 21:16:34 ID:???
別にトリ付きで話すのかまわないし、実際していいと思う
ただ前スレ最後の下手したら自演みたいに読める連投はどうかと

209通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 00:58:33 ID:???
避難所に30年が来てる
210通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 02:32:41 ID:???
もし、ホントに真面目に種死を作り直すとするなら、みんなどこを変えたい?
設定はかなりおいしいと思うんだ、この作品。
商業とかキャラ人気が悪い方向に働いてあんな結果になっちゃったけど、それを抜きにして、ちゃんとシンを軸に作ればかなり良作が出来上がると思うんだ。
意見を集計して、書き手さえいれば、納得できる出来になるかも。

ちなみに自分の修正したい点は
・キラとラクスの立ち位置(正義から悪へ)
・シンのSEED覚醒の時期の延期
・ミーアを消して、そこにラクスを置く
・ネオの正体
211通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 03:17:01 ID:???
種の場合コトが人種の違いっていうある種ニュータイプ論より性質の悪いものだからなあ
落とし所がつけにくいんだよね
議長なりラクスなりをミリアルドみたいな思想にするとか考えられるけどそれ即ち焼直しになりかねんし難しい
212通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 04:17:15 ID:???
>>210
ミーア自体はいいキャラだと思うんだけどな
個人的にラクス登場で偽物バレの後に名無しキャラでもいいから
「偽物だろうと今まで励ましてくれたラクスを信じる」的な台詞が欲しかった
本物なら何してもいいのか
偽物は何をしても駄目なのか
その辺もやもやしたので
ここをうまく消化できればレイ関係にも生きてくると思う
素材はいいんだよ。素材はいいんだよなぁ…勿体無い
213通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 08:02:01 ID:???
>>210
ミーアとラクスの関係は、本物よりも本物らしい偽者にしたくなるね
並立するネタを扱いきれないなら、ラクスを既に亡くなった聖人とでもして出さないか、ミーアを最初から出さないかだろうけど
214通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 11:09:31 ID:???
MSの保有台数をごまかす為の設定のインパルスは残念な結果だったぜ
215通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 11:50:49 ID:???
ラクシズ全滅&オーブ(ミハシラ除く)滅亡。デスティニープランが全世界採用された
とこで第1部完
第2部は完全管理による平和な世界に疑問を持ち始めたシンの葛藤と反逆の物語…か、
レジスタンス側に身を置くオリ主人公とあくまでデスティニープランによる平和を守ろうとする
為政者側のシンの激闘
216通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 12:42:01 ID:???
>>210ラクシズ全滅は外せないな。話がすっきりしない
あとキラは「悪夢」で死ね、みたいな話聞くけど、個人的には生きて、最後にもう一度シンと決戦して欲しいね
ラストラクシズ機体がほぼ新品ってのも気に食わないから、シンとの決戦でお互いボロボロになるまで戦って欲しい
217通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 16:05:50 ID:???
>186 突然の事にいまだに何があったのか余り良く把握できていませんが
とりあえず、今までお疲れさまでした

続きを楽しみにしていたので、もしご自身が納得できる掲載先が見つかって執筆を継続なさるようでしたら、
移転先をこのスレにでもご連絡いただければ嬉しいです
218通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 17:07:25 ID:???
>>210からの流れを見てお前らにアニメ作る才能がないのはわかった。
219通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 17:52:09 ID:???
>>210
種死からの改変なら

・種〜種死間の年月をもっと長くする。種のキャストは「上官か退役」。
一般市民として戦争を眺めるか、戦闘に携わるのはごく少数とする。
サブコンテンツとして、その間のことを「ミリアリアレポート」なり「カズイレポート」なりで出版すればいい。

・世界観を、種の時の「大国による支配」から「独立紛争が各地で起こっている混乱の時代」に変える。
「プラント独立」という事件は、世界の大半が3カ国で占められていたような世界にとって
軽く受け入れて良いような話じゃない。
前半の話としては、ガルナハンみたいな紛争地域に介入するのが多くを占める。
そこでザフトのシンと、連合のステラの絡みでも始めればいい。

・種キャストの中でも、ラクス達は中盤から参加し始めるのではなく、
「戦争が終結した後も、地球上で『独立紛争』に力を貸すようになった」とでもすれば良い。
いきなり湧き出して「自由が云々」というよりも、そっちの方が説得力が増す。

・プラントの人口を増やす。というか戦災で人口が激減したため、ナチュラルも構わず受け入れたという設定にすれば
人種間闘争みたいな決着のつかない話にはならないはず。
というか前回の作品と同じテーマを使い回しちゃ拙いとおもう。

・テーマとしては「混沌か秩序か」
「混沌」の極致にラクス達を、「秩序」の極致に連合軍を置き、プラントはその板挟みになってもらう。
「独立の先駆け」として紛争を取り締まるわけにはいかないけど、自分達の影響下にある場所で「独立紛争」が起きるのは困る。みたいな感じで
それに加えてプラント内部でもザラ派、クライン派の対立を取り上げるようにする。
連合も、「国家間の主導権争い」+「ブルーコスモスという爆弾」を抱えて貰う。
ロゴス設定は存在しても良いけど、思想団体ブルーコスモスと綿密な繋がりが云々という設定は消す。
あくまで、連合の動きを縛る利益団体として登場して欲しい。
220通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 18:43:50 ID:???
デュランダルを悪者にするんだったら、地球圏の支配者を目指してるとか、それ位の野望を持たせりゃよかったものを・・・
本人は無欲だし、Dプランも提案の段階では悪者にするのは無理ありすぎ
どう考えても異を唱えて問答無用で襲いかかってくる方が悪者じゃん
善玉は善玉らしく、悪者は悪者らしく描いていればスッキリした評価だったろう
221通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 22:53:29 ID:???
種時代キャラが中二病の邪気眼キャラとかどうだろう
キラ「女神ラクスよ!我に力を!行くぞシャイニング・ストーム・フラッシュ!(ハイマットフルバースト)」
とか
マリュー「大天使の加護が私達を守ってくれるわ」
ラクス「私の中の種子(シード)が議長は悪だと囁いていますわ・・・」
222通常の名無しさんの3倍:2009/11/04(水) 23:29:46 ID:???
>>221
キラとラクスはまだいいがマリューは痛すぎるw(年齢的に考えて
223通常の名無しさんの3倍:2009/11/05(木) 00:04:10 ID:???
ラクス陣営を悪意無き悪というか、善意の押し売りで世界を混乱させていくようなキャラにすれば、
単純な悪よりも複雑になって良いんじゃないだろうか。
224(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:50:35 ID:???
『SEED 戦後30年目の愛』作者の◆iRJmdeVyD6氏が規制に巻き込まれ中なので、
避難所に投下された続きを、これから代理で投下させて頂きます。
6レス分あります。
225(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:52:10 ID:???
>>100-103
会議は、狭い戦闘指揮所(会議室)の中で行われた
基地の南端の、食堂のすぐそばの部屋だった
「では、状況を説明してくれ」
副司令のヨアヒム・ラドルが声をかけると若い士官が立ち上って現状説明を始めた
「わが軍の前線の30キロ手前に、連合の部隊が接近してるとの報告があります」
「規模は」
「斥候の報告によりますと、戦車250台、MS70機前後、歩兵は4000弱」
(威力偵察?)
「夜間偵察の結果か?」
ラドルは腕を組みながら椅子に座った
「どう思います、司令官」
「アスランで良い。ラドル司令」
「自分は副司令です」笑いながら目の前の初老の男は答えた
(これは、現地偵察しか有るまい)
アスランが椅子から立ち上ると続いて部屋の全員が立ち上り、敬礼の姿勢をした
「戦闘中の敬礼は省略だ。以後徹底する様に」
部屋の壁の方にあるホワイトボードに近づくと
「今後、君達にこれは徹底してほしい」
そうすると何やら書きながら話し始めた
「まず、連合軍捕虜の人道的な扱いだ。扱いの具体的な内容は、ユニウス条約でも、コルシカ条約を参考にしてほしい
旧時代のヘーグ規定でも、ジェネバ条約でも構わない。ザフトの利益に反しなければいい
書いた文字を丸で囲んで、線を引く
「次に、情報の流出に気をつけてほしい。先の大戦は、そうクライン派の、いい加減な扱いで作戦がすべて事前に漏れた
文章はなるべく特務隊か、保安の者が、優先的に、回収してほしい
クルーゼ云々言う奴がいるかもしれないが、あんな仮面の一人や二人で情報は漏れない」
振り返って席の方を見た。みな真剣な面持ちだ
「で、最後になったが、ロシア人と東アジア人の奴らは信用するな。ナチュラルだからとかそういうのじゃなくて」
どこからか、失笑が聞こえたが、咳払いをして続けた
「奴らは、約束を守らない。私は、一時期、坊主の真似ごとをして、チベットに居たことがあるが、彼等は約束を守らないことで有名だった
国際条約でも、結んだその日から破るのを待ってるという話を、土地のナチュラルから何度も聞いた
ナチュラル同士で結んだ約束すら守れない連中が、どうしてコーディネーターと、ザフトと結んだ約束を守れるのだろうか?」
正面を向いて、制服の襟を正すと
「長くなってしまったがいいたいことはこれだけだ。私は今から偵察に出る」
「軍団長、危険です、護衛も付けずにですか?」
わざとらしく手を挙げて、指をさした
「あの二人がいれば、十分だ」
二人とは、アイザック・マゥと風花・アージャだった
「じゃあな、後は頼む」
226(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:52:51 ID:???
戦闘指揮所のドアを抜けて外に出ると、二人にさっそく命令を出した
「あ、アイザック君、君は俺の機体の整備状況を見てきてくれ、もしこの間より駄目だったらどこからかセイバータイプのMSを《調達》して来い」
おもむろに胸ポケットに手をやって何かを探すしぐさをしたが、何もなかった
「あと、飲料と飴を持ってきてくれ、飲料は1リットルだ、早くしろ」
話を聞くと、アイザック・マゥは駆けていった
「アージャ君、まず君は、その格好は不味い、着替えなさい」
風花の格好は、DSSD(深宇宙探査開発機構)の放出品(らしい)の防寒着と、黒い太めのカーゴズボンだった
「失礼だが、背丈と身体の幅を教えてほしい」
「!」
「勘違いするな、君の制服のサイズが知りたいだけだ。その格好のままじゃ、交戦規定の要件すら満たしていないからな……」
アスランはポケットから鍵を出して風花に投げた
「これは私のトランクの鍵だ。そのに女性用の軍服が入ってる……妻の物だが多分私の見立てが正しければ(サイズが)合うだろう」
「奥様の……宜しいんですか」
風花が答える
「あっても意味のない物だ、すでにこの私にとってはな。持ったえないし、着てくれた方が妻も喜ぶだろう……」
横顔を見ると俯いてる
「さあ、時間は無いんだ。早くしてくれないか」
軽く一礼をして、駆けて行った
227(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:53:38 ID:???
格納庫に着くと、すぐさま機体に駆け寄っていた
整備兵が駆けつけて来た
「軍団長、手短に説明します。軍団長の機体(スクリーム)は手の部品が無いので、今回はセイバーの量産型に乗ってもらいます」
「ああ、データは?」
「30年前と同じです。ただ武装は実弾です。ビームとレーザーは使えるようにはしてありますが、バッテリーに影響が……」
「まさか30年前のままか?」
「外観も、エンジンも、OSも同じです。ただ武装だけ実弾です。バッテリーは4倍ですが」
「ありがとう。俺は出る、あとはラドル司令の指示を仰ぐよう伝えておけ」
そういうとコックピットに軍服のまま乗り込んでいく
「軍団長、スーツは」
「メットと防寒着だけ寄越せ。メットは陸戦用でも構わん、防寒着のサイズはM-S、Mサイズのショート丈だ」
兵士がカバンを持ってきたので、それをコックピットに入れると
「発進準備確認、アスラン・ザラ、只今より発進に入る、作業員を下がらせろ!」
ヘルメットを被り、操縦桿に手を置く……
十数年ぶりにMSに乗って戦闘したばかりで、感覚も戻ってきた様な感じもあるのに、何か不安だ……
(セイバーか、良い機体だ……キラ……)
一瞬考え事をしていたら、時間が経ったように感じる……
「発進、どうぞ!」
男のオペレーターの声が聞こえる。英語だ
「アスラン・ザラ、セイバー出
そういうと、滑走路を滑空して、セイバーは飛び出していった
228(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:54:45 ID:???
またキラと戦うことになろうとは……と考えたのだが、妻達のあの最期を知っている人間としては許せなかった
「あの阿婆擦れのせいで、キラはおかしくなったんだ。許せん」
通信機の電源が入っていることに気がついた
「どうした」
「軍団長、こちらです」
セイバーを変形させて降りると、兵士が数名駆け寄ってきた
「自分は偵察隊の……」
「説明は手短に頼む」
話が終わらないうちに聞き返した
「ここから6キロ先に韓国軍と思われます自走砲とダガーの中隊がいるとの情報をわが隊は受けてますが」
「目視偵察は」
「してません。レーダーと航空機偵察からの情報の分析だけです」
正直、偵察部隊の報告に呆れてしまった。
「後方と変わらないことをしてどうする。お前達、MS6機で俺に続け」
「ジンが8機しかありませんが……」
(参ったな。これは)
「じゃあ1機だけでいい。白旗も作っておけよ」
「?」
「軍使の準備だ。勘違いするな」
声をあげて、手を叩く
「早くしろ、敵は待ってくれん」
229(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:55:27 ID:???
白旗を持ったジンを抱えて、上空を飛んでいくとすぐに大規模な軍勢が見えた
(中隊レベルじゃないぞ。これは)
ゆっくり離れた場所に着陸すると旗を掲げてジンを先行させた
敵兵らしい影が見える。
装甲車と自走砲が近づいて来る……
(おかしい。無防備すぎる)
離れたところでダガーに狙撃させるつもりだろう……
ライフルとシールドを置くと両手を挙げた
「戦闘の意志は無い」
そう話してる間に装甲車からどんどん兵士が下りてくる
ダガーが四方からバズーカを構えて寄って来た
「隊長を出せ!」
エールストライカーを付けた105ダガーが前に出る
「私だ。白旗は出任せではなかろうな」
アスランには理解できない言葉で話しかけてくる
「もう一度頼む」英語で返した
返事が悪い
「名前を名乗ったらどうだと聞いて居るんだ」日本語に替えて話しかけてみた
「私は金間溟大尉、この部隊の指揮官だ。赤いMS,貴様は」
「アスラン・ザラだ、韓国人か、連合になんか居ないで、俺達の陣営に来たらどうだ」
「冗談を言うな。コーディネータが信用できるか」
「まあ、いい。俺が言いに来たのは悪口じゃない、周りの連中を下がらせろ、それから話だ」
105ダガーが空いた右手を上げるとダガーと装甲車両は視界の外に消えていった
「そちらの軍の司令官はキラ・ヤマトか?」
「!」
「奴に伝えろ、俺とサシ(一人)で勝負に来いと!あとこの部隊の事だが攻撃する意思はないと言っても無駄のようだが……
俺は軍団長だ、サシで勝負をして、負けた方が軍を引くと。むろん負けた軍の追撃はしないように徹底する様にしてだが」
「本当か?」モニター越しに男がにらんでくる
「ああ」白旗を持ったジンが近づいて来る
「それ以上近づくな、サーベルを寄越せ」
ジンがすべての武装を外す―攻撃の意志のないことを示すために―
105ダガーもストライカーとシールド以外の武装を外した
サーベルを拾うと切先をダガーに向けた
「剣で決めようじゃないか」
230(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:56:09 ID:???
風花達が偵察部隊の兵士達と合流して着いた時にはすでに始まっていた
どうやらアスランはジンの重斬刀で頑張っている。しかもビームサーベル相手に
無茶な事をする物だ……叢雲該より危険な男かもしれない
「風花さん、タイミングを見て軍団長を救いますよ、準備しておいてくださいね」
アイザックから通信が入った
両脇のジンもモノアイを点滅させている……準備にかかるようだ
正面を向くと、セイバーが一撃をくらい、手から刀が弾かれてしまった
しかもとんでもない方向に……
(ヤバい!)
バクゥを動かそうとしたら周りに止められた
「だって、ヤバいんじゃないの!」
「まだ早い、武器はある」
「!」
ダガーが一気に切りかかる
(不味い!)
「まだ、勝負は終わっちゃいないぞ!」
そういうとセイバーの両肩からビームサーベルを取りだした
231(代理投下)SEED 戦後30年目の愛:2009/11/05(木) 01:57:34 ID:???
続く

倉庫登録は私のほうでやっておきますので、代理投稿だけお願いいたします

(原文ママ、代理投稿完了)
232通常の名無しさんの3倍:2009/11/05(木) 08:03:22 ID:???

駄目だアスラン軍の早期崩壊しかうかばない
軍団長はだめだろwww
233通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 12:04:07 ID:???
久しぶりに来てみたら
こんな未来の人がいなくなっちゃてるし…
毎回楽しみにしてたのに…
234通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 12:23:08 ID:???
マユ主人公の人は何処に行ったんだろ
235通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 19:25:45 ID:???
>>233
未来の人は種の二次創作書いてるくせに著作権うんぬんでブチギレてどっか行きました
ファンだったけど読者置いてけぼりのあの態度で完全に嫌いになった
236通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 19:34:30 ID:???
>>233
編集人の改行が契機とはいえ
創作系のスレに軒並み暴言を吐き荒らして去ってゆきました
このスレで改行はやめてくれと一言言ってくれれば済む話だったのに残念です
237通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 20:51:10 ID:???
悲しいけどFAQにて、
「誰でも編集ができます、Wikiとはそういうものです」
と書いてあったりするのよね。
だからあらかじめ一言但し書きを入れといてくれれば
手出しも控えられてたかもだろうに。
住人とて全員詰め所まで巡回してるとは限らないんだし。
実際俺今回の一件まで詰め所スレなんて存在も知らなかったからな…。
238通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 21:10:38 ID:???
誤字脱字なんて放置しとけば済む話じゃね
他人の文いじるなんて余計な事は誰も頼んではいないし
239通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 23:23:56 ID:???
スレによっちゃ職人が誤字修正頼むようなとこもあるが・・・まあ普通は要請ない限り放置だわな
誤字修正とかでキレるってのもよくわからん話だが
内容を変えられたってんならわかるけど
240通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 23:37:56 ID:???
結局、235の言う通りで別のスレをきっかけに止められてもなぁ
しかも最初は俺らのせいみたいな言い回しだものな
>トリ付きで語るとうざがられる

そんなもん度を超さなきゃ誰が文句言うんだよなぁ、上の方にご本人ぽい人いたけど
鬱陶しいと言った人は前スレラストの自演ぽい行動をいっただけだろ
241通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 00:18:32 ID:???
勝手に誤字修正して「俺様の善意を受け取れないとはなんて作者だ」とでもやったの?
それは善意とかそういう物じゃなくなってるし、問題だろ……
242通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 00:26:57 ID:???
ややこしくなるからよくわかっていないなら書き込みはしなくていい
それにもう終わった話だしどうでもいい
243通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 00:30:41 ID:???
住人置いてけぼりでポカーンとなる気持ちは分らんでもない。
しかし事件発生現場(複数)を覗くと、そこにある事実に別の意味でポカーンとできるので
知るも知らないもご自由に。
244通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 00:36:09 ID:???
>>241
誰だよそれw
いくつかスレ見ているけどそんな編集さん見た事ねーよ
だいたい火曜日規制中なのに荒れた詰所も語るスレも無断でいじるあり方そのものは皆良いと言っていなかった

問題は例の方がほとんど荒らし化してしまった点と、ファンをガン無視、二次創作であからさまに著作権とか言い出したことだろ
さらには諭した職人に読み手の奴隷とか言い出す始末だし
つかその話題はもういいだろ・・・一連の話はもう結論でたし
245通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 00:53:00 ID:???
そもそも「我こそは編集人でござい」なんて出てくるスレとか見た事ないよ。
大抵は気がついたら収録されてるし。
246通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 02:55:54 ID:???
奴の話しはもういいよ。どうせもうスレさえ見て無いだろうし。

そんな事より質問だが、脳内で厨二病的二次創作考えた事あるか?
黒歴史暴露大会しようぜ!
247通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 03:01:40 ID:???
>>246
ぼくのかんがえたかっこいいあれっくすでぃの

248通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 12:21:25 ID:???
>>247
・一貫してオーブの軍人をやってる
・AA一行とともに乱入してきたカガリのルージュを馬鹿野郎と一喝、バラしてお持ち帰り
・ザフト時代の戦友だろうがキラだろうがオーブの前に立ちはだかるものにはまるで容赦しない
・自由に対しイージス時最終戦並みに殺す気で戦う
・「私はアスランではない、アレックス・ディノだ」

こんな感じ?厨二成分がいささか薄い気もするが。
249通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 12:48:36 ID:???
>>246
復讐鬼シン・アスカ(スパロボ会話スレで言う黒シン)
「あいつらが作る世界なんて、みんな滅ぼしてやる!」と、
ラクシズ全滅&オーブ滅亡に止まらず、世界滅亡へひた走る
250通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 13:30:30 ID:???
>>246
AAに迷い込んだときから確信犯のラクス・クライン。
実はあれ偵察だったんですの。
251通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 13:51:34 ID:???
>>248
それは皆が考えたあるべきアレックス・デュノの行動ではないだろうか?w
252通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 14:01:08 ID:???
>>248
最後はドンピシャリだけど他は当たらずとも遠からずって感じ
というか黒歴史というとちょっと違うなこれは良く考えたら

つか規制解けてるんなら考えてみようかなあ・・・
253通常の名無しさんの3倍:2009/11/07(土) 14:54:17 ID:???
>>246
種中盤で退場したトールが撃墜されるも首チョンパされず連合の秘密部隊に拾われ生き残り、
その際施された強化で記憶の大部分を失いながらも後にノワールとは別のストライク派生機に乗り、
種死にて連合のエースとしてキラやシンと戦う話。
254通常の名無しさんの3倍:2009/11/08(日) 01:58:39 ID:???
>246
種のラストの戦いでキラは生死不明となって
種死でブルーコスモスの兵士になっているお話
255通常の名無しさんの3倍:2009/11/08(日) 15:11:55 ID:???
>>254
昔あったなそんなネタスレ…、職人が居なくなって落ちたけどSSは面白かったよ
256通常の名無しさんの3倍:2009/11/10(火) 18:43:20 ID:???
ガンオケ緑をベースにした物語を考えたな
ヒロインはシン ヒーローがステラ
ボス 第五世代キラ
黒幕 セプテリオン
257通常の名無しさんの3倍:2009/11/11(水) 16:52:24 ID:???
>>256
昔クロススレがあったな
で第五世代キラは変身できるんですねわかります
258通常の名無しさんの3倍:2009/11/12(木) 18:22:35 ID:???
ラクシズがWW2にタイムスリップするやつ考えたな。
圧倒的超化学をもってるも補給とかがだんだん厳しくなってくるとか、
後半は試作に終わった変態兵器達がどっと出てきたりとか。
259通常の名無しさんの3倍:2009/11/16(月) 19:04:34 ID:???
もしCEの地球にラダムが来たら。

けどキラはテックシステムから排除されそうだな。闘争本能ないし
260通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 12:19:04 ID:???
もしも凸にシンが騙されてエ○ア88に行かされたら
261通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 12:28:58 ID:rjaxGOIX
荒々しいが腕は良く、気持ちのいい戦友達、
謎めいていて人使いは荒いが、能力は高くできない事は命じない上に、絶対裏切らない指揮官。

……アスランは優しいな。
ある意味、種死でシンが手に入れられなかったものが満載だぞ、あそこ。
262通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 13:29:26 ID:???
命令違反で銃殺刑がオチ
263通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 13:44:00 ID:???
要するにアスランに騙されてアスランに行く言いたかっただけちゃうんかと
264通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 22:00:08 ID:???
>>262
シンの命令違反って、基地破壊とステラ脱走以外に何かあったっけ?
なんか、「上官に歯向かう生意気なガキ」が巡り巡って「命令違反常習者」に変わっている気がするんだが
265通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 22:36:27 ID:???
>>264
>シンの命令違反って、基地破壊とステラ脱走
利敵行為と上官の指示無視で銃殺は確実
266通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 23:03:13 ID:???
最初からハイネが上官だったらどうなったろうか
267通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 23:37:07 ID:???
ザクレロさんー
規制に巻き込まれちゃったのかなあ
268通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 02:42:36 ID:???
>>265
そんな事を言ってたら、種の作品で生き残れそうなキャラって誰もいないんだが…
269通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 08:53:47 ID:???
銃殺レベルはせいぜいキラのラクス返却くらいじゃね
脱出ポッド回収で銃殺になるとは思えんし
270通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 09:00:35 ID:???
そういや、なんで合流したときにラクスを事務次官の艦に移送しなかったんだろう?
271通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 09:02:01 ID:???
ああ、ごめん、かいた直後に展開を思い出したw
無理だw


もうちょっと合流が早ければ……
272通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 09:08:37 ID:???
もし合流がもっと早く、ラクスがさっさと移送されてれば
パパが死ぬことはなく、フレイはキラを焚き付けたりしなかっただろうな
そしてラクスは外交のカードにされる
273通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 09:55:33 ID:???
>>269
あとは(結果的に)脱走→数々の利敵行為くらいか
その後はただのテロリストだから軍規違反の銃殺刑はないわな
274通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 10:10:36 ID:???
>>269
ヘリオポリスの破壊とかじゃね?
生きていたら処分する気満々だったし
275通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 18:32:08 ID:???
>>273
テロリストというか交戦資格の無い非正規戦闘員だろ
脱走しただけで除隊手続きを取っていないから軍籍に居ることになるので
連合に捕まれば、脱走罪で銃殺
ザフトに捕まえれば非正規戦闘員なので銃殺
276通常の名無しさんの3倍:2009/11/22(日) 02:30:22 ID:77OKR3gD
インフルエンザで熱にうなされていて夢で、アスランが種死後の世界で死刑になって死んで目覚めたら種死の最初だったという話しの夢を見た。取っ掛かり易いのですがアスランマンセーになりそうなのが辛い
277通常の名無しさんの3倍:2009/11/22(日) 02:48:37 ID:???
>>276
寧ろそこは種からやり直した方が……生え際的に
278通常の名無しさんの3倍:2009/11/22(日) 03:08:53 ID:???
小ネタというか、運命にグフ落とされた後にヘリオポリスから人生やり直すハメになった・・・
と思ったら運命がストライクの援護始めてオワタみたいなのは書いた事ある
連ザIIネタなんだけどね
あとこれはキラの話なんだけどシナリオを持っていて人生がそれ通りにしか進まない、
どうやってもシナリオ通りの事が起きてしまうってのも書いた事ある
で、自由を落とされた所で人生がリセットされてまたヘリオポリスからやり直しみたいな
それを気の遠くなる回数繰り返した挙句、シナリオを破り捨てて無限ループからの脱出を図る
しかしシナリオを持っていたのはキラだけではなかった・・・というバッドエンド
279通常の名無しさんの3倍:2009/11/22(日) 19:46:38 ID:???
某スレを見ててふと思いついたんだが、

もしキラとクルーゼの立場が逆だったら

短命の宿命にもめげず、せめて自分の生きた証を残そうと、
ヘリオポリスで教師として子どもたちに未来を託そうとするクルーゼ。
一方、プラントでは人口対策のためスパコディ技術を掘り起こそうとしており、
親の欲望に塗れた自らの出生に嫌悪を抱くキラはこれ以上キラ・ヒビキを産み出さない為、
そして望もしない能力を与えた親への意趣返しとして人類の粛清を決意する…
280通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 05:35:20 ID:???
>>279
アルがクルーゼで失敗したのに懲りてムゥとクルーゼを分け隔て無く育て
一方、資金難で成果無く終わったヒビキ家は父は飲んだくれ母は姉をつれオーブの首長と再婚、兄貴は嫌気が差し家出し音信不通、そんな普通のコーディネーター次男キラ
281通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 05:48:09 ID:???
>>280
そんな状況で戦争開始しヘリオポリス襲撃でストライクに乗り「ナイスな展開だぜ!」と暴れてヘリオポリスの市街地を破壊しムゥとクルーゼのゼロにあっさりと捕まりAAへ連行
以後、ラインバレル

そんな展開を幻視した。
282通常の名無しさんの3倍:2009/11/24(火) 01:11:59 ID:???
規制解けてたらSS書く!


ウソです、ガリください
283通常の名無しさんの3倍:2009/11/24(火) 01:17:25 ID:???
>>282
\   、 m'''',ヾミ、、 /   
  \、_,r Y  Y ' 、 /';,''    
  、 ,\ヽ, | | y /、 ,;;,,'',  
  \、\::::::::::/, /,, ;;,    
   ヽ\ o 、 ,o / { ;;;;;;;,,    
   丿 [ \|:::|/ ]  >"'''''  
    >、.>  U   <,.<        
  ノ  ! ! -=- ノ!  ト-、       
..''"L  \\.".//_ |   ゙` ]
284通常の名無しさんの3倍:2009/11/24(火) 19:22:09 ID:???
つガリ
285通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:46:26 ID:???
前々から考えていた種死再構成をついに着手してみたいと思います

継続は力なりの精神で行けば最後まで書けるって説を僕は信じたいですね。
それでは投下してみます。
286 ◆bVOuBxgLck :2009/11/25(水) 00:47:45 ID:???
 人が夢の中でそれが夢だと気が付くことはごく稀であろう。
だが、その少年はこれが夢だと明確にわかっていた。
……なぜなら、これと同じ夢を少年は何度と無く見ていたからだ。有り体に言えば『慣れ』ていた。
右腕から先の無い妹。ボロ雑巾のようにズタズタに打ち棄てられた両親の体。
周りから立ち込める舐めるような火炎と鼻が潰れるような硝煙の悪臭はとても夢とは思えないような現実感をかもし出していた。
――そうだ、忘れられるもんか。
足元から湧き上がるような壮絶な悪寒から逃げるように、少年はベッドから飛び起きた。

「――っ」
体を起こした少年の体は冷や汗で浸り切っていた。幾度と無く見てきたとはいえ、受けた現実の前には体は正直にならざるを得ない。むしろ叫び声を上げなくなっただけましになったというべきか。
「……5時、か」
今日は特別な日とはいえ、起きるには多少早い時間ではある。が、シャワーでも浴びなければ眠ろうにも眠れないし、そもそもそんな気分になれなかった。
ベッドから足をおろして立ち上がると、少年は相部屋の同僚に声をかけた。
「シャワーを浴びてくるよ、レイ」
レイと呼ばれた金髪の少年は横になったまま顔だけシンの方を向いた。
「わかった。……また例の夢か?シン」
「ああ。迷惑をかけるな、レイ」
シンと呼ばれた黒髪の少年は、赤い瞳をした目を下に降ろして済まなそうに言った。
「気にするな。すぐ戻ってくるのか?」
「いや、せっかくだからアレをやってくるよ。今日は隊長も帰ってくるんだろ?」
「だろうな。まさか母艦の進水式に帰ってこないとは思えん。デュランダル議長もいらっしゃると聞いた」
「なら、少しでも練習しておかないとな。どのみち日課だしな」
アレをやったらまた汗をかきそうだが――と思ったが、レイは軽く笑みを浮かべながら言った。
「了解した。なら早めに行ってきたほうがいい、風邪をひいては事だ」
「そうだな。じゃあ行ってくるよ」
シンはそう言うと、部屋を後にした。

――時はコズミック・イラ73年10月、戦乱がまた訪れようとしていた――
287通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:48:27 ID:???
 9時を回り、艦内の食堂に人が集まり始めた頃だが、シンの姿は見えなかった。
「あいつ、一体何やってるのかしら。何か知ってる?レイ」
レイより1つ年上の紫の髪をした少女、ルナマリア・ホークが尋ねる。
「朝早く起きてシャワーを浴びに行くと言って出て行った。もしかしたら早いうちに朝食は摂ってしまったのかも知れないな」
レイは喋り終えると淡々と卵焼きを口に運ぶ。特にシンの行動について干渉する気はないらしい。
「だとしたら、あいつ朝からずっとあそこにいるわけ?いくらなんでもそんなんじゃ式の前に疲れきっちゃうじゃないの」
ルナマリアは呆れたように息を吐きながら言った。
「シンが鍛錬バカなのは今に始まったことじゃないじゃない、お姉ちゃん」
「そうだぜ、気になるなら止めてくればいいさ」
「そうそう」
艦の管制官であるメイリンとメカニックのヨウラン、ヴィーノが口々に続けた。心なしかその口元はにやけている。 
「な、なんで私が!」
「いいからいいから」
「……」
何故だか猛烈に反論したい所ではあったが、何はともあれ心配なのは事実だったので渋々足を向けた。

「ああ、やっぱりここね……いったい何時間やってるのよ」
ある艦内の一室にあるMS戦のシミュレータをシンは一心不乱に行っていた。入ってきたルナマリアにも気が付かないあたり相当に集中しているのだろう。
「くっ…そこっ!でやぁ!はあっ!」
シンが操る『ザクウォーリア』がディン3機とゲイツR1機を相手に必死で応戦している様が画面に映されている。
(……こうして客観的に見ると危ない人みたいよね。まあ仕方ないけど……)
「もらった!……よしっ!やっと勝った!」
WINと画面に表示が出ている。どうやら苦戦しながらも勝利はしたようだ。
「おめでとう、シン」
呆れ顔をしながらルナマリアは拍手を贈る。シンはぎょっとして振り向いた。
「な、なんだルナいたのか」
「いたのか、とはご挨拶ね。ちゃんと朝食は摂ったの?」
「食べたよ。もっとも、シャワーはもう一回浴びなきゃいけないな」
そう答えるシンの顔は汗でだくだくである。
「やっとレベルMAXを倒せたんだよ、もっともギリギリだけど。あの人のプログラムはやっぱり強いや」
そう自慢げに答えるシンの顔はとても嬉しそうであり、ルナマリアもつられて顔がほころびそうになった。
(こうして見ると猫みたいね)
とはいえ、この無邪気な顔の裏にあれだけの過去を内包していることを考えると、複雑な気持ちにならざるをえなかった。
「それで、何か用?ルナ」
「あ、えっと。シンもそれなら一段落着いたんじゃない?なら、進水式の前に息抜きに外に出てみない?どうせしばらくは戻ってこないんだから」
この新鋭戦艦『ミネルバ』はこのプラントの軍事基地アーモリーワンを今日出てからしばらくは各プラントの周辺を警備する予定になっている。またここに戻ってくることは少なくとも1年はないであろう。
「そうだな……でもこれであの人ともマシに戦えるかもしれない自信もついてきたし、いいよ。じゃあシャワー浴びて準備してくるよ」
「わかったわ。メイリンはもう艦橋に行っちゃったから無理っぽいけど、ヨウランとヴィーノには声かけておくわよ」
「オッケー、んじゃ行ってくるわ」
そう言うが早いか、シンは部屋を駆け足で出て行った。
「……本当、直球な子ね。まあそこがあいつのいいところなんだけど。
……そういえば隊長遅いわねえ。艦長は議長に呼ばれたみたいだし、それと合流しているのかしら?」
ルナマリアは頭をかきながら、詮索しても仕方ないという風に部屋を出た。
288通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:49:10 ID:???
 一方で、プラントの現議長デュランダルが進水式の儀を進めるために貴賓室に腰を据えていた。
そこに聞こえてきたノックに議長はSPにドアを開けるよう促し、外から軍服を着た青年が入ってきた。
青年は黒いニット帽とサングラスを装着していて、明らかに怪しい風貌であるが、その事について議長が言及する様子はなかった。
「アレックス・ディノ、参りました」
敬礼を行い、直立不動で議長の下知を待つ。
「よく来てくれた。例の機体はどうかね?」
「9割方完成しました。後は宇宙用にバーニアやバランサーの調整を重ねるだけのようです」
アレックスがしばらくミネルバに顔を出していないのはそちらの製作に顔を向けていたからであった。
「そうか。それでは、早速だが君には頼みがある。これからオーブの代表主席と非公式で会う。名目は我らが受け入れた技術者について、だ」
「そうなのですか?」
とぼけた様に言うアレックスだが、眉が僅かに動いたのをデュランダルは見ていた。
「お付きの護衛と技術仕官を一人ずつの3人で来る。だからといって別に何をしろとも言わない。あえて言うなら私の護衛とでも考えてくれればいい」
……まったく議長も人が悪いな。
サングラスの下の目線がやや細まったが、表情には出さずアレックスは答えた。
「わかりました」
「よろしい。それでは彼らを別室に待たせているから、これから呼びに行かせよう」
しばらくして、招かれた3人が部屋へと入ってきた。まだ幼さを残した女性、護衛役と思しき厳つい体躯の男、そして技術仕官の作業着と帽子、眼鏡をかけた少年。
「オーブ首長国連邦の代表主席、カガリ・ユラ・アスハだ。この度の会見を受けていただき、誠に感謝している」
「レドニル・キサカ一佐です」
「ソラ・アマチです。技術仕官をしています」
彼らの自己紹介を受けて、アレックスは一瞬だが目を見開いた。
289通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:49:52 ID:???
(・・・本当に人が悪いですよ、議長)
いささか呆れ気味だったが、幸い向こうはこちらに気がついていないようだし特に口を開く必要はなさそうだ。
「ようこそ、プラントがアーモリーワンへ。デュランダルです。こちらに控えているのは私の護衛たちです。……それでは、本題に入りましょうか」
「話が早くて助かる。わが国民の受け入れに協力していただき、誠に感謝しているのだが、最近になってその技術者の軍事技術者としての雇用が著しいと聞いた」
議長はあたかもそれを聞いて悩んでいるようなポーズを置いた。
「そうですか……その情報の出所はわかりませんが、そのように彼らの技術をお借りしているのは事実です」
「わが国としては、そのような形で技術者を利用されるのはあまり喜ばしいことではないのですが」
「確かにそうかもしれませんが、彼らにも生活があります。それに、それぐらいの恩恵を受ける権利が我々にあってもよろしいかと思いますが、姫君」
「姫君はやめていただきたい」
「これは失礼。しかし、別に軍事ばかりに専心していただいているわけではないのですよ、代表。ここで話を続けるのもなんです、その様子を見学いただきながらご説明致しましょう」
「……」
カガリは煙に巻かれたようで釈然としない様子だったが、反論の種も特に持たないので大人しく外に出た議長に続き、他護衛たちも後を追った。
290通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:50:34 ID:???
 進水式場周辺はなかなかの賑わいを見せていた。ミネルバはプラントの軍艦の中でも最新鋭のものであるため、それを見に来ようとする民間人も多く、そういう人を狙った商店がここぞとばかりに啖呵を切っているのだ。
「なかなか目を引くものが多いわねー」
「軍服のレプリカとかも売ってるのな。当事者としてはなんだか面白いな」
ルナマリアの言葉にヨウランが継ぐ。シンはヴィーノとあれこれとメカについて話し合っていた。
「だから、あのゲイツRのレールガンがだな…うわっ!」
横向きに歩きながら語り合っていたせいで、シンは横から出てきた少女とぶつかってしまった。
「え・・・」
「あ・・・」
シンは背面から少女を抱きとめたのはいいものの、その手の位置がまずかった。さらに悪いことには、ルナ(とヨウラン)は前を歩いていたため自然とこちらを正面から見る形となる。
つまりは、シンの手が少女の胸元を見るも見事に包んでいた。
「ゴ、ゴメン!本当に!」
「……大丈夫。ステラ、気にしてない……」
そう言い残して少女はふらふらと去ってしまった。シンは追おうとするも、もっと重大なことがあると気が付いて首をギギギと後ろに向ける。
「なんだよシン、このラッキースケベ!」
「シーー…ンーー…!」
その場にそぐわない明朗な野次を送るヨウランと何故か異常に闘気を纏わせているルナマリアの対比が、シンにこの場にいてはまずいという警告を感じ取らせた。
「じ、事故なんだって!ほ、本当に!」
「待ちなさーい!」
本当に事故なら逃げる必要はないのだが、シンの心は未だかつて無くヘタレていた。
「取り逃がしたか・・・まったく!後でとっちめてやるんだから!……何よ!?」
「「い、いや何でもないです!」」
2人でクスクス吹き出しているヨウランとヴィーノにルナマリアは半ば八つ当たりのように当り散らすのだった。
……シンの奴にあとで一発入れてやる、と2人は内心で誓った。
291通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 00:51:19 ID:???
「こちらが、格納庫エリアです。代表、そして技術仕官の方」
デュランダルが到着した区画を説明していく一方で、ソラと自己紹介した技術者はその説明を熱心に聞きながらなにやら考え事をしていた。
「言い訳に聞こえるかもしれませんが、連合とは停戦しているとはいえ未だパワーバランス的な状況は予断を許しません。だからこそ、われわれは自衛のための力を持つ必要があるのです」
「そこに力があるからこそ、力を呼び寄せるのではないのか?議長」
「それは理想論です。争いはなくなりません。だからこそ力が必要なのです」
「だが…」
それに言葉を返そうとした瞬間、遠方で轟音が轟いた。同時に警報が鳴り響く。
「何だ!?」
アレックスとソラ以外が体勢を崩す中で、デュランダルが直ちに状況報告を要請した。
手持ちの回線にすぐさま緊急報告が入る。
「あ、アビス、カオス、ガイアの3機が強奪に遭いました!!」
「何だと!?」
その場にいる全員に緊張が走った。

今日この地より、再び戦端が開かれようとしていた。
292 ◆bVOuBxgLck :2009/11/25(水) 00:57:41 ID:???
投下終了。

コンセプトは
・シンが主人公
>>247
です。

ガンガンNEXTで運命とインパが良機体で歓喜してる一シンスキーですが、よろしくお願いします。
293通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 01:12:01 ID:???
GJ!
かっこいい凸だと?
ありえんw
294通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 01:38:23 ID:???
>>292
大化けしてホントにかっこいいアスランになる事もたまにはあるもんだ。
今後の展開と二年間の種明かしに期待。
ところでメインタイトルやサブタイトルは何かお考えですか。
295通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 06:58:26 ID:2sTPdZgf
GJです。私も仁とディケイドを見てアスラン自体が死ぬ→種死の頭で(未来を知った状態で)目を覚ますというチートアスランの話しを考えてましたが、また、新人の方に書いて見ます
296通常の名無しさんの3倍:2009/11/28(土) 10:49:57 ID:???
もし種のMSに超AIと喋るコンピュータが詰まれていたら
297通常の名無しさんの3倍:2009/11/28(土) 21:20:05 ID:???
それ8を積んだレッドフレーム(あるいはアウトフレーム)じゃん
既出
298通常の名無しさんの3倍:2009/11/30(月) 21:42:55 ID:???
昔そんなネタスレを見たことがあるな。
機体交代劇になかなか良いネタが揃ってた。
299通常の名無しさんの3倍:2009/11/30(月) 22:03:45 ID:???
それレイズナーでもうやってる
隠しAIのフォロンが駄々こねてニューレイズナーに移ろうとしないんだ
300通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 02:59:14 ID:???
もし種終盤でのジェネシスによる地球狙撃が成功して、結果が綺麗なオーロラが観測されるだけで終わっていたら

ジェネシスによる被害の試算出したエリカはとりあえず首だな。
301通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 17:08:36 ID:???
もしアスランが種最終話から種死第一話までの間に武士道に目覚めてたら
302通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 18:15:06 ID:???
私はアスラン・ザラではない!
チョンマゲ・ディノだ!
後、禿げているんじゃない!剃っているんだ!
303通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 21:56:03 ID:???
切腹して果てるだろ
それとも「生きる方が戦いだ!」という台詞を思い出して苦悩するか?
304通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 11:35:23 ID:???
種死がスーパー戦隊だったら…


取り敢えずミネルバが変形する
305通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 12:57:24 ID:???
動物型支援メカがストライカーやシルエットに変形する
306通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 18:59:07 ID:???
>>304
ミネルバが変形したらキングジェイダーと見分けがつかない気がするw
307通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 19:09:14 ID:???
「クイーーーーン!、ミネルヴァアアアア!!」
308通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 19:32:32 ID:???
もし種死時の議長がカナーバだったら
309通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 20:08:42 ID:???
おそらくフラントが滅ぼされて終わる
Nスタンピーダーの用意が間に合わずに核攻撃で消滅
あのへんをギリギリ間に合わせたのはデュランダルの采配だろうし
310通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 21:18:57 ID:???
あのとき「こんなこともあろうかと」とかなんとか
デュランダルが言ってたような気がするのは気のせいだろうか
気のせいか。違う番組になっちゃうもんな
311通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 23:41:31 ID:???
 そ れ だ

アークエンジェルのクルーがヤマトのクルーだったら
最後に反物質のラクスがジェネシスに体当たりしてあぼん
312SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:43:56 ID:???
昨日の代理投稿をされた方、大変ありがとうございました
返事が一月近く遅くなってしまいましたが。

313SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:44:44 ID:???
「その程度の腕で勝負をつけようと云うのか!」
「!」
刀を両手に持って、セイバーは動きを止めた
バルカンで牽制しながら、ダガーが急襲をかける
「早い!?」
左手で予備のサーベルを投げ来る
「やられる!」
サーベルを即座に避けると、袈裟掛けで切りかかる
「甘い」
ダガーの右手首を切り落とすと、サーベルを格納し
仁王立ちしている後方のMSに放り投げた
右手を挙げて
「全軍撤退の指示を出せ」
その刹那、前方が光った
「しまった」
314SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:46:41 ID:???
「全車両、敵方面に向けて射撃、順次撤退準備」
連合のMS、装甲車、戦車から砲撃が来る
(しまった!)
「撃つな、やめろ!」
それでも爆風と炎が迫って来る
「お前達の装甲じゃ、戦車砲弾は完全に防げないぞ!」
砲弾の1発が友軍のジンの一機に直撃した。幸いコックピットではなかったが
「おい、銃を少し借りるぞ」
ジンのマシンガンを2丁獲ると交互に打ち始めた
「俺がおとりになる、飛べる奴は飛んで逃げろ!」
真上にダガーが数機、ジェットストライカー付きだ
(不味い)
携帯火器だけを狙って破壊すると変形して牽制をかけることにした
「俺はこっちだ」
高速でダガーの間をすり抜けると、低空で戦車と装甲車に威嚇射撃を加える
「アイザック、全員で逃げろ。俺は後で合流する、30分待ってこなかったら捨て置いてくれ」
太腿にに付けたマップケースから地図を出して確認すると
「X地点で合流だ」
敵陣へ前進を続けた
315SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:47:46 ID:???
「赤い機体の奴、何がしたいんだ?」
戦車兵はハッチを開けると、双眼鏡で観察しながらつぶやいた
「綺麗に武器だけ壊して……まるで、オーブのヤマト将軍の戦い方そっくりだぜ」
「戦車長、どうします」
下から声が聞こえた。
「煙幕張って退却だ、損害は」
「わが隊の戦車3台中破、8台小破、人的被害は0です」
「キテレツな頭してる野郎の相手はしてられんな」
戦車部隊は歩兵を伴って後退し始めた。後からMS隊が続く
「対空防御怠るなよ!」
砲は敵方を睨みつけながら奥へ消えていった
316SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:50:39 ID:???
敵を適当にあしらうと、集合をかけたX地点に向かった
合流して残った人数を確認しなくては……
今までチームを組んだ連中とは違ってザフトレッド(赤服)でもなく、アカデミーも出ているか判らない連中だ
何分、不安だ。イザークやディアッカとは違って「半端者」……
(あいつら大丈夫か?)
近づいていくとMSの数は来た時と変わってはいない。
見た限り、2、3機運用できるような状態ではないが……
セイバーを変形させて着陸すると、コクピットから降りた
「全員無事か?」
顔を見合わせると、将校の一人が殴りかかって来た
「この馬鹿野郎」
鉄拳を躱すと逆に肘鉄を入れて打倒した
「何のつもりだ」
下に組み敷かれた男がつぶやいた
「何がしたいんだ、アンタは!フェイスだって笑わせてくれるぜ」
「任務も全う出来ない士官が言える言葉か!」
他の兵士達がこちらに向かって睨んでいる
「今日は勘弁してやるが、次は無いぞ!銃弾は前からだけじゃないからな」
一瞬であったが背筋に何か冷たいものが走るのを感じた
「アイザック、こいつ等は全員再教育物だな。ナチュラルの傭兵の害はここまで続くか」
水筒を出して飲むと
「5分後に出発だ。動けないMSは自爆させろ」
317SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:55:12 ID:???
「俺はつくづく信用が無いらしいな」
水筒を飲みながらアスランは呟いた
(キラ、お前達が居ればこういうこともあるまいに!)
「軍団長どうかしましたか」
アイザック・マウが慎重に訪ねて来た
「なんでもないさ。君も君だ、年寄りの独り言につきあう義理はなかろう」
「………、失礼しました」
「まさか、夜襲なんてなかろうが、わが軍が、今の練度のままで、夜襲をされたら一溜りもないな」
そんな独り言に笑いながら返してきた
「ナチュラルは夜襲をかけるほどの気力は無いと思いますよ。どうせここの現地人は闇夜兵隊が出歩いて略奪すらしないほど臆病ですし」
「だと良いな」
日は傾き始めていた
318SEED 戦後30年目の愛:2009/12/06(日) 02:56:05 ID:???
続く

319通常の名無しさんの3倍:2009/12/08(火) 12:38:57 ID:???
もし種のストーリーが宇宙戦国時代だったら

正史
153   :ザンスカール戦争、宇宙戦国時代が本格化
     :民間、退役軍人を中心としたイルミナーティの前身となる組織が発足
196   :連邦内のMS開発部門「セイバー・チーム」が量産機フリーダムをロールアウト
200前後:秘密結社イルミナーティが発足、各コロニー間の調停役、警護団としての活動方針を決定
     :セイバー・チームがイルミナーティのMS開発を始める
215前後:連邦軍、MSブグをロールアウト。フリーダムは一線を退き、民間や各サイドへ払い下げ
217   :連邦の強行政策に反発した各サイドに対し、連邦軍が制圧を開始
     :各コロニー駐留軍との高烈度紛争に発展
218   :地球連邦が事実上崩壊。スペースコロニーがスペースセツルメントに改称
      地球政府と親地球派サイド2、3、5、7がセツルメント国家議会(CONSENT)を形成

      月およびサイド1、4がセツルメント自由同盟を結成、どちらにも属さない独自組織もある
旧地球連邦軍はそのままセツルメント国家議会軍へと移った

223   :セイバーチーム、フリーダムのカスタム機FセイバーとGセイバーをロールアウト&運用試験。G2セイバー大破
     :議会軍、無人MS・通称「モビルウェポン(MW)を開発
     :セイバーチーム、次世代MS「Iセイバー」ロールアウト、イルミーナーティに量産配備される
     :ガイアの光事件。サイド8ガイアへ議会軍が侵攻、イルミーナーティの調停により事態は収束
     :サイド8独立
224   :議会軍がブグ2、セイバーチームがJセイバーをロールアウト
     :議会軍内でMW「レイブン」による反乱事件
      Gセイバー大破、Jセイバーのパーツを使ってG3セイバーとして改修する
      イルミーナーティの調停により事態は収束する
320通常の名無しさんの3倍:2009/12/12(土) 09:18:25 ID:???
ラクスがヤンデレだったら(ただし凸に対して)
321通常の名無しさんの3倍:2009/12/12(土) 16:02:17 ID:???
カガリの首筋一閃したりメイリンの中に誰もいない事を確認したりするのなわかります
322通常の名無しさんの3倍:2009/12/12(土) 17:24:40 ID:???
アスランの生首をカバンに入れて持ち歩いたりする訳か。
正直で良いな。違った意味で
323通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 00:20:22 ID:???
シーゲルとパトリックを始末したのは婚約解消にキレたからなんですね!
324通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 18:39:05 ID:???
キラVSラクスのデスマッチになりそう
325通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 21:25:27 ID:???
HAHAHAHAHA何言ってるんだ貴様等、
いくらヤンデレでもあの絶壁盆地大平原のラクスに言葉様の真似なんか
勤まるわけがないじゃないか、特に乳とか乳とか乳とかHAHAHAHAHA


…ん、携帯に呼び出しのメールが…



326通常の名無しさんの3倍:2009/12/14(月) 09:34:21 ID:???
>>325
じゃ、ミーアでOK
327通常の名無しさんの3倍:2009/12/14(月) 09:35:58 ID:???
もしもシンが擦れていたら

本編よりも味気ない&殺伐としてそう
328通常の名無しさんの3倍:2009/12/14(月) 09:50:30 ID:???
もしヘリオポリスの防衛戦力がザフト軍の一個師団に匹敵するものだったら
329通常の名無しさんの3倍:2009/12/14(月) 11:59:39 ID:???
>>328
MA五個師団相当の戦力か
多分、創設して維持する為の軍事費でオーブが経済破綻を起こす
あと、軍人+軍属+その家族でヘリオポリスの人口がやばい事になる
330通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 00:11:33 ID:???
おまえら職人無視して雑談かよ
331通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 00:38:06 ID:???
面白いと思った物にしかGJしない
読んでないSSもあるしな
332通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 19:46:51 ID:???
こうして過疎化は加速するのであった
333通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 20:35:50 ID:???
そして誰も居なくなった…
334通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 20:44:19 ID:???
まて俺がGJする!
335通常の名無しさんの3倍:2009/12/16(水) 01:44:40 ID:???
10日近くたってから突っ込むのも野暮だよね
336通常の名無しさんの3倍:2009/12/17(木) 22:27:57 ID:???
マユスレのファントムペイン戦記ってまだ続いてたんだな
337通常の名無しさんの3倍:2009/12/19(土) 17:32:57 ID:???
たまたまタイミングが有れば乙する、それだけのことよw


そして、記事だけ見ていると日付にまで目がいかない

作者諸氏に置かれてはめげないでがんばっていただきたいかと。
(よほど合わないのでない限り)ちゃんと読んでいるので
338通常の名無しさんの3倍:2009/12/25(金) 17:02:13 ID:???
もしも種系キャラに月光条例が発令したら
339通常の名無しさんの3倍:2009/12/25(金) 19:10:40 ID:???
ガンダムSEED空前の大ヒット!
第三期製作開始!
劇場版来春公開予定!



・・・となる
340通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 13:10:30 ID:???
>>338
あの漫画が始まった時点で
種はムーンストラックされてるというネタは出てたw
341通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 13:42:25 ID:???
種でアスラクラインとか……

キラ=部長は鉄板だと思う
342通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 18:19:15 ID:???
アスラン・・・?ラクス・・・?どちらでもない私はアスラクライン

なんかそんな感じ
343通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 18:36:11 ID:???
ラスクけらいん
344通常の名無しさんの3倍:2009/12/28(月) 00:18:11 ID:???
疲れてるんだ寝よう
345通常の名無しさんの3倍:2009/12/28(月) 18:12:31 ID:???
保守アゲ
346通常の名無しさんの3倍:2010/01/04(月) 22:54:14 ID:???
おいすー
347通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 04:13:40 ID:???
保守上げ
348通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 14:46:49 ID:???
もしアスカ一家殺しの犯人が凸だったら
349通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 20:06:12 ID:???
「まさかまだ避難してなかったなんて知らなかったんだからしょうがないじゃないか!!」
350通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 21:14:22 ID:???
「過去に囚われるな、シン!」
351通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 21:18:50 ID:???
>>348
嫁脚本だと、どちらにせよ無かった事にされそうだな
352通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 21:21:22 ID:???
アスカ一家なんて「い」なかった
353通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 21:22:18 ID:???
トリィのなくころに……って合わないな。
アスランがシンに謀殺されうるのかどうか。
354通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 22:24:31 ID:???
ガンダムSEED Distiny VxV

シン「地球連合総帥ビッグバン!
 ついに貴様との勝負をつける時が来たようだな!!」

ビッグバン「シン・アスカよ!よくぞここまで来たな!
 貴様こそ記念すべき567体目の獲物だ!!」

シン「チャージ3回フリーエントリーノーオプションバトル!!」
ビッグバン「チャージ3回フリーエントリーノーオプションバトル!!」

(中略)

ビキビキ…

シン「仮面が!?
 アンタは!…いや君は…右手だけになって死んだと思っていた
 妹のマユ!?」

マユ「奇跡的に一命を取り留めた私は
 お兄ちゃんの夢を打ち砕き!…苦境に陥ったお兄ちゃんを励ますために
 地球連合総帥になったの…」

シン「そういうことだったのか!?
 だが…それはそれ、これはこれ!!
 行けー!オレのフォース・ブラスト・ソード・インパルス!!」
355通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 22:46:58 ID:???
カブトボーグwww
356 ◆bVOuBxgLck :2010/01/10(日) 01:15:08 ID:???
ひとつ種を蒔くだけで結構レスがついてるんだな
職人がいないだけでまだまだこのスレも捨てたもんじゃないのかのう
357 ◆bVOuBxgLck :2010/01/10(日) 01:17:17 ID:???
アッーうっかりコテ付きでレスしてもうた^q^
それじゃー生存報告も兼ねて連休中に投下できる・・・といいなあ・・・

>>294
本当に今更ですが特にタイトル考えてないんですよね。
358通常の名無しさんの3倍:2010/01/10(日) 18:38:55 ID:???
もしSEED全体が戸田版カズマの影響を受けたら

    キラ「わかってるんですか?僕は作品神(フリーダム)なんですよ?
       『それでもぼくは……』しか言わない男だ」
デュランダル「ならば君は、この世界の行く末をどうするつもりだね?
        どうする?どうする?どうする?どうする?君ならどうする!?」
    キラ「覚悟はある。僕は戦う!!」
デュランダル「だから無理だってッ!!」


359通常の名無しさんの3倍:2010/01/11(月) 16:36:42 ID:???
どうする?どうする?どうする?君ならどうする〜
親父な俺はデンジマンを思い出したw
360通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 00:42:54 ID:???
>>359
つかそれが元ネタだと思うよ漫画版のアレは
361SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 00:51:56 ID:???
シン・アスカは日本軍に軍事通訳として志願し、特務少尉の待遇を受け、参加した。
家族を戦争で失い、愛する人を二度も目の前で殺された男は再び天涯孤独の身になった……
ザフトを退役して日本で教師として暮らしていた彼に戦争はもはや過去のものに思えた
すべては、禿頭の義兄、アスランザラによって変わった、――事実は兎も角――彼自身は少なくともそう考えていた
そんな思いに耽っていると仲間に声をかけられた
「アスカ少尉、起きてますか」
「大丈夫だ。ちょっと煙草吹かしてくる」そういって椅子から立ち上がり天幕を抜けだした
外はもうすぐ3月だというのに氷点下だ。
ポケットからゴールデンバット(日本タバコ)を取り出すと火を付けた
この寒さは、生まれ育ったオーブとは全然違う。もうあの国には30年も行っていないし、行きたくもない
父母の遺骨も結局不明なまま何処かに放置されたというし、そもそも墓すらない。
とはいってもザフトには居場所が無かった。オーブ出身でデュランダル議長派ということで因縁をつけられた。
麻薬常習者のレッテルをはられ、名誉除隊の形で軍から強引に除隊させられた。
アスランの縁者ということも大きかったのかもしれない。或いは子供が居なかった所為なのか……
(待てよ、俺がザフトを除隊した時はまだ独身だったじゃないか!)
「アイツさえいなければ、アイツさえいなければ俺は、今こんな事に為らなかったんじゃないのか!」
不意に天幕が開き、兵士が出て来た
「どうかしましたか、少尉」
どうやら言葉に出してしまったようだ……
「いや、なんでもない。寒いな、中はいるわ」
362SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 00:53:35 ID:???
「なんです、大尉もう一度言ってください」
シンは聞き返した
「この近くにザフトの補給所がある、そこを明日の晩、攻撃をかける」
「待ってください。俺はそんな話聞いてませんよ」
右手で大尉の服につかみかかる
「俺は偵察隊の軍事通訳としか聞いてません。軽装甲車とロケット砲で……何ができるんですか」
シンの手を振り払うと、大尉はおもむろに煙草を取り出し、火を付けた
「まだ何も話していない段階から弱気でどうする。君にはやってもらう仕事がある」
そう言うと大きな旅嚢を手渡した
「これは?」
「昔取った杵柄と云うだろう。君はちょっとその服を着て侵入してほしい。これは正式な軍事作戦としてだが」
渡された旅嚢ををゆっくりと開ける
「!!」
そこにはザフト軍服一式が入っていた。色はシンがザフト時代に着たレッドジャケット……名札はおろか帽子まで丁寧に有る
大尉は立ち上ってこう話しかけて来た
「君はすでに約28年前、プラントを去りザフト軍籍を捨て、国旗に宣誓し陛下に忠誠を誓ったはずだ。
過去がどうとか、コーディネーター云々は言うつもりはない。戦争にも参加したと聞く
後は任せた」
(《過去を捨てるんだ、シン》)
一瞬であったが、アスランがかつて戦場で叫んだ言葉が繰り返し聞こえたような気がした
「……」
(アスラン……)
大尉の姿がアスランの姿に重なって見える気がする……
その様子を見た彼はシンに物を放り投げる
「これは……、こんな物頂いても……」
「安物の葉巻さ。そいつを吸ったらすぐに着替えて行って来い。帰ってきたら熱いコーヒーでも飲もうな」

「どこからどうみても、《ザフト野郎》だな」
さっそく着替えたシンへの第一声だった
「ま、信じてるぜ」
そう言うと待機した数名の物とジープに乗って出発した
363SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 00:56:00 ID:???
同時刻 ―地球連合軍 前線基地―

「オーブ軍所属、キラ・ヤマト入室します」
白い手袋をして、軍帽を被り部屋に入った
ステンレスのマグカップを持ち、椅子に座った初老の男が立ち上る
連合軍中佐の軍服を着ているが、実際は元帥だった。後で聞いた話だと狙撃を恐れての為だと言う
「グリーンハウスだ。宜しくキラ・ヤマト君
君も紅茶でも飲むかね」
そう言ってマグカップとスプーンを並べ始めた
「結構です、閣下。明日の作戦開始についてですが」
男は立ち上りながら
「作戦開始時間は0500(五時)、装備は、マルチ(ストライカー)、ランチャー、ダブルホーン(ドッペルホルン2連装砲)、バスターダガー、
あと戦車と自走砲をかき集めておけ」
テーブルに有ったクッキーを弄りながらキラは答える
「アウトレンジ攻撃ですか」
「ああ、君ももう指揮官なのだから無茶はするな。あんなザフトの骨董品で変な芸当は飽きたよ」
(!)
思わず苦笑をしてしまった
「どうやら図星のようだね。まあ良い。明日五時に会おう」
そう言って彼は外側に手を振った。出ろの合図だ。
(……サザーランドの副官だけある。コーディネーターが嫌いなようだ)
「失礼しました」
敬礼をして去った。
(僕がオーブ人だからだろうか、今一つ信用していないようだ)
元帥なのに中佐の軍服を着ていた事が酷く滑稽に思える。
(随分意気地のない人だ)
クッキーを頬張りながら、部屋に向かった
364SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 00:57:17 ID:???
午前五時前、フリーダムを駆り、低空で近づくと大規模な車列が見えた
戦車隊だ。150両は有るだろうか。
MSの登場とNJによる電子通信網の破壊以降、その価値を無くしてしまったかのように見えたが、長距離攻撃に対しては未だまだ有効であった
機動性こそ劣るがMSの相互支援を利用すれば十分に戦略的価値の有る武器であった
無論既存車両の搭載砲の大口径化と装甲の強化が必須で有ったが。
そして彼等を支援する遠距離装備のMSと陸上戦艦……
「戦車が何をしようって言うんだ。ただ的になりたいのか?」
ふと、腕時計を見る。もう4時59分だ。
ゆっくりと高度を上げてその場から離れる
下からラッパの音が聞こえた。作戦開始の合図だ
「戦闘準備!」
戦車隊が一斉に仰角調整を始めた。MSが移動を止める
歩兵が手旗信号で指示を出す。「全車両、砲撃開始」
陸上戦艦からの指示が飛ぶと一斉に砲撃が始まった。
試射無しの直接射撃だ。
「Aチーム、この後の砲撃終了後に吶喊準備に書かれ」
この砲撃はさながらザフト軍へのモーニングコールだと言えるであろう
365SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 01:00:23 ID:???
太陽を背にして、バビとグフ大群がやって来る
(不味い)
フリーダムで急上昇をかけると一気にフルバーストをかけた
有効射程外での攻撃だが、効果は確実だろう……それに高射砲で支援が有るはずだ。
(……)
ライフルを腰にマウントすると、ビームサーベルを抜いて急降下した
「墜ちろ!」
バビ数機をビームサーベルで薙ぐ。
「フリーダム死ね」
グフが足をスレイヤーウィップで絡めてきた。
(!)
左手でウィップを切り、すかさずメインカメラを一突きにして蹴り上げる
そしてMS群の間に滑り込み、ライフルを構える
「うわー。フリーダムだ、各自散開……」
スラスターとコックピットを外して武装とメインカメラを一瞬で破壊した
「こんな連度の低い連中が、今のザフトか……」
爆発の寸前に、その場から離脱する
レーダーに新たな機影が映る
「アスラン、君は何がしたいんだ」
フリーダムは、なおも高速で次の戦闘機群に向かった
366SEED 戦後30年目の愛:2010/01/12(火) 01:03:20 ID:???
続く

ストライカーパックは極力本編で使用されてるものに限定しました
367通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 12:04:58 ID:???


ちょ、シン、それ 交戦者の資格がない、俗に言う便衣兵w
368通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 12:34:13 ID:???
便衣兵は兵士→民間人に化けることじゃないのか?
369通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 17:05:36 ID:???
所属する軍隊の軍服を着ていない兵士は兵士として扱わなくて良いって事だろいわゆる『捕虜になる権利』が無くなる
まあシンがこれからする事はスパイなんですがね
370通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 17:07:47 ID:???
所謂明けの砂漠みたいなものか?
371通常の名無しさんの3倍:2010/01/12(火) 18:36:01 ID:???
ドイツのグライフ作戦みたいなものだろうか
372通常の名無しさんの3倍:2010/01/14(木) 23:02:29 ID:???
史実の作戦は兎も角、なりすましってひどい結果になりそうな気がする。
373通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 21:53:14 ID:???
「もしキラが世界に宣戦布告したら」 で投下します
374通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 21:54:30 ID:???



それは、ありふれた式典だった。


白の軍服に身を包み、キラは空を見上げる。
風が自分の身体を柔らかく包み、以前よりも長く伸びた髪をなびいた。
いい天気だ。

ここは地球のとある都市。
前の大戦で、連合とザフトとの凄絶な戦闘が行われた場所のひとつ。現在世界に平和を訴えかけるための式典が行われている真っ最中だ。
尤もラクスの演説も既に終わっているので、自分たちがする事は大して残っていない。
キラは来賓席に座ったまま、誰にも気付かれないようにあくびを噛み殺す。
吹奏楽の演奏も終わり、ラクスが再び壇上に立った。それと同時に軍の関係者らしき女性から1人の少女が花束を受け取る。
花束の贈呈か。確か終わりに近かった筈だから、だったらもうそろそろこの式典も終わるだろう。
ラクスと同じくピンク色の髪。年は5,6歳くらいだろうか。幼い頃のラクスはこんな感じだったのかもしれない。

司会者の紹介の後、花束を持った少女が嬉しそうに駆け寄って行く。
幼い声がこちらまで聞こえてきた。

「らくすさま、おはなをどうぞ!!」
「ありがとう。綺麗で、いい匂いがしますね。貴方のお名前は?」
「わたしもらくすっていいます!!」

少女の方もラクスという名前らしい。年齢的にこっちのラクスにちなんだのかは微妙なところ。
まあ宇宙も広い事だし、名前が一緒なんてのはよくある事である。

「まあ、わたくしと同じ名前なのですね?」
「はい! でもわたし、らくすさまみたいにおうたがじょうずにうたえないの」
「そうなのですか?では今度一緒におうたの練習をしましょう」
「ほんとう? いっしょにうたってくれるの?」
「ええ、約束です。今度時間を取って、いえプラントへご招待しますわ」
「わあい!」

まるで本当の姉妹がじゃれている様な微笑ましい光景。それを見ていたキラも表情を綻ばせる。
まったくラクスときたら、いくら子供好きだからって安請け合いしちゃって。
お互いに多忙のため自分たちの子供はまだ後だと考えていたが、あんなに喜ぶのなら今度話し合ってみようか。

デュランダル議長を倒しラクスが議長に就任しても、世界には未だ争いが絶えない。
だが今だけはそのことを忘れてもいいんじゃないだろうか。
愛する女性と守るべき子供たちがただ幸せに微笑んでいる。この光景はまさしく平和と呼ぶに相応しい。
そうだ、これが自分が求めていたものなんだ。
力なんていらない。決められた運命なんていらない。ただ、笑顔さえあればいい。
苦難を乗り越えてようやく得たこの時間を、キラは今噛み締めていた。
375通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 21:56:34 ID:???


――――花束の中にある黒い影。それを見つけるまでは。


咄嗟に周囲を見渡す。さっき少女に花束を渡した、あの女性の姿が無い。
嫌な予感。いや、確信。
彼女たちに向かって走り出し、叫んだ。

「ラクス!!」

血相を変えたキラの様子にようやくラクスも花束の中に気付いたのか、その表情が凍った。
咄嗟に花束を放り投げて少女に覆いかぶさる。

そして、爆発。

キラの体を轟音と熱風が通り抜けていく。目が眩み、耳もよく聞こえない。
だがそのまま無事な彼女の姿を求めて歩き出し―――

そして、見つけた。見つけてしまった。
血だらけで横たわる彼女の姿を。

「ラクス!!」

急いで駆け寄る。力を失った彼女の身体が赤く染まっていた。
腕の中の少女に外傷は無い。彼女がその身を盾にして守ったのだ。
きつく抱き締められた少女をラクスから離して、彼女を揺さぶる。

「目を…目を開けてくれ!!」

彼女は動かない。身体にも力が入っていない。ただ、今にも途切れそうなか細い呼吸を繰り返すだけ。
喋っている自分とは別の冷静な自分が、もう手遅れだと判断している。

嘘だ。
なんだこれは。

「あ……キ…ラ……」
「ラクス!!」

意識を取り戻した彼女を抱きかかえる。
白服に血が付いたが気にしない、そんな事よりも今は彼女を。

「あ…の……娘は……?」

こんな時まで他人の心配をするラクス。彼女らしいと言えばらしいが、今は余計だった。
安心させるように優しく話しかける。頼むからもう動かないで欲しい。
でないと、こぼれてしまう。
376通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 21:58:00 ID:???

「大丈夫、君のおかげで怪我一つ無いよ。それより喋っちゃダメだ。すぐに医者を連れて来るから…」
「良か…た…」

笑顔を浮かべてくれたが、逆に不安になるような笑顔だった。
いつもと変わらず、いやそれ以上に美しい笑みではある。だがその笑顔には何処か儚いものを感じるのだ。
まるで蝋燭が消える最後の瞬間、眩しく輝くような。

「キ…ラ……こふっ」
「ラクス!! ダメだ、しっかりするんだ……何をしてる、医者はまだか!?」

苛立ちまぎれに周囲の人間に怒鳴りつける。だが医者らしき人間が近付いてくる様子は無い。
こうしているうちにも彼女の容態がどんどん危険な状態になっていくのが嫌になるほど理解できた。

「はぁ、はぁ、キラ…」
「喋らなくていいって言ってるだろ!!」
「キラ…お願い…です…ど…うか……世界…を……」
「ラクス!? そんな事を言っちゃダメだ!!」

自分の手を握り遺言のような言葉を吐く彼女。いや、実際遺言なのだろう。
だがそんな事を自分は認めない。
認めたくない。

「平和を…自由を……争いの無い世界を…」
「もういい!! 言わなくていい!! 君のそんな言葉聞きたくない!!」
「キラ……」
「いやだ…」
「お…願いです…」

手を握る力がなくなっていく。縋る様なラクスの瞳。
頷くことなんてしたくない。するわけにはいかない。そんな彼女の死を受け入れる様な事をすれば、間違いなく彼女は帰ってこなくなるだろうから。
だけど。彼女のこんなに弱い目を、初めて見てしまっては。

「貴方…が……」
「わかった、わかったよ!! 争いの無い世界、僕が作る。約束する。だから!!」

その言葉を聞いて、ラクスは微笑んだ。そして力を失った手がキラの掌からすり抜けていく。
377通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 21:59:12 ID:???
ありふれた三流ドラマのような光景。
あまりにもベタすぎて、そのうち誰かが「これは冗談だ」と言い出すのではないかと思うくらい。
だが、これは紛れもない現実で。

「ラクス?」
「………」

揺さぶる。身体に力が入っていない。
揺さぶる。瞳は開かない。
揺さぶる。呼吸もしていない。
揺さぶる。
揺さぶる。


いやだ。認めたくない。


「ラクス? 起きなよ。何してるんだよ」
「………」
「ラクス。みんないるんだよ? 僕達を見てるんだ。寝てる場合じゃないよ」
「………」
「わかった、もう十分驚いたよ。冗談なんだよね? 周りの皆も仕掛け人なんだろ?
 何処かに隠しカメラとかあって、これは良くできた血糊で。そうなんだろ? ……そうだって、言ってよ」
「………」
「ラクス、起きろよ。起きてくれよ。こんな所で寝てたら、風邪引いちゃうじゃないか。
 ほら、もうこんなに冷えて……」
「………」

「……う、うぁ…うああ………」

彼女の身体をきつく抱き締める。
何故だろう。今日はこんなにいい天気なのに。
陽の光がこんなに暖かいのに。
何故彼女の身体はこんなに冷たいんだろうか。


「うああああああああっっっ!!!」


なんで。こんなに。


378通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 22:00:36 ID:???

夕日で赤く染まる病院のベッド。身体を清められたラクスが眠っている。
先程まで多くの人間が出入りしていたものの、気を利かせてくれたのか今は2人きりだ。
アスランも来てくれていた様な気がする。何を喋ったか、よく覚えていないが。

あれから片時も彼女の傍から離れなかった。
何度も彼女の名を呼んだ。結局、何も変わりはしなかったけれど。
薄く化粧を施された彼女の顔を見つめながら、その手を握る。
小さい手。細い腕。
世界を支えている人間とは、思えなかった。

「こんなに小さかったのか」

こんなに小さい手で、零れ落ちそうな平和を掬い上げようとしていたのか。
いつでも笑顔のままで。他人には辛い顔を見せないで。

「ちくしょう……」

何故だ。
確かに彼女には力がありすぎたのかもしれない。コーディネーターを憎む人間も居なくなったわけではない。
だけど何故彼女が。世界中の人々の為にあんなに一生懸命頑張っていたのに。
手を握ったまま力なく項垂れる。
もう涙は枯れて、自分は泣くことすらできなかった。

どれだけの時間がたったのか。今の自分にはよくわからないし興味も無い。立ち上がろうとする力すら沸いてこない。
顔を上げると机の上の鏡に自分が映る。
腫れ上がったまぶたに真っ赤な目。ひどい顔だ、ラクスもこんな自分は見たくあるまい。
顔を洗いに洗面所へ向かうことにした。

洗顔を済ませて彼女の部屋に戻ろうとすると、途中の広場のテレビから「ラクス」という声が聞こえた。
映っているのは痩せた男性、そしてその脇には連合の制服を着た男が2人。
画面左上に「中継」の文字が表示されている。おそらく、全世界にこの放送が流れているのだろう。
場所はヘブンズベース。男達の胸には青い秋桜の徽章。彼らはブルーコスモスだとすぐに分かった。
だが途中から見たので、どんな内容かはっきりわからない。追悼番組にしては早すぎる。
ぼんやりとした頭のまま画面に近付こうとして

『―――そして今、傲慢なるラクス=クラインに天誅を下しました!!』
379通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 22:01:25 ID:???

思わず目を見開く。
待て。こいつは今、何て言った?
男の演説は続く。

『平和を乱すのか、と考える方もいることでしょう。平和の歌姫である彼女を殺して、また戦争をするのかと。
 だが落ち着いて思い出していただきたい!! エイプリル・フール・クライシスを実行したのは誰の父だったか!!
 平和の歌姫と名乗る彼女の、実際にこれまでやってきた事を!!
 そして現在まで、彼女の力に逆らえる存在がいなかったという事実を!!
 ここまで言えばお解かりでしょう。
 彼女は断じて平和の歌姫などではない!!
 そして我々ナチュラルは今まで、コーディネーターどもに支配されていたのです!!』

なんだそれ。こいつは一体何を言っている。
支配だと? それはラクスが決定権を持っていた事か。
なんだそれ。
他の者が行うと全員が納得しないから。ラクスなら平等に扱ってくれる筈だから。
平和の歌姫だから。英雄だから。
そう言って、誰もが皆ラクスに荷物を押し付けただけじゃないか。
誰も彼もが勝手に女神だと崇めて、彼女に縋ってただけじゃないか。

『力が全てが支配できるというのなら、我々ナチュラルにこの先未来はありません。
 エイプリル・フール・クライシス。そしてブレイク・ザ・ワールド。
 彼らコーディネーターに刃向かえば、あの悲劇が再び繰り返されるでしょう。
 我々に残された道は2つ。
 一つはこのままコーディネーターの顔色を窺って生きること。無論そんなものは認められるわけがない。
 ならば、残されたもう一つの道。

 そう、コーディネイターという種族を根絶やしにすべきであると!』

何を極端な事を言ってるんだ。コーディネーターを根絶やし? そんなの、また戦争が始まるって事じゃないか。
彼女が必死になって世界中に広めようとしていたこの束の間の平和を、彼らが破ると?
いや、そんな事はもうどうでもいい。

そうだ。こいつらが。
こいつらがラクスを殺したのか。

『そのために、我らブルーコスモスが再び―――』

これ以上奴らの戯言を聞いてられなかった。
リモコンを画面にに叩きつける。テレビは何も映さなくなった。
それを気にせずに背を向ける。やるべき事が今、できた。
380通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 22:02:38 ID:???

大至急用意させた車から降り、キラはそのまま建物の中へと歩いていく。
そして敬礼する技師やパイロット達を無視し、1機のMSの前で立ち止まった。
目の前に立ち尽くしているのはストライクフリーダム。彼女から授かった、自分の剣。
血に塗れた白服のまま、躊躇うことなく乗り込んだ。
パイロットスーツもヘルメットも必要ない。
長く伸びた後ろ髪を彼女の髪留めで留めてから、外部へのマイクをオンにする。

「ザフトの皆さん。頼み、いや、命令があります」

キラの声に即座に直立する軍人たち。
自分は滅多に命令など出さない。今までその必要がなかったからだ。
大抵の事は相手が言うことを聞いてくれたり、退いてくれたりした。今も命令などせず願いを口に出せば聞いてくれるだろう。
だが今回ばかりは、徹底したいことが一つだけある。

「誰も、僕を追って来ないでくれ」

そう。誰にも邪魔はさせない。味方のザフトにも。
彼女の暗殺に関わった者すべて、自分の手で―――

飛び立つストライクフリーダム。上空でドラグーンも切り離した。
こんな地上で使えもしないデッドウェイトはいらない。外見なんかどうでもいい。
一秒でも早く。一瞬でも早く。
あの愚か者どもに制裁を。
自分から彼女を奪った彼らに、血の制裁を。


「―――これは。この戦いだけは。この怒りは僕だけの物だ!!」


止められる者がいるなら止めてみれば良い。
この絶望に、敵う者が存在するというのなら。

夕焼けの空に流れていく蒼い流星。すぐに建物からは見えなくなって。
その数時間後、ヘブンズベースという地名は世界から姿を消した。


381通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 22:03:47 ID:???
ヘブンズベースの消失により、ブルーコスモスの一斉蜂起が失敗に終わってから半月後。
ラクス=クラインの国葬はプラントの首都アプリリウスで行われた。

広大な会場内には白く美しい花と共に、生前の彼女が写った写真がいたる所に飾られている。
一般席はザフト軍人やプラント市民で溢れ、会場の外まで参列者によって埋め尽くされていた。
遺族席には夫であるキラのみが座り、
来賓席にはカガリやアスラン等、かつて共に戦った仲間たちが並んだ。
また軍を離れていたディアッカやルナマリア、バルトフェルドの姿もあったが、
シン=アスカの姿だけは、最後まで見られる事が無かった。

国葬が始まった。

献花を捧げても遺体に縋り付いて離れられないカガリ。階段に座り込み、肩を落としたまま立ち上がれないアスラン。
男達は空を見上げ続け、逆に女達は視線を落とし続ける。こぼれる涙を見せないように。
誰かが泣くことを、ひどく彼女は嫌っていた。
その事を皆、知っていたから。

式の途中で雨が降るまで、その光景は続いた。


冷たい雨の中、キラは彼女を見下ろした。
国葬ももう最後。これから彼女を送らねばならない。
優しく彼女の頬を撫でる。
白いドレスに包まれた彼女は、この世界の誰よりも綺麗で。
自分の側に居てくれたことがまるで夢の中の出来事みたいに思えてくる。

ずっと一緒にいることができると思ってた。
できることなら今すぐ彼女の許へ行きたかった。
だが彼女はそれを望まなかった。なら自分はまだ、生きなければならない。

だからこれが最後の別れ。
彼女に、そっとキスをする。
唇は冷たかった。悲しくなるほどに。
涙が一粒だけ零れて落ちた。

多くの人々が彼女を惜しむ中、国葬はやがて終わりを迎える。
誰よりも人々を愛し、人々から愛された歌姫の最後だった。


式が終わった直後、歌姫の伴侶は表舞台から姿を消した。
傷心か、絶望か。それは本人にしかわからない。
だが民衆はいつか彼が戻ってくれると信じていた。彼は英雄であり、世界の守護者であり、平和の歌姫の夫であるのだから、と。
この世界の争いは絶えない。彼女の意思を継ぎ平和をもたらすのは彼しかいない、と。
だから待ち続けた。1週間。半月。1カ月。


キラ=ヤマトが世界に宣戦布告したのは、彼女の死から50日目のことだった。
382通常の名無しさんの3倍:2010/01/16(土) 22:06:50 ID:???
ここまでがプロローグです
題名書き忘れてましたが、「CROSS POINT」でお願いします

383通常の名無しさんの3倍:2010/01/17(日) 16:05:00 ID:???
魔王化したキラktkr
立ち塞がるのは唯一行方不明のアイツなんだろうなあ
384CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:44:02 ID:???


第1話 『戦火の予兆』


休日の夕方、買い物客で賑わう街。

カフェで友人と会話を楽しむ少女たち。その横で皿を危なかしく運ぶウェイトレス。
店内では父親が子供に引っ張られて玩具売り場へ入っていき、街角では男性が携帯で話しながら頭を下げている。
それはどこの街でも見られる平凡な光景。
だが裏を返せば、それは平和な人々の営みと言えるものだった。

不意にそんな街中にぽつぽつと雨が降り始める。雨に濡れるのを嫌った人々が足を速める中、建物から出てきたのは3人の男女。
食料が入った紙袋を抱えながら歩く青年と、その隣で楽しそうに会話をする紅い髪とポニーテールの女性。
ポニーテールの方はまだ少女と言っていいかもしれない年齢だ。

「降ってきたな」

雨に気付いた青年が紙袋を抱え直しながら空を見上げる。
その言葉につられて傍にいる2人も話を止めた。

「あ、ほんとだ。急いで帰らなきゃ」
「ねえシン、クルマここまで持って来てよ。私とコニールはそこの屋根で雨宿りしてるから」

それは俺にこの雨の中走って行けということですかとなぜか敬語で尋ねる青年。
そんな彼に女性陣は無言で頷くことで肯定を示す。Exactry、その通りでございます。
青年の背中が煤けて見えたのは気のせいでは無いのかもしれない。

「わかった、わかりましたよ。んじゃ走ってくるから荷物持っててくれ」
「じょ〜だん。そんな大荷物をレディに持たせる気? 抱えて行きなさいよ。ほらダッシュ、走れアスカ」
「アスカは激怒した。あきれたルナだ、生かしてはおけぬ」
「それだと最後はシンとあんたが殴りあった後抱き締め合うから却下。って止まってないでさっさと行きなさいよシン」
「よし行ってこいシン。男なら、やってやれだ!」
「あ〜もう、普段仲悪いくせにこんな時だけ協力してきやがって…」

女2人の漫才とも言えない会話に青年は呆れたように溜息を吐き、でも少しだけ笑いながら走り出す。そんな彼を見て笑い合う女性陣。
それは周囲の平凡な光景に負けず劣らず、どこにでもある青春の一幕。

そのはずだった。
彼が街の大画面スクリーンに映る速報に気付く、その時までは。
385通常の名無しさんの3倍:2010/01/17(日) 23:46:37 ID:???

「あれは……?」
「おーい、どうしたんだ?」

急に立ち止まった青年を見て少女が問うが、青年は視線を止めたまま返事をしない。
周りを見れば他の人たちも雨に濡れる事も構わずに足を止めている。

「「………?」」

2人は顔を見合わせ首を傾げ、彼らが見ている方向を見た。
視線の先には巨大なテレビ画面。映っているのは戦闘の様子のようだ。
とある事件からここ半年程、よく発生している内戦か紛争の一つでも映しているのだろうか。 しかしこれまでとは何か様子が違う。
次の瞬間、画面が切り替わった。その映像に

「え……?」

観衆が凍りつく。

『――――僕は言った筈です。彼女の目指したものに向かって進むと』

流れているのはかつての英雄であり、最強と謳われた騎士の声。

『故に、誰にも邪魔はさせないと』

画面に映っていたのは宇宙空間と2機のMS。 どうやら起動していないらしく機体の色は灰色だ。
しかしその存在は、この世界に生きる者なら誰もが知っていた。

『例えそれが、かつての仲間達だったとしても』

深紅の剣と黄金の盾。
前大戦の英雄の片割れであり、現在でもオーブの象徴であるその機体たちは今

巨大な十字架に、磔にされていた

機体の無残な姿に動揺する群衆。その前で2本の十字架に戦艦から放たれた光の雨が降り注ぎ――――
そして雨の後にはもう、何も残ってはいなかった。

『もう一度言います。争いをやめてください。』

『それとも、そんなに血を流すのが好きだというのなら』

『僕が――――』

静まり返る街で、感情の篭っていない声だけが淡々と響き続ける。

386CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:49:22 ID:???
「ちょっと、アレって…」
「嘘…だよね?」

少女たちは不安そうな顔で傍らの青年を見上げるが、青年は何も答えない。
今の彼には少女たちの顔も、魔王と化した英雄の声も届いていなかったから。
彼が思い出すのは、かつての上司の悲痛な声。

――俺は、あの時あいつに何もしてやれなかった。だから

「そっか」

――あいつは、俺が止める

「止められなかったのか、アンタは」

小さなその声は激しさを増した雨に掻き消されたため、少女たちの耳に届くことはなかった。


――――半月前――――

メサイアでの戦いより数年後、世界はようやく平和を手に入れることができていた。
しかし戦争の傷跡はまだ癒えたわけではない。 例えばここ、ベルリンもそうだった。
連合軍による暴挙。破壊の名を持つMS、デストロイによる虐殺。
復興により中心部は元の姿を取り戻したものの、舗装されてない道路も多々あり、未だに家に帰れず仮設住宅で暮らしている者もいる。
癒えない傷跡。だが人はいつまでも立ち止まってはいられない。
多くの者は悲しみを抱えながらこの地を去って行ったが、残された者は痛みをこらえて瓦礫に手を付けた。
美しかった街を、そして大切な思い出を取り戻すために。

街を復興させようとしているのは、住民たちだけではなかった。
デストロイに従い街に攻撃を仕掛けた、元連合軍兵士たちである。
戦争が終わり、身体を包んでいた熱が冷めたとき。彼らは自分の姿を冷静に思い出すことができるようになってしまう。
光や炎に呑まれて消えていく命。苦しそうに助けを求め、そして力尽きるかつて人だったもの。
そして、逃げまどう市民に銃口を向ける己の姿。
自分の罪に苦悩し救いを求める彼らの次の行動は、贖罪しかなかった。
当然だが、当初彼らは市民から白眼視された。
しかし街が復興し、彼らの人となりを理解するうちに、市民の中には僅かにだが態度を軟化させる者も現れるようになる。
兵士たちも少しずつだが笑顔を取り戻し、瓦礫の山へと向かって行く。

そんな復興作業を行う人たちの中に、シン=アスカの姿もあった。

「ふう…」

土木作業用の小型MSの中でシンは汗を拭った。
側に置いたペットボトルの水を飲み干し、周りの風景を見渡す。
街の中心部の復興は既に終了し、今では自分たちボランティアが住んでいるような離れた場所も手を付けれるようになった。
まだ全ての作業が終わったわけではないが、もう数ヶ月もすればこの街も元に戻るだろう。
あの廃墟の街が――彼女が壊してしまったあの街が――目の前から姿を消していく度に、少しだけ心が落ち着く。
忘れることなど許されないのは、分かっているのだが。
387CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:51:47 ID:???

「おいシン、ぼけっとすんなよ。まだ終わってないんだから」
「ああ、悪い」

動きが止まっていたのを仲間に注意され、作業に戻る。昼が近いのできりがいいところで終わらせたい。
空のペットボトルを運転席の脇に置こうとしたその時、彼が操縦するMSの傍に小型トラックが止まる。
窓から顔を出したのは褐色の肌に髪を後ろで結んだ少女。
コニール=アルメタ。
ガルナハン出身でかつてシンが軍人だった頃、共に戦ったこともある少女だ。
シン達ザフト軍のおかげでガルナハンは解放されて大人が戻ったため、彼女の故郷はかつての姿を取り戻した。
自分の目的に一区切り付けた彼女は昔の自分と同じように辛い目に遭っている人たちのために、協力隊に参加し始めたのだ。
そしてここベルリンでかつての恩人であるシンと再会、行動を共にしている。

「シ〜ン!食料と日用品の配給、終わらせてきたぞ〜!!」
「おつかれさん。それじゃこっちの資材を運ぶのを手伝ってくれ。俺たちが車に積み込むから、お前は車で先に…」

カン、カン、カン

シンの言葉を遮るかのように、金属をぶつけて鳴らす音が響く。
2人が振り向くと、近くのアパートの2階から赤い髪の女性が身体を乗り出していた。
手にはおたまとフライパン。

「お〜い、ごはんできたわよ〜! 12時過ぎてるんだから休んだほうがいいって〜!」
「わかってるよルナ。みんな、昼休憩に入ろう」

皆に休憩の指示を出し、解散させる。元軍人で皆身体は鍛えてあるとはいえ、長時間肉体労働を行っていたのだ。腹も減ったのだろう。
やれやれといった感じで散開していく。

「腹減ったな。コニール、行くぞ」
「うん」

シンとコニールもルナマリアが顔を出しているアパートに向かって歩き出した。
3人とも同じアパートに住んでいるため、食事はシンの部屋で揃って食べることが多い。
ちなみに2人の部屋はシンの部屋の両隣である。

「こらコニール、たまにはお前も料理しないと、2号さんに取られちまうぞ〜」
「そうそう、外見じゃ負けてんだから」
「誰が2号だってのよ!! どっちかって言うとコニールでしょそれは!!」
「余計なお世話だッ!! ってルナ、そっちだって『元』彼女なんだろ!!」

2階のベランダと地面とで激しく言い合う2人を他所に、シンはそそくさとアパートに入って行く。
女の喧嘩に茶々入れて無事に帰ってきた奴を自分は見たことが無い。

「いや、男冥利に尽きるってやつだな、シン」
「そうだな。でも2人ともそういう関係じゃないんだ」
「よく言うぜ」

いや謙遜とかじゃないんだが。
388CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:53:23 ID:???

部屋に戻って3人で食事を摂る。
さっきまで口喧嘩していたはずなのに、今は仲良く喋っている2人。横目で見ていると思わず溜息がこぼれた。
穏やかな時間。 優しい空気。
いつも思う。楽しいのだが、正直辛さも感じている。
いっそ、懺悔も贖罪も忘れてこのまま生きていけたら――――
そんな許されないことを、思ってしまうから。

「どうしたの?」
「え、ああ、いや…なんでもない」

食事が始まってから黙ったままの自分を気遣うコニールの声に意識を戻す。
ごまかしながらパンを取ろうとしたとき、チャイムが鳴った。タイミングが良いのか悪いのか。

「ん?誰だろ」
「俺が出る」

立ち上がろうとする2人を制してドアへと向かう。
一応用心のため覗き窓から外を見ると、そこにあるのは見知った男の顔。
ドアを開けて迎え入れる。

「よ、おひさし。お前ら元気してるか?」
「何しに来たんだアンタは」

部屋に入ってきたのは後ろに流れる金髪と褐色の肌が印象的な男。 かつてのザフトレッドで今はフリーのジャーナリスト。
男の名はディアッカ=エルスマンと言った。
この人とはそこまで付き合いは無かったんだがなぁ。馴れ馴れしい態度は軍にいた時と何も変わってはいない。

「そんなつれなくすんなって。ま、今回俺は案内してやっただけだ。お前に用があんのは俺じゃなくてこっち」

そう言いながらディアッカは脇に寄る。彼の後ろには2人の男の姿があった。
小太りの男と、その男よりも年上に見えるサングラスをかけた男。
小太りの方は見たことがある。自分が軍人だったころクライン派で、ラクスやキラによく擦り寄っていた奴だ。サングラスの方は知らないが。
何にしてもあまり良い用事ではなさそうだった。
2ヶ月前に起こった事件と、その後の出来事。そしてこのタイミングでの訪問だ。言われなくても答えは出てくる。
追い払っても良いのだが、ディアッカの立場もあるだろう。
何があったのかと部屋の中から覗いているルナマリアとコニールに目で合図して、彼らを部屋の中に入れた。

389CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:55:25 ID:???

机を挟んでシンと3人は向かい合った。
ディアッカはルナマリアの入れたお茶をのんきにすすっている。2人の話はどうでもいいらしい。
ちなみに、午後からの作業は休ませて貰うよう既に仲間に連絡してある。
コニールとルナマリアには構わず行ってくるよう言ったのだが当然の如く無視された。俺をエサにサボる気なんですねわかります。

「貴方がシン=アスカさんですか。はじめまして、今日は貴方にお願いがあって参りました。
 ――――貴方にしかできない事です」
「自分にしか、ですか。それはどんな用件で……」

サングラスを外して男が口を開いた。思わず吐き出しそうになった溜息をこらえるシン。
シン=アスカに残された価値なんて一つしかない。その後に続く言葉なんてわかりきっている。


「フリーダムと………キラ=ヤマトと戦っていただきたい」


やっぱり、な。


390CROSS POINT:2010/01/17(日) 23:59:51 ID:???
1話はここまでです
主人公はシンとキラ、アストレイキャラは読んだ事が無いので出てきません

391通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 01:03:59 ID:???
投下乙。いいね、引き込む力がある。
まだまだ語られてない事件があるようで、否応にも期待が高まる。
宣戦布告の前にこういうことを頼むというのは……殺害の関係者か。

>外伝キャラ出ない
む、サングラスは○キオかと思ったが違うのか。
まあこのスレではこういう流れで出るような扱いされてるキャラじゃないけど。
392通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 01:12:26 ID:???
マルキオは一応本編キャラじゃね?
しかしMSを磔ってちょっとシュールだな
393通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 01:19:34 ID:???
あれ、と思ったけど、そういえば種死の序盤で出てたっけ?
394通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 01:21:25 ID:???
種死には居たよ。
喋ってたかどうかは忘れた。
395通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 22:13:58 ID:???
これ前に逆シンスレで見たことある
けっこう気になってたのに続きがなかったからこのスレで続くならうれしい
396CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:35:50 ID:???
すいません、今自分で読んでみて思ったのですが、書き方が悪かったかもしれません
時系列的には
プロローグ→1話の勧誘→アスランとのやりとり→磔の順です
磔のシーンをプロローグ゙にして、ラクス死亡を1話にしとけば良かったかもと後悔してたり
これからは回想以外は時間に沿っていきますのでよろしくお願いします
397CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:38:36 ID:???

かつて破壊されたコロニーの残骸の中を、一機のブレイズザクファントムが猛スピードで進んで行く。
旋回。急制動。浮遊している残骸の群れを鮮やかに避ける華麗な動き。
それだけでもそのパイロットが歴戦の勇士であることがわかる。

だがコックピットの中の彼の表情から、余裕は微塵も感じられなかった。

「糞ったれ……糞ったれ!! 糞ったれ糞ったれ糞ったれめ!!!」

男は逃げていた。
目は荒み、肩は震え、歯を恐怖でガチガチと鳴らしながらも逃げていた。

「何処で間違った」

これまでの人生を振り返る。
プラントでは比較的裕福な家に生まれ育った。
軍の学校をトップで卒業し、その身に紅を纏った。脆弱なナチュラルどものMSを数え切れないほど落とし勲章も貰った。
名パイロットとして称えられる日もそう遠くなかっただろう。

「一体何処で間違ったって言うんだ」

転機は前大戦が終わってからだった。
ザフトがクライン・オーブ連合軍に破れてからというもの、プラントはクライン派どもに占拠された。
デュランダルの下で最後まで戦った自分は緑に降格、クライン派のひよっこ白服どもに顎で使われる日々を送り
外に出ては 『ラクス様に刃向かった者』 と白い目で見られた。
妻子はそれに耐え切れず家を出て行き、残った資産もほとんどを新政府に没収された。

ザフトを裏切った蝙蝠野郎どもがそのザフトの仕官として幅を利かせ、ザフトに最後まで尽くした真っ当な軍人が虐げられるその現実。
耐えられなかった。許せるものではなかった。
だからクラインに抵抗する組織に入った。

「俺はなんでこんな目に遭ってる」

そこには自分と同じ境遇の者が多くいた。
デュランダルの下で戦った熟練のパイロットたち。皆、腕に覚えのある者ばかりだった。
だが補給なしでは力は維持できない。そして少数派である自分たちに届けられる物資はごく僅かだ。
だからクライン派やオーブの物資運搬船を襲うようになったのは当たり前のことだった。
護衛のMSを苦も無く落とし、掃討しに来た軍隊をデブリ帯に引きずり込んで幾度も返り討ちにしていくうちに、
軍でも滅多に手を出せない場所として名が知られるようになった。

それがいけなかった。
結果、死神を―――フリーダムを呼び寄せることになってしまった。
398CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:40:08 ID:???

「糞ったれめ」

正直な所、奴を甘く見ていた。確かに英雄と呼ばれ数多の敵を倒してきたのは事実だろう。
だがそれらは本当に 『敵』 と呼べる存在だったか怪しいものだ。
奴の戦闘を研究する際、回避動作も防御もせずにフリーダムの攻撃を受け堕ちていくMSの映像を見せられるたびに内心あきれたものだった。
こんなので英雄か。あの程度の敵を何機落としたところで、なんの強さの証明にもなりはしまい、と。
確かに機体の性能は最高だろう。だがパイロットとしての腕ならば決してひけは取らないはず。
多くのMSを撃墜した経歴があるとはいえ、それはこちらも同じなのだ。
しかもこちらには自分に匹敵する腕を持つ仲間に地の利もある。まともに連携さえすれば、どんな相手でも負ける筈はなかった。

その筈だった。

「―――!!」

背後で一筋の光が流れる。
何故だ。機体の性能の差は十分承知だ。
だが、この自分がこうまで簡単に詰められるとは―――

『鬼ごっこはもう終わりですか? 貴方で最後なんですけど』
「―――ッッ!!!」

悪魔の声がコックピットの中に響き渡る。
そして目の前には、白と青で彩られた美しい機体の姿があった。
もう逃げられない。いや、逃げてはいたが分かっていたのだ。逃げきるにはヤツを殺るしかないという事は。
だがそれは難しすぎる。自分と相手との間には実力差がありすぎる事を、もう認めるしかなかった。
何故なら。

「畜生、馬鹿にしやがって……!! ビームサーベルだけで俺達を全滅させようってのか!?」
『馬鹿にしているつもりはないんです。ただ、今後の為に接近戦も練習しておかないといけなかったから』
「練習…練習だと……?」

何だそれは。そんな馬鹿みたいな理由で俺達を。
怒りが僅かに恐怖を上回った。
いいだろうやってやる。その驕りを抱いたまま―――

「くたばれ、化け物が!!」

肩のファイヤビー誘導ミサイルを全弾発射、それと同時にトマホークを抜いて前に出た。
守りを考えては負ける。前に出て攻撃することに全精力を注ぎ込まねば絶対に勝てないだろう。
どうせライフルは当たらないのなら、奴の望みどおり接近戦しか選択肢は無い。
奴が回避するならミサイルを盾に、迎撃するなら爆風に紛れて懐に潜り込むのだ。
フリーダムのサーベルが振られ、ミサイルが爆発した。

今だ。
399CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:41:46 ID:???

爆風でフリーダムが煙に包まれる。それを逃さず距離を詰めた。
煙が消えたその時、目の前にフリーダムが映る。無防備だ。いける。

「喰らえ!!」

男は渾身の力を込めて、トマホークを振り下ろした。が―――

「え……?」

だがおかしい。あるはずの手応えがない。
いや、それどころかフリーダムの姿が無いのだ。

『まあ、こんなものなんでしょうね』
「な……ぐあっ!!」

背後に振り向くと同時に爆発が起こった。機体状況を確認、右手がトマホークごと消失している。
そしてザクの背後にはフリーダム。
意味する事は一つ。身体の震えがぶり返してきた。

―――まさか、この一瞬で?

『まいったな。ここに来たのは、軍ですら手が出せない場所っていうのも理由の一つなんですが』
「あ、ああ……」
『ちょっと拍子抜けですね』
「来るな…」

血でも掃うかのようにサーベルを振った後、水平に構えるフリーダム。
出力を上げたのだろう。サーベルが少し太くなった。

『それじゃ、今度はこちらから行きます』
「く…来るな……来るなぁ!!」

怯える時間すら与えてくれない。前に出るフリーダムに対し、ザクファントムは残った左腕でビーム突撃銃を連射した。
フリーダムは回避運動すらろくに取らず、数十センチの間合いで見切っていく。
そのうち避けるのも面倒くさいと言わんばかりに、ビームサーベルで突撃銃の光弾を叩き落し――――

そして再び擦れ違う。
今度は左腕が落とされた。

400CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:43:38 ID:???

「何故だ……」

圧倒的な実力差。男は力無く呟く。
心は折れた。武器も無い。もう戦えない。そして数多くのMSを落としてきた海賊の自分に待っている道は一つ。
今死ぬか、それともこの後軍にでも捕まって後で処刑されるか。
近付いてくるフリーダムを絶望と共に見上げながら、男は再び呟いた。

「何故だ……」
『今更ですね。貴方も力で誰かを薙ぎ払っていた。今回は貴方が薙ぎ払われる方だっただけです。
 力を使う以上、そんな事は分かっていたはずですが?』

違う、そんな事を言いたいんじゃない。

何故だ。
何故だ。

「何で俺は、こんな化け物と――――――」

出会ってしまったんだ――――

閃光が奔り、MSのパイロットは意識を失う。
訪れるのは漆黒の闇。
後に残ったのは傷一つ無い英雄の機体と、かつてMSだった金属のカタマリだけ。


彼の問いに答える者は、何処にもいなかった。



第2話 『平和の残滓』


401CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:46:08 ID:???

「フリーダムと………キラ=ヤマトと戦っていただきたい」

やっぱりそれか。
溜息を噛み殺してシンは男に目を向ける。

「キラと…ですか。それは倒しに行く部隊に協力しろということでしょうか」

副音声を読み取れと言わんばかりに面倒くさそうな声を上げるシン。それに答えたのは隣の小太りの男だった。
シンの気持ちを読み取った様子は……無い。

「少し違います。露払いは我々の部隊が行いますので、貴方には彼を倒してほしいのです」
「……ちょっと待ってください。味方の援護無しで?」
「はい。下手な援護は足を引っ張るだけだと思いますので」
「無茶言うな」

思ったことが口に出てしまったが、それがシンの正直な感想だった。
確かにかつてシンはインパルスの換装システムを利用した作戦で、フリーダムに勝利したことがある。
だがそれは 「シルエットの数だけ戦線に復帰できる」 という利点を利用しただけであり、厳密にはまともな1対1ではなかった。
実際デスティニーに搭乗して戦った時には、ストライクフリーダムにまともなダメージひとつ与えることができなかったのだ。
しかも自分は今戦いから身を引いている。
今も尚戦いの中に身を置いているキラとは差が離れこそすれ、近づいているということはまず無いだろう。

「無茶……ふむ。一つお聞きしますが、貴方は今の状況をご存知なのでしょう?」
「ええ。テレビとかで、一応」

知らないわけがない。視線を外しながら思い出す。

血染めの歌姫。
復讐鬼と化した英雄。
感情の赴くままに世界に宣戦布告し―――

そしてそのまま、全てを薙ぎ払った。
同胞も、かつての仲間も、実の姉も。いつものあの戦い方で。
フリーダムに傷一つも付けることすらせずに。

「では先のオーブ軍や我らザフトの大敗も知っているということですね。……ならば、何か思うことがおありでは?」
「思うこと?」
「キラを許せない、止めたいという気持ちです」

聞き飽きた言葉だった。クラインを憎め、仲間の敵を取りたくはないか、キラを止めるのはお前の仕事だ。
そんな言葉を聞くたびに、相手とどうしようもないほどの温度差を感じる。こいつらは俺が値踏みしてるとでも思っているのだろうか。
大体それで義憤や憎悪を感じるなら、自分は今この地にはいないというのに。
402CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:48:55 ID:???

「それで俺を選ぶのは人選ミスですね。大体、他に適当な人間がいるでしょう。
 アスランはまだ説得をあきらめてないでしょうし、何より俺より強い。それにオーブにはアカツキもあります」
「謙遜はやめてください。アスラン…オーブ軍のアスラン=ザラ少将ですな。
 確かに彼は強い。
 ですがキラと彼は親友の筈です。本気では戦えないでしょう。
 それにキラ=ヤマトはザフト軍司令官でした。それをオーブの者に駆除してもらっては、プラントの立場がありません」

それが本音か。しかもかつての主を 「駆除」 ときた。

「立場、ね……」
「キラとの戦いに関してならご心配なく。貴方の為にストライクフリーダムをも上回る機体を用意しています。
 貴方にも喜んでもらえると思うのですが」
「なら他のヤツをそれに乗せればいいでしょう」
「扱える腕の者がいません。いや、こちらにはキラと戦う覚悟を持った者すらいません。
 先ほどの発言、露払いはこちらがと言う話ですが、正確にはキラ以外となら戦ってもいいという者しかいないのです。
 無論彼らは軍人ですので命令すれば行くでしょう。そのような人間が勝てるとは到底思えませんが」

なんだそりゃと思う反面仕方ないかとも思う。キラもラクスも神格化されすぎていた。
神に喧嘩を売れる者はそうはいないだろう。
尤も、それで納得するわけにはいかないのだが。

「白騎士どもはどうした? オーブの5本槍は?」

とりあえず有名どころの名を出してみる。敬語を使うのも面倒くさくなってきた。
白騎士とはラクス子飼いの白服の集団の事で、シンも彼らが軍の中を我が物顔で歩いていたのを幾度か見た事がある。
自分が元デュランダル派なのにクライン議長のFAITHになったのが妬ましかったのか、それともかつてキラを一度落としたことが気に入らなかったのか。
その際に侮蔑と嫉妬の目で見るのはお約束だった。正面きってどうこうされたのは皆無だったが。
5本槍は文字通りオーブの5人の精鋭、レドニル=キサカを始めとした壮年のナチュラルの異名だ。

正直、どちらも微妙なネーミングセンスだと思う。

「5本槍は貴方が先ほど仰ったオーブによる説得が決裂した際の戦闘で、全員が重傷を負いました。
 白騎士、ですか。そのような人たちもいましたね。キラ相手だと分かると途端に戦う気を失くしたようですが。
 まああの方たちはキラやクライン前議長の後ろで吠えることしかできない方たちですから」

お前とどう違うと喉から出かけた声を押し殺し、他の2人を見た。
ディアッカは苦笑いしながら肩をすくめ、サングラスを外した男は手を組んでコップの中の茶を見つめている。
2人とも口を挟むつもりはないようだ。諦めて目の前の男に視線を戻した。
まだこのつまらない演説を聞かなきゃならんのか。

「キラ=ヤマトもクライン前議長も、自分の正義を他者に押し付ける独りよがりな部分があったと私は思います。
 だから今回の様な事が起きた。
 もし今回の事が収まったとしても、また似たような事を彼は起こすでしょう。ならば誰かがあの子供に現実の厳しさを教えなければならない。
 ……貴方ならそれができます」
403CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:50:41 ID:???

(シン、こいつ殺っちゃっていい?)
(頼むからやめて)

誰にも聞き取れない声でルナマリアが聞いてくる。
無理もない、クライン議長と彼女は友人だったのだ。提案は当然のことながら却下したが。
どうでもいいがこの男もよくもまあそこまでかつての主人の文句が言えるものだ。
自分の後ろで飛ばしている彼女の殺気にいい加減気付いて欲しい。

「どうでしょう、断る理由はないと思うのですが」

自分自身の演説に満足したのか、それとも気が乗らないこちらの態度にやっと気付いたのか。
ようやく男はこちらの話を聞く気になったようだ。
話も十分聞いてやったし、これ以上付き合う義理も無いか。ディアッカの面目も十分立つだろう。

「答えを聞きたいですか?」
「もちろん」

男を見下しながら告げる。コイツにはもう敬語を使う必要はない。

「断る」
「!!………何故です?」

どうやらこの男は、なぜ自分が断るのかが解らないらしい。
魔王を倒す勇者に選ばれたのに、なぜそれを喜ばないのか。そう考えているようだ。
アホか。何故って、そんなの決まってる。

「付き合ってられない」
「なっ………」
「大方俺がキラを倒したら、『シン=アスカを説得した功労者』 として要職に就こうとしてるだけだろうが。戦いもせずにアンタはさ。
 誰が認められるかよそんなもの。
 安全な場所から他人を見下す事しかできないくせに、偉そうに世界だの何だの語るな」
「そんなことは……ただ私はあの男を止めたいと思っているだけです。
 あの男は敵味方関係なく一方的に兵士を襲い、『殺したくない』 と言いつつMSの四肢を奪い嬲り殺しにするような男ですよ?」
「へえ。 『敵の兵士と言えど、命を奪うまいとするキラ様はお優しい』 って、
 アンタがキラに言ってたのを聞いたことがあるんだけどな? クライン議長が生きてた頃に。
 考えを改めたにしてもタイミングが良すぎじゃないのか?」
「いや、それは……」
「それにキラの不殺はあれはあれでまともな信念だ。
 誰だって死にたくないし、生きてりゃいつか笑えるだろう。それが仇になっても死ぬのは自分だしな。
 平和な場所から民間人そそのかして戦いに放り込んで、そのくせ美味しいとこだけ掠め取ろうとする奴よりは遥かにマシだ」
「ぐ……」

小太りの男が俯く。やっと諦めたか。
話が済んだら帰れと言おうとしたシンだったが、
404CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:52:37 ID:???

「貴方の言うことも尤もです」

黙っていたもう一人の男が口を開いた。
静かな言葉とは対照的に、目の奥には鋭いものが感じられる。
多分この人は軍人だ。それもかなりの修羅場をくぐってきてる。この作戦の担当者だろう。
彼はシンの反応に構わず言葉を続ける。

「確かにキラの攻撃によるパイロットの死者はそこまで多くはありません。
 ですが、戦闘に巻き込まれた市民の被害は増える一方です。
 また住民を避難させてからとはいえ、レジスタンスの本拠地ごと街を焼き払うといった暴挙も行っています」
「……」

初めて聞いた。あいつ、そんな事までやっちまってたのか。

「伴侶の死は確かに悲劇であり、それからの彼の行動も全くの間違いというわけではないでしょう。
 ですが自分1人の思想を振りかざし、自分以外の人々を傷付け、ようやく訪れかけた平和を乱す
 まるで世界が自分の物であるかのようなこの所業。これは許されることではありません。
 世界が彼の物でない事を証明するためにも、我々は彼を止めなくてはならない」
「だったら」
「だが、我々では彼を止められない。アスラン=ザラが彼を止められるのであればそれもいいでしょう。
 しかし彼はかつてキラに敗れている。不安は残ります。
 貴方がいれば、とも思ったのですが…」

現場の人間、しかも軍人の言葉だ。隣の男の戯言より遥かに重みがある。
しかしシンの気持ちが動くことは無い。

「大して変わりゃしませんよ。俺はそんなに大した存在じゃないですから」
「この際貴方の自己評価は関係ないのです。……ふむ、これ以上は無駄のようですな。
 今回はこれで失礼させて頂きます。もし気が変わりましたらこちらの方に連絡を下さい」

男はそう言いながら名刺を置いて席を立つと、一礼して部屋から出て行った。小太りの男が慌ててその後を追う。
ルナマリアは玄関へと歩いていき、塩を撒……かずに皿に盛っていた。ルナ、それ招く方だから。うろ覚えのオーブ文化するのはやめて。
2人の男が去ってからしばらく静寂が続く室内。シンは唯一部屋に残った男に顔を向ける。

「ディアッカ、アンタは帰らないのか?」
「そうだな。なぁ、今日の夕飯は?」
「なんだよいきなり……ルナ、こんな事聞いてきたけど?」
「これで良し、2度と来んな……夕食? えーと今日はボルシチにする予定だけど」
「うーん。ボルシチはこの間他の所で食ったからいいや。茶も飲んだことだし、今日はこのへんで失礼させてもらいましょうかね」
「なんなんだよもう」

立ち上がるフリーダムなディアッカに一言告げる。
405CROSS POINT:2010/01/18(月) 22:54:30 ID:???

「今度あの小デブに会ったら言っといてくれ。『放っとけ』ってさ」
「オーケー、言っとく。……じゃあな、また今度寄らせてもらうわ」
「ああ」

そしてディアッカも去っていった。後に残ったのは自分たちだけ。
シンはカップを片付け始めた2人に頭を下げた。

「すまなかったな、変なのに付き合せて。けど俺放って仕事行ってても良かったんだぞ?」
「そういうわけにもいかないでしょ。何があるかわかんないし」
「そーそー。もしかしたら私達を脅しのネタに使うって事も考えられるしな。
 あの2人に何かあってもいいのか、みたいな。
 本人達の目の前じゃ脅しにくいかなって思ってさ」
「なるほどな」

確かにその可能性もゼロじゃないか。
それにしても自分に手を出してくるなど、ザフトも相当余裕が無くなってきている。
クライン派が多い今のザフトでは俺、キラを倒したことあるから影じゃ相当嫌われてたのに。

「ま、用心に越したことはないな。2人とも身の回りには十分注意してくれ」
「わかってるって」
「ま、何か来ても返り討ちだけどね」

頼もしい言葉だが、念のため他の仕事仲間にも事情を説明しておいた方が良いかもしれない。
彼らも元軍人だし、変な人間が近付いたらすぐに気付いてくれるだろう。
それにしても、注意するのが敵だったキラではなく味方だったザフトだというのは皮肉な話だ。

「やれやれ。自由の代償は高い、ってことか」

呟きながら部屋の中を見渡す。
台所で皿を洗うルナマリア。人の部屋のソファに寝転がって、テレビのチャンネルを変えているコニール。
その光景を見ながらシンはささやかに息を零した。
世界は平和には程遠くて、それどころかまた戦争が始まってしまいそうなくらいだけど。


自分はなんとか、平和の端っこくらいは掴めている。


406CROSS POINT:2010/01/18(月) 23:05:22 ID:???
今日はここまでです
あ、ちなみにマルキオは後で出てきますが、ちょっとオリジナルな要素を入れてます
本編見た限りではSEEDに固執する理由がわからなかったので
407通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 23:42:54 ID:???
乙。
今のところ
0話→1話後半+2話〜 →1話後半
ていう時系列でおkです?

しかし面白い文章です、今後も期待してます
408CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:37:46 ID:???


記憶に残っているのは深深と降り積もる雪の音だった。


見上げた空に映るのは薄暗い雲と、その合間に見える月。
指先に残るのは微かな感触。
『彼女』 の感触。
涙はとっくに枯れている。喉が渇いて口が上手く回らなかった。
言葉を出そうとしても、ただ力無く空気が漏れるだけ。
手を握っても握り返されることは無く、感じるのは雪にまみれた自分よりも冷たい彼女の体温だった。

それは自分の中に眠る後悔の記憶。

―――守れなかった

あの時はそのことしか頭に浮かんでこなかった。
胸の中に吹き荒れる憎しみの炎に身を任せることしかできなかった。
だが、何千回と見てきたこの夢の中で、自分はそのうち違うことを思うようになった。

―――俺は、彼女を返すべきではなかったのではないか?

あの時彼女の命を救うには、返すしかなかった。
だが結果はどうだったろう?
自分がしたことは彼女を戦場に戻しただけで、結局彼女はキラに殺され。
死ぬ事を何よりも恐れていた彼女がこの世界に残せた物は、永劫語り継がれる重い罪。
そして、悲しみと怨嗟の声だけ。

自分が背負わせてしまった。

仕方がないことだったと言ってくれた者もいた。彼女が乗らなくてもきっと他の人間があれを行っていたと。
そして彼女も連合の実験の被害者だったのだと。
昔は自分もそう思っていた。いや、そう思いたかった。
彼女は悪くないと。あの選択は間違いなんかじゃないと。
でもそれは許されないことだ。その事は虐殺の傷跡が消えぬベルリンの街を見て思い出さされた。
被害者からすれば加害者の事情など何の救いにもならない。それはシンが一番良く理解している事だったから。
かつて家族を理不尽に殺された自分自身が、一番。

沈んで行く彼女の亡骸。

『暖かくて優しい世界』 どころか冷たい湖の底にしか連れて行けずに死んで行った。
その身体に抱えきれないほどの罪を背負って。
人間は死んだら何もできはしない。笑う事も、泣く事も。――――そして、罪を償う事も。

なら、自分が彼女にしてやれることは――――――


409CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:39:48 ID:???


第3話 『雪の記憶と消せない罪』


「ひどい顔してるな、シン」

目を開くと1人の少女が自分の顔を覗き込んでいた。背後の陽光が眩しくて思わず目を細める。
慣れた目に映ったのはポニーテールと褐色の肌。コニール=アルメタ。
少し心配した表情でシンを覗き込んでいる。

「うなされてたってほどじゃないけど、少し苦しそうだったぞ。……嫌な夢でも見てたのか?」

寝起きなので意識が曖昧だ。周りの光景から、自分は公園のベンチに寝転がっているということがわかった。
少し背中が痛いのだが、なぜ自分はここにいるのかが思い出せない。なんでだっけ。今日が休みの日だってことはわかるんだけど。
そんな記憶を辿るシンに構わず、コニールは彼の汗に濡れた額に躊躇いもせずに触れてくる。
熱を測るようにそっと額に手を置いた後、手にしたタオルでシンの汗を拭った。
いや気持ちはありがたいが正直痛い。荒っぽすぎだ。
それは拭うではなく擦るになってますよコニールさん。

「別になんでもない。それよりコニール、何か用か?」
「何も無いよ。視界に入ったときに苦しそうにしてたから、心配しただけ」
「そっか。夕飯の買い物にはまだ時間があるな。ならもう少し」

身体は睡眠を欲していた。再び瞳を閉じるシン。
だが今からまたあれを見るのだろうか。あの夢は嫌いだ、おかげで自分はすっかり雪が嫌いになってしまった。
だが、絶対に忘れてはいけない事でもある。

連合の兵器デストロイによる、ベルリンの虐殺。
焼け崩れた廃墟。人肉の焼ける匂い。助けを求める声と理不尽な世界を呪う怨嗟の声。
それこそが彼女の罪。そして俺の罪と生きるべき道。
解き放たれることなんて期待してはいけないし、あってはならない。

だけど、許されるならば願ってもいいだろうか。
自分は一度あの月面で死んだ身だ。全てを失って、沢山の命を奪って、守ると誓った女の子すら殺そうとした嘘吐きだ。
だからこれから先、自分にどんな苦しみが降りかかっても構わない。
明日を見て。自分にはあの言葉だけで十分だから。
何もかも無くしても、それでもまだ生きていけるから。

だから、どうか。
彼女にいつか、笑える日が来ますように。

「まだ寝るのか? そんなとこで」

意識は傍らの少女の声によって再び起こされた。恥ずかしい思考をしてた自分が恥ずかしくなって、思わず視線を外す。
何を自分に酔っているのか俺は。野郎の自己陶酔なんて碌なもんじゃないってのに。
410CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:41:34 ID:???

「いいだろ別に」
「そりゃいいけどさ。身体痛いだろ? 首とか」
「……そんなもん気にしないよ」
「気にしろ、明日からまた仕事なんだし。ったく……ほら、頭こっちに持って来い」
「おい……?」

強引にシンの頭を抱え、自分の膝の上に置く少女。
いわゆる膝枕というものだ。

「なあコニール。こういうのってさ、相手を選んでやったほうが……」
「今更何を言ってるんだバカ。それに、こんな美人にされてるんだから断るのは失礼ってもんだぞ」
「……美人?」
「何か言ったか?」
「いや、何も」

特に断る理由も思い浮かばなかったので、現状を受け入れる事にした。目を閉じ衣服越しに彼女の体温を感じる。
膝枕自体はそこまで寝心地が良いというわけではない。だが、誰かと触れているとひどく落ち着くというのも事実だった。
陽だまりやぬるま湯に似た、居心地のいい空間がここにある。
だがシンには、素直にそれを楽しむ事が出来なかった。

俺は何をしているんだろう。贖罪の為にこの街に来たはずなのに。
過去ばかり見ている自分みたいな男に、彼女たちを付き合わせてはいけないと思っているのに。
振り払うことが、捨てることができない。

そしてわかってしまう。
贖罪どころか、今救われているのは俺だということに。

「なあシン、一つ聞いていい?」

思考を中断させられた。閉じていた目を開ける。彼女の言葉より優先される事項はあまりない。
こちらを覗き込むコニールは真剣な顔をしていた。

「なんだよ?」
「お前、アイツと戦いに行くつもりなのか?」
「……は? アイツって?」
「キラ=ヤマトだよ。この前ザフトのやつが勧誘に来たじゃないか」

もしかしてコイツはこれを聞くためにこんなことをしたのだろうか。
頭を抑えられたこの状況、逃げることはできなさそうだし。
411通常の名無しさんの3倍:2010/01/19(火) 23:45:26 ID:???

「……まさか」
「本当か?」
「ああ」
「……ならまあ、いいんだけどさ」

子供にするかのように優しく髪を撫でる手をどける。
それを気にした様子も無く、コニールは言葉を続けた。

「そうだよな。シンはもう、十分戦ったもんな」
「………」

「――――もう戦わなくてもいいんだよ。シンは」

もう戦わなくてもいい。自分に言い聞かせる様に呟やかれたその言葉。
だが、何故かシンは言葉を返すことはできなかった。



また、今日も敵を落とした。

殺してはいない。いない、筈だ。
彼女は争いが嫌いだった。そして自分はその彼女の道を引き継いだのだ。
ならば失われる命は最小限でなくてはならない。

「――――いつになれば、この世界は変わるんだろう」

此処に来るまで沢山のMSを落とした。沢山のテロ組織や海賊を潰した。
力で平和を乱そうとする者達に、底知れぬ絶望を与えてやった。
どうせ敵わないのなら、力を振るうことを止めようと。もしくは化物を倒すために力を合わせようと。
どちらでもいい、そう思わせるために。
だが何も変わる気配がない。倒しても倒しても、次の日には必ず別の場所で争いが起こる。自分の手の届かない、遠い何処かで。
自分のやり方が間違っているのは解っている。その望みが逃避であることも理解はしている。
その上で歩き続ける果ての無い道。だが世界も自分も、未だ戦いの連鎖から抜けられていない。

ふと思う。終わりの始まりはいつからだったのだろう。

説得に来たカガリ達オーブ軍を薙ぎ払ったあの日からか。
復讐のために、ブルーコスモスどもを基地ごと消し炭にしたあの日だろうか。
それとも、物言わぬ彼女を抱き締めたあの時か。

どれも違うような気がする。
ならばおそらく、あの時から既に始まっていたんだろう。

彼が――――シン=アスカが自分達から離れていった、雪の降る夜から。
412CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:49:41 ID:???


「―――軍を抜ける、と仰るのですね」


今から1年ほど前。ヨーロッパのホテルの、とある一室。
シンと向かい合うラクスの机の上には、彼に渡した筈のFAITHの徽章が置かれていた。
先日視察したベルリンの復興作業に、彼も参加するのだと言う。

「はい」
「…………ベルリンが貴方にとってどんな場所かは、失礼ですがわたくしもお聞きしました。
 そして貴方がそこで何をするつもりなのかも、なんとなくわかるつもりです。
 ですがこの世界には貴方の力がまだ必要なのです。考えを改めるわけにはいきませんか?」

世界にはまだ平和が訪れているとは言い切れず、景気対策から内乱の鎮圧まで問題は山の様にある。
今ここで、実力や各方面への影響力 (主に元デュランダル派に) を持っているシンに抜けられるのは痛手だった。

「議長、買いかぶりすぎですよ。俺が居なくなった所で何か変わるもんでもないでしょう」
「当事者でもないのにこのような事をいうのは憚られるのですが…… 
 その女性のような悲劇を繰り返さないためにも、戦争によって悲しむ人を出さないためにも。
 平和を守るために一緒に戦っては頂けませんか?」

鈴の音の様なラクスの声。自分ならばすぐに首を縦に振っていると思う。
だが、シンの気持ちを変えることはできなかったようだ。

「クライン議長。俺はもう世界の平和を守るなんて大それたこと、言えません。
 だって俺はこれまでの人生で何かを守れたことがないんですから。家族も、仲間も、友達も、守ると誓った女の子も。
 それに、戦争とはいえ恩人であるトダカさんを殺してしまった。ルナですらもう少しでこの手に掛けるところだった。
 今の俺がMSに乗ったところで、憎しみの種をばら撒くことしかできませんよ。
 ……それが今日まででよくわかりました」
「シン、貴方は……」

溜息を吐き、視線を落とすラクス。諦めたのが傍目からでも判る。
彼の気持ちは固い。止めることはもう、無理だろう。

「わかりました。最後に一つだけ、聞いておきたい事があるのですが」
「……何でしょう」
「ルナマリアさんにはこの話は……」
「しましたよ、もう。何発か殴られましたけどね」
「………そうですか。でしたら、わたくしが言うことは何も無いようです」
「では、失礼します」

一礼し踵を返すシン。ドアの側に立つ自分の横で不意に立ち止まった。
目線も合わさずに彼は口を開く。
413CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:51:38 ID:???

「じゃあな。もう、会う事もないだろ」
「本当に行くんだね、君は」
「ああ。もう、決めたことだから。世話になったな、いろいろと」

部屋を出て行く彼を思わず追いかけて外に出る。
シンが歩いていく廊下の先には、立ち止まって動かない赤毛の女性。
言葉を交わしたのか、彼女が視線を落とした。前髪がその表情を隠す。
一瞬、彼女が止めてくれることを期待した。だがシンはそのまま通り過ぎていく。

何か言わなくてはと思った。
だが去っていく彼の背中に、何も言うことはできなかった。


窓の外の雪だけが、静かに音を立てていた。





それからだ。自分達の周りから、次々と仲間が居なくなっていったのは。

カガリとアスラン夫婦、ムウさん夫婦はオーブにいるためあまり会えず、
マードックさん達アークエンジェルのクルーも、それぞれの道を歩いていった。

ディアッカはフリーのジャーナリストとなって軍を辞めていった。
彼は当初アカデミーの校長になるという話が上がっていたけど、
軍人の教官に何度も軍を裏切った者を選ぶのはいかがなものかという周囲からの反対の声が多く、立ち消えになった。
彼に気にした様子が無かったのがせめてもの救いだった。

バルドフェルドさんも「やるべき事はやった」という言葉を残してザフトから去っていった。
これからは若者の時代だ、とも。
あの人もまだ働き盛りだと思ったけど、あの時は止めることはしなかった。

イザークは軍人から再び議員になった。
今でこそ議長代行として腕を振るっているものの、
当時は彼自身の真っ直ぐすぎる気性とザフトを裏切った過去から議員の間では孤立していた。
その為、人脈を作る目的であちこちに足を運ぶうち、僕達と会う事も少なくなっていった。

ルナマリアはしばらく、ラクス直属のFAITHとしてしばらく僕たちと行動を共にしていた。
シンの事を忘れられないのか、言い寄る男性たちに目もくれずに仕事に没頭して。
おそらくいつか彼がザフトに戻ってきてくれると信じていたのだろう。
でも、ベルリンに行ったディアッカからシンの現状 (隣の部屋の女の子が通い妻してるとか、かなり大げさな内容だったが) を聞いた途端、
速攻でラクスに暇を貰って彼のところへ向かい、そのまま居座ってしまった。
何でも 「伏兵とはいえ、中ボス程度に負けるわけにはいかない」 との事。
その時は僕達も状況は把握してたから、2人で笑ってしまったけど。
414CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:53:46 ID:???

そうして、僕達にはお互いしかいなくなった。

今にして思えばあの頃まではまだ、幸せな結末ってやつを信じていられた。
争いを少しずつ減らしていって、次の世代に託すべき土台を作り。
愛すべき人と子供を作り、その子を育て。そして子や孫に囲まれながら穏やかに息を引き取る。
そんな当たり前の夢を自分は信じていたかった。
だがそんなささやかな願いは炎が焼き払ってしまった。
明日へ飛び立つ筈だった翼は、あの照りつける太陽が焼いてしまったのだ。

もう、あの頃のような夢は、見ることができない。




そしてまた、今日も敵を落とした。

目の前の胴体だけになったゲイツを、彼らの基地の方に向かって軽く蹴る。
破壊したのは基地の武装とMSだけ。運が良ければ助かるだろう。
尤も彼らが生き残る事ができたとしても、もうパイロットとしてはやっていけないだろうが。
不意にフリーダムに通信が入る。

「こちらディーヴァ。キラ、終わった?」

コックピットに響くのは聞き慣れた女性の声。ミリアリア=ハウ。
初陣からここまで長い間共に戦ってきた、自分に残された数少ない友人だ。平和に暮らせばいいものを、何故か自分に付き合ってくれている。

「ああ、今終わった。これより帰艦します。誘導をお願いします」
「了解。お疲れ様」

ミリアリアの言葉が終わると同時に、何も無い宙域に白色の巨大な宇宙空母が現れる。

ディーヴァ。

舞姫の名を持つこの艦は、ラクス=クラインの母艦として造られた大型宇宙空母。
ザフト最大の宇宙空母であるゴンドワナに匹敵する巨大さを誇り
陽電子砲こそ装備していないものの、陽電子リフレクターやミラージュコロイドといった装備も施されているそれは
本来ならプラント議長ラクス=クラインの旗艦となるはずの艦だった。
一度も主を乗せることのなかったこの艦は現在、キラの母艦兼移動拠点として使われている。

ストライクフリーダムを着艦させて一息つく。いつものことだが少し疲れた。肉体的な話じゃなく、精神的に。
415CROSS POINT:2010/01/19(火) 23:55:45 ID:???

こきこきと首を鳴らすキラの元に通信が入る。画面に映ったのは隻眼の男。
アンドリュー=バルトフェルド。
この艦の艦長であり、自分達の実質的な指揮者でもある。

『ご苦労だったな、キラ』
「バルトフェルドさん」
『いろいろ話はあるが、報告や打ち合わせは後にしよう。今は部屋でゆっくり休んでくれ』
「でも」
『いいから。大した事は起こっていないし、別行動中のドムトルーパー隊も直にこちらと合流する。
 ある程度のことはこちらでやっておくから、お前は休むんだ』
「……わかりました」

気持ちはありがたいが、正直気が重い。
自分は寝ることがあまり好きではない。夢見が良くないのだ。
彼女を失ってから今日まで満足に寝れたことがない。

整備士と幾つか話したあと彼に機体を任せ、キラはバルトフェルドの指示に従い部屋へと戻った。扉が開かれる。
中にいたのは7、8歳くらいの幼い少女。ベッドの上で座ったまま、暇そうにブラブラと足を振っていた。
部屋に入ってきた自分と目が合い、こちらにトテトテと近寄ってくる。
服の裾をそっと握りながら顔を上げ、自分を見つめる。絡み合う2人の視線。
だがその口からは何も出てこない。迎えの言葉すらも。
別に自分もそんなもの、望んではいないけれど。

「………」
「………」

しばらくそのまま見つめあう。喋れない彼女と喋る気が無い自分。沈黙が続く。
自分はこの娘に特別な感情は抱いていない。愛情も、親愛すらも。
当然だ。少し前に気紛れで拾った子供に過ぎないのだから。
両親を失い孤児院では虐められて追い出されたという情報を偶然耳にし、出会った時には道路の脇で転がっていた。
それを見ても自分の心には何も響かなかったが、自分の傍に 『彼女』 がいればきっと助けるだろうと思って拾っただけ。
愛情など湧くわけもない。精神的なショックによる失語症だと判明しても憐れみの気持ちすら起こらない。
むしろその娘の名前とピンクの髪が 『彼女』 を思い出させるので、あまり視界にも入れたくなかった。
だが迎えてくれた小さな女の子を無視するというのもひどい話で。

だから彼女の頭を軽く撫で、感情を感じさせない声で呟いた。


「――――ただいま、ラクス」



416CROSS POINT:2010/01/20(水) 00:02:44 ID:???
今日はここまでです
417通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 00:04:30 ID:???


女の子はラクスが死んだときにいた、花束渡した女の子とは別なのか?
418CROSS POINT:2010/01/20(水) 00:09:10 ID:???
ラクスが助けた子です
すいません、年齢を7〜8歳って書いちゃった
本当は5歳くらいです
419通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 00:17:47 ID:???
ラクスに爆弾渡して死なせたことで両親死亡、孤児院でも虐められたって感じなのかな
420通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 16:58:07 ID:???
どシリアスなのに中ボス発言で笑ってしまった
421通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 17:54:04 ID:???
なんか、まさに俺の読みたかった話を書いてくれてる感じですごくいいわ
乙&次までワクテカ
422CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:32:42 ID:???

オーブ宮殿の代表室。2人の男女がテレビに映る映像を見ている。
画面の中には漆黒の宇宙。
そして次々に落とされていく多数のMSと航行不能になった戦艦が映っていた。

「………以上が、今回の顛末だ」

テレビの映像を止めて、金髪の女性、カガリ=ユラ=アスハが口を開く。

「もう、アイツの行動をこれ以上見過ごすことはできない」

悲しみと悔しさが混ざった表情で彼女は呟いた。話しかけられた男性は組んでいた腕を解き、溜息を吐く。
彼の名はアスラン=ザラ少将。
無限の正義、インフィニットジャスティスのパイロットにして
『平和の歌姫』 ラクス=クラインを飛翔させたもう一つの翼である。

「君にまで手を上げたか。アイツは本気なんだな。本気で世界に……」
「すまない。私たちでは……私では止めることができなかった」
「それは仕方ないさ。本気のキラと戦えるやつなんかこの世界には数えるほどしかいない。
 それよりもムウさんたちはどうなった?」
「フラガ一佐の傷は軽傷で大したことなかったから、もう既に退院してる。今回の作戦にも参加予定だ。
 だけどキサカや他のパイロットたちは重傷で、しばらく復帰は無理だろうな」
「そうか……」
「それよりもすまない。私がお前にプラントとの仲介役を頼んだりしなければ、
 お前抜きで説得に行かなければ、もっとまともな状況で頼めただろうに……」
「緊急事態だったんだ、しょうがないさ。
 それに正直キラ相手じゃムウさん以外は誰が側にいても足手纏いにしかならないだろうしな。
 心配するな、何とかやってみるさ」
「すまない……」

カガリは俯いたまま目を閉じ、強く拳を握った。覚悟を決めているのだろう。
しばらくして顔を上げた彼女の表情に、迷いは無かった。

「アカツキの修理と換装、それに軍の再編成が終わり次第行って貰う事になる。
 でもそれにはまだ時間がかかるから、アスランはそれまで自由にしていてくれ。
 訓練でもいいし、家族と共に過ごしてもいい。多少の融通ならきくと思うから」

そう言ってカガリは部屋を後にした。

一人だけ部屋に残される。
周囲がなんとなく暗く感じたので窓から外を見たが、太陽はしっかり出ており外は明るかった。単に心境の問題なのだろう。
現に前まではそうじゃなかった。
進むべき道があった。たくさんの仲間がいた。
世界は光で溢れていた。それがずっと続くと思っていた。
だけど、こんなにもあっさりと終わってしまった。
423CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:34:31 ID:???

溜息を吐き首を横に振る。感傷に浸るのは止めよう。今はこれからの事を考えなければならない。
リモコンを手に取り再生ボタンを押すと、宇宙空間でのフリーダムとオーブ軍の戦闘が映し出された。
いや、それは戦闘と呼べる物では無い。戦況が一方的過ぎる。
ムウのシラヌイアカツキでさえ1分掛かっていない。
強い。感想はその一言で事足りた。

「……勝てないな、コレは」

MSの操縦技能において、キラに敵う者はこの世界にいない。周囲からはキラと同格と謳われている自分も含めてだ。
彼は、自らの父によってそのように造られてしまったから。

ふと思い出す。かつて自分の上司だった男は言った。
自ら育てた闇に喰われて人は滅ぶ、と。
ならば最高の存在として造られたキラに世界が支配されるのも、逃れられない事なのだろうか。
そして自分はまたアイツと戦わなければいけないのだろうか。
あの 「撃ちたくない」 と悲しげに呟いた、かつての少年と。
彼女の亡骸にすがって泣くことしかできなかった、憐れな青年と。

「これが、運命だとでも言うのか」

そうだと言うのなら、ひどく悪趣味なシナリオだ。
正直、脚本の書き直しを要求したい。

―――そういう君もこの 『運命』 というパズルの欠片の1つに過ぎんだろう、アスラン=ザラ

聞き覚えのある声。背後から誰かの声が聞こえたような気がした。
慌てて後ろを振り返る。

―――それともその自慢の剣で、全てを薙ぎ払ってみせるかね?

一瞬見知った姿を見たような気がしたが、そこには誰もいない。
全てを薙ぎ払う。キラを。この最悪の運命を。

だが、俺にそれができるのか?

「俺は…」

「俺は」 の後に続く言葉は何なのだろうか。
自分は何を言おうとしているのか。いや、自分は何がしたいのか。

「俺は………」


答えは見つからず。自分は未だ、迷っている。

424CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:36:44 ID:???

第4話 『ザラ』


雲一つ無い満月の夜。シン=アスカは夜道を1人で歩いていた。

道に響いているのは2つの靴音。彼自身の物ともう一つ。
歩いている間一切口を開かず、かと言って周囲にも目を向けないシン。彼はただ淡々と目的地へと向かう。
まるで何かに追われているかのように。まるで何かを誘い込んでいるかのように。
周囲から分かるのは、印象的な紅い瞳がひどく冷たい光を放っているということだけ。

「………」

目の前には下手な落書きが書き込まれた壁。彼が立ち止まったのは人通りの無さそうな行き止まりだった。
隣の広場と道を分ける錆びたフェンスの近くには、あちこちに捨てられた空き缶が散乱している。
無造作にその中の一つを蹴飛ばした後、初めてその口から呟きが漏れた。6人。

もう一つの靴音が止まる。彼の背後にはスーツを着た細身の男性の姿があった。
男は己の冷たい目を隠そうともせず、振り返ったシンに向かって話しかける。

「どうも今晩は、アスカさん。良い月ですね」
「ちょうど今、雲で隠れちまったけどな」

彼の傍には2人の男。真ん中にいる、シンに声を掛けた細身の男がリーダーの様だ。
それ以外にも周囲に何人かの気配を感じる。そして刺す様な視線も。
どうやら穏やかな話ではなさそうだ。
すぐに動けるよう身体の力を抜きつつ、目の前の男に尋ねる。

「んで、アンタ誰だ?」
「そうですね。今の世界に不満を持っている者、とでも言っておきましょうか」
「なんだ、ザラ派の残党か」
「………」

気取った自己紹介に答えを返すと、図星だったのか男が黙る。意外そうな顔をしてこちらを見た。
だが大した推理でもない。ただの消去法。
ブルーコスモスや連合はコーディを頼らない。今のデュランダル派は戦いに手を染めない。
ザフトはこの間勧誘に来たばかりで、キラが率いているクライン派は自分を必要としない。
残ったのは一つ、ただそれだけのことだ。

「黙るのは良いんだけど、用件があるなら早くしてくれ。腹が減って仕方が無いんだ」
「……分かりました。単刀直入に言いましょう。
 貴方には、これから我々と共に来て頂きます。拒否は認めません」
「いきなりだな。普通は熱意を込めて説得するもんじゃないのか?」
「こちらにも情報が流れてくるのです。プラントもオーブも、貴方を説得することができなかった。
 我々にも余裕は無い。聞く耳を持たないのなら、貴方が言うことを聞いてくれるようにするまで」
425CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:38:55 ID:???

確かに付いて行く気は毛頭無いので、言っていることは全くの間違いではない。
だが展開が早すぎはしないだろうか。
そう話しながら少しずつ距離を詰めてくる3人。紳士的に事を進めるつもりは無いようだ。

「やれやれ、かつての栄華を取り戻すためならどんなことでも、ってことか。ご苦労なことだな。
 アンタらの主になるべき男はオーブに骨を埋める気まんまんだってのに。いつまでそんな無駄な事を続ける気だよ」
「我々を侮辱しているんですか?」
「もう消えろって言いたいだけだ。ブレイク・ザ・ワールドなんか起こしやがったくせして、まだ血が足りないか?
 世界はアンタらを必要としてないんだ。とっとと消えろよ」
「言ってくれますね……パイロット風情が」

男の細い目がさらに細くなる。虫か何かでも見るような目。
こういう目は嫌いだ。踏み潰したくなるから。

「元気があるのは結構ですがね。いい加減、ご自分の状況を理解した方が良いと思いますが。
 貴方だけではない、周りの人間にも危険なことが起きるかもしれませんしねぇ。
 確かルナマリアさんとコニールさんでしたかな? 綺麗な方たちだ」

ルナとコニール。不意に男の口から場違いな名前が出てきた。
この話の流れで出てくる理由は一つしかない。子供でも分かることだ。
フェンスの向こうから新たに現れた3人の大男に軽く視線を向けた後、シンは興味が無さそうに言葉を返した。

「何が言いたいか、よくわからないな。はっきり言えよ」
「わかっているくせに。なに、生きていればそれで十分人質の役目は果たせると言うことです。
 ルナマリアさんは美人だ。そしてコニールさんにも需要は十分あるでしょう。彼女らを抱きたいと思う男は幾らでもいるでしょうな。
 ……例え、無理矢理にでも」

へえ。

「――――なるほど。つまりアンタ、死にたいんだ?」
「まさか。ただ貴方に対して有効な手を使わせてもらうだけです。悪いのは貴方ですよ?
 最初から素直に言うことを聞けば良いものを、こちらが下手に出ていることをいいことに調子に乗るからこうなる」
「いや、そのりくつはおかしい」
 
指を鳴らす男。同時に、シンの周囲を大柄な男たちが囲んでいく。
目の前の2人に今フェンスを乗り越えた3人で合計5人のボディガード。成る程、強気になる訳だ。

「少し痛めつけてやりなさい。MSの操縦に支障が無い程度にね。
 ――――彼女らを捕らえに行くのはそれからでも良いでしょう」

脅しだと思っていたが、どうやら先刻の言葉は本気らしい。
俺をいたぶった後、あの2人を攫う。んで2人を楯に俺を操る、と。
分かり易くて結構なことだ、ハハハ―――――殺すか。
426通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 23:40:42 ID:???
「ねえアスカさん? 女性が泣き叫ぶところを見るのは私も好きではないんです。
 土下座でもして忠誠を誓えば、もしかしたら私の気が変わるかもしれませんよ?」

何言ってるんだろうこいつ。テレビの見すぎだろ。
というかお互いの発言内容とこの状況を考えて、詫びを入れるのが何故に俺なのか。
それはもしかして冗談で言っているのか。

「悪い、何処で俺は笑えば良かったんだ?」
「何かおかしいところでも?」

背後から男が1人飛び掛ってきた瞬間、シンの脳内で何かが弾ける。
開かれる瞳孔、クリアになる全神経。身体中に分泌するアドレナリン。
シンがザフト最強の戦士だった所以である、SEEDが覚醒したのだ。
背後の男に振り向きざま右のボディを合わせる。深々と右拳が鳩尾に突き刺さった。
沈む顎にアッパー気味の左掌底。強烈な一撃に再び跳ね上がる上半身。止めのオーバーハンドを振り抜く前にはもう、男は意識を失っていただろう。
倒れる男には目もくれず、シンは正面の男に視線を向けた。

「――――笑えないから聞いたんだ、雑魚が」

右手をぶらぶらと振りながら男に近付いていく。ボディガード達がその前に立ちはだかった。
気にしたそぶりも見せず、シンは薄く笑う。

「な、何してる!! 早く全員でかかれ!!」
「「了解!!」」

細身の男が声を張り上げる。その命令を受けて、残った男たちが同時に飛び掛ってきた。
シンを殺すわけにはいかないのか、どうやら銃器の類は使わないらしい。全員素手だ。
妥当な判断ではある。武装の変わらない格上の相手と戦う時は、数の力で押すしかないのだから。
呼吸を合わせ、身体共に気を練り上げ、最も充実した瞬間に一斉に掛かる。
それが弱者がとるべき唯一の戦法。

だが、それが正解であるとは限らない。現に、

「う…うあ……」
「………」
「……ぐ…」

シンの足下で呻いている3人の男たちがそれを証明している。
ガードのレベルから言って、どうやらこの細目は本当に下っ端のようだ。
いくら人材が足りてないとはいえ、重役ならもっとマシなボディガードをつけるだろうし。

「3人がかりでこのザマか。で、アンタは何を見せてくれるんだ?」
「おのれ、化け物が……!!」

仲間を倒されて焦ったのだろう。最後の男はナイフを抜いて構えた。
青く光る刃。その技量に自信があるのか、少しだけ顔に余裕が戻っている。
だが無駄なことを。
427CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:42:22 ID:???

「先に忠告しとくぞ。俺にナイフで勝とうなんて思わない方がいい。
 元とは言え、ザフトの赤は伊達じゃないんだ」
「調子に乗るな!!」

せっかく忠告してやったのだが無駄だった。
ならば刃物を人に向けた以上、それなりの目に遭わせなければいけないだろう。
飛び込んでくる男が右手のナイフで突いてきた。そこそこ鋭い一撃。スウェーで避けながらその手首を掴む。
軽く跳ねるシン。左足は相手の後頭部にひっかけ、右膝を思い切り顔に突き刺した。
獣の顎が獲物に喰らいつくかのような攻撃。だがこれだけでは終わらない。
前に崩れ落ちる男の右腕を捻ると、ごきりという音と共に肩が外れた。力の抜けたその手からナイフを抜き取る。

「はい、終了。……いや、アンタも居たな。お待たせ」
「あ……」

残ったのはリーダー1人。流石に余裕が無くなったのか、顔が引きつっている。
細い顔が更に細く見えた。

「どうした、そんなに顔を青くして。さっきまではあんなに余裕があったじゃないか」
「黙れ!! そ、それ以上私に近付くなッッ!! 近付いたら……」
「近付いたら……どうするんだ? 言ってみろよ」

返事をせずに男が胸元に手を入れる。その瞬間シンは既に駆けていた。
取り出された拳銃を左裏拳で弾き飛ばし、そのまま右肩で体当たりを決める。
壁にぶつかりバウンドする男を再度叩きつけ、その首にナイフを添えた。
チェックメイト。生かすも殺すも自分次第だ。

「ヒッ―――」
「アンタの飼い主に3つだけ伝えとけ。
 1つ、このベルリンの復興を妨げない事。2つ、過去現在問わず、俺の仲間と呼べる人間に手を出さない事。
 そして3つ目。ルナマリアとコニールに指一本触れてみろ。
 ――――嬲り殺しだ。
 お前ら全員、いやお前らの家族親友恋人全て、自分が生きている事を泣き叫びながら後悔させてやる」
「そ、そんなことが出来るとでも思って」
「できるさ。信じないのはアンタの勝手だけどな。なんならここで見本を見せてやろうか?
 アンタの言葉を借りるなら、口と耳が無事なら伝言の役目は十分果たせるんだしな」

少し爪の伸びた2本の指を男の目にゆっくりと近付ける。
背けようとする喉には、ナイフを食い込みそうなくらい近く。逃がしはしない。
男はこの時、ようやく自分が狩られる側だと理解したのだろう。顔を青くしながら懇願した。

「や、やめてくれ!! 頼む、私が悪かった!!だから……」
「なんだよ。さっき自分が言ってたことじゃないか」
428通常の名無しさんの3倍:2010/01/20(水) 23:46:31 ID:???

眼球から数ミリの位置で二本貫き手を止めたまま、シンは冷ややかに笑う。
おそらく自分の目は笑っていないだろう。当たり前だ。
本気だろうがそうでなかろうが、あの2人を危険な目に遭わせるなど、絶対に許せるものではない。

「いいか。これから先あの2人に何かあれば、真っ先にお前らを殺す。
 地割れに落ちようが隕石にぶつかろうが、例え羽根クジラが地球を襲ってきてもお前らを殺す。
 正体がバレないなんて考えるなよ?
 お前らを殺す為にクライン派の犬になる選択肢だってあるんだ」
「わ、分かった…伝える、伝えるから……」
「約束だぜ?」

ゆっくりと手を放す。男の腰が落ちた。
土下座をするかのように手を地面につける。目を合わすことすらできない様だ。
だが同情はしない。ガタガタと震える男に呟く。

「人が怒る事を言わない。良い勉強になっただろ? アンタも」
「は、はい……」
「分かってくれれば良いんだ。それじゃ夜も遅いし、そろそろお休みの時間だな」
「え?」
「わかんないかな」

男の後頭部にそっと手を添えて、思い切り地面に叩きつける。
ぐちゃりという音が響き、男は動かなくなった。

「もう、寝ろよ」




「腹減った」

意識が戻りかけていた大男A〜Eにしっかりと止めの蹴りをプレゼントして、シンは家への帰宅を再開した。
時間は意外と経っていたらしい。夕食をとるには少し遅い時間だ。
流石に2人はもう食べ終わってるだろうし、夕食はどうしようか。
冷蔵庫の中身を思い出しながらアパートを見ると、自分の部屋の明かりが点いていた。
出る時に点けっぱなしにした覚えは無い。あの2人まだいるのか。
階段を上がって部屋のドアを開ける。

「ただいま」
「遅い!! ってか帰るの遅くなるなら連絡ぐらいしろよな!!」
「おかえり。一体何してたのよシン? コニールと2人でずっと待ってたんだからね」

振り返るのは2人の女性。自分を咎める様子はあまり無い。
テーブルの上にはラップのかかった料理の皿が並べられている。
本当に待ってていてくれたのか。
429CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:49:07 ID:???

「本当に悪い。でも、先に食べてても良かったんだけど」
「何言ってんだ。食事は皆で。それが私たちの唯一の決まりじゃないか」
「いや初耳なんだけど。何それ?」
「はいはい、そんな事はいいから早く食べましょ。あ〜お腹すいた!」

何事もなかったかのように食卓に着く2人。シンも頬を掻きつつ席に着く。
理由を聞いてこないのはありがたかった。

「「「いただきます」」」

夕食が美味しかったのは、空腹のせいだけじゃないのかもしれない。




大人になったなぁ。やはり環境は人を変えるのだろうか。
食器を洗うメイリンを見ながら、アスランは思った。

視線の先には自分の妻の後ろ姿。背後から抱き締めたくなるような細い肩に色っぽいうなじ。
無論変わったのは外見だけではない。
料理や家事などしっかり妻の務めを果たしているのもさることながら、軍では自分の秘書的な補佐もこなしてくれてるし。
プラントでは成人とはいえ、彼女はまだ二十歳いっていないのに。まさかこんなに大人っぽくなるなんて思わなかった。
まあそれを言えば彼女と結婚するなんて出会った時には想像もできなかったけれども。

いや、今はそんなのろけてる場合じゃなくて。

「メイリン、今時間良いか? ちょっと話があるんだが」
「はい。なんですか? あなた」

タオルで手を拭きながら、メイリンはソファに座りかけた。
元々カンの良い子だ。真剣な話だと察知したのだろう。
真面目な顔でこちらを見ている。

「知っているとは思うが、俺は今回キラを説得しに行くことになった」
「……はい」
「勿論説得が成功すると信じているし、必ず成功させる。
 だけどもし説得が失敗してしまったとき……最悪の場合キラと戦うこともありえる。
 そうなった場合、俺にとってかなりハードな任務になるだろう。だから代表が俺に休暇をくれた」
「……そうですか」

メイリンの顔が曇る。彼女もキラを良く知っていた。気が沈むのは無理も無い。
だが自分は彼女のそんな顔を見たくない。自分が愛する、眩しいほどの笑顔が見たい。
大丈夫、説得は成功するに決まっている。だから今はこの降って沸いた休暇を最大限に楽しむべきなのだ。
そういう想いを込めて、次の言葉はあえて明るい声で切り出した。
430CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:53:04 ID:???

「さて、それでここからが本題でね。君の意見が聞きたいんだ。
 戦いにはまだ時間があるから代表には自由にしていいと言われたんだけど、何かあるかな?」
「私の意見でいいんですか? 本当に?」
「俺じゃ何をするか思い浮かばないからね。できるかぎり君の希望にも答えたいし」

自分の意を汲んだのか、明るい声で返すメイリンに笑顔を向ける。
少しは考えるかとも思ったのだが、妻の答えは即答だった。

「それじゃ、お姉ちゃんやシンに会いに行きましょ! 特にシンとは結婚式以来会ってないし」
「シンか……。そんなに経つんだな、あいつとは」

ルナは何度かオーブに遊びに来たことがある。シンと別れた頃だった為、夫婦揃って長い愚痴を聞かされたっけ。
だが確かにシンとは自分たちの結婚式以来会っていない。そう悪い選択でもないか。
前から顔ぐらいは見たいとは思っていたし、何より自分の妻がそれを望んでいる。
少し思いついた事もあるし、否定する理由は無かった。

「そうだな。行くか」
「決定ね、それじゃすぐ行きましょ!! 大丈夫、準備はもうできてるから!!」
「早いな」
「実はさっき、ムウさんが教えてくれてたの!!」

なんだムウさんが教えてたのか。まあ嬉しそうだからいいや。だがそれにしてもベルリンねえ。
紅茶を口に含みながら考える。
思い浮かぶのは不機嫌そうな仏頂面。

シン=アスカ。

アスランの元部下で、手強い敵でもあった少年。
戦後はフェイスという地位をあっさりと捨て、現在はいちボランティアとして復興作業に励んでいる男。
だがその強さは折り紙付きだ。
世界でも数少ないSEEDの所持者でもあり、自分やキラを落としたこともある。
もし彼が今回の件に手を貸してくれるなら、言うことは無いが……

「今は間違いなく世界の危機だ。なら、手段は選んでられないか」

あいつには申し訳ないが、世界の為に手を貸してもらおう。
実戦からはしばらく離れているだろうが、それでもきっと戦力になってくれる筈だ。
実際オーブの将軍として世界を回っている今でも、自分はあいつ以上のパイロットと会ったことがない。
自分にムウさんに、そしてシン。
これだけ揃えばいくらキラでもなんとか抑えることができる。
431CROSS POINT:2010/01/20(水) 23:58:48 ID:???

「よし。行こう……ベルリンへ!!」

こんな頭で良ければいくらでも下げてやる。覚悟は決まった。
だから後は残った疑問を解消するだけ。
目の前にいる、大きなバッグを抱えた妻に問うてみた。

「なあメイリン。すぐって……もしかして今から行くつもりか?」
「当然。お姉ちゃんにも連絡はバッチリです。あ、チケットとホテルを早く準備してくださいね」

準備て。今は夜ですよ奥さん。

「俺が? けど、もうこんな時間なんだけど」
「少将なんだからそれぐらい大丈夫でしょ? やっぱり利用できるものは利用しないとね!!」
「はあ……いや、そこまで言うならまあ、何とかしてみるけどさ」


大人になったなぁ。いやホント、いろいろな意味で。

432CROSS POINT:2010/01/21(木) 00:01:30 ID:???
今日はここまでです
433通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 00:12:25 ID:???
投下乙。
メイリン強かになったな。
434通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 02:51:15 ID:???
乙GJ!
アスランが楽観的に見えるけど、これでシンには同行を断られ、
ムウとのタッグで破れ磔ビーム掃射…につながるんでしょうか。
まさかとは、あるいは言うまでも無いかもですが
あれは機体だけでなく中の人ごと…?
435通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 13:41:36 ID:???
猛烈な勢いの投下乙。書きためでなかったらすごいわ。

凸の空気読めなさが未来を予感させてあまりにも惨め。
まだ説得できる気でいるのとシンを説得できる気でいるのと両方。
それでも前のニュースを見た反応だとそれなりに期待させる程度には話し合えたようだけど。
436通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 20:35:02 ID:???
もしもプラントがアルファコンプレックスだったら

議員候補の選出基準とか、あり得ないと言い切れないのが怖い
437CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:36:47 ID:???


第5話 『目覚めろ野性』


―――何でこんな事やってるんだっけ。

アスラン=ザラはそう思いながら、手の中にあるナイフを見つめた。


キラと戦うこと、そして短い休暇が貰えた事を妻であるメイリン=ザラに伝えたところ、
それならば姉達に会いに行こう、と即決されたのが一昨日の晩。
こちらにも考えていたことがあったので、素直に飛行機を準備。空港近くのホテルで一泊したのが昨日。
シン達の家に着いたのが今朝で、女性陣がショッピングに出かけたのが1時間前。
しばらくシン相手にキラの件を話していたのだが、唐突に 「外に出る。ちょっと付き合え」 と言われたのが15分前で
家の近くの広場に連れて来られ、何故かナイフを手渡されたのがつい先程。
軽く手合わせでもしようということらしい。
何故こういう流れになったのかは、さっぱり分からないが。

「ナイフとは懐かしいな。アカデミーの卒業前にフレッド教官とやって以来だ」
「アンタもか。俺もあれ以来やっていない」
「なんだ、お前もナイフの成績トップだったのか。……勝ったのか?」
「あんな鬼軍曹気取りに負けるかよ。それより、準備はいいのか?」
「刃を潰したナイフじゃないと危ないと思うんだが…。まあ、こちらはいつでも構わないぞ」

少しだけシンの冷たい目が気になるが、まあいいか。
今平和に暮らしているシンだって、本気で身体を動かしたくなるときがある。
たまにしか会えないんだし、それぐらい付き合ってやるのも年上の役目だろう。

「そうか。じゃあ、本気で行くぞ」

そう言うと同時にシンが飛び込んできた。鋭い斬撃に、俊敏なステップ。
かなりの腕前だ。ナイフの成績がトップだったと言うのも伊達ではない。
攻めに転じることができないまま、アスランはしばらく防御に専念する。

「どうした? 攻めて来いよ」
「言われなくても!!」

何合か打ち合ううちに気付いたことがある。普通はこれだけの攻撃を長い間捌き続けることはできない。
相手の攻撃を目で見てから動くまでの間に、少なからずタイムラグができるからだ。
だが今、反応できている現実。そこから考えられることは一つ。
意外にもシンの型は基本に忠実だ。
いや、忠実すぎる。だから次の動きが読めてしまう。
アカデミーの生徒や教官には斬撃の鋭さでなんとかなったのかもしれないが、自分には通用する筈が無い。
リズム良く響く剣戟の音。アスランはそのペースを急激に変えた。
438CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:39:42 ID:???

「!?」
「甘い!!」

戸惑いを見せたシンに、無拍子で突きを入れる。バランスを崩しながらも受けるシン。
その隙を突いて蹴りを放つ。これも防いだか、流石だ。
だが変わった流れは止められない。
シンも必死に反撃してくるが自分のリズムを見失っているのか、攻撃に先程までのキレがなくなっている。
自然とアスランの攻める時間が長くなっていく。決着は時間の問題だろう。
攻防の中、不意にシンの腰ががくりと落ちた。足でも滑らせたのか。理由はどうでもいい。
とにかくこれで、チェックメイトだ。

「終わりだ!!」

死に体のシンに止めの一撃を振り下ろす。
これは避けられまい。
そう思いながら出した攻撃を、シンはさらに深く沈みこんで避けた。
空を切るナイフ。
そのままシンは身体を回転させつつ、アスランの両足を払う。水面蹴り。

「はっっ!!!」
「なっ!?」

背中に奔る衝撃。目に映ったのは青空。何だ? 倒されたのか、俺が?
呆ける暇もなく、仰向けに倒れるアスランにシンが襲い掛かる。
右手のナイフを横に払うシン。だが、このコースは―――

「ちぃっ!!!」

首筋に迫る刃を寝転がったままナイフで受け止める。同時に頭から血の気が引いていった。
危なかった。なんだ今のは。咄嗟に受けなかったら、怪我どころじゃ済まなかっただろう。
見下した様な視線を向けるシンに、思わず声を掛ける。

「お前…今の、本気で……」
「―――なんだそりゃ。それで本気かアスラン?
 ならやっぱりキラに殺される前に、ここで戦えなくなった方がいいな。メイリンが悲しまなくてすむ」
「何だと……?」

押し込もうとするシンを蹴飛ばして立ち上がる。どうやら先ほどの基本に忠実のくだりは罠だった模様。アスランは注意深く距離を取った。
シンは動かずに立ち止まったまま。人を本気で攻撃した上、どこか冷たい視線を自分に向けている。
ミネルバ時代のそれが失望だとするならば、これは諦観。道端に転がった邪魔な石を見るような目だ。

ふざけるなよこの野郎。そんな目で俺を見るんじゃない。
439通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 23:42:43 ID:???

体中に血が廻る懐かしい感覚。分泌されるアドレナリン。これは怒りか。
自分から本気になるような事はしない。だがこいつの今の態度だけはいただけない。
本気で屈服させたくなってしまう。

「どういう意味だ? シン、答えろ」
「どういう意味も何も。アンタはキラには勝てない。
 忘れたのか? 戦場じゃ迷いのある奴は、生きてはいけないって事を」
「だからって……」
「ガタガタやかましいな。さっきから能書きが多いんだよ、アンタはいつも。
 したい事、しなきゃいけない事は分かってるんだろう? なのにいつまでも迷ってさ。
 情けないんだよ。何だそのザマ。
 
―――本気で殺してやろうか」

プツンと何かが切れる音がした。今のは止めだ。
こいつ、俺の怒りのラインを思いっきり飛び越えやがった。

「お前、今の発言……」

アスランの瞳孔が開く。同時に表情が消えたのが自分でも解った。意識もクリアになっていく。
シンは変わらず、獣の様に犬歯をむき出しにしていた。アスランと同じく瞳孔が開いている。
危険な雰囲気はそのままだ。だがそんなの関係ない。

「後悔するぞ……」
「やってみろよ」

ナイフを逆手に持ち、顔の前で構えた。刃に自分の顔が少しだけ映る。
身体の力を抜いたまま、ゆっくり近付いてくるシン。視線だけは鋭いまま。

―――あと7メートル。

手加減? 怪我の心配?
知ったことか。
そんな思考は必要ない。どうせ簡単にそんな事をできる相手でもないのだ。
潰す気で仕掛けて、生き残ってた時に頭が冷えたら考えれば良い。

―――6メートル。

お互い相手から視線は外さない。アスランは少しだけ身体の重心を落とす。
右半身に構えていくシン。右手に持ったナイフが、振り子の様に揺れている。

―――5メートル。間合いに入ったか
440CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:45:08 ID:???

「でやぁっ!!!」
「ふっ!!!」

シンが一瞬で間合いに入った。右手を鞭のようにしならせて、首筋へ刃を振るう。
それをナイフで受け、後ろに下がりながら左足をシンの顎目掛けて跳ね上げる。
スウェーで避けるシン。今度はアスランが前に出る。
攻守逆転。
ナイフの持ち方を変え、シンの首に向かって平突き。右に避けられるが、そのまま逃げた方向に払う。
鋭い一撃だったがシンのナイフに阻まれた。鍔迫り合いが続く。
同時に離れ、息を吐く間もなくまたぶつかり合った。

目まぐるしく入れ替わる攻守。ぶつかりあうナイフから飛び散る火花。
実力は拮抗しており、簡単に決着は尽きそうに無い。



戦いを始めてから、どれくらいたったのだろうか。
10分か。30分か。1時間は経っていないだろう。
既にお互いのナイフは折れており、先程から素手での殴り合いが続いていた。
そこらの格闘家が裸足で逃げ出すような壮絶な戦いに、何時の間にか相当な数のギャラリーが集まっている。
尤も2人とも戦いの事で精一杯で、周囲の状況に気付いていないが。

「ハア、ハア……この、でこっぱちがぁ………」
「かはっ…ハッ…五月蝿い、ウサギ野郎……」
「言ったな……オラァ!!」

怒声と共に放たれた左ジャブを掻い潜りながらシンに近付く。
続いた打ち下ろしの右ストレートを受け止めると同時に手首を捉え、少しだけ重心を落とす。
瞬間、シンの身体が宙を舞った。

「うおっ!?」
「ちぃっ!!」

シンは驚愕し、アスランは唸った。
完璧なタイミングで放った、手首を極めながらの投げ。そのロックをシンは、投げられながら肩を蹴り飛ばすことによって外したのだ。
シンは蹴った勢いのまま一回転しながら着地。ダメージを受けた様子は無い。
流石は戦いの申し子とまで呼ばれた男。だが姿勢が崩れている。この機は逃さない。
飛び込みながらシンの顔面に渾身のストレートを放つ。
だが、シンはヘッドスリップしながらそれを避けた。同時に腹部に衝撃が奔る。

「ぐっ…!!」

カウンターで左の中段突きを叩き込まれたようだ。今の隙すら誘いだったってのか。
思わず退がろうとするが、シンは逃がしてくれない。左足を踏み出しながら右のロングフック。
両手を交差して受ける。体重の乗った一撃に吹き飛ばされそうになり、バランスが崩れた。
次は何が――考えるまでもない、止めの一撃だ。
狙われたのは交差したガードの隙間。そこにシンの左アッパーが迫る。
441CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:48:10 ID:???
喰らえば終わり。だが、

「まだ…まだぁ!!」

掠める拳。赤い線を引く頬。
そして、シンの顎にアスランの左膝が突き刺さる。手応え十分。カウンターがまともに決まった。
これは勝負ありだ。俺の勝ち―――

「がっ!?」

自分の頬に硬い何かが叩き込まれる。
シンの右拳だと理解した時には既に両足が地面から離れ、何度も地面と青空を見た。
何周かして、転がる勢いが止まる。気付けば空を見上げていた。
視界が歪む。観衆たちの興奮や応援の声が頭に響く。くそ、お前ら少し黙ってろ。
立ち上がらなくては。今の自分は隙だらけだ。急がないと追撃が―――来ない。
なんでだ。

「く、おお……」

どうにかして顔だけ起こすと、目の前にはシンがいた。
なんとか立ち上がろうと、生まれたての子馬のように膝を震わせている。

「ファーイブ、シーックス……」

観衆たちが勝手にカウントを数えているが、そんなものに付き合ってやる必要はない。
だがシンはテンカウントまでに立ち上がりそうだったので、自分も両脚に力を込める。
なんとなく、立てなかったら負けみたいな空気になっていたし。

「う、おおおっ!!!」

気合と同時に立ち上がった。周囲から拍手や叫び声、応援の声が巻き起こる。
シンも自分もグロッキー状態だが、目だけは死んでいない。2人とも相手に向かってふらふらと近付いて行く。
シンは両手をだらりとぶらさげたまま。腕を上げる力も残っていないのだろう。それを言ったら自分もだが。
お互いの息がかかる位の位置で立ち止まった。

「……」
「……」

蹴りは打てない。突きも下半身がおぼつかないため満足に放てない。残った攻撃方法はただ1つ。
両者、無言で身体を軽く反る。残された最後の力を込めて―――
お互いの額を叩きつけた。周囲に嫌な音が響き渡る。
額をくっ付け合ったまま動かない2人。
固唾を呑んで見守る観衆。
目を逸らさずにずっと睨み合っていた2人だったが、そのうちシンの目がいつもの穏やかなそれに戻っていく。
442CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:50:12 ID:???

そして、溜息を吐きながら呟いた。

「……まあ、こんなもんで、いいか…」
「もう、いいのか?」
「ああ。もう終わりだ」

その言葉と同時に、シンが倒れ始める。いや彼だけじゃない、自分もだ。
同じタイミングで仰向けにぶっ倒れた。観衆が再び歓喜と興奮の声を上げる。
頭がクラクラする。視界はまだ歪んだまま。身体も節々が痛い。
だが気分は悪くなかった。
限界まで身体を動かした。何もかも忘れて、シンとの戦いに集中した。

身体中が今の休息を喜んでいる。心地よい倦怠感。
そういえば、こんなにクタクタになってぶっ倒れたのっていつぶりだっけ。

「……おい」
「なんだよ」
「久しぶりに本気で身体動かして、少しはスッキリしたか? この不完全燃焼野郎」
「黙れ2股男。……というかやっぱりそういうことか。まあ、気が晴れたのは確かだが……体中が痛い」
「お互い様だ。コラ、見せ物じゃないぞ」

集まっていた観衆に、散れと言わんばかりに手を払うシン。身体に響いたのか痛そうに脇腹をさすっている。
それを見ないようにしながら、アスランは再び空を見上げた。そもそも何で俺達はこんなことしてたんだったか。
そう、キラの件だ。少しだけクリアになった頭で考える。
そしてしばらくたってから、ポツリと呟いた。

「なあ、シン。俺は、逃げてるのかな?」
「―――多分な。
 気持ちは分からないでもないし、俺も人の事をあんまり言える立場じゃないけど。そっちに関しては答えがもう出てる。
 アイツはやりすぎた。越えちゃいけないラインを越えちまってるんだ。
 無理だよもう。……もう、昔に戻ることはできない」

そう、キラは変わりすぎた。
かつての心優しい少年は、今では誰も止めることのできない全知全能の狂戦士に成り果てた。
ただ1人で世界に戦いを挑めるほどの怪物へと。

「本当は理解してるんだ。俺達が何を言っても、もうあいつが変わることはないって。
 あいつを変えられるのはきっと、ラクスだけだろうから」
443CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:53:26 ID:???

あの日失った、キラの大切な存在。
その隙間を埋めることができたのなら、あいつは人間に戻れるのだろうか?
いや、多分無理だ。それはもう、自分で作り出すことも、他人から与えられることもできないもの。
キラにとっては妻であり、恋人であり、母であった女性。
そして彼女は、キラの身に巣食う狂戦士を抑えるストッパーでもあった。
力に呑まれかねない彼に、想いという道標を与えることができる唯一の存在。

今なら分かる。キラはあの時、人である自分を失ったのだ。

「俺は、あの時アイツに何もしてやれなかったんだ。だから」

思い出す。彼女に縋りついて泣いていた、憐れな青年。
あの時俺が何かできたなら。キラは人のままでいられたんじゃないだろうか。
消えぬ後悔。無意味な仮定。
時間は決して戻る事はないのに。

だが何もできなかった自分への、けじめだけは付けなければならない。

「アイツは、俺が止める」

絞り出した声は泣きそうで。
けれど、迷いだけは感じられなかった。



「すまない。かっこ悪いところ、見せてしまったな」
「構わないさ。アンタのかっこ悪いところなんか、ミネルバ時代で見慣れてる」
「お前それひどくないか?」
「事実だろ」

意地悪な発言をするシンに軽く抗議するが、あっさりと切り捨てられた。
いやまあ、自分でもあの頃を思い出すと恥ずかしくなってくるが。我ながら客観的に見て痛い奴だったのは事実だし。

「でもまあ、正直に言うと少しすっきりしたよ。本当は、俺も誰かに聞いて欲しかったのかもしれないな」
「ストレスや不満を溜め込みすぎなんだよ、アンタは」

確かに。それはよく言われる。それから理想や綺麗なものに捉われすぎているとも。
世の中白い物ばかりではない。グレーの物や、真っ黒の物だってあるのだ。
そして時に理想を頑なに貫くよりも汚れた道を通った方が上手く行く事もある。
だが自分はそれに耐えられない。
理想を放棄した自分に失望してしまう。これで良いのかと。
もし理想を貫けたとしても、その後でもっと良い方法があったのではと考え込んでしまう。
こんな事では自分が求める正解なんて手に入るわけがない。
分かっているのだ、自分でも。
444CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:56:00 ID:???

誰かに答えを提示してもらうと動きやすかった。だからラクスといたのかもしれない。
何しろ彼女は私欲が無い。打算や妥協など考えずに、ただ正しい事だけをしようとする。
他人の悪意など考えもせず、人の善意だけを信じて。
そんな彼女の目指す場所には、自分の求めるものがあると思っていた。
しかし今思うとそれは、考えることを止めていた、ということなんじゃないだろうか。
彼女の唱える正義に流されるまま操り人形のように力を振るい、異を唱える者を見下す。可哀想な奴だ、と。
自分で見つけ出した正義でもないのに。

思考がネガティブな方向になっていく。
いかんいかん、せっかく気持ちが少し晴れたのだ。考えないようにしよう。
何か別の話題を。

「そ、そう言えばシン、お前はあの2人のことどうするつもりなんだ?」
「いきなりだな。どうする、って?」
「どっちを選ぶのかってことだよ」

からかうように質問して無理矢理話題を変えた。情けない姿を見られた仕返し。
子供みたいな手だが背に腹は変えられない。他にシンの弱味知らないし。
きっとシンは恥ずかしがりながら 「アンタには関係ないだろ」 とでも言うのだろう。
そう思って掛けた言葉だったが、シンは真面目な声で返した。

「………今は、何も考えられない」

「何も考えられないって……お前、あの2人のこと抱きたいとか、思ったことないのか?」
「あるに決まってるだろ。あいつらはいい女さ。今まで出会った女の中で、5本の指には入るよ。だけど」

空を見上げながら続けるシン。彼女たちのことを思い出しているのだろうか。

「コニールはいつかガルナハンに帰らなきゃいけないだろうし、ルナだっていつまでもここにいるわけにもいかない。
 そして今の俺は、あいつらの気持ちに答えられないんだ。
 アンタだって知ってるんだろ? 俺がここにいる理由を。
 結果的に、俺はあいつらを差し置いて他の女の子のことを考えてるんだぞ」
「それはそうかもしれないが…。いつかはお前だって吹っ切ることができて、他の誰かを愛するようになる。
 人は1人では生きていけないからな。
 あの2人なら、それまで待っててくれそうなものだが」

コニールとルナマリア、2人とも追いかけられるタイプじゃなくて追いかけるタイプっぽいしな。
獲物が罠に掛かるまで待つくらいはなんとも思わないだろう、彼女たちなら。

「そうかもな。でも考えてみろよ。あの2人、若くて綺麗でなによりいい女なんだぞ。
 それをこんなとこで、自分の気持ちに応えてくれるかどうかも分からない男の側にずっといる。
 ……それって、幸せな事か?
 普通のやつなら、そんな男やめて他の男探せって言うところだ。それに」 

目を閉じる。想いに答えられない自分を責めているかのように。
445CROSS POINT:2010/01/21(木) 23:57:51 ID:???

「好きな相手には、抱かれたいって思うのが普通だろ」

まあ確かにそうだ。例え自分に振り向いてくれなくても、1人の男を想い続ける。
そんな生き方が綺麗に見えることもあるだろう。
だが、それが幸せであるとは限らない。
しかも自分自身が原因というなら、尚更見ていられないものなのかもしれない。

「だけどそれじゃお前はどうするんだ。あの2人を差し置いて、一体何を目指す」
「―――医者、かな」
「医者? お前が?」

思いっきり想像の範疇の外から来た。シンが医者って。
こういうのも何だが、はっきり言って似合ってない。想像すらできない。

「ああ。俺は此処で医者になる。今まで沢山の命を奪ってきた。だから、今度は人の命を救いたい。
このベルリンで暮らす人たちの力になり続けたい。
 ……命って、足し算引き算するようなものじゃないってことは、理解してるつもりだけど」
「それが償いか? お前自身と 『彼女』 の」
「そうなんだろうな、多分。だから俺は彼女たちと行けない。
 ―――今は。自分のことをするのが精一杯なんだ」

遠くを見ながら、そう呟くシン。
思わず溜息が漏れる。こいつ、前向きなのか後ろ向きなのかよくわからん。
相変わらず不器用で、自分から重い荷物背負うような真似してるけど。未だに悩んで答えを見つけてないみたいだけど。
それでもまあ、どうにか歩いているように見えた。
俺たちとは行く道が違うが、これが彼の戦いなのだろう。
先輩らしく何か手助けでもしたかったけれど、答えを出すのは彼もしくは彼女たちだ。

自分の出る幕じゃないな。

「そっか。言いづらいこと聞いてしまって、悪かったな」
「別に気にしてない。それより、アンタが人のゴシップ気にするようになるなんてな。そっちの方が驚きだ」
「……メイリンのゴシップ好きがうつったかな?」
「なるほど、アイツが原因か」

自分の妻の顔を思い出す。と、遠目に本人の姿が見えた。ルナマリアやコニールも一緒だ。
噂をすれば影か。
立ち上がり、服に付いた埃を掃った。
446通常の名無しさんの3倍:2010/01/22(金) 00:07:16 ID:???
支援
447CROSS POINT:2010/01/22(金) 00:07:29 ID:???

「なあ、シン。一つだけ忠告させてもらう。あまり結論を急ぎ過ぎないようにしろよ?
 お前が彼女たちのことを想った末の行動ってやつが、彼女たちの望むものだとは限らないからな」
「なんだそれ。どういう意味だ?」
「彼女たちには彼女たちの答えがあるってことさ」
「……ん。まあ、わかった。覚えとくよ」

シンも立ち上がり、ゆっくりと彼女たちの方に歩き出す。荷物を持ってやるつもりなのだろう。
ルナマリアとコニールがシンの顔の傷に驚いている。メイリンはこちらを見た後、溜息を吐いた。
鋭い女だ。いや、今の自分達を見たら誰でも気付くか。
だが、それにしても。

「―――医者になる、か。やれやれ。当てが外れてしまったな」

本当は、シンに手を貸して貰うつもりでここに来た。
オーブとの戦いの映像を見た限りでは、ムウさんでも直接キラと戦うのは少し厳しい。期待はするが、援護がメインだろう。
となると真っ向から渡り合うのは自分だけ。必然的に勝算が下がる。
だがシンなら。自分達に匹敵する力を持つ彼もいれば、自分にかかる負担も大幅に減るのではないだろうか。
そしてキラを殺さずに捕らえることができるのではないか。
そう思って此処に来たのだが、結局誘うことはできなかった。こいつはもう戦いに関わっちゃいけない人間だ。
こいつにはこいつの戦いがある。そして、帰りを待つ者も。
そして自分は、もうシンにはこれ以上大切なものを失って欲しくない。

ならばさっき決意したように、この戦いは自分がケリをつけるしかないだろう。
再び、この手で親友を手に掛ける事になったとしても。


アスランはこの時、キラとは自分1人で対峙する覚悟を固めた。


448CROSS POINT:2010/01/22(金) 00:11:16 ID:???
今日はここまでです
449通常の名無しさんの3倍:2010/01/22(金) 00:35:46 ID:???
馬鹿な…… 凸がカッコイイだと!?

人間描く時は、カッコ悪いカッコ良さってのもあるよね。
450通常の名無しさんの3倍:2010/01/22(金) 00:49:47 ID:???
よくある上から目線での身勝手な「説得」とかしてなかったのな。
思えばこのSSの世界観、ラクス暗殺さえなければ各自それぞれ
過干渉もなく穏当な戦後生活を送っていけてたのかもね。
だんだんあの磔処刑の図が切ないものになってきたような。
してみると次回はオーブ(カガリ魔乳ムウ)サイドの決戦前夜かな?
451通常の名無しさんの3倍:2010/01/22(金) 23:10:20 ID:???
オモシロ!

二人の殴り合いはもしかして、元ネタ幽白かな?
452通常の名無しさんの3倍:2010/01/23(土) 17:29:41 ID:???
また気が向いたらザクレロも書いてくださいー
453CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:47:58 ID:???


「それで、その情報は間違いないんだな? エターナルが地球に降下したと」
「はい、レーダーの記録にも残っています。しかし海中に潜ったのか、その後の所在は掴めていません」
「ふむ。まあ地球にいることが分かっただけでも良しとすべきなんだろうな。
 ―――ザラ少将に報告しておいてくれ。例の作戦にかかれ。それから頼む、と」
「了解致しました」

報告に来た者を下がらせ、カガリ=ユラ=アスハは椅子に背を預けた。
どうやら来たるべきときが来たようだ。
もしキラを捕らえることに成功し、彼が生き残ったとしても。結局失われたものは戻ってこない。
そしてそれらが一段落つけば、自分の役目も終わる。
現在も代表の座に残っている理由はただ一つ。
今自分をすぐに拘束してしまうと、オーブの前国家元首も協力していたのではと世界中が見る可能性もある。
オーブのためにもそれは避けなければならない。
つまり今回の件に姉は無関係で、彼女も彼女が治める国も弟の凶行の被害者に過ぎない、というポーズのためだけである。

それは構わない。用が済めば消えるだけの境遇に不満は無い。
弟の苦悩に気付けなかったのは実の家族である自分の注意不足。
弟を止められなかったのはただ単に自分の力不足。
自業自得だ。全て自分のせい。文句などあるわけもない。

だが、やりきれなさだけは消せるものではなかった。

「殺されたから殺して、殺したから殺されて。それで世界は平和になるのか……か。
 偉そうなこと言っておいて、自分に一番近い者に届いてないんだから」

唇から小さく言葉がこぼれる。私は無力だ、と。

男が置いていった書類に目を通す。
写っていたのはエターナル。歌姫が乗っていた不敗の艦。
ラクス=クラインの艦としてイメージされるのは、彼女が搭乗しなかったディーヴァよりも
彼女と共に戦場を駆け抜けたこのエターナルの方だろう。

その艦が地球に降下したのが確認されたのは、つい先日のことだった。



第6話 『戦闘開始』


454CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:49:07 ID:???

トントントン、とリズムの良い包丁の音が部屋に響く。音の主の青年は垂れた前髪を掻き上げながら鍋を覗き込む。
青年の名前は言うまでもなくシン=アスカ。今日の昼食の当番は彼だった。

火に掛けたフライパンは十分熱したようなので、油を馴染ませる。そのあとに豚肉を入れた。
その隣の鍋に放り込んだパスタはもうすぐ茹で上がりそうだ。
窓からは太陽の光がこぼれている。目を細めて外を見た。ベルリンの天気予報は雨だったが、どうやら今日の予報は外れの模様。
結構なことだ。雨や雪が降るよりもずっといい。

「そろそろかな」

もうそろそろ茹で上がるか。鍋を軽くかき混ぜながらリビングを見る。
そこには部屋の主である自分よりもくつろいだ2人の女性が、ソファに寝転がりながらテレビを見ていた。
こちらを気にした様子は一向に無い。
いやまあ確かに今日の食事当番は自分なのだが、手伝うことぐらいしても良いだろうに。
特にコニール。食うだけなんだから。

豚肉の色が変わってきた。フライパンに一口大に切った野菜、そしてすりおろしたにんにくを入れる。
そのまましばらく炒めてから、茹で上がったパスタを放り込んだ。
そこでしっかりと味付けしながら麺を絡ませる。頃合を見て大皿へ。
まあ昼食なのでこんなものか。
サラダと飲み物、それにパンは既に机の上に置いてあるし、スープはインスタントなのですぐ準備できる。

「おーい、ご飯できたぞ」

2人に声を掛けるが返事がない。食い入るようにテレビを見つめる両者。
テレビの番組は今、クライマックスを迎えているようだった。

ブラウン管の中には2人の男女。金髪の女性と体格の良い男性。
緊張した面持ちで白いマットに倒れこむ。両手を顎の近くに沿え、視界を前に向けた。
張り詰めた空気。真剣な眼差し。実況の声だけがうるさく響いている。

次の瞬間、画面内で炸裂音が響き渡った。

弾けるように飛び起きた両者。若干金髪の女性の方が早いか。身体2つ離して疾走する。
追いすがる男性。走り出すにつれ、そのストライドが大きくなる。完全にスピードに乗った。
だが女性との差が縮まらない。男性の顔に焦りが浮かぶ。
次の瞬間、2人と赤い旗が同じフレームに入った。

旗に向かって同時に飛び込む両者。
男性からすれば最後の賭け。長い手を伸ばして逆転を狙う。
女性は右手でバランスを取りつつ左手を伸ばした。
視聴者の視界から消失する旗。
2人はそのまま突っ込み、発泡スチロールの粒が高く舞い上がった。
立ち上がる両者。どちらが取ったのかは分からない。会場から音が消える。
455CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:50:33 ID:???

そして数秒後、勝者が手の中の旗を高々と掲げた。

肩を落とす男性。その隣で、赤い旗を握り締めた金髪の女性が勝利の雄叫びを上げる。


『代表が吼えたーーーーーーッッッ!!!!!』


オーブ連合首長国代表、我らがカガリ=ユラ=アスハさんの完全勝利だった。


「なんというていたらく!! てかこいつら本当にプロスポーツ選手なの!? これだからナチュラルの男はぁ……」
「いっえーす!! 賭けは私の勝ちだなルナ! なぁシン、今度2人で高級料理食べに行こう!? ルナが払ってくれるってさ!!」
「いや、別に断る理由は無いけどさ……」

嬉しそうにシンの隣に座るコニールと、不機嫌な顔で対面に座るルナマリア。
賭けも何もこの番組は再放送で、以前コニールと見たことがあったものだ。
彼女が勝つのは当然のことである。

「ああもう、こうなったらヤケ食いしてやるんだから!! シン、パン取って」
「はいはい、ほどほどにな (コニール、お前ズルくないか?) 」
「食べ過ぎで太ったって知らないぞ〜 (勝負ってのはやる前から始まってるんだよシン) 」

ルナマリアに聞こえないように話すシン。バラさない時点で同罪ではある。
女性に奢って貰うというのは少し引っかかるが、いつも彼女の買い物の支払いは自分なので、ごくたまにぐらいならば許される筈だ。
だからコニールの不正は黙っていよう。
決して以前ルナマリアに買い物のおまけと称して高価なバッグを買わされた恨みなどではない。そんな恨みなどではないのだ。
重要な事なので2回言いました。
おまけどころかどっからどう見てもバッグがメインだったけどな。

着けっぱなしのテレビを見る。
映っているのは笑顔でインタビューを受けるアスハと、その後ろで負けた選手にフォローを入れているアスラン。
なんで少将なのにあんな事してるんだろう。大方あの女に頼まれたか。
哀れな男だ。偉くなったうえに他の女と結婚しても、相変わらずアスハに振り回されている。
まあ、本人はそれを苦だと認識してないからいいか。
それにこの放送は再放送なので、今のアスランは普通に軍人として働いているだろう。

いや。自分の予想が正しければそろそろか。

誰かが平和なら、その裏で誰かが戦っている。それも世界の真実の一つだ。
そして数日前にエターナルが地球に降りたという情報をシンも入手していた。
既に自分には関係のない世界。だけどアスランの悩みを聞いた手前、気になるのも確かで。

「アイツ、大丈夫かなぁ」
「ん? なに? アイツって誰?」
456CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:53:54 ID:???
「アスランだよ。もうそろそろキラと逢うんじゃないかな」
「アスラン? 大丈夫よ。あの両刀使いのことだから、丸め込まれつつもキラの怒りを抑えてくれるわよ。
 それに言うでしょ。愛は地球を救うって」

すごい言い草だ。一応彼女の義理の弟なわけだが。
まあ腐ってもアスランなので彼女の言う通りキラに流されつつもなんとかするだろう。自分が心配することでもない。
しいて心配するなら自爆しないだろうかということぐらいであるが、それにしてもメイリン残してそんな事はするとは思えないから問題ない。
とりあえず、自分は自身の頭のハエを追わないと。さしあたっては新しい医学書買うとか。
そう結論を出しつつパスタを口に運んだ。

「あれ愛じゃないじゃん、偽善と金じゃん。おまけに女芸能人が途中の区間で世界記録並みのタイム出してんだぞ? ありえないって」
「ちょ、コニールやめて」

また危険な発言をしやがって。




インフィニットジャスティスのコックピットの座席に座り、アスランは画面の脇に写真を貼る。
写っているのは5人の男女の姿。そのほとんどが楽しそうな笑顔を浮かべている。
アスラン=ザラがベルリンから帰国して、数日が経過していた。

「ベルリンに行った時の写真か。……待て、何で野郎だけ顔が傷だらけなんだ?」
「色々ありまして」

中を覗き込んだムウに目ざとく見つけられた。相変わらずこういうことに関しては嗅覚が利く人だ。
だがまあ隠す必要は無い。なんだかんだでこの人は自分の事を良く分かっていてくれている。
写真が見えやすいように身体を少し脇へ寄せた。

「へえ、坊主も元気そうだな。随分楽しそうに見えるが」
「この無愛想な顔がですか? ……まあ、実際楽しかったですからね。全部終わったらまた行くって約束しましたし。
 ああそうだ、ムウさんも連れて来いって言ってましたよ、あいつ」
「俺も?」
「ええ。彼女が眠った場所に連れて行くつもりみたいです」

かつてのシンでは考えられない発言である。昔の刃物の如く尖ったシンなら、ムウさんを徹底的に拒絶しただろうに。
あいつも随分大人になったものだ――いかんいかん、こういう無意識に下に見る癖をいい加減やめようと決めたばかりではないか。
自重しろ俺。クールになれ俺。いい加減大人になれ俺。

「―――正直、嫌われてると思ってたんだが。謝りに行った時も、怒る事すらしてくれなかったしな」

苦しいのか悲しいのか何とも言えない表情をするムウ。彼のこんな表情を見るのは珍しい。
この人は酸いも甘いも噛み分けた大人だが、どんな大人でも癒えない古傷を抱えたまま生きていけるほど強くはないということだろう。
でも、それはシンも同じことだ。
457CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:55:28 ID:???
「多分、今でも引っかかるところはあるんだと思います。俺もそう思ってましたから。
 でもあいつ、言ってたんです。『逢いに来るのが俺だけなんて、彼女は寂しがるんじゃないか』って。
 『もう彼女のことを覚えてるのは、自分とあの人だけだから』って。
 だから行ってやって下さい。あいつのためにも」
「………そうだな、これが終わったら逢いに行くか。シンにも礼を言いたいしな。
 あの子の傍に居てくれている。それは本当なら、俺のするべき事なんだから」
「ですね。でも…いや、だからこそ今は―――」

アークエンジェルの動きが止まった。どうやら目的地に着いたらしい。
アスランはコックピットの画面をアークエンジェルのカメラに繋げる。
映ったのはオーブの領海からしばらく離れた、小島が点在する地帯。2人とも見覚えのある光景。
つい先日、キラに伝わるよう世界中に暗号を送ったのだ。上記の日時に指定のポイントで待つ、と。
ここはかつてアークエンジェルがザフトの追撃部隊を追い払った場所であり、キラ=ヤマトがアスラン=ザラに敗れた場所。

その小島の1つに、ストライクフリーダムは1機だけで佇んでいる。

「止めなきゃな。あいつを」
「はい」

ようやく、あいつにたどり着いた。



フリーダムの前に降り立つジャスティスとアカツキ。ムラサメはアークエンジェルの甲板上で待機させている。
彼らは参加させない。はっきり言って足手纏いなだけだからだ。
それでなくても余裕は無いのに、これ以上余計な負担は背負いたくなかった。今はキラだけに集中したい。
深呼吸をしてフリーダムに通信を繋げた。数ヶ月ぶりの親友の顔が映る。
言葉を選びながら、ゆっくりと話しかけた。

「ひさしぶりだな、キラ。会うのはラクスの葬儀以来になるのか?」
『そうだね。大して時間は経ってないのに、もう何年も会ってないような気がするよ。
 でも、わざわざそんな事を言いに来たんじゃないんだろ?』
「……」

キラの声に揺らぎはない。自分が何をしに来たのか分かっている筈なのに。
いや、カガリの説得が失敗しオーブ軍が返り討ちにあった時点でそれは想定の内だ。
だが諦めたくない。俺たちは親友の筈だ。

「わかった、単刀直入に言おう。
 ……もうやめよう、キラ。今ならまだ帰れる。世界もお前を許してくれるだろう。
 だからこれから犯した罪を償って、そして彼女が愛したこの世界をまた守っていけばいいじゃないか」

これが最大限の譲歩だった。どれだけの罪に問われるか分からないが、投降すれば彼が殺されることは無いだろう。
世論もキラに同情的だし、何より彼の力を恐れている。
今は紛争地帯に現れて双方を壊滅させる・もしくは海賊やゲリラを潰すだけなど世界的に見れば役に立つ行動で済んでいるが、
死罪でも申し付けて追い詰めたら最後、連合・ザフトそれぞれの本拠地をフリーダム単機で壊滅させるとも限らない。
だから懲役などはそんなに長く行われず、そのうち再び軍に所属させて望み通り紛争地域に送られる部隊に組み込まれたりするだろう。
少なくとも死ぬことは無い。
458CROSS POINT:2010/01/23(土) 23:58:03 ID:???

そんな考えを頭の隅に置きながらキラを説得するアスラン。しかし

『アスラン、君は何か勘違いしてるみたいだね。別に僕は許しを請うつもりはないよ』

彼がその言葉に頷くことは無かった。どこか冷めた目でアスランをみつめる。
その目が語るのは拒絶の意思。

『むしろ逆なんじゃないかな? 世界が彼女に許して貰うために、争うことを止めるべきだと思うんだけど。
 それが理解できない限り、僕が銃を納めることは無いね』
「いい加減にしろキラ!! お前1人の力だけで、本当に世界が変えられるとでも思っているのか!?
 恐怖では世界を変えることなどできやしない。そんなこと、お前も解っているだろう!!」
『変わらないと言うのなら、全人類の心が折れるまで続けるだけだよ。世界中の人が争いをやめるその時まで。
 それまで僕は戦い続けてやるさ。―――――その覚悟が、僕にはある』

どんな覚悟だそれは。そうまでして戦って、お前に何が残る。
怒りや憎しみという負の感情を恐怖で縛り付けたその世界に、一体どんな未来が待っていると言うのだ。

「キラ……それがお前の出した結論か」
『そうだよ』
「考えを改めてくれ、頼む。俺は……俺はお前と戦いたくない」
『く ど い』

即答、却下。全然駄目だ。言葉が届かない。本当に伝わらない。
人と会話してる気すらしない。無理だよもうというあの日のシンの声が聞こえる。

確かに無理だ。先ほどは死罪は無いと考えたが、それはあくまでキラが(形だけでも)反省や後悔をした場合だ。
しかし彼は確信犯で反省する気もなく止めるつもりもない。これでは刑は免れない。いや、受ける気も無いだろう。
ならば今の自分には力を以って応える以外の選択肢が無い。

そう考えると泣きたくなった。神というものが本当にいるのなら、助走つけて殴りたくなった。
いくらなんでもそれはないだろう。
俺は生涯で2度も、この手で親友を殺さなければならないというのか。

いや、もうこいつは俺の知っているキラじゃない。

459CROSS POINT:2010/01/24(日) 00:00:43 ID:???

「本当に変わってしまったな、キラ。
 確かにお前はラクスと共に戦争を終わらせた。でも今の状況はなんだ?
 沢山の人が。同胞が。仲間が泣いているんだ。
 今も、この地球で…オーブで……プラントで!!

 お前の……たかがお前1人の八つ当たりのために!!」

サーベルの切っ先を向ける。傍に立つアカツキも手にしたライフルの安全装置を解除した。
それを目にしてもフリーダムは微動だにしない。本当に迷いが無いのか。

『だから僕を討つ、か。―――――それが君の答えかい?アスラン』
「ああ。お前は、ここで―――」

この馬鹿野郎。お前、もういない人間のためにこれまで何人の人間を泣かせてきた。
そしてこれから更に数多の人を泣かせるつもりなのか。
そんなことをしてあの戦いを嫌っていた彼女がお前に笑ってくれるとでも思っているのか。抱き締めてくれるとでも思っているのか。


この、馬鹿野郎が。


「俺が、止める!!」



460CROSS POINT:2010/01/24(日) 00:08:40 ID:???
今日はここまでです
それとSS倉庫に作品を登録していただいてありがとうございました

大変恐縮ですが今回の話をもしどなたかが登録されるなら、
最後のくだりの「俺が止める」と「馬鹿野郎が」を入れ替えていただけますでしょうか
つまり


この馬鹿野郎。お前、もういない人間のためにこれまで何人の人間を泣かせてきた。
そしてこれから更に数多の人を泣かせるつもりなのか。
そんなことをしてあの戦いを嫌っていた彼女がお前に笑ってくれるとでも思っているのか。抱き締めてくれるとでも思っているのか。


「俺が、止める!!」


この、馬鹿野郎が。



という感じで
461通常の名無しさんの3倍:2010/01/24(日) 00:42:32 ID:???
乙。ていうか、なんだその番組は。カガリ何してやがるw
462通常の名無しさんの3倍:2010/01/24(日) 00:59:47 ID:???
>>460
今回もGJでした。末尾部分もご指定どおり入れ替えて登録しておきました。
クロス・改変もので綺麗になる例はそこそこあるとはいえここまで
生き延びて欲しいと思えるアスランというのもそうそうありませんな。
あと旨そうなパスタのレシピはご自分のオリジナルですか?(どこ見てるw)
>>461
コニールのヤバい発言からして24時間テレビかな?
個人的には「激突!アメリカン筋肉バトル」も似合うと思うけど。
463通常の名無しさんの3倍:2010/01/24(日) 14:12:36 ID:???
乙です
>>461
スポーツマンNo.1決定戦じゃね
ケインとか競技中に吠えるし
464CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:33:17 ID:???


「すげぇ……」


英雄と謳われた機体同士の壮絶な戦い。
アークエンジェルの守備に就きながら、ムラサメのパイロットは呆然と見つめた。

火花を散らしてぶつかり合うジャスティスとフリーダム。
射出されたファトゥムを、フリーダムは紙一重で避けた。そしてスラスターを失ったジャスティスに腹部のカリドゥスを放つ。
紅いビームの奔流を、黄金に輝いたアカツキが割り込み弾き返す。その背後からジャスティスがライフルを連射した。
ビームシールドでそれを受けるフリーダム。そこに先程避けたファトゥムが背後から迫る。
フリーダムは横に跳び辛くも避けた。距離を取るためにライフルを2機に向かって連射しながら後退する。
何発か掠ったが、気にせずに詰めるジャスティス。ビームサーベルが再びぶつかり合った。


『あー惜しい!! もう少しで直撃だったのに!!』
「お前はしゃぎすぎだ。見せ物じゃないんだぞ。ここは戦場だってのに」
『あ、すんません』

はしゃいでいる新人の後輩に注意する。
彼はオーブ軍の学校を卒業したばかりで、実戦を経験したことがない。
そんな彼にとってはこの死闘も、只のアトラクションに過ぎないのだろう。

『まあそう言ってやるなよ。俺もヤツの気持ちは分かるしな。
 フリーダムとジャスティス、CE最強の2機の本気の戦いだぞ?
 金取ったらいくらでもプレミアが付くこの最前席に、俺達いるんだから』
「……そりゃ、そうだけどさ」

新人をフォローする同僚。言わんとすることは分からないでもないが、やはり気を抜きすぎだろう。
理由は分かっている。
どうせアスラン=ザラが、つまり自分達オーブ軍が勝つと思っているからだ。
キラ=ヤマトもザラ少将も前大戦の英雄であり、実力は互角と言われている。つまりパイロットに差は無い。
ジャスティスは接近戦ならフリーダムを上回るということは周知の事実だし、アカツキに乗っているフラガ一佐との連携も問題ない。
実際、さっきから押しているのはジャスティスだ。

「すごいよなあの動き。よくあそこまで動かせるよ、ザラ少将は」
『あの人も人間じゃないっすよ、既に』
『二大怪獣頂上決戦……』
465CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:34:51 ID:???

確かに2人とも人間の範疇を超えている。ザラ少将の猛攻は言うに及ばず、それを捌くキラ=ヤマトも普通じゃない。
危うい場面はあるものの、恐ろしいほどの防御技術でダメージを与えさせない。
実際傷だらけのジャスティスに対して、フリーダムは無傷のままだ。

「無傷……?」

少し違和感を感じる。仲間にもう一度話しかけた。

「なあ。ザラ少将、勝てるんだよな?」
『見りゃ分かるだろ。思いっきり押してるじゃねえか。それにフラガ一佐もいるんだぜ?』
「そっか。そうだよな。…だけどさ」
『何だよ?』

確かに押している。ジャスティスの猛攻にフリーダムはさっきから防戦一方で。
もう少しで致命的な一撃が決まる、というシーンもいくつかあった。
だけど。

「さっきからダメージ受けてるの、ジャスティスばっかりなんだけど……」




第7話 『ジャスティスは何も答えてくれない』




ジャスティスのコックピットの中で、アスランは臍(ほぞ)を噛んだ。

自分の攻撃は惜しいようで、結局全部避けられている。
フラガ一佐の援護も片手間で防いでいるようだ。援護の後に飛び込んでも隙がない。
分があると思っていた接近戦もどうにか互角といった状況だ。
正直、ここまで差があるとは思っていなかった。どうやら先日のオーブ軍との戦いではかなり手を抜いていたらしい。
あれが本気ではないというのは予測していたが、隠していた実力に差がありすぎた。
2人がかりなら何とかなるだろうという考えは甘かったようだ。

せめて此処にシンがいれば。
いや、やめよう。
その思考は無駄だし、彼も自分の戦いをしているのだ。
この戦いは自分がケリをつけるとあの時誓ったではないか。
466CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:36:41 ID:???

「泣き言を言っている暇はないか…」

ライフルの連射を避けながら呟く。少しずつだが、フリーダムの圧力が増してきた。
このままじゃジリ貧だ。ならば賭けに出るしかない。

「ムウさん!!」
『なんだ!?』
「キラの意識を引き付けてもらえますか!? 一瞬で良い、隙が欲しいんです!!」
『―――わかった!! だが、キラ相手じゃそんなに耐えられんぞ……』
「解ってます!!」

大きく距離をとるジャスティス。それを追おうとするフリーダムに、アカツキが襲い掛かる。

『させるかよ!!』

ライフルを連射した後、高エネルギービーム砲を放つ。だが当たらない。
飛び込んでくるフリーダムの斬撃をシールドで抑えた。
至近距離で頭部のバルカンを連射。だがその場所にはもうフリーダムはいない。
反応した時にはもう遅く、フリーダムの蹴りによって地面に叩き落された。
かろうじて地上に着地したアカツキ。だがその隙をキラが逃す筈もなく。

『これで……!!』
『ちぃっ!!』

後方に跳ぶアカツキにフリーダムがクスィフィアスの照準を合わせるその瞬間―――

「ここだ!!」

ジャスティスがファトゥム−01を射出。フリーダムに向かって猛スピードで迫る。
虚を突いたこの攻撃に、フリーダムも咄嗟に反応ができない。

そう、この瞬間を待っていた。敵に止めを刺す瞬間こそ最大の好機がやってくる時でもある。
だがキラ相手にはまだ足りない。
ファトゥムのスラスターに向けて頭部のバルカンを放った。

『くっ、こんなもの…!!』

フリーダムが銃口を向けたその瞬間、ファトゥムが爆発する。
爆発の煙が広がり、機体の前方の視界が塞がれた。
次はない。今しかない。
ファトゥムを捨てた以上、ここでしくじれば敗北は必至。
おそらくキラも自分の考えを読んでいるだろう。だから、おもいきり機体を沈めて飛び込んだ。
爆炎を抜ける。

『低い―――!?』
467CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:38:10 ID:???

地を這うように飛び込むジャスティスに向かって、咄嗟に銃口を下げるフリーダム。
左手を振るうジャスティス。ライフルをグラップルスティンガーで弾き飛ばした。
フリーダムは後ろに跳ぼうとしているが、このタイミングで逃げられるわけがない。

これで止め。残された右手のビームサーベルを振り上げ―――


『―――やめてよ、アスラン』


その瞬間、思考が凍りついた。MSを操縦する手が僅かに止まる。
俺は今、何をしようとしていた?
殺す? 俺が?
キラを?

そんな事、できるわけが

「―――しまった!!」

それは一瞬にも満たなかったのかもしれない。
だが、キラ=ヤマトとフリーダムにとっては十分すぎる時間だった。
振り下ろすサーベルを後ろに下がってかわし、距離をとりつつクスィフィアスを連発で放つフリーダム。
ジャスティスはその攻撃を機体を左右に振って回避。だが動きが格段に落ちている。
ファトゥムを失った代償は大きかった。

『アスラン。君は今』

コックピットにキラの声が響く。
それは嘲笑ではない。見下してもいない。

ただ、失望したような声。

『―――迷ったね?』
「黙れ!!」

上空のフリーダムに向かって飛び込む。右手のサーベルを、今度は突いた。
フリーダムは逆に距離を詰め、ジャスティスの顔面を蹴り飛ばす。

「ぐっ…!!」

コックピットに衝撃が奔る。必死に機体を制御しようとするアスラン。しかしフリーダムの攻撃は終わらない。
そのままジャスティスの頭部を掴み、地面に向かって加速していき―――

『でやあああああああああ!!!』

そして、地面にそのまま叩きつけられた。
468CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:40:06 ID:???

「がぁっ!!!」

機体ではなくパイロットを狙ったキラの攻撃。音と共にコックピットに衝撃が奔る。
同時に、アスランの意識が急激に遠くなっていった。視界を闇が少しずつ覆っていく。

高く舞い上がって距離を取った後、再び飛び込んでくるフリーダム。
このまま止めを刺すつもりなのか。
それはダメだ。自分はまだ、何もできていない。

「キ…ラ……」

頼む、俺の身体よ。もう少しだけ保ってくれ。
俺はキラを止めなくちゃいけないんだ。
あいつの親友だったから。いや、今でも親友だから。
だから、キラは俺が止めてやらないと。
なのに。
なのに。
何故俺の言葉は届かない。何故さっき俺の剣は止まってしまった。
何故俺の目は光を失っていく。
ダメだ。もう、闇が―――

「ち…く……しょう…」

動かないジャスティスの胴体に、空から降りてきたフリーダムの膝が突き刺さり―――
アスラン=ザラは、そのまま意識を失った。



大の字で地面に食い込んだまま動かないジャスティス。パイロットが気絶したのか動く気配がない。
やはりアスランではダメだったか。僕を止めるのは。
物思いにふけるキラの上空にて黄金の光が舞う。視線も向けぬまま、フリーダムはサーベルを軽く振った。
そういえばあの人もいたっけ。戦いはまだ継続中だ。

尤も、すぐに終わるが。

『キラ!! お前はぁ!!』
「―――やめてくださいよ」

怒りの声と共に、サーベルを抜いて斬りかかるアカツキ。だが

「ムウさんが僕に勝てるわけないじゃないですか」

交差した一瞬で、両足と右腕を切り落とす。バランスを崩して派手に地面に倒れこむアカツキ。
速度といい正確さといい、それは神業と言っていいほどの所業だった。本体と切り落とされたパーツ共に誘爆すら起こしていない。
だがそれに何の感慨も持たず、キラはサーベルを仕舞いアカツキにクスィフィアスを向ける。
動きはない。彼も気絶したのか、それとも死んだか。おそらく生きているだろうとは思うが。
どちらにせよ戦いは終わりだ。
469CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:42:09 ID:???

武装を解除しアークエンジェルに通信を開く。艦長のアマギは顔見知りだ。
単刀直入に用件を伝える。

「まだやりますか? そちらにはまだ、戦力も残ってるみたいですし」

その言葉に、守備に就いていたムラサメ達が後ずさる。
無理もない。オーブ軍のレベルは低くないが、それでも自分と戦うレベルでないことは分かるだろう。
実際自分はムラサメの5、6機くらいなら、15秒もあれば全機を達磨にできる。

『いや、もういい……我々は退く。だがその前に、2人の救出を許可して欲しい』
「いいでしょう、但しパイロットのみです。機体はこちらが頂きます」
『それは……』
「この状況でそちらに断る権利があるとでも?」
『……わかった。好きにしてくれ。ムラサメをそちらに向かわせる』
「どうぞ。手は出しません」

ムラサメが2機、アカツキとジャスティスの近くに降り立つ。
そしてパイロットたちが2人をコックピットまで抱え、アークエンジェルに戻っていった。

『キラ=ヤマト……いやキラ様。お願いです、もうこのような事は』
「用が済んだら早く行ってください。貴方と話すことは何もないですから」
『……』

通信が切れ、アークエンジェルが去って行く。キラはそれをぼんやりと見送った。

「また、死に損なっちゃったな」

今回も結局、自分の望みが叶うことはなかった。失望感だけが後に残る。
彼女のいないこの世界に未練は無いというのに。ただ託されたから彼女の真似をしているだけなのに。何故自分を世界は生かすのか。
自分の死ぬときはまだ来ていないということなのか。
自分が休めるのはさらに遠い先であると、何かが告げているのだろうか。

「やめてよ、か……」

戦闘中に呟いた言葉。あれで勝負は決まった。

本当はあんな、彼の優しさに付け込むような卑怯なことはしたくなかった。
だが彼を相手にした場合、あれが最善の手だという事も解っていた。だから使った。
勝ち方を知っていてそれを使わずに敗れるのは、自殺と変わらないとキラは思う。
それではダメなのだ。
見栄も外聞もなく最後まで足掻いて、それでも敵わず死んで行く。
そこまでやらないと、自分はあの世でラクスに言い訳できない。僕はここまで頑張ったのだと。君との約束を守り続けようとしたと。
やり方を間違えていても、彼女ならきっと頑張った自分を許してくれるだろう。

だが結局ダメだった。また自分は死に損ねた。
生き延びてしまった以上、自分は進まねばならない。まだ、生き続けなければならない。
それはつまり、今夜も彼女が殺されたあの時の夢を見るということで。
470CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:45:14 ID:???

「笑えないな、それは」

自分は、あとどれくらい。
死を望む心と生きて約束を守るという相反する2つの想いに、あとどれくらい苦しめば良いのか。
溜息を吐き、目線を傍の紅い機体に向ける。
ジャスティスは何も答えてくれない。


「アスラン。君は、あのまま。
―――僕を、殺してくれれば良かったんだ」


届かなかった刃。泥に塗れた正義。
主を失った機体は、そのまま空を見上げている。





「お疲れさまでした、キラ様」
「……そちらこそ、待機ご苦労様です。
 僕は少し休みますので、ディーヴァへの連絡を任せても良いですか?」
「了解致しました」

深海で待機していたエターナルに帰還する。
ジャスティスとアカツキの残骸は回収させたし、もう地球で行うことはほとんどない。
地球でもう少し力を見せるか、それとも宇宙に戻ってザフトの次の一手に備えるか。迷うところだ。
だがその決定も今すぐという話でもないし、身体を休める必要もある。
だから艦長であるダコスタと2、3打ち合わせをした後、エターナルの自室に戻った。
待っている者は誰もいない。彼女と同じ名を持つ少女もここにはいない。
静かな部屋に1人でいるのは久しぶりだった。

椅子に座る。机の上には高級そうなチェス盤。
くれた人によると、デュランダル元議長がメサイアで所持していたものらしい。
白のキングを手の中で回しながら、キラはこれからのことを考える。
自分に残された敵。………自分を殺してくれる敵。
まだそんな人物が存在するのだろうか。盤上に視線を落とす。あと残っているのは―――
471CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:47:06 ID:???

「アスランは倒した。」

手にした白のキングで、黒のナイトを弾き落とす。

「ムウさん。キサカさんも」

同じように残されたナイトと、右端のルークを弾く。

「カガリに世界をまとめる力は無いし、ブルーコスモスは既に壊滅している」

続けて2つのビショップも。

「サーペントテールはマルキオ導師が抑えていて」

残った左端のルークを放り投げ―――

「ロンド=ミナ=サハクはこちらと戦う意思が無い」

クイーンを盤の外に置いた。

これでほぼ全滅。残ったのはキングのみ。
ポーンが残っているが、有象無象に自分が倒されるとは思えない。

「まさか、イザークに戦線復帰してもらうわけにもいかないし」

プラントの議長が一兵士に復帰、なんて周囲が認めないだろう。
そういう意味でも、彼はキングっぽい。王とは名ばかりの不自由で、周囲1マスぶんしか動けないしアレ。
それに大抵、キングとは戦いで倒されて終わるのではなく、追い詰められたときに降参して終わるものだ。
彼には期待しちゃいけない。

「で、残ったのはポーンだけか……」

再びポーンに視線を落とす。前に進むだけで、相手の攻撃を避けることもできないただの兵士。
はっきり言って取るに足らない存在だ。……いや、待て。
臆する事無く前に進み、敵を討つ。そんなポーンの様な存在に、かつて自分は苦杯を舐めさせられた事がなかったか。
記憶を探る。思い出すのは紅い瞳。

「そうだ。まだ彼がいたんだ」

まだ彼がいた、ではなくもう彼しかいない、と言うべきかもしれない。
シン=アスカ。
自分を貫いてくれる可能性を秘めた、最後の剣。
彼ならばアスランの様に、自分に情けを掛けたりはしないだろう。
今は退役しているが、彼の本質は戦士だ。いずれ必ず自分の前に現れる。
ただ、それがいつになるのかが分からない。
そして自分はその 『いつか』 を待ってられるほど、精神に余裕は持っていなかった。
472CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:50:14 ID:???



「そっか。止められなかったのか、アンタは」

磔にされたジャスティスとアカツキ。響き渡るキラの声。シンはぼんやりとそれを眺める。
処刑の映像が終わり、ニュース番組では解説者がしたり顔でキラを語っていた。だが誰もそれを聞いていない。
皆、呆然と立ち尽くしたままだ。

「―――帰ろう」

ルナとコニールに話しかける。反応はない。
仕方が無いので呆然としたままの2人の手を取り、引っ張りながら車まで歩く。
強い雨が降っていたので自分が車を持ってくるまで待たせても良かったのだが、今は離れちゃいけないような気がした。
紙袋は歩道の脇の長椅子に置いたまま。周囲の人間は皆、今の放送で頭が一杯だ。数分くらいなら盗まれたりしまい。
車に乗って荷物を無事に回収しても誰も口を利く事はない。だがシンの部屋に着く頃には少しだけ落ち着いてきたようだ。
その事に少し安堵の溜息を吐いた後、電話の受話器を取る。
メイリンに連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。ディアッカも同様だ。
彼らも今、あの放送を見て驚いているのだろうか。

「ごめんね、シン。食事…そう、食事の準備しなきゃ」
「いい。今日は俺が作るよ。ルナはそのまま座ってていいから」
「……ごめん」

ソファに座る2人の前に緑茶を置いた。オーブでよく飲まれるものだが、2人とも気に入ってくれている。
これでも飲んで落ち着いてくれればいいのだが。

「なあ、シン」
「なんだ?」

湯飲み茶碗を手にしたまま、コニールが話しかけてくる。
故郷であるガルナハンが昔ひどい目に遭っていたせいか、彼女は知人が傷つくことに敏感だ。
言葉は慎重に選ぶ必要がある。

「アスラン、死んじゃったのかな?」
「生きてるだろう。簡単にくたばるようなやつじゃないし、キラにも殺す気は無かっただろうから」
「本当に?」
「ああ」

言っていることに嘘はない。
処刑前の機体があそこまで形を残しているし、コックピット周りも損傷した様子は無かった。
アスランは運は無いが悪運だけは強い所があるので、おそらく無事だろう。
ただ、心の方までは分からないが。

「でもさ」
「ん?」
「アスランが負けちゃっただろ? もしかして今度はシンが戦わされるんじゃ…」
473CROSS POINT:2010/01/25(月) 23:52:46 ID:???

「……それは、無いんじゃないかな」
「どうしてさ?」
「ネオ…じゃなくてムウ=ラ=フラガとアスランでもダメだったんだ。もう俺が1人で勝てると普通思わないだろ。
 しかも単機でヘブンズベース破壊するようなやつだから、人海戦術も却下。
 多分ジェネシスや核ミサイルみたいな遠距離攻撃か、サイクロプスみたいな罠。それか、キラを直接狙う暗殺。
 どれにしても、俺は必要ないな」

嘘だ。暗殺はまず行わないだろう。
それを行えばザフトはブルーコスモスと同じ目で見られるだろうし、
連合は 「またナチュラルが優れたコーディネーターを暗殺しやがった」 という事になる。
そしてジェネシスやサイクロプスだと、自分は発動までの時間稼ぎとして戦わされる可能性もある。
そうなると最悪の場合自分ごと焼かれるかもしれない。自分みたいな民間人が死んでも世界に影響は無いからだ。
だが、彼女にそれを言うわけにはいかなかった。

「信じて、いいのか?」
「多分な」

これ以上話すと感付かれそうだったので、離れることにする。椅子に引っかかっていたエプロンを腰に巻きつつ台所へ歩いた。
ジャガイモの皮を剥きながら溜息を吐く。暗い雰囲気は継続中。

その日の夕食は、いつもより静かだった。



その日の深夜にようやくメイリンと連絡が取れてアスランの無事を確認できたので、次の日はいつもと変わらずに復興作業へ向かう。
彼の怪我はアバラにヒビが入ったくらいで本当に大したことは無いらしく、別に心配しなくていいという妻の言葉に従う形になった。
そして他所で何が起こっていようとベルリンの人間には関係ない。
ルナとコニールは何か考えているようだったが、特に変わったことも起こらずその日の仕事は終わった。

そしていつものように3人で食事。
しばらく雑談をした後、早めに寝ることにして2人を部屋に返す。
ベッドに入ったが眠れない。舌打ちと共に、机の上にある使い古された医学書の一つを手にした。

不意に携帯が鳴り響く。見知らぬ番号。
夜遅くだというのに、この間のスカウトがまた掛けてきたのだろうか。
一応電話に出てみる。

「もしもし」


『やあ、シン。キラだけど。元気してる?』


474CROSS POINT:2010/01/26(火) 00:00:04 ID:???

「―――何だと?」

今、コイツ何て言った?

『だから僕だよ。キラ、キラ=ヤマト。
 ……もしかして、僕の事忘れちゃったって事はないよね?』

忘れるわけが無い。しかし完全に不意を突かれた。
ザフトからならまだしも、まさかこのタイミングでキラの方からコンタクトを取ってくるとは思わなかった。

「いやそんなわけないけど…アンタは何やってんだ? じゃなくて何考えてんだ? つか俺に何の用…」
『落ちついてよ、シン』
「落ちつけるわけないだろ!! アンタ、どうして」
『まあ聞いてよ。僕、今ベルリンにいるんだ』
「ベルリンに…?」

ワケがわからない。
コイツは何を考えているんだ。


『君と話がしたいんだ。―――今から、会えないかな?』


聞こえる声は笑っているようで。
その声は昔と何一つ変わっていなかった。


475CROSS POINT:2010/01/26(火) 00:04:29 ID:???
今日はここまでです
ようやく1話の冒頭に時間軸が戻りました
476通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 02:11:33 ID:???
最終的にシンが戦わざるを得なくなるのはわかるとして、
しかし現時点の勢力らしい勢力全部ソデにしていてどう戦うんだろうと
首を捻っていたがそうきたか!
現在のベルリンという言わばシンのいま生きている理由そのものが人質になるのか…
477通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 13:28:18 ID:???
超高速投下乙
えげつねー中将様えげつねー
そこで「やめてよ」と来るかよそりゃあ凸は止まるよ止まらなかったら凸じゃないよ
しかしわざわざシンを引っ張り出すとは破滅指向だなぁ。総帥よりタチ悪いよ。
478通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 21:38:36 ID:???
破滅思考の割にはサーペントテールは動けなくしてるのな。
まあ、それは導師がやっている事で、キラの意思では無いのだろうけど。

しかし、破滅思考と世界すべてを巻き込んだ八つ当たりというとアレだ
クルーゼと同じだな。 自分を止め得る者を心の何処かで待ち望む所も
479通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 22:21:14 ID:???
議長やってるイザークが気になるところだ
まさかのダークホースか
480通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 22:29:23 ID:???
酷いことをやってることは分かってるし、どっかで止めてもらいたいと思ってるのもわかってて
だけど一切手は抜かないとか、もうどうしようもないな。いい壊れ方だ畜生め。
481通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 23:42:52 ID:???
何故だろう。こんなに酷いのに本編のキラよりも大好きだ。
482通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 23:53:44 ID:???
つーかマルキオ導師居るんだ…
なんかこう、「ガソリン」とか「鞴」とか「ニュートロンスタンピーダー」とか
そういったキーワードが脳裏を乱舞するのは気のせい…だよな?な…?
483CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:41:48 ID:???



その日、ルナマリア=ホークは覚悟を決めていた。


自分の義弟でもあるアスラン=ザラの敗北。
それはこの世界にキラと戦える存在が、もうシンだけだという事を意味していた。
彼は否定しているが、いずれシンは戦場に戻ることになるだろう。それは仕方のないことかもしれない。
だがあの男の事だ。巻き込みたくないとか言って、自分を置いていく可能性が高かった。

冗談じゃない。

まともな男と巡り合わなかった人生の中で、やっと掴んだ我が純愛。
一度は手を離してしまったけれど、今彼と自分はまたそばにいるのだ。
それを世界の危機ぐらいで失くしてたまるものか。それに自分にはしなければならない事もある。

いつかシンの心を自分に向けて、思い出の中の彼女と決着を着けなければならない。
ステラ=ルーシェ。連合のエクステンデッド。
あのシンが命を賭けて救おうとした少女に、自分は勝つと決めたのだから。
だが相手は強敵だ。
向こうは楽しかった思い出プラス守ろうとした存在。時間経過による美化というおまけつき。
一方自分はその頃アスランにコナかけてたという負い目があったうえ、
2人の最終決戦において助けに来てくれたシンではなくアスランを庇うというポカまでやってしまっていた。
あの時はシンを止めたい一心だったが、あれはないと今では思う。
しかも心の拠り所である交際についても、きっかけが傷の舐め合いと言われても仕方がないものだったせいか、
シンは自分との交際については後ろ向きなことが多かった。

考えれば考えるほど開いていく相手との戦力差(大半は自業自得だが)。流石はラスボス、生半可な相手ではない。
これに比べればコニールなんか中ボスがいいとこだ。

話がずれた。

とにかく今の自分達は、戦いになんて巻き込まれている場合ではない。
それにどうせキラを止められるわけがないのだから、放っておけばいいのだ。
テロやってるやつらがキラに脅えてしまえば、少しは世界も静かになるだろう、というのが今の自分の考えだった。
でもなんとなく、シンはキラを止めに行きそうな気がする。
そして腹を決めた彼を繋いでおくのはまず不可能だということを、誰よりも自分が知っていた。

残された手段は一つ。実力行使のみ。
心も身体も自分に溺れさせてやるしかない。

ピンクのパジャマはお気に入り。第2ボタンを外して少し胸元を開く。
化粧は薄く、目立たない程度に。香水も軽く身体に馴染ませた。
ちなみに下着は一番高くて良いものである。
少し露骨かなとも思ったが、今の堅物なシン相手ならコレぐらいで丁度いいだろう。
鏡の前でチェックを済ませる。自分で言うのも何だが、完璧だ。
484CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:43:20 ID:???

「ん。おっけ」

準備は万端。勝算は十分。後は突き進むのみ。
自分の枕を胸に抱いて、ドアを開けた。目指すは隣のシンの部屋。
脳裏によぎるのはシンの体温。意外に厚い胸板。自分を見つめる、紅い瞳。
思い出してぞくりときた。そういえばシンと別れてからご無沙汰だったから、自分はこういうのはひさしぶりだ。
今夜は眠れないかなあという思考をはしたなく思いつつ外に出ると、見過ごせない光景が目に飛び込んできた。

シンの部屋のドアの前で立ち尽くしている1人の少女。
服装は少し大きめの白いワイシャツのみ。湯上りなのか、ほんのり湿っている髪を下ろしている。
手に持っているのは、ワインボトルにグラスが2つ。
緊張をほぐす為に深呼吸。覚悟を決めてドアを叩こうと―――

「何してんのよ、コニール」
「うわあっっ!!!」

驚いて後ずさるコニール。今の反応で推測が確信に変わった。

―――こいつめ、同じ事を考えてたな?

冗談じゃない。
彼女のことは嫌いじゃないが、シンとずっと一緒にいたのは私だ。
それを横から掻っ攫われてたまるものか。
ちなみに2人で共有、なんてのも論外だ。どこぞのギャルゲじゃあるまいし。

「抜け駆けしようだなんて、ちょっとズルいんじゃない?コニール」
「……それ、お前が言うことか? しかもなんだよその格好。枕まで持ってさ。
 アピールが強すぎだっつーの。発情期じゃないんだから」

カチンときた。中ボス風情が生意気な。大体発情期は自分じゃないか。ワイシャツと下着しか着けてないくせに。
てかそのシャツはシンのじゃないか。この女いつの間にそれを手に入れやがった。

………やはりコイツとは一度はっきり白黒つけなくてはいけないようだ。

「あら、恋人同士が夜を共にするのは当たり前だと思うけど。
 あんたはとっととガルナハンにでも帰って地元の脳筋どもとよろしくやってなさい」
「 『元』 恋人だろ!! ルナこそプラントに帰って議員のどら息子どもに口説かれてりゃいいじゃないか!」
「いらないわよ、あんな男たち!! だいたい私はシンと正式に別れた覚えは無いし」
「―――ここに来るまでほっとかれてたくせに」
「なっ!? ……こんのぉ、そんな貧相な身体で私と張り合おうなんていい度胸してるじゃない!」
「大きくして貰うから別に構いやしないね! 豚マリアに心配してもらわなくても結構だよ!」
「なんですってぇ!?」
「やるかぁ!?」
485CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:45:20 ID:???
息を荒くしながら睨み合う2人。思わずぶっ飛ばしそうになるが思い留まった。
自分は元軍人のコーディネーター。コニールはガルナハンで鍛えられたとはいえ、ナチュラルの素人。勝敗はあきらかだ。
そして敗れたコニールに駆け寄るシンの姿も想像できた。
そうなったら最悪だ。自分は悪者、対してコニールは二人っきりの治療タイムへ突入。
シンが何かするとは思わないが、万が一間違いが起こった場合、彼の性格上責任は取ろうとするだろう。
それだけは避けたかった。

「……こうなったらシンに決めて貰いましょう。どっちが魅力的か、どっちと朝までドッグファイトしたいか」
「上等だ。負けた方は手を引くんだからな」

結論を出してからドアに向き直る。そう言えば、あれだけ騒いでいたのに部屋からは何の反応も無い。
ノブを捻る。何の抵抗も無くドアは開いた。
2人して中を覗く。
部屋の電気は点いたまま。机の上には開いたままの医学書。コップに残っている冷めたコーヒー。
だが、部屋の主の姿は何処にも見えず―――

「………」
「………」


「「シンは?」」


聞こえてくるのは、低く響く冷蔵庫の音だけだった。



第8話 『君と僕は、少し似ている』



ベルリンの中心部にある公園。かつての悲劇を表す慰霊碑が置かれているその公園に、1人の男が立っている。
変装のつもりなのか、夜にも関わらずサングラスをかけているその青年。近づいて行くシンからは距離はあるが間違いない。
かつての宿敵。一時期は共闘。
アスランとは別の意味で因縁深い相手がそこにいた。
ここに来るまでの疑問が再び浮かび、シンは足を止める。何故今になって。自分の組織にでも誘うつもりだろうか。
クライン派の情報網なら、自分が戦いに興味がないことなどとっくに知っているだろうに。いや、まさかこのベルリン全てを人質に取るつもりなのでは。
そうこう考えているうちに青年がこちらを向く。お互いの視線が合った。
仕方が無いので考えるのをやめて、彼の目の前に立つ。

「やあシン。元気してる?」

気さくな挨拶に思わず力が抜けた。

「………やあ、って言われてもなぁ…。何しに来たんだ、アンタは」
「何しに来たんだはないんじゃない? わざわざ君に会いに来たってのにさ」

見りゃわかるわ。俺が言いたいのはそんな事じゃない。
486CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:47:01 ID:???

「アンタ自分が今どんな立場かわかってんのか? それに何をしたのかも」
「天然とか鈍感って言われたことはあるけどね。ボケた覚えはないよ?
 まあ、今回君にちょっと頼みごとがあってきたんだけど」
「頼みごと?」
「まあ今はそんなことよりも」

あきれ半分で言葉を返すシンを遮り、キラはバッグから何かをを取り出し―――

「飲まない?」
「………いや、キラ。アンタがそんなやつだったのは知ってたけどさ」

酒とコップを見せながら微笑む青年に、シンは返す言葉を持たなかった。




慰霊碑の前で酒を酌み交わす、かつての悪の手先と堕ちた英雄。
だがその話の内容は、その辺りにいくらでもいる青年たちとそう大差はなかった。

「へえ、じゃ今二股かけてるの? ルナマリアさんとそのコニールって娘で?」」
「今まで何聞いてたんだアンタは。違うっての。それに今の俺にそんな資格はないしな。
 ―――――誰かと幸せになるなんて」
「またまた嘘ばっかり。ダメだよ二股なんて。ルナマリアさんなんかずっと君に一途だってのにさ。
 君が居なくなった後、彼女の周りって凄かったんだから。あの脚線美に誘蛾灯のように群がった男たちを、ちぎっては投げちぎっては投げ」
「何してんだアイツは」
「それだけ君の事を想ってたんじゃないか。なのに君ときたら他の子とよろしくやってるなんてさ。
 良くないよそういうの。なんだってそんな君らしくない事を……ハッ!? そうか!!
 ルナマリアさんは年上で、そのコニールって子は年下……つまり君は姉と妹という両方のシチュエーションが欲しかったんだね!?」
「歯ぁ食いしばれコノヤロー」

なんかこのバカをぶん殴るものはないか。できれば鈍器。

「なるほど、やっぱりシンという名前はシスコンの略だったのかってゴメンゴメン今のは失言だったから瓶はやめて瓶は。
 いや〜、でもやっぱり男性は誠実じゃないとダメだよハハハ」
「酔うのが早いっての。ったく、弱いくせに飲みたがるんだから。
 そんな事言ったらアンタだってよりどりみどりだったんじゃないのか? 英雄って呼ばれてたんだから」
「いや実際そうだったんだけどね。でもハートはかなり前から嫁さんに盗られちゃってるから」

気持ち良さそうに笑うキラの言葉の中に、引っかかる言葉が混ざる。
嫁さん。ラクス=クライン。
キラの最愛の人で、かつて世界を支配していた女性。

今はもう、いない。
487CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:48:51 ID:???

「なあ、キラ」
「ん〜? お酒ならまだあるから心配しなくてもいいよ」
「いや、そういうんじゃなくて」
「え〜、もう飲まないの?」
「聞けや」

高かったんだよコレという声を無視して言葉を続けた。

「アンタの口から聞きたい。何であんな事してるんだ?」
「あんな事って?」
「とぼけるなよ。そんなの一つしかないだろ。
 争いを続けるやつらを片っ端から潰して、恐怖で抑えたところで何も変わりゃしない。アンタが居なくなったらまた再開するだけさ。
 昔の仲間を薙ぎ払ってまで続けることじゃないと思うけど」
「………」

酔いが醒めたのか、キラの表情が少しずつ変わっていく。もしかしたら最初からあまり酔っていなかったのかもしれない。
コップに残った酒を一気に飲み干し、言った。

「……聞かれるとは思ったけど、もう少し後にして欲しかったな。
 その話をしたら、もう笑い話はできそうもないから」

悲しそうに呟き遠くを眺めるキラ。その表情を見て少しだけ申し訳なく思った。
空気読めないなぁ俺は。どっかに空気リード機能とか売ってないんだろうか。絶対買うのに。
まあ目の前にいるフリーダム王子のド天然には敵わないだろうが。

「戦争が終わってさ。僕達はその後、平和が訪れると思ってた。
 ラクスは正式に議長になって、カガリはオーブの代表に戻れた。アスランとカガリは地球で、僕たちはプラントで頑張ればいつかはって。
 君も手を貸してくれたし、不安要素なんて見つからなかったんだ。何かあっても皆が揃えばできないことはないって思ってた」

俺もそう思ってた。
好き嫌いはともかく、自分たちの周りには力があるヤツばかり集まってたから。
けど世の中、力や想いだけでそんなに上手くいく訳もなく。

「でも、争いは終わらなかった。
 コーディネーターは力の劣るナチュラルを見下すことを止めないし、ナチュラルはコーディネーターを間違った存在として根本から否定する。
 理解しようとする人も当然いるんだと思う。でも、一部の過激な人たちの暴走でその想いは吹き飛ばされてしまうんだ。
 そして、溝だけが深くなっていく。
 
 ラクスが……彼女が殺された件もそうなんだ。
 犯行はブルーコスモスの生き残りだけじゃなかった。コーディネーターにも協力者がいたんだ。
 それを知ったとき僕は思った。
 
 このまま世界が進んだところで、きっと永遠に人々は解り合えない。言葉だけじゃ、届かない。
 でも共に戦うことでなら理解できることもある。ロゴスを倒すために、一部の連合とザフトが手を結んだようにね。
 だけどそのためには共通の敵がいるんだ。それも強大な。
 コーディネーターとナチュラルが力を合わせてやっと倒せるような。でも今じゃそんな存在はもうどこにもない。
 ―――――僕を除いては」
488CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:51:04 ID:???

顔の前で拳を握るキラ。他の奴が言った言葉なら笑うところだが、キラは別格だ。
現に今、世界はコイツ1人に振り回されている。

「だから、コーディネーターとナチュラルが力を合わせて僕を倒してくれれば、それでいい。
 それにもし世界が僕の考えに従うなら、このまま戦争を裁く執行者として君臨し続けるだけの話だしね」

成程な。クライン派の連中の納得しそうな――喜びそうな――理由だ。
他の連中も、例えば 『英雄』 キラ=ヤマトを崇める者や、キラ本来の優しい性格を知っている者なら納得することだろう。
英雄は戦い続けることに疲れ、自分を生贄に平和を呼ぶ。民衆に受けそうな悲劇の出来上がりだ。
だが。

「なあ、キラ」
「ん?」
「嘘だろそれ。俺はそんな建前聞きたいんじゃない」
「………なんで、そう思うの?」
「アンタらしくないからさ」

コップの中の酒を意味も無く廻す。
確かにいい酒なのだろう。味の違いなど判りはしないが。

「アンタもクライン議長も、世界とか自由とか平和とか耳障りのいい言葉を使う割りに、最終的には必ず自分の都合を優先させてきた。
 いや、少し違うか。
 自分たちの目的は正しい事。だから自分たちがその為に行った負の部分なんて知らない。気付きもしない。そんな感じか」
「………手厳しいね。何が言いたいの?」
「悪いな。でも事実だろ。
 アスハの結婚式への乱入やいろんな戦闘への介入。
 核MSとかの戦力も隠し持ってたし、いきなり空港襲ったこともあっただろ。
 でも一度も裁きや糾弾を受けずに、英雄だ平和の歌姫だと崇められる。
 自分たちのする事はは常に正しいって思うのも無理はないさ。
 
 ――――――そんな人間がさ。最愛の人を理不尽に殺した世界を、自分を悪にしてまで救おうとするかな?」
「………」

少なくとも自分は無理だった。悲しみ、怒り、そして驕った。

「……俺は許せなかった。救うことなんか考えもしなかった。
 正義は自分たちにある。議長の言うとおりにすれば平和になるのに、何故邪魔をする。
 ステラみたいな子供を作った連合は悪だ。救いなど無い。許してはいけない、ってな。
 んで、立ちはだかるもの全て落としまくってたんだけど」
 
そう言いながら彼の方を向いた。キラは視線を外し、会話を打ち切る様に呟く。

「つまり君は 『裏の裏は表』 だと、そう言いたいの? 世間で言われてるみたいにただの八つ当たりだって」
「どうなんだろう。やっぱり、そういうことになるのかな」
「………まあ、僕はさっきの問いには答えたからね。それをどう思おうと君の勝手だよ」
「そっか。まあ、そうだな」
489CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:52:57 ID:???

話が終わってしまった。お互いなんとなく黙ってしまう。
することがなくて、手の中の酒を呷る。あっという間に空になった。
キラが視線を向けずに瓶を差し出してくる。僅かに頷いてそれを受けた。器を満たす琥珀色の液体を見ながら思う。
もしかしたら、こいつもこの時間をまだ終えたくないのかもしれない。

そういえばさっき、こいつ何か言ってたな。
なんだっけ。確か頼みごとがあるとか言ってた。

「なあ。結局さっき言ってた頼みごとって何だったんだ?」
「ん? ああ、大したことじゃないよ。君に戦場に戻ってもらえないかなって思っただけなんだけど」
「……何、だと?」

頼みごと。戦場に戻って欲しい。その言葉が意味することは一つ。
自分に、シン=アスカに戦いを挑んでいる。

「アンタ、本当に死にたいのか?」

思わず声に出てしまった。そんなシンをキラはきょとんとした目でみつめてくる。
そしてプッと吹き出した。
何か変なことを言っただろうか、俺。

「――――すごい自信だよね、君」
「何がさ?」
「気付いてないの? 今の発言、俺と戦いたいなんて、死にたいのか? って感じじゃないか。
 まあ確かにさっき僕は、皆で協力して僕を倒せみたいな事言ったけどさ」
「え!? あ、いや、そういう意味じゃないんだけど……」
「ハハハ、わかってるよ。ちょっとからかっただけ」

ニヤニヤとからかうようにこちらを見るキラ。
楽しそうなのは結構だが、笑われるこちらとしてはその態度はいただけない。

「アンタなぁ……まあいいや。でもなんで俺と戦うって発想が出てくるんだ?
 大体俺は実戦から離れてるんだぞ。アンタと戦えるなんて過剰評価以外の何者でもないだろ」
「多分そう思ってるのは世界で君だけだよ。
 アスランを倒してから、ザフトや連合の軍の内部情報を集めてみたんだけどね。君は最後の希望らしいよ?
 英雄の復活か、毒をもって毒を制すかの違いはあったけどね。
 だからその君が戦場に戻れば、それが最後の戦いになる。僕の願いもどちらかが叶う」
「なんだ。八百長でもやれってことか?」
「ガチだよ。本気で殺しに来て良い」

お互い視線を合わせる。キラの瞳からは真意を読み取れない。
しばらくそのままの2人だったが、シンは肩をすくめて視線を逸らした。
490CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:55:05 ID:???

「……やめとくよ。自分の事で精一杯だし」
「そう? まあ今は無理強いはしないよ。君の本質は戦士だから、いつか戦場に戻るだろうしね」
「勝手なこと言うなよ。誰の本質が戦士だって?」
「ああごめん、ジゴロとシスコンが根底なんだよね」
「よし、お望み通り決着つけてやるよ。今ここで」
「ハハハ、怒んないでよ」

怒るシンをのらりくらりとかわし、笑いながら酒を飲むキラ。
だが彼が呟いた最後の言葉だけは、シンに聞こえることはなかった。


「死にたいのか、か。いつもは空気読めないくせに、こういう時に限って君は核心を突くんだね……」




「せっかくだから、今度は僕が質問するね」
「何だよ? 言ってみな」
「うん。……君はさ。僕が、憎くないの? 僕は、君の大切なものをたくさん奪ったって言うのに」

正直、聞かれたくないことを聞かれてしまった。考えないようにしてたのに。その想いに蓋をしていたのに。
だが聞かれた以上答えないわけにはいかないだろう。

「……憎いさ。憎くないといったら嘘になるよ。だけど、被害者ぶって誰かを憎む資格は俺にはない。
 俺の憎しみに誰かを巻き込んで、また悲しみを増やすようなこともしたくない。
 どんなに誰かを憎もうと、それだけは絶対に許されない」

嘘は言わない。奇麗事でもない。そんな事を口にする資格は自分にはない。

「そっか。そうだよね。普通は、それが当たり前なんだよね。
 でも僕は……僕は、無理だよ。頭の中から消えない。衝撃が強すぎて忘れることができないんだ。
 ……スーパーコーディネーターになんかなるもんじゃないね。
 どんなに楽しかった彼女との思い出を思い出そうとしても。いっそのこと彼女との思い出を消してしまおうとしても。
 真っ先にあの時の光景が頭に浮かび上がってしまうんだ。
 血塗れで僕に 『世界を頼む』 って懇願するラクスの姿を」
「アンタ、あの人にそんな事言われちまったのか」

此方を見ずに話すキラ。言ったそばから思い出しているのか、手の色が変わるほど拳を握っている。
多分キラは今、少しだけ本音を漏らしたのだろう。そうシンは思った。

スーパーコーディネーター。どの分野でも努力さえすれば、必ず一番になれる存在。
それは記憶力についても同じ事が言える。
忘れられない。どこにでもあるシンプルな言葉だが、キラにとってそれはそのままの意味で。
大切な人との無残な別れの光景。その映像は月日は流れても消えずに、彼の中で流れているのだろう。

だけど、そんな今のキラを見て思った事が一つだけあるのだが。
491CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:57:42 ID:???
「なあキラ。それってさ」
「ん、何?」
「………いや、なんでもない」
「……そう。お酒もなくなったし、僕はこれで失礼しようかな」

結局言えやしなかった。
少し気になったのかシンの言葉を待っていたキラだったが、そのうち諦めて立ち上がった。シンに背中を向けて歩き出す。
多分、コイツとこんな時間を過ごすのはこれが最後だろう。去っていくその背中にシンは声をかけた。

「あのさ。なんだ、その。………酒、ごちそうさん」
「どういたしまして。今日は楽しかったよ、君と話せて。ルナマリアさんとコニールって子によろしく言っといて」
「言えるわけないだろ。心配されちまう」

それもそうだねと呟いてキラは去っていった。
公園にいるのはシンだけ。なんとなく寝転がって星空を見上げた。流れ星が一つ、流れて消える。

とても綺麗だった。




寝転んだシンを遠くから見つめながら、キラはほっと一息吐く。
悩んでいるのだろう、視線の先の青年は綺麗な夜星を見ているというのに表情は晴れない。

「迷ってくれてるのか。なら期待できそうだな」

付き合いはそう長くはなかったが、シンのことはそれなりに知っている。自分の判断は正しかった。
NOと言えるコーディネーター。そんな彼が悩むということは、ほぼこちらの意向に傾いているということだからだ。
信念や理想を語りかけ、一緒に戦おうと誘う。君にならできると彼の実力を褒めちぎる。
そんな誘いの言葉よりも彼は助けを求める声に強く反応する。
そしてシンは、自己の悩みは時間の経過を待つのではなく行動で打破するタイプの人間だった。
磔が効いたのか今の地上に動きはないので、これからキラはしばらく宇宙で戦うつもりである。だから戦いに民間人などを巻き込むというシンが心配する理由も無い。
ここまで彼の思考を誘導したのだから、自分の目的が果たされる可能性は高いだろう。

断っておくが、別に彼に嘘を言ったわけではない。
酔ったことも飲んで楽しかったこと。自分の目的や夢のこと、そして彼との戦いを望む心など。
先ほど彼に喋った内容は全て本当のことだ。
ただしいて言うならば、此処に来たとき本当は彼を脅すことを考えていた。キラもシンにとってベルリンがどれだけ大切な街か知っている。
ザラ派がこの街で行動を起こすかもしれないという情報をキラは入手していたので
その事実をちらつかせつつ一言 「次はベルリンだ」 とでも言えば、彼はすぐに自分の依頼を受けてくれただろう。

しかし彼の言葉を聞いた途端、そんな気分はなくなってしまった。
被害者ぶって誰かを憎む資格は俺にはない。俺の憎しみに誰かを巻き込んで、また悲しみを増やすようなこともしたくない。
思い出すのはそう言ったときの彼の目。
彼の大切な人たちを殺したのはほとんどが自分なのに。そんな相手を目の前にしてなお、自分を抑えている。
実は少しだけ彼が羨ましかった。
悲しみや憎しみを過去のことにできるという自分よりはマシな境遇もそうだが、それを抑え込む彼自身の心の強さにも。
それは自分にはとてもできないことだから。
492CROSS POINT:2010/01/28(木) 23:59:05 ID:???

「バルトフェルドさん。キラです」

ポケットに入っていた携帯サイズの通信機を取り出し、ディーヴァへ連絡を取る。
流石はクライン派の作った特注品、向こうは宇宙でこちらは地上だと言うのに映像はクリアだ。

『聞こえている。何かあったの……少しろれつがまわってないな、どうした? シンと会うんじゃなかったのか』
「少し飲みすぎました。久しぶりに楽しかったもので」
『……そうか。そりゃ結構なことだ』

困ったように笑いながら、バルトフェルドが自分の頬を掻く。そして傍らに置いてあるドリンクの容器を手にした。
その中身は間違いなくコーヒーだろう。背後のミリィが呆れた目で見ていたし。
休憩を邪魔したのは悪かったが長話をする気にもなれなかった。単刀直入、本題に入る。

「ザラ派の残党がベルリンで何か狙ってる、って話がありましたよね? あれはやっぱりクロなんですか?」
『ああ。さっき入手した諜報部からの情報によると、ベルリンをザフト軍の正規MSで破壊して再び戦乱を巻き起こすつもりのようだ。
 そうなればナチュラルもコーディネーターへの復讐を考えるだろうし、焼かれたベルリンには復興目的で滞在中の多数の元連合軍兵士がいる。
 怒りに燃えた戦意高揚な兵に報復という開戦の理由。彼らが望む望まざるに関わらず、連合に戦争の条件が揃うわけだ。
 そしてプラント評議会の一部にザラ派が接触したという情報もあるらしいし、
 彼らの主な狙いは前大戦の焼き増し、及びその混乱に乗じての捲土重来というのが予想されるかな』
「でしょうね」

キラもバルトフェルドと同じ予想をしていた。ナチュラルだろうがコーディだろうが、地位を失ったものの考えなど変わらない。
ローリスクハイリターン。目的の為に安全な場所から人の命をおもちゃの様に扱うと相場が決まっている。

『一応言っておくが、彼らを放置するという考えもあるぞ。
 いくらシン=アスカが戦いから距離を置きたがると言っても、ベルリンを焼かれては黙っていまい。
 ザラ派の情報と引き換えに此方に引き込むという策も考えられるが、どうする?』

本来なら苦労せずに最強の敵が味方になるのだから、それが定石だろう。
しかし彼を味方に引き入れる、そんなことになっては此方が困る。
それでは今日、何のために彼を煽ったのかがわからない。

「いえ、その案は却下でお願いします。戦争の種が芽生えるのを知っていて見逃すというのは僕たちの大儀に反しますから。それに―――」
『それに?』
「……いえ、なんでもありません」

それに。今日の酒はせっかく久しぶりにできた楽しい思い出なのだ。
この公園が炎に包まれるなど、考えたくもない。

『ま、君ならそう言うとは思っていたがね。聞いておきたい事はあるかい?」
「ザラ派のアジトの情報は入手していますか?」
『本拠地からダミーまで全て把握している。表立った動きをしていなかったから今までは相手にはしなかったがね。この情報が本当ならお痛が過ぎた』
「では2度とそんな事を考えられないよう、ディーヴァに戻り次第そこを強襲します。ヒルダさんたちにも準備するように伝えてください」
『わかった』

493CROSS POINT:2010/01/29(金) 00:03:27 ID:???

通信を切る。軽く吹いた風に思わず目を細めた。
酔いで火照った身体にに冷たい夜風が気持ちいい。

自分の今の立ち位置も理解はしているし、柄にもないことをしている自覚はある。
シンの甘さがうつっちゃったかなと思わないでもないが、だがまあこれからのことに比べれば大した投資でもない。
彼はもうすぐ戦場に戻ってくれるのだ。他ならぬ自分のために。

「……報酬は前払いだよ、シン」

また今夜も自分は悪夢を見る。それは避けることができないだろう。
しかし道の遠くに明かりは見えた。先ほどの酒も悪夢の前には気休めと呼べる程度だが、それでも楽しかった。

ならばこれくらいはしてもいいだろう。
自分に残された数少ない友人に対する礼として、これくらいのことは。




自分の部屋に戻ると鍵が掛かっていなかった。一応注意しつつドアを開ける。
我ながら無用心だ。まあ、この部屋には大して盗まれる物など有りはしないのだが。
目に飛び込んできたのは大量の酒瓶と散らかった食べ物の残り。
それと、床に寝ている酔っ払いが2人。言うまでもない。ルナとコニールだ。

「人の部屋に来てまで、何やってんだか……」

起こそうかとも思ったが、気持ち良さそうに寝ている2人を起こすのもしのびない。
ベッドにでも寝かせるか。やれやれ、今日自分はソファで寝らねばならんらしい。
だがそれにしても。

「何つーか、2人共すごい格好してるな……」

ルナマリアは可愛らしいピンクのパジャマ。体のラインがはっきりとわかる格好だ。
コニールが身に纏っているのは大きめの白いワイシャツのみ。すらりとした脚を惜しげもなく晒している。
しかも2人共酔っている為か、ほんのり顔が紅くなっていた。
シンとて年頃の男性だ。2人のこの姿には正直クるものがある。自分色に染めてしまえ―――そんな己の声も聞こえた。

頭を振って煩悩を払う。
今の自分が手を出したところで、誰も幸せにはならないだろう。
494CROSS POINT:2010/01/29(金) 00:06:03 ID:???

2人を抱えてベッドに寝かせた。少し寒かったのか、寝たまま2人はお互いもぞもぞと寄り添い合う。
普段喧嘩が絶えない2人だが、こうしてみると何だか姉妹のようだ。
苦笑しながら布団をかけてやり、部屋を見渡した。人の部屋なのによくもまあ散らかしてくれたものだと思う。
軽く溜息を吐き、散らかった部屋を片付ける。
もう夜も遅い。電気を消してソファに横になる。天井を見上げながらキラとのやりとりを思い出した。

世界を頼む、か。
平和を求め続けた歌姫が、伴侶に最期に託した想い。
多分キラはその遺言を忠実に守っているだけなのだろう。
ただ、彼女が納得してくれるやり方が解らないから、かつての自分たちと同じ方法を取ってるだけで。

だが、やはりシンは思うのだ。あの時キラには言えなかったけれど。
死者の言葉が生者を苦しめ縛る。それは、世間一般では。


呪い、と呼ばれるものではないだろうか、と。




495CROSS POINT:2010/01/29(金) 00:09:54 ID:???
今回はここまでです
難産だったのでおかしいところなどあるかもしれませんが、その辺りは流していただくと幸いです
496通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 01:05:58 ID:???
速筆な上に内容もきちんとしているので期待してます。
被害者ぶってないちょっと冷めたシンのスタンスが新鮮で魅力的です。
497通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 03:09:08 ID:???
OK OK ちゃんと面白かった
なんつーかこう、せつないな。
本当は心から馬鹿話出来りゃ良かったんだけどな。
498通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 11:10:33 ID:???
乙でした
キラとシンの会話は面白く切なかった
もっと早くこんな会話が出来てれば悲劇は起こらなかったかもしれないけど、そうするには二人ともまだ若かったというか幼かったんだろうね
499通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 20:26:17 ID:???
今更だけど、こういうのを読むと、嫁が本当に素人以下ってことがよく分かるな。
いや、比べること自体職人さんに失礼か。
500通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 20:46:43 ID:???
そう思うんなら心の中に留めておきなさいよ!
本当に失礼だと思うよ
501通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 22:38:29 ID:???
すいません、ROMります。
502通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 23:41:01 ID:???
もし運命の対艦刀がタクティカルアームズだったら
503通常の名無しさんの3倍:2010/01/30(土) 11:27:53 ID:???
>>502
切れ味は落ちそうだな。
でも確か材質がラミネート装甲だか対ビームコーティングが施されてるだかあったような気がするから、
少なくとも隠者にぶった切られて終了は無くなるんじゃないかな。
重量が増えたぶん白羽取りもされにくくなるか?
504通常の名無しさんの3倍:2010/01/30(土) 12:48:45 ID:???
白刃取りされる→バーニアでそのまま押し込む、のコンボも使えそうだ。
でもあれ、携帯性悪いからな。普段はどこにマウントしておくかが気になる。
505通常の名無しさんの3倍:2010/01/30(土) 14:55:40 ID:???
>>504
白羽取りは実質ビームシールド2枚だから、「手」で挟まない限り防げないんじゃ?
506通常の名無しさんの3倍:2010/01/30(土) 15:13:29 ID:???
種キャラでイナズマイレブン
507CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:42:28 ID:???


第9話 『蘇りし剣』


「じゃ、現状の説明を頼むわ。これでもジャーナリストの端くれだからある程度は理解してるけど、それにも限度があるからさ。
 最近ザラ派の残党が壊滅したってのは風の噂で聞いたんだけど」
「分かっている。……シホ、始めてくれ」
「はい。ではヘブンズゲート以降の動きですが」

女性の声にディアッカは目の前の画面に視線を向ける。
ここはプラントの首都、アマリリスの議長室。
部屋には自分の他にイザーク=ジュールとシホ=ハーネンフース。現プラント議長代行とその秘書官である。
代行が付くとはいえ実質的なプラントの支配者であるこの男に、自分は直々に呼び出されたのだ。
もっともアカデミー時代からの旧友なので、気後れなどはまったくしていないが。

「まず世界に対しての宣戦布告から1週間後、オーブ宇宙軍と接触。
 実の姉であるオーブ連合首長国代表、カガリ=ユラ=アスハ氏が説得するも決裂。
 同時にオーブ軍との戦闘に入り、これを殲滅。
 なお、戦闘時間は3分弱です」

映像がチャートからMS戦のものに切り変わる。映ったのは一方的な殲滅。
統制された部隊がわずか1機に面白いように落とされていくその様は、まるで出来の悪いアニメでも見ているかのようだ。
そしてその映像も、最後に残った黄金の機体があっさりと破壊されたところで終わった。
手際が良すぎて溜息も出ない。

「その後、海賊が出没する宙域・紛争を続ける地域に予告も無く介入し、これを鎮圧。
 テロリストを匿っている街を焼き払うといった暴挙を行い始めるのもこの頃からです。
 ただ住民を避難させてからの行為ですので、死者は出ていません」

キラのルートを表す矢印が通り過ぎた街の名の中で、タッシルやクレタ等いくつか点滅している。
おそらくこれが焼き払われた場所なのだろう。

「先日オーブ近海において、アスラン=ザラ少将及びムウ=ラ=フラガ一佐と交戦。両名を撃破。
 その際にキラ=ヤマトの手に渡ったインフィニットジャスティスとアカツキを、見せしめのために破壊。
 いや、処刑と言った方が良いかもしれませんが……その映像を全世界に放送しています」

そして次に映ったのは例の映像。2つの十字架。
もう何度も目にしているが、見ているだけで気分が重くなってくるのは変わらない。

「そしてこれは3日前の事になりますが、ザラ派の地下組織と見られるものが多数破壊されました。
 どうやらプラントに隠れて物資や兵を集めていたようです」
「この状況下で何て馬鹿な真似を。これではキラに戦う理由を与えているだけだ……」
「鴨が葱背負って来てるようなもんだな、向こうからしたら」

自業自得のザラ派のアホ共はこの際どうでもいい。それより気にすることはもっとある。
画面に映ったジャスティスとアカツキを眺め、3人は溜息を吐いた。
508CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:44:08 ID:???

最後にして最強の一手、まさしく切り札であった筈の2機が、いとも簡単に返り討ちにあったのだ。
しかも磔による処刑付きで。時代遅れだが、見せしめとしては十分すぎる。
シホの話によると、軍の中にもキラを受け入れるべきだという声が上がっているのだとか。
クライン派のサクラによる流言ではないかと指摘をしてみたが、それ以外の者からもその声は聞こえているらしい。
困ったもんだ。

「まさかあのアスランが2人がかりで破れるとはな。しかも正面からの正攻法でだ。
 ディアッカ、お前ならどうやってあの2人と戦う?」
「戦う? 馬鹿言うなよイザーク。すっとんで逃げるね、俺なら」

その言葉に残った2人も軽く頷く。彼らもかつては凄腕のパイロットと謳われた事もあったが、流石にそこまで強気にはなれなかった。
インフィニットジャスティスはストライクフリーダムと互角の性能を誇る、CE最強の機体の一つ。
ましてや搭乗者はアスラン=ザラ。おまけにフラガ一佐のアカツキの援護付き。

普通に考えて、勝とうと思う奴なんてこの世界にはいない。
その可能性を持った人間だって微々たるものだ。しいて名を上げるなら、実際にそれを成したキラか―――

「それで、今度はシンを駆り出すってのか? もう民間人だぜあいつは」
「十分理解している。だが他に手が無い。
 例え核やジェネシスでキラを討ったとしても、このままではキラの人間離れした強大さを後世に伝えるだけだ。
 そしてクライン派の残党はその後もずっと、プラントに反抗し続けるだろう。
 キラやラクス達によって見せて貰えるはずだった、夢の続きを見るためにな」

確かにそれは十分ありえる話だ。どの時代にも狂信者というものはいる。
女神達の復讐という言葉を免罪符にテロに奔る、それくらいは十分考えられた。
あの手の連中は、憧れや崇拝という感情が理解から程遠いという事をわかっていない。

「だから人の手で討たなきゃならないって言いたいのか? お前は」
「ああ。神に縋ることはできても、負けた死人に縋り続ける事は難しいからな。
 ―――俺達は生きている。そして生きている以上、明日へと歩き出さなければならん。
 八つ当たりや夢想に付き合っている場合ではない」
「手厳しいねえ、お前」
「今の俺は議長代行だ。背負っているものがあるからな。手厳しくもなる」
「………申し訳ありません、続けても宜しいでしょうか」
「すまん、頼む」

割り込むシホの声に、2人は会話を一旦止める。今度は画面にMSの映像が映った。
深紅の翼。背中には長剣。そして血涙を流しているようなGタイプの顔―――デスティニー。
キラを撃つ機体に選ばれたのは、かつてのシンの愛機だった。
だがそれを見たイザークは僅かに眉を顰める。
彼が技術部に依頼したのは 『フリーダムを倒せる機体』 だったらしいのだが、かつてのものと外見上特に変化は無いからだ。
シホが説明を再開する。

「フリーダムと遠距離で戦う愚を避けるため、武装は中〜近距離に特化させています。
 長距離砲のビームランチャーとビームライフルは排除し、ビームマシンガン『スコール』を左のウェポンラックに装備。
 マシンガンと言っても、一発一発がビームカービンの一撃に匹敵します」
509CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:45:53 ID:???

「あのさ。今更だけど、こんなの俺に見せていいのか? 俺も今は民間人なんだけど」
「俺も暇じゃないからな。報告は纏めて受けたいし、お前もプラントの害になるようなことはしないだろう?」

点滅する左肩のウェポンラックの光が消え、今度は右肩のウェポンラックが光る。
シホは2人の雑談を気にしないことに決めたようだ。

「アロンダイトは長さと威力はそのままに、片手でもスムーズに振れるようスリム化されています。
 またビーム刃の後ろに実体剣があり、もし折れてビーム刃が消失してもある程度の戦闘力は有しています」
「大砲がキラに当たらないのは目に見えてるから妥当だな。ライフルは…まあパルマもあるもんな……」
「大剣ではなく長刀か。だがキラは接近戦も苦手じゃないからな。
 アスランのジャスティスでも駄目だったことだし、一撃離脱を徹底させた方が良いかもしれん」

今度は両手の部分が点滅する。デスティニー最大の特徴でもある武装。
『掌の槍』ことパルマフィオキーナだ。
それを見たイザークの目が少し鋭くなる。何か思い入れでもあるのだろうか。

「パルマフィオキーナは通常タイプと拡散タイプ、両方のビームが撃てるようになっています。
 通常タイプはビームライフルと同等の威力を有し、
 拡散タイプはドラグーン対策として広範囲に攻撃を放つことができます。……但し、距離に比例して威力は落ちますが」
「ふむ」

素早いフリーダムやドラグーンに対し、中距離ではスコールやパルマ (通常) 。近距離は散弾かアロンダイトの一撃離脱。
それがザフトの技術部の出した答えのようだ。ありきたりな答えではあるが、正道である分信頼性も高い。
中途半端な奇策に頼るよりは遥かにマシか。

「なあイザーク。デスティニーをフリーダムキラーに改造したのは分かった。
 だけどそれでも勝てるってわけじゃないだろ?
 なんてったって相手はキラだ。天下のスーパーコーディネーター様だぞ、あいつは」
「確かにな。だが、シン=アスカがキラ以上の戦士の素質を持っている可能性だってあるだろう?」

そりゃ可能性という言葉を使えば、誰だってキラ以上の可能性はゼロではないが。
そんな言葉遊びよりも彼が何を言いたいのかが気になる。

「根拠は?」
「1つは、あいつもSEEDを持っているという事」
「SEEDってアレか? マルキオ導師がよく言ってた」

SEED。 『優れた種への進化の要素である事を運命付けられた因子』 と呼ばれる概念。
言葉だけは難しいが、戦闘の際に秘められた力を開放するということしか分かっていない。
まあ要するに、スーパーサ○ヤ人みたいなものなんじゃなかろうかとディアッカは認識している。
所持している奴ら全員、 『戦い』 に関しては尋常ではない力を発揮しているし。
ちなみに、イザークもディアッカもSEEDは持っていない。
510CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:47:29 ID:???

「もう1つは、デュランダル議長とエンジェルダウン作戦かな」
「エンジェルダウン作戦? シンがキラに勝てた例の戦いか?
 あれはインパルスが何回も戦線復帰できたからってのがその理由じゃなかったか?」
「そうだ。だが俺が気にしているのは作戦自体だけじゃなくて、その背景だ。
 デュランダル議長は遺伝子についての専門家だった。当然シンの遺伝子についても調べていただろう。
 最新鋭のインパルスを、アカデミー主席でもないシンに与えたのがいい例だ。
 その彼が後にデスティニープランの象徴と呼ばれたシンを、わざわざ1対1でキラにぶつけた。
 そして、その戦いでシンはキラを倒した」

だから、シンはキラを上回る可能性を持ってると言いたいのか。
ディアッカの目を見て思考を読んだのか、自分が口を開く前にイザークの言葉が続いた。

「短絡的だと思うか?」
「お前にしては希望的観測が多すぎる。自分でも信じてないだろ、それ」
「……まあな」

図星だったのか目を逸らし苦い顔をするイザーク。シホは2人を表情も変えずに見ている。

「だが全部信じてないというわけでもない。俺はかつてのシンの戦いを映像で見たことがある。
 俺達があいつの年齢の頃、あんなに強くはなかった。いや、俺達だけじゃなくキラやアスランも含めてもだな。
 考えてもみろ。2つ年下、赤とはいえ主席でもなかったあいつが
 ヤキンを生き抜いたキラやアスランと初陣から数ヶ月で互角に戦っていたんだ。
 むろん機体性能もあるだろうが、それでも才能だけならキラと互角以上だとしてもおかしくない」
「そりゃま、確かにそうだけどな。―――なあ、本当の事言えよ。見ていて辛いぞ」
「………自分でも無様だとは分かっているがな。
 もう何でもいいんだ、俺は。あいつを、キラを人に戻してくれるのなら」

それが本音か。年を取っても素直じゃない野郎だ。
いや、年を取ってしまったからか。どちらでもいいけど。

人として死なせてやりたい。つまりはそういうことなのだろう。

キラと彼は親友だった。ディアッカもキラとは友人だったが、イザークとはそれ以上に仲が良かった。
無論当初はニコルの件で距離があったのだが、元々の相性が良かったのだろう。
熱血しながら突っ込むイザークと戸惑いつつも上手くフォローするキラ。
シンパは多くても友人が少なく、人間関係で落ち込みやすいキラと、そんなキラに喝を入れつつ励ますイザーク。
気がつけば2人でよくつるんでいたものだ。
それゆえに、今回のキラの変貌に心を痛めていたのだろう。
本来ならこいつが真っ先にキラを殴りに行きそうなものだが、議長代行という立場もあり、それは不可能だった。
世界はこれ以上指導者を失うわけにはいかない。
貴方とは違うんですと逆ギレしながら簡単に辞めるというわけにもいかないのだ。
511CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:51:12 ID:???

「で?ここに民間人の俺を呼んだ理由は? 愚痴を聞いて欲しかったわけじゃないだろ」
「当然だ。……先日ザフトとオーブの間で、協力してキラを討つという話が決まった。
 地球の部隊から討伐隊をかき集める。集合地点はオーブ。人員と物資の補給も行われる予定だ」
「宇宙軍は治安の維持で精一杯だもんな。地球のレジスタンスはまだキラにビビッちゃってるから、ある程度は問題ないか」
「旗艦はミネルバ。部隊を率いるのは……言うまでも無いな」

勿論だ。
自爆しようが婚約者を取られようが死にかけようが、キラの事ならヤツは滅びぬ。何度でも蘇るさ。
あいつにとって自機の撃墜など、ゴミの様なものであることだし。

「アスランだろ? あのバカがキラを他人に任せて寝てるわけが無い」
「お前はこういう事だけは鋭いな。まあいい、ここからが本題だ。
 オーブでの集合の際に、アスランに渡したいものがある。お前にはそれを護衛して欲しい」
「中身は?」
「先日製造されたMSをアスラン用にセッティングしたものだ。
 今のままじゃあの馬鹿、ムラサメでフリーダムに特攻して自爆しかねんからな。
 ジャスティスやデスティニーほどではないが、性能は折り紙つきだ」

なるほどね。
キラといいアスランといい個人的な事情も多く含む内容だからこそ、公私混同して部下に任せるようなことはしたくないということか。
そういうことなら、まあ断る理由も無い。

「別に構わないぜ。ただ、条件が1つある」
「なんだ? 報酬なら十分用意している筈だ。まだ上乗せが欲しいのか?」
「そんなんじゃないっての。今晩一杯付き合えって言おうとしただけだ。愚痴くらいなら我慢して聞いてやっから」
「お前にそんな弱味見せてたまるか。……まあいい、たまにはいいだろう」

その瞬間、部屋の空気が下がったような気がした。なんだろうこの感覚。
昔なんか感じたことがある空気だ。記憶が正しければ確かアークエンジェルで。
まあいい、めんどくさいことは忘れて今夜は旧友との再会をはっちゃけつつ楽しみますか。

「オッケー、んじゃシホちゃん、今日はちょっと旦那借りるぜ?」
「………ええ、構いません。代行も最近お疲れですし、息抜きしてきて下さい」

背筋に奔る冷たいものに何やら身の危険を感じるが、気にしたら負けである。
気付かない方が幸せという言葉もあるし。

そうそう、重要な事を聞き忘れていた。

「ああそうだ、アスランやシンには新型を渡すんだろ?俺の機体は何よ?」
「どうせ貴様のことだ、射撃メインの機体しか乗る気が無いのだろう?ガナーザクファントム、色は好きに塗れ」

ちくしょう。俺にも専用機用意してくれよなぁ。バスターとか。
512CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:53:56 ID:???

「やっぱりかよ。良い機体だけど汎用機じゃないか。少しは俺にもサービスしろよ」
「今言うな馬鹿もん、パーソナルカラーを許しただけでもありがたいと思え。
 だいたい、そうほいほいと簡単に新型ばかり準備できるか!!」
「なんだよったく……それでもプラント議長か〜? ケチだなぁ」
「議長じゃない、議長代行だ!! 本当にお前と言うヤツはしょーもない……」
「………貴方用の新型なら用意しています。機体ではなく特別な武器ですが」
「え、マジ!?」
「ええ。もう、貴方の機体に換装するよう手配しています」

冷静な声でシホが呟く。意外なところから良い話が来た。
こめかみに浮いた血管が気になるが、それよりも今は話の内容だ。

「グゥレイト!! で、どんなのだ? やっぱ凄いのか?」
「見れば分かります。伝説の兵器を再現した、と言えば良いでしょうか」
「伝説の兵器。やばい、早く見せてくれよ」
「言われるまでもなく。コレです」

リモコンのボタンを押すシホ。
だが画面に映る長細い物体を見て、ディアッカのテンションが一気に下がった。

胴体部分はなんの変哲も無い円柱だが、色だけは微妙に黒い。
棒の先は卵型に広がっており、逆に根元には丸い玉が2個両サイドにくっ付いている。
その形は―――まあぶっちゃけどっからどう見てもナニだった。
……すごく、大きいです。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!!」
「おお、ネオジェネシススーパーフリー負債仕様ジェネシス砲じゃないか。完成度高けーなオイ」
「何で知ってんだ!! つか何その名前、ジェネシス2回言ってんじゃねーか!!」
「知らんのか? かつてアニメ界を終末へと追いやりかけた "X" plosion というプロジェクト。
 その公式サイトの更新をストップさせた伝説のサイバー兵器だ」
「嘘付け!! あれは監督と脚本が会社に干されただけだろ!!」

つかこんなそそり立つサイバー兵器があってたまるかマジで。
駄目だ、この馬鹿じゃ話にならん。今も何言ってんのコイツと言わんばかりの顔してるし。
というか何時からこいつはボケに転向したのか。あんなにツッコミだったのに、夕べはもう違う色。
いや、今はこいつに構っている場合ではない!
513CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:55:19 ID:???

「なあ。なんなんだコレは、シホちゃんよぉ!! 見た目思いっきりナニじゃねーか!!
 つかこんなもん出しといて何澄ました顔してんだコラ!!」
「まったく、エロチャーハンはいつも卑猥な事しか考えないんですから。
 棒を見るたびにそっちの話に持って行かないで下さい。セクハラで訴えますよマジで。
 これはね、前回の戦争で放たれたレクイエムを相殺してアマリリスを守った伝説の兵器なんです。
 デスティニープランの象徴はシン=アスカではなくこのネオジェネシススーパーフリー負債仕様ジェネシス砲という説も…」
「さっきの話と違うじゃねーか!!」

こんな地方限定のご神体みたいなもんに守られてたまるか。
てか何で俺がこんな目に遭わねばならんのか。考えられる理由は一つしかないけどな。

「あれか、旦那を取られたのが気に入らないのか!?」
「別にそんな事で怒ってなどいません。議長は忙しい方ですし、私とはいつも一緒にいますから。
 たまに会う友人を優先するのは当然のことです。………せっかくお気に入りのレストラン予約してたのに……」
「それ俺のせいじゃないだろ!? イザークに言えや!!」

要するにデートを邪魔されたのが理由らしい。
なんだそれ。悪いのイザークじゃん。何故俺の機体がこんな 「やらないか?」 的な装備を付ける羽目になるのか。

「ハッ、大方夜景の綺麗なスウィートルームでの甘いひとときを邪魔されたってやつか?
 俺は一応君の先輩だぞ!? そんなもんでここまでコケにしなくてもいいだろうが!!」
「失礼な!! 私は9800円の安いホテルの方が燃えるタイプです!!」
「聞いてねえよそんなこと!!」


つか聞かせんな。



514CROSS POINT:2010/01/30(土) 23:57:01 ID:???
今日はここまでです
後半は気にしないでください、マジで
515通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 00:05:46 ID:???
乙!!

キャラクターが皆人間味に溢れてるな…、テロが無くて平和だったら多分健気に頑張ってたんだと思うと悲しいというかなんというか…
凄い戦いが始まりそうな予感で続きが気になるし、所々のギャグも良い味だしてる
516通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 00:19:22 ID:???
乙ッス
>>出来の悪いアニメ
一番フイた
517通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 00:57:57 ID:???
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲がこんなところで……
518通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 01:41:05 ID:???
少しずつ準備ができつつありますかね。乙

>今度は両手の部分が点滅する。デスティニー最大の特徴でもある武装。
>『掌の槍』ことパルマフィオキーナだ。
>それを見たイザークの目が少し鋭くなる。何か思い入れでもあるのだろうか。

さらっと中の人ネタに吹いたw
そういや、2時間ほど前にCSの某チャンネルで中の人出てた。
519通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 09:25:03 ID:???
シリアスな前半とネタまみれの後半の落差がひでえw
>あんなにツッコミだったのに、夕べはもう違う色。
地味にここで耐え切れなくなったw
520通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 16:24:01 ID:???
艦とか施設狙いのような根性悪い戦い方をこう否定するか。CEでは頷けるのがアレだなw
521通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 18:17:29 ID:???
しかし、最大の問題は取り付け箇所じゃなかろうかw
どこに付けても問題だけどw

そういや、似たようなのVになかったっけ?
522通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 18:51:19 ID:???
>>521
つ カイラス・ギリー
523通常の名無しさんの3倍:2010/02/01(月) 13:49:08 ID:???
ネタに紛れて見落としがちだが、ジュール政権=ザフト正規軍もまた
シンの帰参と参戦を大前提の既成事実として語っているのかな?
シンは依然として戦う気はないようだしキラもベルリンをカタに取る考えは却下、
またあの飲み会の後ならもしザラ派やブルコスの残党のそのまた残りカスが
テロかましてもキラの差し金などと誤解するとはまず思えないし…
(ある意味ディーバ隊以外で、否彼等以上に最も今のキラを理解してるのはシンかも)
話が進めば進むほどいよいよシンが戦う動機づけがわからなくなる
(シリアスものの)アフターSSなんてそうそう無いよな…
524通常の名無しさんの3倍:2010/02/02(火) 19:13:15 ID:???
ジェスがあんなに「真実!真実!」とうるさいのはどう見たって
THEビッグオーのシュバルツ・バルトの影響を受けているのに違いない
ジェスのガキの頃にシュバルツに会って洗脳っぽい教育を施されたから
あんなに行動できると思うんだ
525通常の名無しさんの3倍:2010/02/03(水) 13:52:25 ID:???
もし種死のキャラクターが女神の鬼みたいだったら

例1

シン「ワリゃあ… ステラの命ぃ返せや… お!? ステラの命ぃッ 返さんかいやコぅラぁああッ オドレの命も潰したらぁあ おらぁああッ!!!」(キラに襲いかかる)

例2

シン「ワシの獲物(キラ)に勝手に手ぇ出しゃあがって…何さらしてくれとんならこのボケぇ…おおッ!!?
時間がのーてあわてて急造したけぇのォ…火薬がちぃとわやに入っとるが…!!
死んだらまぁ…堪えてくれぇや!!!!」(ミサイルを乱発する)


……やめた方がいいな
526通常の名無しさんの3倍:2010/02/03(水) 22:15:59 ID:???
ミネルバのMS隊隊長がハイネだったら…ってないかな?
527CROSS POINT:2010/02/03(水) 23:52:20 ID:???


「負けたんだな、俺は」

夕方、病院の受付近くのベンチに座りながらアスランは天井を見上げる。
溜息を吐いたぶんだけ幸せが逃げると言う言葉が本当なら、今頃俺はとっくに不幸な事故で死んでいるだろうな。
そんな面白くもないことを考えながら。

受付ではメイリンが退院の手続きをしているところ。
いやもうとっくに終わっているのだろう、自分が入院している間に顔馴染みになった同年代の看護婦数名と小話をしている。
時間がゆっくりと流れているかのようなこの空間は悪くない。まるで夢の中のようなこの心地良さは。
陽だまりになっているので自分が座っているベンチは暖かく、夕日でオレンジ色に染まる建物はどこか心をセンチメンタルな気分にする。
ざわざわとした患者や病院関係者の喧騒も耳に優しく響いているし、いっそ本当に全て夢の中の出来事だったらどれだけいいだろう。
現実ではキラとも戦わずラクスも生きていて、皆が未来に向かって歩いていっている。そんな現実なら、どれだけ。
だが痛みを感じる己の身体が、此方こそが現実だと実感させる。

――――やめてよ、アスラン。

頭を占めるのは勝負を決めたあの一言。キラがあんな手を使ったことについて怒るつもりは無い。
むしろあんな一言で決意を揺さぶられた己が情けないだけなのだ。セイバーに乗ってたころから全く成長していないのだろうか自分は。
後ろ向きな思考ばかりを続ける頭を振って、無理矢理現実的な思考に持っていく。

「もう傷は癒えたんだ。なら俺にもまだやれる事はある筈だ」

無論動けるだけで完治したというわけではない。肋骨にはヒビが入っているし、左足首は捻挫している。
それに額を深く切っているので包帯はしばらく巻き続けることになるだろう……今髪薄いからガードできなかったって思ってる奴、あとで男子トイレに来い。
まあMSにチョークスラムとニードロップを喰らってこの程度の怪我で済んでいるのだから、運が良いと考えても良いかもしれない。
むしろ勢いよく地面に突っ込んだムウさんの方が重傷で、彼はしばらく戦線には復帰できないだろうとのことだった。

ムウさんの戦線離脱に自身の負傷と、どんどん悪化していく周囲の状況。それに加えて民衆にもキラに賛同する声が増えてきたと聞く。
オーブとザフトが手を組むという話も上がっているらしいが、この状況下ではあまり明るい話題とは言えない。
このままでは本当にキラを止められないという可能性も浮上してきている。

「あいつを止める、か」

ふと、思うこともあった。
あいつを止めてどうなるんだろう。そうすれば平和が訪れると決まったわけでもないのに。
むしろキラという抑止力が無くなって世界は混沌となるだけかもしれないのに。
いや、迷うな。その思考はきっと逃げなんだ。
別に行動の見返りを求めているわけじゃない。例え戻ってくるものがなくったって、失うものばかりだって俺は――――

「結局、自分の道を貫く以外の事ができないしな」

動かずにはいられない。立ち止まってしまうことは耐えられない。

俺は、馬鹿だから。
あいつと一緒にいた時から、ずっと。
528CROSS POINT:2010/02/03(水) 23:54:49 ID:???



第10話 『オレンジ』


「不味いな、この酒」

不機嫌そうに呟きながら、シンはコップに入った酒を煽る。
今の時刻は深夜、誰もが寝静まった時間。日付はとっくに変わっていた。
本来なら明日の為にもう寝なければならない時間だ。なのに何故まだ起きているのか。
シンはその原因である机の上のパソコンに視線を向ける。
受信メールの一番上には 「宇宙で待ってる。報酬はもう払っておいたよ」 とだけ書かれた新着メールが一つ。
誰からなんて言うまでも無い。
キラ=ヤマト。あいつを俺はどうしたいんだろう。

『したい事、しなきゃいけない事は分かってるんだろう? なのにいつまでも迷ってさ』
『情けないんだよ。何だそのザマ。本気で殺してやろうか』

脳裏に過ぎるのは、先日自分がアスランへ向かって言った言葉。
かつて自分が言った言葉が自身の胸に突き刺さっている。
まさかここにきて、柄にもなく演説ぶったツケがまわってくるとは思ってもいなかった。

「やれやれ。これがブーメランってやつか」

皮肉気味に呟いても何か変わることもない。シンはソファに背を預けて目元を右手で覆う。
酔いは全然回っていないが、意識が少しずつ暗闇に沈み込んでいく。しかし思考まで沈むことはなかった。
今まで蜘蛛の巣が張ってた自分の脳をフル稼働させ、シンは物思いにふける。

報酬と言う言葉に覚えはない。
でもこの間キラが潰したザラ派の残党が、戦争を再び始めるためにベルリンを焼く計画を立てていたとニュースで言っていた。
となるとキラの言う報酬はヤツらを壊滅させた事、つまりベルリンを守った事と考えて間違い無さそうだ。
なら自分は借りが出来たということになる。押し付けるような前払いの報酬だが、助けられたのには変わりない。
おまけに宇宙で戦うなら、先日自分が言っていたような戦いの巻き添えになる人もいなかった。

じわじわと真綿で首を絞められるように、戦う理由が少しずつ積み上げられていく。
本来ならばアスランに言った時と同じくスパッと決断しなければならないのだろう。
しかしあいつと自分ではいろいろと立ち位置が違う。
アスランは 「覚悟は決めてるけど自分が納得したタイミングで行くから、それまでお前絶対押すなよ」 と言ったまま動かないので
自分がその背中を蹴飛ばしてやったようなものだが、それに対して自分は……今の自分はどうなんだろう。

思い返すのは先日の酒宴。戦場に戻って欲しいと夜の公園でキラはそんなことを言っていた。
その中で彼が説明してくれた理由、 『力を合わせて自分を討て』 にも一理はある。
だがシンには納得が出来なかった。優しい性格に隠れがちだが、キラの本質はかなり傲慢だ。
『世界の為に』 よりは 『自分の望むものの為に』 と考えた方が正解だろう。
となるとラクスの遺言関連の話から考えても、おそらくあれはキラからの救難信号。止めてくれと自分に助けを求めている。
いや、死にたがっていると言った方が正確かもしれない。
529CROSS POINT:2010/02/03(水) 23:56:16 ID:???

―――良く見ているな

何処かで聞いたことがある声が問いかける。しかし頭の中で響くその声を、夢うつつの自分が訝しむことはなかった。
気にすることなく声の主に言葉を返す。
銃を向け合った仲だからな。キラの周りにいた人間に見えないものが見えることもあるさ。

それにしてもあの男は、こっちの事情も考えずに勝手を言ってくれる。
戻らなきゃいけないってのか。シン=アスカはまた戦わなければいけないのだろうか。
大体戦いから離れた俺ではキラを止めるなんて……いや、その言葉は逃げか。

―――やるのかやらないのか。この分岐点だけはどちらの道を選ぶにしても、迷い無く行かなければならないだろうな

……それは分かってるんだけどなぁ。
でも仮に戦いを選んだとして、俺に何が残る? 何を成す事ができる?
これまで世界は自分に何も与えてくれなかった。勝利も、仲間の命も、戦争の無い未来すらも。
そして紆余曲折あって、今はベルリンで細々と暮らしている。
もし運命というものがあるのなら今のこの状況がそうなのだろう。戦わず、力も持たず、ただ贖 (あがな) うのがお前の道だ、と。
ならばやはりやめておくべきか。
自分は少し殺しが上手かっただけで、所詮は持たざる者なのだ。
逃げるのは恥じゃない。人には限界が、どうにもならない事がある。

―――だが

ああ。
だけどかつての俺は、そんな事は気にしなかった筈なんだ。

この手では誰も救えない。
だがこの戦いを止めたいと思わないでもない。なんだかんだ言ってもアスランは友人だ。
手を貸してやりたいという思いも何処かにある。

ベルリンから離れてはいけないような気がする。
だがルナとコニール、彼女たちはどうする。このまま自分の許に引きずっててもいいのか。

キラからの依頼はどうする。
ザラ派を潰してくれた借りは確かにあるが、戦場で敗れてしまえば死ぬかもしれないのに。
死んでしまっては 『彼女』 の贖罪どころではなくなる。

同じところだけぐるぐるとまわっていく思考。吐き出したいのに吐き出せない結論。
YESとNOの2択なのに、簡単に答えの出せない自分が情けない。

アスランのことはどうする。ルナのことはどうする。
コニールのことはどうする。ベルリンのことはどうする。
キラのことはどうする。
どうすりゃいい。

俺は、どうしたい?
530CROSS POINT:2010/02/03(水) 23:58:26 ID:???

『忘れることができないんだ。衝撃が強すぎて』

さっきから頭の奥底に引っ掛かているのは一つの言葉。
彼のその言葉が本当なら、死にたくなるその気持ちもわからないではない。
自分も未だにあの雪の夢を見ているし、トラウマとなった光景もある。ひしゃげた両親の死体に残された妹の片腕。
もし自分がその光景を毎夜鮮明に夢に見続けてしまったら、間違いなく発狂するだろう。

―――そうか。厄介なことを聞いてしまったものだな

ああ。おかげで参戦と傍観、その天秤が一気に五分にまで戻っちまった……いやもう認めよう、今は逆転しちまってる。
あの時は断ることが出来たけれど、正直これ以上今のキラの姿を見たくなかった。
今のあいつは昔の俺と同じだ。怒りとか破壊衝動とか、心を燃やすようなものに縋らなければ生きていけないんだ。
そして過去の無様な自分の姿を見せられるという、そんな古傷抉るような真似されて平気なほど自分は強くない。
一歩間違えれば自分がなるかもしれなかった、泣きながら返り血に塗れる復讐者の姿も見たくはない。

あれさえ聞かなければキラの願いなんて切り捨てられただろうに。この胸のもやもやも無かっただろうに。
……なあ、俺はどうすれば良いと思う?

―――お前に出来ること。お前が望むもの。それはお前自身が1番良く知っている筈だ。
     俺がどうこう言えることじゃない。

声の主も簡単に答えはくれない。そして暗闇が少しずつ消えていく。
どうやらこの時間も終わりらしい。
だが闇が晴れていく瞬間、彼はもう一度口を開く。

―――だが一つだけ言うとするなら。どんな道を行くにしても、お前にはもっと自由に、迷いなく生きて欲しい。
     俺が見たかったお前の明日は、今の様に自分を卑下し続けるものじゃないんだ。

最後に聞こえたのは優しい声。それと同時に自分の意識もクリアになっていく。
あれ、でもこの声って確か……



「ん……」

額に置いた右手を離す。閉じていた目に天井の照明が眩しい。
机の上の時計を見ると短針はさっきまでの時間から2つほど動いていた。どうやらしばらく意識が跳んでいたようだ。
友人と会っていた夢を見ていたような気もするが、何を話していたのかはあんまり記憶にない。
先ほどまでよりは気分が楽なので悪い夢ではなかったようだ。シンは机の上を片付けようと酒瓶に手を伸ばし…やめた。
寝る時間はかなり削られているが、毒を喰らわば皿まで。手にした瓶の中の酒をコップに注ぐ。
明日の仕事が辛くなるがまあそれも仕方あるまい。キラのせいで寝る気にもならないし。
531CROSS POINT:2010/02/04(木) 00:02:48 ID:???

「不味い……」

そう言いながらも再びコップの中の酒を煽る。頭がこんがらがっているのは相変わらず。いくら飲んでも酔えやしない。
ただひたすらに胸がむかつくだけだ。
もしかしたらこの一件にケリが付くまで、しばらく自分はこんな気分を抱えていかなければならないのだろうか。
それは正直勘弁願いたいが―――

「まいったな。そんな理由で良いのか、俺」

それでいいのだろうか。
ただ酒が不味い。理由はそれだけでもいいのだろうか。
運命に、抗う理由は。

「なあ、いいのかな?」

ここにはいない友人に問う。当然の如く答えは返ってこない。
迷いは尚も継続中。
だけどこれ以上立ち止まっているわけにはいかないと、シンは心のどこかで気付いていた。




「もう、復興はここまで来ちゃったのか」

夕焼けで紅く染まっている、ベルリンの街外れにある廃墟。
コニールはその広い空き地の中心に立ち尽くしていた。

「もう少ししたら、この街ともお別れなんだな………」

ここに来た頃はまだ復興が思うように進んでおらず、何時になったら終わるのかなんて考えたこともなかった。
だが自分の部屋から近いこの場所にまで進んでいるとなると、復興作業はもうじき終わってしまうだろう。
それは、自分がこのベルリンに留まる理由がなくなる事を意味しているわけで。

空き地に転がっているいくつかの軟球。コニールはその中の一つを拾う。
視線の先にある壁にはチョークで書かれた不恰好な円。その周囲には汚れたボールの跡が幾つか残っていた。
それは残された思い出の残骸。
少し前まではシンと一緒に、この場所で避難民の子供たちとよく遊んでやっていたのだ。
男の子たちと走り回る自分と女の子たちに纏わりつかれるシン。自分たちの立ち位置が逆のような気もするが、大切な記憶には違いない。
けれどそれは既に終わった話。
彼らは既に家族と共に復興された中心部へと戻っており、今ではもうここには誰も来ない。

目線を円の中心に向けたまま、左掌の中でボールの握りを確かめる。
ちなみに彼女はサウスポー。もちろん魔球はハリケーン……なんて投げられはしないが、キレのあるストレートぐらいなら造作も無い。

「――――それっ!!」
532CROSS POINT:2010/02/04(木) 00:06:19 ID:???

大きく振りかぶり、的に向かって思い切りボールを投げる。
リリースが甘かったのか左手から放たれたそれは円の中心から外れ、跳ね返った白球は彼女の右脇を抜けていった。
転々と転がるそれをぼんやりと目で追うコニール。不意にその視線が止まる。

ボールの先には見知った顔。夕日を背後にして1人の青年が立っていた。
彼は転がって来たボールを拾い上げ、手の中で軽く転がす。

「よう。こんな寂しい場所に1人きりか」

呆れた様な口調で、けれど優しく笑うシン。
眩しく感じたのは背後の夕焼けのせいなのだろうか。コニールは思わず目を細める。

「シン? どうしてここに?」
「さてな。……それよりほら、受け取れ」
「受け取れって何を―――ちょっ、わっ」

何も言わずに手にしたグローブを放ってくるシン。続けてボールも。
あわててそれをキャッチする。
もしかして、自分とキャッチボールでもしようというのだろうか。

「なあ、どういう風の吹き回しだ? お前皆と一緒に誘ってもやんなかったじゃないか」
「やらなかったんじゃなくて他の子から離れられなかっただけだよ。それよりコニール」

疑問を口にする。目の前のシンは既にグローブを嵌めて構えていた。
なんだこいつ。いつもと違うけど。夕日を見てセンチな気分にでもなったのだろうか。
まあそれならそれでいいけども。

「どうした。投げないのか?」
「………投げるともさ」

女の子らしくは無いが、キャッチボールは嫌いじゃなかった。握りを整えて振りかぶる。
指先からボールが解き放たれ、シンの手元でぱすんと情けない音が鳴った。
使い古されすぎてボロボロのグローブだ。いい音なんて出やしない。
そのまま間を置かずに返球するシン。コニールも何も考えずに再び投げ返した。
地面には自分達と同じ様に動く、長く伸びた2つの影。どうしてだろう、ひどく懐かしい。

思い出すのは故郷の夕焼け。まだ戦争なんて思いもよらなくて、無邪気に友達と走り回ってたあの頃。
がやがやと騒がしい街に幼い自分を呼ぶ母の声。隣の家から匂う夕食の香り。
故郷を出たばかりの頃はホームシックでよく思い出して、自分の考えが浅かったかと内心後悔していたのに。
いっその事帰ろうかと何度か思ったのに。

『あ、あんた確かシン=アスカ!? こんなとこで何やってんだよ!?』
『………見りゃ分かるだろ。復興の手伝いだよ』

それを思い出さなくなったのはいつからだろう?
533CROSS POINT:2010/02/04(木) 00:08:14 ID:???

『あんたが泥棒猫ね。悪いけど、そいつは私のなの。今度からは自重してね』
『んだと……? 後から出てきて偉そうに。それで私がハイそうですかって言うと思ってるのか?』
『おい2人とも落ち着けって』
『『―――あんたは黙ってろ!!』』

後悔しなくなったのはいつからだろう?

『熱高いな……無理するな、今日は寝てろ』
『なんだよ、今日1日付き合うって前からの約束だろ。これでも結構楽しみにしてやってたんだぞ』
『そいつはどうも。でも今日は駄目だ。次の休みにいくらでも付き合ってやるから』
『………わかった、約束だからな?
 でもそれはそれとして、退屈だからしばらく話し相手になってくれるとありがたい』
『ワガママなやつだな、俺に風邪移ったらどうすんだよ。
 ……ったく、わかったから頭の濡れタオルよこせ。替えてやるから』

故郷に帰ろうと思わなくなったのはいつからだろう?

―――家に帰るぞ、コニール
―――あいよ

自問するまでもない。
答えなど目の前に転がっている。

ちくしょうこのバカ。こいつがこんな所にいやがるから。
ガルナハンに帰るのはたまにで良いか、なんて思っちゃうほど、私はベルリンが大好きになっちゃったじゃないか。
ここに留まる理由なんて無いのに。いつかは違う場所に行かなきゃならないのに。
ずっとここにいたいって。

………いや、違う。その想いは少し違う。
もう認めよう。この想いはベルリンへの愛着なんかじゃない。
きっと自分は何処か別の場所に行ったとしても、その場所が大好きになってしまうんだろう。

そう、シンが傍にいるなら。シンさえ傍にいれば。
私はきっと、どこでだって笑えるんだ。
だから―――

グローブを軽く上げて返球を促すシン。大して離れていないのに、彼の姿が良く見えない。
理由は簡単、自分の目から溢れる熱いナニかが彼の姿を歪ませているからだ。
それを隠す為に額の汗と共に目を拭いながら、コニールは思う。


ああ。こいつ。
ずっと私の傍にいてくれないかなぁ。



534CROSS POINT:2010/02/04(木) 00:11:35 ID:???

自分は夕焼けが眩しいから目を細めているのか。それとも鼻の奥がツンとするから反射的に目を細めているだけなのか。
多分両方だろうなと思いながら、ルナマリアは坂の上からキャッチボールをしている2人を見下ろした。

「やっと見つけた。……たく、2人して何してんのかしら」

シンの部屋でテレビを見ているうちに日が傾いているのに気付き、さて夕食でも作るかと思っていたのだが。
食料が少なくなっていたので買出しにシンの手を借りようと探していたところ、近所の空き地で彼を見つけた。
コニールもいたので2人に声を掛けようともしたのだが、何故かこの空気を乱すことができなくて。

「日が沈んじゃうわよ、もう……」

今は声を掛ける事もせずに、彼らのキャッチボールを眺めている。

「…………」

夕焼けの中、言葉も交わさずに黙々とキャッチボールを続ける両者。
どうしてだろう。しばらく眺めているうちに、何だか泣きたくなってきた。
きっとコニールがあんな顔をしているせいだ。
あの莫迦娘があんな泣きそうな顔をしているから、釣られて自分まで滅入ってしまっているのだ。

「あいつ、あの子が泣いてるの気付いてるわね。まああの距離じゃ当たり前だけど」

だがコニールの方は気付いているのだろうか。気付いていないのだろう。自分のことで精一杯だろうから無理も無いか。
だから見ているのは自分だけだ。
申し訳ないような目で、この光景を覚えていようと言わんばかりに周囲を見渡している彼の姿を見ているのは。
不意に、彼女の脳裏に深々と降り積もる粉雪の音がよぎった。

………多分そういう事なのだろう。その予測を受け入れたくは無いけれど。
コニールの表情に気付かないふりをしている彼を眺めながら、ルナマリアは思う。


ああ。この男。
また私の前からいなくなるんだろうなぁ。



535CROSS POINT:2010/02/04(木) 00:17:20 ID:???
今日はここまでです
どうでもいいことですが、題名の元ネタはSMAPの「オレンジ」です
丁度書いてたときに聞いてたので
536通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 00:32:50 ID:???
全力で乙……オレンジだけに
537通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 11:26:12 ID:???
オリキャラでカガリの妹を登場させるなら、どんな少女がいい?
538通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 13:55:43 ID:???
エア妹でいい
539通常の名無しさんの3倍:2010/02/04(木) 16:11:18 ID:???
何これ、こんなのでじわっと来るとは思わなかった。
雰囲気良すぎる。
540通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 00:06:59 ID:???
>>537
正反対の属性を持たせるのが一番手っ取り早いけど、「お淑やかで思慮深い」
とするなら最初からそっちを後継ぎにしとけという事になるしなあ。

541通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 00:20:52 ID:???
>>537
思慮深くて黒くて臆病だけどそれを+に変える努力してて根回しとか完璧にこなすような子
あとヤンデレかドロデレだとなお良し
542通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 00:25:22 ID:???
>>537
やるんだったらナージャのローズマリーみたいなキャラ希望
543通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 06:33:36 ID:???
>今髪薄いからガードできなかったって思ってる奴、あとで男子トイレに来い。
吹いたw
544通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 21:51:44 ID:???
カガリより年下の少女がウズミの養子になればいいんだね
そしたらカガリの義妹になるから、彼女からみたらキラは義兄になるよね
でもカガリ、キラを呼び捨てにするのがいいかも・・・
545通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 21:58:11 ID:???
マユ?
546通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 22:03:39 ID:???
>>545
マユはシンの妹だろ?
547通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 22:25:30 ID:???
カガリの妹というシチュでマユIFものを・・・
548CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:41:23 ID:???


かちゃかちゃと皿とスプーンが鳴らす音が響く静かな食卓。
ダコスタかヒルダでも誘えば良かったかなと思いながらもバルトフェルドはスプーンを口に運んだ。

プラントに今も尚深く根付いているクライン派の手引きのおかげで、自分たちが補給に困ることは無い。
それは食料についても同様であり、数多く存在する自分たちのアジトに寄港する度に新鮮な食料を積むことが出来ている。
自分たちがその気になれば毎食フルコース料理にする事だって可能なほどだ。
この辺りについてはあの盲目の男のネットワークに感謝しなくてはならないのだろう。
正直あの男は気に入らないので、それを実行する気は欠片も無いが。

首領でもあるキラは兵士たちが緊張することもあり
彼らと共に食堂で食べるわけにはいかなくなったので、食事を自分の部屋で取るようになった。
その結果、自然とピンクの髪の少女も一緒に食べることになる。
当初彼らは2人だけで食べていたみたいだが、以前覗いた時あまりに静か過ぎる食卓だったので自分も混ざるようにした。
キラに話しかければ言葉を返してくれるし、きょろきょろと自分たちに視線を動かす少女の顔は可愛いのだが
話す人間が自分1人しかいないのは少し寂しいものがある。会話が続かない時は特に。
結局、ミリアリアも誘って (事情を説明して) 4人で取るようになったのだ。それでも少し足りないようだが。

「こら、好き嫌いしちゃダメでしょ? 大きくなれないわよ?」

部屋に響くミリアリアの声。思わずそちらに視線を向ける。目にしたのは俯く少女。
今日は金曜日なので昼食はカレーなのだが、彼女の皿の中にはニンジンが何個か転がっていた。
どうやらこっちのラクスはニンジンが食べられないらしい。
食べやすいようにスプーンで小さく押し切ってはいるものの、それを口にする事まではできないようだ。
その光景を見たミリアリアは溜息を吐き、小さな声で言った。

「ニンジン食べれなきゃケーキはおあずけだからね、ラクス」
「〜〜〜っ!!」
「もう。ほら、鼻でも摘んでごっくんしちゃえば良いのよ」

その言葉を聞いて、いやいやをするように首を横に振る少女。
本気で食べられないのだろう、1箇所に集めたまでは良いもののその手が動く気配は無い。名残惜しそうにデザートのケーキを見つめている。
目も潤んできているが、意外にスパルタなミリアリアには折れるつもりが無いようだ。
キラも相変わらず無表情なままだし、このままでは 「ミリィ」 ―――あ、しゃべった。

「昼休憩が終わったら、用事があるって言ってなかったっけ」
「え? あらほんと、もうこんな時間」

ミリアリアの注意が壁の時計に向いた瞬間、少女の皿のニンジンにスプーンが入り、全て皿から消えた。
そしてそのスプーンの持ち主は自然な動作でニンジンを口に運ぶ。
549CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:43:32 ID:???

「あら、ニンジンちゃんと食べたのね。偉いわよラクス。
 ――――もう、キラも早く食べてよ。片付けられないじゃない」
「ごめん」
「ラクスは頑張って食べたのにねえ。はい、デザートのケーキよ。
 頑張って食べたご褒美に、私の分のイチゴもあげる」

皿の上にイチゴを置き、嬉しそうにピンクの髪を撫でるミリアリア。
しかし少女は頭を撫でられながらも、隣の青年をぼんやりと見上げていた。
視線を気にした様子も無く、青年の食事が終わる。

「―――ごちそうさま」

地球で何か良いことでもあったのだろうか。
周りの人間に聞かせるように、その声はいつもより少しだけ大きかった。

バルトフェルドは気付かない。
キラの視線の先にあるのは、メールボックスを開いたままの彼のパソコンだということを。
そしてその一番上に表示されている、 「待ってろ」 とだけ書かれた新着メールの存在を。



第11話 『今から一緒に殴りに行こうか』



靴紐を固く結び、シンは自分の部屋を振り返る。
掃除は夕方に済ませた。腐るような食料も冷蔵庫には残していない。
机の上には手紙を置いておく。明日になれば部屋に来るだろうから、その時に読んでくれるだろう。

「それじゃ、行くとするか」

そう、今のシンは腹を括っ…てはいないけれど、これからどうするかは決めていた。
キラに会いに行く。そして希望を叶えてやる。
希望に沿えることができるかは、微妙なところだけど。

彼女たちには黙って行くつもりだ。反対されるのは目に見えてるし、自分の個人的な戦いに巻き込みたくない。
それに自分が戦場にいるところ、もっとはっきり言えば人を殺すところを見せたくはなかった。
キラに負けて殺される可能性だって十分以上にあるし。
勿論死にに行くつもりはない。全てが終わったらベルリンに帰ってきて、復興や勉強を再開するつもりだ。
自分が生きるべき場所は此処しかないという事は、変わりようがなかったから。

ただ、流石にその時はルナもコニールも此処に残っていないだろう。

音が響かないように鍵を閉めて、隣の部屋へと歩く。最初はルナマリアの部屋、その次はコニールの部屋。
女性の部屋に無断で侵入するのは最低の行為だが、下手をすれば2度と会えないかもしれないのだ。顰蹙は覚悟で中に入らせてもらった。
550CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:47:05 ID:???

ちなみに合鍵は以前に貰ってあった。その際に自分の部屋のも取られてしまったけれど。
お前ら2人はお互いの部屋の合鍵を持たないのか、と聞いたシンへの答えがダブルライダーキックだったのは忘れたい思い出だ。
おまけになぜか両方から、最中に乱入されたらどうするとかなんとか説教されたっけ。
手を出すつもりは無かったし、仮にするならするでそんなヘマをしたりはしないのだが。

布団を蹴っていたコニールにはちゃんと布団をかけてやり、ソファで寝ていたルナマリアはベッドに運んでやった。
鍵を閉めないわけにもいかないので、閉めた後に合鍵はそれぞれのドアの郵便受けから部屋の中に放り込む。
階段を降りて外に出ると、綺麗な月が目の前に浮かんでいた。

ザフトには――あのサングラスの軍人には――昼のうちに連絡を入れてある。
待ち合わせ場所は慰霊碑のある公園。日にちが変わった後の午前2時に迎えが来ることになっていた。

「………」

もう一度だけ振り返ってアパートを見上げる。どの部屋も灯りは消えたまま。
追いかけてくる影なんてありはしない。

「―――なんだ。気付いて欲しかったのかよ、シン=アスカ」

ここまできて覚悟の決まりきらない自分を嘲笑う。だが決定が覆ることは無い。
無論、今から進む道が正解だとは限らない。だけど踏み出さなければ自分の瞳には何も映ってはくれない。
別に間違ってたって構いはしないのだ。答えなんて後からついてくれば良かった。
瞳を閉じる。泣きそうな顔でキャッチボールするコニールと、雪の降る夜に悔しそうに俯くルナマリアの顔が浮かぶ。
また泣かせちまうのか。今まで甘えさせてくれたお返しがそれっていうのは、やっぱ最低な男だな俺は。


ごめん。瞳を閉じたまま、誰ということなく呟く。微かに吹いた風がその声を掻き消し―――


そして、青年は歩き出した。



また置いて行かれた。

朝、身支度を整えてルナマリアがシンの部屋に行くと、先客のコニールが呆然と床に座り込んでいた。
部屋の主の姿が見えないので彼女に話しかけてみるも向こうからの反応は無し。
彼女に聞くのを諦めて、仕方なく周りを見渡す。
机の上には一枚の紙。
シンからだった。自分とコニール宛て。嫌な予感と共に紙を手に取る。

―――うすうす気付いていたと思うけど、ヤツに会いに行くことにした。

予想通り。彼は戦場に戻ってしまったのだ。
その紙の下に書かれている一文に目を通す。それは別れの言葉。

551CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:49:25 ID:???

―――今までありがとう。それと、ごめん。

遺言かよ。思わずつっこみを入れたくなった。

部屋の中を見渡す。出て行く前に掃除でもしたのか、部屋は綺麗に片付けられていた。
使い込まれた数冊の医学書が机の上に置き去りにされている。それが彼が此処から去ったことをルナマリアに実感させた。

「……あいつ、また私の前からいなくなりやがった」

そう、彼は再び自分の前から去ったのだ。正直ダメージが無いと言えば嘘になる。
だがこれくらいでへこたれる女はルナマリア=ホークではない。
たかが1度や2度逃げられたくらいで……1度や2度……2度も………逃げられちゃった。
すいませんさっきの私嘘つきました。ぶっちゃけ泣きたい。自分は魅力的な女だと思っていたが、自信なくなってきた。
もしかしてシンは、自分が思うほど好きでいてくれてないのだろうか。
いやいや弱気になるな。
悲しみをどうにか押さえ込む。押さえ込んで押さえ込んで、今度は代わりに怒りが浮かんできた。
あんにゃろ、こんな良い女から一度ならず二度までも逃げやがって。
こちとら見栄も外聞も無くはるばるプラントからベルリンまで来たってのに、そんな美女への答えがコレか。許すまじ。

やはりここは追いかけるべきだ。

グー入れてぶん投げてフットスタンプでアバラ折りキメてジャイアントスイングでブン投げて室伏ばりの雄叫びを挙げて。
そして私から少しでも離れたら死んでしまうというくらい、私に依存させてやるのだ。
現在2度失敗しているが、世の中には3度目の正直という言葉もある。あきらめたらそこで試合終了ですよ。
2度あることは3度あるという言葉はこの際却下ということでどうかひとつ。

「行くわよコニール。あの馬鹿、結局何にも分かっちゃいないんだから」

座り込んだ少女に声をかけながら考えを巡らせる。
おそらく行き先はザフトの宇宙軍。自分たちがまっすぐ追いかけても彼の元には届くまい。
ラクスやキラがいない現在、自分にはザフト内につてが無いのだ。
こんな事ならジュール議長やシホ=ハーネンフースともっと親交を深めておくべきだった。
だが今はそんな事を言ってる場合じゃない。多少遠回りにはなるが、残された手はもう一つある。
とりあえず身支度を整えて金を卸して飛行機のチケットを買って―――

「っていつまで座り込んでんのよコニール!? 置いていくわよ!!」
「………」
「コニールったら!!」

さっきから少しも動かない少女に声を掛ける。相変わらず反応は無い。
心が折れて追いかける気が無いと言うのなら、ここは置いていくべきか。

「………もういいわ。そこまでの義理もないし、私1人で」
「あいつ」
「え?」
「あいつ、何しに行ったのかな」
552CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:53:25 ID:???

何を言っているのかこの娘は。そんな事自分でも分かってるだろうに。

「そんなの、戦いに行ったに決まってるでしょ。なんだかんだで血の気は多いし」
「でも相手は前大戦で勝てなかった、あのキラ=ヤマトだ。アスランもやられちゃったし。
 それでも戦うのかよ。ここの生活を捨ててまで」
「私が聞きたいわよそんなの。大方、戦いに行く理由でもできたんでしょ」

どんな理由かは自分にはわからない。
平和を守る為なんて理由ではないだろう。それならもっと早く行っている筈だ。
なんとなくわかるのは、誰かの為に行ったということだけ。
でも、誰の為だ?

「なあ、なんでシンってさ……全部自分で抱え込むのかな。辛い事から逃げないのかな。
 だってもうあいつ十分頑張ったのに。誰かに任せちまってもいい筈なのに」
「……」

それはかつて自分も考えた問題。
別れた雪の日に、1人きりのベッドに寂しくなった夜に、黒い髪の男とすれ違い思わず振り返るたびに。
引き摺りすぎだとは思いながらも必死に考え続けた。
確かあの時、自分が出した結論は。

「あの馬鹿、自分自身に対する執着が薄いのよ」

でなけりゃ、こう何度も馬鹿なことをしたりしないだろう。

「だよな。……だけど私、それがくやしいんだ。自分の想いが届いてないみたいで。
 自惚れじゃなく、私の事を大事にはしてくれてるんだと思う。
 でも私が大事に思ってるシン自身を、アイツは大事にしてくれない」
「そうね……」

気持ちは良く分かる。それは自分も通ってきた道だ。
人の心配も気にせずに我が道を行く。何度やきもきさせられたかわからない。

だけどそれがシン=アスカなのだ。ここにいる、2人の馬鹿な女が惚れた。

「自分がいなくなっても、他の人は幸せになれるって思ってるんだよ、あいつ。
 だから、そんなことないよって言ってやりたいんだ。私の幸せの中にはあんたも入ってるんだって」

優しい娘だなぁ。皮肉抜きでルナマリアはそう思う。
ガルナハンでいろいろあったせいもあり、彼女は勝気な見た目とは裏腹に優しさに溢れている少女だった。
話しているうちに落ち着いてきたのか、それとも自分がどうするか考えがまとまってきたせいか。
体に少し力が戻ってきたようだ。
553通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 22:56:45 ID:???

「もしかしたらアイツにとって私は、切り捨てても平気な存在かもしれないけど。
 それを知るのが怖くないって言ったら嘘になるけど。
 それでもさ。それでも私、あのバカにまた会いたいんだ」
「コニール……」

ったく、そういうのは本人に伝えるべき言葉だろう。いや言われちゃ困るけどさ。
恋敵のはずなのに一瞬応援したくなってしまったのは、その想いが自分と同じだからだろう。

譲る気は毛頭無いが。

「だったらなおのことね。行くわよ? あの馬鹿をぶん殴りに」
「………ああ!!」

左手を差し出す。コニールは服の袖で目をごしごしと拭い、ルナマリアの手を握り返した。
引っ張りあげて立たせる。その瞳にはそれまでの弱々しさはない。強い視線で彼女の目を見返してくる。

上等だ。左手の握手は戦いの合図とも言うし、対等の相手だと認めても良いかもしれない。
いや、それは言い過ぎか。まだまだ私たちが過ごした日々には遠く及ぶまい。
初恋とはほのかに終わるものであり、決して実る事はないということを教えてあげよう。
もちろん、正々堂々と。

「それはそうとさ。行くって、当てはあるのか?」
「まーね。ま、普通にプラントに行ってもシンには会えないだろうから、少し回り道になるけど」
「?……じゃあ、どこに?」

疑問の声を上げるコニール。だが本当に分からないのだろうか。
自分にコネがあって、キラと相対する意思があって、なおかつザフトの次に一手打ちそうな国と言えば。


「―――オーブ連合首長国。行くとしたら、そこしかないわね」




554CROSS POINT:2010/02/05(金) 22:58:10 ID:???
今日はここまでです
555通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:07:21 ID:???
カガリが将軍なら妹は准将がいい
顔は可愛いけど、男性用の軍服を着てるのが萌える
556通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:19:59 ID:???
yah yah yah!と返すべきなんだろうか投下乙。
あと俺にも一枚噛ませろシンてめえこの野郎
こんないい娘達なのに、いや危険〜〜の理屈も分かるけど
でも思い切り外してるこのふたりどうしよう
557通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:22:57 ID:???
コーディなら男性、女性に加えて中性があってもいいと思う
美形の中性キャラなら萌える
558通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:27:45 ID:???
ふたなりはイラネ
559通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:31:10 ID:???
>>558
ふたなりじゃなくて、見た目は女性器(まんこ)だよ
女性器、中性器は外見で区別できない
560通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:35:29 ID:???
シンかミナが殺したバカゴリの首を前に高笑いしている「男の娘」で
561通常の名無しさんの3倍:2010/02/06(土) 04:10:02 ID:???
ルナもコニールも本当にいい女だな。ちくしょう。
562通常の名無しさんの3倍:2010/02/09(火) 22:45:23 ID:???
ほしゅ
563CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:36:05 ID:???


「ねえ早くしなさいよ、急がないと通り過ぎちゃうかもしれないでしょ」
「わかってるわよ、焦らせないで。あと、すこし……」

休憩室のパソコンの前に集まるザフトの女性陣。画面に映る映像を見ようと顔を寄せ合っている。
そんな周囲に押されながら座席に着いてキーボードを滑らかに叩いていた茶髪の少女が、細長い指でリターンキーを押す。
すると次の瞬間、コンピューターの画面にバッグを担いだ紅い瞳の青年が浮かび上がった。
同時に女性陣の中からおお〜という感嘆とも驚きともとれない声が上がる。
どうやら彼女たちのお目当てはこの青年の映像だったようだ。

「来た来た、ホントにこの艦に来たよ! あのシン=アスカが」
「へえ、写真よりも良い男じゃない。そういえばあんたこの人が好きなんだっけ?」
「好きだなんてそんな、会ったこともないのに。ただ、私が勝手に憧れてるだけだよ」
「お〜、それじゃその憧れの人を誘導することができるのね。ツイてるじゃん」
「えへへ……がんばる」


「やれやれ、気楽なもんだな」

休憩室のコンピューターを監視カメラに繋げ、画面の前に集まって来訪者を物色する女性クルーたち。
その騒がしい様子を周囲の男性たちはほんのり苦い顔で見つめる。
まったく、美形だからってすぐコレだ。女性陣は気楽で良い。
外見だとか過去の戦歴だとか、今此方が気にしなければならないのはそんなものじゃない筈だというのにな。
そんな言葉を呟きながら。

「まあ女共は放っておくとしてさ。どう思うよ」
「シン=アスカ、か。その実力、本当に当てにできるんだろうな?」
「さてな。多少名のしれた奴がプロバガンダとして過剰に評価されるってのは良くあるけど」
「せっかく高性能の機体をわざわざ用意したんだし、時間稼ぎくらいはやって貰いたいとこだな」

言葉から分かるように、ここにいる者たちはシン=アスカの来訪を快く思っていない。
クライン派が主流 (最近はキラのせいで少し肩身が狭いが) となっている昨今デュランダル派だった彼の印象は悪く、
しかも当時のザフト軍人の憧れである 『ラクス=クラインのFAITH』 という職をあっさりと捨てて
自分からただの民間人になったことが拍車をかけた。
かつての英雄と言われてはいるものの、所詮はキラ=ヤマトやアスラン=ザラの引き立て役にしかすぎない。
そんな男が来たところで何になるというのか。
つまりは彼の存在を嫌ってそんな考えを持つ者が多いわけだ。

564CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:37:46 ID:???

「つかアンタも行かなきゃマズいんじゃないの? ブリッジ勤務は挨拶するんでしょ?」
「ああ、そう言えば!? ごめん私もう行くね!!」
「おー、行ってこーい。よく話す様になったら私を紹介すんの忘れちゃだめよー」
「憧れの王子様によろしく〜。あ、写真とる機会があったら私にも頂戴」

「………チッ」
「ハッ、所詮は顔だけだろ」


まあ、そんな理由ばかりでもないのは否定できないが。



第12話 『ボルテールにて』



地上ではルナマリアとコニールがオーブへ向かっていた頃、シンは既に宇宙に上がっていた。
乗船した艦の名はボルテール。現プラント議長代行イザーク=ジュールの旗艦だったこともある艦である。
そのブリッジでは白服の男性がシンを待っていた。以前ベルリンに勧誘に来た軍人の男。
サングラスを外してシンに話しかける。

「よくぞいらっしゃいました。シン=アスカさん、我々は貴方を歓迎します」
「久しぶり、かな。やっぱりアンタが、じゃなかった貴方が艦長か」
「はい。そしてこの作戦の最高責任者でもあります。……何かご不満でも?」
「まさか。願ってもない」

握手をする両者。力強いその手にシンは、彼のこの任務への決意を感じた。
気後れしていないというのは頼もしい。オーブ軍の惨敗を見てなおこの覇気ならば尚更だ。

「ゲストではありますが私服というわけにもまいりませんので、貴方には赤服を着ていただくことになります。
 用意した部屋に準備しておりますので、これが終わってから着用して下さい」
「……どうも」

断る理由も無いので受け入れる。緑服でも構わなかったし、そもそも何を着るかという事に興味は無かった。
だが別に赤服に思い入れがないわけじゃない。それを身に纏っていたころの日々は自分にとって今でも大切な思い出だ。
ただこの後の戦いを考えると、そんな事にこだわっていられないというだけで。

「もうすぐこの艦に、議長からの通信が届く筈なのですが―――来たか」
「スクリーンに繋ぎます」

通信士からの声に応え指示を出す艦長。画面に銀髪の男が映る。
イザーク=ジュール。プラントの現最高責任者自らの通信とは恐れ入る。
565CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:40:53 ID:???

『シン=アスカ。ひさしぶりだな』
「そうですね、ジュール議長」
『議長ではない、議長代行だ。今の俺は代わりが居ないからやっているに過ぎん。
 それよりも今回の依頼、よく引き受けてくれた。礼を言う』

代わりが居ないから、か。そう思っているのは本人だけだろう。
ラクスの死後議会を取り纏めて動揺するプラントを落ち着かせ、混乱に付け込もうとした地球の連中と五分にやりあったほどの男だ。
現在の彼の役職から代行の2文字が消えるのは、そう未来の話ではないというのが世間の評価だった。

『お前を戦場に戻すことになってしまって申し訳ないとは思っている。
 だがアスランが敗れた今、他に手が無いのが現状だ。キラの存在を受け入れるわけにもいかないのでな。
 無論成功した場合の報酬は十分払うし、お前が動きやすいよう便宜も図る。さしあたっては』

画面の中のイザークが目で合図をする。
それを受けた艦長は手にした小箱を開き、シンに向かって差し出した。
中に入っていたのは徽章。かつて、自分が2回に渡って着用していたもの。

『シン。略式ではあるが、お前をFAITHに――――』
「いらない。この赤服だけで十分だ」

目の前の小箱を軽く押し返して、シンは申し出を断った。周囲からざわめきが起こる。
気持ちはありがたいものの、数ヶ月で裏切ったアスランや貰った後直ぐに軍を辞めた自分の例もあった。
いくら自分に少なからずネームバリューがあるとはいえ、民間人を容易く命令権のあるFAITHに任命するのは
他の者にとっても悪影響しかないだろう。
ごぼう抜きというのはされた方にとっては良いものではない。当たり前の話だが。

『いらないのか』
「ああ。どうせ指揮なんかしないし、軍にいるのはキラを倒すまでだ。俺には必要ない」

シンの言葉を大言壮語だと判断したのか、彼に 周囲から 『それができれば苦労しないんだよ』 といった視線が向けられる。
だが画面の中のイザークは特に気にした様子も無いようだった。

『フン。まあ貴様のことだ、そう言うとは予想していたがな。
 作戦については彼に聞いてくれ。後はお前に任せる。……何か他に聞いておくことはあるか?』
「特には。……いや、一つだけ聞いておきたいことがある」

会話を終えるつもりだったのだろう。少しだけ意外そうにイザークは問い返した。

『なんだ』
「アンタはどう思っているんだ?
 プラント議長としてではなく、ただのイザーク=ジュールは今のキラ=ヤマトの事を」
566CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:42:37 ID:???

その言葉に周囲が息を呑む。2人が親友だったことはその場にいる大半の人間が知っていたからだ。
プラント議長に対して無礼とも言えるその質問にシンを諌めようと黒服の軍人 (おそらく副艦長) が近付くが、
それよりも早くイザークが口を開いた。

『何故、そんな事を聞く?』
「なんとなくだ。言いたくなければそれで構わない」
『………俺にかつての仲間を討つ覚悟があるか、疑っているのか?』
「まさか。なんとなくだって言ってるだろ。他に聞く機会も無いしな」
『ふむ……』

周囲の反応の方が正解だし、ここで聞くことではないというのはシンにも分かっている。
だけど今の2人の立場には差が出来すぎているため、他に話す機会は無いだろう。聞くなら今しかない。
聞かないという選択肢は自分には無かった。
人を戦いの場へ誘 (いざな) うのだ。本人の腹の中を少しは見せて貰わないと納得できない。
相手が依頼主の親友ともあれば尚更だ。

『これからそいつと戦う者を前に、こんな事を言うのは不謹慎だが』

シンの考えを感じ取ったのか、それとも迷う時間が惜しいと判断したのか。おそらく後者だろう。
イザークは少し考えるような表情を浮かべた後、シンに向き直って言った。

『今でも親友だ。これまでもこれからも、それは変わらん。俺にとってのキラ=ヤマトはな。
 だが今の俺は代理とは言えプラントを統べる者。奴を討つのに迷いは無い。
 貴様がどう思うかは知らんが、それだけは確かだ』
「………わかった。すまない、変な事を聞いて」
『別に構わん。後は頼む』

その言葉と共に通信が切れる。ブリッジではしばらく沈黙が続いた。
そんな場の空気を変えるかのように、艦長がシンに話しかける。

「それではクルーを紹介します。彼が副艦長の――――」

艦長によって副艦長やMS部隊の隊長などを紹介される。
男性陣からは訝しげな視線が多かった。いや多いどころじゃない、艦長以外の男全員だ。
それも仕方がないことなのだろう。
民間人がいきなり来て議長と対等に話した挙句 『今日からコイツがお前らのエース』 とか言われて喜ぶ奴はいないだろう。
まあいいや、嫌な目をする奴は相手にしなければいい。どうせこいつら名無しのモブキャラで、この先出てこないことだし。

「あ、あの!」
「ん?」

そんなプレッシャーを掛けるかのように目をギラつかせるブリッジクルーの中、
違う意味で目を輝かせて自分に近付いてくる者が1人。女の子か。

567CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:46:30 ID:???

「シン=アスカさんですね!? あの、その、お会いできて光栄です!!」
「君は?」
「わ、私はですね、えっと……」

茶髪のショートカットに垂れ目が印象的な、子犬のような少女が自分の前に立っている。
若いというより幼い。おそらくはアカデミーを卒業したばかりか。
だが新米でこのボルテールのオペレーターを勤めるという事は相当優秀もしくは見所があるということなのだろう。
今は結構テンパってるみたいだけど。

そんな彼女の様子を見かねたのか、傍にいた艦長がフォローを入れる。

「少し落ち着きなさい。アスカさん、彼女がこの艦のオペレーターをやっています」
「ということはこれから顔を合わすことが多くなるってわけですか。……シン=アスカだ」
「よ、よろしくお願いします!!」

手を差し出すとガチガチになりながらも握ってきた。
戦場には不釣合いなくらいの小さな手。緊張がピークに達したのか彼女の笑顔が引き攣っていく。
とりあえず安心させる為にこちらも笑顔にしてみた。

「いろいろ迷惑をかけるかもしれないけど、よろしく頼むな」
「は、はい!! 私も足を引っ張らないように頑張ります!!」
「ああ」

効果があったとは思えないが、緊張は少しほぐれたみたいなので良しとしとこう。
つかこの娘、子犬チックでなんか可愛い。ステラやマユと感じが似てるし。
頬を染めて自分を見上げるその仕草に、この子は天性の年上キラースキルを持っているなとシンは思った。
深い意味は無いけど。

「それで、現在の状況は?」
「先日のあの放送以来動きがあったのはザラ派の壊滅だけで、その他の動きは確認されていません」

いつまでも女の子と手を繋ぐというのは悪くはないが、ずっとそうしているわけにもいかない。
オペレーターの女の子が離れてからは他に自分に近付いてくる者もいないので、紹介を打ち切って現状を聞いたのだが……
動きが確認されてない、 か。
どうやらザフト諜報部はキラがベルリンに来た事に気付かなかったようだ。いやクライン派の隠蔽工作が上だったのか。
それに気付いたところで対処法は無いので、余計なことは言わないけれど。
568CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:48:22 ID:???

「ただ地球へ降下した様子も無いので、まだ宇宙に上がったままでしょう。
 キラの行為を誘発するような海賊やテロリストたちの動きも無いようです。あくまで現時点は、ですが」
「そりゃそうでしょう。あれは強烈だったからな……」

そのあたりはキラの目論見通りのようだ。だがそれも一時的なものに過ぎまい。
人の負の感情というものは、押さえつけてもいつかは暴発するものだ。その形が怒りか恐怖であるかの違いはあっても。
彼もそれを理解しているのか、まあ再開も時間の問題でしょうと呟いた。

「それで、これから俺は具体的に何をすれば」
「情報が入っていませんし、まだ出撃準備も整っていません。アスカさんはその間にブランクを取り戻して欲しいと思います。
 今のデスティニーに搭乗するには、生半可な腕では振り回されるだけだと思いますので」
「デスティニー? まさか、あいつが俺の乗機ですか」
「ええ。ただし届いたばかりですので、現在調整中ですが」

それを聞いた途端、シンの口元が僅かに笑みの形を作る。
アイツとまた戦えるのか。
どんな機体にも乗るつもりだったが、あれならば文句は無い。性能・武器共に自分が乗った中で最強の機体だったのだから。
まあ、それでもキラやアスランには傷一つ付けることができずに負けたわけだけれど。

「わかりました。作戦開始までには必ず腕を取り戻します」
「宜しくお願いします。
 ああ、それとは別にもう一つ。個人的に言っておくことがあるのですが」
「?」

艦長の視線に誘導されるように、シンは離れた場所にいる先ほどの少女に目を向ける。
まだ頬を紅くしたまま少女はシンをみつめていた。溜息を吐き、艦長は小さな声で呟く。

「あまり、うちのクルーをからかったりしないように」
「………」

女ならベルリンに2人もいるだろと言わんばかりの艦長の視線。
シンは溜息を吐きながら思った。それはシンプルな、たった一つの疑問。



何だと思ってんだ、俺を。



569CROSS POINT:2010/02/10(水) 00:49:35 ID:???
今日はここまでです
570女神の種:2010/02/10(水) 01:21:24 ID:???
ピイイイイイイイ  ドパパパパパ パパン
アウル「なんじゃーこりゃああーッ…」
サイ「デュランダルかぁッ!!?レイ使ォて撃ち込みよんかぁッ!!?」
アウル「いやッ…違う… こんなムダで派手な暴れ方するヤツはアイツしかおらん…」
イザーク「カガリじゃあーッ!!ぶぅうち殺したらぁーッ!!」
アンディ「ミサイルの出所におるはずじゃッ…行くどぉッ!!」
イザーク「アスランはそのままプラントまで突っ込めぇえーッ!!
議長 獲ったれやぁあああッ!!」
ディアッカ「ばばっ」
アスラン「ったりまえじゃいッ まかさんかい!!」
 ピィィィィィッ ドパァン
シン「クソ…カガリのボケがぁああッ…むっちゃくちゃ
しゃーがってぇええッ…!!
   王様 獲ったら覚えとけよクソッタレがぁあッ!!絶対ッ…
絶対一番最初にプラントに着いて議長んなったるんじゃああーッ!!
は・・速いッ!!やっぱし速いのォーアスラン!!ぜんぜん追いつかんわい
クソッタレ…クソッタレぇぇッ!!
でもワシだって新型じゃぁああーッ!!
   こんなゴール目前まで来て…負けられるかぁあボケぇえええッ!!」

571女神の種:2010/02/10(水) 01:31:23 ID:???
ドスン!!
シン「!!!」
「なっ…なっ何急に止まってくれとんじゃボケ アスランーッ!!」
アスラン「………」
シン「まっ…マジか…」

シン「なっなっなっなっなんじゃ…こりゃぁ…!!」
    「プラントは目の前じゃのに…コロニーが崩れて行く道がないなっとる…
    しかも皆が使ォた機雷やら何やら・・危ないモンごと浮いとるけぇ
    当たったらドッガン命ぁないで 万がイチ…運良く無事でもプラントまで
    行けるかどーか……」
    シン「どっ……どど どーするんやあアスラン〜…」
真清「3日前のデカイ爆発はコレかいやクソッ……!!」
シン「これじゃーなんぼ速ォ行っても 結局ココで足留めじゃったんじゃないか…!!」
アスラン「なんなら……こりゃあ…プラントの残骸から何本もロープがこっち側に
  伸びてきとる……このロープをつたって向こう側に
  渡れーゆぅコトか…!!」
シン「……ふっ…ふざけすぎじゃろ……!!思いっきしえげつなくあやしいし……
    アスレチックかいや……よいよ」
572女神の種:2010/02/10(水) 01:33:16 ID:???
アスラン「ふん…デュランダルのバカが考えっそーなやっちゃわい……ナメやがって!」
ラクス「きひっ  なるほどそりゃーえーー」
ラクス「オラぁ…喜べ私の兵士 ラッキー7じゃお前ついとるのぇ
  えーかーしぃーっかり持っとけよー」
ラクス兵「えっ えっ」
ドン!!
ラクス兵「わぁっ あぁあぁあぁあ」
ギッチョ「ロープが…爆発した…!!」
ラクス「おーーい…生きとるかぁ〜?  おっ動いた生きとるじゃん
  ラッキー7当たってえかったのォ〜」
  「アスラン…案の定こりゃーデュランダルの罠じゃのォ〜…
  ナンボあるんかわからんが…おそらくこん中のどれか1本だけが当たり
  とかじゃないんか それ以外引いたら今みとーにドカン・・・
   もしかすりゃー1本も当たりがないんかもしれんが どっちにしろコレしか
  プラントに行く道がないんなら やるしかないんじゃ…きひっ」
  「ミーアぁあーッ!!戦力んなってないとろい兵士は片っ端からこっちによこせぇーッ!!」
573女神の種:2010/02/10(水) 01:40:26 ID:???
ミーア「OKぇーーッ!!」
ラクス「こっからは紛れもなく数の勝負じゃ!!」
  「おぅらッ次はオドレの番じゃあーッ次々行かんかいオラぁあッ!!」
ラクス兵士「ひぃ…」 「ワ〜〜」
ラクス「プラントに渡れたヤツには次の補給での褒美増加とワシの平和の歌が入った
  CDをダンボール10箱分くっれてやる!!
   無事ワシに議長の座手渡した時点でお前らの任務完了じゃあッ…!!
  そーすりゃーまた一年お前らの幸せな生活が保証されるんじゃッ!!」
向こーに渡れさえるりゃー後はなんとかしたるッとにかく渡れぇーッ!!」
アスラン「………献身的に働くのォ〜ラクス…!!そりゃーホンマにキラのためなんか… お!?」
ナンボ 自分の恋人じゃーゆぅてもキラは裏切り者じゃったはずじゃ
ましてや もともと議長なりとーてラウらと戦争しよったお前がどー考えてもおかしいじゃないか なんで黙って従ォとんなら…お!?」
ラクス「ワレの知ったコトか… ほっとけボケぇ…きひっ」

サイ「カガリィッ!」
  シィイイイイイイ (大量核ミサイルを発射する)
カガリ「クッ…クックックッ…ギャハハハハ」
574通常の名無しさんの3倍:2010/02/10(水) 01:45:14 ID:???
CrossPointさん GJ
種馬扱いされるシンに笑った
575通常の名無しさんの3倍:2010/02/10(水) 04:31:24 ID:???
>>569
>どうせこいつら名無しのモブキャラで、この先出てこないことだし。
酷ぇな!ww
どんなにシリアスで重い展開でも、ネタを入れる事を忘れないアンタが大好きだ
GJ!
576通常の名無しさんの3倍:2010/02/11(木) 03:39:39 ID:???
シン、女難の相がでて大変そうですね。
自分にも分けて下さい。
577通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 01:50:59 ID:???
>>30,32
・強化人間=HEM
・「キラのブルース」などのステキな劇中歌
・自分の股間のアーマーシュナイダーの鍛錬シーンは欠かせない
・終わり方は唐突「キラよ…どこへ……」

まさかこンな所にも小池草が居たとはなッ!
578通常の名無しさんの3倍:2010/02/13(土) 22:14:16 ID:???
続かないけどせっかく書いたからうpしようと思う。
自分でもよく分からない。
ただ俺はステラが大好きなだけなんだ。
C.E.80年。
地球のどこかで、シン・アスカは白衣を着ていた。
白衣を着て、目の前の巨大な水槽を見つめていた。
「ステラ、もうすぐだよ……」
何も入っていない水槽を見ながら、シンは呟く。
しかしその時、突如室内が揺れ始めた。
「チッ……!国防軍のやつらか!」
部屋の隅にあるパソコンで、シンはデータを削除していく。
「なあ、ステラ」
最後の時だと、感づいているからだろうか。
喋る時間すら惜しいと言うのに、シンはゆっくりと話し始めた。
「俺が君にしてやれることなんてこの程度なんだ。
君には戦いもMSもない、優しい世界で生きてほしい。それが、君の親である俺の最後の望みだ。
大丈夫。俺の子どもなら、どんなことでも負けないよ。そして、自分の人生を最後まで楽しむんだぞ。
絶対に、俺のように後悔ばっかりの人生なんて歩まないでくれ……」
そこまでシンが言った時、ドンドンと乱暴にドアを叩く音が聞こえた。
パソコンのディスプレイに削除という文字が出た。
そして席を立ち、シンは最後だと思い我が子がいる水槽をもう一度見つめた。
「俺なら大丈夫。大丈夫だ。
だから、目覚めるその時まで、ゆっくり……おやすみ……」
バキン!という不吉な音が響いた。
扉がついに破壊されたのだ。
現れたのはプラント国防軍とオーブ軍。
その中には、シンの見知った人物がいた。
「はは……まさか、この場にアンタが来るとはな……これもステラの導きか?」
「坊主……」
ムウ・ラ・フラガ一佐は真剣な顔つきでシンを見る。
「シン・アスカ。お前に逮捕状が出ている。罪状はクローン製造による国際法違法だ」
「……分かった」
おとなしく手錠をかけられるシン。
意外にもあっさりと捕まってくれたことに、ムウは驚きを隠せなかった。
「坊主……お前何を……?」
部屋を出て廊下を歩いている途中、ムウは思ったことを口にした。
それに対し、シンは若干余裕の笑みを浮かべながら、ムウの質問に答える。
「さあね。ああそうだ、憶えてるか?アンタと初めて会った時のこと」
「……ステラを、返しに来た時のことか?」
ステラ―――ステラ・ルーシェ。
旧地球連合軍ファントム・ペイン所属のエクステンデット。
当時、ネオ・ロアノークとしてファントム・ペインを率いていたムウ。
エクステンデットの中でも、彼女は特にムウを慕っていた。
そんな彼女に、自分は酷いことをさせてしまった。命令だったとは言え、10代の子どもにあんなことをさせてしまった。
後悔しても後悔しきれない。
「ああ、そうだ。あの時、俺は言ったよな。ステラを戦争のない、優しい世界へ戻してやってくれって」
「ああ……」
「だけど、ステラは命令でMS に乗って多くの人を殺してしまった。そして、何も知らずに……死んだ」
そこまで言って、シンは足を止めた。
ムウも振り返る。
「坊主?」
「だからさ……今度こそ、俺が、俺たちがステラを戦争のない優しい世界に送ってやるんだ」
「何を……?」
訝しげな眼差しをシンに向けるムウ。
その時、シンの身体がバタンと前のめりに倒れた。
「坊主!?」
驚きつつも、ムウはシンの身体を起こす。
「ははは……もう時間だ……」
「おい!どうした坊主!?」
「し……あ、わせ……に…………ス……テ、ラ……」
「坊主!坊主!」
その日、一人の男が死んだ。
オーブに生まれ、オーブで家族を失い、プラントのために戦い、そして負けた彼は、幸せそうに笑みを浮かべ死んだ。
ただ一人、娘の幸せを祈って。
それから何年もの時が経った。
何年、何十年、何百年かは分からない。
もう紀元もC.E.ではなくなった。
プラントもコーディネイターもない。
そして彼女は目覚める。
とある少年と出逢うことによって。


「ちょっと、シン!そっちは……!」
「平気平気!幽霊屋敷とかみんな言ってるけど、幽霊なんているわけないだろ!」
元気いっぱいの黒髪の少年と、内気な茶髪の少年が荒れた洋館の敷地内に入る。
「駄目だよ!母さんが、ここに入っちゃいけないって……!」
「そんなこと言って、ホントは怖いだけだろ?」
「ち、違うよ!」
「ハイハイ。弱虫キラはここで待ってろよ」
「い、嫌だよ!シンが行くなら僕も行く!」
泣きそうになりながら、内気な茶髪の少年―――キラは、黒髪の少年―――シンの後ろにくっついて歩く。
「おい、キラ。そんなに引っ張るなよ……」
「だ、だって……」
はあ、と溜息をつくシン。
昼間だというのに中はやけに薄暗く、それがまたシンの冒険心をくすぐった。
持ってきた懐中電灯が唯一の灯り。
この洋館に入ってから何度もネズミと遭遇したが、そのたびにキラが悲鳴をあげシンはもう帰ろうかと思っていた時だった。
「おい、キラ……ん?」
「どっ、どうしたのシン!?」
「この扉……」
「この扉がどうかした?」
廊下の突き当たり、一番奥の部屋を見たとき、シンは何かを感じた。
「あそこ、開けてみよう」
「ええっ!?もういいでしょ!?帰ろうよ!」
「じゃあ俺だけで行ってくるよ」
「ええええええええええ!?ちょ、まっ、待ってぇぇぇぇぇ!!!!」
半泣きになりながら、結局付いてくるキラ。
錆びて開けづらくなった扉を二人がかりで開けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……ここは……」
息をあげるキラに対し、シンは何事もなかったかのように部屋の中央へ進む。
「知ってる……どうして……?分からない……けど、ここは……」
「シン!?どうしたの!?」
様子がおかしいシンを止めようとするキラだが、シンはびくともしない。
そして、二人は部屋の中央にある水槽に気がついた。
「これ何……?」
キラは口を開けて目の前の水槽の大きさに驚く。
一方シンは奥にパソコンがあることに気づき、ディスプレイを見てみる。
「S T E L L A R……ステラ……?」
シンがディスプレイに刻まれた文字を呼んでみると、突如水槽から光が発せられた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!でたああああああああ!!!!!」
キラは恐怖のあまりシンの懐中電灯を奪い、部屋から出て行ってしまった。
586通常の名無しさんの3倍:2010/02/13(土) 23:04:25 ID:???
終わり?それとも規制?
うむー、アイディアは買うけど、過程がぶっ飛びすぎて賛成しづらいな。
もうちょっと腰を据えて書いたのを見てみたいとは思う。
投下は乙。
一方シンは懐中電灯を奪われたことも気にせず、ただジッと水槽を見つめている。
やがて光は小さくなり、人影が見えた。
「お、んなのこ!?」
次の瞬間、水槽のガラスがビキビキと音を立て中に入っていた水が溢れる。
足元が濡れるのにも構わずに、シンはその女の子に恐る恐る近付く。
金髪の少女だった。
シンと同じ年ぐらいの少女で、身に纏っているものはなく、生まれたままの姿。
やがて、その赤紫色の瞳が開かれる。
「……おはよう」
数年前。もしくは数十年前、もしくは数百年前の返事を、少女は薄く微笑みながら少年に返した。



つづ…かない!
すいません規制されてしまいましたwww


>>586
自分でもこれはないと思いつつうpしてしまいましたすいません。
突発物はやっぱりだめですね。
589通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 00:20:46 ID:???
エ○ラダ?
590通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 00:28:13 ID:???
>588

発想はいいと思うし、もっと読んでみたいと思う
じっくり練ってみるといいんじゃないかな
591CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:30:24 ID:???


漆黒の宇宙を奔るのは蒼い流星。
その動きを止めるかのように様々な機体が集まり、流星に向かって光を放つ。
しかし次の瞬間には数々の爆発が起こり、物言わぬMSの残骸が周囲のデフリの仲間入りをしていた。

『馬鹿な……俺たちがこうまで一方的にうわぁぁぁぁ!!』

それは捲土重来を目指してその地に潜んでいた者たちにとっては絶望の光景であり、
流星―――ストライクフリーダムとキラ=ヤマトにとってはいつもとなんら変わらない光景。
デジャブや飽きを通り越して、殺意すら沸くほどの。

『おのれぇ、キラ=ヤマトぉぉ!!!
 よくも相棒を!! よくも俺の仲間たちを!! 貴様の存在だけは許しはせんぞ!!!』
「あまりそんな言葉を使わない方が良いと思いますが。……弱く見えますし」
『地獄でほざいてろ、この化け物がぁぁっっ!!!』

勢い良く振り下ろされるグフのテンペスト。それをフリーダムはあっさりと両手で挟み込んだ。
真剣白羽取り。
あっけにとられるグフの四肢にレールガンを叩き込み、いつものように彼らのアジト方向に蹴り飛ばす。
今のが最後の機体だ。今日の戦いはこれで終わり。

「口だけなんだよね……この人たち、いつも」

溜息を吐きながらキラはそう呟いた。
この戦いを始めてからというもの、もう何回こんな言葉を聞き続けただろう?

アスランを倒してからしばらく世界は静かだったのだが、その静寂も長く続くことは無かった。
そして今回の敵はザクやゲイツの他にグフも出てくるなど、物資が充実していた。
つまり彼らは自分を恐れていたのではない。大人しくしていたのはただ力を蓄えていただけということなのだろう。
喉元を過ぎれば熱さを忘れるのが人間の性なら、怖い人間のいないところで本人の陰口を叩くのも同じということか。
それにそんな彼らに物資を流す、ロゴスの様な人間がまだいるということも見逃せない。

正直そういう事も予測はしていたが、自分の予想の上を行かれてしまった。
再開されるのがいくらなんでも早すぎる。
世界規模での恐怖の対象となるにはジャスティスとアカツキの処刑だけでは足りないのか。
あの戦闘に関しては化け物と呼んでいいくらいの2人を倒しても、1ヶ月もたないというのか。
それ以前にもヘブンズベースを単機で消滅させたこともあるのだが、それでもまだ。

「きりがない。なんで皆、手を取り合おうとしないんだろう」

倒してくれるほど強くないくせに、欲求だけは強いから中々諦めない。
そのくせナチュラルとコーディの間には未だに壁があって、彼らは中々手を取ろうとしなかった。
ならばやはりこれを覆すような決定的な何かが必要なのだろう。
意地とかプライドとか、そんなくだらないものを破壊するようなものを。
592CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:33:48 ID:???

フリーダム打倒の切り札であったジャスティスは処刑した。
サーペントテールやアメノミハシラとは既に裏で不戦の協定を結んでいるし、例え戦ったとしても大した効果はないだろう。
かといって連合の基地を破壊という真似はしたくない。
ヘブンズベースの2番煎じで大した効果は望めそうもないというのは先述の2つと変わらないし、
軍隊がいなくなった土地ではその後で紛争が起こってしまう可能性がある。それでは意味がない。

「となると、やっぱり次はシンしかいないのか」

脳裏に浮かぶのは真紅の瞳。シンがベルリンを出て宇宙に上がったという情報はキラも既に入手していた。
アスランが敗れた現在、運命の魔剣と呼ばれたシン=アスカにキラ=ヤマト打倒の希望を抱いている者は少なくない。
無論、それは自分も含まれている。

彼なら自分を寝かせてくれるのではないだろうか。
そんな期待は尽きないが、同時に恐怖も抱いている。死ぬ事じゃない、彼に勝ってしまう事にだ。
確かに彼の乗る機体を見せしめにすれば、世界の大部分は今度こそ心が折れるだろう。
だがそれで人が戦う事を諦めると断言できないのも事実だった。

「力で縛るには世界は広すぎる。でも、恐怖で縛るには人々は愚か過ぎる」

彼が自分を殺してくれるのがベストだが、本気で抵抗する以上勝ってしまう可能性も十分以上にあった。
そして彼を倒してしまえば、流石に自分も覚悟を決めざるを得ない。
暴力を裁く執行者として、そしてこの汚れた世界で死ぬまで悪夢と共に生きていく覚悟を。
来るはずの無い平和を目指して、彼女に与えられた重い翼を引き摺って生きていく覚悟を。

「……終わりが見えないっていうのは、今よりももっと辛いんだろうな」

想像しただけで吐き気がする。
どんな地獄だ、それは。

自分に未来を託した彼女を責めるつもりは毛頭無い。
これは彼女が生前、あの小さな身体で必死に抱えていた荷物だ。夫たる自分に託すのは当然のことだろう。
だが一つだけ知りたいことがあった。一つだけ彼女に教えて欲しいことがあった。
今となってはもう、永遠にその答えを知ることはできないけれど。

ラクスは。
彼女は何故、こんな人間たちの明日まで救おうと躍起になっていたのだろう。


頭の中を巡るその疑問に、答えてくれる者はいなかった。




第13話 『目を見せない奴は信用出来ない』


593CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:36:20 ID:???

いつものようにディーヴァに着艦。ヘルメットを外しながらコックピットハッチを開ける。
整備士からの労わりの言葉に適当に返事をしながらキラはMSから降りた。
だがいつもとは違う点がひとつ。フリーダムの目の前に立ち尽くす小さな影。
ピンクの髪の少女、それが誰かは言うまでもない。

「………ただいま、ラクス」

彼女がこのMSデッキまで来るのは珍しい。というか初めてだ。
こんな場所で小さな子供が1人では危ないだろうに、誰か止める者はいなかったのだろうか。
そう思いながら周囲を見渡すと、皆がチラチラと此方を見ている。一体自分たちに何が――ああそういうことか。
そういえば自分はこの子の保護者だった。しかもこの子の外見は 『彼女』 に似ている。だから皆気を使ったという事か。
ここでこの少女を粗末に扱っても良いことは無い。周囲の視線に流されるように、感情を込めないまま彼女の頭を撫でる。

だけどそれが限界だった。そのまま脇を通り過ぎようとして

「………」
「………」

おずおずと差し出される小さな左手。予期せぬ事態に思考が止まる。
自分の右手がその手を掴み、部屋に向かって歩き出したのに気付いたのは数秒後のことだった。
フリーズした思考の代わりに自分の肉体がオートで動いたらしい。デッキから通路に入っても、握られた手は離れる事はなかった。
何だか妙なことになってるなぁと思いながら少女に目を向けると、彼女もこちらを見上げている。
みつめあう2人。
なんとなくいたたまれなくなって視線を外す。視線を進行方向に戻して―――

「お疲れ様でした。これで世界も平穏へと近付くでしょう」
「……マルキオ導師」

その先にはこの艦で、いや世界で一番会いたくない男の姿があった。



「次の標的の候補についてですが」

隣の少女を気にしないかのように、盲目の男が話しかけてきた。キラは思わず眉を顰める。
マルキオ導師。
キラにとって支援者であり、同志であり、そして今はかつての母の主でもある男。
ロンド=ミナ=サハクとの交渉など彼の手腕に助けてもらっている面は多々あるが、はっきり言って嫌いだった。
父から母を寝取った事もその理由の一つだが、この男がラクスに力を与えなければ彼女は今も生きていてくれたのではないか。
彼女が死んだ日から、幾度もそんな事を思ってしまうからだ。

「やめてくれませんか。子供の前で話す内容ではないでしょう」
「これは失礼。ですが大した内容でもありません。
 地球ではまだ大人しいようですが、宇宙ではゲリラや海賊たちが行動を再開しました。
 幾つか候補を挙げておきますので次の目標の選定はお任せするということだけです」
594CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:38:01 ID:???

そんな事ならば尚更、今伝えなくても良いだろうに。一体何を焦っているのか。
最近の彼はパーティーを準備する子供のように活動的で、そして焦燥していた。

「そうですか、調査ご苦労様でした。目的は後日連絡しますので、僕はこれで」

話を適当に纏めてさっさと別れようとするキラ。
だがマルキオの次の言葉に彼は表情を変えた。

「しばらく戦闘を控えるというのでしたら、たまにはオーブへ戻ってカリダに顔を見せてやっても良いのではないですか?
 彼女も貴方を心配している。会ってやればとても喜ぶでしょう」
「………心配?」
「丁度これからの下準備や情報入手のため、3日ほど私は地球へ降りる予定です。
 オーブへの侵入はいとも容易い。そこでどうでしょう、カリダを含めた3人でひさしぶりに食事でも」

よりによって自分の前でその名を出すか。父から母を寝取った男が。
キラは冷たい視線で男を見返す。その目が見えていなかろうが関係ない。

「生憎ですが、僕はキラ= 『ヤマト』 です。
 あの人には育てて貰った恩はありますが、今の僕の親はハルマ=ヤマト1人だけ。
 彼女とは血が繋がっているわけではないですし、僕に構わず自分の好きなように生きてはどうかと伝えてください」

どこかの山奥にでも引き篭もってね、という言葉は何とか飲み込む。流石にそれは品が無いと自分でも思ったからだ。
無論、別れたのには彼女なりの理由もあるだろう。母である前に女だし。
そしてこれは父と母2人の問題であり、彼らが納得済みなら自分には言うべき言葉は無い。
自分ももう子供ではないのだからそんな事はわかっている。
だが父の不在をいいことに、別れる前から同居人と関係を持つというのはいただけない。それを受け入れる男の方もだ。
しかもそのまま駆け落ちでもすればよいものを、母親ぶって距離を保とうとするのは我慢できなかった。
自分が彼らに対して荒れるのも無理は無いと思う。
あの誰にでも優しいラクスですら、彼らの行為に対して眉を顰めていたのだから。

この男にしても今はまだ利用価値があるから此処に置いているだけで、決して信頼しているからではない。
道具の形状が気に入らなくても、性能さえ悪くなければ誰もが利用するだろう。それと同じ事。
価値が無くなれば直ぐにでも捨てるつもりだ。……残念な事に、それは当分先の話になりそうだが。

「そんな事よりも、例のものの生産は順調なんですよね?」
「無論。残すは調整のみとなっています。パイロットも都合できました」
「仕事が早くて助かります。ですがあれを扱えるほどの人材がそう簡単に揃うとも思えません。
 補給物資も無限というわけじゃないですし、使えないパイロットを補充されても困るんですが」
「そちらについてはご心配なく。彼らの技量はザフトの赤服と同等かそれ以上、腕の方は問題ありません。それから」
「……まだ、何か?」

「先程の返事を頂いておりませんが」

まだ言うか。
その顔を殴り飛ばして手にした杖をへし折る事ができれば、どれだけ気が楽になるだろう。
595CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:40:02 ID:???

思わず拳を握り男に向かって歩き出しかけた時、誰かに服の裾を掴まれる。
視線を下げると目に入ったのはピンクの髪の少女。不安そうな顔で見上げていた。
その悲しそうな瞳に、僅かに自分の中の水位が下がる。

「………」
「………」

落ち着け。落ち着くんだキラ=ヤマト。
今の自分を 『彼女』 が見たらどう思う。

「―――生憎、しばらくこの子と一緒に過ごす約束をしてるんです。地球へはお1人でどうぞ」
「それは残念です。ですが」

少女の頭に優しく手を置きながら断るキラに対し、男はさほど残念そうにも見えずに肩をすくめる。
とってつけたような言い訳だが、理由を言ったため男もそれ以上は押してこなかった。
話を続けたい相手ではないので歩き出す。脇を通り過ぎても反応は無い。
嫌な空間からようやく離れることができたことに思わず安堵の溜息をつきそうになった瞬間、

「この戦いの後、ラクスに変わって貴方が世界を導かねばならない。その事だけはお忘れにならないよう」

キラの背中にそう言い放って、男は去っていった。

「…………ハッ」

立ち止まり振り替える。その目に写るのは、ゆっくりと去っていく男の背中。
キラは男の意思を全て拒絶するかの様に鼻で哂った。起きたまま寝言を言うというのは気持ち悪いものだ。
確かに夢を見るのは個人の勝手ではある。しかしあの男はそこまで自分という人間を理解できていないのか。
この戦いの後、世界を導く?
そんな事の為に自分が戦っていると本気で思っているのか、あの男は。

「戦う理由? そんなもの―――」

無様な自分が許せなかった。怒りのぶつける先が欲しかった。
『彼女』 にする言い訳をみつけて、荷物を置いて眠りに就きたかった。
所詮、自分の本音はその程度のものだ。

「世界を導く、だって。本当に見る目ないなあの人。――――ああ、見えないんだっけ」

自分にできるのは見たくないものから目を逸らす事ぐらいだってのに。
そんな小さい男に自分の思惑を押し付けて、悪趣味な自慰でもするつもりだというのだから。
救いの無い人間がここにも―――ん?

「え、なに……?」
「………うぅ」
596通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 00:43:04 ID:???

くいくいと服の袖を引っ張る少女。早く部屋に戻ろうとかそんな意味だろう。
この子のおかげで盲目の障害者を苛めるといった無様な事をせずにすんだのだから、ここは意思に沿うべきか。

「わかった………行こうか」

自分を見上げる彼女の手を今度は自分の意思で握り、キラは部屋へと歩き出した。
少女がこちらを気にしているのを感じる。まいったな、何か期待されてるみたいだ。
先程、これから一緒に過ごすとは確かに言った。
だがあの時言った内容は只の言い訳で本当はそんな約束はなかったし、そのつもりもなかったのだが。

「……?」
「ああ、いや。こっちの話」

まあいいか。
ほんのり冷たい小さなその手。触っていて不快なものではなかった。




「この戦いの後、貴方は世界を導かねばならない。その事をお忘れにならないよう」

その言葉を最後に伝え、マルキオはキラから離れていく。
背中に感じるのは鋭い視線。自分がそれに感づいている事はわかっているだろう。
だがその気配が消える事は無く。

「………やれやれ、嫌われたものですね」

原因はカリダか。母親を取られた子供の嫉妬のようなものだ。
そう、彼は子供なのだ。人間離れした慈しみの心を持った、女性としてはある意味普通とは言えないラクス。
あの子は彼女以外の女を知らずにここまで生きてきた。
普通の女性と幾度か普通の交際をしていれば女性に対する理解も生まれたのだろうが、結局彼の中にそれが芽生える事はなかった。
だからカリダが寂しさの果てに、妻ではなく女である事を求めたのが汚く見えるのだろう。
その気持ちは分からないでもないが、困ったものだ。
だが別に自分たちの不和が目的の遂行の妨げになっているという事はないし、気にするほどの事ではないか。
いずれ時間が経てば解決する問題だ。
息子と逢えない事に彼女は悲しむだろうが、その時は自分が慰めてやればいい。

「例のものの生産も予定通り。パイロットの補充も順調。情報戦も我々の方が連合やザフトより先んじている。
 不安要素は現状見受けられないし、これからも無いだろう。
 ならばこののち全てが順調に進めば、彼にも全てを受け入れる余裕が出てくるか……いや」

選ばれたパイロットを見れば、彼は自分や彼らを軽蔑するかもしれない。
先程の 「女」 もそうだが、彼は人の心の黒さや汚さをわからない。
そして汚れた裏道を歩く術を知らない。否、知りたがらない。
今までラクスに照らされた明るい道しか歩いたことが無かったからだ。それが彼の唯一の弱みと呼べるもの。
597CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:45:52 ID:???

彼が見せる弱さに不満を覚えない訳ではないが、自分がその一部として成すのも悪い気はしない。
光が消え暗くて歩けないと言うのならば、道は私が裏から整えれば良いだけのこと。
私にならあの子が出来ないことが出来る。
そして、全てを掴みしその後は―――

「フッ。2人ならば 『彼』 に追いつけるかな」

思い出すのはかつての英雄。かろうじて脳だけ存在しているあの残骸などではない、本物のジョージ=グレン。
彼と共にいた時期は短かったものの、SEEDを覚醒させあらゆる分野へと羽ばたいていった彼の勇姿は
今も尚、光を失った自分の瞼の裏に残っている。

「―――SEEDを持つ者こそが、世界を導く」

彼も持っていたSEED。あれこそが彼の跡を継ぐ資格。
あれを持つ者こそ、人類を未来へといざなう真の 『コーディネーター』 。
これまで僅かながらも幾人かの所有を確認することができた。しかし彼の跡を継ぐに値する者には出会えなかった。

ラクス=クラインは道半ばで倒れ。
シン=アスカはSEEDを過小評価した結果、使いこなせていない。
アスラン=ザラはくだらない正義感に縛られてまともに動けない。
カガリ=ユラ=アスハのSEEDはただの残りカスだ。

よって残ったのはただ1人。
伴侶がいなくなり枷も外れた、全知全能のスーパーコーディネーター。
そう、キラ=ヤマトこそが彼の後継者なのだ。 『彼』 が見せてくれるはずだった未来を、自分に見せてくれる存在。
ならば彼が世界を握るのは当然のこと。

今の彼はさしずめ世界に災厄を振り撒くパンドラの箱。
ならば自分は最後に現れる 『希望』 を、輝かしい未来を掴み取る。


「そう、SEEDを持つ者が………!!」


誰もいない通路で1人。

狂信者は歪に笑う。




598CROSS POINT:2010/02/15(月) 00:49:08 ID:???
今日はここまでです
本編ではマルキオの行動目的が読めないので、例の言葉を拡大解釈して
オリ要素を入れるという冒険をしてみました
599通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 01:30:20 ID:???
ああ、オリなのね>NTR
てっきりまた公式で負債がやらかしたのかと
600通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 16:53:31 ID:???
ただでさえカルトな黒幕だというのにその上NTRだとぉ…
いよいよラスプーチンじみてきたな○キオ。
懲りずに蜂起してるというあちこちの有象無象に物資くれてやってんのも
こいつじゃないでしょうね、成長を促すためとかぬかして。
601通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 17:34:47 ID:???
>あの子は彼女以外の女を知らずにここまで生きてきた。
>普通の女性と幾度か普通の交際をしていれば女性に対する理解も生まれたのだろうが、結局彼の中にそれが芽生える事はなかった。
フレイとの事を知らないんだな、このマルキオは。
キラの事を過小評価して子供扱いしているが、思惑をすべて引っくり返されそうだな。
602通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 18:27:01 ID:???
おk、おk。 種死の時にヤマト父の姿が無かったのは……
と、妙な納得をしてしまったww

>>601
>普通の女性と幾度か普通の交際をしていれば女性に対する理解も生まれたのだろうが
残念ながらフレイとは“普通の”交際が出来なかったがな……

まぁどれだけ広い人脈持って様が、所詮SEEDなんで訳判らんモノの狂信者に過ぎんからな
自分が見たい様にしか見ようとしないんだろうよ >ここマルキオ
603通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 19:09:46 ID:???
>彼女ハ何故、コンナ人間タチノ明日マデ救オウト躍起ニナッテイタノダロウ。

試しにカタカナにしてみると何やら横山光輝マーズ分が急上昇するから怖い。
ちびラクが少しでも癒しや救いになればいいけど、この子にしても今回の事で
マルキオに目ェつけられたような気が。
604通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 19:25:13 ID:???
マルキオの登場でザクレロ分が増したような気がする
605通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 01:25:06 ID:???
>>603
マルキオ「(キラ君との仲をあまり特権的に考えられては困るな…
     指導者は人間的感情とは無縁であるべきなのだ…)」

こうですねわかります。
逃げてーちびラクス超逃げてーーーー
606通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 03:02:26 ID:???
出たな銀河帝国のマキァヴェリw
607通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 16:55:59 ID:???
実はマルキオは夜に為ると↓の姿に変わります。私を夜の闇に包め……

ttp://www.otakuhero.com/graphics/metal_hero/metalder/metalder_047(l).jpg
608CROSS POINT:2010/02/17(水) 23:49:48 ID:???


第14話 『傷を舐め合う愛でいい』


オーブ港の軍用ドック。
そこではお互いに異なる白い軍服を着た2人の男性が、敬礼を交わしあっていた。

「ミネルバ艦長のアーサー=トラインです。貴国からのご好意、感謝致します」
「オーブ軍少将、アスラン=ザラです……お久し振りですね、トライン艦長」

彼らがこんな場所で挨拶を交わしているのは、かねてより話に上がっていたザフト・オーブによる共同作戦のためである。
ちなみにアスランがアーサーと会うのはメイリンとの結婚式以来だ。
あれからしばらく会っていなかったのに、彼の外見はあまり変わっていない。

「そちらもお元気そうで何よりです、ザラ少将」
「敬語はやめてください。今は足並みを揃えなければならない時ですし、昔みたいに呼び捨てで結構ですよ」
「わかりました。ただ公の場ではそれに応じた態度を取らせていただきます。
 ………久し振りだね。思ったよりも元気そうで安心したよ、アスラン」
「はい。でも、またこの艦に乗って一緒に戦う日が来るとは思いもしませんでしたが」

敬語は止めてくれたものの、アーサーのアスランへの態度は少しよそよそしかった。
引っかかったのは最後の言葉か。無理もない。
自分がこの艦にFAITHとして乗り込んで戦っていた時期といえば現在の妻であるメイリンとの出会いという良い事もあったが、
キラやシンに撃墜されたりと悪かったこともあった。
結局自分の曖昧な態度が仇となってシンやレイとは溝ができ、最終的にはデュランダル議長と袂を別ち。
そして前大戦のおり、彼らの家とも言えるミネルバを航行不能になるほど破壊したのは自分なのだ。
懐かしさに気が浮かれて、自分は少し考えが足りていなかったかもしれない。

「………すいません、自分にこのような事を言う資格はなかったですね」
「僕からは何も言えないな。君がミネルバを落としたのは否定しようもない事実だし。
 けど元気そうで安心したというのは本当だ。僕は君の奥さんの上司でもあったわけだしね。
 ……そういえば彼も君に会いたがっていたよ。知り合いなんだろ?」
「彼?誰のことです?」
「ほら、今来た」

アーサーが指を指すその先に、見覚えのある男がいる。
逆立った金髪に褐色の肌。しかも何故か黒服。
今はカメラマンやってる筈のこの男が、どうしてここにいるんだろう。

「よ、アスラン。おひさし」
「ディアッカ……お前、こんな所で何をしてるんだ?」
「見りゃわかんだろ? パイロットに戻ったんだよ。
 正確にはシンと同じく議長代行どのに頼まれてな。用心棒としてこの戦いの間だけ雇われたんだ」
609CROSS POINT:2010/02/17(水) 23:53:34 ID:???

シンがザフトに合流したのは聞いていた。だがそれに続いてディアッカまでも復帰するとは思っていなかった。
確かに人選は間違ってはいないし、相応の実力の持ち主であることは否定しない。
だが民間人をこんな重要な作戦に何人も組み込むほどとなると、どうやら本当にザフトは人材が足りていないようだ。
イザークの苦労している様が目に浮かぶ。

「今は彼が乗船してくれて此方も助かってるよ。ブリッジもパイロットも整備士も人員が不足気味でね。特にベテランが。
 だからここオーブに少し滞在して、地上部隊から補充する予定なんだ。
 議長もいろいろと頑張ってるみたいだけど、果たしてどれだけの戦力が確保できるやら」
「イザーク、いや今はジュール議長か。あいつも頑張ってるんだな」
「まあな。それよりお前、本当に戦場に戻れるのか? キラにやられた傷はまだ治っちゃいないんだろ?」
「ああ。だが、そうも言ってられないから」

きしむ脇腹をそっと押さえる。確かに傷はまだ完治していない。
だが今、仕留め損なった自分の代わりにシンが戦おうとしているのだ。
そんな状況で自分だけのうのうとベッドでゆっくりしているわけにもいかない。
不意に横で話を聞いていたアーサーがくすくすと笑い出す。

「……あの、何か?」
「ああいやなんでもない。ただ、議長代行は君のそういう性格を分かってるみたいだったからね。
 だから君にあれを持って来たんだ。おーい、ヨウラン!!」
「はい、アレですね!! 1番奥のやつです!!」
「アレとは?」

どこかで見たことがある、ヨウランと呼ばれた整備士の指す方向をアーサーと共に見つめる。
そこには何機も並ぶザクに混じって、メタリックグレーに染まった1機のMSがあった。
Gタイプか。いや、この機体には見覚えが―――

「これは、セイバー?」
「そう。ジュール議長代行から君にね。
 改良はされているけど、武装や基本的な操縦の仕方は変わらないそうだよ。
 グフやムラサメでストライクフリーダムとやり合うよりはマシだろう、だってさ」
「イザーク、あいつ……」

セイバー。救世主の意を持つ、かつて自分が乗っていた機体だ。
おそらく性能はジャスティスに及ばないだろう。だがムラサメなどより遥かに上であることは間違いない。
あの時これに乗っていた自分は、キラを止められなかった。でも今なら、この機体ならばまだ自分にもできることがある。
荷物を預けてしまったあいつのために、何かができる。

「よし、これなら……」
「戦力アップで万々歳ってところかしら。でも、勝つための手は多いほうが良いんじゃない?」
「この声、君は!?」
610通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 23:55:06 ID:???
>>600
ラスプーチンというのはどうなんだろうね? 色んな点で余り妥当な例えじゃ無い様な気が……
寧ろ装甲騎兵ボトムズのワイズマンと言った方が好いんじゃ無いかと。

「希望のなかったお前に、初めて生きる意味が生まれ、愛とともに力と支配に対する認識が芽生えた。
私はまずお前を、当たり前の人間にしてやったのだよ。罪を超越できるのは、完全な支配だ」
611CROSS POINT:2010/02/17(水) 23:56:40 ID:???

後ろを振り向く。目に映ったのは3人の女性。
バッグを抱えた赤い髪。懐かしそうに船内を眺めるポニーテール。そしてニヤニヤと面白そうに笑う自分の妻。
お前が連れて来たのか。

「ルナマリア!? それに君はコニール……。メイリン、いったい何故こんな所に連れて来た!?」
「だってぇ。恋する乙女は止められるものじゃないでしょ?」
「なにその理由」
「ま、野暮なことは言いっこなし。それよりも知りたい事があるんだけど」

夫婦の会話を遮り、ルナマリアがアスランに詰め寄る。
内容を予想するのは簡単だ。彼女らが知りたい事と言えば1つしか思い当たることは無い。

「シンの居場所か。あいつなら今、宇宙でボルテールに乗って―――」
「それはメイリンから聞いたわ。私が聞きたいのは、この船の予定よ」

この船の予定? そんなもん聞いてどうすると言うのか。

「予定? 準備が済み次第宇宙に上がって、ザフト宇宙軍と合流するという流れだが」
「なるほど、やっぱりね。―――――トライン艦長、さっき人員が不足してるって言ってましたよね。
 それが本当なら、MSの数にも余裕があると考えて良いんですか?」

いつになく真剣な目のルナマリア。
いきなり話を振られたアーサーが戸惑いながらも隣の青年に尋ねる。

「え? えーと、どうなんだいヨウラン? 僕まだそっちの書類は目を通してないんだけど」
「そりゃ予備機体ならいくつか準備してますが……っておい、お前まさか」
「そのまさかよ。ねえ、艦長」

その言葉を聞いて彼女が一歩進み出る。耳に掛かった髪を掻き上げ、不敵に言い放った。

「腕のいいパイロットが此処にいるんだけど、使ってみる気は無い?」

腕のいい? いや引っ掛かるところはそこじゃなくて。
今彼女は何て言った?

「何考えてるんだ君は!? メイリン、お前も止めないか!!」
「いいじゃない別に。ねえトライン艦長、お姉ちゃんもやる気だし連れて行ってやって下さいよ。
 今ならサービスで、美少女オペレーターが付いてきますよ?」
「え? あ、え〜と。……頑張ります」

背後からコニールにメイリンが抱きつく。 『美少女』 という言葉に反応したのか彼女の頬が少し赤くなった。
微笑ましい光景ではあるが、今メイリンも聞き捨てならない事をさらりと言わなかったか。
612通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 23:57:49 ID:???
おまwww
613CROSS POINT:2010/02/17(水) 23:58:56 ID:???

「コニールは素人だぞ? できるわけないだろう!!」
「大丈夫よ。だって、私が傍に付くし」
「な、お前まで!? 姉妹揃って一体何を考えて………」
「もう、貴方ったら。いくらあのアーサー=トラインが傍にいるからってそこまでリアクションに力を入れなくても。
 そんなにCE最高のリアクション芸人の座が欲しいの?」
「別れてやろうかお前」

何故このシリアスな場面でボケに走るのかこの嫁は。
大体リアクションの才でアーサー=トラインに勝てるか。キラでも無理だ。

「ははは……まあまあアスラン、落ち着いて。
 君は確かガルナハンで僕たちに協力してくれた……コニールさん、だったよね。どうして一緒に行きたいんだい?」

夫婦漫才を始める自分たちをスルーして、アーサーはコニールに問いかける。

「あら艦長、家出した男の子を迎えに行くのは家族の役目に決まってるじゃないですか。ねえコニール」
「それが理由なのかい?」
「えーと、まあ、大体合ってます。……こんな理由じゃ納得出来ませんか?」
「まさか」

横から割り込んできたルナマリアの言葉に同調するコニール。
大人であるアーサーは否定していたが、はっきり言って自分はそんな理由では納得できない。
自分の手を血で染めるのは、力を持たない一般人の平和な生活の為。災いを自分の所で止める為。
それこそが、人を手にかける軍人がそんな自分を肯定できる数少ない理由なのだ。
彼女たちの行動はそんな自分たちの思いに相反してしまう。

「君の意思を否定する権利は僕には無いよ。……ただ、分かっているつもりなのかもしれないけど一言言っておく。
 君が今から行きたいと言っている場所は、何もかもを平気で切り捨ててしまう場所なんだ。
 ミサイル1発、いや機銃の弾1つで簡単に吹き飛ばすような、ね。
 結果的に君がその手を汚すこともあるかもしれない。それによって誰かの恨みを買うこともあるかもしれない。
 傷ついて、元の暮らしに戻れなくなった人だっている。……それでも?」
「………それは」

彼女の心を揺さぶりに行くアーサー。だが言っていることは正論だ。
いくら過去紛争中のガルナハンに居たとはいえ当時の彼女はレジスタンス所属、つまりは民間人だったのだ。
彼らが戦闘を行っていたとしても小規模なもので、今回の作戦とは比較になるわけがなかった。
それに、失う可能性があるのは自分の命だけじゃない。
彼女が動くことによって、誰かの命が左右されることになるのだ。味方だけではなく敵も。
そして人を殺したという罪も、死者の家族の憎しみも、受け止めなくてはならない。
戦場に出るとはそういうことだ。巻き込まれたなんて言い訳はできないし、仲間が行くからと連れション感覚で行くものでもない。
614CROSS POINT:2010/02/18(木) 00:03:21 ID:???

「私あんまり頭は良くないけど、貴方の言ってることは分かります。
 戦場なんて生半可な気持ちで行ける場所じゃないってことくらい、私にだって」

自分たちの想いを感じ取ったのだろう、コニールの表情は真剣だ。
自分の心の中を確かめるように、言葉がきちんと伝わるように、ゆっくりと話し出す。

「距離を取られたから追いかけるとか、傍にいたいって想いだけじゃ駄目なんだ。
 伝えたい言葉はあるけど、きっとあいつに逢えても何を言って良いかわからないと思う」
「君たちまで戦場に出てくるなんて知ったら、あいつは悲しむだろうな。
 それにきっと、君たちに戦う姿を見せたくもないだろう」
「それは予想つくよ。アスランが言いたい事はわかるよ。……わかるけど!!」

誰が自分にとって大切な人間に、己が人を殺す様を見せたいというのか。しかも民間人に。
そんなことを暗に含めたアスランの言葉に、少女は首を横に振りながらも抗う。
もう、言葉遣いを気にする余裕も無くなっていた。

「でも、シンだってそんな場所に戻っちゃったんだ。そんな場所にいて傷つかないわけないんだ。
 そんなあいつをただ待ってるだけなんていやだ。もう戻ってこないかもしれないのにぼんやり待ってるなんていやだ。
 あいつがこれから苦しむって言うんなら。これから負う苦しみを、少しでも良いから共有したいんだ。
 だって私は……私にとってあいつは、家族だから」
「………」

コニールの独白に言葉を返す事が出来ない男性陣。
その傍らでは自分の妻が、ええ子や、この子はほんまええ子やと言いながらハンカチで目元を押さえていた。
頼むから空気読め我が妻よ。絶対その涙は嘘だろうが。
だがその感想に異議は無い。鈍感な自分にすら、彼女がどれだけシンの事を想っているか十分すぎるくらいわかったのだから。
傷の共有。彼女が望んでいるのはそういうことか。

シンには悪いが、これは止められないかもしれない。

「ルナマリア、君は?」

コニールの言葉に頷いた後、アーサーはルナマリアに話を振った。
彼女の意思が固い以上、ルナマリアを介して引き取ってもらうという考えなのか。

「私? 私はね……自分で言うのもなんだけど、私って最高の女じゃない?」

真面目な話をしてた筈なのに、なんかいきなり話が飛んだぞオイ。
今そんな事は関係ないだろと口を開きかけたアスランの腕を誰かが掴む。
手の主はディアッカ、言わせてやれよとその目が語っていた。ちくしょうかっこつけやがって。
はいはい、どうせ俺も空気読めませんよ。
615CROSS POINT:2010/02/18(木) 00:05:25 ID:???

「容姿も良いし、軍での実績も十分。家事だって結構なレベルでこなせるし。
 パーティーの度に議員の息子から芸能人にスポーツ選手まで言い寄ってきて、男なんてよりどりみどり。
 でもね、あいつと再会してからわかった事があるんだ」
「何がだよ」

軽く問うたヨウランに視線を向け、ルナマリアはその問いに答える。
口元に浮かぶのは不敵な笑み。力強く、そして美しい。

「答えは簡単よ。―――――あいつが隣にいないと、最高でいる甲斐がないの」

「あー………」

肩の力が抜ける。なんというか、返答に困る理由だなぁほんとに。
結局2人にのろけられてただけかよ俺たちは。

「そっか。わかった」

苦笑いを噛み殺しながら、アーサーが2人に話しかける。
もう彼も2人を止める気はなさそうだった。いや、もしかしたら最初からそんな気は無かったのかもしれない。

「トライン艦長、良いんですか?」
「いいんじゃないのかな、ここまでの決意聞かされちゃ。
 それに実のところキラとの戦いに尻込みする人間が多くてね。さっきも言ったけど、人員もオーブで補充する予定だったんだ。
 その間メイリンが彼女に教え込むっていうのなら僕には言うことはないよ。本人も望んでる事だし。
 ただ、最低限の仕事ぐらいはできるようになってもらわないといけないけどね」
「フフ、とーぜん」
「あ、ありがとうございます!!」

胸を張るルナマリアと頭を下げるコニール。まあ仕方が無いか。
もう自分も彼女らを止める気は無い。これ以上止めようとするのは無粋というものだ。

シン、腹を括った方が良いぞ?
お前が惚れさせた女の子たちは、どうやら俺以上に諦めが良くなさそうだからな。

「ああ、それと大した問題じゃないんだけど」

616CROSS POINT:2010/02/18(木) 00:06:31 ID:???

喜ぶ女性陣に向かって、アーサーはなんでもないことのように話しかける。
これ以上無いというほどの笑顔だが、何を言うつもりなのか。

「君たち3人に関しては、軍から給料、出ないからね?」

経費削減、と嬉しそうな艦長。
この忙しい中で長時間話を聞いていた事を疑問に思わないでもなかったが、どうやらそれが狙いだったのか。
確かにルナマリアとコニールの2人は熱心に志願してきたわけだから文句が言える立場じゃないし、
自分に内緒で勝手に動いた妻に対してはこれも良い薬になるだろう。

役者が違ったなと肩をすくめるディアッカ。
あいたー、と額を押さえるヨウラン。
ま、しょうがないよねと頭を掻くコニール。


「「ちょ、ええーーー!!?」」



驚愕する姉妹の声だけが、MSデッキの中に響いた。




617CROSS POINT:2010/02/18(木) 00:08:46 ID:???
今日はここまでです
女2人の覚悟はベルリンで書いたのですが、そのままスムーズにミネルバに乗るのもアレなんで
618612:2010/02/18(木) 00:09:55 ID:???
投下中の誤爆、大変に申し訳ございませんでした。
619通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 00:15:46 ID:???
アーサー、やるようになったな
620通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 00:16:54 ID:???
なんだ、オーブで一悶着あるかと思ったけどあっさり流したな
しかしこのメイリン大丈夫かw初めて見るタイプだな。
621通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 00:32:30 ID:???
投下乙!

何かコイツ等なら鬱フラグを軒並み蹴散らして
ハッピーエンドに持ち込めそうな気がして来たww
622通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 00:38:51 ID:???
ああ、相手のトップがキラだけだったらね。
しかしあのクソ坊主が居やがりくさるとなるとどうも不安が…

>>607
つ【カゴ】【バケツ】【アイマスク】【視力検査棒】ほか目隠し道具
「やめたまえ」
「はっ」
623通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 14:00:06 ID:???
>どこかで見たことがある、ヨウランと呼ばれた整備士の

何気にここもヒドス。やっぱり当時のクルーろくすっぽ憶えてなかったか凸
ヨウランにはTV最終回での死亡説もあるので係累の別人かとも思ったが
アーサーやルナとの会話からして本人だろうしw
624通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 23:36:40 ID:???
>>623
>TV最終回での死亡説もあるので

ミネルバ破壊からどうやって生還したんだろう……死後の世界で生命の珠を四つ集めて来たのか?
625通常の名無しさんの3倍:2010/02/18(木) 23:42:33 ID:???
カーボン……やめろはなせqwせdrftgyふじこlp
626通常の名無しさんの3倍:2010/02/19(金) 01:24:17 ID:???
いやさ、銀さん戦艦の爆発に巻き込まれたときはあのヅラなにやらかしとんじゃ!って思ったよ
とかそんなのりでおk
627通常の名無しさんの3倍:2010/02/19(金) 17:35:54 ID:???
>>625-626
HEMだったらどうします?
628通常の名無しさんの3倍:2010/02/19(金) 21:20:54 ID:???
>>626
其れを誰か執筆するんだ……タイトルは
「ガンダムSEED‐DESTINY 如何でも良い奴ほど売れのこります」
で御願いします。
629SEED 戦後30年目の愛:2010/02/21(日) 05:55:30 ID:???
対空砲火に接近してくる白い機体。

ZGMF-X20A ストライクフリーダム

ザフトの試作機、フリーダムの強化機体であり、キラ専用の特別機である
白亜の美しい《剣》

「凄い早さだ。全然当たらないぞ」
ザフトのパイロットは思わず叫んだ
ビームを軽々と回避していくその姿に……
あまりの敵機の美しさに自らの体が炎に焼かれていく最中である事を忘れさせる……
彼の乗っていたディンは地上に墜落する前に爆散した

「こんな腕で、良くも……」
キラは思わず呟いた
目が潤むのが判る。
時計を見る。6時54分
まだ一時間経ってないようだ。
ガルシア将軍の言う作戦とは何だろうか、そう考えながら機体を前進させた
630SEED 戦後30年目の愛:2010/02/21(日) 05:56:10 ID:???
「数はこっちの方が上だ。押してダメなら押し倒せ」
バクゥとザウートの大群がフリーダムに接近する。数は200両を超えるであろうか
「隊長、前方に展開中の敵戦車旅団は?」
応戦中のザウートパイロットが尋ねる
「何、連合の戦車兵は臆病だ。気にするな」
その直後、隊長のバクゥの頭部にリニアガンが命中した
「まさか、何とも……」
機体が誘爆する直前、隊長の断末魔の叫びが聞こえた
「どうゆうことだ」
連合のリニアガンタンクが数両、高速で接近してくる
近くに居たジン高機動型がマシンガン応戦したが、全く効かない
「なんだ、効かないぞ……全機、格闘戦装備で切り込む。サーベル用意」
強化装甲か、なにかは知らないがとにかく潰す。彼の頭にはそれしかなかった
バーニアを吹かして、前進した瞬間、後方が爆発した。
おそらくはフリーダムの射撃。一瞬遅かったら命は無かっただろう
次の瞬間、上空が光り、機体を回避させる。直後に、数秒前、機体のある場所を通過した……
だが彼は前方を確認するのを一瞬忘れてしまった
リニアガンタンクが突如、砲塔を上にあげて、車体が変形し始めた
「何だ、変形だと……」
彼が喋り終わる前に、機体の中央をミサイルが貫いていった
631SEED 戦後30年目の愛:2010/02/21(日) 05:58:02 ID:???
アスランは兵士にたたき起こされた。しかも早朝に。
朝飯を食って急いで着替えていくと、作戦室には赤服と東アジア共和国軍の将校が溢れんばかりに居た
何かあったらしい。
「おはよう、どうした」
一同が振り向いて立ち上ると、敬礼をして出迎えた
「軍団長、大変です。連合に裏を掻かれました」
一番最初に口を開いたのは見た事もない赤服の青年だった
「簡単に言え」
「実は……」
ドアが急に開き、兵士が駆け込んできた
「大変です、軍の補給所が、ロシア軍兵士の反乱で焼かれたのとの知らせが……」
一同にどよめきが走る。
「ラドル司令!」
アスランは黒服の老人を呼び寄せた
「後はお任せします、私は現場に行って一足先に状況を確認してきます」
「軍団長本人が前線に出る必要はありますまい……、それに敵軍にはフリーダムも居るとの情報です
準備してからでも」
「フリーダムが居るのだから、なおさら前線に出て士気を鼓舞する必要が有るでしょう」
そう言うと駆け出そうとしたが、アイザック・マウと風花が両脇を抑え込んだ
「軍団長お止め下さい。フリーダム一機より全体を見てください。何が必要か」
アイザック・マゥが後ろに回ってアスランを羽交い絞めにした
「どうか堪忍して下さい」
風花は腰に抱きついて足を動かせない様にしてる
アスランは項垂れていた首を持ち上げると一言叫んだ
「済まん、許してくれ」
アイザック・マゥを投げ飛ばし、風花を引き摺ったまま、走り去ってしまった
一瞬の出来事に、その場にいた一同は、どうする事も出来なかった
632SEED 戦後30年目の愛:2010/02/21(日) 06:00:27 ID:???
「変形する戦車だって?ナチュラルにそんな代物が作れる技術が有る筈が無い」
前線の状況を話を聞いた僚機の兵士がつぶやいた
「なに、モーガン・シュバリエの戦車隊を倒したこのバクゥだ。キチガイ戦車何か簡単さ」
そういうとモニター越しに何か飲むのが見えた。ガラス瓶だったからおそらく酒だろう
「そ、そうだな。ナチュラルの戦車風情に俺達、極東特別MS戦闘団が負けるわけがねえ」
モニターを見ると、土埃をあげて接近する機体が見える。数はおよそ一個小隊か
「なんだ?連合にあんな代物ねえはずだぞ」
土埃をあげてる所を見ると、ホバーリングシステムか、キャタピラだろう。
土埃が晴れる前に、ミサイルと機関砲の強烈な挨拶を浴びた
爆発を受けて、一瞬カメラが駄目になったが、モニターが回復するとそこには見た事のないグレーの機体が有った
全体的に角ばっており、見た感じ箱と重火器がついている。後ろから戦車が続いて来る
次の瞬間、眼前の光景に彼は驚愕した
「戦車がMSに、変形?ど、どういうことだ……」
その戦車と呼ぶべきか、MSと呼ぶべき機体がこっちを見て居る。
腕と呼ぶべき場所に有る《箱》をこちらに向ける
彼は死を悟った。腰の拳銃に手が伸びる
「ナチュラルにやられるくらいなら」
《箱》から6発のミサイルが発射され、ホルスターから拳銃を引き出す前に、彼の機体は爆散した
633SEED 戦後30年目の愛:2010/02/21(日) 06:01:32 ID:???
続く

リニアガン・タンクは以前の伏線回収
634通常の名無しさんの3倍:2010/02/22(月) 02:55:43 ID:???
乙です
プラントここまでアホのままで
よく30年も地球圏で存続できたもんだ
635通常の名無しさんの3倍:2010/02/22(月) 05:06:09 ID:???

東アジアの高官は頭抱えてそうだな
636通常の名無しさんの3倍:2010/02/23(火) 08:17:49 ID:???
容量が
637通常の名無しさんの3倍:2010/02/24(水) 00:35:30 ID:???
次スレ立てようと思ったが弾かれてしまった。
テンプレ作ったのでどなたかよろしく。

【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 12

このスレは種系SSスレのうち、まとめサイトのカテゴリでIF物とされるスレの統合を目的としています。
種作品内でのIF作品を種別問わず投下してください。
種以外とのクロスオーバーは兄弟スレにお願いします。

過去スレ
IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 11
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1254381439/
IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 10
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1242221343/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 9
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1236622903/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 8
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1234086864/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 7
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1228025594/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 6
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1220011475/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 5
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1212578381/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 4
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1209267080/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 3
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1205047619/
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 2
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1202222711/
【IF系】もし種・種死の○○が××だったら【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1196438301/

まとめサイト
http://arte.wikiwiki.jp/

兄弟スレ
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら9【統合】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1254828439/
638通常の名無しさんの3倍:2010/02/24(水) 14:31:00 ID:???
これでおk?

【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 12
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1266989394/
639通常の名無しさんの3倍:2010/02/24(水) 20:51:23 ID:???
埋め
640通常の名無しさんの3倍:2010/02/24(水) 22:33:48 ID:???
>638
GJです。

後は
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641通常の名無しさんの3倍:2010/02/24(水) 22:36:01 ID:???
uemmeuemejejaojga;ogh;hgoigh
ghaigogh;oihag;ohga
ghaoigapgahgoia
ghaioghahgahgioaiohgahio;g
ghaioghagaigoihhgioa;
gaiojg;agahgaogihagga
642通常の名無しさんの3倍
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